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国際経営における 人材の育成と 備後企業の取り組み

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国際経営における 人材の育成と 備後企業の取り組み
“国際経営における
人材の育成と
備後企業の取り組み”
平成 27 年度大学連携による新たな教育プログラム開発・実施事業報告
講義概要
本講座は、地元企業の協力のもと、備後地域(広島県東部)にある 4 大学が連携し、
グローバル人材育成をねらいとした、大学生および社会人向け実践的講座である。
本講座で修得した国際経営理論や知識と、海外研修との相乗効果によって、真に国際
ビジネスで活躍できる人材を育成し、備後地域に供給することを目的としている。
1. 多国籍企業成立
梅野巨利教授
2. ケーススタディ 1
株式会社広島銀行
3. 中小企業の海外進出
中沢孝夫教授
4. ケーススタディ 2
株式会社シギヤ精機製作所
5. 国際経営組織
梅野巨利教授
6. ケーススタディ 3
早川ゴム株式会社
7. グローバルマーケティング
黄磷教授
8. ケーススタディ 4
株式会社北川鉄工所
9. 海外現地経営
梅野巨利教授
10. ケーススタディ 5
リョービ株式会社
11. 国際経営戦略
新宅純二郎教授
12. ケーススタディ 6
株式会社堀田組
13. 地域企業のグローバル化
中沢孝夫教授
14. ケーススタディ 7
ホーコス株式会社
15. ケーススタディ 8
日東製網株式会社
まとめ
尾田温俊教授
講義時間
講義:
90 分
ケーススタディ:
説明 40 分、
質疑応答 50 分
日
時:2015 年 10 月 3 日~11 月 28 日
会
場:学校法人福山大学 宮地茂記念館(JR 福山駅北口 徒歩 1 分)
毎週土曜日 9 時~12 時
受講対象者:連携大学に在籍する学生と、広島県内に在住または勤務している社会人
国際経営における人材の育成と備後企業の取り組み
01
2015.10.03
9:10~10:10
Lecture.1
多国籍企業の成立
兵庫県立大学大学院経営研究科
う め の
梅野
なおとし
巨利 教授
ゆ ざ き ひでひこ
開講に先立ち、湯崎英彦広島県知事からのビデオメッセージが上映され、代表校・福山
ふ
じ あきお
大学の冨士彰夫副学長よりご挨拶を頂いた。
梅野教授からは、国際経営とはなにかを学術的にとらえるための基礎知識・概念を中心
にご説明いただいた。まず、国際経営活動の形態について説明された後、多国籍企業を「本
社と海外現地法人からなる、国際経営を行っている企業グループ」と定義し、具体例を挙
げながら多国籍企業の全体像について解説された。次に、多国籍企業の経営戦略を、グロ
ーバリゼーション(統合)とローカリゼーション(現地化)という二つの指標の合成とし
てとらえ、それぞれのバランスをとる重要性を指摘された。
続いて、多国籍企業を理解する概念として、(1)本国と進出先国の地理的・政治的・経済
的・文化的な距離を持つ外国人が国境を越えることの不利益・負担、(2)さまざまなリスク
をとり、新機軸を打ち出す企業家精神、(3)企業がもつ固有の組織能力や、模倣困難性、希
少性など企業間競争における優位性の源泉に対する視点、という三つが挙げられた。
せっちゅう
最後に、多国籍企業が存在する理由として「 折 衷 パラダイム(O・L・I アプローチ)」、
すなわち競合企業に勝る資本や技術、ブランドなどを持っているという所有優位
(Ownership)、
進出先国における低賃金、優遇税制などを活かすという立地優位(Location)、
自社所有により組織内コントロールを有利にできるという内部化優位(Internalization)の
3 つが揃って多国籍企業が成立している、という理論を紹介された。
02
国際経営における人材の育成と備後企業の取り組み
2015.10.03
10:10~10:50
Casestudy.1
アジアマーケットの現状と今後
株式会社広島銀行
こうじり
河尻
た か し
隆志 国際営業部担当課長
河尻隆志国際営業部担当課長より、「アジアマーケットの現状と今後」というテーマで、
ASEAN 地域を中心とした日系企業進出事情についての講義が行われた。
まず、広島県内企業のアジアへの進出状況を説明された。従来は安価な労働力活用と消
費マーケットの開拓のため中国へ進出していたが、現在は中国リスクの顕在化からタイを
中心とした ASEAN 新興国へ進出していると述べられた。海外進出の目的は、生産コスト
削減、取引先からの要請、消費マーケット開拓、生産拠点分散化である。世界の人口推移
では日本の人口減少と対照的に、インドネシア、フィリピン、ベトナムが増加傾向にあり、
しかも ASEAN 諸国では中間所得層が増加しているため、マーケットとして有望視されて
いる。それを裏付けるものが所得増加と自動車販売の正の相関であり、これが中国、タイ、
インドネシアで観察されている。さらに、製造業のみならず、日系小売業、外食産業、理
美容企業、教育関連企業の進出が増加しており、セブンイレブンを筆頭にコンビニ業界も
進出し、日本と変わらない品揃えのため、日系企業の駐在員が暮らしやすい環境となって
いる。
続いて、都市の写真を見ながら、陸の ASEAN として、ミャンマーの魅力は人々が正直な
点にあり、カメラをタクシーで忘れたときに届けてもらったという体験を話された。また
ヤンゴンにはマツダ車が多く走っているそうである。
最後に、タイの日本人学校に集合した生徒、父兄総勢 9,000 人というスケールの運動会
の写真について説明された。ちなみにこの日は「○○○○からお父さんが消える日」であ
る。○○○○とは「ゴルフ場」のことを指す。タイでこれだけの人数の日本人が暮らして
いるというのが驚きである。
国際経営における人材の育成と備後企業の取り組み
03
2015.10.10
