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「ママ友」の友人関係と通信メディアの役割

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「ママ友」の友人関係と通信メディアの役割
2004 年2月
未就学児を持つ母親へのアンケート調査結果からみた
「ママ友」の友人関係と通信メディアの役割
第一生命保険相互会社(社長 森田富治郎)のシンクタンク、第一生命経済研究所
(社長 石嶺 幸男)では、未就学児を持つ母親 696 名を対象に、標記についてのアンケート調査
を実施いたしました。
このほど、その結果がまとまりましたので、ご報告いたします。
目 次
アンケート調査の実施概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1
【電子メールの登場によるコミュニケーションの変化】・・・・・・・・・・・・・ 2
【育児期における母親の出会いの場と関係維持】・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3
【ママ友に対する考え方】・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4
【ママ友の人数】・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 5
【ママ友とストレス】・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6
【通信メディアの利用状況と利用感】・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 7
【コミュニケーション手段の優先順位】・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 8
【話題別の通信メディア利用状況】・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 9
【通信メディアに対する考え方】・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 10
【研究員のコメント】・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 11
※「ママ友」とは、子どもを介して知り合った育児期の友人関係のこと
*この冊子は、当研究所発行の調査月報、
お問い合わせ
「ライフデザインレポート」の2月号の要約です。
株式会社第一生命経済研究所
ライフデザイン研究本部
研究開発室 広報担当/岸
〒100-0006
東京都千代田区有楽町 1-13-1
TEL.03−5221−4772
FAX.03−3212−4470
「ライフデザインレポート」を2月号ご希望の方は、
右記の広報担当までご連絡ください。
アンケート調査の実施概要
1. 調査地域と対象
全国の 0∼6 歳の子どもを持つ母親
2. サンプル数
696 名
3. サンプル抽出方法
第一生命経済研究所生活調査モニターと
その家族協力
4. 調査方法
質問紙郵送調査法
5. 実施時期
2003 年 9 月
6. 有効回収数(率)
631 名(90.7%)
7. 回答者の属性
年齢構成
回
答
者
属
性
職業
24 歳以下
25∼29 歳
30∼34 歳
35∼39 歳
40 歳以上
専業主婦
会社員・公務員・団体職員(正社員)
自営・自由業(家族従業員を含む)
パート・アルバイト・派遣社員・内職
その他
注:
「不明」を省略してあるので合計は 100.0%にならない
対象者は未就学児のいる母親とした
1
1.6%
12.8%
38.3%
35.8%
11.3%
61.8%
5.5%
2.0%
29.4%
0.8%
電子メールの登場によるコミュニケーションの変化
電子メールという新しいツールは、すべての通信メディアの代替を可能と
し、さらにコミュニケーション全体の機会を増加させた。
図表 1 電子メールによるコミュニケーションの変化
低い
親密度
年賀状
返事
年賀状
返事
たまに
手紙
年賀状
たまに
手紙
年賀状
たまに電話か手紙
たまに電話か手紙
電子文字コミュニケーション
高い
ときどき
電話
ときどき
電話
よく
電話
よく
電話
一部代替
コミュニケーション機会の増加
資料:筆者作成
筆者はメールなどの電子文字コミュニケーションが現代の若者のコミュニケーションに
おいてどのような作用があるのかについて研究を行ってきました。一般に、人との親密度
は使用した通信メディアの種類によってある程度はかることができますが、新たに登場し
た電子メールなどのいわゆる「電子文字コミュニケーション」では、親密度の強弱にかか
わらず通信手段として利用されていることがこの研究を通してわかりました。
また、電子文字コミュニケーションは、従来型の通信メディアを一部代替しつつ、コミ
ュニケーション全体の機会を増加させていることもわかりました(図表1)。さらに、電子
文字コミュニケーションの普及によって、これまで友人だった人とコミュニケーションを
とる機会自体が増加したという結果に加えて、
「電子メールならではの関係」が出現してい
る点も確認しました。
今回、コミュニケーションへのニーズが高いにもかかわらず、物理的・時間的制約から
コミュニケーションが困難ないし不十分になりがちな育児中の母親について、その実態と
通信メディアの役割を明らかにすることを目的として、アンケート調査を実施しました。
2
育児期における母親の出会いの場と関係維持
育児中は、新たな出会いの場としてのインターネット、新たな関係維持手
段としての電子メールや携帯電話が大活躍!?
