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部落有林野の所有と利用に関する研究: 特に個別農家の

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部落有林野の所有と利用に関する研究: 特に個別農家の
Kobe University Repository : Kernel
Title
部落有林野の所有と利用に関する研究 : 特に個別農家の
利用度と利用意識について
Author(s)
高山, 敏弘
Citation
兵庫農科大学研究報告. 農業経済学編,6(2):58-66
Issue date
1964
Resource Type
Departmental Bulletin Paper / 紀要論文
Resource Version
publisher
DOI
URL
http://www.lib.kobe-u.ac.jp/handle_kernel/81006422
Create Date: 2017-03-29
││特に個別農家の利用度と利用意識について││
I
可
山
敏
弘
等の近代的所有権は確定してきた。しかしその林野の利用収益に関しては、その
乙れも入会の法制的研究は多岐にわたるにも拘わらず、現実の利用についての報
現時点における部落有林野利用の度合はどの位であるのかを事例的に報告する。
数的把握すら行なわれていなかったからである。次いで県内一山村の実態から、
るか充分明らかでなかったからである。
告は少なく、これまで部落有林野が農業及び農家経済にどのような貢献をしてい
部落のおかれた条件によって大きく異り、既に入会の解体してしまったと乙ろが
の入会利用形態は、歴史的な対応を行なってきた結果、総有的直接利用の段階か
﹃入会権の解体と農林業﹄八O ペ13) 参照。その施策化の基本的認識は
﹁農山村民の内発的な発意にまって、入会林野をめぐる共同体的な所有利
(1) 斉藤誠三﹁農林業の基盤強化・土地利用の高度化へ﹂(農政調査委員会
︼
る法律案﹂が国会に提出されようとしており、他方内的管理利用秩序にいも労働
内勾
用関係を、近代的な私的所有利用関係に改編し、安定した私権のうえに生
産力の発展を図るうとするもの﹂とされているのである。
(2) 拙稿﹁部落有林野にも時代の波が﹂令営農と生活﹄一六ノ九)
拙稿﹁部落有林野の管理利用に関する問題(﹃農業と経済﹄一二O ノ五)で
用か或は造林地としての集約的林業的利用へと大きくかわりつつあることを知
ハ
3)
調査村の概況は、拙稿﹁部落有林野利用に関する研究﹂(﹃兵庫農科大学
は、兵庫県における事例から部落有林野の管理利用の問題を提示した。
研究報告﹄六ノ一参照。
(4)
所有形態と利用形態
しく大きい。センサス結換による部落有林事業体数は七、一四八、その権利者数
mを占め(県資料集計結岡市)、全国平均が九%足らずであるのに較べれば著
=
二M
兵庫県の実質的部落有林野は一八万町歩であり、県林野面積五九万町歩のうち
そ乙でこの小稿においては、現時点における利用の現況と問題点をみようとし
ざましい変化をみるものと思われる。
度的拍車がかけられて、近い将来に部落有林野の利用は形式的にも実質的にもめ
うとしている。事実その変容の疏穿は各地にみられるので、との経済的流れに制
うとしており、一方内的利用秩序もかわりつつあり、また利用対象地目もかわろ
とのように、部落有林野の利用に関しては、その複雑な入会権が近代化されよ
る。即ち経済社会の進歩とともに労働の価値が上昇し、労働集約的林野利用から
労働組放的に、他方資本集約的林野利用へと移行してきているのである。
や薪炭林地としての直接的農家生活的利用から、樹園地その他の集約的農業的利
他方部落有林野の地目利用は、かつての採草放牧地としての粗放的農業的利用
カの流出を契機として大きな変容がみられようとしている。守
a
期にあたり、外的制度的には﹁入会林野にかかる権利関係の近代化の助長に関す
ら、私権的間接利用の段階まで各種のものがみられる。そして今や時代的な転換
ある反面、依然として旧来の慣習によるととろもある。旧来の慣習といってもそ
乙れまで実質的部落有林野の所有と地域性の問題及び所有と利用形態の関係が実
野の所有制度がその利用に可成りの影響を及ぼしているととが推察されながら、
態との関係はどうなっているかを、兵庫県の事例でみておく。というのも部落有林
方主-
部落有林野の所有と利用に関する研究
め
明治以降の諸制度の変革によって、部落有林野に関する公有・私有・私法人有
じ
ているのであり、まず第一に利用をも規制する法的所有形態と地域性並に利用形
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林野率
え地自条
合牧あ
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は採る
0
0とした割合を示す
(註) 県の資料によって作成,各地域を 1
い的条と
低草
る差件社
く地そ
公有には,市町名儀・財産区名儀
か臭と会
、九の
