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脱衣・服ぬらし・不眠等が継続していた 利用者さんへのアプローチ

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脱衣・服ぬらし・不眠等が継続していた 利用者さんへのアプローチ
(実践報告②)
脱衣・服ぬらし・不眠等が継続していた
利用者さんへのアプローチ
社会福祉法人
社会福祉法人 和歌山県福祉事業団
古座あさ
和田美保
古座あさかぜ園
あさかぜ園
社会福祉法人和歌山県福祉事業団 古座あさかぜ園
開設:昭和57年1月13日
所在地:和歌山県東牟婁郡串本町上田原1237
平成27年度 現在の利用者数 定員
施設入所支援
生活介護
就労移行支援
短期入所
50名
54名
6名
5名(空床型)
日中の過ごし方
平日は3つの班に分かれて活動に取り組む。
1班 活動班― リサイクル 清掃 創作 散歩
ドライブ
2班 創作班― 自立課題 紙すき 散歩
ドライブ
3班 介護班― 生活支援を中心
(足浴 マッサージ 日光浴 個別散歩 ドライブ)
HEさんのプロフィール
HEさん(女性)29歳
自閉症 重度知的障害
療育手帳A1
障害支援区分 6
身長 159cm
体重 42㎏(H26年9月)
(現在46㎏)
◎アセスメント
(食事) (1日2200Cal)
・箸とスプーンを使って食べるが、口にたくさん
詰め込むことがあるため、粗刻みにしている。
・他人の食事に手を出してしまうことがある。
・体重のアップダウンがあり、3年前から痩せて
きたため(39㎏)主菜1.5倍に増やしている。
(排泄)
・排便は5~6日に一度 緩下剤服用。
(睡眠状況)
・平均睡眠時間4~5時間
入眠時間 早くて23時頃
・朝まで寝ない時 月4~5回
(服薬)
・セレネース0.05g(夕後)アキネトン0.05g(夕後)
ソメリン10㎎(眠前)
(コミュニケーション)
・指示理解・・簡単なことは通じる
・伝達方法・・本人の要求はクレーン動作が主。
お菓子等は両掌を重ねて「下さい」と示すことが
できる。
有意語は見られない。
◎好きなこと・・
•
•
•
•
•
幼児用の玩具 (いつも手に持っていたい)
仲間と一緒の散歩・ドライブ。
肩や背中をタッチングしてもらうこと。
食べること
日向ぼっこ
◎苦手なこと、配慮すべきこと
・じっとしていること (食事・ドライブ等は座れる)
・靴を履くこと
・お風呂に浸かること
・洗髪・体を洗われること
・歯磨き
・異食(噛みごたえがあり口の中で長持ちするもの
靴底のゴムなど)
・便秘・不眠・貧血傾向・痩せ気味
問題となっている行動
(減らしたいと考える行動)
• 頻繁に衣類の交換を要求し、全裸になること
もある。
• 脱いだ服を水につける。
・ トイレ以外での排泄
• 服を探して他人のロッカーを開ける
• 靴や服の襟を噛みちぎる。
なぜ、脱いだ服を水に浸けるのか?
↓
次の服が欲しいから
↓
職員は別の服を出し渡す
↓
また次の服が欲しい
水につけにいく
・・・この繰り返し
この行動が起こる原因は・・・?
何故、次々服が欲しくなるのか?
・服へのこだわり?
・フィット感がいいのか?
・好みの色や柄があるのか?
・することのない時間が多い?
・要求の手段?
