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調査報告書

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調査報告書
調査報告書
「政務活動費の使途基準」---地方議員研究会主催(講師
廣瀬和彦氏)
政務活動費は個々にグレーゾーンがあり、それを裁判所がどう判断しているかと言う
事の説明でした。主にこれまでの裁判例に基づく使途基準の説明がありました。
下記報告します。
1. 政務活動費(地方自治法 100 条 14 項から 16 項)
① 意義
議会の議員の調査研究その他活動に資するため必要な経費の一部を充てること
ができる補助金または交付金
② 政務活動費への改正点
イ) 「その他の活動」に加えて「議員の調査研究その他の活動に資するため」に
変更
ロ) 経費の範囲を条例で定めることと規定
ハ) 議長に政務活動費についての使途の透明性の確保の努力義務を課す旨を規定
2. 政務活動費による活動の性格
① 公務性の是非
正規の議会活動の範疇(公務)
(1)本会議 (2)委員会 (3)協議等 (4)議員派遣
(5)委員派遣
である。
法 100 条 14 項「議会の議員の調査研究その他活動に資するため必要な経費の一
部を交付する」と規定することから、一議員個人が強いので公務とみなされない。
② 事務局職員の随行の是非
・公費で随行することはできない。何故なら議員の視察は公務でないため。
3. 政務活動と選挙活動等の区別
・複数の活動が併存する場合、理論的に区別することが可能
・議員活動と政務活動が併存場合
(仙台高裁 1/2、大阪高裁 1/3、福岡高裁 1/2 のそれぞれ按分率を認めている。)
(地方裁判所毎に判断がバラバラの場合、裁判所で判断が確定するのは、最高裁で
確定して初めて統一見解となる。従って、各地方の裁判所で出された判決を準用する
ことになる。)
4. 慶弔及び後援会・政党活動
① 慶弔費
慶弔費は交際費的な経費と認められるため、政治活動費を支出することはできな
い。
② 後援会及び政党活動費
政務活動の目的とは違うため、政務活動の経費とならない。(政治資金パーティ券
ダメ)
5. 政務活動費の妥当性の判断点
① 政務活動目的と区政の関連性
イ) 23 区の議員が漁業を視察しても区政に関連しない。
ロ) 個人的な趣味における観光が区政にどう関連するかを慎重に考慮する費用が
ある。
② 活動方法と内容等による具体的説明の有無
③ 活動方法の妥当性
④ 政務活動と支出経費の相当性
イ) 費用対効果を常に考える
ロ) 少ない経費の活用
⑤ 活動結果の保存の有無
イ) 原則、法律上は必要ないが、視察報告書は作成すべきである。
(条例で規定し
ている)
政務活動の裁判は 5 年前まで遡れる。それを立証するため、報告書は実務上
作成すべき。
ロ) 住民からの評価に耐えうるものが大事である。
ハ) セミナーの資料の未提出の場合
(H24.10.18 年高松高裁 違法とは言えない。但し、調査内容や方法は明確に
すべき。)
6. その他の活動の意義と具体的範囲(新たに支出が可能)---国会答弁
① 補助金の養成や陳情活動のための旅費、交通費
② 議員として区民相談や意見交換会や会派単位に要する経費
7. 透明性の確保について(規定しなくても違法ではない)
① 領収書の添付を義務付けたことを前提に議長に調査権を付与したものである。
② 不適切な支出があった場合、議長は返還の行使はできない。出納権限がないため、
勧告しかできない。
③ 領収書の開示
条例上、領収書の添付義務付けがない場合は、内部の資料として用いるものであ
り、第 3 者に開示する必要はない。(H22.4.12 最高裁判例あり)
しかし、実務上これを行使することはできない。条例上義務付けをしているので。
(荒川区)
政務活動費当ててはならない経費
① 慶弔、見舞い、餞別等交際費的経費
② 各種団体に対する出資金・補助金
③ 政党活動、選挙活動、後援会活動に要する経費
④ 私的な活動に要する経費
⑤ 各費目の中で専ら飲食に要する経費
政務活動とその他の混活動が混在する経費の取り扱い
