Comments
Description
Transcript
構造化による支援
構造化による支援 ~障害特性に配慮した支援~ 横浜やまびこの里 ポルト能見台 木村重之 この講義の目的 ・自閉症の特性のおさらい ・「なぜ構造化が必要性なのか」を知る ・構造化の種類と目的 ・「誰のための構造化?」の確認 自閉症の障害特性(3つ組み) ① 社会性の発達の障害 ② コミュニケーションの質的障害 ③ こだわりと想像力の障害 (他に感覚異常もある) ・3つ組の障害特性はありながら、 でも自閉症の方は皆同じではない ・だから自閉症の障害特性の理解と、 個別の障害特性の理解が必要 感覚異常 ・音の洪水(すべての音が同じレベルで入ってくる) ・味覚異常(砂を噛むような味?) ・痛みに鈍感(怪我などがわかりにくい) ・触れられるだけでもチクチクする など、人によってさまざまです 子供の泣き声に 食べ物の食感や 臭いに過敏 衣類の肌触りに 当事者からのことば・・・ 「自閉症の人は、時間と空間の中に自分を 自閉症の人は、時間と空間の中に自分を 位置づけることがとても 位置づけることがとても難しい」 ことがとても難しい」 「言葉を映像で理解した。 言葉を映像で理解した。 映像にできない言葉はとても理解しにくい」 絵にかけない言葉は難しい・・・ コップ ・ りんご ・ 机・・ ちゃんとしなさい(?)ちょっと待って(?) 自閉症は「意味理解」の障害 意味理解が苦手だと・・(障害特性の理解) →集団が苦手(その集団共通の意味が分からない) →言葉が苦手(抽象的な概念が苦手) 障害に配慮するのだから →集団の中でも、個別的に意味を伝える →構造化して「意味」を伝える 自閉症の人の立場に立つと ・ ・ ・ ・ ・ 訳のわからない言葉で話しかけられたら 不安を伝え、やりとりする方法が分からなかったら 不快な刺激にいつもさらされたら 突然叱られたり、連れまわされたり、行動を制止されたら 今、何をしていいのか分からなかったら 普段の私たちの生活環境は、自閉症の人にとって 曖昧で、混乱させることがたくさんある・・・ こんなに、ストレスだらけ環境だったら・・・ 問題行動を起こすのもムリはない・・・ 氷山モデルを 思い出して~っ! 構造化による支援 構造化って? カード使ったら、コーゾーカ?? パーテーション立てたら、コーゾーカ?? 何のために?? 自閉症の人以外にも構造化はされている ・視覚障害の方 視覚障害の方 →点字・横断歩道の音(チャイムや音声)など ・車いすの方 →車いす対応のエレベーター、スロープなど 障害のある 障害のある方も環境を整えることで のある方も環境を整えることで 生活がしやすくなる・・ では、自閉症にとっての構造化とは・・・? 自閉症の人が安心して生活するためには? →構造化された環境 構造化のヒント ・得意なとこ ころを生かして環境を整える ・問題行動を抑えるためのもの=構造化 ではない ・自閉症の障害のある人が、安心して生活 できるように周りの環境を整えていくこと ・自閉症の人たちが分かりやすいように翻訳する (意味を伝える) 構造化は支援者のためにあるのではない 「カード提示すれば、動いてくれる」 「他害のある人だからパーテーションの中にいてもらう」 ではない アセスメントが 大切! かかわる人の障害特性を理解する こちらが、本人のことを理解しないで 支援するのはとっても難しい ●得意なところは何? 得意なところは何? (文字がわかる・絵や写真の理解が出来るなど) ●好きな活動は何? 好きな活動は何? (余暇活動では大切なこと。・・簡単そうで実はとても難しい) ●何が苦手? 何が苦手? (障がいからくる苦手なことや困っていること) ●障害を 障害を理解しながらも自閉症という色めがねで見ない 障害を理解しながらも自閉症という色めがねで見ない (自閉症だからといってみんな同じではない) 自閉症の人が得意なこと 1.視覚からの情報の取り込みは強い 2.見通しを持つことで安定(安心)していられる 3.