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その1(PDF:1659KB)
∼畜産経営の安定化に向けて∼ 飼料自給率向上のための事例集 平成20年 3月 中国四国農政局 畜産課 ∼ は じ め に ∼ 最近の畜産をめぐる情勢は、アメリカやブラジルにおけるバイオエタノール生産向け需要の増加から、 飼料の主原料であるトウモロコシ価格が高騰しており、原油価格高騰と相まって輸入飼料に依存している 畜産経営体においては大きな影響を及ぼすことが懸念されます。 このような状況下で、かつてないほど飼料自給率の向上に関心が寄せられており、飼料増産の取組を進 める上で絶好の機会となっております。 このため、 「飼料自給率の向上による畜産経営の安定化に向けた意識の高揚」を図ることを目的として、 今回、管内各県から推薦を受けた高水準な粗飼料自給率により経営を行っている畜産経営体(酪農・肉用 牛)について、その給与飼料状況等を調査することにより、粗飼料自給率向上のための条件整備や地域の 取組等を紹介することとしました。 ひと口に高水準な粗飼料自給率の畜産経営体といっても、例えば「転作田を活用した粗飼料(飼料稲や イタリアンライグラス等飼料作物)自給」、「河川敷や未利用地等の野草を利用した粗飼料自給」、「飼料 生産受託組織(コントラクター)を利用した粗飼料自給」、「放牧を組み入れた高水準な粗飼料自給」等 地域によって特色のある様々な取組が行われており、その事例を関係各県関係者ご協力の下、冊子として 取りまとめたところであります。 本冊子で紹介した事例がヒントとなり、今後の畜産経営において自給飼料生産(増産)の取組へ向かう 契機となれば幸いです。 最後に、本冊子の作成に当り、ご協力いただいた関係各位に対し、厚く御礼申し上げます。 中国四国農政局生産経営流通部 畜産課 目 次 野草等を 利用して 粗飼料自給を 行っている 事例 大規模な 飼料生産基盤を 活用して 粗飼料自給を 行っている 事例 (岡山県真庭地域) 放牧を 取り入れて 粗飼料自給を 行っている 事例 耕畜連携によ り 粗飼料自給を 行っている 事例 飼料生産組合等を 活用して 粗飼料自給を 行っている 事例 コン トラ クターを 活用して 粗飼料自給を 行っている 事例 (岡山県笠岡地域) 池田 牧場 (肉用牛繁殖経営) P1 金本 牧場 (酪農経営) P3 北谷 牧場 (肉用牛一貫経営) P5 S 牧場 (肉用牛一貫経営) P7 長恒 牧場 (酪農経営) P9 N 牧場 (酪農経営) P11 丸山 牧場 (酪農経営) P13 美甘 牧場 (酪農経営) P15 石賀 牧場 (肉用牛繁殖経営) P17 稲田 牧場 (肉用牛繁殖経営) P19 上城 牧場 (肉用牛繁殖経営) P21 おおばたけ牧場 (肉用牛繁殖経営) P23 増野 牧場 (肉用牛繁殖経営) P25 松崎 牧場 (酪農経営) P27 入江 牧場 (酪農経営) P29 岡田 牧場 (酪農経営) P31 小川 牧場 (肉用牛繁殖経営) P33 藤井 牧場 (肉用牛繁殖経営) P35 小原 牧場 (酪農経営) P37 希 望 園 (酪農経営) P39 高田 牧場 (酪農経営) P41 竹信 牧場 (酪農経営) P43 山中 牧場 (酪農経営) P45 Ⅰ 平成20年度 畜産公共事業体系図 P47 Ⅱ 平成20年度 飼料自給率向上関係非公共事業体系図 P48 < 参 考 > 飼料の分類 P49 池 田 牧 場 池田氏は、岡山県津山市で100頭規模の肉用牛繁殖経営をさ れています。 津山市の市街地で肉用牛繁殖経営を行っていましたが、宅地・混住化が進んだ ため、規模拡大を目指して経営移転されました。 