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協友アグリ株式会社【パート2】

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協友アグリ株式会社【パート2】
プロトタイプによる要件定義で
アドオンの必要性を徹底追及
〈 導入製品 〉 Infor
協友アグリの
ERP 導入プロジェクト
ERP LX
詳細は下記でご覧いただけます。
i Magazine 2 月号
全体最適・業務改革を達成する
success
roadmap
roadmap
第1特集
ERP成功事例 2
ビッグバン導入でデータ
処理の即日化を実現
〈 導入コンサルタント 〉
P.37
白鳥 吉久氏
執行役員 経営管理部長
経営施策の効果をリアルタイムにフィードバック
協友アグリ株式会社
松本 賢治氏
導入製品
経営管理部 部長代理
Infor ERP LX
協友アグリのERP導入を
成功に導いたポイント
Company Profile
設 立:1938 年
2
3
コンサルタントの視点
強いリーダーシップと
プロジェクト情報の可視化が導入成功の鍵
ERP成功事例
[ 協友アグリ株式会社 ]
本 社:神奈川県川崎市
○データの一貫性が確保された業務運用を目標に共通認識
○予算・スケジュールを具体的に明示
○進捗を日々チェックし、課題・対応策・実施者を全員に周知徹底
日本インフォア・グローバル・ソリューションズ株式会社
資 本 金:22 億 5000 万円
売 上 高:151 億円
「ビッグバン導入でデータ
処理の即日化を実現」
従業員数:186 名
(2010 年 10 月)
http://www.kyoyu-agri.co.jp/
○業務手順マニュアルを開発と併行して作成
システム専任がいないまま
ビッグバン導入へ始動
体制を立て直し、農薬メーカーとして
同社は八洲化学工業時代から汎用機
新たな系統事業の展開を目指すという
を外部にアウトソーシングしており、
大きな期待を担っていた。
システム部門は存在しない。その役割
全国農業協同組合連合会(以下、全
前身の八洲化学工業では長年にわた
農)と住友化学が農薬事業で提携し、
り、国産汎用機を使用していたが、統
両者の関連会社である八洲化学工業と
住化武田農薬の系統流通事業を統合す
ることで、2004 年 11 月に誕生したの
が協友アグリである。
全農を通した農薬の流通販売は「系
統流通」と呼ばれる。当時、外資メー
カーの市場参入が相次ぎ、国内メー
カーも含めた事業再編の動きが活発化
合による新会社誕生を機に、システム
刷新を検討し始めた。
親会社である住友化学から出向し
てきた白鳥吉久執行役員(経営管理部
長)は 2005 年頃から、先頭に立ってシ
ステム選定をスタートさせたものの、
米国への赴任が決まったこともあり、
いったん選定作業を中止。帰国後の
するなど、農薬市場を取り巻く環境は
2009 年になって、基幹システム構築
厳しさを増していた。協友アグリの誕
プロジェクトが再びスタートすること
生は、経営不振に陥っていた農薬事業
になった。
を担うのが経営管理部であるが、そこ
でシステム企画を担当するのは白鳥氏
と松本賢治部長代理の 2 名。ともに経
理のエキスパートであり、システムは
今も本業との兼務である。
「IT に対す
る知識も専任スタッフも欠けていた」
(白鳥氏)という状況の下、システムの
対象範囲を販売・物流、生産・原価管
理、購買・会計の全領域に定めたビッ
グバン型の ERP 導入プロジェクトが
スタートしたのである。
同 社 が 新 シ ス テ ム に 求 め た の は、
(1)経営改善効果の測定と判断業務の
http://www.imagazine.co.jp/
37
コンサルタントから見た ERP プロジェクトのポイント
○ 3 サイクルのプロトタイプでアドオン要件を定義
○ 画面の見た目や操作性はアドオン要件にしない
○ 個別のアドオン要件ごとに見積もりを翌日提出
○ 終盤で提示されるアドオン要件は良質
協友アグリ
ERP プロジェクトの概要
良在庫の削減および有効期限の管理をサポートす
るロット管理の導入など、業績回復を達成する上
で欠かせない、経営施策に基づくシステム要件が
協友アグリは 2009 年9月、販売・物流、生産・
多く含まれている。
原価管理、購買・会計の全領域を対象にしたビッ
