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脊椎精髄外科 1. 2013 年度報告 脊椎脊髄外科開設以来、年間手術件数
脊椎精髄外科 1. 2013 年度報告 脊椎脊髄外科開設以来、年間手術件数は順調に増加してきた。しかし疾患別の内訳を見ると、脊椎変性 疾患は 2011 年をピークに若干減少傾向にある。一方、末梢神経障害は 2012 年の橘先生の就任以降急速に 増加してきた。その他の疾患(腫瘍、外傷、奇形など)は基本的に大きな変化を示していない。末梢神経 障害の手術件数増加が、変性疾患の減少を補っていると考えられる。入院予約患者数も減少傾向を示して おり、実質的な手術数は減少傾向にあると考える。現在週 9 枠(うち1枠は局所麻酔)、年間 350 件を超え る手術を行っているが、当科のキャパシティーを考慮すると maximum の数値であろう。時間的にも体力的 にもこれ以上頑張ることは難しい状況の中で、現在の診療の質、量を維持し、さらに今後の発展につなが る工夫が必要である。 スタッフ数の推移であるが、2007 年新設当初は久保田、譲原、石井の 3 名でスタートした。2008 年 6 月 に石井が抜け 2 名体制の時期を経て、一時的に下村(神戸大、整形)が加わり、2009 年は久保田、譲原、 水野(2011.11 退職)、光山(2011.09 退職、後任で都築が派遣)の 4 名で運営、2010-11 年は橋本(2011.12 退職)、安藤(2012.04 退職)が加わり 6 名で運営している。この時期は手術、外来ともに比較的余裕を持 った運営が可能であった。2012 年は橘、久保田、譲原、清水、三浦の 5 名体制、2013 年は橘、久保田、譲 原、相山、竹林の 5 名体制での運営となった。2014 年も現段階では 5 名体制での運営になりそうな見通し である。スタッフの増員は緊急の課題である。指導医、認定医が 3 名いることは強みであるが、若手ドク ターを直接指導し、次の世代を任せることができる中間層がいない。リクルートを行う中で、当院の問題 点も明らかになってきているが、いずれも簡単に解決できる問題ではない。スタッフの増員、特に世代交 代を見据えたリクルート活動は、最も優先度の高い問題と考えている。 当科では地域医療圏を超えて、遠方より来院される患者さまの数は年年増加している。今後手術件数を 増やすためには、京橋クリニックの運用は当科にとって必須である。京橋クリニックでの診療スタートは 順調であった。橘先生に毎週金曜日の外来をお願いしているが、久保田、譲原先生は月に一度のみである。 現在予約枠はいっぱいであり、外来枠数を増やすことができればさらに増加する可能性がある。残念なが ら外来を担当する医師は増加しないため、その分鴨川外来、幕張外来が犠牲になることになる。現段階で も予約が 2-3 ヶ月先になることがあり、また全てのオープン患者さまを診察できるだけの余裕がない。鴨 川、幕張外来の患者さまにご迷惑をおかけしないために、何らかの配慮が必要である。 昨年度も定期的なカンファレンス、Team STEPPS の運用などを通して、コメディカルスタッフとは積極 的な協力関係を築いてきた。昨年に引き続き、病棟カンファレンス、Team STEPPS の運用などを通して良 い協力関係を維持している。病棟運営会議を行い、医師指示のルールなどを話し合った。夏のBBQや冬 のクリスマスパーティーにはご家族も含めて多くの参加者があった。 2. 2014 年度計画 外来受診者、手術件数の現状分析: 安房、鴨川医療圏は 20 万人程度の人口であり、本来脊椎外科手術適応となる患者総数は多くはない(年 間 180 名程度と推定している)。内視鏡手術への関心などもあり、千葉労災病院、帝京大学ちば総合医療セ ンター、君津中央病院も手術患者が増加しており、医療圏を超えての手術希望者が当初の予定ほど増えて いない。