興味がある事や意味のわかることには 集中できる など・・・ その人に合った構造化 (オーダーメイドの構造化) ⇒ 構造化はその人の得意な部分に スポットをあてて行うとよい ⇒ 視覚的に構造化することはとても有効である である (視覚からの情報の取り込みは強い方が多い) ⇒ 構造化を考える前に、個々の特性をよく理解することが大切 (アセスメントの重要性) いつ・どこで・何を・どのように どのくらい・終わったらどうする・・ を、伝える □ □ □ □ □ □ 意味のある世界に 導くために・・・ 活動しやすい環境に変えること 不安の少ない環境に変えること どのように過ごすかを分かりやすく伝えること 活動の手順をわかりやすく伝えること 人に伝える手段があり、関わる機会が提供されること 一人で出来るようになる(自立して行える) 「わかる」 「できる」 ことで安心と自発性が高まり 自立や生活の幅が拡がる 自閉症支援における 代表的な構造化 ① ② ③ ④ ⑤ 物理的構造化 スケジュールの構造化 ワークシステム 視覚化して伝える ルーティーン ① 物理的構造化 ・ ・ここで何をするか解りやすいように 部屋を区切ったり・・・ ・目の前の活動に集中できるように 仕切りをつけたり・・・ ・一つの場所で、一つの活動を行うことで その場所が何をする場所か分かり易くする・・・ ② スケジュールシステム (時間の構造化) 時間の流れや、日課、予定を その人に合わせて伝える(翻訳をする) ・ いつ、どこで、何をするのか、 いつまでするのか、終わったら何があるのか ・ 一日のスケジュールの他にも週間や、 月間などのスケジュールも 必要であれば使うことがある スケジュールの意味が理解できれば スケジュールが使えるようになると、 ・ 日課や活動の見通しが持てるようになります ・ 突然の変更にも混乱しなくても済む人もいます →スケジュールを使って変更を伝えます 但し、スケジュールを本人に提示した後に変更することが 日常的になるとスケジュール自体の信頼度が薄れるので 注意が必要です。 (どうしても必要な時は仕方ないですが) ※日課の変更がある場合は本人に提示する前に スケジュールも変更しておくことが大切です 注意!)人によってスケジュールで示されている日課の流れがいつも同じだと ルーティンになってしまいスケジュールの意味がなくなる事もあります。 (スケジュールを変えようとして拒否があったことはありませんか?) ③ ワーク(アクティビティ)システム (活動の手順を伝える) 活動中の過ごし方を伝える ・ 本人に合ったワーク(アクティビティ)システム =手順、やり方を伝えるための構造化 ・ スケジュールで示された活動の内容・手順を、 本人に合った伝え方で伝える ④ 視覚化して伝える 苦手な言葉で伝えるより 自閉症の人が分かりやすいように翻訳する ルールやマナーも・・・ 三角が声の大きさを示しています 視覚的に伝えることで より着目できる 声が大きくなると×ゾーン に顔写真が入ります ⑤ ルーティーン ・いつもどこでも、同じ手順で行う (例:左から右の順番で作業する) (例:ワークシステムの流れは上から下) ・いつもどこでも、同じ順番で日課が示される (例:スケジュールシステムの流れは上から下) ・活動の終わり方 (例:出された材料が無くなったら作業は終わり) (例:タイマーが鳴ったら作業は終わり) 勘違いの構造化をしないように 何度も言うようですが・・・ 構造化は職員(支援者)のためにあるのではありません 「おかしいな??カードを提示しても作業に行かない・・・ 拒否がある・・・構造化してるのに??」 → 構造化は利用者を動かす道具ではありません 「スケジュールに避難訓練をいれたら、拒否された。 いつもの日課にカードを戻された・・・構造化したのに??」 → 意味のなくなった、手続きだけのスケジュールボード・・・ 構造化のおさらい 視覚障害の方に、盲導犬や点字、 横断歩道の音楽があるように・・・ 下半身麻痺の方に、車椅子やスロープ、 車椅子対応のエレベーターがあるように・・・ 自閉症の方には、何を、どこで、どのくらい、何時まで、 終わったら何があるのか、などが分かることで、 安定して過ごせて生活の幅も広がる。 それを一人一人個別にオーダーメイドで考えていくことは、 支援員として大切な仕事です。 自閉症の方に、構造化をしないのは・・・ 下半身麻痺の方に車椅子なんて必要ない・・・ 視覚障害の方に、盲導犬なんて必要ない・・・ と、言っているようなもの。 自閉症の人の障害を理解しないで こちらの価値観や考え、ことばを押しつけるのは 自閉症の方たちの不安、ストレス、怒りを 「無視」し続けるのと同じ ある高機能自閉症の方の言葉 「僕たちを一番苦しめるのは、無理解からくる熱意です」 自閉症・・ 「障害」と捉えるより、 「私たちと違う文化」と思ってみてください その文化を理解しようと歩み寄ると 必ず彼たちも応えてくれますよ!! ∗ ・