図表2 育児期における母親の関係構築の場・機会と
関係維持の連絡手段としての通信メディア
従 来
現 在
関係構築の場・機会
(ファーストコンタクト)
公園、児童館、各種子ども教室(スイ
ミングなどの習い事を含む)、育児サ
ークル、病院の待合室
+ インターネット
(ホームページ上などで
の出会い)
関係維持の連絡手段
(リレーションキーピング)
加入電話、手紙
+ 携帯電話、電子メール
1)ファーストコンタクト
← 関係の構築
:出会いの機会・必然性
2)リレーションキーピング
← 関係の維持
:通信メディア
友人関係の構築と維持においては、関係構築の場や機会と、関係を維持するための通信
メディアがキーワードとなります。
従来から育児中の母親の関係構築の場・機会として、公園、児童館、各種子ども教室な
どがあります。また、関係維持の手段としては、これまでは加入電話か手紙といったもの
しかありませんでした。ところが今ではインターネットや電子メールといった、新たな通
信メディアの登場により、育児中の母親の関係構築の場・機会が変化しつつあります(図
表2)。
例えば、ホームページ上の育児関連サイトでは、出会いや体験談の閲覧、投稿、情報提
供や相談が活発です。また、インターネットでできたコミュニティのみならず、対面でで
きたコミュニティも、今日メーリングリストなどで簡単に維持管理できます。単に利便性
の面でだけではなく、例えばこれまで積極的に公園に入っていかれずに友だちができなか
った人や、夜にしか自由な時間が持てなかった人、特殊な趣味や価値観を共有する人たち、
さらには子どもに関して特定の共通する点や悩みを抱えるような人同士が、気軽に交流で
きるようになってきました。加えて、仕事を持つ母親の増加により、家の電話ではなかな
か連絡がとれなかった人たちとも、メールや携帯電話で連絡がとれるようになったことは、
友人関係のみならず、保育園や幼稚園との連携に多大な作用をもたらしているといえます。
3
ママ友に対する考え方
ママ友のメリットは「情報交換」「安心」「悩みや不安の共有と相談」。
図表3 ママ友に対する考え方(全体)
0%
20%
40%
60%
80%
44.7
ママ友は、子ども関連の情報交換に便利
47.6
35.4
子どもの関係で知り合う友だち(ママ友)がいると安心する
100%
5.3
1.7 0.6
11.0
0.5
2.0
16.4
0.6
4.7
17.3
0.9
3.8
19.0
0.6
4.2
51.1
ママ友とは、悩みや不安を共有したり、相談しあっている
31.9
46.4
ママ友との付き合いは楽しい
29.4
48.6
ママ友とは、お互い助け合っている
29.7
46.4
ママ友がいるとストレス解消ができる
31.1
43.4
19.0
0.8
5.7
24.1
ママ友とは、つかず離れず、深入りしないように付き合っている
50.2
21.2
3.6
35.2
心から信頼できるママ友がいる
32.4
21.4
10.1
お互いの子ども抜きで、ママ友と会ったり買い物に行くなどの付き
合いがある
26.1
自分にとっては、ママ友よりも昔からの友だちが一番である
24.1
26.1
0.9
26.4
20.8
0.6
41.5
25.5
8.3
ママ友はなるべく多くいてほしい
12.7
ママ友とは、あくまで「子どもの友だちの母親」という位置づけで付
き合っている
10.2
新しいママ友を作るのは苦手である
11.3
27.2
知らないお母さんにも、自分から積極的に話しかける方である
9.7
28.1
ママ友とは競争心や見栄の張り合いがあるように感じる
6.8
ママ友同士のいじめや仲間はずれ、嫌がらせなどを体験したり見
たことがある
0.9
14.2
38.5
35.5
42.0
31.4
11.8
23.9
0.8
15.4
0.9
44.5
16.4
0.6
44.0
17.5
46.4
20.8
12.4
0.6
24.8
0.6
1.3
49.5
0.6
50.0
0.6
8.0
39.5
