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半導体パッケージ用エポキシ樹脂封止材料の成形

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半導体パッケージ用エポキシ樹脂封止材料の成形
U.D.C.
621.3.049.774-758.3:621.792.8.053.4:678.686.027.73
半導体パッケージ用エポキシ樹脂封止材料の成形性評価技術
Evaluation Technologies on Moldability of Epoxy Molding Compounds for
Encapsulation of Semiconductors
吉井正樹*
Masaki Yoshii
水上義裕**
Yoshihiro Mizukami
荘司秀雄**
Hideo Shoji
半導体パッケージの小型・薄型化,ファインピッチ化などに伴い,樹脂充填(てん)
過程におけるボイド,ワイヤ変形や,離型時のストレスによるチップクラックなど成
形性に関する問題が顕在化してきている。そこで,成形性に優れる封止材料の開発支
援を目的に,成形性評価技術の構築を目指した。その結果,新規な流動・硬化特性評
価技術,流動およびワイヤ変形シミュレーション技術,流動可視化によるウェルドボ
イド,ワイヤ変形,アンダーフィル評価技術,実パッケージ成形時の離型力測定によ
る連続離型性評価技術を開発した。
With the miniaturization and finer pitch of semiconductor packages, molding defects
such as voids, wire sweeps, chip cracks and so on are becoming serious problems. In
this study, to aid development of high moldability Epoxy Molding Compounds (EMC),
we developed evaluation technologies for moldability. As a results of this achievement,
new evaluation technologies, namely rheological and curing characterization of EMC,
simulation of the flow behavior and wire sweeps, visualization of weld voids, wire
sweeps and underfilling of flip chip packages, and a measurement method of the
releasing force in molding the actual package were created.
ンスファー成形を主体とする封止技術 1)では,樹脂充填(て
〔1〕 緒 言
ん)過程でのボイド2)∼4),ワイヤ変形5)∼14),パドルシフト15),16),
半導体のパッケージング(封止成形)は,エポキシ樹脂コ
さらには硬化後の離型過程におけるパッケージ変形によるチ
ンパウンド(以下,封止材という)を用いたトランスファー
ップクラックなど,広義の意味での成形性の問題が顕在化し
成形が主流となっている1)。
てきている(図1)
。
これらの成形性課題は,パッケージ構造,金型,封止材,
一方,半導体パッケージは,LSIの高集積化に伴って,小型,
薄型,ファインピッチ・多ピン化が急速に進んでいる。この
成形技術など多くの要因と複雑に関係しており,その解決に
ようなパッケージの薄型,ファインピッチ化に伴って,トラ
は総合的なアプローチがますます必要となってきている。
ボイド
ワイヤ変形
L/F
チップ
溶融樹脂
エポキシ樹脂封止材料
ゲート
キャビティ
チップ
パドルシフト,
チップチルト
プランジャー
(b)樹脂充填過程
金ワイヤ
チップクラック
図1 トランスファー成形による半導体パッケージン
グおける成形性課題 半導体パッケージの小型・薄型化な
リードフレーム
(L/F)
どによって,樹脂充填過程では,ボイド,ワイヤ変形などが,
離型課程では,チップクラックなどが顕在化してきている。
パドル
(a)半導体パッケージ
エジェクタピン
(c)離型過程
Fig. 1 Moldability problems in semiconductor packaging
using transfer molding
With the miniaturization of semiconductor packages, during
the filling stage, voids, wire sweeps and so on are becoming
serious problems. Also, at the releasing stage, chip cracks
becoming serious problems.
