...

無機固体化学研究室 無機合成研究室

by user

on
Category: Documents
15

views

Report

Comments

Transcript

無機固体化学研究室 無機合成研究室
環境応用化学科
環境応用化学科
無機材料化学分野
無機化学分野
生命科学部/ 環境応用化学科
無機固体化学研究室
無機合成研究室
教授 明石 孝也
教授 石垣 隆正
Takaya AKASHI
Takamasa ISHIGAKI
研究室の学び
研究室の学び
「良いものを作り、長く使う」という理念を掲げ、600℃
~ 1700℃という高温でも耐えられる金属材料やセラミッ
クス材料の開発に取り組んでいます。これらの材料は、燃
料電池、粒子状物質集塵フィルター、タービンなどに応用
され、限りある化石燃料の効率的利用に役立ちます。
また、都市鉱山(廃棄された電子部品など)から貴重な
金属を取り出すための技術開発も行っております。これも、
限りある資源を有効活用するための研究です。
私の研究室では、環境・エネルギーに関連するセラミッ
ク(無機固体材料)微粒子の合成と応用を研究テーマとし
て取り上げています。具体的には酸化チタン、酸化亜鉛、
チタン酸バリウムなどのセラミック微粒子を水溶液中で合
成し、光触媒活性、発光特性、電気・磁気特性を向上させ
るための実験を行っています。環境に優しい方法で高機能
セラミックス材料を合成して、持続可能な環境と社会を生
み出すのに貢献する人材を社会に輩出しています。
社会との接点
社会との接点
当研究室では「無機素材を扱うメーカーで働く実践的な
技術者・研究者の育成」を目指しており、卒業生の多くは、
素材・電気製品・医薬品・住宅・自動車・食料品など各種
製造業の技術職・研究職・営業職として巣立っています。
これは、「良いものを作り、長く使う」という当研究室の理
念が実社会においても重視され、当研究室の教育と技術が、
即戦力を必要とする製造業において、活かされていること
を意味しています。また、私は Science や Technology
を世界の共通語として位置付けています。これらを学ぶこ
とが、グローバル社会への貢献に活かされることでしょう。
一方で、研究内容に直接結びつかないような流通業や保
険業といった職に就いている卒業生もいます。このような
学生達は、当研究室の研究テーマを通じて身に付けた、次
のような能力を社会で活かしているものと思います。それ
は、問題の根源を掘り下げる「解析能力」、問題解決のため
に独創的アイデアを生み出す「発想力」、アイデアの実証と
論理的説明によって周囲を説得させる「プレゼンテーショ
ン能力」です。
当研究室で行っているセラミックス微粒子の研究は、皆
さんの身近に存在する様々な電子デバイス、光デバイスの
高性能化、小型化に大変役立っています。
代表例は、スマートフォンに使われている積層セラミッ
クスコンデンサという部品です。この部品は、一台のスマ
ホに 400 ~ 500 個使用されています。携帯電話がショル
ダーバッグ程度の大きさから、手のひらサイズになり、さ
まざまな機能を有するスマホになるには、使用されている
電子部品の小型化が大きな役割を果たしました。当研究室
では、現在使用されている原料粉末の大きさ、サブミクロ
ンサイズ(1mm の数千分の1程度の大きさ)を一桁以上小
さくして、粒径 10 ナノメートル(ナノメートルは 10 ー 9m)
以下の微粒子に置き換える研究を進めています。ナノメー
トルサイズの微粒子を利用することにより、電子部品はさ
らなる小型化、高機能化が期待されます。
セラミックス微粒子の身近な使用例をもう一つあげると、
化粧品への応用があります。当研究室では、ファンデーショ
ンやサンスクリーンに使用できる、形態、大きさをコント
ロールしたセラミックス微粒子合成にも取り組んでいます。
主な卒業研究テーマ
◉液相レーザーアブレーション法による酸化イットリウム、酸化
チタン、チタン酸バリウム微粒子の合成
◉超音波ゾル - ゲル法による酸化チタン微粉末の合成
◉メカノケミカル法による酸化チタン光触媒の合成
◉酸化亜鉛、酸化チタン微粒子の水熱合成
◉水酸化鉄微粒子の合成と酸化鉄配向焼結体の高機能化
◉酸化亜鉛ナノサイズ粉末の液中分散
主な卒業研究テーマ
◉固体酸化物燃料電池の耐久性・信頼性向上
◉高温用セラミックス材料の更なる高温耐久性向上