私有には,部落代表名儀・数名の記名共有・全員の記名共有
をが工経
一%樹
私法人右には,社寺名儀・生産森林組合・林産農協名儀・財団法人・
み部業-済
般で種
有限会社を含む
た落地的
的あ別
の有帯 l
乙
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とり割
部落有林野率は,各地域全林野に対する実質的部落有林野の割合
が林とも
は
合
林野率は,各地域全面積に対する全林野面積の割合を示す
第野し後
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放国
のがけに場実具有らる法れに県方な区く地磨馬
表所先地
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か定、すに的なそ形が、。いに有乙は県 l
乙北域れあ形地み
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県お形が法利し大なで管利もくの知形 l
乙形所丹る
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南り態な的主てき公あ理用読、もる態神態調波と
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部落有林野の地域別所有形態の割合(%)
第 1表
品
h
部落有林野の所有と利用に関する研究(高山)
z
が私権的分解の度合が高いとみてよい。しかも一般的に県南兼業地帯の方が部落
秩序も近代化しており、利用収益の秩序も近代化しているとみてよい。
真に私法人有形態をみると、明らかに県南神戸・東播南・西播南等の先進地に
がとられている乙とを知るのである。もっとも生産森林組合成は林産農協名儀と
多く、特に神戸では生産森林組合及び林産農協名儀二八%・有限会社一一 M
m・財
mであって、最も新らしい所謂機能集団所有管理の形式
団法人ニ必・社寺名儀六M
はいえ、この度の町村合併を契機に指導されて設立されたものが多く、必ずしも
経営計画を樹立し林業経営合理化を目的としたものばかりとはいえない。しかし
少なくとも労働力流動変化の多い都市周辺で、旧来の権利を確保しようとする意
また部落有林野の土地管理有限会社を設立して、宅地化を待って有利に販売す
識が早くからにあったことは否定できない。
の配分を意図した、部落有地売却を促す下からのつきあげの激しい都市周辺部落
る乙とを企図した都市近接部落があり、更には将来の収益よりも現在の権利者へ
もある。或は逆に新らしい住宅や商庖が進出して旧村人が少なくなり、新らしい
人々が勢力をもち権利を主張し、旧権利者だけの収益配分が不可能となって、や
むなく収益を皆の公共施設に投ぜざるを得なくなった都市周辺部落もある。これ
が丹波地域の同様なケl スでは、両者のテンション状態が続いて、結局は旧来の
権利者に有利な解決となった事例があり、県北但馬ではそのようなケl スが起り
難い事情にある。これらのととからも先進地県南の方が権利意識を強固にもち、
乙の権利意識を強く発生させた理由には、経済的社会的政治的要因が考えられ
またその主張にも積極的であることが窺える。
るが、その一つとして対象林野の実面積の相対的価値上昇があげられる。林野率
は県北但馬丹波西播が高く、部落有林野率も一日向く実面積も広い。一方神戸等では
周辺ではそれに対する直接的依存度が低いに拘わらず、そのことが却って売却の
林野率部落有林野率何れも低く、部落有林野の実面積九千町歩に過ぎない。都市
可能性を生み、小面積とはいえその価値は上昇して、乙れに対する権利意識を強
乙のように、一般的には遅れた県北に公有形態が多く、進んだ県南に私有及び
めると考えられる。
て、利用秩序でも県北では古い共同体的性格のものが残り、県南では機能的性格
私法人有が多く、克に所有形態だけにとどまらず、権利意識の発生主張と併行し
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時~I 県計
「百 「1
2432罰君主主 ZZE22書z
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E号
車 4 S2E 完祭奈
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兵庫農科大学研究報告
のものが多くなってくるととが観察できる。
第二号 農業経済学編
成は公有林野統一を強力に進めた郡制時代の推進度合によって(公有林野統一が
っている。金利用形態別割合では、総有利用が最も多く七九泌を占め、次いで個
有縁故使用地が旧部落に返還された町、或は新町に引継いだ町等がある)多くの変
ている郡とがある)、更には今時の町村 A口併によって(財産区が設立された町や公
人割利用、-組割利用、分収利用、借地利用の順である。
日の所有・利用形態が生まれてきたのであるが、乙れが更に A品の大きな経済社
会の流動変化と制度的推進によって.また方向をかえようとしているのである。
部落有林野の利用収益