① 政務活動とその他の議員活動が混在する場合で、それらを明確に区分することが可能な
場合には、政務活動以外の経費を控除して計上するものとする。
8. 各費目における解釈と裁判例
① 調査研究費
イ) 基本的な考え方
会派が行う区の事務、地方行財政等に関する調査研究及び調査委託に関する
経費(調査研究に実質があるようにする必要あり)
ロ) 視察の留意点
A) 客観的に政治活動の実質を有ること
B) 調査項目等を準備すること
C) 調査結果を視察報告書として保存すること
D) 視察事項を誰から何をどのように情報を得たかを明確にすること
ハ) 海外視察の是非
・H21.3.19 東京高裁で、政務活動の為に海外に行くことは合憲(観光旅行は
ダメ)
・但し、住民視点から難しい面もある。
ニ) 旅費・日当の定額支給の是非
A) 旅費の実費弁償が原則であるが定額支給することができる。実費弁償は
事務が煩雑になるので定額支給も可能である。但し公務での出張が定額
支給になっていることが前提である。
B) 日当も定額支給は可能である。(H17.5.25 大阪高裁)公務との整合性が必
要
C) 定額支給で受けた日当・宿泊代の範囲内で飲食代を支給することは可能
である。(H19.4.26 仙台高裁で認めた)
但し、領収書の提出をしてはいけない。(雑所得と見做される恐れがある)
ホ) 視察キャンセル代
仙台高裁は取消手数料が調査研究活動に資するとは言えないため支出は認め
られない。但し、キャンセルが公務上やむ得ない理由がある場合は認められ
るが、立証が難しい。(現実問題として難しい)
ヘ) お土産代
A) 視察のお礼として地元の名産品等のお土産を送る為に当該品の支出は可
能である。名産品の PR となる。社会通念上 3000 円から 5000 円が妥当
B) 友好都市の土産代は、政務活動の範疇ではないのか、公務でないのかと
言う考え方はあるが、H21.9.29 東京高裁、H17.4.12 大阪高裁で認められ
ている。区政に関連性は必要(調査・視察報告書が必要)
ト) 振込手数料を政務調査費より支出することの是非
振込額が政務活動費の場合、福岡高裁は認める。仙台高裁は認められない。
チ) 会派全員で視察する必要はないのでは?
直接見聞することが大事で、裁判所はやむを得ないと判断している。(H19.2.9
札幌高裁、東京高裁)
リ) 自動車経費
A) 自動車購入は不適当(政務活動の環境整備となり、ガソリン代などの活動
は OK)
B) 自動車リース代は OK(H20.1.10 松江地裁 H24.1.31 大阪高裁)
C) ガソリン代
・支出は OK。但しガソリン代が政務活動のみに使用されたという立証が
必要である。
i. 裁判例
・実費弁償方式(H16.7.29 仙台高裁)
記録(補助簿の作成) →場所 目的
走行距離
・按分方式(H19.4.26 仙台高裁 H19.12.26 大阪高裁)
社会通念上適正な按分率を適用
・定額方式(H20.11.10 松江地裁)
走行距離 1 キロメートル当たりのガソリン代を決定しそれに基づく支
出は可能(職員旅費条例があることで、公務で認められていることが前
提)
(荒川区)
① 自家用車利用に係る経費について、有料道路料金、駐車料金は計上可能。
但し、ガソリン代は計上不可。
② 宿泊費は実費額とし、飲食費は宿泊費に含まれる朝食代のみ計上可能。
③ 視察先の土産品の購入経費は計上不可
④ 区政に係る調査を外部委託した場合の委託費用は計上可能
D) 高速道路代や駐車料金
政務活動として実質を有している場合、問題なし
公共交通機関以外のタクシー代やレンタカー代(交通不便であれば)使用
可能(H19.4.26 仙台高裁 H22.3.29 金沢地裁)
② 研修費
会派が研修会を開催するために必要な経費、団体等が開催する研修会の参加に要
する経費
イ) 会費・参加費
政務活動のために必要な経費だけに限る。
(H24.8.24 東京高裁:公益性・公共性で判断する必要あり)
(ライオンズクラブやロータリクラブの会費、PTA 会費、党費、政治資金パ
ーティ代等は 認められない)
③ 研修会開催の経費
研修会と会派の研究調査と関連性、区政と関連性があるかどうかを注意する必要
