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微生物燃料電池が記録的割合で水素を大量生産(米国)
NEDO海外レポート NO.1012, 2007.11.28 【エネルギー】燃料電池 微生物燃料電池が記録的割合で水素を大量生産(米国) − 実験机上のリアクタで廃水からのバクテリアが、 セルロースと酢や少量の電力により、豊富でクリーンな水素を生産 − 成功裡の廃水燃料電池に少数の改良を加えることによって、ペンシルベニア州立大学の 研究者は、普通のバクテリアをうまく扱ってセルロースや他の生物分解性有機物を直接水 素に変換する新しい効率的な方法を開発した。ペンシルベニア州立大学環境工学教授のブ ルース・ローガンと同僚は、微生物を使用して電力を生産することで、既に好い結果を示 していた。今回は、理論的にサラダ・バーから調達できるスターター材料を使用して、水 素生成のために同じ微生物をうまく取り扱っている。 陽極は粒状グラファイトで、カソードは白金触媒を持ったカーボンであり、既製の陰イ オン交換膜を使用している。バクテリアは、酢酸を消費して、電子とプロトンを放出し 0.3 ボルトを発生する。外部から 0.2 ボルト以上を加えると、水素ガスが液体からブクブクと 泡立つ。 「このプロセスは、プロセスに加えた電気エネルギーよりも、288%多いエネルギ ーを水素で生産する」ローガンは述べる。 彼等は設計を一工夫し、バクテリアのための条件を向上させ、小さな電気ショックを加え ることによって、この形式のシステムで水素産出の新記録を達成した。 「我々は、このアプ ローチで、酢(酢酸)を使用して 91%、またセルロースを使用して 68%の産出をもたらしたよ うに、種々の有機物資源から、これまでに得られた最高の水素産出を達成した」とローガン は述べる。 ある構成において、原料物質の分子に含まれている水素のほぼ全てが使用可能な水素ガ スに変換され、その効率は最終的に大規模なバクテリア水素生産に門戸を開くことが可能 である。ローガンと第一著者ショーン・ チェンは、米国科学アカデミー会報 2007 年 11 月 12 日のオンライン版にこの結果を報告している。 「ブルース・ローガンは、持続可能エネルギーに関するこの研究領域の明晰なリーダー である。持続可能エネルギーの可能性の進展は、我々の国家セキュリティおよび経済的福 祉に特に重要である。我々は、何年間も彼の微生物燃料電池の最先端の研究を支援してき ており、また、彼が生み続ける優れた結果を見ることは素晴らしいことである」と全米科 学財団(NSF)環境持続可能性プログラム責任者でローガンの研究助成金の監視オフィサー であるブルース・ハミルトンは語る。 他のシステムは、大規模なシステムで水素を生産するが、ほとんどは、エネルギー効率で この新システムを越えるものはない。僅かの電気を加えても、生産された水素はリアクタを 80 NEDO海外レポート NO.1012, 2007.11.28 運転するために必要とされる電力よりも燃料としてさらに多くのエネルギーを提供する。す べてのエネルギー入出力を考慮に入れて、酢で燃料供給されたシステムの総合効率は 80% で、先行する代替燃料のエタノール生成効率よりも遙かに高い値である。電力を使用して水 から水素を抽出する方法の電気分解技術さえ、この新方式と比較すると見劣りする。 「我々は、有機物からエネルギーを効率的に抽出するためにバクテリアを使用した。そ れを可能にしたバクテリアが自然界において前々から行っている環境を整えることによっ て、この新しいアプローチは標準的な電気分解より 3∼10 倍も効率的になりえる」とロー ガンは述べた。 (Credit: Zina Deretsky, National Science Foundation) 図:微生物燃料電池 水素ガス生成のために、外部から非常に小さな電力を加え、植物廃棄物が発酵した生 産物である酢酸をバクテリアが分解する微生物電池を開発。水素は、その後、燃料電 池での使用あるいは現在天然ガスで走っている自動車の燃料添加物として使用可能。 水素経済は将来のかなり先であると思う人々のために、天然ガス自動車で使用されてい る天然ガスにセルロースおよび他の再生可能有機物から生産された水素を混ぜ合せること ができるかもしれないことを、ローガンは示唆する。天然ガスの主成分であるメタンは、 かなりクリーンに燃焼する。さらに水素を加えれば、よりクリーンに燃焼し、既存の天然 ガス燃焼自動車においても正常に動作する、と語った。 ローガンと同僚の全米科学財団プレスリリースでこれまでに特集されている 2 件の研究は、 − 「廃棄物ではないし不用物でもない」 http://www.nsf.gov/news/news_summ.jsp?cntn_id=104098 − 「燃料電池微生物の二つの任務:水を処理してエネルギーを作る」 http://www.nsf.gov/news/news_summ.jsp?cntn_id=100337 (出典:http://www.nsf.gov/news/news_summ.jsp?cntn_id=110648&org=NSF&from=news) 81