部落有林野の一般的所有形態の地域性と利用形態との関係は前述の如くである
ここに報告しようとしている但馬の山村の A部落でも(一 O O戸の戸数で一、
家の個人的利益も左右されてくる。
形をとっているが、利用形態は各種のものがみられる。即ち県官行造林一五O町
三OO町歩をもっ)その形式的所有形態は一 OO人の記名共有であり私的所有の
ζれ等所有・利
利用地が一 O町歩(その一部は既に個人割利用地となって持株が集中している)、
歩の分収利用、使用地という個人の借地利用地が三O O町歩、一 O戸一組の組割
留山として製炭原木地が五OO町歩、部落直営植林地一 O O町歩、入会放牧採草
一般的には以上の
地的には、旧藩制
如くであるが、局
巻一号参照)。
あるかをみたのが第三表である(各戸の性格並に使用地に関しては研究報告第六
ζの部落の各戸が部落有林野を如何に利用し収益配分を受け、依存度がどの位
丹波北では部落有
草は誰でも自由に
在の製炭者の部落の山に依存する度合は高いのである。次いで農家 5 ・胞の如く
乙れでみると、部落の山で働く日数は各戸でまちまちがあるが、特に農家 3 ・
6 ・8 ・
mの如く、乙の部落の主な仕事であった製炭業に従事する農家
ud 日-
山一就労の場
刈れおが、丹波南
では私有林の松茸
の使用地で働く日数も、多い家では七O 日にも達しており、少ない家でも一五日は
部落の県官行造林地の伐木造材運搬に従事する山労従事者の依存度が高い。個人
の従事回数が高い。製炭は最近急に衰退してきたといわれるが、それでもなお現
となっている)、
下草は個人の自由
られ、私有林の下
部落の入札に附せ
私有何れも松茸は
の名残りにより(
地も残されていて、総有的利用も続けられている。
用の地域的差異は
いる場合も多い。
分解してしまって
て、全く私有林に
が、現実の各部落では、各種の利用形態を共にもつ場合が多いのであり、その中
財者る約
協つ用と
るい契
儀いて貸
名てし賃
法が合基
団)場に
北山村地帯では分収利用並に総有的利用に組割個人割利用が加わるが、県南平場
に、僅かに個人割利用の私的利用の性格が強くなっている乙とを知る。従って県
のが読みとれる。一方部落代表者名儀及び部落会員の記名共有の私有形態のもの
市町・財産区名儀の公有形態のものに、その公的性格から分収利用が僅かに多い
所有利用両形態の関係は、何れの所有形態の相場合も総有的利用が大半を占め、
異がみられるのである。一般経済社会の勤きに、地域の制度的要因が加わって今
全部終っている郡と、それ程強力にも行なわれず未だに旧部落名儀が多く残され
兆
】
次にとの部落有林野の所有形態と利用形態との関係を第二表でみてみよう。全
第
所有形態別面積では市町名儀が最も広く、次いで記名共有、財産区名儀の順とな
六
地帯では私法人として配当を・つける私権的間接利用が多く、乙れに組割個人割利
9
0
でどの形態が最も支配的であるかによって、部落の利用収益が特徴づけられ、農
叫引
用が多く加わる乙とが推察できる。県南では時には戦後既に個人登記が行なわれ
山│
社寺名儀
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部落代表名儀
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記名共有(全)
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│ 合 計
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市町名儀
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例別
用
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用 キ]
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農も利落
産をて部す
林利けが示
権す分体を
合(一不に団合
成組員を字は場
作林全合小或る
り森む落場は人い
よ産含部る或個て
に生を'い保'し
料'等はて隣は用
資は社とし'と利
認に会用用は用地
務他限利利と利借
林の有有で割地て
県そ・総同組借い
人共づ
(註)
部落有林野の所有形態別利用形態の割合(%)
第 2表
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山茶 1年分
椎茸原木 1
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稲木 2
0本
部落有林野の所有と利用に関する研究会同山)
ol二O 日であるが、その中には弁当
従事しているので、これも無視できない就労の場となっていることを知る。部
落の共同の山の為に働く日役は、毎年一
U及び身体障害者である M或は老人の口等は、出役できない時には人を頼んで
代のでる場合も合まれる。経営主が郵便局長である農家 1や前業者であるm
-
ることもある。資力のある農家 1 ・2-m-U等では個人の使用地の植林や下
