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表紙・目次・本文(1)(PDF:996KB)

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表紙・目次・本文(1)(PDF:996KB)
平成22年度森林吸収源インベントリ情報整備事業
(次期約束期間に向けた体制整備等調査)実施報告書
目
次
1.
趣旨・目的 ………………………………………………………………………… 1
2.
実施体制 …………………………………………………………………………… 2
3.
自然攪乱に伴う温室効果ガスの排出計上除外の取り扱いに
関する国際的な議論の動向の整理・分析 ……………………………………… 3
1)趣旨 …………………………………………………………………………………… 3
2)結果 …………………………………………………………………………………… 3
(1)AWG-KP概要 …………………………………………………………………… 3
(2)テキスト上での不可抗力の取り扱い ………………………………………… 8
(3)主な論点 ………………………………………………………………………… 10
(4)専門家レポート ………………………………………………………………… 11
4.
我が国及び各国の不可抗力に伴うGHG排出の計上除外にむけた基礎情報
整備
…………………………………………………………………………………15
1)はじめに ……………………………………………………………………………… 15
2)現段階での計上除外ルール適用に関する体制整備 ……………………………… 15
3)本章の趣旨 …………………………………………………………………………… 15
4)計上除外ルールに向けた既存の森林被害に関するデータ整備状況の確認 …… 16
5)過去の自然攪乱による年度ごとの CO2 排出規模の推定 ………………………… 18
6)salvaged wood の推定 ……………………………………………………………… 24
7)salvaged wood の推定 2 ……………………………………………………………… 27
8)今後の計上除外ルール適用のための体制整備に向けた検討課題 ……………… 31
別添1 グラフ作成に用いた元データ …………………………………………………… 34
別添 2
各国の自然攪乱及びそれに伴う温室効果ガスの排出の情報 …………………37
5. 各国の森林吸収量の算定・報告手法の把握・分析
1)趣旨 …………………………………………………………………………………… 42
2)結果・考察 …………………………………………………………………………… 42
(1)15ヶ国(条約報告及び議定書報告の情報) ………………………………… 45
Ⅰ. イギリスの森林吸収量の算定・報告の情報について ………………………
45
Ⅱ. イタリアの森林吸収量の算定・報告の情報について ……………………… 61
Ⅲ. オーストリアの森林吸収量の算定・報告の情報について ………………… 76
Ⅳ. スイスの森林吸収量の算定・報告の情報について ………………………… 90
Ⅴ. スウェーデンの森林吸収量の算定・報告の情報について ………………… 103
Ⅵ. スペインの森林吸収量の算定・報告の情報について ……………………… 121
Ⅶ. ドイツの森林吸収量の算定・報告の情報について ………………………… 138
Ⅷ. ノルウェーの森林吸収量の算定・報告の情報について …………………… 155
Ⅸ. フィンランドの森林吸収量の算定・報告の情報について ………………… 174
Ⅹ. フランスの森林吸収量の算定・報告の情報について ……………………… 204
ⅩⅠ. ロシアの森林吸収量の算定・報告の情報について ……………………… 227
ⅩⅡ. アメリカの森林吸収量の算定・報告の情報について …………………… 243
ⅩⅢ. カナダの森林吸収量の算定・報告の情報について ……………………… 252
ⅩⅣ. オーストラリアの森林吸収量の算定・報告の情報について …………… 270
ⅩⅤ. ニュージーランドの森林吸収量の算定・報告の情報について ………… 283
(2)上記15ヶ国以外の「京都議定書3条3項及び4項の補足情報」提出国
(議定書報告の情報) …………………………………………………………… 296
ⅰ.アイスランド …………………………………………………………………… 296
ⅱ.アイルランド …………………………………………………………………… 303
ⅲ.ウクライナ ……………………………………………………………………… 311
ⅳ.エストニア ……………………………………………………………………… 318
ⅴ.オランダ ………………………………………………………………………… 325
ⅵ.ギリシャ ………………………………………………………………………… 331
ⅶ.クロアチア ……………………………………………………………………… 338
ⅷ.スロバキア ……………………………………………………………………… 346
ⅸ.スロベニア ……………………………………………………………………… 354
ⅹ.チェコ …………………………………………………………………………… 360
ⅹⅰ.デンマーク …………………………………………………………………… 369
ⅹⅱ.ハンガリー …………………………………………………………………… 376
ⅹⅲ.ブルガリア …………………………………………………………………… 382
ⅹⅳ.ベルギー ……………………………………………………………………… 389
ⅹⅴ.ポーランド …………………………………………………………………… 395
ⅹⅵ.ポルトガル
ⅹⅶ.ラトビア
ⅹⅷ.リトアニア
············································· 400
··············································· 408
············································· 416
ⅹⅸ.リヒテンシュタイン
ⅹⅹ.ルーマニア
····································· 420
············································· 426
ⅹⅹⅰ.ルクセンブルグ
······································· 435
1.