服を水に浸けない・・・代わりに
↓
まずは、
「脱いだ服は職員に戻す
脱いだ服は職員に戻す」
脱いだ服は職員に戻す
ことを目標に
HEさんが、この行動に移せるよう、行った手立てとして
• 不用な衣類を片づけた
不用な衣類を片づけた
• 服の管理場所を一か所にした
• 洗濯物の入っているカートは見せない
• 服を持ち運ぶ籠を一つに決めて、持ってくるよう手振りで示した
• 着替えたい時
着替えたい時は、脱いだ服をその籠に入れて職員に渡すよう教える
• 渡す枚数を決めた(選べる枚数を決める)
渡す枚数を決めた(選べる枚数を決める)
• 日中、頭・肩・首などのマッサージを行い関わりを持つよう心掛けた
日中、頭・肩・首などのマッサージを行い関わりを持つよう心掛けた
• 今までの服の置き場所に服がないことを、要求
までの服の置き場所に服がないことを、要求
の度にその場所を見てもらって「ない
の度にその場所を見てもらって「ない」ことを確
ない」ことを確
認してもらう。
してもらう。
• 何もしていない時間帯に交換要求が多いため、
していない時間帯に交換要求が多いため、
散歩やドライブを週2回以上取り入れた。
散歩やドライブを週 回以上取り入れた。
• タイミングを見ながら
タイミングを見ながら本人
を見ながら本人の好む玩具や新しい
本人の好む玩具や新しい
服を買い足して、脱ぐことから気をそらせるよう
にした。
支援を統一し取り組んだ結果
HEさんの行動に変化が見
られた・・・
その頃をグラフに表すと
古座あさかぜ園
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古座あさかぜ園
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変わってきたこと
・脱衣の回数が全体的に減ってきた
・裸でいる時間が少なくなった
・水に服を濡らすことが少なくなった
・水に服を濡らすことが少なくなった
・職員との関わりが多い日は脱衣が少ない
・重ね着をしている時は穏やかに過ごせている。
(多い時で10枚以上)
(多い時で 枚以上)
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• 職員の負担が軽減された(洗濯物の量、職員
の手を
の手を引っ張る、落ち着いて過ごす時間が長く
なった)
なった)
• 用意している服以外要求しなく
用意している服以外要求しなくなった
している服以外要求しなくなった
• 以前まで睡眠時間が不規則であったが、安定
以前まで睡眠時間が不規則であったが、安定
されてきた
されてきた
• 一番良かったことは、笑顔
一番良かったことは、笑顔が
笑顔が増えたこと
「服を脱ぐ」ことが軽減されたことで
脱いだ服を水につけるという行動も減ってきた
服を探す行動も減り→ 睡眠時間が安定してきた
(22時前後に入眠・起床は5時頃)
以前は、就寝時間は12時以降のことが多く、
一睡もしない日が月に数回あった。
十分な睡眠をとれるようになったことが、日中の
情緒安定にも繋がっているのではと思われる。
相乗効果 (°∀°)o彡
◎本人にとって、楽しみとなることも増やしていこう
毎日19時にティータイムを実施することに
しかし・・
夕食が終わって棟へ戻るなり、お菓子を要求し支援室へ
入ろうとする。 支援室に、入れないと全裸になる。
支援室前で放尿する・ドアを叩き続けるという行動が現れ
てしまう。
◎ 本人が要求してきた時は新しいことを教えるチャンス
(講師の助言)
・写真カードを導入
《対応の方法》
① 支援室にHEさんが要求を伝えてきたら
お菓子の写真カードを本人に渡す。
② 写真カードを持って部屋で待ってもらう。
付添職員はテーブルを用意し一緒に待つ。
③ 別の職員が、おやつを運んでくる。
④ 写真カードとおやつを交換する。
⑤ 『いただきます』 (*´∀`*)
《結 果》
思いもかけず・・・!\(^o^)/
◎更にステップアップを目指す
10月20日
時には同じ服を2日以上着ていることも
あるため、一日一回起床時に新しい服上下
一組を渡し着替えることを始めてみた。
しかし、
一度着てもすぐに脱いでしまった
↓
様子を見たいので、余分な衣類は用意せず
上下一式のみでしばらく継続した。
すると…
起床時、毎朝のように全裸になる
↓
・食事前に全裸になることが増えた。
・食堂へ行くタイミングで服を渡し食堂へ誘導す
るようにした。
・しかし、食後は棟内に戻ると再び脱いでいた。
・ 次第に、昼間や夕食前でも支援室の
