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第 1 回フロンティア研究システムアドバイザリーカウンシル(FRAC) 日 時
第 1 回フロンティア研究システムアドバイザリーカウンシル(FRAC) 日 時: 2000 年 5 月 11 日~12 日 場 所: 理化学研究所、パレスホテル 委 員: 西島 安則 京都市立芸術大学 学長 (委員長) Yuan C. Lee Professor, Johns Hopkins University Roger A. Laine Professor, Louisiana State University Gerhard Wegner Director, MPI fur Polymerforschung 緒方 直哉 千歳科学技術大学 学長 駒嶺 穆 (財)進化生物学研究所 理事 霜田 光一 東京大学名誉教授 永津 俊治 藤田保健衛生大学 総合医科学研究所 所長 杉江 昇 名城大学 理工学部 教授 石田 瑞穂 防災科学技術研究所 総括地球科学技術研究官 久城 育夫 東京大学名誉教授 片山 恒雄 防災科学技術研究所 所長 William Anderson Senior Advisor, The World Bank 笠見 昭信 (株)東芝 副社長 青木 初夫 藤沢薬品工業(株)社長 登内 洋人* 名古屋市 助役 * 欠席 第 1 回フロンティア研究システムアドバイザリーカウンシル報告書 (全体意見) フロンテイア研究システム(FRS)のマネージメントの基本方針は、以下の通りで ある。 1)科学技術の新分野の創造 2)社会的利益への貢献 3)産業・経済にインパクト 科学技術に関して新しい分野を拓くという第一の目標について、FRS におけるフ ロンティアの意味について、集中的に議論した。この新分野を創造する為には、シス テムの組織、システムのマネージメントにおけるコラボレーションが最も重要となる。 この観点からは、コラボレーションは単に学際的、多角的なものではない。日本及び 国外における多くの R&D は、特にこの 20 年間、競争的に進められており、その過 程で強固な構造的な枠組みが形成されている。 しかしながら FRS はこれらを模倣することなく、新しい分野の形成という点に関 して、完全に新しく、ユニークなシステムを創造するために、自らのイニシアティブ で前進せねばならない。この意味において、組織としてのフロンティアは、それが選 択して創造する分野は人間社会の利益に貢献するものであることを常に念頭に置か ねばならぬ。 個々の研究者及び研究チーム、グループはこれらの目的を常に考えておかねばなら ない。 第三の目的である、社会及び産業にインパクトを与えることについては、個々の研究 者が心配することではない。この最後の目的は、個々の研究者がそれぞれの研究目標 を追求する際に念頭に置くというより、システムそのもののマネージメントに置いて は最も重要である。 この競争的な世界においては、FRS のような組織が国益及び戦略を考えねばなら ぬことは自明のことであろう。これは世界の他の研究組織において共通の課題ではな いが、フロンティアのある部分は、人類に影響を与えるグローバルな課題について先 頭で立ち向かわねばならない。 フロンティアにおいて、社会の利益に貢献するということは、グローバルな問題で ある、環境問題、食糧供給、都市構造改革、人的及び自然災害の防止・緩和に関して 相当の寄与をなすことであろう。 これらの目標を実現し、きちんとした成果をもたらす為に最も重要なことは、研究 プロジェクトの設定と最良の人的資源をリクルートすることである。研究プロジェク ト及び研究員の選定においては、世界で首位に立つ研究システムを創造することを目 標にしてなされねばならぬ。国際化においては、これは質的(注;量の間違い?)な観 点より質とフィロソフィーの問題であると認識せねばならない。 社会と経済にインパクトを与えるという第三の目的については、システムのマネー ジメントという観点から最も重要であり、活動的な委員会を設立して、この目的がど のようにすれば最も得られるか責任を持って検討せねばならない。