がある。(事例:永六輔氏「あの世の妻へのラブレター」という講演会が裁判に
なった。H21.2.26 名古屋高裁:認められなかった。)
(荒川区)
政党主催の講演会などは政党活動と見做される恐れがあるので計上しない。
④ 広報費
イ) 広報費(裁判になりやすい)---政務活動による広報費を使途基準に入れるのが
おかしいという考えあるが---。)
ロ) 基本的考え方
住民の意思を適正に反映させることが必要不可欠であり、それに基づく住民
の意思を収集し把握することは議員の調査研究の一つである。議会活動や区
政に関する政策等を住民に知らせることは、区政に対する住民の意思を的確
に収集、把握するための前提として意義を有する。
ハ) 広報誌からの支出の留意点
政務活動に資する内容かどうかが判断の基準となる。
ニ) ウェブサイト維持管理、議会の一般質問のみを掲載した広報誌は認められる。
(政務活動費の交付に関する法令の別表第 1 に「議会活動を住民に報告し---」)
(H22.11.5 東京高裁 H24.1.31 大阪高裁)
ホ) 議員の顔写真や会派の宣伝・選挙結果を掲載した広報費の適否
議員の個人宣伝的な側面と区政報告的な側面のいずれかが明らかに強いとも
いえないような広報活動については、
「議員の調査研究に資する」ものとして
政務調査費から支出することができる。(H22.11.5 東京高裁)
ヘ) 後援会が発行した広報誌
議員の後援会が発行名義人となっている広報誌であっても、その内容の全部
または一部が議員個人の市政報告であるときは、その印刷や配布の要する費
用のうち相応の割合については、議員の調査研究に資するための活動の費用
として政務調査費を充当することができる。(H22.11.5 東京高裁---見かけて
判断するな)
ト) 広報誌配布費用
新聞の折り込みに入れその経費は政務活動費として認められる。
チ) 領収書の留意点
宛名が後援会の場合は認めない。議員個人の支出と後援会の支出に分けて整
理することは常識の為。
⑤ 広聴費
イ) 基本的考え方
広聴費とは、会派が行う住民から区政及び会派の活動に対する要望、意見の
徴収、住民相談の活動に要する経費(住民の意思を収集、把握することは議員
の調査研究の一つとして重要)
ロ) アンケート調査
業者委託によるアンケート調査は業者に委託することが適当な場合には、社
会通念上許容される範囲で可能
ハ) 飲食を提供することの是非
茶菓子の提供は社会通念上の範囲で OK
弁当の提供は社会通念上、適正な範囲で OK(仙台高裁、大分高裁)
適当でない(広島高裁)
⑥ 要請・陳情活動費
政務活動費の中で問題なし(関東近県は適用しない方が良い)
⑦ 会議費
会派が行う意見交換会等各種会議への参加に要する経費
自治会・商工会等の団体が主催する新年会や忘年会に議員や会派として出席要求
があった場合や小学校の運動会における議員としても挨拶依頼等が会議費に含
まれるか?
必要性相当性の有無(飲食を伴う場合)
・会議または調査研究の目的、内容が適正か?
・飲食の場所及び内容(レストラン、食事処はいいが、二次会はダメ)
・支出金額(目安 5000 円ぐらい)
・回数(四六時中はおかしい)
(裁判例)
会議が調査研究活動と認められ、そこにおいて支出され食事代等相当額は、一人
当たり 5000 円以下であった場合、社会通念上相当と認められる範囲内である。
(H19.12.26 大阪高裁 H22.3.29 金沢地裁)
協議が政務調査活動という事であっても、その昼食代は議員が日常生活上、当然
に負担しなければ昼食代と異なる性質ではないため公金から支出できない。但し
コーヒ程度は飲み物の支出は認められる(H21.9.17 名古屋高裁)
⑧ 資料作成費
イ) 資料作成費とは、会派が行う活動に必要な資料の作成に要する経費
(調査研究活動に基づき社会通念上許容される金額なら問題ない)
ロ) 文具代は按分する必要があるが。
(H24.10.18 高松高裁 少額のため問題ない。
按分する必要がない)
⑨ 資料購入費
イ) 新聞代
多角的に物事を見る必要があるため、各紙購入に制限はない。(H19.4.26 仙
台高裁)
スポーツ紙はダメ(H19.4.26 仙台高裁)
週刊誌はダメ
