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モータ開発者が語る 実用例にみるSRモータ応用機器開発
モータ開発者が語る 実用例にみる SR モータ応用機器開発 最終回 トラクションモータとしての SR モータの応用 連載 日本電産 見城尚志* NidecSRDrives SteveRandall** NidecSRDrives MikeTurner*** *けんじょう たかし:技術顧問 **スティーブ・ランダル:Head of Machines Technology ***マイク・ターナー:Technical Director 本連載の最終回となる今回は,SR モータの電 はそれから 10 余年後,1853 年の出来事である。 気自動車用トラクションへの応用を取り上げたい。 その後,モータ技術が進歩するなかで SR モー 今回紹介する事例は,1980 年代初期のトラック, タによる車両牽引は忘れ去られ,蒸気機関車はま 大型オフロードローダ,市街地での環境対応バス, ず直流モータを使う電気機関車に置き換わり,や そして全地形万能車である。原稿の骨子を担当し がて直流モータは交流モータに置き換わってきた。 たのは Steve Randall であり,見城は Mike Turner 1960 年代の後半,デビッドソンの電気機関車 の意見も汲みながらの翻訳編集を担当した。 から 125 年を経たころ,SR モータが自動車の駆 動モータとして適した特性を持つことを知らしめ 長い歴史をもつ SR モータの トラクション利用 るべく情熱をもって行動した研究者がポツポツと 現れ始めた。この背景には次の 2 つの要素があっ た。 (1)サイリスタという電力用半導体素子の発達に よって機械的なスイッチに代わって,火花のな SR モータは,鉄道史の中でも特異な意味をも いモータの駆動制御が可能になった。 っている。SR モータが発明されたのは 1839 年ご (2) SR モータの凸極構造と集中巻とハーフブリッ ろのことだが,これは鉄道に試用された。図 1 は ジによる電流制御の採用によって,広い速度領 その様子を伝える資料であるが,スコットランド 域をカバーして,トルクは低速では高く,高速 のエディンバラとグラスゴーのほぼ中間で電気機 関車としての試験運転されたのが 1842 年である。 では自動的に下がる特性があることがわかった。 こうした特性は電気機関車への適用にとってた これは有名なスティーブンソンの蒸気機関車ロケ いへん有利なものである。というのも,蒸気機関 ット号から遅れること 13 年だったが,電気機関 車に代わった電気機関車に最初に使われたのは直 車は蒸気機関車の敵だと脅威を感じた人々によっ 流直巻モータであったが,依然として機械的なス て破壊されたと言われている。日本への黒船来航 イッチを使うために火花の発生を皆無にできず, 第 58 巻 第 2 号(2014 年 2 月号) 59