9:00~10:30
Lecture.2
中小企業の海外進出
なかざわ
福山大学経済学部税務会計学科 中沢
た か お
孝夫 教授
中小企業のグローバル化はいつ頃からどのように進んできたかに関して、1990 年代の前
半までは北米と ASEAN への進出が見られ、2000 年代からは中国へ進出した。近年のチ
ャイナ・プラス・ワン(CHINA+1)という表現は正確でなく、正しくはアセアン・プラス・
ワン(ASEAN+1)としての中国であると説明された。
日本には 370 万社があり、その内 2.2 万社が海外展開しているが、その内の半分が中小
企業である。産業別では製造業が 1.2 万社である。海外展開の要因として、第一にビジネ
スチャンスを求める企業に必要であること、第二に取引先や仲間企業の誘いがあること、
第三にコストダウンや労働力の調達を求めていること、第四に 2・3 代目が全く新しいこ
とを始める第二創業の意思を実現させるためである。特に第三のコストダウンに関しては、
日本との賃金格差が縮小の一途を辿り、生産の機動性に関するリードタイムは日本国内が
圧倒的に優れていること、さらに生産性格差に数倍の格差があることを勘案すれば、全て
の産業で海外展開する必然性は低下しているという説明があった。
海外での収益を回収する方法としては次の 4 つがある。第一に株式の配当、第二に技術
供与に対するロイヤルティー暖簾代、第三に日本の本社から海外子会社への材料費への上
乗せ、第四に材料費への上乗せである。第四に含まれる駐在員費用は、マンションやレン
タカー、運転手の雇用で月 80~100 万円かかるが、この費用をカバーしているという。
社会人となる学生に対して、自分が何に向いているかということや、企業研究としてホ
ームページを見ても余り役に立たない、学生に必要なことは、知らないことを知るという
学習能力であり、これは字や言葉を知るという基礎学力が必要である。さらに理解して説
明するという意味でのコミュニケーションが出来ることである。仕事上での困難はチャン
スであり、逃げないことが肝心であること、人事に左遷なしで何事にもくじけない意志が
必要であると述べられた。
04
国際経営における人材の育成と備後企業の取り組み
2015.10.10
10:40~12:10
Casestudy.2
グローバル化の実状について
株式会社シギヤ精機製作所
こばやし
小林
ひろし
浩 営業統括本部次長
同社の海外展開の歴史は、1990 年にアメリカに駐在員事務所設立、2010 年にはタイ、
上海、韓国に現地法人事務所を開設しており、同社の海外展開にとって重要な年である。
ドイツ、台湾、オーストラリアの三ヶ所の総代理店と、四ヶ所の駐在員事務所が同社のグ
ローバルネットワークである。
リーマンショックの影響により、2009 年には海外と国内での販売比率の推移が逆転し、
海外展開の必要性が高まった。海外での営業・情報収集・修理等の必要性が増大したため、
その都度日本から対応していては時間・費用のロスが大きくなったこと、また営業・アフ
ターサービスにおいて、その国の文化に適応した対応が求められ、製造工場の近い所にメ
ーカーの拠点があることをメーカー選定の条件とする日系ユーザーが増えたことも要因で
あるという説明があった。
講師によると、海外展開のメリットとしては、市場の拡大、企業の認知度・イメージ向
上、顧客サポートの質向上でリピートオーダーが期待できることである。逆にデメリット
としては、文化習慣・法制度の違いによる社員の心理・身体的負担増加、タイにみられる
ような政治的動向変化による企業活動の制限があること、さらに為替レート変動により、
賃金や通信費のコスト増大があることである。
日本と海外のビジネス慣行の違いとして、担当者が休暇中であると他に分かる人間がい
ないこと、何事も文書で取り交わして残す必要があること、注文書を発行して注文しても
高いと言って支払わないことがあること、割とドタキャンがあること、契約通りに支払わ
ないで遅らせたりすることが優秀な社員という評価であるのが海外であるということ、価
格交渉は持久戦になり、根負けしたほうが負けになることなどが説明された。
国際経営における人材の育成と備後企業の取り組み
05
2015.10.17
9:00~10:10
Lecture.3
国際経営組織
兵庫県立大学大学院経営研究科
う め の
梅野
なおとし
巨利 教授
梅野教授より「国際経営組織」というテーマの講義が行われた。本日行われるスモール・
グループ・ディスカッションのテーマとして挙げられている、(1)有能人材を引き留めるた
めに何をすべきか、(2)多様な価値観や考えを持った社員を1つの組織にまとめるために何
をすべきか、について考えるうえで必要な準備として、経営組織論の基礎を国際経営の文
脈で説明された。
最初に「組織」の定義を「二人以上の意識的に調整された協働体系、諸力、諸活動の体
系」とし、組織を構成する 3 つの要素として、バーナードの「共通目的」
「協働意欲」
「コ
ミュニケーション」を説明された。また、組織の生存・存続条件は組織からの誘因が構成
員の貢献を上回っていることであり、組織は、顧客、投資家、社員、関係会社に対して誘
因を与え続けなくてはならないとする組織均衡論について解説された。
次に、国際化による組織構造の変化について解説された。企業組織の国際化プロセスは
企業活動の通常の流れと反対で、海外販売、現地生産、現地での研究開発と進む。海外事
業の深化とともに、海外事業部制からグローバル製品事業部やグローバル地域別事業部へ
と進展するモデルの紹介があり、それぞれの問題点を克服するためのマトリックス構造の
組織モデルが示された。
最後に、組織の心理学として組織文化について説明された。組織文化とは、組織メンバ
ーが共有する規範的な価値判断の基準であり、組織 DNA の文化として、儀式、セレモニ
ー、シンボル等に現れる。組織文化の機能としては、同一の行動、基準で働くことを要求
