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93.エゴノキ
1 エゴノキの花盛り 「この木には特殊な虫コブができる 事 が あ る 。」 な ど と 書 い て い ま し た 。 江戸時代にこんな事が書かれている のですから驚きです。 実 六月に入ると青い実が沢山ぶら下が ってこれもまた面白い光景です。ハク ウンボクの実もまたブドウのようにぶ らさがっておもしろいです。 五月末から秋に実るまで、随分長い 間青いままぶら下がっているのが見ら れます。種子はもっと早くから熟して いるらしい。 この果実の皮にはサポニンが多く含 まれていますが秋になると急激にその 濃度が下がっていくと云うことをどこ かで読んだ覚えがあります。秋に実が 実ると種まきを手伝ってくれる者への 配慮?ということでしょうか。そして また、種まきに丁度良い季節になって 毒を減らすという仕組み? ヤマガラはこの実が大好きで食べに 来て貯食もするのだそうです。そして 忘れ去られると種まき成功ですね。 ヤマガラ以外にも種まきを手伝う者 はいるはずとおもいますが・・。 エゴの花縦切り Styrax japonicaと -1- 花 五月、枝先に五~六個の花をぶらさ げ、それが沢山あるので賑やかで美し い。図鑑では総状にと書いているけれ どとても房には見えない。仲間のハク ウンボクやオオバアサガラを見ると、 こ れ は 確 か に 総 ( ふ さ )に 見 え ま す 。 花冠は下部が筒になってその基部か ら黄色の葯をつけた雄しべが十本ほど 在り、さらにその真ん中を貫くように 雌しべか一本。咲き始めは柱頭が開か ず雄しべは花粉を出しているように見 えました。子房は下位。 マルハナバチが真っ黄色の塊のように な っ た花 粉 を付 け て飛 び 回 って い まし た 。 花には良い匂いがありますが、これ についてはあとで名前のところで触れ た い と 思 い ま す 。( 園 芸 種 で は 赤 い 花 や ピ ハクウンボク花 今頃、何故エゴノキ??書こうとし て私も戸惑いつつ書くことにしまし た。 あちらこちらのご近所の庭に沢 山の実がぶら下がっているのを見てこ れは以前に書いたなぁ・・と思いつつ 家に帰って調べて見ると名前が出てき ただけで中身はありませんでした。し めた、これなら書けそうというわけで す。 庭にエゴノキ・・余り見かけなかっ たけれど最近とても多く見かけると思 っていましたがシーボルトの日本植物 誌の中に「日本の低木の中では最も美 し い 物 の 一 つ だ 。」と い う こ と の 他 「 寺 院 な ど の 庭 園 に 植 え ら れ て い る 」「 そ れはかぐわしい香気を放つ花のためで あ る ・ ・ 。 ま た 、 こ の 木 は 材 が 硬 く白 い の で あ ら ゆ る 彫 刻 に 用 い ら れ る 。」 3 学名と古名 名前のこと 4 ンクの花もあり、最近庭に植えられている物 エゴノキの果実 エゴノキの学名は ハクウンボク果実 5 パート3 16.09.30 私の感動を No93 の 多 く は こ れ の よ う で す 。) 2 HOSSOM 植 物 雑 記 木津川のほとり 山城の国より 図鑑に書いています。そこで Styrax の 意 味を調べてみると「安息香を出す木」とい う古代ギリシャの木の名から来ているのだ そうです。すなわち良い匂いを出す日本の 木ということになるのでしょうか。シーボ ルトの命名です。 。 Styrax obassia てみた人があったのかも知れませんね。 含まれるサポニンから{ゲー}となっ て「えぐい木だ」と云うことなのでし ょう。 方言名 シャボンダマ などもあります。子供達 が実を水の中で潰して麦わらでブクブク したり、シャボンダマをして遊んだので すね。なんだか楽しくなってきます。 エゴノキの冬芽 エゴノキを冬に見ると左の魚の骨のよ うな形の枝に上のような冬芽が乗ってい ます。大きいの(主芽)と小さいの(副 芽)と対になって大きいのに事故あると きは小さな方が伸びます。 人は保険だ と云いますが何だか副芽があわれに思え ます。 冬芽はぼさぼさと毛が生えているよう に 見 え ま す 。ル ー ペ で 見 る と 星 状 毛 で す 。 若枝や葉にも残っています。 OH -2- エゴノキの民俗 ①エゴの実の毒を利用して魚採りをし たというのはよくききます。しかし、 H H エゴとかイゴとか云っていたのは関 東に多いようです。鳥取や島根にもあ りますがこれは後からではないかな・ ・つまり関東地方の方言が標準名とな り山陰はその後からではないかと私の 勝手な推測です。 