趣旨・目的
2009 年にデンマーク・コペンハーゲンで開催された COP15 では、首脳レベルの議
論の結果策定された「コペンハーゲン合意」に「留意する」との結論を得るにとどま
り、2010 年 11~12 月のメキシコ・カンクンでの COP16 に向けて、議論が継続される
こととなった。この結果、COP16 では、「カンクン合意」が採択され、①コペンハー
ゲン合意に基づき先進国・途上国が提出した排出削減目標当を公式文書としてこれに
留意、②国際的な支援を受けた途上国の緩和活動は国際的な測定・報告・検証の対象、
そして森林分野については、③森林吸収量算定方式案の一つである「参照レベル方式」
について各国が自国の情報の提出と審査を受けること、④REDD+の対象活動と段階的
な活動の展開を規定、等が決定されるとともに、森林吸収源のルールについては、引
き続き交渉を続けることとなった。
このような中で本事業では、2013年度以降の次期枠組みに向けての森林吸収源
分野についての対応の検討に当たって必要となる各種情報のうち、自然攪乱に伴う温
室効果ガスの排出の計上除外に関する国際的議論の動向、我が国・各国の自然攪乱に
伴う温室効果ガスの排出に関する情報、及び、各国の森林吸収量算定・報告手法につ
いて把握分析することとしている。
これらの情報の把握分析を通じて、自然攪乱に伴う温室効果ガスの排出計上除外ル
ールに対応する体制整備に資するとともに、次期枠組みに向けた自然攪乱を含めた森
林吸収源のルールの交渉おいて我が国森林・林業施策や取組や世界各国の持続可能な
森林経営に向けた取組とのの整合性を図る立場からの議論の参加に資することを目
的とする。
―1―
2.
実施体制
森林吸収源インベントリ情報整備事業のうち次期約束期間に向けた体制整備等調
査については、下記の学識経験者からなる委員会を設置し、事務局からの委員会への
各種情報の提供、委員会から事務局への知見提供等を通じて、調査分析、報告書作成
を行った。
氏
名
所
属
天野 正博
早稲田大学大学院 人間科学学術院 教授
岡
森林総合研究所 林業経営・政策研究領域 林業システム研究室
裕泰
長
落合
博貴
森林総合研究所 水土保全研究領域長
亀山
康子
国立環境研究所 地球環境研究センター 温暖化対策評価研究室
主任研究員
久保山
裕史
森林総合研究所 林業経営・政策研究領域 主任研究員
小泉
透
森林総合研究所 野生動物研究領域長
後藤
義明
森林総合研究所 気象環境研究領域
牧野
俊一
森林総合研究所 森林昆虫研究領域長
松本
光朗
森林総合研究所 研究コーディネータ
―2―
林野火災チーム長
温暖化影響研究担当
3.自然撹乱に伴う温室効果ガスの排出計上除外の取り扱いに関する国
際的な議論の動向の整理・分析
1)
趣旨
京都議定書の枠組みの中では、森林吸収源による温室効果ガス吸収量を先進国が自国
の排出削減目標達成に利用することを認めている。そのため、目標達成に利用する際に
は、吸収量・排出量の両方の計上を義務付けている。現在、次期約束期間についての議
論が行われており、その中で、自然撹乱の取り扱いについての議論が行われている。こ
れは、気候変動対策の国際的な枠組みにおいては、人為による排出量・吸収量のみを計
上することを基本としているのに対し、自然撹乱(森林火災、病虫害、気象害等)によ
って発生した温室効果ガスの排出量は国別インベントリで報告・計上しなければならな
いため、場合によっては排出削減目標達成が出来なくなる恐れがある、という一部の国
の主張を受けてのことである。
こうした議論は現在、
「京都議定書の下での附属書 I 国の更なる約束に関する特別作
業部会」
(以下、AWG-KP という)において、不可抗力(force majeure)という概念
として取り扱われている。何を不可抗力の対象とするのか、どの程度の規模の自然撹乱
を対象とするのか、などの基本的な点も含め、議論を進めたい災害多発国と慎重な途上
国とで対立がある中で、我が国としては議論の動向を見極め適切な対応を図っていく必
要がある。
そこで、AWG-KP の第 14 回会合(中国・天津)および第 15 回会合(メキシコ・カ
ンクン)において会議に参加し、議論の動向について情報収集を行い、整理・分析を行
った。
2)
結果
(1)AWG-KP 概要