移転した牧場の周りで田畑を購入し、米及び飼料作物の生産をしていましたが、口コミで離農した 耕種農家の土地を飼料生産基盤として利用することとなりました。 当初はバンカーサイロでサイレージ調製をしていましたが、ロールベー ラーの導入がきっかけとなり、それまで以上に粗飼料の自家生産を行うよ うになりました。(ロール体系は牧場内での取り扱い、必要量確保が比較 的容易に行える利点があるとのこと。) 自給している粗飼料は・・・ 畜舎内部 自家水田は全て飼料生産ほ場 とし、借地は状況に合わせ飼料 生産ほ場若しくは稲作ほ場とされ ています。 イタリアンライグラス(13∼14ha)、ソルコ ゙ー(26∼28ha)、 野草(工業団地用地より17.5ha)、稲わら(14ha) ロールサイレージ ポイント 採草地 粗飼料自給率 給与飼料全体にみる各飼料ごとのTDN割合 約93% 購入乾草のチモシーは、子牛に食べさせているだけな ので、割合からみれば、かなり少なくなります。 購入乾草(チモ シー) 約3 % 自給粗飼料 約79% 配合 飼料 約18% 池田牧場が行っている 飼料の給与実態から、大 まかなTDNを求めて、飼 料の構成を農政局で数値 化しました。 肥育部門は無いの で、粗飼料中心の飼 料構成となっていま す。 自給粗飼料のうちわけ イタリアン ライク ゙ ラス 約20% 野草 約23% ソルゴー 約2 4 % 工業団地用地の除草作業で発生 した「雑草」も、飼料として積極的に 利用されています。 稲わら 約33% 稲わらは たい肥交換 稲わらも積極的に活 用されています。 た い 肥 作付けを依頼されているほ場では、畦畔の草刈りも任されているので、管理が難しいそうです。 過去に小規模移動放牧を実施されたようですが、放牧地が山奥かつ水の便が悪い所だったため、現在は中止し ています。放牧看視も大変なので、放牧するより自給飼料を作った方が良いとお考えです。 金 本 牧 場 金本氏は、愛媛県内子町内で経産牛(乾乳含む)23頭、乳用育 成牛11頭の規模で酪農経営をされています。 河川敷の野草利用は20年前より始めています。乳量・乳質 を追求すると同時に、低コストでの生乳生産を心がけていま す。 自給している粗飼料は・・・ 片道1時間以上かけて、河川敷 の野草を刈取り(手作業)されて います。 ポイント 河川敷野草(60㌧)、イタリアンライグラス(1.4ha) 収穫に時間と労力は掛るものの、牧草収穫専用機械が必要ない作業 体系であること及び、粗飼料を100%自給できていることに満足されて います。 野草乾草 畜舎内部 配合飼料 粗飼料自給率 約100% 給与飼料全体にみる各飼料ごとのTDN割合 自給粗飼料 約19% TDNの構成は、配合 飼料を中心としたもので すが、粗飼料の購入は ありません。 配合飼料 約8 1 % 金本牧場が行って いる飼料の給与実態 から、大まかなTDN を求めて、飼料の構 成を農政局で数値化 しました。 自給粗飼料のうちわけ 稲わら 約1 3 % 野草 約70% イタリアン ライグラス 約1 7 % 河川敷の野草や、稲わらを活用 されて、粗飼料の完全自給を実現 しておられます。 河川敷の野草利用は今後も続け、粗飼料を購入することは考えておられません。 稲わらは たい肥交換 た い 肥 北 谷 牧 場 北谷氏は、徳島県吉野川市内で肉用繁殖牛60頭、肉用育成牛 69頭、肥育牛150頭の規模で肉用牛一貫経営をされています。 吉野川堤防・河川敷の野草を「飼料」として利用する権利を得るために、管轄の 河川事務所と粘り強い交渉をされました。 自給している粗飼料は・・・ 吉野川堤防・河川敷野草 年間約200t 以前から稲作と畜産業の複合経営をされており、野草収集を始める前から家畜排せつ物を処理、たい肥化してほ 場に環元する「草作り」は当たり前のこととして取り組んできました。 