する凝集性への圧力が作用することである。グローバル企業においては、組織文化が各国
の分散経営を取りまとめる精神的支柱となり、世界的企業はみな強い組織文化、企業理念
を持ちその浸透を図っている。例として Johnson&Johnson の“Our Credo/我が信条”な
どが紹介された。
06
国際経営における人材の育成と備後企業の取り組み
2015.10.17
10:10~10:50
Casestudy.3
更なるグローバル化
い が き
早川ゴム株式会社 伊垣
変化する ASEAN 市場への対応
まさのり
正則 海外戦略室担当部長
Hayakawa Eastern Rubber(HER)は 1996 年にタイに設立された早川ゴム子会社である。
アジア通貨危機の発生する前年に設立されている。その後、タイ経済はタクシン政権下で
クーデターが起きる 2006 年までは順調に発展していた。タイにおける生産はゴムマット、
エアコン室外機の防音材料などである。タイの労働総人口の一割である 600 万人が天然ゴ
ム生産に従事しており、世界全体のゴム生産量年 1,000 万トンのうち、タイは約 1/3 に当
たる 300 万トンを生産し世界一の生産量を誇っている。タイの課題として、政局が不安定
であり、汚職があり、物流インフラ整備が進んでいないこと、労働集約的生産はカンボジ
アやラオスの周辺国に持っていくために、国境周辺の工業団地の開発が行なわれているそ
うである。
続いて、実際のゴム生産工程について写真を用いて説明された。天然ゴムの木の圧倒的
部分はタイ南部で植え付けられている。天然ゴムは、木に傷を付けてゴム樹液をカップで
受けて採取している。それにギ酸を加えて固め、乾燥性を高めるためにゴム表面に凸凹を
付け、常温で 10 日間乾燥させる。これを水洗した後、乾燥性を高め、物性を向上させる
くんじょう
ための 薫 蒸 過程があり、圧縮後、110kg の塊として倉庫に保存するそうである。
最後に、HER の課題と対応として、リスクマップの説明が行われた。横軸に発生頻度、
縦軸に経営への影響度を測っているグラフである。高頻度かつ経営影響が大きい要因には
市場価格変動、為替レート変動があり、リスクが最も高い。不正などの汚職の頻度は普通
だが経営への影響は大きい。クレームなどは頻度が高いが、経営への影響はそれほど大き
くない。政変が多いタイのカントリーリスクは経営への影響が大きいと認識されている。
その他に、退職者の状況、異文化のタイ人の組織など興味深い話題が提供された。
国際経営における人材の育成と備後企業の取り組み
07
2015.10.24
9:00~10:30
Lecture.4
グローバルマーケティング
神戸大学大学院経営学研究科
こう
りん
黄 磷 教授
企業が複数国に分散した経営活動をネットワークに統一し、効率性の達成、市場環境へ
の柔軟な適応、変化への俊敏な反応、イノベーションの促進の 4 つを同時に追求する市場
行動を「グローバル・マーケティング」と呼ぶそうである。
まず、2000 年以降日本企業のグローバル競争力が低下していることを国際収支統計か
ら示された。日本の対地域別の貿易収支と金融収支統計から、日本がどの地域で相対的に
稼いでいるのかを説明され、2013 年には日本が対中貿易赤字になったこと、日本の輸出
先のトップ 5 と輸入先のトップ 5 でみると、いずれにおいても近年中国が大きくシェア
を伸ばしていることが示された。財を資本財、消費財、中間財に三分割したときに、日本
から中国への輸出は中間財が 7 割に近く、中国から日本への輸入は大半が消費財であると
述べられた。製造業の生産性と雇用について、日本全体では一人当たり出荷額や付加価値
額がやや増加傾向にあり、また 10 年間で 100 万人の従業者数が減少しているが、広島県
の輸送用機器と器具製造業においては従業者数が減少していないという指摘がされた。
続いて、日本企業のグローバル化について、海外生産比率と海外売上高比率を示し、自
動車が大きく国際化していること、精密機械をはじめ、いずれの産業においても国際化が
進展していることが説明された。日本企業の海外進出の動機やグローバル競争力について
解説され、信頼関係の重視など日本的経営の強みが示された一方、製品のモジュール化や
オープン化が進むなかで、スマイル曲線を念頭においた水平分業型ビジネスモデルへの転
換が求められていることが説明された。
最後に、日中韓のビジネスモデルを比較して、日本企業のグローバル競争力を再生する
ためには、スピードと柔軟性、明確な戦略目的などが必要であることが述べられた。新興
国市場で戦える日本のグローバル人材育成の必要性とその難しさなども語られた。
08
国際経営における人材の育成と備後企業の取り組み
2015.10.24
10:30~12:10
Casestudy.4
北川鉄工所の海外展開について
株式会社北川鉄工所
おおむら
て つ や
大村 哲也 総務部総務課係長
同社は、2018 年で創業 100 周年となるそうである。会社概要について、最近制作され
たという DVD を上映された。講師は、タイに 6 年間赴任されていたということで、タイ
の国情についての概略説明の後、経営上の問題について説明された。
タイと日本の文化の違いは様々な面に及ぶ。第一にタイでの採用は中途採用が中心であ
り、採用決定時に所属を決めるとその後の人事異動はないということである。異動される
と、本人が自分は役に立っていないために異動されたのだと思い失望するそうである。第
二に転職であるが、タイでは今までのスキルを活かしての転職が多く、少しでも給料が高
いところへとジョブホッピングすることが当然となっているということである。第三に海
外では個人主義で我先に行動することが常識であり、日本のように譲り合うことはない。
余計な仕事を依頼するとその見返りを要求される。自分が改善するという意識はなく、仕
事上での先のことを考えないそうである。