プロジェクトのキックオフは 2009 年 10 月。
グバン型の基幹再構築に向け、インフォア・グ
本稼働は翌 2010 年 5 月で、プロジェクト期間は
ローバル・ソリューションズの
「Infor ERP LX」
(旧
約 8 カ月間。ビッグバン型の再構築としては、き
BPCS)
導入を決定した。
わめて短期間であったと言える。
同プロジェクトが目標に掲げたのは、(1)経営
協友アグリは前身である八洲化学工業時代か
改善効果の測定と判断業務の集約、(2)業務の簡
ら、ホストである国産汎用機をアウトソーシング
素化と情報の共有、(3)システム関連コストの削
していた経緯もあり、社内にシステム部門が存在
減という 3 点である。
しない。その役割を担うのは経営管理部である
とくに厳密な原価管理に基づき、固定費を回収
が、システム専任のスタッフは当時も今も擁して
した上で利益を算出できる黒字品目の特定や、不
いない。
http://www.imagazine.co.jp/
61
ERP成功事例
コンサルタントの視点
2
3
製品選定時は外部コンサルタントに RFP の作
え、バッチプロセス系と呼ばれる生産プロセスを
成と見積もり内容の査定、プロジェクトメンバー
メインにする。この領域は一般に標準化が進んで
との週末研修などを依頼したが、プロジェクトの
おり、Infor ERP LX との業務適用度が極めて高い
キックオフ後は関わっていない。
ため、生産系はほぼアドオンなしで導入が可能で
今回、プロジェクトリーダーとして構築を推進
あった。
したのは、経営管理部の白鳥吉久部長・執行役員
また販売系のアドオン開発は取引の 90%を占
である。
める全農との EDI のつなぎ込み、会計系は経費入
プロジェクトの運営を担う事務局は、経営管理
力のワークフローが中心であった。
部のスタッフを中心に 5 名で構成。プロジェクト
ただし、いくら業務適用度が高いとは言え、現
メンバーには、販売管理・物流管理・生産管理・
場部門からのアドオン要求が少なかったわけでは
購買管理・経理の各業務を担う現場部門から、若
ない。前システムでは汎用機をベースに緻密に
手を中心に各 1 ∼ 2 名の代表者が集まった。
ユーザー要件を作り込んできたため、既存の操作
一方、日本インフォア・グローバル・ソリュー
性を新システムでも継続・再現したいと、ユー
ションズ
(以下、日本インフォア)からはプロジェ
ザーからはさまざまな要望が寄せられた。
クトマネージャーである石川光幸氏(コンサル
それに対して、目標に対する共通認識とプロ
ティングサービス本部)を中心に、3 名のアプリ
ジェクト情報の可視化、トップダウン型の強い
ケーションコンサルタントが参加。また、移行作
リーダーシップ、そしてプロトタイプによるアド
業を支援するため、汎用機のアウトソーシング先
オンの要件定義が効果的に機能した。その詳細
からも 3 ∼ 4 名がプロジェクトに加わった。
を、以下に見ていこう。
アドオンの最小化を実現した
プロジェクトの注意点
62
ERP 導入の要は
プロトタイプによる要件定義
プロジェクトを推進した日本インフォアの ERP
プロジェクトの作業フェーズは、次の 5 つに分
コンサルタントである石川氏は、協友アグリが 8
かれる。
カ月という短期間で ERP 導入を成功させた理由
第 1 フェーズは構想策定フェーズ。約 2 週間を
の 1 つとして、アドオン開発ボリュームの最小化
費やし、プロジェクトの目標設定、適用範囲、体
を挙げる。
制づくり、スケジュールとタスクレビュー、役割
同プロジェクトで開発されたアドオン件数は販
分担などを決定する。
売系で 19 機能、生産系で 1 機能、会計系で 15 機
第 2 フェーズは、業務設計フェーズ。約 2 カ月
能の合計 35 機能。平均的に見ても、開発数はか
でフィット&ギャップ作業により業務分析や要件
なり少ない事例に属する。
定義を進め、業務フローの修正、マスターの定義、
協友アグリは除草剤・殺菌剤・殺虫剤など、約
メンバーへのオペレーション教育、実データを使
400 種類におよぶ農薬の製造・販売を事業の柱と
用するプロトタイプの準備、および3サイクルを
するが、製造工程が比較的シンプルであるのに加
繰り返すプロトタイプの開始などが、この時期の
2011.03
コンサルタントの視点で解き明かす
特集
success
scenario
さらにまた少し時間をおいて、3 回目のサイク