肥育部門の拡大に必要な粗飼料は、吉野川堤防や河川敷の野草を利用されています。 ポイント 野草は、品質が一定しないものの、様々な草種による絶妙な微量要素バランスが影響するのか、給与す る牛の成育はすこぶる良いそうです。 出荷直前の肥育牛 牛舎内部 野草乾草 粗飼料自給率 約94% 給与飼料全体にみる各飼料ごとのTDN割合 購入乾草 約1% 北谷牧場が行っている 飼料の給与実態から、大 まかなTDNを求めて、飼 料の構成を農政局で数値 化しました。 配合飼料 自 給 粗飼料 配合飼料 前期 約1 6 % 約10% 配合飼料 後期 約7 0 % 配合飼料 子牛 約3% 自給粗飼料のうちわけ 野草 100% コン ハ ゚ クト ベー ル の取り扱いは手作業 で労力が掛かりま す が、乾草舎で容易に 保管が可能です 。 肥育農家が子牛にチモシーの給与を要求し てくるため、自家肥育しない子牛には輸入チ モシーを給与されています。 肥育牛の頭数自体が多いた め、配合飼料の割合も高くなっ ていますが、子牛以外の繁殖 牛・肥育牛の粗飼料は全て「野 草」です。 自給している粗飼料は全て吉野 川堤防・河川敷の野草でまかなっ ています(作業は転草・集草・梱 包)。 今後、本格的に増頭を計画されており、畜舎も増築中です。飼 料費の低減を図るため、「稲わら収集」を前向きに検討されてい ます。 S牧 場 S氏は、徳島県阿波市内で肉用繁殖牛20頭、肉用育成牛13頭、肥育 牛34頭の規模で肉用牛一貫経営をされています。 阿波市内を流れる吉野川河川敷は面積も広く、古くからその中洲は、「潜水橋」で繋がっ た一大園芸地帯(過去には人家もあったが、現在は畑のみ)となっています。 自給している粗飼料は・・・ 吉野川潜水橋と中洲 イタリアンライグラス(3ha)、野草3回刈(3haのべ9ha)、 稲わら(5ha) もともとF1の肥育をしていましたが、BSE発生を 契機に、子牛価格・枝肉価格の乱調を予測し、肉 用牛一貫経営へ移行されました。 吉野川河川敷の占有許可を得て、イタリアンラ イグラスの収穫後に野草の3回刈りを行い、粗飼 料として利用されています。 ポイント 河川敷の採草地ではギシギシ等の強害雑草が混入せず、野草の「様々な草種による絶妙な微量要素バラ ンス」や「低窒素」が功を奏してか、受胎率等も良いそうです。 野草サイレー ジ たい肥置き場 河川敷内の採草地 粗飼料自給率 約100% 給与飼料全体にみる各飼料ごとのTDN割合 配合飼料前期 約7% 自 給 粗飼料 約1 9 % S牧場が行っている飼 料の給与実態から、大ま かなTDNを求めて、飼料 の構成を農政局で数値化 しました。 配合 飼料 子牛 約12% 配合飼料 後期 ふすま 約5% 約5 4 % 近隣の園芸農家か ら、春はニンジン、冬 はサツマイモ等のく ず野菜をもらっていま す。栄養価が濃厚飼 料並なので給与方法 は注意されているそう です。 くず野菜 約2% 自給粗飼料のうちわけ イタリアン 野草 ライク ゙ ラス 約3 9 % 約14% 稲わら 約47% イ タリアン ラ イ グラ ス 発芽直後 稲わらは たい肥交換 近隣の園芸農家も たい肥を利用しま す 成牛だけではなく、子牛に も良質な野草サイ レージ を 与えています。 地域の園芸農家から春はニンジン、冬はサツマイモのく ず野菜をもらい、たい肥を供給する等協力関係を築かれ ています。 肥育部門においては、配 合飼料の給与は欠かせま せんが、「くず野菜」なども 工夫して給与されていま す。 た い 肥 県外の仲間(畜産農家)との情報交換により、 有益な経営を模索されています。 長 恒 牧 場 長恒氏は、岡山県真庭市内で経産牛(乾乳含む)40頭、乳用育 成牛22頭の規模で酪農経営をされています。 