グローバル人材に関してのコメントは、その仕事に精通している人、そうでないと少人
数なので迷惑となる。次に赴任国の文化、環境に馴染む適応力があることである。さらに、
日常的に不規則な出来事があるので、臨機応変に対応できる経験知を持っていること、く
よくよしない楽天的な人であること、カタコトでもよいので現地語を使うと喜ばれるので
それを心がけるようなバイタリティのある人と述べられた。
O
K
Y
同社の昨年度講師の桑田氏には、
「お前がここに来てやってみい」という「OKY」を指摘
O
K
O
されていたが、大村氏からは新たに、日本に帰国した人に対して、
「お前もここにおったろ
W
B
S
う」という「OKO」、
「分かるまでボスを説得しろ」という「WBS」という隠語が現地の日
本人の間で使われているとユーモラスに述べられていた。現場の監督と本社からの要求の
板挟みで、悪戦苦闘している日本人駐在員の本音から出てきた言葉なのだと感じた。
国際経営における人材の育成と備後企業の取り組み
09
2015.10.31
9:00~10:10
Lecture.5
海外現地経営
兵庫県立大学大学院経営研究科
う め の
梅野
なおとし
巨利 教授
多国籍企業の本社・子会社関係の概念整理として、多国籍企業にはグループの求心力を
高め共通化・統合化を追求する圧力と、現地の実情に合わせてそれぞれの拠点で独立した
経営を追求する圧力とがあり、それらのバランスによって(1)本社主導・子会社従属型、(2)
子会社主導・本社追認型、(3)本社・子会社相互連携型の 3 つのモデルがあることが説明
embeddedness
された。(2)の子会社主導の場合、現地環境への「埋め込み」、すなわち現地の研究機関と
の共同研究や地元企業との取引関係の深化、現地市民との協調など現地環境とのネットワ
ーク形成ができる点を解説された。また本社・子会社相互連携について、現地国のニーズ
に合わせて開発された製品などが本国でも活用される「リバース・イノベーション」が紹
介され、例として GE(General Electric)の携帯型心電図計測装置などを挙げられた。
続いて、海外子会社自立化の概念として、本社からの役割付与、子会社の選択、および
現地の環境、という三要因が子会社の役割を決定するというモデルの紹介が行われた。こ
のモデルを補足するものとして、子会社が進化するためには能力および子会社の機能・責
任範囲が拡大する必要があるという説明が行われた。
海外子会社発展の成功事例として、マンダム・インドネシアと新田ゼラチンインディア
が紹介された。日本では男性向け製品のイメージが強いマンダムであるが、その経営理念
は現地のニーズに徹底的に合わせる「生活者へのお役立ち」であり、マンダム・インドネ
シアは女性をターゲットにした化粧品、小袋容器などの点で成功を収めているそうだ。続
いて新田ゼラチンインディアは、インドにおいて牛からゼラチンを加工する企業であるが、
社長をはじめほとんど現地人で運営される。日本の本社より「生産量の半分の販売」とい
う役割を付与され、中近東のハラルゼラチンと医薬用カプセルゼラチンの市場開拓を自ら
行った結果大きな成果を残しているということである。いずれの場合も本社との統合度は
低く、徹底的に現地化を進めて成功した事例である。
10
国際経営における人材の育成と備後企業の取り組み
2015.10.31
10:20~11:00
Casestudy.5
リョービの海外展開について
か ね こ
け い た
リョービ株式会社 金子 慶太 人事・総務部人事課長
同社は 1943 年に設立されており、ダイカスト、印刷機器、パワーツール、建築用品の
製造が事業分野である。生産拠点は国内外にそれぞれ 5 ヶ所ずつ展開している。
売上高では従来日本が海外を上回っていたが、2016 年は同水準となり、それ以降は海外
が上回ることになるそうである。社員数はすでに海外が多くなっており、日本人駐在員が
100 名赴任されている。
同社によるグローバル化対応の第一は、日本の本社にどの事業を残すかという問題であ
るが、それは金型に決定されたそうである。現在の生産数は年間に 200 型であるが、将来
的には倍増させる予定ということである。第二に、海外拠点別の組織の現地化状況である
が、欧米はトップが現地人で、米国ではナンバー2 が日本人である。欧米人がトップの場
合には日本人の意向が通りにくいこともあるそうである。また、アジア地域では日本人が
トップであるが、現地人を早く育成し成長して欲しいそうである。第三に、グローバルリ
きっきん
ーダーの育成が喫緊の問題となっており、その中心として海外赴任前教育プログラムを実
施されている。以前は、教育プログラムを実施しようとしても準備と育成が間に合わない
ということがあり、可能性のある人材を対象として、教育プログラムを先に実施し、海外
出向が決定後に赴任前の実務的手続きを実施するというように改善されているそうだ。
最後に、海外赴任プログラムの一例を示された。英語をスピードラーニングで半年間実
施し、新入社員には TOEIC に取り組んでもらうそうである。また、マネジメント力、異
文化理解、ロジカルシンキングを e-learning されているそうである。この受講期間は 2
ヶ月である。まとまった時間がとれないため隙間時間を利用して取り組んでもらっている
そうである。受講している学生には海外に行くつもりで英語に今のうちに取り組んでおく
ことを勧められていた。
国際経営における人材の育成と備後企業の取り組み
11
2015.11.14
9:00~10:30
Lecture.6
国際経営戦略
東京大学大学院経済学研究科
しんたく
新宅
じゅんじろう
純二郎 教授
まず、自動車産業を例に、縮小する国内市場に対して、海外、特に新興国市場の重要性
を解説された。新興国市場向け製品の開発で重要なことは何かについて、価格と品質・機
能を表すグラフ上で、日系企業の製品は過剰品質になっている可能性を解説され、シェア