*
当社 半導体材料事業部門 工学博士 **当社 半導体材料事業部門
日立化成テクニカルレポート No.40(2003-1)
13
そこで,成形性に優れる封止材の開発支援技術として,封
止材の基本的な特性をはじめとして,樹脂流動挙動やワイヤ
表1 Kamalの硬化速度モデルの係数
Table 1
Coefficients of Kamal’s model
変形などのシミュレーションや可視化による成形性評価,離
m
−
0.342
型荷重の検出による離型性の定量的評価に至る評価技術を構
n
−
1.14
築してきた。
A1
s
A2
s−1
1.72E7
E1
K
19,796
E2
K
8,866
本稿では,これまでに構築した評価技術と,その評価技術
の活用によって明らかになった成形性に優れる封止材の特性
仕様や成形性改善のための成形技術を併せて紹介する。
0.1
−1
〔2〕 硬化および流動特性評価
封止材は,熱硬化性樹脂であるエポキシ樹脂にシリカフィ
1.0
ラが体積比率で通常60∼80%充填された複合材料である。そ
α∼0.96
のため,封止材の粘度は加熱時間の経過に伴って変化し,し
0.8
かもフィラの凝集・分散などにより,強いせん断速度依存性
これらの特性を明らかにした17)。
2. 1 硬化特性
エポキシ樹脂の硬化反応速度式としては,下に示すKamal
のモデル式19)が広く用いられている。
硬化度(α)
を示す。そこで,成形性評価の精度の向上を図るため,まず
T=180℃
α∼0.65
0.6
0.4
成形硬化時間:90s
dα/dt=(K1+K2αm)
(1−α)n ………………………
(1)
K1=A1exp(−E1/T)……………………………………
(2)
ゲル化時間:35s
0.2
K2=A2exp(−E2/T)……………………………………
(3)
ここで,αは硬化度,dα/dtは硬化速度,Tは絶対温度(K)
,
m ,n ,A1,E1, A2,E2はそれぞれ材料によって定まる係数
0
0
10
20
30
Scanning Calorimeter)による非等温硬化挙動から求めること
ができる。図2に,シリカフィラ80vol%充填の低粘度系封止
材の非等温硬化曲線を示す。このデータから,
(1)∼(3)式
の係数をデータフィッティング法により求めた(表1)
。こ
50
60
70
80
90
100
時間(s)
である。
これらの係数は,示差熱走査熱量計(DSC;Differential
40
図3 Kamalモデルによる硬化速度の推定 この図から,ゲル化点の硬
化度は約0.65,成形完了時の硬化度は約0.96と推定される。
Fig. 3 Degree of cure with elapsed time estimated from Kamal’s model
The degrees of cure at the gel point and the end of the molding are
estimated at c.a. 0.65 and 0.96, respectively.
れによって,当該樹脂の硬化速度を規定でき,例えば図3に
示すように成形温度180℃における硬化の進行状況を推定す
・,T)=τ(T)/γ
・+K(T)・
η(γ
γ(n−1) ………………
(4)
y
・はせん断速度,nは流れ指数,τ は降伏応力で
ここで,γ
ることができる。
2. 2 流動特性
y
封止材のようにフィラが高充填された複合材料の粘度は低
次式により表される。
せん断域でせん断速度依存性が強く,その特性は(4)式に
τy(T)=τy0exp(Ty / T) ……………………………
(5)
示すHerschel-Bulkely モデルによって精度よく表すことがで
K(T)は,Williams-Landel-Ferry(WLF)式の適用により
きる19),20)。
次式のように表される。
K(T)=K0exp{−CA(T−Tg)
}{C
/ B+(T−Tg)
} ……
(6)
さらに,K0はCastro-Macoskoの式21)により,硬化の進行に
1.0
よる粘度の変化を表すことができる。
(C +C α)
K0=K00{αgel (α
/
}
………………………
(7)
gel−α)
1
0.8
2
ここで,T gはガラス転移温度(K)
,αgelはゲル化点におけ
硬化度(α)
る硬化度,τy0,Ty,CA,CB,K00,C1,C2は樹脂によって定ま