蒜山地域には古くから、村持ち(現在の「市有地」にあたる) の土地で採草が出来る制度があり、代々粗飼料生産を継続 されています。 ポイント 長恒氏の父の代はジャージー種で酪農をされていましたが、自分の代からホルスタイン種に転換しています。それ 以降、畜舎をホルスタイン規格にされています。 自給している粗飼料は・・・ チモシー(20ha)、リードキャナリー(6ha) 畜舎内部 敷料用圧縮かんなくず ロールサイ レージ 給与飼料全体にみる各飼料ごとのTDN割合 粗飼料自給率 約84% 購入乾草 アルファルファ・チモ シー等 約8 % ビ ート パルプ 綿実 約1% 約10% 自給粗飼料 約40% 給与飼料の約 4割を自給粗飼 料でまかなわれ ています。 配合飼料 約2 7 % 大豆 圧ぺん 長恒牧場が行って いる飼料の給与実 態から、大まかなTD Nを求めて、飼料の 構成を農政局で数 値化しました。 自給粗飼料のうちわけ チモシー 約7 7 % 約2% コーン フレーク 約12% リード キャナリー 約23% 大規模な面積で、良質な牧草を作ることが出来るため、 同じ真庭地域のジャージー牛の酪農家と同様、高い自給 率を保っています。 全量、自家 採草地に 投入 尿は分離して 共同たい肥 センターへ・・・ た い 肥 粗飼料を自給することにより、輸入品を購入するよりも飼料費の低減が図られています。 地域でTMRセンターを中心とした給与体系を構築したいと考えておられますが、酪農家毎に経営理念がまちまち であるため、実現には至っていません。代わりにロール体系の共同化を期待されています。 N 牧 場 N氏は、岡山県真庭市内で経産牛(乾乳含む)42頭、乳用育成 牛15頭の規模で酪農経営をされています。 蒜山地域には古くから、村持ち(現在の「市有地」にあたる)の 土地で採草ができる制度があり、代々粗飼料生産を継続されて います。 ポイント N牧場のロールサイレージ 地域の水田は黒ボク土なので、水はけが悪く、コンバインの切り落とし稲わらに土が付きやすい性質があります。 稲わらの品質が悪くなるため、稲わらの飼料利用はされていません。 輸入粗飼料が安かった頃は、粗飼料生産を止めようかと心動かされましたが、輸入飼料価格が高騰している現 在、粗飼料自給は間違っていなかったと実感されています。 自給している粗飼料は・・・ チモシー(12.8ha)、オーチャードグラス(1.6ha)、 リードキャナリー(1.6ha) チモ シ ー マニュアスプレッダ ー 水戻しビート 粗飼料自給率 給与飼料全体にみる各飼料ごとのTDN割合 約87% 購入乾草 チモ シー等 約7 % 自給粗飼料 約46% N牧場が行っている飼 料の給与実態から、大 まかなTDNを求めて、 飼料の構成を農政局で 数値化しました。 蒜山地域全体に言えることとし て、同地域は土壌が黒ボク土なの で、トラクターが入りにくいうえに、 切り落とし稲わらに「土」が付着す ることから、稲わら収集はあまり 盛んではありません。 配合飼料 約3 8 % 自給粗飼料のうちわけ ビ ート パルプ 約3 % ヘ イキューブ 約7 % リード キャナリー 約1 1 % チモシー 約8 0 % 一部、自家 採草地に 投入 オーチャード 約9 % 大規模な面積で、良質な牧草を作ることが出来る ため、高い粗飼料自給率を保っています。 共同たい肥 センターへ・・・ 粗飼料を自給することにより、輸入品を購入するよりも飼料費の低減が図られています。 牛もたまには変わったものを食べたいのか、畦畔雑草等もよく食べるようです。 た い 肥 丸 山 牧 場 丸山氏は、岡山県真庭市内で経産牛(乾乳含む)51頭、乳用育 成牛25頭の規模で酪農経営をされています。 もともと非農家のご出身ですが、各種制度資金を導入して農業 参入されました。