◉排ガス浄化触媒・触媒担体の長寿命化
◉国内鉱石からのレアメタルの分離・捕集
88
環境応用化学科
環境応用化学科
水科学分野
物性化学分野、機能性材料化学分野
機能性物質科学研究室
教授 大河内 正一
教授 緒方 啓典
Shoichi OKOUCHI
Hironori OGATA
研究室の学び
研究室の学び
水に関する研究で、
“水”の分子・原子レべルの基礎研究から、
食品、飲料水、アルコールの熟成に係わる水、さらに血液や
尿などの体内の水や温泉水について、応用を含めて幅広く研究
を行っています。
応用研究では、
我々の生体に類似した水として、
“生体水”を提案し、それらの水が Anti-Aging効果を有する
人工温泉水や食品、飲料水など広く応用可能であることを提
案しています。さらに、省エネ・省 CO2のため、水素社会が志
向されています。その水素をエネルギーだけでなく、水素の抗
酸化力を利用した健康・美容への応用研究も行っています。
私の研究室では、分子エレクトロニクス材料、有機—無
機複合材料、ナノテクノロジー基盤材料、高分子材料等、
将来の科学技術を支えていくことが期待されている様々な
機能性材料の開発およびそれらを用いた各種デバイスへの
応用研究、機能性材料の機能発現機構の解明に関する研究
を行っています。化学系企業や電気系・機械系メーカー、
大学、研究機関等で新材料開発に携わる人材を社会に輩出
しています。
社会との接点
社会との接点
現在、再生可能エネルギーのひとつとして、太陽電池に
注目が集まっていますが、当研究室で開発を行っている有
機 - 無機複合型太陽電池は、従来の Si を用いた太陽電池に
比べ、大幅な低コスト化・高機能化が期待されており、新
規太陽電池構成材料の開発に関する研究が世界中で盛んに
行われています。近い将来には次世代太陽電池として,太
陽電池の普及に大きく貢献するでしょう。また、地球上で
最も多量に存在するバイオマスである樹木構成成分のリグ
ニンは、一部が香料等として利用されているだけで残りは
燃料として利用するか、廃棄されているのが現状です。リ
グニンを付加価値の高い有機材料等に変換することで活用
できれば、循環型社会の形成に大きく貢献することが期待
されます。本研究室では、細菌を用いたリグニンの中間代
謝物である芳香族有機分子を用いた様々な高機能性材料の
開発を行っています。木質バイオマス資源の高機能材料へ
の変換利用により、脱炭素社会を目指した資源循環・環境
再生スキームを構築することができます。
“水”が 1990~ 2000年前半にかけて社会的に大きなブー
ムとなり、特に水分子が水素結合で繋がった水クラスターが小
さい水程、美味しく、健康によい水とされマスコミも含めて大き
な話題となっていました。科学を装った怪しげな水商品も数多
く市場に出回っていました。2005年、当研究室の論文に基づき、
東京都はそれらの有効性を否定し警告を発し、怪しげな水が終
焉するきっかけをつくりました。一方、
“生体に有効な水とは何か”
という答えの一つに還元水を提案してきました。天然還元水と
して温泉水があり、その還元特性として抗酸化力に基づき、癌
などの多くの病気や老化の原因と考えられている活性酸素を消
去する効能を有することを明らかにしました。さらに温泉水は
紫外線などによるシミやソバカスなどの原因となるメラニンの生
成抑制効果や加齢に伴い酸化する我々の皮膚を、継続的温泉
入浴で酸化抑制し、老化抑制に繋がる提案をしてきました。そ
れ故、殺菌のためとは故、温泉水への塩素添加は温泉水の効
能を失わせる重要問題と指摘し、
“源泉掛け流し”温泉の流れ
に大きく貢献してきました。日本は観光立国を目指し、今年訪
日外国人数が 1000万人を越えました。温泉は重要な観光資源
であり、歴史的温泉文化を有する日本の温泉は、今後大きな成
長産業とし期待できます。
主な卒業研究テーマ
主な卒業研究テーマ
◉燃料電池システムから排出される CO2 および水素の応用によ
る新たな Anti-Aging 浴槽水の開発
◉生体に近い水、
「生体水」の製造法の開発および応用
◉水素の抗酸化力に基づく健康・美容などへの応用
◉省資源・省エネに関係した生物劣化抑制に基づく長寿命木材
に対する天然鉱物による抗菌・抗カビ剤の開発
◉ ORP(酸化還元電位)-pH 関係に基づく温泉調査
◉バイオマスを用いた機能性材料の開発
◉真空蒸着法による新規ヘテロ接合型有機薄膜太陽電池の作製