6 名体制の時は比較的余裕のある外来運営が可能であったが、現状は久保田、譲原の外来が再診 患者さまのために飽和状態にある。新患は若いドクターに任されることが多いが、医療圏を超えて新患を 増やすのはなかなか困難であろう。京橋クリニックは遠方からの患者さまを受け入れるために重要である。 残念ながら外来担当医が増加していないため、その分鴨川、幕張外来が犠牲になっており、手術総数とし ては増加していない。 以下のような対策を検討している。 1) 地域医療連携:定期的な医師会の講演、医師会との交流、患者紹介システムの構築 脊椎脊髄外科新設当初は、医師会の講演会、新年会の出席、挨拶回りなどを行い、積極的に医師会の先 生方と交流を図ってきた。ここ数年は年賀状の挨拶のみで、直接お会いする機会を設けていない。手術患 者さまの紹介、術後経過観察の依頼など、医師会の先生方と良好な関係を保つことは重要と考える。定期 的に講演会を行い、地元医師会の先生方との交流を図ってゆきたい。メドトロニックが圧迫骨折の患者紹 介システム構築を提案してくれている。まずはメドトロと相談しながら、興味をもっていただける医師会 の先生方に講演やパンフレットなどを通して紹介してゆきたい。骨粗鬆症の治療も含めて、膠原病内科と 一緒に進められればと思う。 2) 病院内医療連携:他科との協力、若手医師の教育(レクチャー) 当科では腰痛、しびれなど common symptom を扱っており、診療の対象となる患者数はきわめて多い。一 方、当科のキャパシティーを考えると、全ての急性腰痛やしびれに対応することは不可能である。関連す る診療科に、初診の診察や保存的治療で落ち着いている患者さまの経過観察をお願いすることができれば、 当科の外来ももう少し効率的に運営できる可能性がある。膠原病内科に「腰痛外来」を担当していただい ている。カンファレンスなどでコミュニケーションをとりながらうまく運用してゆきたい。しびれの患者 さまの screening を総合内科、または神経内科と協力して行えれば理想的であるが、直ちに実現するのは 難しそうである。 コメディカルスタッフへの勉強会には力を入れてきたが、研修医や関連診療科医師への講演は今まで企 画したことが無かった。当科で扱っている疾患を理解してもらうためにも、若いドクターを対象とした勉 強会などを計画する必要がある。 3) 京橋クリニック、幕張クリニックの活用 京橋クリニックは遠方からの患者を受け入れるために重要である。昨年度の京橋クリニックのスタート は良好であった。遠方からの新患を増加させるために、京橋クリニック、幕張クリニックを積極的に活用 してゆく。 4) ホームページの充実、パンフレットの改訂 ホームページをみて遠方から受診される患者様も少なくない。また入局を希望される若いドクターへの アピールのためにも、魅力あるホームページの作成は重要であると考える。当科新設当初に時間をかけて ホームページを作成しているが、その後定期的な up load が行われていない。 また新しい手術手技が導入されているにもかかわらず、術前説明様のパンフレットの改訂ができていな い。時間的にはかなり厳しいが、優先順位を決めそれぞれの改訂に着手したい。 3. 2013 年業績報告 【論文など】 1) Mitsuyama T、 Kubota M、 Yuzurihara M、 Mizuno M、 Hashimoto R、 Ando R、 Okada Y The pitfalls in surgical management of lumbar canal stenosis associated with rheumatoid arthritis. Neurol Med Chir (Tokyo) 2) 久保田基夫、黒川 53 (12):853-860、2013 龍、菅原 卓 前方手術が躊躇される不安定性のある頚椎症 標準治療と明日の医療を考える誌上フォーラム(第 3 回) 脊髄外科 27 (2): 130-138、 2013 【学会・研究会発表】 1) 久保田基夫、清水孝彬、譲原雅人、橘滋國 癒着性くも膜炎の病態と治療について 第 42 回 脊椎脊髄病学会 (2013.04.25-27、沖縄) (一般口演) 2) 久保田基夫、清水孝彬、譲原雅人、橘滋國 なぜ failed back は発生するのか? 