できればママ友との付き合いはしたくない
そう思う
まあそう思う
あまりそう思わない
1.9
そう思わない
無回答
子どもを介して知り合った育児期の友人関係(以下、「ママ友」と表記)に対する考え方
を尋ねたところ、
「情報交換に便利」とした割合は「そう思う」と「まあそう思う」の合計
で9割を超えていました(図表3)
。
また、「安心する」「悩みや不安を共有している」と回答した人も7∼8割に上りました。
4
ママ友の人数
ママ友の平均人数は 9.2 人、そのうち特に仲良くしているのが 3 人程度。
図表4 ママ友の人数
子どもの関係で知り合って付き
合っている「ママ友」
(%)
特に仲良くしている「ママ友」
0∼4 人
31.4
5∼9 人
26.5
10 人以上
42.1
平均値
9.2 人
0∼1 人
28.1
2∼3 人
41.1
4 人以上
30.8
平均値
3.0 人
(%)
ママ友の人数についてみると、かなりばらつきがあることがわかりました。
平均的な人数は 9.2 人で、そのうち特に仲良くしているママ友の平均人数は 3.0 人とい
う結果となっています(図表4)。また、年齢が高く、子どもの数も多い人が必然的にママ
友の数も多いという傾向がみられました(図表省略)。
ママ友は、母親本人の年齢というよりは、子ども同士の年齢の近さによって集うことが
多いため、晩産化の進む今日、母親同士の年齢差がかなりあるケースも少なくありません。
年齢別にママ友に対する意識をみたところ(図表省略)、若い世代では「ママ友はなるべく
多くいてほしい」としているのに対して、年齢が高いと「ママ友は、あくまで『子どもの
友だちの母親』」との割り切りをしている様子も明らかになりました。年齢差による考え方
の相違に加えて、個人の価値観の違いがあることを鑑みると、「ママ友」のとらえ方は人に
よってかなり違うといえます。
今回のアンケート調査での自由回答やヒアリングの結果から、ママ友を支持する意見、
否定する意見などは様々ありましたが、全体を通して、収入格差や服装の違い、価値観・
しつけ観の違い、子どもの性差、しかり方などの違いで付き合いがしにくいとの意見が多
くみられました。また、ママ友が切望されるのは1人目出産後であることも多々指摘され
ました。
5
ママ友とストレス
ママ友がいても、いなくても(不十分でも)ストレスは生じる。
図表5 ママ友がいるストレス、いない(もしくは不十分な)ストレス
0%
いるストレス
いないストレス
20%
16.8
12.1
40%
60%
80%
26.0
57.2
19.6
現在ある
「ママ友」がいることによるストレス
「ママ友」がいないことによるストレス
100%
68.3
以前あったが今はない
母親の年齢
34 歳以 35 歳
下
以上
15.7
16.3
13.3
10.2
ない
子どもの人数
1人
2 人 3 人以上
13.1
11.5
16.5
11.9
22.2
13.6
注:
「現在ある」の割合
ママ友関係はしばしばストレスの種にもなります。そこで、ママ友がいると回答した人
を対象に、ママ友がいること・いないこと(「不十分」を含む)の両面についてストレスを
感じるかどうか聞いてみました。
その結果、ママ友がいることによるストレスについては「現在ある」とした人が 16.8%、
ママ友がいない・不十分であることに対するストレスについて「現在ある」とした人は
12.1%となりました(図表5)。年齢別に目立った差はみられませんでしたが、子どもの数
が多くなるとママ友が「いるストレス」が高くなる傾向がみられました。
育児によるストレスは、子どもの虐待につながるとの指摘がなされています。今日、虐
待件数は年々増加していますが、これらは核家族化や都市化、就労女性が増えたこと等に
よる人間関係の希薄化によるところが大きいとされています。また、1999 年に音羽で起き
た幼児誘拐殺人の「春奈ちゃん事件」も、母親同士のつきあいによるストレスの末の犯行
として注目されました。この時、事件の凶悪さの裏で、犯人の殺意に「共感した」とする