第 3 フェーズは、アドオン開発フェーズ。前述
ルでは同じく 2 週間を費やし、残った課題を個別
したように、同社の場合は販売・生産・会計系を
に検討し、最終的にアドオン開発の要件を固めて
含め 35 の追加機能を約 4 カ月で開発した。
いくのである。
第 4 フェーズは、移行フェーズ。約 2 カ月でマ
この作業に入る前、協友アグリ側のプロジェク
スターの移行・整備や操作マニュアルの作成を実
トリーダーである白鳥氏は日本インフォアに対し
施した。
て、「まずアドオン要求を全てリストアップし、
そして第 5 フェーズは、本稼働後の運用フェー
それらを精査した上で、最終的にアドオン開発で
ズになる。従来とは異なる新しい運用モデルの確
対応する機能を絞り込んでいくのではないのか」
立に注力し、エンドユーザーから寄せられるさま
と疑問をぶつけた。
ざまな質問への回答、使い始めて気づく新たな課
石川氏はすぐさまこれを否定して、次のように
題の管理や追加要件に対応する。
回答した。
石川氏はこれらのフェーズの中で、ERP 導入の
「ユーザーは既存システムで実現している機能を
要となるのは第 2 フェーズ、とくに実データと実
全てアドオンで再現したいと考えがちなので、そ
際の画面を使って実施されるプロトタイプである
のやり方ではアドオン開発の項目が膨大になり
と指摘する。
ます。数百に上る項目の中から 1 つずつオペレー
プロトタイピングは、実質的にアドオン要件を
ションを確認して必要機能を絞り込み、見積もり
決定していく作業である。1 回目のサイクルでは
額が当初予算を超える場合は、そこからさらに絞
1 週間程度を費やし、プロジェクトメンバーに「何
り込むという作業を繰り返していては時間がかか
も言わず、ただ黙って全オペレーションを体験す
りすぎるし、本稼働後もうまく機能しません」
る」
ように要請する。
そしてプロトタイプに入る直前のミーティング
そして、検討・思考するための時間を少し置い
開催に際して、石川氏は白鳥氏に、メンバーに対
て、2 回目のサイクルでは倍の2週間をかけ、課
してプロジェクトの目的をあらためて確認した上
題の整理・抽出やアドオン開発の可否を決定して
で、「画面の見た目や操作性については、アドオ
いく。
ン要件として提示しない」ように徹底してほしい
白鳥 吉久氏
石川 光幸氏
協友アグリ
執行役員
経営管理部部長
日本インフォア・グローバル・
ソリューションズ
コンサルティングサービス本部
プロジェクトマネージャー
http://www.imagazine.co.jp/
2
3
コンサルタントの視点
作業項目となる。
ERP成功事例
フォーカス
63
ERP成功事例
コンサルタントの視点
2
3
と要望した。
クトはうまくいく、と確信した瞬間でした」と、
単なる操作性の違いであれば、人は必ず慣れ
その時を振り返る。
る。どうしても必要なら、あとから要件に追加す
ればいい。
「既存システムでは自動化されている
アドオン要件ごとに
翌日に見積もりを提示
のに、ERP では数回のデータ入力が必要になる」
「今は 1 画面で表示できているデータの参照に、
今度は 3 画面を遷移しなければならない」といっ
こうしてスタートしたプロトタイプ作業である
た操作の差異は業務の本質ではないと、石川氏は
が、それでもユーザーからはさまざまなアドオン
伝えたのである。
要件が提示された。
これを受けてミーティングの場で白鳥氏が口に
それらに対して、「1 件の操作にどのぐらいの
したのは、石川氏の期待を大きく上回る言葉で
時間が必要か」「1 日に何件を処理するか」「何人
あった。
のユーザーがどのぐらいの頻度で使うか」などを
「今回の ERP は、ユーザーの使い勝手をよくする
突き詰め、「なぜ必要なのか」を徹底的に追求して
ために導入するのではない。重要なのは経営目標
いく。
を達成することであり、そのためには個々の局面
一方、日本インフォア側は要件が提案される
で、今までより操作性が悪くなることもあると理
と、当日中に要件定義を行い、必要な開発工数を
解してほしい」
確定し、翌日には概算の見積もり額を提示した。
当惑した表情を浮かべるメンバーを前に毅然と
アドオン要件がある程度出揃った時点で、まと
言いきる白鳥氏の姿に、石川氏は「このプロジェ
めて見積もりを提出するのではなく、要件個別
図表 1 プロジェクトのフェーズ・期間・実施内容
フェーズ
1
64
構想策定
期 間