と特性評価
◉固体NMR分光法によるバルクヘテロ接合型有機薄膜太陽電
池への添加剤効果の解析
◉電着法によるナノ炭素材料への Pt-Ru 金属ナノ粒子の担持お
よびメタノール酸化活 性評価
89
生命科学部/ 環境応用化学科
人間環境化学研究室
環境応用化学科
環境応用化学科
有機化学分野
有機化学分野
生命科学部/ 環境応用化学科
有機典型元素化学研究室
高分子化学研究室
教授 河内 敦
教授 杉山 賢次
Atsushi KAWACHI
Kenji SUGIYAMA
研究室の学び
研究室の学び
「有機典型元素化学」とは、ケイ素やホウ素などの典型元
素と炭素との結びつきを考える化学です。典型元素と炭素
との結合をいかに上手につなげたり、逆に切断したりする
か(新しい合成法・反応の開発)、そのような化合物がどの
ような構造をしているか(構造化学)を研究します。さらに、
化合物の構造を精密に設計することで、その化合物にこれ
まで以上の、またはこれまでにない機能を持たせることが
できないかを考え、実際に合成して評価します。
環境負荷の少ない新しい高分子素材の開発を目標として
います。特に、ナノスケールで自らの構造をダイナミック
に変化させる環境応答型インテリジェント・マテリアルの
分子設計、合成を中心とした研究を行っています。有機化学、
物理化学、高分子化学を深く学ぶとともに、実験、実習を
主体とした教育プログラムが特徴です。知識を得るだけで
はなく、自ら手を動かして新素材の化学合成にチャレンジ
できる研究環境が整っています。
社会との接点
社会との接点
「典型元素」は高校の化学の教科書にも出てきますが,自
分の身の回りのどこにどのように存在しているかを意識し
たことは、あまりないかもしれません。例えば、私たちの
研究室で扱っている典型元素として「ケイ素」が挙げられ
ます。「ケイ素」は、砂や石の構成成分として、IC や太陽電
池などの中の半導体として、また、シリコーンというゴム
やオイルとして身の回りに数多く存在しており、今や私た
ちの生活に欠くことの出来ない「典型元素」の一つになっ
ています。しかし、この「ケイ素」を他の元素、例えば「炭
素」と思った通りに結合させ、思った通りの構造と性質を
もった化合物をつくることは、それほど簡単なことではあ
りません。
「ケイ素(典型元素)」にはまだまだ未知の部分
が多いからです。有機化学およびコンピュータを用いた計
算化学の発達によって、ある程度の方針や予測をつけるこ
とはできますが、実際は試行錯誤の連続です。私たちの研
究室では、
「典型元素の化学」を築くための基礎的な知見の
集積をおこなっています。それは具体的な製品開発などに
直接結びつくものではありませんが、製品を開発する上で
の原理や共通のルールとなるものです。そういうことを行
う場は、大学の研究室をおいて他にありません。
電化製品や衣服など、現代生活に欠かせないプラスチッ
ク製品の原料となる高分子化合物(ポリマー)に関する最
先端の研究に取り組んでいます。主な研究対象は、(1)液
晶ディスプレイや電子デバイスに応用されている「π共役
系ポリマー」
、(2)コンタクトレンズの保湿成分や紙おむ
つの吸水体等に用いられる「親水性ポリマー」
、(3)一定
期間で自然に還る「生分解性ポリマー」
、(4)フライパン
のテフロン加工に代表される撥水撥油性を示す「含フッ素
ポリマー」です。
研究を通じて、多種多様な高分子化合物を合成するため
に必要な有機化学の知識や実験テクニックを身につけます。
また、得られた高分子化合物の性質を評価する手法を学び
ます。さらに、実験を安全に行うために、化学薬品の適正
管理、適切な使用法を常に意識します。
最近では、長期的な視点に立ち、環境負荷の少ない新素
材の研究開発を行う化学系企業が増えてきています。卒業
生の多くは、専門性を活かして、持続可能な社会(サスティ
ナブル社会)の構築に貢献する企業において、研究者、技
術者として新しい製品開発に携わっています。
主な卒業研究テーマ
◉π共役セグメントを含むブロック共重合体の合成と蛍光特性評価
◉水溶性セグメントを含むスターブロック共重合体の合成とイオ
ン伝導性評価
◉分解性セグメントで構成された星形ポリマーの合成
◉光架橋基を含む含フッ素ポリマーの合成とフィルム表面の撥
水・撥油性制御
主な卒業研究テーマ
◉新しい有機典型元素化合物の設計と合成
◉有機典型元素化合物の構造化学的研究
