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三角比の定義から教室の高さを測る ― 数学Ⅰ「三角比」

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三角比の定義から教室の高さを測る ― 数学Ⅰ「三角比」
平成25年度 高等学校教科リーダー養成講座
実践記録
三角比の定義から教室の高さを測る
― 数学Ⅰ「三角比」の指導を通して ―
県立長岡明徳高等学校
I.
市橋 良一
指導構想
本校では、4 月当初にテストを行い、点数によってクラスを 4 つに分けている。私が担当し
ているクラスは、基本的な四則計算に自信のない生徒や不登校傾向の生徒、怠学傾向の生徒な
どが履修している。
この様な中で、数学に対して苦手意識をもった生徒に、身近な問題を授業で扱い、少しでも
興味が持てるように「教室の高さを測定する」という題材を選んだ。さらに、式の立式や計算
が分からない生徒でも、積極的に授業に参加ができるようにカクシリキ(*)を用いて角度を測
る作業を取り入れた。
(*)
カクシリキとは、仰角や傾斜の角度を求めるための測定器である。
II. 学習指導案
1
単元名(題材名)
数学Ⅰ 第3章 「図形と計量」 三角比
2
日
平成25年11月20日(水)1 限
時
(50分授業 8:50~9:40)
3
対象クラス
1 年次(17名)、2 年次(3名)、3年次(1 名):計21名
4
使用教材
教科書名 新編 数学Ⅰ(実教出版)
5
単元の目標
○ 鋭角・鈍角の三角比や図形との関係に関心を持ち、角の大きさなどを用いて計量の考えの
有用性を確認する。(関心・意欲)
○ 角の大きさなどを用いて計量を行うために、三角比の相互関係や、正弦定理・余弦定理など
の三角形の辺と角の基本的な関係を理解し、それを利用して、具体的な事象の考察に活用
できる。(数学的な見方や考え方)
○ 具体的な事象の数量関係を三角比の記号を用いて正確に表現できる。(数学的な技能)
○ 直角三角形において三角比の意味、それを鈍角まで拡張する意義及び図形の計量の基本
的な性質について理解する。(知識・理解)
6
単元の評価規準
①関心・意欲・態度
②数学的な見方や考え方
③数学的な技能
④知識・理解
・鋭角の三角比や三角比 ・図形の相似の考え方を ・直角三角形を用い ・正弦、余弦及び正接
の 相 互 関 係 に 関 心 を も 用いて、直角三角形の辺 て考えられる計量の を直角三角形の辺の
ち、それらを直角三角形 の比を角との関係で捉え 問題を、三角比の記 比と角との関係として
の計量に活用しようとして ることができる。
号を用いて表現し処 理解し、基礎的な知識
いる。
理することができる。
を身に付けている。
7
本時を含む指導と評価の計画
時限
学習内容
1~4
学習活動
三角比
(本時)
評価と方法
・正接・正弦・余弦の定義
・三角比に関心をもち、図形の
・三角比の表
計量に活用することができる。
・三角比の利用
・直角三角形において、正弦・余
弦・正接が求められる。
5~6
三角比の性質
・三角比の相互関係
・ sin 2 A  cos2 A  1 を 三 平 方 の
・ 90  A の三角比
定理として捉えることができる。
・三角比の相互関係を利用し
て、1つの値から残りの値が求め
られる。
7~11
三角比の拡張
・鈍角の三角比
・拡張された三角比を、座標平
・ 180  A の三角比
面に図示して考察することがで
・三角方程式
きる
・三角比の相互関係
・直角三角形の斜辺の長さを適

当に変えて、三角比を考察する
ことができる。
8 本時の計画(4/11時間)
(1) ねらい
・
身近な事象を三角比の問題として捉え、三角比の定義から、辺の長さを求める関係式を求める
ことができるようにする。
・
教具を用いて測量するなどの作業を取り入れることで、三角比への関心や学習意欲を高めるこ
とを目標とする。また、今回の授業を通して三角比の有用性を感じ取らせる。
・
グループでの活動を取り入れて、生徒同士の学び合いの場を作る。
(2) 本時における「研究テーマ」に迫るための指導の構想
・
数学に対して苦手意識をもつ生徒でも興味がもてるように、身近な事象を題材にする。
・
4人1組もしくは5人1組のグループで作業を行い、協力して問題解決をする。
(3) 展開
評価の観点:①関心・意欲・態度
時間
導入Ⅰ
5分
②数学的な見方や考え方
活動の目的
指導のねらい
③数学的な技能
指導過程・学習活動
指導者の動き
生徒の動き
④知識・理解
指導上の留意点
評価の観点
・具体的な事象の考
1 課題の提示
どのようにしたら教室の床から天井までの高さが測れるか?