拡大のために、品質基準を見直して低価格市場へ適合させること、品質や機能格差を可視
化すること、重視する機能を絞って品質のローカル対応をすることなどの製品戦略の必要
性を説明された。
2000 年代には日本企業の海外現地生産が増えたが、同時に輸出も伸びるというトレンド
があり、その理由として、輸出先が欧米からアジアにシフトしたこと、現地では生産・調
達が難しい産業財を輸出していることなどを挙げられた。海外生産においては、現地調達
率上昇がコスト削減の対策となっているが、見かけの現地調達率に日本への経費、労務費、
償却費、直材費を加えると日本由来のコスト比率が高いため、日本の付加価値を減らす
しんそう
げんち か
「深層の現地化」が進められている。深層の現地化が進んだ場合、国内生産は減るのかと
いう疑問に対しては、必ずしもそうならず一定割合で残るとし、また以下の二極分化が発
生するとの見解が示された。すなわち、高度な製品であり海外企業からも引き合いがある
日本に残って成長する少数の企業と、深層の現地化にけん引され新たな海外進出が必須の
大多数の企業である。
最後に、本当に強いのは日本工場と海外工場のどちらかという疑問について、この 30 年
間におきた、為替や金融危機に由来する逆境を経験した国内の現場は高い能力を構築して
おり、コスト以外の現場力(技術開発、納期、不良率等)は国内工場のほうが高いことが
示された。中国の賃金は着実に上昇しており、日本との格差はかつての 20 倍から最近で
は 5~7 倍になっている。このことから、コスト面を含めても海外拠点を増やし日本工場
を閉鎖・縮小することのメリットが薄れてきていると言えるそうである。
12
国際経営における人材の育成と備後企業の取り組み
2015.11.14
10:40~12:10
Casestudy.6
中小企業の海外進出への取り組み状況
株式会社堀田組
かわもと
河本
か ず し
一志 代表取締役社長
河本社長による会社概要説明に続き、対中投資の経緯について、90 年代から土地開発の
か ほ く しょう
かいなんとう
ため、河北 省 をメインに進出を検討していたが、海南島及び河北省で会社を設立し、工業
団地整備事業を実施したという説明がされた。また 1993 年から高齢者福祉事業分野へ進
出し、中国でも高齢化が急速に進行する中で、高齢者に適合した住宅など、高齢化対策ノ
い く た まこと
ウハウが必要となり始めていると述べられた。続いて、(株)誠和の生田 誠 取締役福祉部長
から同社の事業内容として、介護付き有料老人ホーム、デイサービス、畳敷きのお風呂、
県立広島大学との連携、中国の複数の大学間との交流などについて説明された。次に、(株)
ふじしま な お き
堀田組の藤島直樹常務取締役から JICA 事業への取り組みについて、日本の行政機関およ
び大学の支援を得て、日本の介護技術、ノウハウを提供することで、高付加価値のサービ
スを提供することが説明された。活用を検討した制度は 2 つで、社員の中国での介護職員
指導を行うための能力開発、中国介護事情の情報収集等を目的とした「青年海外協力隊」
への参加と「草の根技術協力事業」である。しかし、JICA との契約書を締結していたが、
尖閣問題の深刻化から政府の対中姿勢硬化に伴い凍結されたということである。続いて、
りゅう とうきょう
日本企業に就職し母国で活躍する中国人というテーマで、(株)誠和の 劉 冬 強 中国事業部
課長から、日本での経験と双方からみた国についての説明が行われた。すなわち日本と中
国は政治的に対立していても、お互いに必要性を認めざるを得ない関係であることである。
最後に河本社長から、グローバル人材に関する説明が行われた。まず、海外進出に求め
られる人材の四現主義として、現地の現場で現況を見て現人と会いこれらから情報を収
集・分析し本社へ自信を持てる報告書を挙げることができる必要があることである。次に、
国際人とは、迎合でなく差異を差異として認識し、受け入れる包容力を持てる人、相手が
自分のことを理解してもらう忍耐力と説得力を身につけることと定義されていた。
国際経営における人材の育成と備後企業の取り組み
13
2015.11.21
9:00~10:30
Lecture.7
地域企業のグローバル化
なかざわ
福山大学経済学部税務会計学科 中沢
た か お
孝夫 教授
日本の製造業はずっと以前からグローバル化がはじまっており、産業財を中心に海外の
製品から学び、技術的によりよいものを作って輸出するといったことを繰り返してきた。
備後地域の繊維産業はその典型であり、貿易摩擦などを背景に規模が縮小したが、現在で
も残る中小アパレル企業の中には、独自の技術力をもとに海外マーケットを開拓する企業
もあるそうである。地域性の強い中小企業はグローバル化の必要性があまりなかったが、
経済成長率の低下による国内市場の縮小化により海外に目を向けるようになった。
アパレル産業の他、半導体、家電製品、自動車などの産業を例に、オイルショックや急
激な円高など様々な要因によって製造拠点の海外現地化が進んだことを説明された。特に
中国や ASEAN では、現地の賃金が国内の 20 分の 1 と低かったことが魅力となり国内企
業の進出が進んだが、現地賃金の上昇に歯止めが利かず人件費の差が徐々に縮まるにつれ、
生産性向上による費用吸収が難しくなってきており、
「リードタイム」がもともと短い国内
での製造がかえって有利になってきたこともあって、今では中国・アセアンへの新規投資
を控え国内に投資する傾向が強まっているそうである。
日本の製造企業が海外で競争力を発揮するには、国内拠点がプロセス・イノベーション
を継続して行なえる「マザー工場」であり続けなければいけない。商品企画からメンテナ
ンスまで、ものづくりの流れ全体を押さえて利益をあげていくことも重要である。そのう
えで、備後地方のバイタリティはグローバル化に対応できると述べられ、特に中堅企業の
強みについて説明された。製造業の GDP シェアは低下しているが、雇用規模は現在も大