ロ) 業界紙
農業新聞、りんご協会の新聞(購入動機が問題となる。仕事に従事しているか
と言うのはダメ H19.4.26 仙台高裁)
ハ) 政党が出版する機関誌
議員が所属していない政党の機関紙 → OK
議員が所属している政党の機関紙 → 仙台高裁はダメ
名古屋高裁、大阪高裁
OK
ニ) 図書
A) 何でも認められる。(例 半沢直樹 村上春樹の書籍も OK)有益な知識
を 得 るた め に必 要 な図 書 資料 購 入は 足 りる 。( H20.12.26 静岡 地裁
H24.10.18 高松高裁)
(ベストセラー、挨拶、文章の作り方、時刻表、地図、辞書、特定の宗教
団体の図書)
B) 住宅地図(福岡高裁 広島高裁 OK)
C) 認められない図書
趣味、興味、娯楽性が高いもの。 官能小説。
(荒川区)
① 自ら所属する政党の発行する新聞、雑誌の購入は計上不可
② スポーツ新聞の定期購読料は計上不可
③ 自宅における新聞 6 大紙の購読料については 2 紙目以降計上可能
⑩ 人件費
イ) 配偶者に対する支出
仙台高裁 ダメ
松江地裁その金額が高額であると考えられない場合は OK
ロ) 子どもに対する支出
OK
ハ) 第三者に対する支出
仙台高裁 按分で認める
ニ) 政務調査活動に従事する者の経費を公費から支出
大阪高裁 違法
補助金としての支出は認められない
⑪ 事務所費
イ) 事務所の購入・リース
A) 区役所以外に事務所の設置は、会派でなく政党支部として構えることが
一般的。(都道府県議長会) 設置した場合は事業所と見做されるので事業
所税が発生する恐れがある。
B) 事務所費と事務費を分けた方が良い。裁判の立証の場合説明しやすい。
C) 事務所の購入の支出は適当でない。政務活動費は環境整備のための経費
ではない。
ロ) 事務所の賃借料
A) 賃借人である議員が賃貸人となる場合 → ダメ
(H22.3.26 熊本地裁 H23.5.20 仙台高裁)
B) 賃貸人が議員の親族である場合 → OK
賃貸借契約を締結し、社会通念上適切な賃貸料の場合は認められる。
但し、政務活動以外で使用される場合は按分率が適用される。
(H19.12.26 大阪高裁 H19.12.20 仙台高裁 熊本地裁)
ハ) 賃貸人は第 3 者の場合は問題なし
事務所にかかる経費(他の活動を併存している場合)
(H19.4.26 仙台高裁 H19.12.26 大阪高裁)
ニ) 備品
A) 備品は控室の中で使用する場合、人数分 OK。一人で同種備品を複数台の
購入は認められない。
B) 修理費も OK
C) 備品の設置場所で自宅に置く場合は按分率が適用受ける。
D) 備品効果可能品目
テレビ、冷蔵庫、BS チューナー、DVD デッキ、湯沸かし器ポット
携帯電話充電器、など
E) 備品の所有権の取り扱い
議員の辞職等があった場合、会計処理上減価償却を経たうえで残存価値
があれば、その額を収支報告書上、雑収入として計上するのが適当と考
える。
F) 任期満了直前に備品を購入
ダメ(H22.3.23 最高裁)
G) 名刺代
支出は認められる(H20.11.10 松江地裁)
H) 携帯電話
仙台高裁はダメ 大阪高裁、熊本高裁按分率適用して OK
(荒川区)
携帯電話料の取り扱い
① 費用の 1/2、月 10,000 円を上限として計上可能。
② 議員自身が使用する 1 回戦のみとする。
ホ) その他
A) 公共政策大学院の学費 OK
B) 英会話習得のための経費 OK
以上は認められるているが、裁判に訴えられること自体マイナスイメー
ジであるので、裁判で勝っても、4 年に 1 階の選挙で有権者からの評価と
別々に考える
C) 住民訴訟にかかる経費はダメ
ヘ) 会計年度の考え方
発生主義、現金主義どちらでも OK
継続性が前提
9. 質疑
① 裁判所の判決は裁判所ごとで有効である。他の地裁高裁で真逆の判決出た場合で
あっても、両方が生きるという考え方である
② ポスティングを委託した場合、契約書を交わした方が保険の意味で交すべきであ
る。
③ 領収書のあて名
個人は個人、会派は会派の宛名で取るべきである。
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