◉有機典型元素化合物を用いた新しい反応の開発
◉有機典型元素化合物の特性を活かした機能の発現と応用
90
環境応用化学科
環境応用化学科
物性物理化学分野
人間環境化学分野
大気環境化学研究室
准教授 髙井 和之
教授 村野 健太郎
Kazuyuki TAKAI
Kentaro MURANO
研究室の学び
研究室の学び
安全かつ高効率な資源・エネルギーの利用にもとづく社
会の持続的かつ高度な発展を担保する次世代型環境材料の
開拓および機能性の解明を目指します。特に炭素などの軽
元素からなる機能性材料の合成および電子的機能性・反応
性について理解を深めるため、材料の微視的構造の幾何学
的性質にもとづく機能性の理解や外界との相互作用にもと
づく環境効果に関する基礎的知見の習得を目指します。
雨や大気中のガス、粒子状物質(PM2.5)という汚染物
質を種々の方法で集めて、処理して、イオン種を分析する
装置であるイオンクロマトグラフィーにより濃度を測定し
ます。例えば酸性雨の場合には、雨を捕集装置により一週
間単位で集めて、雨の pH や汚染物質(硫酸イオン等)濃
度を測定することによって、小金井地区に降る雨の汚染度
を知り、なぜ汚染物質の濃度が高くなるのか、低くなるの
かを解析し、その他の地域や過去の観測データと比較します。
社会との接点
社会との接点
社会の持続的かつ高度な発展を実現するためには安全か
つ高効率な資源・エネルギーの利用が不可欠になっていま
す。特にエネルギーの観点で注目されている燃料電池、太
陽電池、高性能蓄電池など有力な次世代型のエネルギー変
換材料・デバイスにおいては、いずれも炭素材料や酸化物
といった基本構造を担う材料と異種化学種との界面におけ
る相互作用がその動作原理として重要な役割を果たしてい
ます。
また、社会基盤を支える磁性体および触媒においては資
源枯渇や安全性の問題を抱えている特定の希少元素に強く
依存した材料が広範に普及しており、これらを軽元素を中
心としたありふれた元素種にもとづく材料によって代替す
ることが危急の課題となっています。
髙井研究室では、特に炭素などの軽元素からなる固体に
注目して、構造の幾何学的な性質や異種物質との相互作用
にもとづく機能性の発現原理を明らかにしていきます。さ
らに明らかになった機能性発現原理に基づいた新たな物質・
材料の「設計」を目指していきます。とかく深刻な社会問
題も、自らの手で解決してしまおうという楽観的な意気込
みで一緒に頑張りませんか?
大気環境の調査を行っているので、社会との接点は大き
いです。例えば酸性雨であれば、国の機関や地方公共団体
の機関で各地の酸性雨観測が行われています。我が研究室
はそれを大学キャンパスで行っていることになり、遠隔地
方のデータなどとの比較が出来て、都市域の特性というも
のを知ることができます。
また、粒子状物質に関しても PM2.5 などを観測していま
すので、その他の研究機関が行っている濃度変動データと
比較することが出来ますし、外部機関に我が研究室の測定
データを一部は提供できることもあります。さらに、毎年
ではありませんが、九州の長崎県沖にある福江島に、年一、
二回の大気汚染観測に出かけて、その地点における秋季か
ら冬季のアジア大陸からの越境大気汚染に関して知識を深
めています。これらのデータに関しては、我が国で深刻に
なっている越境大気汚染という問題にデータを提供してい
ることになります。
学生は大気環境に関して1年間の卒業研究により、雨や
大気中のガス、粒子状物質(PM2.5)の観測手法を学び習
得することにより、社会に出ていくことで、環境分析に関
する知識や技量というものを身に付けて卒業していくこと
になります。
主な卒業研究テーマ
主な卒業研究テーマ
◉ホスト・ゲスト相互作用を用いた軽元素ネットワーク物質の磁
性・構造の変調
◉ナノダイヤモンドの表面修飾による構造・電子物性への影響
◉原子膜物質の欠陥・環境効果の評価と次世代集積回路構築へ
の応用
◉グラフェンおよび誘導体における化学反応性の磁気的評価と
外場による制御
◉小金井地区における雨水の観測と分析 - 陰イオンの変動 ◉パッシブサンプラーによるアンモニアの通年観測
◉小金井地区におけるオゾンと窒素酸化物濃度の年間変動
◉小金井地区における三粒径別エアロゾルの年間変動調査
◉高時間分解能の大気汚染物質測定
◉小金井地区におけるエアロゾル中のイオン種の粒径分布
