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部品10万点の調達・在庫を管理 ジャスト・イン・タイムの

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部品10万点の調達・在庫を管理 ジャスト・イン・タイムの
部品 10 万点の調達・在庫を管理
ジャスト・イン・タイムの納品を実現
横河トレーディング
部門をまたがる業務プロセスとデータの一貫連携と管理は、ERP パッケージの真骨頂だ。横河ト
レーディングは、システムラボの「GX シリーズ」を導入。受発注と在庫管理を連動させ、10 万点に
およぶ電子部品の調達サービスで、業務管理レベルを格段に引き上げた。
マーケティング部長は「我々は商社とし
委託された調達代行が占める。だが
高精度計測器や制御機器分野のマ
ては珍しく、資材調達、国際物流、生
今後は、グループ以外の外販比率を 5
ーケットリーダーだ。同グループ会社
産受託
(EMS)
と3 つの機能を組み合
割まで高めていく方針だ。外部顧客
の横河トレーディングは、本体の購買
わせて、お客様にソリューションを提
には、国内の大手家電メーカーなど、
部門が 97 年に独立分離したもの。最
供する企業です。生産受託
(EMS)
で
錚々たる企業が名を連ねる。
近では EMS(電子機器製造受託サ
は、永年培ってきた横河電機の高い
最大の武器は、10 万点にもおよぶ
ービス)事業者として独自の分野を開
技術力と高品質を武器に、多品種少
電子部品を、全世界のメーカーや商
拓し、売上高は約 500 億円に上る。
量生産の高付加価値製品や、半導体
社から効率よく調達し配送する、ジャ
製造装置の生産受託を得意としてい
スト・イン・タイムの仕組みだ。これは、
ます」
と語る。
横河電機が長年の歴史の中で培って
「YOKOGAWA」
( 横河電機)
は、
EMS とは、電子機器の部品調達
から設計、開発、生産、物流まで、製
きたトヨタ生 産 方 式 から生まれ た
造に関わるすべての機能を、アウトソ
ーシングの形で提供するサービスだ。
従来の「下請け」や「OEM」
とは根本
部品調達は「血液循環」
欠品や過剰在庫は健康を損なう
System)
を基本としている。
現在、横河トレーディングの売上高
製造業にとって部品調達は、血液
の約 7 割は、横河電機グループから
の流れのようなものだ。遅延や寸断は
的に異なる。
経営管理本部の加藤武システム・
NYPS
(New Yokogawa Production
図 1 横河トレーディングの事業部別利用システム
横河トレーディング
横河電機向け
7割
第1営業本部
横河電機
調達代行
外販
3割
第2営業本部
第3営業本部
横河電機
調達代行
国内企業向け
EMS事業
プラズマ
プラズマ
プラズマ
国内取引向け
横河電機の
自社開発システム
GX
G社向け調達サービス
GX
輸出入業務向け
5
加藤武部長
許されない。だが生産拠点が中国な
崎田敏和氏
G 社)取引に端を発する。
リアルタイム処理にこだわった製品
どに移転し、短納期での生産が要求
G 社との取引が本格稼動するまで
だ。取引データから自動生成した勘
される今日、メーカーが自力で効率的
は、
「外販の基本的なビジネススタイル
定仕訳を会計モジュールに自動反映
に部品を調達するのは、困難になりつ
は EMS のコンセプトを持たない部品
するなど、ERP に求められる業務間
つある。
調達・供給サービスが中心」
( 加藤部
のデータ連動も実現していた。当時、
長)
だったと言う。
開発元のシステムラボも、GX シリーズ
横河トレーディングは、こうした課題
を抱える顧客に対し、EMS 事業の一
だが G 社との取引では、はるかに
を輸 出 入 管 理ソフトから本 格 的な
環として、部品調達サービスを提供し
高度なサービスレベルが求められた。
ERP パッケージへ転換させていたと
ている。
1 つの製品につき何千点もある電子
ころだった。
横河トレーディングでは顧客別に事
部品を、G 社が作成する生産計画と
業部が分かれており、受発注・在庫管
完全に同期した「ジャスト・イン・タイム」
理システムも、各事業部毎に使い分け
で納品する必要があったのだ。
ている。たとえば横河電機グループと、
しかも G 社の生産拠点は中国など
横 河トレーディングは 何 種 類もの
ERP パッケージを比較検討した結果、
「機能と価格のバランスから GX シリ
ーズを選択しました」
( 加藤部長)
との
ことだ。
海外取引の必要がない国内顧客向
の海外である。国内外のサプライヤ
け事業には、横河電機の基幹システ
から計画的に部品を調達し、効率よ