る係数である。したがって,流動特性を規定するには,これ
10℃/min
0.6
らの係数を求める必要がある。
20℃/min
そこで,温度,時間,せん断速度をパラメータとして粘度
0.4
を測定できるスリット式粘度装置を開発した(図4)
。測定
昇温速度
5℃/min
原理は,溶融樹脂がスリットを通過する際の圧力損失を圧力
センサにて検出し,粘度を算出するものである。せん断速度
0.2
はプランジャーの速度とスリット形状で設定され,約10∼
0
300
2,000s−1の広範囲にわたる測定が可能である。ちなみに,従来
350
400
450
温度(K)
500
の流動性指標であるスパイラルフロー,高化式フローテスタ
による粘度は,高せん断域での流動性を表している。
この粘度計を用いて,前節で硬化特性を明らかにした低粘
図2 DSCによる非等温硬化曲線
度系封止材の流動特性を調べた。図5および図6に,粘度の
Fig. 2
温度,時間,せん断速度との関係を示した。特に,図6に示
14
Non-isothermal conversion curve measured using DSC
日立化成テクニカルレポート No.40(2003-1)
すように封止材の粘度は低せん断域で強いせん断速度依存性
1,000
があることがわかる。封止成形におけるキャビティ内の樹脂
流動は50s 近傍の低いせん断領域にあり,このように低せん
−1
である。
図5,6のデータから,
(4)∼(7)式の係数を求めた。そ
の結果を表2に一覧した。表1および表2に示した係数は,
封止材の硬化および流動特性を規定する重要なパラメータで
あり,後述する流動シミュレーションの樹脂特性パラメータ
としても用いられる。
見かけ粘度ηa(Pa・s)
断域での粘度を明らかにすることは成形性評価の点から重要
145℃
100
160℃
10
2. 3 低せん断域粘度とワイヤ変形,パドルシフト
キャビティ内のせん断速度は,ランナやゲート部に比べて
175℃
かなり低く,50s−1近傍にある。そこで,せん断速度50s−1にお
1
10
ける粘度を指標に,ワイヤ変形,パドルシフトとの相関を調
100
・a(s−1)
見かけのせん断速度γ
べた。その結果を図7および図8に示す。
1,000
図6 封止材粘度のせん断速度依存性 高せん断域ではせん断速度依存
性はほとんど認められないが,低せん断域では強いせん断速度依存性がある。
溶融樹脂
圧力センサ
Fig. 6 Viscosity dependence on shear rate
In the high shear zone, the viscosity is almost independent of the shear rate.
However, in the low shear zone, the shear rate dependence is strong.
5
スリット
リザーバ
ワイヤ径:28 m
ワイヤ長さ:2mm
プランジャー
図4 スリット式粘度測定装置の概要 溶融樹脂がスリットを通過する
時の圧力損失から粘度を算出する。せん断速度はプランジャー速度とスリット
ワイヤ変形率(%)
4
3
金ワイヤ
2
1mm
1
形状によって設定され,低せん断域から高せん断域までの測定が可能である。
10×20mm
Fig. 4 Brief skeleton of slit viscometer
The viscosity is calculated form the pressure loss detected using a pressure
transducer. The shear rate is set using the plunger speed and the dimension of
the slit. The viscosity can be measured at a low to high shear rate.
0
0
10
20
30
40
50
60
TSOP
70
せん断速度50s−1における粘度(Pa・s)
図7 低せん断粘度とワイヤ変形との関係 低せん断粘度とワイヤ変形
は非常に強い相関関係がある。
300
Fig. 7 Relationship between low shear viscosity and wire sweeps
There is a strong correlation between low shear viscosity and wire sweeps.