おやつが気になり全裸になることがエスカ
レートしていった。
• 同時に睡眠状態も乱れ、一睡もしない日
が徐々に増えていった。
その頃のグラフ
古座あさかぜ園
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10/16から
おやつ開始
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11月
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10 /20 起床時
一組渡す
11月17日
1ヶ月ほど様子をみたが、落ち着く様子はない。
服を脱ぐ・水に濡らす・全裸になる ことが続いて
いるため、対応を変更する。
↓
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15
元の対応に戻す
・起床時、一式着替えることをやめる
・重ね着している時が落ち着いているようなの
で、以前のように状況に応じて数枚足して選ん
でもらう。
・外出時に着ていった服をしばらく気に入ってい
るので、新しい服を多めに購入しておき、飽き
てしまったら次の服へと繋げて様子をみていく。
• 夜のティータイムは楽しみの一つなので継続し
ていく。
• おやつが気になり再々支援室に入ってこようと
するので、菓子棚の前にカーテンをつける。
うれしいことも・・・
• テーブルに座り待つことは出来てきた。(現在は
絵カードとテーブルを自ら部屋へ運び座って職
員が来るのを待つようになった)
11月20日
・対応を変更してから3日立ち、夕方おやつ
の要求はするが、重ね着(5枚~8枚)して脱
ぐことが減り落ち着いてきた。
・1週間に2~3回はドライブや散歩に参加で
きている。
・一睡もしなかった日・・・今月1回のみ
古座あさかぜ園
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11月
12月
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11/17元の対応
に戻す
2日
3日
4日
5日
6日
7日
8日
9日 10日 11日 12日 13日 14日 15日
服をぬがなくなったわけではないが・・・
HEさんの生活に・・・
• 良い笑顔が増えた
• 楽しいことが増えた(ドライブ・散歩)
• 服を着ている時間が増えた
• 服を着て、好きな玩具を抱えて一人で過ごせ
る時間が増えた
↓
生活の質が向上できた
職員は・・・
精神面、業務などの負担が軽減された
・HEさんの行動の理由が少しはわかってきたことで
イライラが少なく、心にゆとりができた。
・穏やかな気持ちで他の利用者と関わりを持てるよう
になった。
・洗濯業務が軽減された。
↓
支援力の向上
研修を通じて学んだこと 良かったこと
問題を細かく観察していくことで見えてくるも
のがたくさんあった。
・ この行動の意味
・ したいことが出来なかった時に出る行動
研修を通じた支援で難しいと感じたこと
• 良い日が続いても崩れる時もある。その時によって
違った動きの時もある。とっさの判断に悩むことが
あった。
例えば・・何度も服を渡しても水につけに行く時、
次は何枚渡そうか、やめておこうか、また濡らして
しまうのかなあ・・・など
・ 本人が、何をどこまで認識できているのかを把握す
ること。
研修を通じて施設として
取り組めたこと 頑張れたこと
• 関わりを持つ職員に対して、その都度研修結
果を報告し情報を共有できた。
• 日々の情報交換は確実に行って統一した支
援ができた。
◎その後も支援は継続していく・・・
相変わらず衣類に対するこだわりも継続中
《最近のトピックス》
自ら、スキンシップを求めるようになる。
眠前薬を飲むと、夜勤職員の手を引いて自室
に連れて行き、一緒に布団に入ろうとする。
背中や肩を撫でてあげると、10分程で眠りに
つく・・・。
どの支援者が対応しても同じように
最後に・・・研修を通じて感じたこと
• 問題行動を完全に無くすことを目標にするのではな
く、少しでも減らせればいい、そして、良いことが一
つでも増えることを、みんなで喜べることが大事。
• 実践研修を受ける中で一番大切だと感じたことは、
関わりを持つ職員全員が同じ方向を向いて進んで
いかなければ、状況を変えることは難しく、チーム支
援の大切さを再認識。
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