アイディアも豊富で、地域の青年畜産農家のリー ダー的な立場におられます。 自給している粗飼料は・・・ リードキャナリー(6ha)、リードキャナリー+オーチャードグラス(0.5ha)、 チモシー(15ha) 非農家だったご両親も和牛繁殖経営をされてい ます。 地域では少数派の「ミキサーによるTMR給与」をされ ています。 「市有地」での飼料生産の他、3月∼11月まで育成牛を野草地に放牧しています。餌が不足 する場合にはロールサイレージを給与されています。 TMRミキサー 牛舎内部 ポイント 放牧場 粗飼料自給率 給与飼料全体にみる各飼料ごとのTDN割合 約79% 購入乾草 約1 2 % 放 牧 丸山牧場が行ってい る飼料の給与実態か ら、大まかなTDNを求 めて、飼料の構成を農 政局で数値化しました。 配合飼料 自給粗飼料 約44% 約4 0 % 混播 オーチャード 約3 % 自給粗飼料のうちわけ チモシー 約7 0 % 計画されているトウ モロコシの自給が実 現すれば、現在より も購入飼料の割合を 低減することが可能 と思われます。 ビ ート 約3 % リード キャナリー 約2 7 % ※ グラフ中では、放牧頭 数・放牧期間等放牧にお ける採食量が一定しないこ とから、放牧におけるTDN は加味していません。 大規模な面積で、良質な牧草を作ることが出来る ため、高い粗飼料自給率を保っています。 牧場周辺の平場ならイノシシによる被害も少ない と思うので、耕種農家にほ場を提供してもらってトウ モロコシ栽培に挑戦したいとお考えです。 たい肥は飼 料畑に還元し ます。 た い 肥 ロールサイレージ体系はラップ費用がかかる上に、廃 棄の問題もあるので、ゆくゆくはバンカーサイロでのトウ モロコシサイレージ調製をお考えです。 美 甘 牧 場 美甘氏は、岡山県真庭市内で経産牛(乾乳含む)60頭、乳用育 成牛35頭の規模で酪農経営をされています。 蒜山地域には古くから、村持ち(現在の「市有地」にあたる) の土地で採草が出来る制度があり、代々粗飼料生産を継続 されています。 ポイント 地域の水田は黒ボク土で、水はけが悪く、コンバインの切り落とし稲わらに土が付 きやすいため、稲わらの飼料利用はされていません。 自給している粗飼料は・・・ 畜舎等増設し、規模拡 大を計画中です。 チモシー(22ha)、イタリアンライグラス(2ha)、リードキャナリー(3ha) 規模拡大に伴い、トウモロコシを作付けする計画をお持ちですが、トウモロコシの収穫作業で今以上に忙しくなるこ とや、イノシシ被害を心配されています。 ロールサイ レージ 第4 回全日本 ジ ャー ジ ー 共 進 会 チャン ピ ォン 牛 採草地 粗飼料自給率 約78% 給与飼料全体にみる各飼料ごとのTDN割合 購入乾草 (スーダ ン・チモ シー) 約12% 自給粗飼料 約42% 計画されているトウ モロコシの自給が実現 すれば、現在よりも購 入飼料の割合を低減 することが可能と思わ れます。 配合飼料 約4 0 % 麦 約3 % 美甘牧場が行って いる飼料の給与実態 から、大まかなTDN を求めて、飼料の構 成を農政局で数値化 しました。 自給粗飼料のうちわけ イタリアン ライク ゙ ラス 約3 % チモシー 約8 4 % ビ ート パルプ 約3 % たい肥は飼 料畑に還元し ます。 リード キャナリー 約1 3 % 大規模な面積で、良質な牧草を作ることが出来る ため、高い粗飼料自給率を保っています。 た い 肥 耕種農家から作付けを依頼されているほ場では畦畔の 草刈を任されているので、管理が難しいとのことです。 粗飼料を自給することにより、輸入品を購入するよりも飼料費の低減が図られています。 