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ツメレンゲ

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ツメレンゲ
水辺 の
環境
ツメレンゲ
ベンケイソウ科イワレンゲ属
Orostachys japonicus 爪蓮華
肥
厚した根や多肉質の葉など、岩場
やがれ場などの乾燥地に適応した
形態を持つ種が多い、ベンケイソ
ウ科に属するツメレンゲ。岩場や屋根瓦、
石垣のすき間などに生える多年草です。多
肉質で長さが 3 〜 6cm、幅 0.5 〜 1.5cm の細
長い葉の先端がとげのようにとがっていま
す。これを動物の爪にたとえてついた名だ
といわれます。レンゲというのは、葉が極
めて短い茎を取り囲むように地に接して生
える様を、仏様が座る「蓮華座」にたとえた
ことに由来するとされます。
葉の色は緑色または白緑色、ときに赤
みを帯びたものがあります。開花期は 9 〜
11 月。
「蓮華座」にたとえられる形状に群
がる葉の中心から花茎が伸び、数百個の
白色花をびっしりつけ高さ 6 〜 15cm にな
る塔状の穂が直立します。花弁の長さは
約 7mm、先端にとげがあります。一度花
を咲かせるとその個体は枯れてしまいま
すが、下部から短い枝を出して横に次々
と小さな苗が育つので、株全体としては
生き続けます。
江戸時代には観賞用に盛んに栽培され、
ヤツガシラという園芸品種も作られまし
た。長崎効外に鳴滝塾を開いて日本人に医
術を教え、実地に診療も行ったシーボルト。
彼が二度目の来日の際に同地に開いた植物
園の栽培種リストにも、ツメレンゲが含ま
れていました。
分布は、関東地方以西の本州、四国、九
州。水資源機構が管理する豊川用水は、奥
う れ
三河の山々で降った雨を宇連と大島の 2 つ
のダムで溜め、水路によって遠く渥美半島
の先端や静岡県湖西市へ送っています。こ
ななさといっしき
の大島ダムの周辺には、七 郷一色地区など
のツメレンゲの自生地があります。
ツメレンゲは、蝶・クロツバメシジミの
幼虫の食草となる植物です。大島ダム周辺
で春から秋にかけて観察されるクロツバメ
シジミは、愛知県内では局地的にしか観察
報告のない珍しい蝶で、環境省カテゴリで
は準絶滅危惧種に指定されています。そし
てツメレンゲ自体も環境省カテゴリの準絶
滅危惧種です。
しんしろ
新 城市に位置する大島ダム周辺の地元の
方々によって守られているツメレンゲ。今年も
秋に開花の季節を迎えます。
【参考文献など】
・
『レッドデータプランツ 絶滅危惧植物図鑑』 矢原徹一監修 永田芳男写真、山と溪谷社刊 2002 年
・
『写真検索 野に咲く花 増補改定新版』 林弥栄監修、山と溪谷社刊〈山溪ハンディ図鑑〉 2013 年
・
『広報しんしろ No.31』 新城市役所刊 2008 年 5 月号
・
『シーボルト 日本の植物に賭けた生涯』 石山禎一 里文出版刊 2000 年
・日本のレッドデータ検索システムホームページ
水辺の環境
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