ムを流用している。
く中国へ輸出、
納品しなければならず、
条件に適合させるため GX シリーズを
一方、輸出入手続きを伴う顧客企
受発注や在庫を高い精度で管理する
大幅にカスタマイズ。開発はシステムラ
業を対象とする事業部では、外貨対
必要があった。今までの業務パッケー
ボが担当し、
2000 年に本稼働させた。
応の GX シリーズを使用。最近では、
ジでは、対応が難しくなっていた。
その後 1 年をかけて、G 社の取引
現 在 のシステム環 境 は 、O S が
Windows で、DBMS には Oracle。
海外顧客だけでなく、国内顧客でも生
しかし当時既に G 社との取引は始
産拠点が海外にある場合が多く、GX
まっており、早急に受発注・在庫管理
ハードはミッドレンジの PC サーバー
シリーズを適用する割合が高まってい
システムを増強する必要があった。そ
に、クライアント PC が本社で 20 台、
るという。
うした中、海外製品に代わる ERP パ
入出庫作業を担う倉庫で 5 台という
ッケージとして注目したのが、社内の
構成だ。
JIT の業務管理の高度化へ
ERP パッケージ導入
輸出入業務に利用していた GX シリ
横河トレーディングが GX シリーズ
GX シリーズは元々輸出入管理ソ
受発注と入出庫を連動
帳簿と実在庫の誤差を解消
を採用したのは、90 年代末に始まっ
フトとしてスタートしており、輸出入に
GX シリーズの導入効果はすぐに現
た医療機器メーカー世界大手(以降、
絡む複雑な外貨会計を効率化する、
6
ーズだった。
われた。受発注と在庫の管理レベル
が格段に上がってきたのだ。
経営管理本部システム・マーケティ
ング部情報システム Gr.の崎田敏和氏
データを蓄えていくだけのもの」
と考え
庫の検品も目視に頼っていたため、ミ
られており、売り上げと仕入れ、在庫
スの発生を防げなかった。
の間でデータのズレが発生するのは、
現在 G 社とはかなりの取引があり、
は、
「GX シリーズで評価できる点は、1
「仕方ない」
と考えられていた。加藤
最重要顧客のうちの 1 社となってい
つひとつの取引と商品がヒモ付けさ
部長は「入力制限機能がなく、間違っ
る。当然、横河トレーディングの競合
れており、在庫状況を正確に把握でき
た数値でもそのまま入力できるため、
他社も G 社との取引に参入しようと
る点です」
と語る。
データの正確さを保てませんでした。
画策している。そうしたライバルを退
実際、棚卸での誤差も相当ありました」
けて現在の良好な関係を維持し、さ
と振り返る。
らなる取引の増大を実現するには、
この機能は、GX シリーズの大きな
特徴の 1 つだ。仕入れた個々の部品
高品質のサービスを提供し続ける必
を取引とヒモ付け、リアルタイムに管理
だが GX シリーズなら、そうした心
できる。大量の部品を扱う横河トレー
配は無用だ。実際、GX シリーズを運
ディングとって、正確な在庫状況を迅
営し始めてから
「棚卸誤差はほとんど
速に把握できる点は、非常に大きな魅
なくなりました」
( 崎田氏)
とのことだ。
理の精度が高まったことの意味は大
力だと言う。
部品調達サービスの「生命線」
とも言
きいだろう。
そして入庫登録(仕入計上)
した製
品しか、引当処理や出庫指示(売上
うべき受発注・在庫管理で、大幅な業
務改善が図れたわけだ。
要がある。
GX シリーズにより受発注・在庫管
また、在庫管理や検品が正確にな
れば、データの不整合や人為ミスによ
計上)
できない仕組みになっているた
GX シリーズと連動したバーコードシ
る作業ロスを防ぎ、業務を効率化でき
め、売り上げ、仕入れ、在庫の間の
ステムの導入も、受発注・在庫管理の
る点も見逃せない。同社ではシステム
データの不整合を防ぐ。システム上の
大幅な強化につながった。入出庫の
導入により倉庫の人員を 3 分の 1 減
帳簿在庫と棚卸在庫に差があると、
検品作業で読み取ったバーコード情
らすことができたという。
欠品や過剰在庫を招く可能性がある
報が、即座に GX シリーズの DB に反
が GX シリーズならそういった心配は
映されるため、業務のスピードが増し、
無用だ。
工数も短縮できたのだ。
それまで業務パッケージは、
「単に
誤出荷もなくなった。以前は、入出
GX シリーズは他にも、業務効率を
向上させる様々な機能を備
図 2 GX シリーズのシステム環境
えている。
DELL PowerEdge4400
NEC Express5800/120Rd-2
GX-DS
GX-EX
GX-DP
GX-IX
GX-IC
柔軟性に富む管理手法が
業務の効率化につながる
たとえば、前述の強力な
ヒモ付け機能により、在庫