a)AWG-KP14(中国・天津)
―3―
特別作業部会会合(天津)の開会プレナリー
【期間】平成 22 年 10 月 4 日(月)~9 日(金)
【概要】中国・天津における特別作業部会会合は、11 月末からメキシコ・カンクンに
て開催される気候変動枠組条約第 16 回締約国会合(COP16)及び京都議定書第 6 回締
約国会合(CMP6)前の最後の作業部会会合ということで、AWG-KP および AWG-LCA
で、カンクンにおいて議論する文書のとりまとめ作業が行われた。
LULUCF 分野においては、主に附属書Ⅰ国の国内森林吸収源の取り扱いに関して、
参照レベル、不可抗力、伐採木材製品(HWP)の観点から、また、湿地管理の定義等
について議論が行われた。不可抗力についてはカナダ・オーストラリアが、適用に伴う
条件の整理を行うなど、参加国間で理解の共有は進んだものの、カンクンで合意すべき
文書の作成までは行われず、議論したテキストがカンクンに送られることとなった。
【詳細】
①カナダによる「不可抗力」の適用に関して各国が実施すべきステップの説明1
1
説明に用いられた スライド資 料は 7 章 2)の 第 2 回検討見当 委員会資料 参照
(Implementing Force Majeure,Informal presentation by Australia and Canada
Tianjin, October 7 2010)
―4―
ステップ1)約束期間のある年における自然攪乱の影響を受けた土地を特定する(あわ
せて、対象となる自然攪乱が”beyond the control”であることの説明も行う)
ステップ2)その年における自然攪乱による総排出量を計算する
ステップ3)総排出量が閾値を超過した場合、それらの自然攪乱は「不可抗力」と分類
される
ステップ4)必要な情報がそろうかどうか?(これは現行の ERT(専門家審査チーム)
のレビュープロセスの一部としてレビューの対象となる)
ステップ5)もし YES なら、
「不可抗力」条項が適用され、不可抗力による総排出量は
計上から除外することができる(これらの排出量自体は報告され続ける)
ステップ6)その年に不可抗力の影響を受けたエリアは、排出量・吸収量を報告するた
め、また、土地利用変化やサルベージ・収穫が起きていないことを示すため、継続的に
モニタリングされる
ステップ7)不可抗力の事象による CO2 排出量と、その後の同じ土地での吸収量(CO2)
がバランスしたら(同じとなったら)、その土地は計上対象に戻る。
②オーストラリアから仮想のケースに基づいた説明
ステップ1)A 国において、約束期間のある年、森林管理の一連の自然火災が発生した
と仮定する(他の自然攪乱はこの年発生しない)
ステップ2)CO2 による排出 60CO2-e、非 CO2 による排出 10CO2-e、計 70CO2-e
火災の影響を受けなかったエリアの純吸収量が 20CO2 としたら、この年の森林管理エ
リアは 50CO2-e の排出源。
ステップ3)交渉によって、閾値として X%が定義されている。A 国の X%が 25CO2-e
であると仮定すると、自然火災の排出量 70CO2-e は閾値を超過している。
ステップ4)インベントリ報告書を通じて、締約国は以下の情報を提供する
・火災の影響を受けた土地の位置情報を示す
・火災後、土地利用変化が発生していないことを示す
・サルベージによる排出が計上除外されていないことを示す
・火災が、締約国の制御を超えており重大な影響を与えられないものであることを証
明する
“beyond the control of”を示すとは
・火災の発生に寄与した天候条件を記述する(例:強風、高温、低湿、乾燥)
・火災の鎮圧のための努力を記述する
・火災の原因/性質に関する科学的証拠を提出する
ステップ5)
「不可抗力」条項が適用できるので、70CO2-e の排出は報告されるが計上
からは除外される
ステップ6)締約国はモニタリング・報告システムが継続してその土地で発生すること
―5―
を追跡できることを保証する必要がある。
ステップ7)仮定の中で、火災跡地の再生で年 3CO2 の吸収があると仮定する。CO2
吸収量が除外された CO2(60Co2)とバランスしたら、計上に復帰する(つまり、こ
の仮想例では 20 年分の吸収でつりあう)