きく産業としての重要性は変わらない。また今後は、製造業のサービス化、すなわち製造
業の製品提供に付随して発生するサービスの海外展開などが増えてくるのではとの見通し
を述べられた。地元ではリョービ(株)が印刷機械を生産していることから、派生するデザ
イン産業の海外展開の可能性についても言及された。
14
国際経営における人材の育成と備後企業の取り組み
2015.11.21
10:30~12:10
Casestudy.7
ホーコスの海外展開について
か ら き
ホーコス株式会社 唐木
と し お
俊夫 専務取締役
1940 年に前身の報國造機として設立され、その後戦争を挟み、1945 年には報國農機(株)
として縄なえ機を生産していたが、ビニールロープの登場により生産を停止せざるを得な
くなったそうである。
「脅威は同業者からではなく全く違う業界からやって来る」と言われ
ていたのが印象的である。その後、事業の 3 本柱として、多軸ボール盤、集塵装置、油水
分離浄化槽のグリーストラップに特化していったが、多軸ボール盤はマシニングセンタの
工作機械の生産へと移行した。多軸ボール盤のメーカーでは「マシニングへ移行した企業
だけが生き残った」そうである。関連産業へのシフトが如何に重要かという教訓である。
1990 年には、現在のホーコス(株)へと名称変更が行われた。
海外展開に関しては、タイ、アメリカ、韓国に工場を設立している。タイは日本の自動
車メーカーが多数進出しており、いすゞ自動車(株)から常駐によるメンテナンスを求めら
れ、それに応える必要があったそうである。また、2011 年のタイ大洪水の際に、難を逃
れた同社は水に浸かった取引先の機械を修理することができたという。主な取引先は日本
および海外の自動車メーカー等であり、それを可能としているのは同社の画期的な加工技
術である。
海外に行く重要性については、海外に行かないと事業の全体が見えないと言われていた。
海外では困ることが多く、また何もかもしなくてはならないが、それが人間を一回りも二
回りも大きくしてくれるということである。同社でも海外要員の人選には困るが、前向き
で明るい性格であること、スキルがしっかりしていること、タイで何を食べても大丈夫な
人が適任者である。核となる人材に対しては日本での研修を通じて、必要な能力を高めて
いるそうである。
国際経営における人材の育成と備後企業の取り組み
15
2015.11.28
9:00~10:00
Casestudy.8
日東製網の海外展開について
ふ じ い
日東製網株式会社 藤井
としふみ
敏文 経営企画室室長
同社の最大の特徴は無結節網のメーカーであるが、世界的には有結節網が一般的である
という。無結節網であることは強度が高まるなどの様々な利点があり、宇宙のデブリ除去
のために宇宙航空研究開発機構(JAXA)にも協力している。
2012 年には、タイのサムットプラカーンに工場を設立した。タイに進出した理由につい
て、各大陸に 1 工場を設置するという戦略、アジア地区の無結節網需要の確保という目的
から、東南アジア数か国を対象に調査を進めた結果、労働力水準がまずまずであること、
日系の大手合成繊維メーカーから原料が安定的に供給されること、タイは東南アジアで最
大規模の漁網生産国であり、漁網の輸出基地の役割を担えること、親日国であり、日本人
駐在員が暮らしやすいことなどが進出決定要因であったという。
経営環境については、職業別平均給与は工場長クラスで 18 万バーツであり、日本円で約
50 万円という。最低賃金は 1 万バーツとなり約 3 万円弱ということである。タイでは失
業率が 1%以下で深刻な労働力不足が言われているが、同社工場は工業団地ではなく住宅
地に位置しており、現在のところは労働力確保に困ることはないということである。しか
し、新交通システム BTS が開通を控えており、地域の住民がバンコク中心部へ流れるので
はないかという恐れもあるそうだ。
最近の取り組みとしては、チリ、タイ等を含む全拠点がテレビ会議を実施することによ
り情報を共有し経営効率化を目指している。ただしタイとチリでは時差が 18 時間あり、
会議に参加することが大変であるという。また稼働情報収集システムにより稼働率、故障、
トラブルの実態把握、工場間競争意識を高めることに努めているという説明があった。
16
国際経営における人材の育成と備後企業の取り組み
2015.11.28
10:00~10:30
Lecture.EX
まとめ
お
だ
福山大学経済学部国際経済学科 尾田
はるとし
温俊 教授
全 15 回の講義うち、3 分の 2(10 回)以上出席した社会人に対して修了証書の授与を
行った。今年度は、9 名の受講者のうち 6 名が対象であり、また、すべての講義に出席し
た社会人が 2 名いた。
その後、代表校・福山大学の尾田温俊教授から、受講生のアンケートの感想を紹介しな
がら講義全体の振り返りが行われた。本講義が受講生にとってグローバル人材について考
えるよい機会となることを祈念するという言葉をもって、今年度のすべての講義が終了し
た。
国際経営における人材の育成と備後企業の取り組み
17
2015.10.03, 17, 31
Small Group Discussion
スモール・グループ・ディスカッション
兵庫県立大学大学院経営研究科
う め の
梅野
なおとし
巨利 教授
本講座の特徴の 1 つとして、
「スモール・グループ・ディスカッション(SGD)」が挙げら
れる。参加者の積極的な参加を引き出すため、昨年度、兵庫県立大学の梅野教授の講義で
導入したが、アンケート結果が好評であったため、本年度も同じく梅野教授の講義で全 3
回実施した。
進行は、梅野教授の講義冒頭にて SGD のテーマを与え、企業講師によるケーススタディ
終了後、質疑応答の時間を SGD に割り当てた。その中で、グループ討論を 30 分、発表・
全体討論を 30 分、最後に梅野教授による総括・まとめを 10 分とした。昨年度の改善希望