蒜山大根を栽培していたほ場の耕作放棄が目立ってきているので、条件が整えばそれらをもっと粗飼料生産基盤 として利用したいという考えをお持ちです。 石 賀 牧 場 石賀氏は、岡山県真庭市内で肉用繁殖牛59頭、肉用育成牛3 7頭の規模で肉用牛繁殖経営をされています。 以前はタバコ、米及び牛2頭の複合経営をされていましたが、 産地づくり対策が始まってから、転作水田に飼料作物を作付け し、肉用牛繁殖経営が中心になっていきました。 自給している粗飼料は・・・ 家畜排せつ物処理のためにも、たい肥を投入し ての「草作り」は当たり前のこととして取り組まれて います。 育成牛舎 ポイント チモシー3回刈(のべ20ha)、リードキャナリー3回刈(20ha)、 ヒエ3回刈(20ha)、放牧 飼料作物収穫用機械は「中古」を購入し、牛舎の一部 をパイプハウスにする等、低コスト化に努められていま す。 フリーバ ーン牛舎 サイ レージ 粗飼料自給率 約88% 給与飼料全体にみる各飼料ごとのTDN割合 購入乾草 約9 % 配合 飼料 自給粗飼料 約64% 放 牧 約27% 放牧期間は一定し ないものの、40頭前 後を林野や水田に小 規模移動放牧されて いるので、表で示し た「見かけの自給 率」以上に自給率は 高いものとなります。 稲わら 石賀牧場が行っている 飼料の給与実態から、大 まかなTDNを求めて、飼 料の構成を農政局で数値 化しました。 ※ グラフ中では放牧頭 数・放牧期間など、採食量 が一定しないことから、放 牧におけるTDNは加味して いません。 約2 % 自給粗飼料のうちわけ チモ シ ー 約4 1 % リード キャナリー 約4 1 % ヒエ 約16% 稲わらは たい肥交換 たい肥は飼 料畑に還元し ます。 地域内の キノコ生産組合 から 入手した 菌床を敷料に していま す 。 菌床 (発酵は良好) 肥育農家が子牛にチモシーの給与を要求してくるため、子牛には輸入チモシーを給与されています。 自らチモシー乾草を作っていますが、乾燥させるのに手間がかかり大変とのことです。 最近の輸入チモシー乾草も品質が悪いことから、嘆かれています。 た い 肥 稲 田 牧 場 稲田氏は、岡山県真庭郡新庄村内で肉用繁殖牛47頭、 肉用育成牛47頭の規模で肉用牛繁殖経営をされています。 10頭前後飼育していたころには毎日牧草刈りをし、牛に生草給与してい ました。10年ほど前から増頭をはじめました。 自給している粗飼料は・・・ オーチャードグラス(3ha)、リードキャナリー(1ha)、 ヒエ・野草混(4ha)、放牧(約4.5ha) 「削蹄業」も営んでおり、多忙なことから繁殖経営の継続のため、放牧による省力化が必要となりました。 簡易電気牧柵の登場で放牧が容易になり、牛舎に入りきらない牛を放牧されています。 ポイント 放牧ができない冬期には、県南の公共牧場(矢掛町育成牧場)を利用されています。 放牧馴致場 畜舎内部 保管中の稲わら 粗飼料自給率 約45% 給与飼料全体にみる各飼料ごとのTDN割合 放 牧 稲田牧場が行っている飼 料の給与実態から、大まか なTDNを求めて、飼料の構 成を農政局で数値化しまし た。 ※ グラフ中では放牧頭 数・放牧期間など、採食量 が一定しないことから、放 牧におけるTDNは加味して いません。 自給粗飼料 約3 7 % 購入乾草 チモシー ・ス ー ダン 等 自給粗飼料のうちわけ リード キャナリー オーチャード 等 約6 8 % ヒエ 野草含 約27% 約4 3 % 配合 飼料 約20% 放牧期間は一定しない ものの、飼養頭数の約 半数を放牧(公共放牧場 への預託・小規模移動 放牧)されているので、 表で示した「見かけの自 給率」以上に自給率は 高いものとなります。 