出てもらうか、出不足金を出さねばならないので、多い年は一戸二万円位にな
刈り枝打ち等にも雇傭労働を入れて、部蕗の山を利用しているのであり、そこ
にまた山労従事者の雇傭の場が開ける乙とになる。何れにしろ最高は五四O 日
も部落の山で働いているのであり、そのような農家にとっては、この部落の山
は就労の場として決してその重要性を失っていないのである。しかし中にはこ
の如く部落有林野利用意識にも差異を生ぜしめる大きな要因となるのである。
J
の部落の山から解放され、或は就労できない事情の農 日みもあり、そのことが後述
ニ利用収益
次にこの部落の山からの利用収益の状況をみてみよう。既に乙の部落の県行
造林地は伐期に達しているので、その収入は可成り大きく、これをめぐる部落
内対立も生じているのである。ともあれ毎年必要とされる二OO万円の部落経
費はこの中から支出され、最近の公共施設では、公民館四CC万円・水道施設
れており、その部落住民に対する貢献の度合いは大きいといえる。しかも昨年
四OO万円・消防ポンプ一 OO万円・共同テレビアンテナ一 OO万円が支出さ
度の個人配分金は、テレビ一台貰ったことにして五万円と植林資として一万円
の計六万円であり、毎年二t五万円の配分があって、これが下庖では生活費に
個人が自由に植林して育林地として認められる使用地は、二ハ町歩利用者か
まわされ、その農家経済に来す役割は決して小さくない。
ら全く利用していない者もあるが、災害や不幸などの不時の支出を必要とする
時に、最初に売却されて、農家経済の防波堤の役割を呆している。その比較的
最近における使用地売却金額をみれば、農家 Mの三二年の四一万円(子供の怪
我)を最高に、農家臼の四O万円、農家ロの二O万円(長女の病気)、農家 8
ことができるので、備荒貯蓄財産的育林であるとはいえ、その農家生活に与え
の一七万円(屋根がえ・豚購入)等の如く、相当まとまった臨時の収入を得る
る好結果ははかり知れないものがある。それだけに資力か労力のある農家では
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部落の山からの利用収益
部落の山で働く日数
木炭
共同
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一
人
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為ーへ
個人 使用地 山労
の為使用地製(炭薪山(日労) 配 分 収 入 日 当
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C万円) (万円) (万円) C
束)
(日) (日)
日)" (
農家伎用地
番号
(町)
部落有林野の利用収益現況
第 3表
(註)ム印は他人に依頼して出役して貰うか出不足金を支払うものを示す, 0印は雇傭を示す.木炭( )
内は諸経費差引き労賃(万円)を示す.山労は県官行造林地等で働くものを示す
第六巻 第二号 農業経済学編
されたのである。肥草の為に採草する家も農家胞を除いて外にはなく、かつて桑
著しく減少したので、その利用者は限られてきて、恒例の野山焼きも今年は中止
兵庫農科大学研究報告
乙の使用地増犬につとめているのであり、白原則占じてこの使用地確認の過程は構
園肥料や堆肥用の採草に夏草刈りに出かけていたのが今日では殆んどみられなく
成員の利益擁護の過程ともいえる。使用地面積でもわかるように、その各戸面積
は可成り広く、私有林の少ないとの地区ではその機能を充分呆しているといって
以上のようにこの部落では耕地が少なく地形的にも農業用の適地が少ない関係
なっている。
ないととを知った。号して趨勢としては育林による間接的農家経済的利用が中心
産の方向を志向しているのであるが、その部落の山に対する依存度は決して低く
次に山労目白当をみると(日当の出る日役は合まぬ)請負作業を行なう農家 5が
よい。
最高四
D万円、次いで農家3・胞の一四万円の如く、部落有県行進林地が就労の
場としで果す役割を無視できない。
が行な,われる。
その原木代金も部落木炭組合の示談によるので他よりも廉く、部落内だけの利用
るのである。
機会に恵まれないところでは、特に部落の山が広いような場合にはとれに依存す
を知ったのである。このように山村において農林業以外の就労の場が速く、兼業
となりつつはあるが、なお直接的採取就労の場としての意義も無視できない乙と
上その部落有林野の利用は、近代的大規模農業用地凶発の方向ではなく、育林生
製炭者の木炭原木は、すべてとの部落の留山である炭山から得られるのであり、
その生産量は、農家 3 ・印刷の七O O俵を最高に、片手聞に生産する農家臼の
一
五O俵まであるが、その諸経費差引き自家労賃は、農家路の二八万円を最高とし
てしまった之はいえ川なお労働の価値化として製炭は大きな意味をもっている。
最後にとれ等部落の山利用について、その旧来からの用益秩序を維持していと
三援家の意向
る度合は高くなり、それだけに部落の山をめぐる関心も深くなり問題も生じてく
て、農家問の五万円となっている。かつての製炭部落も、今や三分の一以下に減っ