母親の声も多かったのは衝撃的な事実でした。排他的な母親同士の友人関係を象徴する「公
園デビュー」という言葉も、一過性の強い流行語というよりは、一般用語としての市民権
を得ています。子育てとストレスは切り離せない関係ですが、
「子育てに関わる人間関係」
もストレスの大きな一因になっているようです。
6
通信メディアの利用状況と利用感
未就学児を持つ母親の7∼8割はインターネットや携帯電話を利用。
図表6 通信メディアの利用感と非利用者の割合
0%
20%
40%
60%
80%
71.5
携帯電話でのメール交換
100%
26.1
0.5
27.2
0.5
1.9
68.1
インターネットでのホームページ閲覧
4.2
9.1
67.0
携帯電話での通話
62.1
インターネットでのメール交換
29.6
7.9
42.0
54.4
インターネットショッピング・オークション
23.3
0.6
0.5
0.5
3.1
44.7
52.8
携帯電話での写真撮影(カメラ機能)
0.5
2.0
携帯電話での写真交換(送受信)
46.5
50.5
0.5
2.5
インターネットでのフォーラム・掲示板参加(書き込み)
50.5
44.7
0.8
4.1
子どもがいる人に適している
子どもがいる人に適さない
使っていない
無回答
通信メディアの利用について聞いてみたところ、インターネットのホームページ閲覧で
27.2%/メール交換で 29.6%の人が、携帯電話での通話で 23.3%/メール交換で 26.1%の
人が「使っていない」と回答しました。この結果から、未就学児を持つ母親のほぼ7割か
ら8割がインターネットや携帯電話を利用していることがわかりました(図表6)。
「子どもがいる人に適している」と回答した割合が多かったのは、上位から「携帯電話で
のメール交換」「インターネットでのホームページ閲覧」などとなっており、通話より文
字・画像による情報交換の支持が高くなっています。携帯電話での通話は、利用者が多い
にもかかわらず、「子どもがいる人に適している」とした割合が低いことがわかりました。
今回のアンケート調査の自由回答からでも「真夜中の授乳中に、同じ時間に授乳してい
る友人の存在をメールで確認して力づけられた」という意見があったように、時間を問わ
ず、相手の都合も考慮する必要なく情報発信できる電子メールは、時間的・物理的制約が
大きい育児中の母親に適した通信ツールのようです。特にパソコンに向かわずに手元で情
報の受発信ができる携帯電話でのメール交換は、その手軽さから支持が高いものと思われ
ます。
7
コミュニケーション手段の優先順位
「会話」をしたいけれども、実際には時間的・物理的制約が大きくて難しい。
ならば携帯電話での電子メールで「準会話」を。
図表7 コミュニケーション手段の優先順位
1 位 実際に会って話すこと
平均値
1.7 5 位 パソコンを使った電子メール
平均値
5.0
2 位 家の電話での会話
2.8 5 位 郵便での手紙・ハガキ
5.0
3 位 携帯電話・PHSを使った電子メー
ル
4 位 携帯電話・PHSでの会話
3.7 7 位 ファックス
5.4
4.5 8 位 チャット
7.7
注:
「平均値」はあげられた順位の平均
通信メディアに対面会話を加え、コミュニケーション手段の優先順位を尋ねたところ、
最も上位にあげられたのは対面会話となりました(図表7)。
これに「家の電話での会話」が続いており、重視度としては「会話」が高い位置を占め
ていることがわかりました。携帯電話については、会話よりも電子メールが上位にあげら
れており、携帯電話は会話手段としてよりはメールツールとしてとらえられている様子が
明らかになりました。また、パソコンを使った電子メールは携帯電話を使ったものより下
位に位置していました。
育児中の母親は、本当のところは会話を楽しみたいところですが、時間的・物理的制約
が大きく、それができないところから、電子文字での「準会話」(=文字メッセージ交換で
ありながら、ある程度の即時性があり、会話に近いコミュニケーションができる)を楽し
