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波打ち際でお城がつくれるのはなぜ? − 土の強さと水
波打ち際でお城がつくれるのはなぜ? − 土の強さと水 皆さんは夏に家族や友達と海水浴に行ったとき、砂浜で砂山やトンネル、お城を作ったことが あると思います。さて、お城をつくるとき、どんな砂を使って、どんな場所で作りますか? 砂 が白っぽく乾いている場所(皆さんがパラソルをたてて敷物を敷き、日光浴をしたりお弁当を食 べたりするところ)では、お城やトンネルはうまく作れませんよね。そう、波が寄せては返す波 打ち際で、お城を作りますよね。これは、波打ち際の砂は少し水を含んで湿っていて、そのこと が都合がよいからです。でも、もちろん湿りすぎた砂では、うまくトンネルは作れませんね。波 打ち際を 10 cm ぐらい掘っていくと水分が増えてきますが、このような水を充分に含んだ砂だけ ではお城はうまく作れませんね。それから、出来上がったお城が少しずつ水を吸ってしまって、 崩れてしまうこともよくありますよね。つまり、砂でお城を作るには、水が多すぎても少なすぎ てもいけなくって、ちょうど良い量の水が入っていないとダメなんです。この「少し水を含んで いる」ことが、砂の粒同士を引き付けて、砂の塊を強くする役目をしているんです。このことを 実際に観察してみましょう。 【実 験】 1. 準備するもの (1) 同じ大きさのコップ 6 つ (2) 乾いた砂 (プラスチック製で充分) (砂浜の砂や、砂場の砂でよいでしょう) (3) すりこぎ棒など、突き固めのための棒 (必要なら) (4) 水(コップで合計 1 杯程度) 2. 実験の準備 (1) 6 つのコップのうち、3 つのコップに乾いた砂をそれぞれいっぱいまで入れて下さい。3 つの コップにはそれぞれ同じくらいの量の砂を入れるようにして下さい。料理などで使う重さ秤 図 1 実験手順を示す図(左から、3 つのコップに砂を入れたところ、3 つのコッ プに水を入れたところ、砂と水を混ぜているところ、それぞれ団子を作っ たところ、など) があれば、それを使って同じ量の砂を測った方が正確ですが、秤が無くても、同じ詰め方で 詰めてやれば(例えば、砂を入れたコップをそれぞれ同じやり方で机にトントンと当ててや れば)良いでしょう。 (2) 残った 3 つのコップには、水を入れて下さい。水の量はコップによって変えるようにします。 一つ目のコップにはコップ全体の 8 分の 1 ぐらい、二つ目のコップは 8 分の 2 ぐらい、三つ 目のコップには 8 分の 3 ぐらいまで、それぞれ水を入れて下さい。 (3) 次は、3 つのコップに入れた水を、それぞれ砂の入った 3 つのコップに入れて、砂と水を混ぜ て下さい。うまく混ざったら、砂をコップから出して下さい。 3. 実験の開始 さて、水の量の違う砂が 3 つできましたが、どの砂で団子をうまく作ることができるでしょう か? 団子を作ってみて下さい。コップの中に砂を入れて、すりこぎ棒などで突き固めてもよい でしょう。 【実験結果】 皆さんは、どの砂でうまく団子を作ることができましたか? (1) 8 分の 1 の水を含んだ砂 (2) 8 分の 2 の水を含んだ砂 (3) 8 分の 3 の水を含んだ砂 山口県の豊浦というところでとれる砂で実験すると、(2)の砂が最も固い団子を作ることができ ます。(1)の砂だと少しボロボロするでしょう。(3)の砂ですと、少しドロッとするかもしれません。 (a) モールドに砂を入れて突き固める (b) モールドを開けてみるところ (c) 水が多すぎると、砂が崩れてしまう (d) ちょうどよい水分だと砂が立つ 写真 1 モールド(鋳型枠)を使って実験してみた例 つまり、水が多すぎても少なすぎてもいけなくて、ちょうどよい水の量があるということがわか ります。 【実問題との対応】 実験で確かめた現象は、専門の言葉では「サクション」といいます。サクションを説明するの はちょっと難しいのですが、ここでは「水が糊の役目をする」と言い換えてもよいでしょう。氷 の入ったジュースをコップに入れてコースターの上にしばらく置いた後にコップを持ち上げよう とすると、コースターがコップに引っ付いたようになって一緒に持ち上がることがありますよね。 これは、コップが汗をかいてしまってコップとコースターの間に水ができ、その水がサクション をもつ(糊の役目をする)からです。コップとコースターの間に水がなければコースターは持ち 上がりませんし、反対にコップとコースターの間の水の量が多すぎてもコースターは持ち上がり ません。砂の場合も同様に、適量の水があると「サクション」の作用で砂の粒子同士が強く引き 付けあって強くなる訳です。 「少し湿った波打ち際は砂が固いので走りやすいけれども、乾いた砂 の上は(砂が固くないので)足をとられて走りにくい」というのも、このメカニズムです。 サクションが働いていて強度の高い(強い=固い)砂であっても、大雨が降って水分が増えて 図 2 氷水(ジュース、コーヒー)をコップに入れておいておくと、コップの外側 に水滴ができる。このコップを持ち上げようとすると、コースターも一緒に 持ち上がってしまう。 しまうとサクションがなくなって弱く(やわらかく)なってしまい、地すべりのようなことがお こる可能性があります。このように、土の強さには「水」はとても重要なことがわかります。