ほぼ成熟した森林で火災があった場合、非 CO2 の排出量は CO2 吸収量ではカバーでき
ない
③主な議論
・閾値の数値をどうするのか、根拠をどうするのか
・気象条件など不可抗力の「トリガー」を科学的に明確化する必要性、「トリガー」に
よる閾値を設定する可能性の検討
・ “beyond the control”が不明確。
・防止の努力をどう評価するのか。
・不可抗力によって発生した排出は GHG を把握するのか CO2 を把握するのか。また、
除外から復帰するのは GHG に釣り合ったときなのか CO2 に釣り合ったときなのか。
・「森林管理」は現在「活動ベース」で計上しており、活動がない場所では蓄積量が正
確に把握されているわけではない。どうやって排出量を計算するのか。
・一年の中で不可抗力を判断するのか、複数年にまたがるようなものも一つの不可抗力
とみなすのか。
・一つ一つの災害を閾値と比較するのか、まとめて比較するのか。種類の違う災害(火
災と病虫害、のような)を足し合わせて比較するのか、個々に比較するのか。
・自然攪乱と人為攪乱の区別をどうつけるのか。「森林管理」の対象となっていれば人
為の影響を強く受ける。
・蓄積が戻るまで除外、としなくても、当該約束期間から除外すればいいだけではない
か。
・「不可抗力」は extraordinary な事象と定義。発生周期や強度についても検討する必
要があり、それを基に閾値を設定すべき。
―6―
b)AWG-KP15(メキシコ・カンクン)
議論の取りまとめを検討する AWG-KP 議長と LULUCF グループ・ファシリテーター
【期間】平成 22 年 11 月 29 日(月)~12 月 11 日(土)
【概要】京都議定書の第一約束期間が終了する 2012 年が近づき、次期約束期間におけ
る国際枠組みを合意する期限が迫る中、LULUCF 分野においては、附属書Ⅰ国の森林
吸収源の計上方法について「参照レベル」のオプションを採用した場合のための事前の
情報提供・レビューが必要であり、それらも含め、主に附属書Ⅰ国の森林吸収源の取り
扱いについて議論が行われた。
カンクンでの議論では、当初提示された議長テキスト(CRP.4)が、天津での作業テキ
スト(CRP.2)から、議論を経ずに大幅な修正が行われた部分があり不満を述べる国があ
った。このため、必要な内容は追加や修正をしながら進めることになった。ファシリテ
ーターからは特に参照レベル、不可抗力、HWP についてとの指定があり、主にこの分
野について議論が行われた。
当初 1 週間の予定であったが、各国からプロポーザルが出され、2 週間にわたり議論
が行われたが、結果、最終的なテキスト(CRP.4/Rev.4)ではオプションがいくつも併存
する状態になった。オプションが減らないまま AWG-KP 議長に送られたものの、結果
的に CMP 決定の中では、用語の定義等の他、今回決定する必要があった参照レベルに
関する情報提供・レビューの実施のみが規定された。また、不可抗力については、取扱
いを検討することとされた。多くの未決事項が残され、これらは 2011 年末の南アフリ
―7―
カでの COP17 にむけて議論が行われる予定。
(2)テキスト上の不可抗力の取り扱い
不可抗力の取り扱いに関する議論の結果が、テキスト上でどのように反映されている
か 、 そ の 推 移 を 、 AWG-KP14( 天 津 ) の テ キ ス ト ( FCCC/KP/AWG/2010/CRP.2) 、
WG-KP15(カンクン)開始時のテキスト(FCCC/KP/AWG/2010/CRP.4)、AWG-KP 議
長テキスト(最終:FCCC/KP/AWG/2010/18/Add.1)を用いて比較した。
【オプションの有無】
・AWG-KP14(天津)のテキスト(FCCC/KP/AWG/2010/CRP.2)
Annex に Force majeure(=不可抗力)の定義あり([]つき)の二つのオプション
①不可抗力条項の削除
②不可抗力条項の適用(→適用に係る条件等の記載)
・AWG-KP15(カンクン)開始時のテキスト(FCCC/KP/AWG/2010/CRP.4)
2bis. Agrees that the term “force majeure” should be defined …
