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特別企画/年頭所感 新年のご挨拶 大谷 裕 代表取締役社長 皆様、明けましておめでとうございます。昨年 6 月に株式会社東レ経営研究所の社長に就任いた しました大谷裕です。 東レ経営研究所の会員の皆様方、日頃お取引をいただいている皆様方には、私どもの活動に対し てご支援ご指導を賜り、誠にありがとうございます。新春にあたり、昨年、世界各国で国を率いる リーダーが選出されたことに関連して思うところを述べ、ご挨拶とさせていただきます。 わが国では、昨年末に総選挙が行われ、大方の予想をはるかに超えて自民党が圧勝し安倍総裁が 総理大臣に就任しました。福島原発事故を含む東日本大震災からの復旧・復興、日本経済の再生、 財政再建、外交 ・ 安全保障問題など喫緊の課題が山積しており、課題解決のためには政治の安定が 欠かせません。安倍総理には、たとえ不人気であっても長期の視点から国益にかなう政策を速やか に実行するリーダーであってほしいと思います。また、野党やマスコミも、私たちの目からすると さほど重大とは思えないような政府 ・ 与党政治家の不用意な言動をいちいち攻撃や批判の材料にす るのではなく、堂々と政策を戦わせてもらいたいと思います。 ご承知のとおり、昨年は、日本以外でも世界の主要各国、とりわけわが国に大きな影響のある 国々で政治リーダーの選択、選出がありました。記憶にも新しいと思いますが、11 月以降アメリカ 大統領選、中国の共産党大会、韓国の大統領選と立て続けでした。さかのぼれば 1 月に台湾の総統 選、3 月にロシアの大統領選、4 月にフランス大統領選も行われました。アメリカではオバマ大統領 が再選され、中国では新たに習近平氏が総書記に就任、韓国でも朴大統領が選出されました。 昨今のマスコミの興味は、日本や各国リーダーの選出に伴って、わが国の外交、安全保障にとっ てプラスかマイナスか、領土問題に関してはどうか、中国とはどう付き合えばよいのかなどに焦点 が当てられ、また、国のリーダーとはどうあるべきかなどのリーダー論が盛んに語られています。 ここでは、こうした議論から離れて、米国および中国、韓国におけるトップの選び方について整理 してみたいと思います。 オバマ大統領の場合、人権派弁護士として頭角を現し、イリノイ州議会上院議員を経た後、民主 党上院議員として 2004 年の大統領選挙で民主党候補ジョン ・ ケリーの党大会基調演説を行い、その 演説が高い評価を受けたことから自身の大統領候補への道が開けました。アメリカでは、予備選だ けで 1 年以上もの時間とエネルギーをかけて次期大統領候補がふるいにかけられますが、オバマ大 統領の場合も予備選、本選を合わせると約 2 年の間、アメリカ国内だけでなく世界中から注目を集 4 経営センサー 2013.1・2 新年のご挨拶 め、出自に関する容赦のない暴露、ハリケーンへの対応や対立候補との公開討論などを通じてその 政策や人柄が観察、評価されました。国民の側からすると、以降 4 年ないし 8 年の間、国を託す大 統領をじっくりと選択することができます。 中国では、通常 10 年も前から次期総書記候補を選び、国家統治の経験を積ませます。習近平総書 記の場合は清華大学化学工程部卒業後、アモイ副市長、福州市党委書記を経て福建省長、浙江省党 委書記などを歴任した後 2007 年に二階級特進で中央政治局常務委員に昇格しました。権力抗争の末 に選ばれたと言われていますが、最長で 10 年もの間中国を率いるリーダーの人選については、やは り長い時間をかけてトップ集団の人達からチェックされ続け選抜されるのだと思われます。 韓国の大統領も、米国ほど長期ではありませんが、予備候補としての登録から数えると約 8 カ月 かけて次期指導者選びが行われます。韓国では大統領の再任が禁止されているので、新人同士が保 守と革新に分かれて争うという、極めて分かりやすい選挙になります。それだけに対立候補の過去 に関する非難の応酬など泥試合の模様も伝わってきます。 上記の 3 国は、それぞれやり方は異なりますが、4 年から 10 年の間、国を託すリーダーを時間を かけて選抜します。だからと言って選ばれたこれらの政治家が今後存分にリーダーシップを発揮で きるかどうかは不明です。むしろ、さまざまな状況の中で、できないだろう、と言われています。 かつてない国難に直面している日本においては、政治家に強いリーダーシップを発揮してもらわな ければ困ります。 日本の場合は、総理大臣を国民が直接選ぶことはできませんが、民主党の党首選や自民党の総裁 選がその時点の、あるいは将来の総理大臣を選ぶに等しいにもかかわらず、党内で政策を戦わせる 期間が決して十分とは思えないのは私だけでしょうか。また、昨年末の総選挙は、実質的に総理大 臣を選ぶ選挙で、かつ、争点が多岐にわたりましたが期間は約 1 カ月で、各党の公約も決して深掘 りされたとは言えませんでした。国民の側からすると、選挙期間が短いこともあって、十分な政策 論争の結果で判断するよりも、その瞬間の「流れ」や「風」に影響されてしまっても不思議ではあ りません。マスコミが「流れ」や「風」を意図的につくることさえあると思われます。名前が知ら れているというだけで政治家になってしまう、政治家になる覚悟もないまま当選してしまう人が出 てしまうのは、選ばれる側だけの責任ではないように思います。 かつて自民党では、良きにつけ悪しきにつけ派閥が機能し、自派の議員教育の一翼を担っていま した。将来のトップ候補と目される人たちの切磋琢磨、時には反目や離合集散を経て、政治家が鍛 え上げられていったように思います。強い派閥を復活せよとは申しませんが、強い政治リーダーに は出てもらいたい。国民の側もリーダーシップを発揮する政治家をきちんと見抜く目を養う必要が はか あり、選んだあとも継続的なチェックが必要です。 「民意に諮って」とか「国民の声を聞いて」など という責任逃れや実行の先延ばしは聞きたくありません。政治家の強いリーダーシップによって、 政治家自身も、官も財も目の前に立ちはだかる多くの課題に速やかに立ち向かい、練り上げた政策 を実行に移してもらいたい。国民は協力もするし我慢もします。今年はそのような年になってほし いと願ってやみません。 2013.1・2 経営センサー 5