察に主体的かつ意
欲的に取組もうとす
※どのような測り方があるか
・「メジャーを使い、 る。(①)
考えさせる。
実際に測る」と考え
る生徒がいる。
・生徒に発問をし ・説明を聞いて復
導入Ⅱ
2 タンジェントの利用
10分
直角三角形において、底辺 ながら、確認をす 習する。
の長さと角度を使って高さを る。
求める方法を確認する。
展開Ⅰ
10 分
3 課題の提示
・プリントの配付。
天井にある目印(★)の真下から4m、6m、8m離れたところから、
天井までの高さを測るためには、どのようにしたらよいだろうか。
復習した内容を用いて、どの ・ 図 を 書 か せ て 、 ・プリントに図を書 ・課題の状況が図に
ようにして天井までの高さを 必要な値(①目の く。
測るか考える。
表せない生徒がいる
と思われる。
高さ、②見上げる
角の大きさ )は何
かを考えさせる。
・カクシリキの使い
方について確認す
る。
展開Ⅱ
4 高さを求める
25 分
・5つ(各4~5名)のグループ ・ 机 間 指 導 を 行 ・基準になる人を一 ・具体的な手順を黒
で高さを求める。異なる距離 い、生徒の取り組 名決める。
板に示す。
(4m、6m、8m)から一つだけ みの様子を確認す ・目の高さ、見上げ ・具体的な事象を三
について考える。
る。
る 角 の 大 き さ を 協 角比の問題として捉
えることができる。
・何をするのかを明確にし、ス
力して測る。
ムーズに測量ができるように
・測り終わったグル (②)
する。
ープから机に戻り、
・早く終わったグループに
計算し高さを求め
は、違う地点から高さを測る
る。
方法を考えさせる。
5 値の確認
まとめ
5分
・各グループの求めた高さを
※実際の値(3m)と
発表させる。
比較させる。
6 まとめ
・三角比を用いる
ことによって高い
木の高さやビルの
高さなどを測ること
ができることを伝え
る。
III. 授業の実際
計画では、4人1組もしくは5人1組のグループを作る予定であったが、欠席
者が多くおり2つのグループでの活動となった。まず、導入部分において、「教
室の高さを測定する」という身近な題材に対して三角比を用いることを
説明したが、生徒の様子をみると関連性が見えにくい導入となってしま
ったように感じる。その結果、展開Ⅰにおける作図や計算の見通しが悪
くなってしまった。更に、作業まで32分経過してしまい、展開Ⅱでのグルー
プ活動の時間が少なくなった。
グループ活動では、生徒間で教え合う姿や確認し合う姿があったものの、一
部の生徒は参加できず作業が進まない者もいた。
IV. 実践の考察とまとめ
1
身近な事象を題材にすることについて
この授業の目的の1つは、「教室の高さを測定する」という身近な
題材に対して三角比を利用することだった。今回の授業計画では、「教
室の高さを測定する」問題の説明から行ったが、初めに具体的な直角三
角形の底辺と角度を用いて高さを求める練習問題を行ってからの方
が生徒にとって分かり易かったように思う。直角三角形を作図する場
面においても、今回の様な生徒の戸惑いはなくなり、練習問題との関
連性を感じながら今回のテーマに取り組めたのではないかと考える。
また、今回の授業ではカクシリキを使って見上げる角度を測ることもテーマの一つであったが、
グループ内の一人しか使わない状況を作ってしまったことも反省点である。今後は、全員がカク
シリキを使って見上げる角度を測るような内容に変更し、誤差ができる原因を考えさせたい。そ
して最終的には、色々な工夫を行い誤差ができるだけ小さくなるような測定を目標にしたい。
2
グループ活動について
目的の2つ目は、グループでの活動を取り入れて、生徒同士の学び合いの場を作ることであった。
一部の生徒の間では学び合う姿が見られたものの、輪の中に入れない生徒もおり、学び合いの難しさを
感じた。しかし、今後もグループでの学び合いの場を作っていき、生徒同士のつながりを強めていきた
い。
3
研究授業の反省を活かして
