...

歯科医院でのパノラマX線写真を利用した 早期骨粗鬆症診断支援システム

by user

on
Category: Documents
21

views

Report

Comments

Transcript

歯科医院でのパノラマX線写真を利用した 早期骨粗鬆症診断支援システム
歯科医院でのパノラマX線写真を利用した
早期骨粗鬆症診断支援システム
広島大学病院歯科放射線科
診療准教授 田口 明
広島大学大学院工学研究科情報工学専攻
教授 浅野 晃
広島大学大学院医歯薬学総合研究科
歯科放射線学講座
助教 中元 崇
教授 谷本啓二
1
研究背景
● 日本は世界一の長寿国になった反面,社会の高齢化
に伴い,僅かな外力で骨折を起こす骨粗鬆症(こつそしょう
しょう)が,健康寿命に大きな影響を及ぼしている.
● 骨粗鬆症の推定患者数は約1100万人と報告されて
いるが,治療を受けているのはその約2割である.
● 骨粗鬆症による足の付け根(大腿骨頸部)の骨折患者
は,2005年に約15万人となり,1987年調査時の約3倍
となった.この骨折に係る治療費は,約2000億円と推定
される.骨粗鬆症性骨折は,寝たきりとなる原因の第3位
(約15%)であり,患者の約1割は,死亡する.
2
● 骨の強さは,骨の密度により約7割が規定されているため,
骨粗鬆症の診断には,骨密度測定装置が用いられ,骨の密度
が低い患者には治療が施されている.
● しかし骨粗鬆症は,「骨折」が起こるまでは無症状であるため,
患者自身は自分が骨粗鬆症であることに気づかず,骨密度測定
検査に行く機会が少ない(検診率4.6%).
● 骨粗鬆症性骨折の対策には,無症状の骨粗鬆症患者をいかに
早期に見つけ出し,医科への受診を勧めて,予防的な措置をとれる
か否かが重要となる.
無症状
骨粗鬆症
患者群
医療機関
(精密検査,治療)
3
パノラマX線写真
● 日本に約65000ある歯科医院の9割以上が歯科治療の際に
用いている顎の骨の総覧像の「パノラマX線写真」では,歯やその
周囲の骨(白い四角内)を日常の診療で診断しているものの,矢印
のような下顎(したあご)の骨の皮質骨(白い幅をもつ部分)を診断
に使うことは,殆どない.
4
● 広島大学病院歯科放射線科では1993年から,パノラマ
X線写真上で見られる下顎骨の皮質骨の粗造化(そぞうか)
及び厚みが,骨粗鬆症患者の大半を占める閉経後の骨粗鬆症
女性をスクリーニングするのに有用であるという根拠を,蓄積
してきた.
関連あり
下顎骨皮質骨
(1)粗造化
(2)厚み
腰の骨や足の骨の骨密度
骨粗鬆症性骨折のリスク
骨が吸収される速さ
(1993〜2006年)
5
日本における実際の取り組み
愛知県歯科医師会で2007年10月より,本格実施
朝日新聞 10月5日号より
愛知県歯科医師会HP:http://www.nhk-chubu-brains.co.jp/ad8020/
6
海外における報道(2004年12月〜)
ロイター通信社(ワシントン支局)
ニューヨークタイムス社
ロサンゼルスタイムス社
CNN TV news
ABC news
NBC news
デイリータイムス社
ドクターズガイド(米国)
リーダーズダイジェスト社
ボーンアンドジョイント(米国リューマチ専門医会)
7
無症状骨粗鬆症患者群
歯科治療で受診
検診施設
(保健所等)
独自に判断
歯科医院
最終診断及び治療を行う医療機関
歯科医院は骨粗鬆症対策のための新たな拠点となりうるが,
歯科医師の診断は主観的なため,客観的判断の手助けとなる
システムがあれば,非常に有効となる.
8
● 本技術は,歯科医師の主観的判断によらず,画像
処理技術により,パノラマX線写真の指標を自動的に,
再現性よく診断するものである.
(1)第1の新技術
パノラマX線写真上の下顎骨皮質骨の粗造化の程度
を自動的に判断して,骨粗鬆症の可能性を判定
(2)第2の新技術
パノラマX線写真上の下顎骨皮質骨の厚みを自動的に
測定して,骨粗鬆症の可能性を判定
9
第1の新技術
下顎骨皮質骨に
画像処理を施し,
得られた画像を
基に,骨粗鬆症
を判定する
二値化
粗造
皮質
細線化
正常
皮質
正常
判定
骨粗鬆症
判定
10
第2の新技術
下顎骨を通る大きな神経の
出口であるオトガイ孔(矢
印)を設定すると,自動的に
その下方の皮質骨厚み(赤
い実線間)を測定し,厚みの
閾値の上下により,骨粗鬆
症を判定
閾値以上
正常判定
閾値未満
骨粗鬆症
判定
皮質骨厚み
11
骨粗鬆症患者をスクリーニングする能力
● 第1の新技術(国際歯顎顔面放射線学会雑誌,印刷中)
感度は94〜97%,特異度は43〜45%で,開業歯科
医師による主観的判断(感度70〜80%)に勝る.
● 第2の新技術(国際骨粗鬆症財団雑誌掲載,2006年)
感度は87〜88%,特異度は56〜59%で,手動によ
る測定とほぼ変わらない.
● 医科領域で用いられているスクリーニング法の感度は
80〜90%,特異度は40〜60%であり,これらの手法
に比べて,遜色はない.
● このスクリーニング法により,無症状の骨粗鬆症患者
の約90%を見つけることが可能である.
12
従来技術とその問題点
骨粗鬆症患者のスクリーニングとして既に実用化されて
いるものには,年齢や体重といった項目を計算式に入れ
て,スクリーニングを行う質問表ベース法や,踵の骨を超
音波で測定しスクリーニングを行う方法等があるが,
無症状の骨粗鬆症患者が質問表ベース法に関心を