倉 庫
管理で重要であり、最近注
目されているトレーサビリ
ティ
(履歴の追跡管理)の仕
組みを確立しやすい点が挙
げられる。
Windows 2000 Server
Oracle8.1.6
崎田氏は「今回、進捗管
理機能を追加カスタマイズ
バーコードシステム
しています。これにより、製
品毎の業務処理の流れや
単価が一目で分かります」
と
話す。入庫から出庫までの
流れを、瞬時に把握できる
7
ています。当社のビジ
図 3 GX シリーズの導入効果
ネスに適した ERP パ
導入効果
課 題
強力な紐付け機能により、売り上げ、
仕入れ、在庫のデータが完全同期
顧客別(事業部別)にカスタマイズを
実施しているので二重の手間
バーコードシステム導入により、
入出庫作業の効率化と誤配防止
会計システムと受発注・在庫システム
連動しておらず、業務効率が悪い
ッケージを導入し、統
一していく必要がある
と感じています。もち
ろん GX シリーズも有
力候補の 1 つになりま
トレーサビリティの確立によって、
製品ごとの取引履歴を追跡可能
す」
と語る。
同じ GX シリーズで
豊富な引当処理機能により、
弾力的な在庫管理が実施できる
も、G 社向けと国内顧
客向けでは、それぞ
受発注・在庫データのリアルタイムに
処理されており、状況分析に役立つ
れの別のカスタマイズ
を加えており、システム
という。
また GX シリーズは、受発注・在庫
とだ。
横河トレーディングは 2003 年 3 月、
仕様は大きく異なっている。そのため、
機能やプログラムを融通し合うことが
管理システムの使い勝手を決める
「引
本格的なデータウエアハウスを構築し
できない。また、横河電機グループと
当処理」の部分が充実している。一
た。精度の高い受発注と在庫のデー
の取引で利用する基幹システムと GX
般の ERP パッケージでは難しいと言
タがあるなら、それを他のシステムで
シリーズでは、データを交換できない。
われる、未入庫製品に対する引当処
活用しない手はないと考えたからだ。
各受発注・在庫管理システムと会計シ
理(未来在庫引当処理)が可能なた
顧客の生産計画に合わせて部品
め、急な受注にも即座に対応。商品
の精密な調達計画を作成するには、
を確実に確保できる。崎田氏も
「GX
取引や在庫情報の高度な分析が欠
単一の ERP パッケージで統一しよう
シリーズの機能とパフォーマンは十分
かせない。そこで EAI ツールを利用
という計画だ。早ければ 1 年以内に
に満足できます」
と高く評価する。
し、GX シリーズや他のシステムから前
も製品を定める予定だ。
ステムが連動してない点も課題だ。
こうしたバラバラな業務システムを、
高い評価を受け、横河トレーディン
日までの受発注データなどを収集。オ
その際に、GX シリーズが選ばれる
グは GX シリーズの利用範囲を拡大
ンライン分析ソフトを使って多角的に
可能性は高いという。GX シリーズで
している。これまで国内顧客との取引
分析し、詳細な調達計画の作成に役
コアとなる会 計 モジュールは、受 発
には海外製 ERP パッケージを利用し
立てている。
注・在庫モジュールとリアルタイムにデ
てきたが、ここ 1 年、輸出入を伴う取
このようにデータウェアハウスを有効
引の処理を GX シリーズへ切り替えて
活用できるのも、GX シリーズの基礎
いる。今後、国内での外販比率を高
データが正確だからと言えよう。
めていく計画もあり、GX シリーズが活
ータ連動するため、業務全般を効率
化できるからだ。
さらに、外貨会計に対応した機能
が豊富な点も魅力だ。任意に登録し
たレート設定により、自動で外貨・円換
GX シリーズの利用範囲を広げるの
全事業部を単一 ERP で統一し
業務効率をさらに向上させる
には、コストパフォーマンス面の理由も
前述のように、横河トレーディングで
「為替差損益」や「評価替え」など、専
ある。加藤部長は「GX シリーズに対
は、顧客別に業務システムが分かれて
門的な処理も可能で、煩雑な外貨会
する累計の投資額は 1 億円に満たな
いる。だが今後は、それらを統一して
計業務を大幅に効率化できる。
い程度で、機能の高さを考えると、か
いく計画だ。
躍する場面はさらに増えそうだ。
なりの割安感があります」
と分析する。
運用コストも大幅に圧縮できるとのこ
8
加藤部長は「現状では、システムが
異なることによる無駄な業務が発生し
算処理を実施する。外貨取引に伴う
横河トレーディングが新たな ERP パ
ッケージの選定にあたって、どのような
判断を下すか注目される。
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