特に中高年令層中でも若人婦女子等の低質労働の価値化には、労働の苦痛さえ厭
'薪はかつては自家用の主要燃料であったから、各戸とも相当量採取していたが、
し、それがどの層に余り利益にならないかについても明らかとなる。その利害の
乙れに附随して、結局部落有林野利用の現在秩序の維持がどの層に最も利益を粛
ているのはどのような農家であるのか、各農家の意向を中心としてみておさっ。
うとしているのはどの様な農家であり、新らしい秩序を確立していとうと企図し
最近のように電気炊飯器やプロパン及び石油コンロが普及してくるとこ八戸の
用地の利用権をめぐってであるが、後者については既に前号で一部報告済みであ
対立が最も尖鋭化してくるのは、県行造林の収益金配分をめぐって、及び個人使
るが遠く出しが悪いので、刈る者は数名に限られており、自家用程度である。
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わなければ伝統があるだけに、極めて好都合である。俵用の カヤは共有地内にあ
うちプロパンを使用していない農家はご戸もなく、その他に石油コンロ七、電気
その他の部落の山利用についての対立を附随的にとりあげていく。各農家の意向
るので、主として集約的に問題が表面化している前者をとりあげ、これに使用地
炊飯器八をもっている)煮炊き用の薪は不要となり、僅かに風呂用の薪採取が行
ているので、一万t五千円位は部落の山から収益をあげていることになる。
て七反︿耕地)郵便局長(主要な仕事)前区長︿部落の役職)前製材
についてみてみよう。
なわれる程度となった。それにしでもなお三OOl-OO束位は各戸とも採取し
その他山茶利用や街・ウド・ゼンマイ・ワラビ等の採取、或は椎茸原木や稲木
の採取もあるが、その量は未だ少ない。
収益金は文化施設につかって残りを配分するのが当を得ている。村中の縁者
業(前.陸)六五才︿経営主年令)七五OO円(一人一ヶ月現金家計費)
が代表として評議員を選ぶのであるが、わけて欲しい人が山でつかってもらう
農家1
てUた時には、 ζの部落有地の山畑利用が盛んで三反余りを桑固にしていた農家
ブローカーと共同して売ることをけしかけてくる。皆売って平等にわけたらよ
一方かつては養蚕が急速に伸びて、各戸五O貫多い家では一 OO貫も蚕をとっ
れていても桑質が悪く自給読菜園になったととろもある。
いという人もあるが、わけてしまったら村の魅力がなくなるので村から出てし
も少なくなかったが、今では乙れが植林されて杉山となったところが多く、残さ
また総有的利用として典型的な採草放牧地も残されているが、牛の飼育頭数が
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まう人が多くなるであろう。若い人は今でも部落の山に関心はない。使用地の
五反・なし・前組長・前農業会長・七三才・五000円
収益金は本当は個人にわけで欲しいが、以前植えて貰ったのを個人のものに
農家7
つかってすまんような気がする。官行公社造林がすすむと働き場がなくなるの
伐木跡は競売にしないと個人の所有権みたいになってしまう。使用料と敷金さ
で困るという人もあるが、今はもう村のことにかまわんことにしている。
四反・山労及び製炭・木炭組合会計・出稼者・二七才・五000円
せよという。しかし部落全員の支持がなくても金のあるときにしておかねばと
つかわれるので配分は少なくなる。年寄りが自分等が作った木だから個人配分
県行造林は売上は大きいが部落に残る金は少なく、その中から公共のものに
農家8
えす同くとれば部落外の人が利用してもよい。入札と競売を部落内の人と限れば
三畝・山労・評議員・前山林売買業・四三才・七000円
部落外に土地が出ることもない。
農家2
べきであるが、公社造林等より部落直営の方が作業が丁寧でよい。身近かなも
一七年生の炭山でも四O年生の杉山の一一割の収益もないので植林をすすめる
の程管理もゆきとどくので個人使用地もふやしていったらよい。
やすい。-度収益金を皆に配分してその中からまた経費を出させたらよいもの
いうので事業が強行されるととがある。との部落は予算審議が雑で事業に走り
もあるが、総会に発言して反対するとにらまれるので、狭い部落では長いもの
て 三 反 崎 山 労 及 び 製 炭 ・ 木 炭 生 産 組 合 長 ・ 四O才・六ニO O円
植林はすすめた方がよいが、明日の生活に困るような人もいるので公社造林
農家3
を大いにすすめたらよい。収益金は個人にわけるよりも何かの事業につかった
にまかれた方がよい。そういう人が多く、組に帰ると発言が活発で反対意見も
、、、
でるが総会では押しきられてしまう。県官行にとれ以上出すと損だから部落直
よい。
方が皆平等に利益をうけるのでよい。使用地は現状のままですすめていったら
サラリーマンや重だち層は他人労働でうまい汁が吸えるので会社造林をすすめ
ものとしては栗にしたかった(若い働き乎のあるような家﹀がおしきられた。
営か個人植林にした方がよい。公社に二O O町歩出したが、との土地に生まる
部落でできるところは直営の植林をして地味の惑いところを宮行会社造林に