んでいるといえるでしょう。
8
話題別の通信メディア利用状況
軽い話題は携帯メールで情報交換、急ぎの時は家の電話で通話。
図表8 話題別通信メディアの利用状況
90
(% )
8 3 .5
8 0 .5
7 8 .1
7 1 .9
6 9 .2
60
7 9 .6
7 5 .5
6 7 .1
6 6 .4
5 6 .9
5 1 .4
2 9 .1
2 8 .8
1 4 .0
1 4 .6
1 9 .0
4 8 .4
3 8 .2
3 6 .0
3 1 .1
30
2 9 .2
3 2 .7
5 1 .7
3 7 .3
3 2 .9
2 3 .1
2 0 .3
3 4 .4
2 8 .5
2 0 .8
2 9 .9
店やレストランなどに関する情
報交換
ショッピングやファッションの
話
余暇や趣味の話
今日あったことなど軽い話題、
近況報告
病院や学校・保育園・幼稚園等
に関する情報交換
子どもの健康や栄養・発育・教
育など、一般的な話
子どもの病気やトラブルなどの
悩み相談
他のママ友の話︵いい話・悪い
話を含む︶
夫・パートナーの話
夫・パートナーの親︵しゅう
と・しゅうとめ︶の話
自分たちの話︵過去・現在を含
む︶
0
8 1 .1
7 3 .4
←項目は左がプ
ライベートなも
の、右が一般的
なものとなって
いる
会 って 話 す
家 の電 話 で話 す
携 帯 電 話 で メー ル を 送 る
パ ソ コ ン で メー ル を 送 る
携 帯 電 話 で話 す
話題別に通信メディアの利用状況を聞いてみました(図表8)
。
その結果、自分や家族の話や子どもに関することは、「会って話す」とした割合が最も多
く、83.5%を占めました。また子どもに関することで、特に病気やトラブルなど急を要す
る内容だと、家の電話で会話をする割合が高いことがわかりました。
一方、今日あったことなど軽い話題については携帯電話でメール交換を利用する人が多
いようです。パソコンでのメールや携帯電話での通話は、いずれの話題でもあまり利用さ
れていませんでした。
育児中の母親は、基本的に会って話すコミュニケーションを重視しながら、急を要する
時などには家の電話でも会話をし、一般的な情報交換については携帯電話のメールを多用
している実態が明らかになりました。多様な通信メディアが普及した今日は、話題によっ
てそれらが使い分けられているようです。
9
通信メディアに対する考え方
年齢が低い方が通信メディアの支持が高い。高年齢で支持が高いのは
電話での通話。
図表9 通信メディアに対する考え方(母親の年齢別)
0
30
60.5
60.2
インターネットでは相手がよくわからないので、知り合いができたとしてもどこか信用できない
インターネットで、子ども関連の情報(病気、病院、旅行、習い事、保育園など)を収集する
50.5
インターネットのホームページを見ることは、育児のストレスや不安を解消するのに役立っている
33.4
34.4
28.8
インターネット上の、オンラインショッピングやオークションを利用している
相手がよくわからないインターネット上では、人に言えないことも言いやすい
インターネットの育児サイトで発言したり、相談にのる・のってもらうことがある
インターネット
インターネット上の育児サイトで、ママ友を作ること(作ったこと)がある
(%)
90
60
6.0
2.0
14.0
13.8
34歳以下
35歳以上
58.4
40.7
22.8
9.9
電子メールは、育児で忙しくてもお互いの時間を気にしないで済むので便利だ
電子メールがあれば、なかなか会えない友人とも関係が切れずに続く
64.9
68.9
電子メールのやりとりは、育児のストレスや不安を解消するのに役立っている
電子メール
ママ友とは電子メールでよく連絡をとりあっている
50.2
77.5
63.5
71.9
71.9
電話で人と話をすることは、育児のストレスや不安を解消するのに役立っている
携帯電話は、通話よりむしろ電子メールの交換に使うことが多い
