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ダブルペロブスカイト型酸化物の 熱電性能に対する光ドーピング効果

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ダブルペロブスカイト型酸化物の 熱電性能に対する光ドーピング効果
The Murata Science Foundation
ダブルペロブスカイト型酸化物の
熱電性能に対する光ドーピング効果
Photo-Doing Effect on the Thermoelectric Properties of Double-Perovskite Oxides
H25助自13
代表研究者 岡 崎 竜 二 名古屋大学 理学部 物理学科 助教
Ryuji Okazaki
Assistant Professor, Department of Physics, Faculty of Science, Nagoya University
Thermoelectric power generation is an environmentally friendly energy-conversion technology.
An important feature in thermoelectrics is that it is utilized in various situations due to its simple
structure without any moving parts compared with other heat engines. This is highly favorable
for harvesting electricity from waste heat, a large amount of which is exhausted from a wide
variety of heat sources such as automobiles or power plant boilers. It is recently shown that the
solar light is also used as the heat source to produce the electricity through a thermoelectric
device. This utilizes the solar thermal process, known as the solar thermoelectric generator.
Another way for a usage of the solar light with thermoelectrics is to use the photovoltaic effect.
When the photon energy of irradiated light exceeds the band-gap energy, the electron-hole pairs
are created in insulating materials. Such excited carriers contribute to the electrical transport, as
well as the thermoelectric transport. Photo-Seebeck effect, the Seebeck effect of photo-induced
carriers, is expected to be observed under illumination. Here we report the observation of photoSeebeck effect in tetragonal PbO single crystals. The photo-induced carriers contribute to the
transport phenomena, and consequently the electrical resistivity decreases and the Seebeck
coefficient decreases with increasing photon flux density. A parallel-circuit model is used to
evaluate the contributions of photo-excited carriers. The photo-induced carrier concentration
increases almost linearly with increasing photon flux density, indicating a successful photodoping effect on the thermoelectric property. The mobility decreases by illumination but the
reduction rate strongly depends on the illuminated photon energy.
しろ積極的に利用するエレクトロニクスとして
研究目的
近年注目を集めている。物質に温度差を付け
限りあるエネルギー資源の有効利用は、持
たとき、その温度差に比例した熱起電力が生
続可能な社会を構築する上で最も重要な課題
じ、これをゼーベック効果(熱電効果)と呼ぶ。
の1つである。その中でも、自動車や工場・発
このとき、
(1)熱起電力が大きく、
(2)試料の電
電所、大型計算機などから捨てられる廃熱は
気抵抗率(内部抵抗)が小さければ熱電性能が
重要なエネルギー資源であり、そのような廃
高いと言え、その場合には試料端を短絡する
熱を利用する熱と電気の相互変換(熱電変換)