−1
せん断速度:300s
見かけ粘度ηa(Pa・s)
250
160℃
175℃
200
表2 流動特性に関する係数
Table 2
150
145℃
100
50
0
0
10
20
30
時間(s)
40
Coefficients of rheological kinetic equations
n
−
0.85
K00
Pa・sn
2.322E6
CA
−
25.85
CB
K
179.6
C1
−
5.13
C2
−
1.2
αgel
−
0.682
τy0
Pa
857
図5 封止材粘度の温度,時間依存性
Tg
K
293
Fig. 5
Ty
K
0
Viscosity of EMC elapsed with curing time at various temperatures
日立化成テクニカルレポート No.40(2003-1)
15
ワイヤ変形,パドルシフトとも,低せん断粘度と強い相関
〔3〕 シミュレーションによる評価23)
があり,ワイヤ変形やパドルシフトの抑制には低せん断域の
粘度の低減が重要であることがわかる。
パッケージの設計段階から,樹脂の流動解析を行い,ボイ
2. 4 ファインピッチ対応の低粘度封止材の開発
ドやワイヤ変形などを予測し,パッケージ構造,金型,樹脂
最近の話題として,直径15µmの金ワイヤを用いた35µmピ
特性,成形条件などの仕様を明確にすることは,開発のスピ
ッチのボンディング技術がKulicke & Soffa Industries 社によ
って開発された。
200
そこで,上記のボンディング技術に対応できる実装技術の
開発の一環として,ワイヤ変形を抑制できる低粘度封止材の
□27xt1.4)パッケージである。成形ゲート方式としては,
ワイヤ変形に不利とされるサイドゲートを敢えて採用した。
各種封止材の低せん断粘度とワイヤ変形との関係を図9に示
す。粘度が約30Pa・s以下であれば,ワイヤ変形が4%以下と
なり,ワイヤショートのない成形が実現できることがわかっ
160
パドルシフト( m)
開発に取り組んだ。対象パッケージはBGA(Ball Grid Array,
120
パドルのシフト方向
80
3.2mm
40
た22)。また,図中に示したようにカウンタプレッシャー成形
28mm×28mm
QFP2828
法(詳細は§4.2に述べた)により,ワイヤ変形をさらに低減
0
20
できることもわかった。
40
一方,ワイヤ変形に有利とされているトップゲート方式で
は,粘度30Pa・s以下の封止材で,ワイヤ変形は約2%であっ
60
80
100
せん断速度50s−1における粘度(Pa・s)
図8 低せん断粘度とパドルシフトとの関係 低せん断粘度とパドルシ
た。しかし,トップゲートでは,ワイヤの配列形態によって
フトとは強い相関関係がある。
樹脂の流動が大きく影響され,その結果,局部的に大きなワ
Fig. 8 Relationship between viscosity and paddle shifts
There is a fair correlation between low shear viscosity and paddle shifts.
イヤ変形を生じる場合がある。
7
ワイヤ径:15 m
ワイヤ長さ:6mm
ゲート:サイドゲート
ワイヤ変形率(%)
6
図9 ファインピッチBGAにお
ける封止材粘度とワイヤ変形
5
樹脂成形部 t0.86×27mm×27mm
サイドゲート
ワイヤショートのない粘度値は
30Pa・sで,それを満足する低粘度
4
封止材料を開発できた。また,カウ
ンタプレッシャー(加圧)成形でワ
3
ワイヤショートのない
領域
2
イヤ変形を低減できる。
基板 t0.54×27mm×27mm
Fig. 9 Relationship between low
shear viscosity and wire sweeps in
molding fine-pitch BGA
A low viscosity EMC that avoids
wire shorts whose viscosity is lower
than 30 Pa-s, was developed. Wire
sweeps can be reduced using the
counter-pressure molding.
ワイヤ径15µm
常圧成形
ファインピッチBGA
1
0
カウンタプレッシャー成形
0
20
40
60
80
せん断速度50s−1における粘度(Pa・s)
3つの流路
に分割
金ワイヤ
等価厚みH*
の流路に変換
L/F
Q3
Q2
Q1
チップ
W
Q*
H*
W
LOCタイプのTSOP
(a)ワイヤの流動抵抗の考慮
図10 ワイヤの流動抵抗を考慮した
流動解析の例 ワイヤの流動抵抗を考慮
することによって,実際の流動挙動とよく
ゲート
ゲート
一致する。
エアトラップ域
(b)流動シミュレーション結果
16
(c)ショートショット結果
日立化成テクニカルレポート No.40(2003-1)
Fig. 10
Flow simulation with flow
resistance effect caused by wires
Taking the flow resistance caused by
wires, the results of analysis agree well with
the actual flow pattern.