55.5
47.0
ママ友とは電話(通話)でよく連絡をとりあっている
長電話をすることが多い
82.9
57.5
62.6
電話よりも電子メールの方が気軽に連絡しあえる
電話(通話)
76.6
76.3
65.9
54.5
36.5
40.8
母親の年齢別に通信メディアに対する考え方を聞いてみました(図表9)。
その結果、34 歳以下と 35 歳以上を比較すると、全般的な傾向として 35 歳以上では通信
メディアの利用自体が少ないことがわかりました。また通信メディアに対するイメージや
評価が低く、通話を重視する傾向があります。年代によって通信メディアに対する感覚が
異なる様子がここでもわかりました。
また、全体的には、インターネットでの情報収集というよりは、電子メールでの対人コ
ミュニケーション面での活用が多いことがわかりました。さらに、電子メールや電話での
対人コミュニケーションはストレスや不安の解消に役立っていることも明らかになりまし
た。
10
研 究 員 の コ メ ン ト
携帯電話やインターネット、電子メールなどの通信メディアの普及は、家に閉じこもり
がちで人との交流が激減しやすい子育て中の母親の対人関係維持に大きく貢献しています。
気軽な交信手段によってコミュニケーション頻度が高まったことで、母親のストレスが解
消されていることは事実です。さらに、「子育て」という新しいステージに立った女性が、
多忙な環境下においても既存の友人との関係を維持できるようになったという点について
の評価も高いといえるでしょう。
サ ポ ー トニ ー ズ
ネ ットワ ー クニ ー ズ
育児不安
情報収集
孤立感
気晴らし
ス トレ ス
つなが り感
通 信 メデ ィア
物理的制約
会話
情報
しかし一方で、「ママ友」に対するとらえ方に差異がある点、さらに通信メディアに対す
る感覚にも年齢などによって違いがあることが調査から明らかになりました。これらのダ
ブル・ギャップは新たなコミュニケーション障害を生じさせており、いい時はいいが悪い
時はより関係性が悪くなるといった二極化のリスクを高めています。例えば、タイムラグ
があっていいはずのメールで即答を強要されているように感じたり、あまりの交信頻度の
高さが煩わしくなったりといった新たなストレスが生じているのが現状です。1日1回パ
ソコンでメールを確認する人と、携帯電話で即時的にメールで「会話」をする人とでは、
明らかにコミュニケーションの仕方やルールが異なるのです。このような新たなコミュニ
ケーションギャップによるトラブルを解消するために必要なのは、通信メディアの利用に
おける「常識」は存在していないということを認識することではないでしょうか。さらに
ママ友に対しても、様々なとらえ方をする人が存在する事実を認識しておくべきです。
通信メディアはあくまで「ツール」であり、ツールの両端に人間がいて、「信頼関係」が
必要であることを忘れてはなりません。安易にママ友を求め、その関係を通信メディアに
依存することはかえって危険な関係を招きます。自らの「常識」を押し通した結果、生じ
た誤解や行き違いによって傷ついたという人も少なくないのが実状です。確かに、携帯電
話や電子メールなどの通信メディアは子育て中の母親には非常に適したコミュニケーショ
ン手段です。これによって、現代の育児中の母親の友人関係は大きく変化しつつあるのは
紛れもない事実といえます。ただし、通信メディアは人間関係そのものを簡単にしたので
はなく、構築された信頼関係の上に成り立つものであり、人間関係の維持においてあくま
でそのサポートをするツールであるということを念頭に置くことが重要です。
いかにしてこれらの通信ツールを自分の育児生活のスタイルに合わせて組み込むかを、
ユーザー自身が再考することで、もっとその効用を活かし、育児におけるサポートツール
として活用できるのではないでしょうか。
(研究開発室
11
研究員 宮木由貴子)
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