この委員会は、幅 広い分野の専門家より構成され、多岐にわたって適切な評価がされることとするが、 あまり多人数とはならぬようにして、20 名以下として、委員相互の意見交換が効果的 に行われるようにする。この委員会で得られた結論がパブリック・アクセプタンスの ためのものというより、完全にユニークな研究システムの展開をガイドするための積 極的な役割を果たすものとして考えられよう。 もっと実際的な問題として、特許戦略については、戦略又はフィロソフィーについ て更に配慮されねばならない。理研内には勿論、既に特許・研究推進システムがあり、 フロンテイアは特許申請にこの既存のシステムを利用することが出来る。 しかし、FRS は、特許のみならず自らの研究の果実である科学技術の移転を促進 し、かつ評価する独自の委員会を設立する必要がある。良く知られているが、先進国 の特許分野は急激な変化をしており、これらの動向をマネージメント・システムは緊 密にモニターする必要がある。 他に非常に重要なのはマネージメント組織である。社会や産業に貢献することを目 的とする柔軟な実効的なシステムのマネージメントを行うためには、研究テーマはフ ェーズに分けて考慮し、研究の進行に応じて、これらのフェーズで柔軟性の意味が異 なってくる。マネージメントの観点からは、意志決定は、以下の 3 フェーズにおいて なされねばならない。 1)イニシエーション(開始) 2)プルグレス(進展) 4)ターミネーション(終了) システムの自らの目的を充足しながら適切な柔軟性を保っていくのは容易な業務 ではない。開始における最も重要な要素は、テーマ選定、それから最良の研究者の雇 用、プロジェクト・リーダーの選定である。一度、研究チームがプロジェクトを開始 したら後には、進展の責任はチームリーダーに任され、組織の各段階で進展状況を評 価するようになる。 このモデルでは研究活動の方向はプロジェクト・リーダーの責任で、進展の評価は FRS のディレクターの責任である。 フロンティアを名乗る研究においては、信頼できる評価は、研究プロジェクトその ものの進展に実際に関与したものらによりのみなされるが、各グループの研究活動の 活度は依然として総括(アンブレラ)組織による評価されうる。 研究の終了フェーズは、マネージメント・システムにおいて重要な決定をなす観点 からも同様に重視せねばならない。別の密接な関連事項としては、研究者の契約期間 において柔軟性を保つ方法と終了のモードについてである。イニシャル・フェーズが 完了した後においてもシステムのマネージメント全体が柔軟であることが非常に重 要である。 これは研究プロジェクト期間の長さ、5-15 年のみならず、構造は柔軟にして、この 期間に構造の再編を可能にすることも考えて、若い研究者は、最終的な成果に過度に 懸念しないで、このプロジェクトの推進と進展にもっと重要な役割を果たすべきであ る。 柔軟な組織と、雇用条件は研究組織の活性と進展を確保するために重要な要素でも ある。業務の進行のみならず終了において雇用されるか否かを心配している研究者は 自らの業務について集中することは出来ないであろう。プロジェクトが終了した場合 に、雇用が行き止まり(デッドエンド)と考えられない場合のみ、最高の才能を持っ たものがフロンテイアに惹かれるであろう。研究者及びチームリーダーの参加の観点 からシステムについての配慮を検討すべきであろう。これは柔軟な組織及び雇用条件 を必要とすることになり、活性ある発展する研究組織を維持するために重要な要素と なろう。 FRS のマネージメントについては、その 3 つの目標を以下の 5 つの特性を高める ことに留意しながら議論した。 1)柔軟な研究期間 2)先端研究 3)柔軟な研究構造 4)外国人研究者の積極的な採用 5)国際協力 これら明確に述べられた賞賛すべき目的と特徴について、単なる空虚なスローガン に終わらさず実際に生かすとしたら、システムのマネージメントにもっと実効的にそ れらが反映させるべきである。現在の FRS のマネージメントが 5 つの特徴、3 つの 目標を実現化するために目覚ましい努力をしていることを喜びとするが、同時に、も っとなされねばならのことがあることを強調したい。これは容易な仕事ではないが、 フロンティアと呼ばれるシステムである限り、研究マネー ジメントにおいても、新 フロンティアを創造するために尽くさねばならない。