点を踏まえ、5 名程度の小グループとし、予め座席指定をし、司会・書記の役割を割り当
てた。以下に、10 月 17 日の SGD の内容を紹介する。(P.6 参照)
与えられたテーマは、(1)有能人材を引き留めるために何をすべきか、(2)多様な価値観
や考えを持った社員を1つの組織にまとめるために何をすべきかの 2 点である。
(1)に関しては、日本人と現地人スタッフの間の信頼関係を構築できるような雰囲気を作
ることや、人事評価を日本と現地で統一化・明示化し、現地人スタッフを教育することな
どが回答として挙げられた。(2)に関しては、コミュニケーションをしっかりとることで相
互理解を図ることが先決であるとの回答が多く、個人の価値観の差異は受け入れるべきと
の意見もあり、企業理念を浸透させることの困難さを感じているようであった。
講義後に実施したアンケートでは、7 割近くから「とても満足できた」と回答があった。
学生からは、他大学の学生や、経験豊富な社会人の話が聞けることで得るものが多かった
ようだ。社会人からも、学生の話を聞く機会がないため、今のものの考え方を知ることが
でき貴重であったと回答があった。
改善希望点としては、時間が足りないことや、もっとスムーズに進行できるよう、細か
な準備をして欲しいとの意見があった。
18
国際経営における人材の育成と備後企業の取り組み
Remote Lecture
遠隔配信
SGD と合わせて、本講義の特徴の一つに「遠隔配信」があげられる。福山駅前の宮地茂
記念館で実施する講義内容を、テレビ会議システムを利用して、尾道市立大学キャンパス
へリアルタイム配信を行っている。
言うまでもなく、遠隔配信のメリットとしては、受講生の通学時間の短縮や、交通費負
担の軽減であり、普段通い慣れたキャンパスで受講できるという点である。講師が画面を
通して質問したり、あるいは学生が意見を述べたりする場面が最も大学連携というイメー
ジを高めるものであった。現在は尾道市立大学のみの配信であるが、インターネット環境
さえあれば、基本的にどこでも受講可能である。
デメリットとしては、尾道市立大学の受講生は、SGD におけるメンバーが限られ、いつ
も同じメンバーと議論せざるを得ないことがある。また、社会人の参加がないために、議
論を通して社会人が持つ企業経験、海外での経験等を学ぶ機会がない点があげられる。他
にも、クリアな映像と音声を送るのが難しく、講義が行われる現場にいるという臨場感が
ないことで緊張感が低下する点もあげられる。昨年度に発生した、システム障害による配
信中断は無かったものの、1 拠点の同時接続人数が多いため、低画質モードで受講しなけ
ればならなかったり、会社案内動画を上映すると、音声が遠隔地に届かないというトラブ
ルがあった。これは次回からの実施における課題である。
国際経営における人材の育成と備後企業の取り組み
19
受講生の声
社会人の方とのディスカッション、企業の方のお話など、大学内
の講義だけでは経験できないようなことが経験でき良かった。ま
た、海外での仕事に興味があったので、実際の現地の様子、人々
との関わりを知ることができ良い機会になった。海外展開は製造
業だけでなく、銀行などのサービス業も展開していることが分か
り、視野の広がりも感じた。製造業は就職活動の視野内には入れ
てなかったが、各企業の方の話を聞く中で、オンリーワン・ナン
バーワンの技術の存在が分かり、そのような技術で勝負している
製造業も面白いなと興味を持ったため、企業研究にもなり、自分
のためにもなったのではないかと感じる。
初めは、海外展開の勉強をしたいというより
は、グループディスカッションがしたくて参
加した。しかし、海外展開の話を聞いてみる
と、文化の違いや現地の情報収集など大切な
ことを知ることができた。もちろんグループ
ディスカッションは楽しく、社会人の方や留
学生、他大学の学生と交流出来て大変貴重な
経験になった。
大学生
20
国際経営における人材の育成と備後企業の取り組み
様 々な先生や企業側の声を聞け
て非常に良かった。多様な意見に
接することができるという点が一
番の長所だと思う。
留学生
グ ローバル人材になるために重要なことについ
て、語学力やコミュニケーションスキルよりも、
何を伝えたいか、その核となるものを持っていな
ければならないというお話について、自身の過去
の経験からもそのように感じた。海外展開する上
では、物だけでなく、人と人との付き合いが大事
であると感じた。
社会人
1
日のスケジュールが 2 部構成で、飽
きず聞くことができた。先生の話と企業
の話がつながってくることが多く、理解
し易かった。海外勤務など、現地の実情
を聞く機会が少ないので、良い情報を得
られた。海外関係の仕事を行う上で、対
応など、役立つ話が多かった。
国際経営における人材の育成と備後企業の取り組み
21
2015.12.12-17
ベトナム・ホーチミン 6 日間
Overseastudy
海外現地研修
ムトー精工株式会社 ムトー・ベトナム
参加者数は、学生 15 名(尾道市立大学 6 名、福山市立大学 6 名、福山平成大学 3 名)
、
社会人 2 名、引率教員 2 名の総勢 19 名である。今年度は学生の希望者が定員に満たなか
ったため、社会人も参加している。昨年度と同様に、12 月に 5 泊 6 日の旅程で実施した。
12/12(土) 早朝からチャーターしたバスに乗り合わせ、広島空港へ向かった。到着後
ロビーで結団式を行い、台北桃園空港を経由しベトナムへ入国した。
12/13(日) ホーチミン市内観光として、ベトナム戦争の史跡・クチの地下トンネルの
見学や、ベンタイン市場、繁華街のドンコイ通りを訪れた。多くの参加者にとって、初め
ての海外の街での楽しいショッピングの時間となった。
いわおか
12/14(月) 本日から本格的な研修が始まった。まず、JICA スタッフの岩岡氏のレクチ
ャーを受けた。JICA の活動内容、ベトナムでの活動状況などをお聴きし、日本が発展途上