稲わら 約5 % 稲わらは たい肥交換 た い 肥 共同たい肥 センターへ・・・ 放牧 県南のホテルと提携した「新庄村特産品フェア」で和牛牛肉の提供をされており、地元の地産地消活動の 一翼を担われています。 上 城 牧 場 上城氏は、愛媛県西予市内で繁殖牛12頭、育成牛2頭の規模で 肉用牛繁殖経営をされています。 20年前から杉林を伐採し、「野芝」を植えて放牧地とされました。 放牧することで肉用牛飼養管理にかかる夏期の労働力が軽減でき、他 の作物へ労力を回すことができます。 自給している粗飼料は・・・ 野芝(5ha放牧)、ソルコ ゙ー(0.4ha)、稲わら(0.3ha) 「野芝」は急傾斜地の多い地域条件に適合し、植栽することで確実に草地化することができていま す。それにより傾斜地での自給飼料確保の実現につなげる事ができています。 放牧地 ポイント 放牧牛 ソルゴー 粗飼料自給率 給与飼料全体にみる各飼料ごとのTDN割合 約91% 配合飼料 約6 % 自給粗飼料 約86% ソルゴー 約3 % 上城牧場が行っている飼 料の給与実態から、大ま かなTDNを求めて、飼料 の構成を農政局で数値化 しました。 ※ グラフ中では5haの放 牧地において年間約50トン の野芝が採草されるとみな してTDNを試算しています (12頭の放牧牛を年間約 180日間放牧しています) 自給粗飼料のうちわけ 野芝 約64% 稲わら 約33% 購入乾草 (オーツヘ イ) 約8 % 稲わらは たい肥交換 「野芝」が飼料として、有効 活用されていま す 。 た い 肥 放牧の有効性は十分に理解しているので、現在の環境が続く限り放牧を継続するそうです。 子牛の価格は市場平均価格を下回るものの、放牧を取り入れることで労働力の軽減を図っており、今後も野芝の 植栽を行って自給率の向上を図るお考えです。 おおばたけ牧場 おおばたけ牧場の小林氏は、岡山県美作市内で肉用繁殖牛40頭、肉 用育成牛7頭の規模で肉用牛繁殖経営をされています。 牧場周辺の農地の耕作放棄が進んでいることから、採草地として利用し、 粗飼料生産を始め、口コミで耕作放棄地の情報を得て飼料作付面積を拡大 されてきました。 ポイント 「粗飼料を自分で作ると、納得いかない粗飼料になる場合もあるが、自分で作ったものなので諦めもつく。」という お考えです。近隣の環境対策に貢献されています。 自給している粗飼料は・・・ イタリアンライグラス(5ha)、ソルコ ゙ー(ヒエ混:5ha)、 稲わら(ハゼ干し2ha、切り落とし稲わら1ha) 種雄牛を個人所有し、独自の交配方法を試行錯誤するなど、いろいろな工夫をされています。 サイ レージ を食べる牛たち 飼料畑 個人所有されている種雄牛「寛平茂」 粗飼料自給率 約73% 給与飼料全体にみる各飼料ごとのTDN割合 購入乾草 (ス ー ダン ・チモシー ) 約14% 配合 飼料 自給粗飼料 約37% おおばたけ牧場が 行っている飼料の給 与実態から、大まかな TDNを求めて、飼料 の構成を農政局で数 値化しました。 約2 9 % フスマ 主に購入配合飼料中心 ですが、煎り大豆皮やフス マ等を加えて微妙な飼料 バランスをとっています。 約17% 煎り 大豆皮 約3% 自給粗飼料のうちわけ イ タリア ン ライ グラス 約3 9 % ソルゴー (ヒエ 混) 約2 4 % 稲わらが4割近く給与され、重 要な位置を占めています。 稲わら 約38% 稲わらは たい肥交換 稲わらの「稲架干し」が行わ れている地域なので、良質な 稲わらが入手できます。 た い 肥 小規模移動放牧も実施していますが、同一ほ場で何年も放牧を続ければ、ほ場への雑草(イバラ)の侵入やダニ の増加につながるので、ほ場の状況に合わせて対応されています。 調査時点では放牧を休止されていたため、表中に加味されていませんが、現在の環境が続く限り小規模移動放 牧は続けられるそうです。