後日、他の授業(数学活用)で上記の反省点や改善点など取り入れて再度授業を行った。
まずは、授業の進め方の改善である。『教室の高さを測る』問題の前に、具体的な直角三角形につい
ての練習問題を取り入れた。その結果、生徒は練習問題と『教室の高さを測る』問題との関連性を感じ
ながら課題に取り組めていた。
次に、プリントの工夫とグループ活動の進め方の改善である。各グループの人数を 3 名にして、全員
がカクシリキを用いて測定することにした。また、記入しづらかったプリントも改善した。その結果、普段の
授業では受け身になっている生徒でもカクシリキを用いて測定をしている様子が見られた。また、普段は
一人でいるような生徒でも分からない部分を他の生徒に聞き、学び合っている姿もあった。どのグルー
プも大きな問題なく高さの結果を出すことができた。
最後に、誤差に対する考察である。最初の測定結果は、どのグループも実際の高さと10cm近くの誤
差が生まれてしまった。そこで、後日の授業で誤差をなるべく少なくするための工夫を生徒に考えさせ
た。少々の誘導はしたものの、生徒から「目の高さを固定する」などの意見が出てきた。それを受けて、
机とカラーコーンなどを使って再度測定させた。その結果、実際の高さと4cmの誤差まで縮めることがで
きた。
4
最後に
参加された先生方から、授業で用いたプリントについてご指摘頂いた。計算でつまずいている
生徒が多くいたので、プリントに計算手順を示した。
(別紙)
また、
“発問”に関することもご指摘頂いた。日頃から心掛けていたが、生徒にとって曖昧で
分かりにくい発問になっていた。今後は、初心に戻り生徒への発問を一から見直していきたい。
県立長岡明徳高等学校
図形と計量【三角比の利用】
『教室の高さを求めてみよう』
1年次
1.
組
番
氏名
問題
天井にある目印(☆)の真下から4m、6m、8m離れた場所から、
天井までの高さを測るためには、どのようにしたらよいだろうか?
【三角形の図示】
<自分の考え>
天井
壁
2m
床
<説明>
〈考え方&求め方〉
天井
壁
2m
床
2.
あなたのグループの活動をまとめよう
メンバー
(例)
壁からの
市橋
4 〔m〕
4 〔m〕
4 〔m〕
4 〔m〕
4 〔m〕
1.55〔m〕
〔m〕
〔m〕
〔m〕
〔m〕
2.9272〔m〕
〔m〕
〔m〕
〔m〕
〔m〕
8 〔m〕
8 〔m〕
8 〔m〕
8 〔m〕
1.55〔m〕
〔m〕
〔m〕
〔m〕
〔m〕
3.102〔m〕
〔m〕
〔m〕
〔m〕
〔m〕
距離(a)
見上げた
19°
角度( A )
tan A
0.3443
a× tan A
1.3772
目線の高さ
床から天井
までの高さ
メンバー
壁からの
距離(a)
見上げた
角度( A )
(例)
市橋
8 〔m〕
11°
tan A
0.1944
a× tan A
1.5552
目線の高さ
床から天井
までの高さ
3.
他のグループの結果をまとめよう
グループ
4.
壁からの距離(a)
床から天井までの高さ
〔m〕
〔m〕
〔m〕
〔m〕
〔m〕
〔m〕
実際の高さに出来るだけ近くなるように測定するために必要なことを考えよう
○どんな工夫が考えられますか?



○工夫をして測定しよう。
壁からの
距離(a)
〔m〕
〔m〕
〔m〕
〔m〕
〔m〕
〔m〕
〔m〕
〔m〕
〔m〕
〔m〕
〔m〕
〔m〕
見上げた
角度( A )
tan A
a× tan A
目線の高さ
床から天井
までの高さ
★《活動の進め方について》
1. 全員が作業に参加すること。
2. 作業内容は、
① カクシリキを使い、見上げる角の大きさを測る
② ①の補助 と メジャーでの測定
③ ②の補助
※ ①~③を順番に各メンバーで行う。
(例) ①:A,②:B,③:C → ①:B,②:C,③:DもしくはA → ①:C,②:DもしくはA,③:AもしくはB
3.
机に戻り、協力して床から天井までの高さを計算する。(電卓を用いて良い。)
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