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研究課題:進行卵巣がんに対する分子標的薬の国際共同・医師主導治験
研究課題:進行卵巣がんに対する分子標的薬の国際共同・医師主導治験 課題番号:H22-がん臨床-一般-030 研究代表者:国立がん研究センター中央病院 乳腺科・腫瘍内科 外来医長 勝俣 範之 1. 本年度の研究成果主任教授 本研究の目的は、進行上皮性卵巣癌、腹膜癌に対して、標準的化学療法(カル ボプラチン/パクリタキセル)単独と比べて、化学療法+同時併用 Bevacizumab、化 学療法+同時併用 Bevacizumab に引き続く Bevacizumab 単独維持投与の有用性を評 価するものである。対照群にはプラセボを使用し、二重盲検比較試験としてデザ インされている。卵巣癌に対する Bevacizumab 投与のランダム化第三相試験とし ては、世界初の研究である。試験実施体制は、米国 NCI(国立がん研究所))傘下の 公的臨床試験グループである GOG(Gynecologic Oncology Group:婦人科がん研究 グループ)のプロトコール(GOG218)へ、日本から本邦初の国際共同・医師主導 治験として参加するものである。 平成 22 年度の進捗状況としては、2010 年 6 月 7 日 ASCO(米国臨床腫瘍学会) Plenary session にて本臨床試験の結果が発表された。プライマリーエンドポイント で あ る 無 増 悪 生 存 期 間 (PFS) は 、 化 学 療 法 単 独 群 が 10.3 カ 月 、 化 学 療 法 +Bevacizumab 群が 11.2 カ月で、ハザード比は 0.908、p 値は 0.08。一方、化学療法 +Bevacizumab→Bevacizumab 群は 14.1 カ月で、化学療法単独群に対するハザード 比は 0.717、p 値<0.0001 と、有意に PFS は延長した。治療による忍容性は認めら れ、有害事象も従来 Bevacizumab で報告されていた発生率とほぼ同じだった。本 邦から登録された 44 症例の経過観察、モニタリングが行われた。施設訪問モニタ リングに関しては、順調にモニタリングが行われ、治験調整医師とのモニタリン グ報告会が月 1 度行われており、各施設の直接閲覧の状況、必須文書の保存状況、 などが報告・確認された。 2. 前年度までの研究成果 本臨床試験は、2005 年 9 月 26 日より米国で開始されているが、日本からは、本試 験へは、2007 年度より、米国 NCI、GOG と協議を重ね、9-10 月本 9 施設にて、 プロトコールの治験審査委員会への提出・承認。平成 19(2007)年 11 月 6 日独立 行政法人医薬品医療機器総合機構へ治験届提出。平成 20 年 1 月 5 日第 1 例目登 録。2009 年 8 月 10 日予定登録数を満たし登録終了となった。計 1873 症例(日本 から 44 例)が登録された。 3. 研究成果の意義及び今後の発展性 本試験は、進行性卵巣癌の初回化学療法における Bevacizumab の併用療法及び 維持療法としての有用性を評価しようとする、本邦発の国際共同医師主導治験で ある。 現時点での状況としては、プライマリーエンドポイントである PFS の延長は認 められたが、全生存期間(OS)を評価するには、時期尚早であり、さらなる経過 観察が必要である。今後、米国では本試験の結果を元に、FDA 申請するための準 備をすすめていく。本邦でも、米国との状況を鑑みつつ、経過観察・モニタリン グを継続していくとともに、本邦への申請に向けて具体的な準備をすすめていく。 4. 倫理面への配慮 本臨床試験は、薬事法、医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令の一部を改 正する省令(改正 GCP)を遵守する医師主導治験として実施されるため、被験者の 保護や安全性情報の取り扱いなどの倫理面に対する適切な配慮がなされている。 5. 発表論文 1) Noriyuki Katsumata, Makoto Yasuda, Fumiaki Takahashi, Seiji Isonishi, Toshiko Jobo, Daisuke Aoki, Hiroshi Tsuda, Toru Sugiyama, Shoji Kodama, Eizo Kimura, Kazunori Ochiai, and Kiichiro Noda, for the Japanese Gynecologic Oncology GroupA Randomised Phase III Trial of “Dose-dense” Weekly Paclitaxel in Combination with Carboplatin for Advanced Ovarian Cancer. Lancet 2009;374:1331-38 2) Noriyuki Katsumata Dose-dense paclitaxel for advanced ovarian cancer - Authors' reply. Lancet 2010;375:281 3) Takakura S, Takano M, Takahashi F, Saito T, Aoki D, Inaba N, Noda K, Sugiyama T, Ochiai K: Randomized phase II trial of paclitaxel plus carboplatin therapy versus irinotecan plus cisplatin therapy as first-line chemotherapy for clear cell adenocarcinoma of the ovary: a JGOG study. Int J Gynecol Cancer, 2010, 20: 240-247 4) Aoki D, Katsumata N, Nakanishi T, Kigawa J, Fujiwara K, Takehara K, Kamiura S, Hiura M, Hatae M, Sugiyama T, Ochiai K, Noda K: A Phase II Clinical Trial of Topotecan in Japanese Patients with Relapsed Ovarian Carcinoma. Jpn J Clin Oncol, 2010. (in press) 5) Nomura H, Aoki D, Takahashi F, Katsumata N, Watanabe Y, Konishi I, Jobo T, Hatae M, Hiura M, Yaegashi N: Randomized phase II study comparing docetaxel plus cisplatin, docetaxel plus carboplatin, and paclitaxel plus carboplatin in patients with advanced