2009 年 9 月∼(約 2 週間)
主な実施内容
プロジェクトの目標設定、適用範囲の確定、体制づくり、
スケジュールとタスクレビュー、役割分担の定義
※ 事前作業
業務分析、業務フローの修正、マスターの定義、メンバー
へのオペレーション教育、実データを使用するプロトタイ
ピングのデータ準備、3 サイクルで構成するプロトタイピ
ング作用とアドオン要件の定義
2
業務設計
2009 年 10 月上旬∼ 12 月上旬
(約 2 カ月)
3
アドオン開発
2009 年 12 月中旬∼ 2010 年 3 月
(約 4 カ月)
販売・生産・会計で 35 機能のアドオン開発。総合テスト
を含む
4
移 行
2010 年 3 月下旬∼ 5 月初旬
(約 2 カ月)
マスターの移行・整備、操作マニュアルの作成
マスターコードの統一化は事前に順次整備
5
運 用
2011.03
2010 年 5 月(本稼働)
新しい運用モデルの定着、エンドユーザーから寄せられる
Q & A 対策、新たな課題の整理や追加要件への対応
コンサルタントの視点で解き明かす
特集
success
scenario
知ることが重要」と指摘する。
大小を問わず、あらゆる要件でこの方針を徹底し
例えば購買部門ではデータ入力作業が増え、業
た。これにより、自分たちの要求している機能を
務負荷が増えるように思えたとする。しかしその
実現するのに、どれだけの工数・予算が必要なの
前後の部門では作業が効率化し、会社全体では工
かをメンバー全員が常に、かつ強く意識すること
数削減につながる、あるいはデータ処理の迅速化
になったのである。
につながるとなれば、購買部門でのデータ負荷増
時には、
「この機能がないと絶対に業務が回ら
大は、例えその部門に不満があったとしても了承
ない」と、現場部門のユーザーが強く主張する場
されねばならない。
面もあった。白鳥氏は、「それではこの機能がな
「こうした全体を俯瞰する視点で要件の是非を決
いという前提に立ち、あと何人増員すれば、業務
定する、そうした経営的な視野の広さが必要で
が回るようになるのか」と切り返した。経営側に
す」(石川氏)
立つ執行役員であり、実際に人員配置の権限をも
また同プロジェクトでは、現場部門からの代表
つ白鳥氏の言葉に、明確な数字でもって答えるこ
者を若手中心のメンバーで構成した。自分の業務
とができず、結局ユーザーが要求を撤回すること
は一通り理解している 20 代後半から 30 代前半の
もあったという。
社員にとっては、他者の業務を知る機会を得るこ
こうしたプロトタイピングによるアドオン要件
とで、自分の業務の価値を知り、それが経営的視
の定義が続く中、石川氏は常に工数設計にバッ
点・経営的思考を養うことになると石川氏は指摘
ファをとり、開発予算に余裕をもたせるように注
する。
意し、白鳥氏にもその点を進言した。
白鳥氏も今回のプロジェクトで、各部門で今後
それは、
「プロトタイピングの終盤で提示され
を担うコア人材の育成が可能になったと、そのメ
るアドオン要件は良質である」という石川氏の経
リットを指摘している。
験に基づくものだ。
コンサルタントとタッグを組んで、強力なリー
システム全体の仕組みに対する理解が進み、さ
ダーシップの下、さまざまなプロジェクト情報を
まざまな要件の提示と撤回が繰り返された後に出
可視化することが、システム部門が存在しない同
てくるアドオン要件は、強い必要性の中から生ま
社で ERP 導入を成功させた大きな理由であるよう
れてくるケースが多い。そのため、たとえプロ
だ。
2
3
コンサルタントの視点
に 1 つ 1 つ見積もりを提示したのである。機能の
ERP成功事例
フォーカス
ジェクト後半に追加要件が出たとしても、予算内
で対応できるように考えていくことが重要である
という。
全体の流れを理解し
他部門の業務を知る
石川氏は「ERP では自分の業務だけでなく、全
体の流れを理解し、他者あるいは他部門の業務を
協友アグリ株式会社
Company Profile
設 立:1938 年
本 社:神奈川県川崎市
資 本 金:22 億 5000 万円
売 上 高:151 億円
従業員数:186 名
(2010 年 10 月)
http://www.kyoyu-agri.co.jp/
http://www.imagazine.co.jp/
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