五反・山労及び養蚕・前養蚕技術貝・三五才・三000円
もっていったらよい。収益金は分配せよとの声も強いが、和牛多頭飼育等の営
たことがあり、以後は投票したがらなくなった。使用地はいざという時に光れ
たのである。投票すると本当の意見がでるので、一度役員の発言がくつがえっ
農家4
農資金として利用したらよい。使用地は利用差がでできているが植林意欲のな
円の方がよいというので、わけて欲しいという人が多い。それは困っている人
収益金は半分公共半分個人にわけたらよい。五年先の五O 万円より今の五万
養鶏椎茸にきりかえた方がよい。製炭者以外からは炭材はもう少し高く売って
くした方がよい。木炭では採算がとれないので留山を植林していく必要もあり
た方が円満にいくのではないか。植林日当を一向くする為になるべく配分金を多
毎年継続して収益があるから部落の為に余り残す必要はない。側人に配分し
農 家 自 て 八 反 ・ 農 協 参 事 ・ 評 議 員 ・ 五 六 才 ・ 七 五OON
るから安心感をもって植林できてよい。
い人は植えていないのだからバランスをとる必要はない。また他部落への売却
が禁じられているので価格がやすくなる。
だけでなく給料生活者や昔からの体面を保ちたい人に多い。役員会の決議だけ
六、六反・山労・副区長及び農会長・前村議・四六才・五000円
で公共につかうととはできないのであり去年も道路使用が否決された。という
を考えてやらねばならない。
欲しいという声もある。個人使用地は増加してよいが、人夫貸が高いので管理
農家5
のも役員は中流以上だからよいが私共はそうはいかないという人があり、特に
農家叩三反・商業・町会議員・前旅館業・六七才・七一 O O円
生活費があがってきたので尚の ζと不時の収入がめにつくととになる。
地元に仕事や現金収入を与えるので官行公社造林はすすめた方がよい。部落
農家B 六、五反・山労及び製炭・評議貝・前副区長・四O才・三OOO円
収益金は部落の費用にあてているがとれでよい。官行公社造林を余り広げる
では能率悪くうまく経営できない。部落直営でやれとの声もあるが、人夫貨が
かかるので官県にやってもらった方がよい。収益金は部落公共の為に使い個人
四O年経たないと収益がないの
でその聞の生活に困る人がでてくる。
と炭山が少なくなるので困る。植林では三O
部落有林野の所有と利用に関する研究会局山)
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兵庫農科大学研究報告
第六巻
第二号
農業経済学編
配分には反対。余剰を配分するのは仕方がないだろう。個人植林地の乱植は禁
止してうまく利用したい。植えていない人から文句がでるが部落有力者が植え
ているのでどうにもならない。自分は山に入ったこともなく植林地をつくった
こともない。
の家がそうであるう。
農収金は公共につかうのが多いがもっと個人にわけて欲しい。部落の植林を
農 家 間 五 畝 ・ 製 炭 及 び 出 稼 ・ 前 農 協 職 員 ・ 二 三 才 ・ 六 二O O円
すすめ過まると、部落の仕事に多く出なければならないが労力提供はでまない
ので、あとの管理に困る。炭山が少なくなって原木代が高くなって困るから、炭
を許可して欲しい。そうして公平に利用すべきだ。植えていない人は金がない
焼が減ってくれればよい。使用地はこれまで植林していない人に佼先的に面積
農 家 刊 二 反 ・ 商 業 ・ 監 査 員 ・ 前 村 議 ・ 五 七 才 ・ 一 二000円
収益金は何とかしてもらわんとセッキがこせんというので配分した。使用地
る人が多くなるのではなかろうか。
人で余り発言力がないが、これから問題になるであろう。これから使用地を売
は手入れしなくてもよい山を買うのが一番よい。炭焼が売る。部落にいると惑
い顔したくないので他人が禁止地に植えても知らん顔してやる。使用地を他部
農 家 門 耕 作 せ ず ・ 八 五 才 ・ 六000円
落の親籍等に多少一向く売る場合があり、その人が手入れにきてみつかると、手
昔は評議員等したこともあるが部落のことは考えない。
伝いにきてもらっているという者がある。有力な人(中農位で副業的に炭焼を
しているような人)が個人植林地を多くもっているので整理がつかない。植林
農 家 間 三 反 ・ 山 労 及 び 日 雇 ・ 前 資 産 家 ・ 五 四 才 ・ 四 四O O円
ろ事業をしているが、他部落程分配してもらえないので、もっと配分してほし
官公社造林には賛成でない。部落だけで植林した方がよい。収益金でいろい
権の競売の話もあるが、自己の権利を失うことになるので仲々困難であり、こ
れは小さい砲林地をもっ者も同じであり、結局優先使用権が認められることに
しい。部落有林野のことで総会が聞かれると、夜一t 二時頃までになって意見
い。同じ公共事業につかうにしても、もっと収入のあがる生起面に使用してほ
部務直営で山を管理して収益で日当を出すようにすべきであり、日役は廃止
二、四反・山労及び日雇・組長・前製炭・↑五四才・三000円
なった。
η
いが、もっと使用料をとったらよい。全く植林していない農家も一 O戸あるが