or recurrent endometrial carcinoma: a Japanese Gynecologic Oncology Group study (JGOG2041). Ann Oncol, 2010. (in press) 6) Tsuda H, Ito K, Yaegashi N, Hirasawa A, Sudo T, Kita T, Terai Y, Kigawa J, Sugiyama T, Aoki D: Relationship between ABCF2 expression and response to chemotherapy or prognosis in clear cell adenocarcinoma of the ovary. Int J Gynecol Cancer, 2010, 20: 794-797 7) Chiyoda T, Tsuda H, Nomura H, Kataoka F, Tominaga E, Suzuki A, Susumu N, Aoki D: Effects of third-line chemotherapy for women with recurrent ovarian cancer who received platinum/taxane regimens as first-line chemotherapy. Eur J Gynaecol Oncol, 2010, 31: 364-368 8) Fujii T, Nakamura M, Kameyama K, Saito M, Nishio H, Ohno A, Hirao N, Iwata T, Tsukazaki K, Aoki D: Digital colposcopy for the diagnosis of cervical adenocarcinoma using a narrow band imaging system. Int J Gynecol Cancer, 2010, 20: 605-610 9) Uno S, Zembutsu H, Hirasawa A, Takahashi A, Kubo M, Akahane T, Aoki D, Kamatani N, Hirata K, Nakamura Y: A genome-wide association study identifies genetic variants in the CDKN2BAS locus associated with endometriosis in Japanese. Nat Genet, 2010, 42: 707-710 10) Tominaga E, Tsuda H, Arao T, Nishimura S, Takano M, Kataoka F, Nomura H, Hirasawa A, Aoki D, Nishio K: Amplification of GNAS may be an independent, qualitative, and reproducible biomarker to predict progression-free survival in epithelial ovarian cancer. Gynecol Oncol, 2010, 118: 160-166 11) Nomura H, Tsuda H, Susumu N, Fujii T, Banno K, Kataoka F, Tominaga E, Suzuki A, Chiyoda T, Aoki D: Lymph node metastasis in grossly apparent stages I and II epithelial ovarian cancer. Int J Gynecol Cancer, 2010, 20: 341-345 12) Nagase S, Inoue Y, Umesaki N, Aoki D, Ueda M, Sakamoto H, Kobayashi S, Kitagawa R, Toita T, Nagao S, Hasegawa K, Fukasawa I, Fujiwara K, Watanabe Y, Ito K, Niikura H, Iwasaka T, Ochiai K, Katabuchi H, Kamura T, Konishi I, Sakuragi N, Tanaka T, Hirai Y, Hiramatsu Y, Mukai M, Yoshikawa H, Takano T, Yoshinaga K, Otsuki T, Sakuma M, Inaba N, Udagawa Y, Yaegashi N: Evidence-based guidelines for treatment of cervical cancer in Japan: Japan Society of Gynecologic Oncology (JSGO) 2007 edition. Int J Clin Oncol, 2010, 15: 117-124 6. 研究組織 ①研究者名 勝俣範之 ②分担する研究項目 ③最終卒業学校・ ④所属機関及び ⑤所属機関 卒業年次・学位 現在の専門 における 及び 専攻科 目 (研究実施場所) 職名 総括、研究計画全般、事 富山医科薬科大学医 国立 がんセンター 中央 医長 務局、監査、症例登録、 学部昭和63年卒、婦人 病院 乳腺科・腫瘍内科 治療、追跡 波多江正紀 科腫瘍学、腫瘍内科学 プロトコール作成、事務 鹿 児 島 大 学 医 学 部 鹿児 島市立病院 産婦 部長 局、渉外担当、監査、症 昭和49年卒、医学博 人科 例登録、治療、追跡 士、産婦人科学、婦人 科腫瘍学 藤原恵一 プロトコール作成、事務 岡山大学医学部昭和 埼玉医科大学 婦人科、 教授 局、渉外担当、監査、症 54年卒、医学博士、婦 婦人科腫瘍科 例登録、治療、追跡 竹内 正弘 人科腫瘍学 プロトコール作成、デー ハーバード大学大学 北里 大学 タマネージメント、モニ 院 薬学部 臨床 教授 統計部門 1991年卒 タリング、監査、統計解 理学博士、生物統計学 析 青木大輔 症例登録、治療、追跡 慶應義塾大学医学部 慶應義塾大学医学部 産 教授 昭和57年卒、医学博 婦人科学 士、産婦人科学 八重樫伸生 症例登録、治療、追跡 東北大学医学部昭和 東北大学大学院医学系 教授 59年卒、医学博士、 研究科 婦人科学分野 婦人科腫瘍学 紀川純三 症例登録、治療、追跡 鳥取大学大学院 昭 鳥取 大学医学部 生殖 助教授 和52年卒、医学博士 機能医学 、産科婦人科学 杉山徹 プロトコール作成、監査 久留米大学大学院医 岩 手 医 科 大 学 医 学 部 教授 、症例登録、治療、追跡 学研究科昭和57年 産婦人科 卒、婦人科腫瘍学 竹原和宏 プロトコール作成、症例 広島大学医学部昭和 独立 行政法人国立 病院 医長 登録、治療、追跡 63年卒、医学博士 機構呉医療センター・中 国がんセンター婦人科 日浦昌道 症例登録、治療、追跡 広島大学医学部昭和 独立 行政法人国立 病院 部長 47年卒、医学博士 機構 四国がんセン ター 婦人科