定義に関連する記載は残されたものの、定義や細かい条項はすべてカットされていた
・AWG-KP 議長テキスト(最終:FCCC/KP/AWG/2010/18/Add.1)
“Integrated version”:不可抗力記述あり
“Separate options”
Option A:不可抗力記述あり
Option B:不可抗力記述なし
・CMP 決定文書
パラ 3
AWG-KP に対し、第二約束期間に間に合うように、不可抗力についてどう取
り扱うか検討を要請(定義や細かい条項はカット)
【AWG-KP 文書におけるポイント】
CMP 決定には不可抗力の個別条項は記載されていない。他方、最終の AWG-KP 議
長テキストの LULUCF 部分は複数のバージョンが併記されており、この中には、不可
抗力の条項の記述のあるバージョンとないバージョンのものがある。しかし条項の内容
について交渉の中で徐々に整理がなされつつあり、この内容は AWP-KP 議長テキスト
の Integrated version に記載されている。
そのため、ここでは Integrated version の内容をもとに、不可抗力の取り扱いについ
てまとめた。
―8―
<本文>
[パラ 18 第 3 約束期間に間に合うよう CMP で議論ができるように、
不可抗力の概念、
方法論、定義を調査する活動計画を策定するよう SBSTA に要請]
<Annex I>
パラ 1(j)
不可抗力の定義
[“Force majeure” means, for the purposes of this decision, [an] extraordinary
,
defined as
beyond the control of, and not
materially influenced by, a Party [and whose associated [total annual] greenhouse gas
emissions by sources and removals by
sinks are a minimum of
X
Y
of the total national emissions included in the base
Z
year].]
要素として、
「異常な出来事」「制御を越えたもの」
「閾値を超えた物」というポイント
パラ 15quater(Option1 参照レベル、option2 ベースライン)
森林経営の計上の際に、[不可抗力の文脈での自然撹乱]も含め、一貫性のある方法論に
よる計上を行う
パラ 29
[[閾値を[Y から[5][Z]]の範囲から選択]。約束期間中は固定。]
パラ 30
第二約束期間末まで、対象地における、不可抗力による年間排出量[のうち閾値を超え
る分]から吸収量を引いたものを、毎年または約束期間末に計上から除外する。
Salvage logging に関する排出量は、それが行われた約束期間において計上。
土地利用変化があった場合は除外不可。
パラ31
不可抗力条項の適用のためには以下の情報を提供
(a)対象となる土地の特定(位置情報、不可抗力の発生年とタイプ)
(b)土地利用変化がないこと、将来的にもないことを説明
(c)災害が制御を超えており、対処の効果が小さいというころを証明するため、管理・制
御の取り組みを説明。
(d)炭素蓄積量の回復のための取り組みを説明
―9―
(e)salvage logging による排出を除外していないことを説明
パラ 32
パラ 31 の情報は国別インベントリ報告書に記載すること。それらは専門家レビューを
受けること。
(3)論点
不可抗力については広範な内容の議論が行われてきたが、現在は主に「定義(閾値含
む)」「計上除外の方法」「サルベージ」について議論が行われている。これらについて
まとめる。
<定義について>
・【単独】か【複数】か
1年間に多数発生する森林火災を想定している国からは複数の災害の結果排出がある
閾値を超えた場合は不可抗力の対象とすることを主張。しかし一部の国は不可抗力とは
言えない通常の自然攪乱が合算によって計上除外の対象となることは不適切として単
独の災害の結果排出がある閾値を超えることが必要であると主張。
・“extraordinary”の中身について