有しない
無症状の骨粗鬆症患者が超音波法を受けに検診施
設をわざわざ受診しない(検診率約5%)
等の問題があり,広く利用されるまでには至っていない.
13
新技術の特徴・従来技術との比較
● 歯科医院でのスクリーニングでは,歯科医師が無
症状の骨粗鬆症患者に医科への受診を勧めること
が可能となるため,多くの患者のスクリーニングが
可能となる.
● 従来の歯科医師の主観的判断では,診断にばら
つきが予想されたが,本新技術の使用により,すべ
ての歯科医院で客観的評価が可能となる.
● 本技術の適用により,パノラマX線写真撮影に係
る医療費を,骨粗鬆症予防対策にも用いることがで
きるため,骨粗鬆症性骨折に係る医療費を低減す
ることが可能となると予想される.
14
シミュレーション例
歯科医院でスクリーニングされた
100名の骨粗鬆症疑い患者
医療機関へ紹介
骨密度測定検査 約3000円
100名のうち,95人前後が真に骨粗鬆症(又は骨減少症)
日本の統計では,95名中1.3名が大腿骨骨折を起こす
可能性あり.この治療費に係る医療費は,約190万円.
よって約30万円(3000円×100)の検査で,約160万円
の医療費を1.3名の骨折予防に充てることができる.
15
想定される用途(1)
● 本技術の特徴を生かすためには,現在,全国の
歯科医院で広まりつつあるデジタルパノラマ装置に
適用することで,パノラマX線写真撮影後に,迅速に
骨粗鬆症スクリーニングを行う事ができる.
● 上記以外に,デジタルスキャナと組み合わせたシ
ステムを構築することで,これまでに撮影された多
量のパノラマX線写真をデジタル化して,スクリーニ
ングに役立てる事ができる.
● 骨粗鬆症は歯槽膿漏の増悪因子あるいは歯科用
インプラントの予後関連因子とも言われていること
から,これらの分野に展開も可能と思われる.
16
想定される用途(2)
● 下顎骨皮質骨が粗造化を呈する患者は,動脈硬
化も同時に呈しており,また心臓血管病変(心筋梗
塞,脳梗塞)を発症する高リスク患者である.そのた
め,これら疾患のスクリーニングにも有用となる可能
性がある.
(国際歯科研究学会雑誌掲載,2003年)
17
想定される業界
● 想定されるユーザー
国内外の一般開業歯科医院
歯科放射線科標榜開業医院(ブラジル等)
歯科部門を有する地域の中核病院,大学病院
地域歯科検診センター
● 想定される市場規模
国内外の歯科関連施設のデジタルパノラマ装置導入分
(現在の国内のデジタルパノラマ装置普及率は約20%)
デジタルスキャナ一体型の装置を必要とする開業歯科医
院,中核病院,大学病院及び歯科検診センター導入分
18
実用化に向けた課題
● 現在,第1と2の新技術を統合し(未公開),間違って
病気と判断する割合を,従来のスクリーニング法より低
減(20%前後)することが可能なところまで開発済み.し
かし,実際のデジタルパノラマ装置上に搭載した時に,
画像処理が適正に行われるかが未解決である.
● 今後、デジタルパノラマ装置に搭載した場合について
実験データを取得し,歯科医療の現場に適用していく場
合の条件設定を行っていく.
● 実用化に向けて,骨粗鬆症リスクを数段階の表示にで
きるよう技術を確立する必要もあり.
19
企業への期待
● デジタルパノラマ装置への搭載における画
像処理の適正化については,原画像デジタ
ルデータへの直接の適用の技術により克服
できると考えている.
● デジタル画像処理の技術を持つ,医療関連
企業との共同研究を希望.
● 健康寿命増進に関わる予防医学分野への
展開を考えている企業には,本技術の導入
が有効と思われる.
20
本技術に関する知的財産権
第1の新技術
発明の名称
パノラマX線画像を用いた骨粗鬆症診断支援装置
出願番号
特願2003-001395(特許第3964795号)
出願人
独立行政法人科学技術振興機構
発明者
田口 明,中元 崇,浅野 晃
21
本技術に関する知的財産権
第2の新技術
発明の名称
歯科X線画像を用いた骨粗鬆症診断補助装置
出願番号
特願2004-304855
出願人
国立大学法人広島大学
発明者
浅野晃,田口明,中元崇,谷本啓二,
アグス ザイナル アリフィン
22
お問い合わせ先
【技術内容について】(第1,2の発明とも共通)
広島大学大学院工学研究科
情報工学専攻 浅野 晃(あさの あきら)
電話:082ー424ー6476 FAX:082ー424ー6476
E-mail:asano@ mis.hiroshima-u.ac.jp
【ライセンスについて】(第1の発明) 権利者窓口
科学技術振興機構・技術移転促進部・知的財産活用
推進課 小島 和夫(こじま かずお)
電話:03-5214-8477 FAX:03-5214-8477
E-mail:[email protected]
23
お問い合わせ先
権利者窓口
【ライセンスについて】(第2の発明)
広島大学産学連携センター知財部
植田 栄治(うえだ えいじ)
電話:082ー424ー5594 FAX:082ー424ー6133
E-mail:ueda05@ hiroshima-u.ac.jp
【連携について】
あいち健康長寿産業クラスター推進協議会
(財)科学技術交流財団
クラスター・マネージャー 小坂 岑雄(こさか みねお)
電話:052-231-1477 FAX:052-231-5658
E-mail:cho-ju@ astf.or.jp
24
Fly UP