第 42 回 脊椎脊髄病学会 -腰椎変性疾患日常診療における pitfalls- (2013.04.25-27、沖縄) (一般口演) 3) 久保田基夫、清水孝彬、譲原雅人、橘滋國 脊髄くも膜嚢胞の外科的治療 第 42 回 脊椎脊髄病学会 (2013.04.25-27、沖縄) (一般口演) 4) 清水孝彬久保田基夫、譲原雅人、橘滋國 特発性硬膜外血腫の治療経験 第 42 回 脊椎脊髄病学会 -手術群と非手術群の検討- (2013.04.25-27、沖縄) (ポスター) 5) 光山哲滝、久保田基夫、佐々木寿之、譲原雅人、平孝臣、岡田芳和 術中モニタリングとしての旧海綿体反射の有用性と限界 第 20 回 脊椎脊髄手術手技学会 (2013.09-06-07、名古屋) (一般口演) 6) 久保田基夫、譲原雅人、三浦 頚椎固定術における創意と工夫 第 28 回 脊髄外科学会 勇、清水孝彬、光山哲滝、橘滋國 -頚椎固定術の後方視的検討- (2013.06.06-07、名古屋) (一般口演) 7) 久保田基夫、譲原雅人、三浦 化膿性椎体炎の外科的治療 第 28 回 脊髄外科学会 勇、清水孝彬、橘滋國 -より根治性を高めるために- (2013.06.06-07、名古屋) (一般口演) 8) 譲原雅人、三浦 勇、清水孝彬、久保田基夫、橘滋國 腰仙移行部の再発性化膿性椎体炎に対する外科治療の経験 第 28 回 脊髄外科学会 (2013.06.06-07、名古屋) (一般口演) 9) 譲原雅人、三浦 勇、清水孝彬、久保田基夫、橘滋國 頚椎前方到達法における内側アプローチの検討 第 28 回 脊髄外科学会 (一般口演) (2013.06.06-07、名古屋) 10) 光山哲滝、久保田基夫、譲原雅人、岡田芳和 頚椎後縦靱帯骨化症に対する椎弓形成術の適応と限界 第 28 回 脊髄外科学会 (2013.06.06-07、名古屋) (ポスター) 11) 光山哲滝、橘滋國、佐々木寿之、平孝臣、久保田基夫、岡田芳和 前骨間筋神経麻痺を呈した拘扼性正中神経障害の手術例 第 28 回 脊髄外科学会 (2013.06.06-07、名古屋) (ポスター) 12) 竹林研人、相山仁、譲原雅人、久保田基夫、橘滋國 炎症反応陰性であった crowned dens syndrome の 2 症例 第 111 回 関東地方会 (2013.09-28、東京) (一般口演) 13) 竹林研人、久保田基夫、相山仁、譲原雅人、橘滋國 化膿性椎体炎の外科治療 第 72 回 -前方・側方アプローチ- 脳神経外科学会総会 (2013.10.16-18、横浜) (ポスター) 14) 久保田基夫、竹林研人、相山仁、譲原雅人、橘滋國 なぜ failed back は発生するのか? 第 72 回 脳神経外科学会総会 -腰椎変性疾患日常診療における pitfalls- (2013.10.16-18、横浜) (一般口演) 15) 譲原雅人、竹林研人、相山仁、久保田基夫、橘滋國 頚椎前方到達法における内側アプローチについて 第 72 回 脳神経外科学会総会 (2013.10.16-18、横浜) (ポスター) 16) 光山哲滝、久保田基夫、譲原雅人、岡田芳和 頚椎後縦靱帯骨化症に対する手術法の検討-前方あるいは後方手術での再手術あるいは神経症状悪化 例から- 第 72 回 