ードアップ,コスト低減の点から極めて重要である。
当社では,流動解析ソフトとしてMOLDFLOW社の“MPI”
〔4〕 流動可視化による評価
( 旧 称 ,“ C - M o l d ”) と , 応 力 解 析 ソ フ ト と し て H i b b i t t
成形時の流動状態をin situで観察8),16),24)∼26)することは,成
Karlsson & Sorensen社の“ABAQUS”を併用して,流動解析
形現象を正確に把握できるため,成形不具合に対してより迅
やワイヤ変形解析など,成形性評価のツールとして活用して
速で的確な対応が可能となる。当社では,流動挙動に起因す
いる。
るボイド,ワイヤ変形,パドルシフトなどの要因解明と成形
しかし,現行の流動解析ソフトでは,ワイヤの流動抵抗を
考慮した解析はいまだ実現されていない。そのため,樹脂流
動がワイヤによって大きく影響を受けるLOC(Lead on Chip)
性向上のために図11に示す流動可視化装置を活用している。
4. 1 ウェルドボイド
せん断速度50s−1における粘度が105Pa・sと64Pa・sの封止
タイプのTSOP(Thin Small Outline Package)では,シミュ
材を用いて,LQFP(Low Profile Quad Package)のウェルド
レーション結果と実際の流動挙動とは大きく相違している。
ボイドの発生状況を流動の可視化により評価した。
そこで,ワイヤによる流動抵抗を仮想的に設定する手法を
粘度の高い樹脂では,図12(a)に示すようにチップ上面
考案し,ウェルドボイドの発生ポテンシャルとなるエアトラ
の流動速度が,L/F面での速度より極端に遅くなり,チップ
ップの予測を試みた。
を通過した時点でエアトラップを生じ,最終的にウェルドボ
図10(a)に示すLOCタイプのTSOPを対象に,ワイヤの存
イドと呼ばれる貫通穴がパッケージに残留した。これは,粘
在による流動抵抗の考慮を次の手法により行った。チップ上
度が高いと流動圧力が高くなり,パドル下面の樹脂からの力
面の流路はワイヤ群によって 3 つの矩形流路に区切られると
でパドルが上昇(パドルシフト)し,チップ上面の流路厚が
し,それぞれの流路における流量Q 1∼3 の総流量Q*(=Q 1 +
減少したためである。一方,粘度の低い樹脂では,パドルシ
Q2+Q3)をもつ等価な流路(幅W,高さH*,長さL)1 つに置
フト量が小さいためチップ上面の流速の減少は少なく,図12
き換えた。すなわち,各流路の流量Q1∼3を(8)
,
(9)式で求め,
(b)に示すようにエアトラップは生じず,ウェルドボイドは
総流量Q*をもつ等価流路の高さH*を(9)と(10)式との繰返
し計算により算出した。
発生しなかった。
このように,ウェルドボイド防止には,低せん断域粘度の
WnH
∆P
Qn= 12η ・ L ・Fn,(n=1∼3)
……………………
(8)
3
n
ここで,ηは粘度,∆Pは圧力損失,Fnは各流路の形状によ
って定まる係数で,次式で求められる。
192Hn
Fn=1− π5 W Σ
i=1,
3,
5
n
・
・
・
1
i5
サーボモータ
iπW
・tanh( 2H n )
…………
(9)
n
荷重センサ
プランジャー
12ηQ*LF* 13
H*=(
) …………………………………
(10)
W∆P
CCDカメラ
ガラス
上記した手法による流動解析結果と実際の成形よるショー
トショットをそれぞれ図10(b)
,
(c)に示した。ワイヤによ
キャビティ
る流動抵抗のためチップ中心部の流れが遅く,相対的にチッ
プ周辺部の流れが速くなり,チップ下からわき上がってきた
L/F
樹脂と合流して,大きなエアトラップ域が形成されているこ
溶融樹脂
とがよく再現されている。このような大きなエアトラップの
モニター
発生は,ウェルドボイドと呼ばれる貫通穴が残留するポテン
シャルが高いことを示している。このエアトラップは,樹脂
の高流動化やL/Fの構造変更などにより小さくすることが可
図11
Fig. 11
能である。
エアトラップ⇒ウェルドボイド
流動可視化装置
Flow visualization tool
エアトラップは生じず
メルトフロント
メルトフロント
図12 流動可視化によるLQFP
のウェルドボイド評価 ウェルド
ボイドの発生ポテンシャルの低減に
は,低粘度化と低チクソ性が有効で
ある。
ト
ー
ゲ
ト
ー
ゲ
(a)高粘度で高チクソ性の封止材料