国の援助のためにさまざまな支援活動を行っていることが理解できた。また、JICA の活動
や、邦人スタッフの海外での仕事、グローバル人材とはどういう人材か、など学生からも
あ
べ
活発な質問があった。続いて、現地のコンサルタント会社 AGS(株)の阿部マネージャー
らからレクチャーを受けた。事前に現地で働いておられる日本人スタッフの方にお答えい
ただいたアンケート内容を披露していただき、一言でグローバル人材と言っても、いろい
ろな方がいろいろな思いを持って海外で働いておられることがよく分かった。昼食後、
おくむら
JETRO ホーチミン事務所にて、駐在員の奥村氏からレクチャーを受けた。JETRO の仕事、
ベトナムの社会経済状況などについて資料を使ってご説明いただき、明日からの企業訪問
あおの
に大いに役立つ内容であった。最後に、イオンモール1号店へ移動し、青野マネージャー
からレクチャーを受け、ベトナムの人々の習慣にあった売り場配置や商品構成に、日本人
との文化の違いを実感することができた。ベトナムにおけるイオンの戦略や、ベトナム人
スタッフの特性、モールの運営・管理など、学生からも多くの質問があった。
22
国際経営における人材の育成と備後企業の取り組み
2015.12.12-17
ベトナム・ホーチミン 6 日間
Overseastudy
海外現地研修
ワンダフル・サイゴン・ガーメント
12/15(火) 午前中は、
(株)サンエスの出資会社ワンダフル・サイゴン・ガーメントを
にしだ
訪問し、西田社長からレクチャーを受けた。現在、駐在している日本人は西田社長お一人
だけとのこと、また、徹底的な品質管理や生産性アップのため、さまざまな工夫をされて
いる点には感心させられた。その後、縫製工場の視察をさせていただき、参加者は初めて
見る縫製の流れ作業に興味津々でった。午後からは、ムトー精工(株)の現地法人ムトー・
の
だ
ベトナムを訪問し、金型工場、成形工場、組立工場を視察させていただいた後、野田社長
からご説明いただいた。初めて見る金型や射出成型によって、身近な商品に使われている
プラスチック部品のできる工程など、参加者には興味深い視察であった。
12/16(水) 午前中は、
(株)サンエスの現地法人ワンダフル・サイゴン・エレクトロニ
おおもと
クスを訪問し、大元副統括らから会社説明をしていただいた後、カメラレンズモジュール
の製造工場を見学した。初めて見るクリーンルームなどを視察した後、質疑応答の時間を
設けていただき、学生から活発な質問があった。午後は、佐藤産業(株)の家具工場へ向
さとう
かい、佐藤ゼネラルマネージャーのレクチャー後、家具製造工場を見学させていただいた。
現場で働く現地従業員の多くの方から「シンチャオ!」と挨拶を交わしていただき、社員
教育が行き届いていることに感心させられた。
12/17(木) 本日は帰国日である。台北を経由し、20 時 30 分頃広島空港に到着した。
今回の研修では、事故やトラブルもなく、ご協力いただいた企業の皆様やガイドさんを始
め、お世話になった多くの方々のお陰で、たいへん有意義で思い出深い研修になったと思
う。また、参加者とってお互いに他大学の学生や社会人の方と知り合い、親睦が深まった
ことも今回の研修の大きな副産物だったと思われる。
国際経営における人材の育成と備後企業の取り組み
23
Impressions
海外研修参加者の感想
|大学生
初めての海外体験のため、異なる文化や、生活・労働環境、海外に拠点をもつ日系企
業の経営戦略や製造内容を知ることで視野を広げ、また、自身の英語力の向上や、就
職活動の選択肢を増やすことを目的とした。実際に海外の生活や企業で働いている人
を見て、現地の人と話すことで多くの刺激を得た。日本では当たり前なことがベトナ
ムでは通用せず、異なる文化を理解しようとする思いが強くなり、多くの日系企業を
訪問したことで、海外で働くことの魅力や困難が分かった。想像していたより海外へ
行くことのハードルは低く、これから先、もっと海外へ行って経験を増やしていきた
いと思った。
|留学生
広い人間関係をつくり、コミュニケーション能力の向上と、国際経営の実例を見て、
グローバル人材とはどういうことなのかを知る良い機会だと考え参加した。一緒に海
外研修に参加した他大学生や社会人との新しい人間関係と、ベトナムで働いている日
本の方々を見て、コミュニケーションの取り方が分かるようになった。また、工場見
学を通じて、海外での企業活動と、そこから発生した課題を知った。5 泊 6 日があっ
と言う間で、もっと長ければ良いと感じた。これからも機会があれば必ず海外に出て
みようと思う。自分が勉強していることに対し理解が深まった研修であった。
|社会人
海外で事業展開している企業を実際に見ることで知見を深め、今後の業務の参考に
することを目的とした。見学時間や場所の制約があったが、他社の工場を見学する
という貴重な体験ができたことに満足している。社会人として学生に交じるという
ことに不安を感じていたが、皆親切にしてくれて楽しく終わることができた。自分
が学生の頃は、今回参加していた学生たちのような行動力がなかったためとても羨
ましく思う。これからも様々なことを経験して、色々な考えのできる人になっても
らいたい。いつか仕事が一緒にできたらと思う。
24
国際経営における人材の育成と備後企業の取り組み
プログラム推進委員会
連携大学|福山大学(代表校)
尾道市立大学
福山市立大学
福山平成大学
関係団体|福山市
尾道市
福山商工会議所
尾道商工会議所
沼隈内海商工会
神辺町商工会
福山北商工会
福山あしな商工会
一般財団法人備後地域地場産業振興センター
福山大学経済学部グローバル人材育成事業ホームページ
http://goo.gl/7s2bcu
福山大学
尾道市立大学
福山市立大学
福山平成大学
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