脳神経外科学会総会 (2013.10.16-18、横浜) (ポスター) 17) Yuzuirihara M、 Takebayashi K、 Aiyama H、 Kubota M、 Tachibana S Medical approach to anterior surface of cervical spine The Asia Pacific Cervical Spine Society Meeting 2013 (2013.08-23、 Sapporo) (oral) 18) Yuzuirihara M、 Takebayashi K、 Aiyama H、 Kubota M、 Tachibana S Retroperitoneal approach for lumbosacral pyogenic spondylomyelitis The Asia Pacific Cervical Spine Society Meeting 2013 (2013.08-23、 Sapporo) (oral) 19) 久保田基夫 脊髄くも膜病変の外科的治療 第 20 回 脊椎脊髄手術手技学会 (2013.09-06-07、名古屋) (特別口演) 20) 譲原雅人、竹林研人、相山仁、久保田基夫、橘滋國 頚椎手術開創時の工夫 第 20 回 脊椎脊髄手術手技学会 (2013.09-06-07、名古屋) (一般口演) 21) 橘滋國 拘扼性末梢神経障害診断の Tips 第 28 回 -患者語の翻訳- 脊髄外科学会(2013.06.06-07、名古屋) (特別講演) 22) 譲原雅人、竹林研人、相山仁、久保田基夫、橘滋國 硬膜骨化を伴った胸椎黄色靱帯骨化症手術について 第 48 回 脊髄障害医学会 (2013.11.14-15、福岡) (一般口演) 23) 宮越浩一、久保田基夫、譲原雅人、橘滋國 頚髄損傷急性期症例における ASIA motor score と上肢関連 ADL の関係 第 48 回 脊髄障害医学会 (2013.11.14-15、福岡) (一般口演) 24) 久保田基夫、竹林研人、相山仁、譲原雅人、橘滋國 後縦靱帯骨化症における臨床症状悪化の要因について 第 48 回 脊髄障害医学会 (2013.11.14-15、福岡) (一般口演) 25) 久保田基夫、竹林研人、相山仁、譲原雅人、橘滋國 化膿性椎体炎の外科的治療の役割 第 48 回 脊髄障害医学会 (2013.11.14-15、福岡) (一般口演) 26) 譲原雅人、竹林研人、相山仁、久保田基夫、橘滋國 胸椎黄色靱帯骨化症手術患者の症例検討 第 48 回 脊髄障害医学会 (2013.11.14-15、福岡) (一般口演) 27) 安藤亮、沼田理、杉山健、伊東千秋、伊達裕昭、久保田基夫 小児脊椎外科治療の工夫 第 43 回 千葉大学脳神経外科医会研究会 (2013.11.17、千葉) (一般口演) 28) 相山仁、久保田基夫、竹林研人、譲原雅人、安藤亮、橘滋國 脊髄炎の診断でステロイド治療が一定の効を呈し、再燃寛解後 2 年経過で診断された脊髄円錐部動静 脈瘻の小児例 第 54 回 Spinal Cord Club (2013.12.06、東京) 29) 相山仁、久保田基夫、竹林研人、譲原雅人、橘滋國 頚椎重複椎弓の一症例 第 112 回 関東地方会 (2013.12.17、東京) 【主催研究会】 第 10 回 房総脊椎脊髄手術手技研究会 2013 年 7 月 20 日 (鴨川) テーマ「様々なアプローチ」 【社会貢献・役員など】 久保田基夫: 日本脊髄外科学会理事 日本脊髄障害医学会評議員 日本脊椎脊髄手術手技学会理事、査読委員 房総脊椎脊髄手術手技研究会 (BOSST) 代表世話人 Spinal Cord Club 世話人 「Neurologia-medico-chirurgica」査読委員 「脊髄外科」査読委員 文責 久保田基夫