何についてなのか未決定。サイズ、予測可能性、強度(マグニチュード)、周期、CO2
排出量などが挙げられている。
・【occurrences】か【event or circumstance】か
Circumstance で気候条件等を読むことを想定しているとも考えられる。それぞれ中身
としては、火災、病虫害、異常気象、地理的撹乱を挙げている。
・閾値は【単一の数字】か【範囲】か
各国共通の単一の数字[X]%とするのか、選択可能な範囲[Y から[5][Z]]%とするのか。
・閾値の利用法
Annex パラ 30 では、annual emissions [above the threshold]という表記。閾値を【不
可抗力の判断基準】として利用するのか、【計上除外の算出】にも利用するのか。
<計上除外の方法について>
・【exclude】か【carry over】か
天津テキストでは[carry over] という表現があったが、カンクンで exclude に統一。ま
た、不可抗力による排出量が、当該地における吸収量と釣り合うまで除外、等の議論が
あったが、カンクンテキストでは第二約束期間末まで除外、という表現になった。
― 10 ―
そのあとの約束期間における排出量・吸収量の扱いは、その約束期間の計上方法に従う、
となっている。
<サルベージの取り扱いについて>
・用語
天津テキストでは
“Emissions associated with salvage or future harvesting…
カンクンテキストでは(パラ 30)
“Emissions associated with salvage logging…
用語は“salvage logging”に変わったが、何をそう呼ぶのか、文書中に定義はない
・取り扱い
salvage logging による排出量は計上しなければならない。また、salvage logging によ
る排出量が計上除外されていないことを証明しなければならない
<まとめ>
天津、カンクンの議論を通じて、徐々に共通理解は深まりつつある。今後の課題として
は、交渉においては定義・閾値の議論をさらに進めていくことが必要である。国内的に
は、不可抗力条項の適用のために提供すべきとされている各種情報を収集・整備する体
制の検討・構築を進めていく必要がある。
(4)専門家レポート
本事業における国際議論の動向把握の一環として、国際会議に専門家を派遣している。
今年度については、メキシコで開催された COP16/CMP6 に、独立行政法人
合研究所
温暖化影響研究担当
研究コーディネーター
報収集に当たった。その報告書を添付する。
― 11 ―
松本
光朗
森林総
氏を派遣し情
COP16 AWG-KP における LULUCF 交渉の結果
(独)森林総合研究所
松本光朗
AWG-KP においては、次期約束期間における算定ルールについて議論が行われた。
論点としては、①3 条 4 項森林経営における算定ルール、②不可抗力(自然攪乱)によ
る排出の取扱い、③伐採木材製品(HWP)の取扱い、といった3点であった。このう
ち 、 ① 3 条 4 項 森 林 経 営 に お け る 算 定 ル ー ル に つ い て は 、 COP16 決 定 文 書
(FCCC/KP/AWG/2010/L.8/Add.2)に記載されたが、その他については議論が継続さ
れることとなった。以下、それぞれの議論の内容と結果を示す。
1.3 条 4 項森林経営における算定ルール、
これまでの議論の延長であるが、COP16 決定文書に、算定ルールとして①グロスネ
ット、②ネットネット、③参照レベルの3つの方法が併記され、参照レベルについて各
国から提出された値が表として示された。
今回特筆すべき点は、参照レベルの審査についての合意であった。COP15 決定書に
初めて示された参照レベルについては、そのデータや手法、前提などが明らかではなく、
示された参照レベルが適切なものであるのかは分からなかった。このことから、今回の
決定書では、各国の参照レベルについての審査を実施することと、そのための指針
(Guidelines for the submission and review of information on forest management
reference levels / baselines)が決定文の Appendix II として明記された。
