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8. ドイツのオーガニック事情

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8. ドイツのオーガニック事情
ドイツ自然化粧品最前線
Neues in Kosmetikfront ドイツ自然化粧品最前線
第8回
第8回
ドイツのオーガニック事情
ミュンヘンのオーガニック・スーパーBasic 訪問記
ミュンヘンは大都市の機能が揃っていながら大きす
ぎず、とても魅力的な街である。ケンプテンの近く
にあるプリマヴェーラライフを訪れるため、ドイツ
アロマテラピー協会ともいえるフォールム・エセン
チィアの本部がミュンヘンにあるため、ここをセミ
ナーツァーの拠点にすることが多く、私たちは年に
数回ここを訪れる。ツァープログラムに必ず入って
いるのが、市内のオーガニックショップやオーガ
はプリマヴェーラ・ライフ、ロゴナ、ヴェレダ、ラ
ニックレストラン、薬草問屋、シュタイナーのショッ
ヴェーラ、タウトロプフェン、マルチナなどが販売
プ見学である。ミュンヘンのこれらのショップに
され、サロンも併設されている。
オーガニックファンのツァー参加者は歓声をあげ、
当社が代理店となって販売しているレーベンスバウ
くまなく見て歩き、集合時間に遅れてしまう。
ム社、ゾンネントア社はそれぞれ棚をもらって、大
規模展開している。
新鮮で品数が多いことでドイツ中に知られ、人気の
もちろんここで売られている食料品はすべてオーガ
あるミュンヘン市中央部のビクトアーリエン市場の
ニック認定をとったものばかり、製造・加工、認定
すぐ近くにドイツで最大のオーガニック・スーパー
に通常商品とは比べものにならないほどコストがか
マーケット Basic がある。このチェーンストアを例
かっているため、価格も相応に高い。数年前までは
にとって、ドイツでのオーガニック市場の動向をお
オーガニック食品は通常の食料品の2倍、場合に
話したい。
よっては数倍することもあった。
このオーガニックスーパーのチェーンの歴史は比較
ところが 1 年ほど前にドイツの激安スーパーチェー
的新しく、1997 年に Basic 株式会社として創立、
ン ALDI(アルディ)が生鮮野菜にオーガニックのもの
1998 年に第 1 号店を上記の場所に設ける。この会
を導入し、これまでのオーガニック食品と比べて非
社のモットーは「オーガニックの食物をすべての人
常に安い価格で販売し始めてから、この価格差に激
に」で世界観、宗教、年齢、職業にかかわりなく、
変の兆しがみえた。同じく激安スーパーチェーン
おいしく健康的な食生活に関心をもつ人に語りかけ、 Liedel(リーデル)もこれにならい、その他さまざ
その輪を広げていくことである。2006 年末にはは
まなスーパーがこの流れに乗り遅れまいとオーガ
じめての外国展開(ウィーン)を含めて 21 店舗あ
ニック商品導入を進めている。
り、2007 年末までにはドイツ全土ならびにオース
この流れのなかで、オーガニックとノン・オーガニッ
トリアで 30 店舗を予定している。食料品のなかで
クの価格差は縮まって来つつある。まもなく実質的
も畜産物を中心とする食料品がとくに充実している。 にはほぼ同じ、むしろブランドやメーカーの違いと
ミュンヘンの 1 号店では1階は食料品、2 階は自然
いう状況が到来するのではないか。
化粧品、洗剤、日用雑貨、文具、書籍、CDなどあ
普通の市民の間で、オーガニック商品が認知され、
らゆる商品が売られている。オーガニックのレスト
だれもが少々価格が高いだけなら家族のため、自分
ランも併設されている。自然化粧品メーカーとして
のためにオーガニックを選ぶドイツでは、この傾向
-1-
は熱烈に歓迎され、ますますオーガニックブームが
加速されつつある。
一方で、オーガニック商品とノンオーガニック商品
の価格差がどんどんなくなることに危惧の念を抱く
人たちもいる。6 月に最高品質のオーガニックと定
評のあるイタリアのデメター農場を見学、実習した
ことはすでに報告したが、オーガニック農法では除
草剤を用いないためラベンダー畑だけで年 4 回、7
見が多かった」と言っているが、Lidl の経営参加の
人が丸 7 日かかって除草するという。この人件費だ
可能性については否定していない。
けでも価格を押し上げる。ノンオーガニックと値段
の変わらないオーガニック商品とはいったい何なの
この記事はドイツにおけるオーガニック運動の理念
か?
限りなく通常栽培、通常加工に近いものが通
と価格差の解消にともなう品質軽視の傾向、さらに
常の流通ルートにのせられ、内容的にほとんどノン
今年ベルリンで開催されたサミットに抗議したグ
ノーガニックと変わらないことを意味していないだ
ローバル化反対の市民運動との関連が伺えて、非常
ろうか?
に興味深かった。さらに地球の全人口を食べさせて
いける食料品をはたしてオーガニック栽培で供給で
Basic に関する面白いニュースをネット上で読んだ
きるのであろうか?
本質的にオーガニック、持続
ので、ここでご紹介したい。
可能な農業、環境政策は富裕層を前提としていない
2007 年 8 月 3 日発信の「Basic-Lidl・抗議行動」と
だろうか?
いう題である。グローバル化に反対する市民団体
高価格・高品質のオーガニック自然化粧品を輸入販
Attac の活動家が Basic の株主総会に現れ、Lidl &
売している当社としては、考えさせられる難しい問
Schwarz グループ(2006 年の売上 5 兆円を誇る食料
題である。
品ディスカウントチェーン)に資本参加してもらい、
Basic チェーンの拡大路線を資金的に確保しようと
ドイツ・オーガニックの凄いところは,以下のこと
する経営側のもくろみに抗議の意を表明した。この
によってもわかる。
グローバル化反対グループは、ディスカウント大手
世界的に有名な環境団体である「グリーンピース」
の Lidl & Schwarz が参加することによって、価格ダ
のドイツ支部は現在、食品関連の調査に力を入れて
ンピング競争がオーガニック分野においても繰り広
いる。ドイツの大きな乳製品メーカーL 社の原料牛
げられることを憂慮している。
乳が、遺伝子組み換えの飼料を食べて育った牛由来
早速活動家は Basic 本社前で反対署名を集めはじめ、
であることを究明、公表し、スーパーの売り場でボ
初日だけで 200 の署名を入手、250 の署名リストを
イコット運動を展開しているという。
Basic 経営陣に手渡した。これにたいし、経営陣は
ちなみにこのグリーンピースのフランス支部が
Attac 側と話し合いを持つことも、マスコミに経営側
2005 年に「Cosmetox Guide」というパンフレット
の態度を表明することもしていない。
をまいた結果、フランスで自然化粧品の需要が 40%
1号店を訪れる客は Attac が店の前で配布するビラ
増加したという。このパンフレットは化粧品のなか
を受け取り、
「オーガニックをとるか Lidl をとるか、
の有害成分となりうる化合物のリストである。
どちらかしかないわね」と感想を述べている。Attac
が店の告知板に張っているスローガンには「世界は
商品ではない」とある。
経営側は「何もまだ決定していない、むしろ反対意
手塚千史
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