がでる。使用地は自分は経経的余裕がないので栂林できないのだか b仕方がな
農家
して代金を支払ってもらわねば困る。分配金は子供の病気代につかった。山を
分収金は個人に最初配分してから公共施設に金を出すようにするとよい。部
があれば配分してもよいと考えているのは、部落の重だち層(農家13m) であ
付分収金の使途については、まず部落の公共施設や文化施設につかって残り
な乙とが読みとれる。
以上のように、各農家の意向はまちまちであるが、乙れを整理すれば次のよう
ていくつもりだ。
家の済済はよい時と悪い時とあるのだか・り、よくなれば植林したり買ったりし
分割すると個人に集中して貧之人には利益がない。
農 家 間 四 ・ 三 反 ・ 山 労 及 び 製 炭 ・ 農 事 係 ・ 前 鉱 員 ・ 四 六 才 ・ 三 二O O円
宮行会社造林をやると日当がでるのでよい(日当七O O円)。部落事業が多過
ぎるので必要経費以外は配分すべきだ。
落の山は所有権まではっきり個人に分割すべきである。山に働きに行かない者
に困るような層(農家mmMm) に多く、そうでなくても部落事業の多いのに批
り、これに対して少しでも配分を多くして欲しいと考えているのは、毎日の生活
農 家 日 三 、 五 反 ・ 身 体 障 害 者 ・ 四 三 才 ・ 三 五O O円
に個人分割が良い。
同官行或は公社造林を積極的に推進しようとするのも部落重だち居であり、
に不利益であるかは明らかである。
た老人に個人配分希望がある。形式的平等の費用負担がどの層に利益し、どの層
判的で個人配分の増加を希望している農家や給料取りが多い。特に自分が植林し
は部落の山でも益するところは何もないので、何時でも自由に処分できるよう
農 家 河 四 反 ・ 製 炭 及 び 日 雇 ・ 六 六 才 ・ 三 三O O円
働きに行かんで分収金だけ貰うようにしたいという先生もいるが、本当は共
かけても年寄ってからはなるべくやらん方がよい。分収金は家計に入るが大抵
同使用がよい。しかしそういうと反対の声もあり非難もうける。若い時は資本
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が期待されるととは極めて有利だといえる。これには給料取りも賛意を表するの
の直接的部落の山利用を行なわない重だち屑にとっては、育林経営の方が間接的
これに山労旦一履層(農家日)も別の意味で利害が一致する。即ち採草採薪製炭等
等のことが行なわれるのも興味深い。
ある。しかしその様な事情の中で、禁止地に植林し或は他部落の親戚に売却する
をもっ乙とによって、このように使用地を有利に集中拡大することができるので
を買うのが得だというが、その発言も領ける。労働を全然投入しなくとも、資本
同以上のように、旧来の用益秩序を維持してい乙うとする居は、重だち層で
利益が大きく、しかも部落直営のように出役の義務もないので、他人労働で収益
はいうまでもない。一方山労日雇層では、生活の為の日々の労賃が穣げるという
と対立する給料取りや山労日雇層が、官行造林については別の観点からではある
層と下層の人々という単純なものではなく、分配金の使途をめぐっては重だち屑
あることにかわりはないとしても、部落の山をめぐる利害の対立は、単に重だち
伺部落直営の植林を主張するのはその中間層であって、比較的労働力が豊富
が利害が一致するし、乙れに対立するのは部落中堅の農林業で生計を維持しよう
利益がある。
で山役も可能であり、分収より金収を望む人々(農家 248) である。農家路も
の態度をとる。その炭山についても、製炭者からはなるべく廉くしてほしいとい
としている層である。その中間層でも製炭従事者は何れであれ植林地拡大に反対
将米のことを考えて部落直営を希望している。
伺この中間層のうち、官行公社造林の拡大は勿論のこと、部落直営も余り好
がでる。使用地の利害の対立については勿論種々の形をとってあらわれるが、資
うの対して、炭を焼かない下層の人々はなるべく一品く払い下げるようにとの意見
まない製炭者のような直接的利用者もいる(農家 6m)o 山労旦一居(農家四)では
部落直営が多くなると後の管理の為の労働出役が困難となるので、一定以上をす
無償の山山役が苦痛で、日役による部落直営には反対の意向を示している。同様に
本の多少・労働力の多少・兼業種類・年令・これまでの村における家の歴史や地
いて、従来の階層の意味がそれ程問題とならなくなったのは事実であり、部落の
位等が関係してくる。ともあれ最近の兼業機会の増大と離村の可能性等と結びつ
すめない方がよいとする人(農家路)もある。
同また果園造成による農業的利用を企図して二OO町歩の公社造林に反対し
判そのような中で、部落全一員の支持がなくても公共施設への文出が強行され
山をめぐる利害の対立も一義的に定立し難くなったとはいえる。
た人々(農家 8) もある。村に生きる若い働き手の人々であるが、結局は大勢に
おしきられてしまったのである。収益金を公共の為に使うのなら、和牛の多頭飼
たり、総会に発言して反対すると脱まれるので長いものにはまかれている、とい
育の資金に(農家 4)、或はもっと収入のある生産的資金に(農家四)つかってほ