ことで大きな電力を取り出すことができる。
は、クリーンなエネルギー変換技術・廃熱をむ
本研究の目的は、熱電変換材料として期待
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Annual Report No.28 2014
されるダブルペロブスカイト型酸化物を中心と
光照射を行うことで電子・正孔対を形成し、
して、いくつかの酸化物半導体の熱起電力お
界面の電気化学ポテンシャルによって電子と
よび電気抵抗率に対する元素置換効果および
正孔をそれぞれ反対方向に移動させ試料両端
光ドーピング効果を明らかにすることである。
で電圧を取り出す(光電変換)
。
ごく最近、筆者らはダブルペロブスカイト構造
我々が利用すべきエネルギー資源として、太
をもつルテニウム酸化物A 2 BRuO 6 が熱電変換
陽からの光エネルギーだけでなく、あらゆる生
物質の候補となることを提案した。本物質は、
産活動から排出される膨大な廃熱が挙げられ
元素の一部置換によるわずかなキャリアドーピ
る。熱電変換は、このような廃熱を利用できる
ングによって、200 μV/Kほどの大きなゼーベッ
エネルギー変換技術の一つであり、火力発電
ク係数を示す。さらに、熱伝導率は0.3 W/Km
のように動力(力学的仕事)を介する発電方式
と非常に低く、僅かな熱で大きな温度差をつ
とは異なり、物質のゼーベック効果を利用し
けることが可能である。本研究では、本物質群
て熱と電気の直接変換を行う。ここで、ゼー
を中心として、元素置換効果だけでなく、光に
ベック効果とは、試料に温度差ΔTを付けた時
よるキャリア注入効果(光ドーピング効果)を
に、物質中のキャリアの拡散によって起電力V
試みる。そののちに、それら2つの手法を効率
= SΔTが生じる現象であり(S:ゼーベック係
的に組み合わせることで、それらの物質群の熱
数)
、物質の熱電気効果の一つである。キャリ
電性能のさらなる向上を目指す。
アが電子であれば負の、正孔であれば正のゼー
ベック係数を示す。熱電変換の効率は、無次
概 要
元性能指数ZT = S2 σT/κ(σ:電気伝導率、T:温
再生可能なエネルギー資源の有効利用は、
度、κ:熱伝導率)で与えられ、大きなゼーベッ
地球環境との調和と共に持続可能な人類社会
ク係数を持ち、内部抵抗(=電気抵抗率σ -1)が
を構築していくための、重要な課題の一つであ
低く、大きな温度差を付けるためκが小さけ
る。とりわけ、太陽から降り注ぐ光エネルギー
れば効率が高い。一般的にゼーベック係数と
は重要なエネルギー資源であり、そのエネル
電気伝導率はトレードオフの関係にあり、キャ
ギー変換技術として知られている太陽熱・太
リア濃度を増すと、ゼーベック係数の絶対値
陽光発電に対しては精力的な研究開発が進め
は減少し電気伝導率は増大する。したがって、
られてきた。太陽熱発電では、反射鏡やレンズ
性能指数はキャリア濃度の関数としてピーク
等の光学系を用いて太陽光を集光し、それを
を持ち、最大効率を与えるキャリア濃度は1019
熱源として利用することで蒸気タービンを回転
cm-3 程度であることが知られている。廃熱利用
させ発電を行う。一方、太陽光発電(太陽電池)
に対する熱電変換の利点として、小型軽量化
は、上記の太陽熱発電とは原理が異なり、絶
が可能、あらゆる熱源から電力を取り出すこと
縁体に光照射することによって形成される電
ができる点が挙げられるだろう。
子・正孔対を利用する。絶縁体にそのバンド
太陽光発電・熱電変換という上記の2つのエ
ギャップよりも大きな光子エネルギーをもつ光
ネルギー変換技術は、これまで互いに独立に
を照射すると、価電子帯から伝導帯に電子が
発展してきた。本研究では、これら2つを組み
励起され(光電効果)
、電子・正孔対が形成さ
合わせた新しいエネルギー変換技術の開発・
れる。太陽電池では、半導体のpn接合界面に
検証を進める。通常の絶縁体に光照射を行う
─ 348 ─
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と、光電効果によって電子・正孔対が形成さ
グにとどまらず、より高効率の光熱電変換を達
れるが、これらはキャリアとして伝導に寄与す
成するために、波長選択した光照射を行う必
るため電気伝導率が増加する振る舞いが観測
要性があることを示唆する。
される。この現象は光伝導として知られており、
実際、硫化カドミウム(CdS)などの大きな光伝
導性を示す物質は光センサーとしても活用さ
れている。一方、光照射によって形成された
キャリアは、電気伝導率(光伝導)だけでなく、
他の熱電気輸送現象にも関与するはずである
[1]
。例えば、上で示したようなゼーベック効果
にも寄与すると考えられ、このように光励起さ
れたキャリアによるゼーベック効果は、フォト
ゼーベック効果と呼ばれる(図1)
。我々は、酸
化物半導体を中心としてフォトゼーベック効
果の検証を進めており、酸化鉛(PbO)単結晶
においてフォトゼーベック効果を観測した。酸
化鉛のバンドギャップよりも大きな光子エネル
ギーをもつ光照射によって輸送係数は大きく
変化し、光照射によって形成された電子正孔
対が、キャリアドープ効果として熱電輸送現
象にも寄与していることが示唆される。より詳
細に輸送係数の光子エネルギー依存性を測定
した結果、光励起されたキャリアの移動度が
入射光の光子エネルギーに強く依存しているこ
とが分かった。本結果は、単なる光ドーピン
図1 フォトゼーベック効果
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−以下割愛−
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