91
生命科学部/ 環境応用化学科
材料物性化学研究室
環境応用化学科
環境応用化学科
化学工学分野
化学工学分野
生命科学部/ 環境応用化学科
環境粉体工学研究室
生体化学工学研究室
准教授 森 隆昌
教授 山下 明泰
Takamasa MORI
Akihiro YAMASHITA
研究室の学び
研究室の学び
粉体を溶媒に分散させたスラリーは、セラミックス、電池、
食品、医薬品など様々な産業で使われています。スラリー
中で粒子がどのように分散しているのか(バラバラでいる
のか、固まっているのか)は上記製品の特性を決定づける
とても大切なポイントです。この粒子の分散状態をどのよ
うに評価・制御したらよいのか。またその結果、製品性能
はどのように変化するのか、実産業のスラリープロセスを
制御する上で必要不可欠な技術を学ぶことができます。
化学工学は、実験室で合成した化合物を、化学工場で製
造するために必要な技術であり、化学工場の設計や最適運
転法を研究する学問です。その手法はスケールアップと呼
ばれますが、私たちの研究室では、この方法を逆に利用す
ることで、生体内で起きているミクロな現象を解析したり、
病気や怪我の治療に必要な医療用のデバイスを開発する研
究に取り組んでいます。工学と医学・薬学を融合した新し
い学問に興味のある人に学んで欲しい領域です。
社会との接点
社会との接点
スラリーはありとあらゆる産業で使われていますので、
スラリー中の粒子の分散状態を評価・制御したいという社
会的ニーズはたくさんあります。しかしながら、ある特定
の分野の研究でスラリーを取り扱っているという研究室は
ありますが、
「スラリー」そのものに焦点を当て、研究して
いる研究室はほとんどないと思います。そのような状況で
すから、現在我々が独自に開発したスラリー評価装置を使っ
たり、これまでのスラリーに関する研究で蓄積してきたノ
ウハウを生かしたりして、共同研究を行っている企業が数
社ありますし(業種は全く異なります)、企業からのスラリー
分析依頼もあります。つまり、我々の技術や知識が、それ
だけ実社会から必要とされているということを客観的に示
しています。
今後もあらゆる産業において粉体、スラリーが使われる
ことは間違いありませんし、さらに取り扱いが難しいナノ
粒子もどんどん実用化されていくでしょう。そんな時に、
どんな粉体、スラリーであっても適用できる技術や知識、
考え方を学んだということは、卒業後にあらゆる分野で活
躍できる研究者・技術者として社会に貢献できると思って
います。
病気や怪我をした患者さんに、直接手を触れて治療でき
るのは、医師を初めとする医療資格を持つ人達です。しかし、
毎日の医療に忙しい医療スタッフは、自分たちで治療に必
要なデバイスを開発することはできません。私たちは、医
療現場でのニーズを知り、その要求に応えられるように色々
な技術を組み合わせることで、新規の人工臓器やドラッグ
デリバリーシステムを設計・製作・評価しています。既にメー
カと共同して、開発が進んでいるデバイスもあります。
人体は、心臓のポンプ機能、肝臓の化学反応機能、肺の
ガス交換機能、腎臓の濾過機能など、まさに精密な化学工
場に例えることができます。そこで私たちの研究を遂行す
る上で鍵となるのは、物質やエネルギーの収支をとり、無
駄のない運転条件を決定する化学工学の手法なのです。
医療スタッフが直接治療を施すことができる患者さんの
数に比べ、私たちが設計・製作したデバイスで治療を受け
る患者さんの数は、数倍になるかも知れません。その意味
で私たちの研究は、間接的ではあるものの、医療スタッフ
と同じレベルで医療に貢献できる可能性があるのです。
主な卒業研究テーマ
主な卒業研究テーマ
◉燃料電池電極スラリーの評価技術の開発
◉ Li イオン電池スラリー用バインダーの評価技術の開発
◉触媒インクの塗布・乾燥プロセス制御技術の開発
◉電場を利用したケミカルフリー粒子凝集技術の開発
◉スラリーを利用した海水淡水化技術の開発
◉カーボンナノ粒子の水系分散に関する基礎研究
上から 4 つは企業との共同研究テーマ
◉新しい人工腎臓装置の開発
◉装着が可能な血液浄化システムの開発
◉急性血液浄化システムの評価法
◉長時間使用可能な高性能人工鼻の開発
◉新規ドラッグデリバリーシステムの開発
◉食品保存用ラップの物質透過特性
◉生体内現象のコンピュータシミュレーション
92
Fly UP