しいというような希望や発展的意見も、直接農業生産に関係のない重だち層や農
られなかったり、投票すると本当の意見が出るので役員が投票を好まない、令一の
るのも事実である。しかし、役員会の決議が否決されて道路整備への支出が認め
ない人はあまり発言力がないので今のところは積極的な反対意見はでていないが
われているように、未だ部落重だち層による部落支配秩序の維持が濃厚に窺え
的使用地については、大規模利用者は大半部落の有力者であって、現状維持
業には余り意欲のない給料取或は製炭・山労・日雇等でその日の生活にも困る人
を主張し、利用面積の少ない農家は大半下層農家であって、発言権がないので不
にも新しい動きがあり、特に若い層からは多くの批判もでているので、労働力の
今に大きな問題になるであろう、等いわれているように、部落の旧い秩序の内面
々に反対されて実現しない。
入するか他人労働を依頼することによって自己の植林地が造成できるので、現利
流出と価値上昇を契機に、部落の秩序も新編成を余儀なくされて、新らしい管理
満であっても現在の利用秩序に反対できない。しかし大半の農家は、労働力を投
用秩序に支障を感じていない。しかし他部落への売却が禁じられているので毛上
利用の秩序が確立されていくものと思われる。
う、人ーでも若い人には村山に関心もなく村に魅力がないのだから(農家 1) とい
見に対して、皆わけたら村の魅力がなくなるので村から出る人が多くなるであろ
判また部落の山は全部所有権まで個人に分割すべきである(農家M) との意
を高価に販売できない事情にあり、乙れで部落内のどの層が最終的に利益を得る
り、なお売却するのは下層の人々が多いので、更に売却価額が廉くなる乙とが推
か明かである。しかも売却される時は、不時の災害や出資を要する時が大半であ
察できる。一方購入する方は、少々高価であっても、手入れのいらないような山
部落有林野の所有と利用に関する研究(高山)
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5
第二号
農業経済学編
うとしている。しかし労働力の減少を契機とじて部落秩序が大きく変貌しようと
第六巻
し七いるのが現状でもあ砂]管理利用の近代化も、外的制度要因と呼応しつつ内
兵隊農科大学研究報告
われるように、かつては消極的意味ではあるが部落有林野の収益分配が留村の一
の予定である。
に木学研究報告六巻一号及び農業と経済三O巻五号等に発表したが、更に別杭
調査には本学堂本高明・畑中陽次両君に参加いただいた。なお研究成果は、既
本研究は昭和三七年度文部省科実研究費による研究成果の一部である。乙の
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要因となっていたと之も窺えるのであり、それが今後の若い同胞にとってはそれ程
林における利用の現況をみたのであるが、要約すれば次のようなことがいえる。
一県の大まかな地域性と所有形態との関係を描けば、後逃地とみなされる県
北に公有形態が、先進地とみなされる県南に私有並に私法人有形態が多くなり、
その権利主張では県南の方が表面化している。その権利主張の背景は、部落有林
野並に部落組織に対する直接的依存から解放された農家が多く、反田部落有地の
二所有形態と利用形態との関係では、公有の場合分収が多くなるがなお総有
良外用益価値上昇があるからと考えられる。
として総有的利用が大半を占める。従って所有名儀如何に拘わらず、未だ全県的
利用形態が最も多く、私有名儀の場合には僅かに個人分割利用が多くなるが依然
に部落構成員を利用者とする総有的利用が大半であるといえる。地域的には県北
に分収利用、県南に分割利用が相対的に多いといえるが、乙れも地域の制度的要
因で多くの変異を・つけるので画一的ではない。
三山村の一事例でみると部落有林野に依存する度合は極めて一両く、このよう
な部落が少なくないことも注目する必要があろう。最高は年間五四O 日を部落の
山で働き、四六万円の収入を得ている農家もある。しかし利用していない農家は
四その利用形態の変化は、かつての直接的労働投入による採取利用の段階か
分配金六万円だけであって、利用度には著しい差が生じていることがわかる。
ら、次第に資本投入による林木育成の段階に重心が移り、従って利用収益の大半
五直接労働を山に投下しない重だち属と通勤者ゃ,間業兼業者、労働を直接部
は、用材を中心とした間接的農家経済への貢献という乙とになりつつある。
落の山に投下して生計を維持している層、!或は使用地造成の余裕さえない日雇局
﹃附記﹄
的推進の蹴があるといえよう。
び
意味をもたなくなって一きたので、その点からの部落有林野の果す機能が変化した
乙とも明らかである。
す
兵庫県における部落有林野の所有形態と地域性並びに利用形態との関係及び山
む
とは各々利害が衝突して、部落の山に対する意向が異るが、現時点では構成員の
意向を無視できないとはいえ、依然として重だち層が旧い用益秩序維持をはかろ
6
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