方言でチシャノキ チサノキ チチ ャ ジサ ズサ チナなどというのは 古語のチサノキからの変化した物で、 全国各地で今でも使われているようで す。 先のシーボルトは日本名としてチシ ャノキとわざわざ書いています。 私の田舎では、これらの他にシャボ ンノキというところがあります。これ も 日 本 全 国 に 多 い 方 言 で す 。( 丹 波 で は 、 O OH H H OH O H CH2OH O エゴノキ冬芽 シャボンノキというとネムノキをさして云う所 も あ り ま す 。) エゴノキの枝先 8 全国的にはブクブクノキ、セッケン ノキ 9 ちなみにハクウンボクは 7 H HH H CH2OH O CH2OH O OH O OH H OH O 右は種子を出している 果実 HH H HH この obassia は シ ー ボ ル ト が そ の 頃 の 日 本 人に聞いた名前=大葉ヂシャそのままです。 チシャノキというのは万葉集にも出てくる チサノキでエゴノキの古名とされています。 知佐の花 咲きける盛りに はしきよし その妻の児と 朝夕に 笑みみ笑まずも ・・・・大伴家持 万葉集巻十八 4106 山ちさの 白露しげみ うらぶるる 心も深く 我が恋やまず 万葉集巻十一 2469 エゴノキというのは「えごい」とか食べ たときのえぐみを表す「えぐ」という言葉 から来ているという説が一般的です。食べ 6 種子の皮も剥いてみた 小骨が集まるところ)をこの木で ④所によってはこの木をアブラチャン といったり、ズサ、という所かありま す。これは種子から油を絞った名残で す。ズサ油といったそうです。種子一 升 か ら や く 五 勺 ( 1.8 ㍑から ㍑)の 0.09 燈用油が採れたそうです。 エゴノキの虫コブ ます。フシは彼らにとって住処で在 り食料でも在ります。 春になるとエゴノキの冬芽近くに潜 んで越冬した受精卵から羽のない雌ア ブラムシが孵り、エゴノキの芽から汁 を吸います。と同時にムシコブができ ます。 アブラムシはこのムシコブの 中 で 胎 生 単 為 生 殖 (雌だけで卵が親の躰の 中 で 孵 る 。)で ど ん ど ん 雌 の 子 供 を 増 や します。 六月も終わり頃になると生 まれる子は羽を持った物に代わりま す 。( 写 真 ⑩ )ネ コ ア シ フ シ は 先 端 に 穴 を 開 け ら れ 、( 写 真 ⑪ ) そ こ か ら 有 翅 の アブラムシが飛び立ちイネ科のアシボソの 仲間、コブナグサ、ケチヂミザサなどにと りつきます。 -3- エゴノキの虫コブはエゴノネコアシフ シが目立ち形も面白いのでよく知られ ていますが、タマバチの仲間によるエ ゴノキハフクレフシやエゴノキミフク レフシもみられます。 エゴノネコアシフシはアブラムシの仲 間によって作られます。フシの中には アブラムシが二〇匹ほどずつ入ってい 10 ②エゴの虫で魚釣りというのは 魚釣りの好きな人以外には余り 知られていないのではないでし ょうか。 エゴノキの種子の中 にウジ虫のような虫がいること があります。ヒゲナガゾウムシ の仲間の幼虫だそうですが種子 ごと採集しておくとなかなか死 なないので魚釣りに重宝するの だそうです。 釣り人にはチシ ャムシとどこかの方言で呼ばれ ているそうです。 ③「牧野新日本植物図鑑」に は エ ゴ ノ キ の 別 名 をロ ク ロ ギ と 云い傘のロクロ (唐傘や蛇の目の 作ったからと書いています。山と 渓谷社の「木に咲く花」ではロク ロを使って色々な細工物に材を使 用したからと書いています。どち らが正しいかは別として材はシー 住人は羽が付いて 今年は特に多かった 12 13 ボルトの云っているようにいろん このイネ科植物の上でも再び胎生単 為生殖を繰り返します。 やがて秋、今度は有翅の物が羽化し エゴノキに移動します。そこで雄・雌 の有性虫を産みます。 この虫が受精 卵をエゴノキの芽の近くに卵を潜ませ る 。春 に な る と こ の 卵 か ら 雌 が 生 ま れ 、 そこから後ははじめからの繰り返しで す。 何故年中をエゴノキで暮らさ ないのでしょうね。 虫コブ入門 各種植物図鑑 日本植物方言集成 丹波但馬の植物民俗 物と人間の文化史・燈用植物 日本古典文学大系・万葉集 シーボルト・日本植物誌(和訳) など 参考とした本 エゴノネコアシフシ 脱出し始め な所に利用されたのですね。 丹波や丹後では牛に荷物を引 か せ る と き の 尻 が い と い う「 へ 」 の字型の木に使い、また薪を縛 るネジに、背負い板の軸木、天 秤棒、また、箕の縁採りの材料 に細い物を利用したと云います。 粘り強くしなり、容易には折れ ないという性質が利用されてい ます。 11