(b)低粘度で低チクソ性の封止材料
日立化成テクニカルレポート No.40(2003-1)
Fig. 12 Evaluation of weld voids
during encapsulation of LQFP using
flow visualization tool
To reduce the potential of weld
void, lowering the viscosity and
thixotropy of EMC is effective.
17
低減が有効である。
した。真空成形では気泡が多く存在しているのに対して,加
4. 2 溶融樹脂内の気泡とワイヤ変形
圧成形では目視される気泡はほとんどみとめられない。これ
先に述べたように,ワイヤ変形の主要因は樹脂の粘度であ
は,加圧により気泡が押しつぶされたものと考えられる。図
る。しかし,粘度以外の要因として,溶融樹脂内の気泡の存
13のワイヤ変形の結果と気泡とを関連付けると,気泡の存在
在が指摘されてきている5),14),15)。
がワイヤ変形を増大させていると考えられる。
そこで,可視化装置を用い,キャビティ内の気圧(ゲージ
気泡がワイヤの変形を増大させるメカニズムとして,①気
圧表示)を,−0.1MPa(真空成形)∼0.4MPa(カウンタプレ
泡の生成,移動,消滅という一連の挙動による溶融樹脂の脈
ッシャー成形)に変化させ,成形時の溶融樹脂内の気泡状態
動効果,②気泡のワイヤへの衝突効果,③気泡のワイヤへの
とワイヤ変形との関係を調べた 27)。実験に用いたパッケージ
スピニング効果などが考えられるが,これらの検証について
はLQFP(□28xt1.4)である。
は今後の課題である。
いずれにしても,ワイヤ変形の抑制には,樹脂の低粘度化
キャビティ内の気圧条件とワイヤ変形との関係を図13に示
す。ワイヤ変形は,真空成形では常圧(大気圧)成形に比べ
とともに溶融樹脂中の気泡を抑制することが重要である。
て大きくなるのに対して,加圧成形では減少することがわか
4. 3 フリップチップパッケージのアンダーフィル
パッケージの超多ピン化に伴い,はんだバンプによるフリ
った。特に,粘度の低い封止材では,その効果は顕著であ
ップチップ接合が重要なパッケージング技術となっている。
る。
このフリップチップ接合部には,信頼性確保のために封止
一方,キャビティ内の気圧条件と気泡との関係を図14に示
材が充填される。この充填プロセスを一般に「アンダーフィ
ル」と呼んでいる。樹脂を充填する隙間は,100µm程度のも
7
のから30∼40µmのものまである。そのため,封止材として
ワイヤ変形率(%)
6
は微細なシリカフィラを用いるとともに低粘度化を図ること
高粘度封止材料(粘度:50Pa・s@50s−1)
が必要であり,成形技術としてはエアトラップなどによるボ
5
イドを防止することが課題でとなっている。その評価法の一
つとして,流動の可視化による評価を進めている。
4
図15は,トランスファー成形用アンダーフィル材として開
3
発した,粒径20µm以下のシリカフィラを充填した樹脂を用
いた可視化の例である。一方,オーバーモールドタイプのア
2
低粘度封止材料(粘度:30Pa・s@50s−1)
ンダーフィルについても可視化を実現しており,ボイド防止
のキー技術の一つである真空成形による評価も可能としてい
1
る。
0
−0.1
0
0.1
0.2
0.3
今後,これらにより,アンダーフィル性と流動特性,充填
0.4
流路の隙間,バンプ配列,充填方式・条件などとの相関を明
キャビティ内気圧(ゲージ圧:MPa)
らかにしていく予定である。
図13 キャビティ内気圧とワイヤ変形との関係(LQFP,ワイヤ径
27µm) カウンタプレッシャー(加圧)成形によりワイヤ変形を低減できる。
〔5〕 離型性評価
一方,真空成形では,ワイヤ変形は増大する。
封止材は,信頼性確保のためにリードフレームやチップな
Fig. 13 Relationship between ambient pressure inside the cavity and wire
sweeps (LQFP, wire diameter: 27µm)
Wire sweeps can be reduced under the counter-pressure molding. However,
the vacuum molding increases wire sweeps.
