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[11C]Choline ((β-hydroxyethyl)tri([11C]methyl)ammonium) <背景> 細胞内に取り込まれたコリンは、コリンキナーゼによってリン酸化されホスホコリンとなり、細胞膜 の構成要素であるホスファチジルコリンの合成経路へと組み込まれてゆく。細胞分裂の活発な腫瘍 細胞では、正常細胞に比べてコリンキナーゼの活性が高く取り込まれたコリンの大部分がホスホコ リンとして細胞内に集積することから腫瘍組織を画像化することができる。 <合成> 以下のスキームにより合成する CH3 CH3 11 CH3I N H3C OH H311C N H3C OH NN-ジメチルエタノールアミン(0.2 mL、アルドリッチ社製)を反応容器に入れ、窒素気流下[11C]ヨ ウ化メチルを反応容器 100℃で 5 分間加熱し、[11C]メチル化を行う。反応液を HPLC に輸送し(反 応容器は1mLの生理食塩水で洗い出す)、分離精製を行う。溶出した[11C]コリン画分について生 理食塩水を含む滅菌バイアル中に捕集し、[11C]コリン注射液とした。 [HPLC 分離条件] カラム:Intersil ODS-2 (10 mm I.D. ×250 mm, GL サイエンス) 溶離液:生理食塩水 流速:3 mL /min 検出器:UV(205 nm)、放射能検出器 保持時間:6.2 分 1 HPLC による分析例 <分析方法> [放射化学的純度] HPLC カラム:Intersil ODS-3 (4.6 mm I.D.×150 mm 3 um, GL サイエンス) 溶離液:生理食塩水 流速:1 mL/min 検出器:UV(205 nm)、放射能検出器 保持時間:2.8 分 choline-070524-04 - CH1 Intensity [µV] 100000 50000 0 0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 Retention Time [min] 5.0 6.0 7.0 [化学的純度] GC による N,N-ジメタノールアミンの分析 カラム:DB-1 (0.25 mm I.D. ×25 m 膜厚 0.25 mm, アジレント) カラム温度:50℃ for 3 min, 50-300℃ (10℃/min) インジェクター:split 2 検出器:FID 保持時間:3.2 分 サンプル前処理:製剤(1mL)をアンモニア性ジクロロメタンで分配(1 mL×3 回)し原料を有 機相に抽出させたものを分析サンプルとする。 <合成の特徴と問題点> [11C]CO2 の回収から[11C]コリン注射液の回収までに要した時間は 28 分であり、放射化学的収率 は 55%(文献値:液相法 86% 1) )放射化学的純度は 99%以上であった。放射化学的収率が文献 値に比べて低い原因としては、精製時、[11C]コリンがエンドキャッピングされていないシラノールに 吸着し、カラム内に残っているためであると考えられる。この問題は、酸または塩基性の溶離液を 用いることで解決できが、その後の製剤化の手間と時間のロスを考慮した場合、今回行った生理食 塩水による精製方法で十分対応できると考えられる。原料として用いた N,N-ジメタノールアミンはコ リンと競合的に腫瘍細胞へ取り込まれるために製剤中への混入は腫瘍細胞へのコリンの取り込み を低下させる可能性がある。N,N-ジメタノールアミンの混入量の定量には GC 分析による方法が高 感度で簡便である。本法で合成した製剤中への N,N-ジメタノールアミンの混入量は 0.3μg/mL であ り、臨床利用および動物実験への使用には特に問題を引き起こすレベルではないと考えられる。こ れまでに[11C]コリンの合成法としては、液相法とオンラインカラム法が報告されている。前者はメチ ル化反応後 N,N-ジメタノールアミンを高温、高真空下で完全に留去する必要があり、また後者は、 製剤中への混入量が比較的多い(28μg/mL)という問題点がある。本合成法では反応液を直接 HPLC へ導入し生理食塩水を移動相とし溶出液をそのまま製剤とすることでこれらの問題点を解決 している。 <動物評価> 動物による評価は解剖法および小動物用 PET-CT を用いて行った。 ddy 系マウス(7 wo、全 5 群(n=4))に対して[11C]コリン(17.44MBq/0.1mL/匹)を尾静脈より投与し 1、 5、15、30、60 分後に各臓器を取り出し分布(%dose/g ID)を算出した。 [11C]コリンは投与後速やかに血中より消失し腎臓および肝臓に高い集積が見られた。その他の 臓器では特異的な集積は見られなかった。 3 40 %Injection dose/g tissue 35 Blood Heart 30 Lung Liver 25 Spleen Kidney 20 S.Intenstine Testis 15 Muscle Brain 10 5 0 0 10 20 30 40 Time(min) 50 60 70 [11C]コリンのマウスにおける体内分布 動物 PET は、撮像前 6 時間絶食させた ddy 系マウス(male, 8 w.o., 34.7 g)を使用して行った。イ ソフルラン麻酔下で[11C]コリン(0.077 mCi, 0.3 ml i.v.)を尾静脈より投与した。投与開始より小動物 PET-CT (Inveon, Siemens)を用いて 60 分間のダイナミックスキャンを行った。 動物 PET による全身の分布評価では[11C]Choline は投与後速やかに腎臓より排出される傾向に あることが示された。その他の臓器では肝臓に高い集積が見られた。一方で心臓、肺、脳への[11C] コリンの集積は極めて低いものであり解剖法と同等な結果を得た。 SUV 11 Time-activity Curve of [ C]Choline 12 10 Kidney(Left) 8 6 Kidney(Right) Liver 4 2 0 0 10 20 30 40 Time [min] 4 50 Heart Lung 60 Brain 11 [ C]Choline (ddY mouse, male, 8 w.o.) 0-60 min summation image Brain Liver Kidney L R Bladder 今回は担ガンラットにおける腫瘍集積性については評価を行わなかったが動物 PET 画像から明 らかなように比較的特異的な集積が見られないことから腫瘍の検出能力は高いものと予想される。 <参考文献> 1) Hara T., Yuasa M.: Appl. Radiat. Isot., 50, 531-533 (1999). 2) Hara T., Kosaka N., Shinoura N., Kondo T.: J. Nucl. Med., 38, 842-847 (1997). 3) Pascali C., Bogni A., Iwata R., Cambiè M., Bombardieri E.: Label. Compd. Radiopharm., 43, 195-203 (2000). 5