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フェアプレイ教育に関する一考察 A study on Fair Play Education
フェアプレイ教育に関する一考察 A study on Fair Play Education 1K05B186 指導教員 主査 友添秀則先生 【本研究の動機】 私 はこれまで中 学 ・高 校 ・大 学 でサッカーを行 ってきた。その中で私はフェアプレイを心掛けてき 浜 大輔 副査 寒川恒夫先生 的 、包 括 的 な定 義 をすることは不 可 能 であり、本 研究では H.Lenk らと滝沢のフェアプレイの定義 を基礎に置くこととした。 た。しかし中 にはアンフェアなプレイが多 発 し、楽 また、スポーツマンシップやフェアプレイの概念 しい試 合 とは程 遠 いものもたくさんあった。また、 には、イギリスの有閑 階 級のエートスとの強く結び 私 自 身 フェアプレイを心 掛 けたと言 っても、思 わ ついた差 別 的 な概 念 であるとの批 判 がある。よっ ずファウルをしてしまうことなどがあった。私は将来 て、教 育 者 はこれらの批 判 を認 識 しつつ、新 たな 教員としてフェアなスポーツを教えたい。そのため スポーツのフェアネスを創 造 していかなければな にはどのような授 業 を行 えばよいのか疑 問 を持 ち、 らない。 本研究を行うこととした。 【第 二 章 フェアプレイ教 育 に関 する海 外 の実 践の批判的検討】 【本研究の目的】 第 二 章 では、海 外 の実 践 の代 表 例 としてカナ ・ フェアプレイ教育の課題を明らかにする ダのフェアプレイ教育とダリル・シーデントップのス ・ 今後のフェアプレイ教育の在り方 を具体的に明 ポーツ教育の実践について批判的に検討した。 らかにする 前 者 で は 、 フェ ア プ レ イ に 関 す る 同 意 書 や 顕 彰 制 度 、フェアプレイに関 する事 象を学 習 課 題 と 【本研究の方法】 ・ 本研究は文献の講読による。 する方法などが行われている。 後 者 のフェアプレイに関 する具 体 的 な教 授 方 略 としては、フェアプレイ賞 、フェアプレイを強 化 【各章の概要】 するアカウンタビリティ・システム、儀 式 形 式 の指 【第 一 章 導 、明 確なチーム選 抜 システムなどが提 示 されて スポーツマンシップとフェアプレイの 概念的検討】 いる。 第 一 章では、スポーツマンシップとフェアプレイ 両 者 はフェアプレイの内 容 を具 体 的 に規 定 す の概念的検討を通して、本研究におけるフェアプ る点で共通している。これについて以下の 4 点か レイの概念を操作的に定義した。 ら批 判 した。1)フェアプレイの精 神 の理 解 が欠 落 スポーツマンシップとフェアプレイは語源こそ異 する、2)フェアプレイに関 する多 様 な意 見 を無 視 なるものの、英国のパブリック・スクールのスポーツ する、3)現 状 のスポ ー ツを盲 目 的 に是 認 する 体 において強 調 されるようになった点 で共 通 してい 制護持的なスポーツ人を育てる、4)道徳性を損な る。これらは永 遠 ・絶 対 ・不 動 の概 念 ではなく、論 う。 者 によってもその意 味 内 容 は異 なる。そのため、 【第三章 日本の実践に見る改善策の検討】 あらゆる時 代 や地 域 に妥 当 性 を持 つように本 質 第三章では、日本のフェアプレイ教育に関する 実 践 の検 討 を通 して、海 外 の実 践 の問 題 点 に対 する改 善 策 について示 唆 を得 ようとした。主 な実 能な限り主体的に考えさせる。 3) フェアプレイやフェアプレイの精神について多 践として以下の 4 つを取り上げた。 様 な 意 見 を 認 め、フェア プレイを創 り 出 す 姿 ・ ボールゲームのグルーピングと環 境 づくりの実 勢を忘れない。 践 4) ルールづくりは、子どもたちがその必然性を認 ・ グループづくりについて考えるリレー走の授業 識し、自らの紛争解決能力に依存した形で行 ・ 男女がともに楽しむためのルールづくりの実践 う。 ・ 荒れた生徒を巻き込んだサッカーの授業 【第 四 章 今 後 のフェアプレイ教 育 の在 り方 に関 する一考察】 5) スポーツ場面において子どもたちが抱えたトラ ブルや問題が起きた直後に行う。 また、勝 利 至 上 主 義 を緩 和 あるいはコントロー 第 四 章では、これまでの内 容を踏 まえて、今 後 ル可能にすることなしに、スポーツ全 体をフェアな のフェアプレイ教 育 の在 り方 を具 体 的 に明 らかに ものにすることはできない。よって、勝 利至上主義 しようとした。 に陥っているスポーツの現状、それを生み出す原 まず、日 本 の実 践 のように、フェアプレイとその 因 や解 決 策 などについて子 どもたちに伝 えたり、 精 神を創 り出す学 習 が重 要である。その方 法 とし 子 どもたちと考 えたりすることが求 められる。これ ては、1)スポーツの文 化 の歴 史 とその背 景 にある は具 体 的 には、体 育 理 論 の授 業 や総 合 的 な学 思想を客 観 的に学ぶ学 習、2)ルールづくりを通 し 習の時間などで行うことができるだろう。 た学 習 、3) 公 正 なグルーピングを通 した学 習 な 【結章 本研究の要約と今後の課題】 どが考 えられる。これらに共 通 して留 意 すべき点 として、以下の 5 点が挙げられる。 1) フェアプレイとその精 神 について教 師 が理 解 し、学習内容を意図的に仕組む。 2) 発 達 段 階 などを考 慮 しつつ、子 どもたちに可 最 後 に 本 研 究 の 要 約 と 今 後 の 課 題 につ い て 記した。 今 後 の 課 題 は、フェア プ レイ 教 育 に 関 する 実 践 の積 み重 ねによる具 体 的 なカリキュラムの作 成 し、フェアプレイ教育を推進することである。