どとの接着性が要求される反面,成形工程においては金型と
の離型性が求められるという相反する特性が要求される。
離型性不具合による問題は,連続成形による封止材成分の
観察箇所
L/F
Chip
メルトフロント
金ワイヤ
気泡
(白い斑点)
金ワイヤ
LQFP2828
ゲート
図14 流動可視化装置による溶融樹
脂中の気泡の観察 真空成形では多く
の気泡が観察されるが,カウンタプレッ
シャー(加圧)成形では気泡はほとんど
観察されない。
0MPa
(a)常圧(大気圧)成形
18
−0.1MPa
0.4MPa
(b)真空成形
(c)カウンタプレッシャー成形
日立化成テクニカルレポート No.40(2003-1)
Fig. 14 Observation of bubbles in the
melt during filling stage using flow
visualization tool
With the vacuum molding, many
bubbles were observed. On the other
hand, with the counter-pressure molding,
few bubbles were observed.
溶融樹脂
フリップチップ
はんだバンプ
ガラス
CCDカメラ
充填経過時間 t=0.2s
t=1.0s
t=3.0s
t=4.3s
t=4.8s
図15 フリップチップの
アンダーフィル可視化の例
ゲート
溶融樹脂
フリップチップ
はんだバンプ
Fig. 15
Visualization of
underfill of flip chip package
金型表面への残留,劣化に起因する,①離型力増大によるチ
回,樹脂浸入などによる摺動抵抗を相殺する方法を考案し,
ップクラックやタイバークラック,②「金型汚れ(Stain)
」
真の離型力の検出を可能にした 28)。これより,量産条件とほ
の成形転写によるパッケージ外観不良が主である。そのため,
ぼ同じ条件での離型性を定量的に評価できるようになった。
金型の定期的なクリーニングが必要で,このことが生産性向
5. 2 連続成形および金型高温放置における離型力の変化
上の大きな阻害要因となっている。
低粘度系封止材を例に,連続300ショットにおける離型力
このような離型性の評価には,
「連続で多数」の成形にお
の推移と,金型を高温放置した後の離型力変化を図17に示し
ける「定量的」な評価が不可欠である。そこで,従来のモデ
た。この例では,成形開始初期では離型力は小さいものの,
ル試片評価に代わる方法として,実パッケージを用いた離型
50∼100ショットあたりから増大し始め,300ショットでは初
力測定システムを開発した。
期の離型力の約 3 倍にも増大することがわかった。また,金
5. 1 離型力測定システム
型を成形温度の175℃の高温で放置すると,離型力はさらに
実パッケージ(LQFP2020)を用いた離型力の測定方法を
増大することがわかった。連続成形および高温放置による離
図16に示す。エジェクタピンの下部に荷重センサを設け,パ
型力増大の主な理由は,封止材の成分である離型剤,硬化剤,
ッケージ離型時に負荷される荷重(離型力)を検出するもの
エポキシ樹脂などが成形によって金型に表面に付着残留し,
である。このようなエジェクタピンを用いる手法は,粘度の
低い封止材では,エジェクタピンのクリアランス部に樹脂が
浸入し真の離型力が検出できないとされていた。しかし,今
16
金型を175℃で
14h放置
14
離型力検出用
エジェクタピン
離型力(N)
12
パッケージ成形品
10
8
6
4
PC
2
0
0
100
200
300
400
500
成形ショット数
AMP
図17
連続成形および金型の高温放置による離型力の変化の例 連
続成形により離型力は増大し,金型の高温放置によっても離型力は増大する。
荷重センサ
図16
Fig. 16
実パッケージの離型力測定方法
Detection of releasing force using actual package
Fig. 17 Typical releasing force during continuous molding and after leaving
mold in high temperature atmosphere
The releasing force increases by long-continuous shots and by exposing the
mold to high temperature.