指針は、パート1として参照レベルのための情報と、パート2として審査の手順の指
針から成っている。この指針に従い、当面は、記載した参照レベルについての情報を
2012 年 2 月末までに提出することが求められている。
2.不可抗力(自然攪乱)による排出の取扱い
不可抗力(force majeure)による排出の取扱いの議論は、以前は自然攪乱(natural
disturbance)と呼ばれたもので、火災や気象害、病虫害など、非人為に要因による排
出の取扱いに関する議論である。カナダやオーストラリアでは、山火事や病虫害による
大きな排出が不定期に発生することから、これを不可抗力という非人為による排出とし
て、排出削減の約束達成からは外すべきという議論である。
今回は、これまでの議論の延長として、火災や台風などによる森林被害に由来する排
出量が一定量を超えた場合には計上を除外するというアイデアについて議論され、大き
な反対は見られなかった。
その中で、 不可抗力とする閾値について、これを世界で共通の1つの値とするか、
各国ごとにするか論点となっている。今のところ、共通の閾値として 3%が例示されて
― 12 ―
いるが、その場合、わが国では歴史的にそれに相当する自然攪乱は発生した例が無く、
適用の機会はまれであることが推察される。
また、不可抗力による被害からサルベージ(救出)された木材の取扱いも論点だが、
計上対象とする方向で議論が進んでいる。
3.伐採木材製品(HWP)の取扱い
これまで議論されてきた、木材に貯蔵された炭素の増減量を計上できるという案につ
いて議論がなされた。先進国間では、木材製品の炭素を計上対象とすること、算定手法
として生産法を採用することについて、すでに合意されている。これは国内で生産され
た木材炭素が対象で、輸出された木材についても計上可能という方法である。ただし、
輸出先での HWP に関する情報が求められている。
今回の議論においては、この生産法について、途上国から算定方法の簡略化について
提案がなされた。これは、製品による半減期が大きく異なり算定が複雑となることから、
紙製品の半減期を 2 年、木材製品の半減期を 30 年と固定するというものである。これ
に対し、特に先進国の木材輸出国については、算定が一気に簡略化されることから、反
対の声は上がらなかった。しかし、この方法では、木材製品の長寿命化という温暖化施
策が反映されないという問題がある。また、IPCC 的な視点からは、Tier 1 に相当する
方法で固定するのではなく、高度な Tier を考慮した内容とすべきである。この意見を
交渉官に伝えた。
結果的として、意見を反映する形の共同議長改訂提案では、半減期を紙製品 2 年、木
質パネル 25 年、製材 35 年とすること、国内で生産・消費された木材製品については、
検証可能な透明性の高いデータがあれば、それを利用できると記載され、先の懸念は取
りあえず回避された。
ところで、半減期に関する関数は以下のように表される。
x =a exp(-bt),
b=ln2/t0.5
ここで、x:t 時の重量、a:x の初期値、t0.5:半減期(年)
。
a に 1 を、t0.5 に半減期(紙製品 2 年、木質パネル 25 年、製材 35 年)を代入すれば、
任意時の残存率が得られる。例えば、製材の場合、当初の 1 に対し、10 年時には 0.82
が、35 年時 0.50、50 年時 0.37 が残存する(表)
。
4.決定文と共同議長改定案
以 上 、 そ れ ぞ れ の 議 論 は 着 実 に 進 ん だ も の の 、 COP16 決 定 文 書
(FCCC/KP/AWG/2010/L.8/Add.2)に記載されたのは、基本的に 3 条 4 項森林経営に
おける算定ルールのうち参照レベルに関する各国からの情報提出と審査の実施につい
て の 合 意 の み で あ り 、 他 の 議 論 に つ い て は 共 同 議 長 改 訂 提 案
― 13 ―
(FCCC/KP/AWG/2010/CRP.4/Rev.4)として記録され、これが次回の交渉の出発点と
なる。
表
半減期と年時ごとの残存率
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