日立化成テクニカルレポート No.40(2003-1)
19
熱劣化(酸化)した結果,離型機能が失われたものと考えら
最後に,本評価技術の開発にあたり,樹脂の流動・硬化特
れる。
性に関してご指導をいただいた米国Cornell 大学の元教授K.
5. 3 離型性に優れる封止材の開発
K. Wang博士,同大学の元研究員S. Han博士,粘度測定装置
この離型力測定システムを活用して,新規な離型剤を成分
の製作にご協力いただいたエムテックスマツムラ株式会社,
とする離型性に優れる封止材を開発した。図18に,従来の離
またファインピッチ封止技術に関してご協力いただいた
型剤を成分とする封止材と新規な離型剤を成分とする封止材
Kulicke & Soffa Industries 社,TOWA株式会社,第一精工株式
の連続300ショットにおける離型力の比較を示した。新規離
会社,さらに本開発全般にわたりパッケージサンプルなどを
型剤を成分とする封止材では,連続成形による離型力の増大
ご提供していただいた株式会社日立製作所・半導体グループ
が見られず,むしろ減少傾向にあることがわかった。この理
に深く感謝致します。
由については,新規離型剤は熱安定性に優れており,成形に
よって離型剤が金型表面に蓄積され,離型効果が増大したた
めと考えられる。この新規離型剤を用いた封止材については,
耐リフロー性などの信頼性も確認し,すでに上市している。
参考文献
1)例えば,金田,佐伯,西:NIKKEI MICRODEVICES,95(1988)
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9)Wu J. H., Tay A. A. O. and Lim T. B.:Electro. Comp. & Manuf.
0
0
100
200
300
Tech. Conf., 1047(1996)
10)Yang H. Q., Bayyuk S. A. and Nguyen L. T.:47th Electronic
成形ショット数
Component and Technology Conference, 158(1997)
図18
11)佐伯,吉田,宝蔵寺:成形加工,12,67(2000)
離型性に優れる封止材料の開発
Fig. 18
12)Yang S. Y., Jiang S. C. and Lu W. S.:IEEE Trans. Comp. &
Development of high releasability EMC
Packaging Tech., 23, 700(2000)
13)高堂,外:Proc. of MES 2000, 335(2000)
14)小池,佐々木,小野:Proc. of 15th JIEP Annual Meeting, 157
〔6〕 結 言
(2001)
半導体パッケージの封止成形における新規な成形性評価技
術を構築し,それらの活用により成形性に優れる封止材特性,
15)Sato M. and Yokoi H.:IEEE Trans. on Advanced Packaging, 23,
574(2000)
16)Su F. et al.:IEEE Trans. Comp. & Packaging Techn., 23, 684
成形法などを明らかにした。
(1)評価技術として,①封止材の流動・硬化特性評価技術
をはじめ,②流動およびワイヤ変形のシミュレーション技術,
③流動可視化による評価技術,④連続離型性評価技術を開発
した。
(2000)
17)M. Yoshii, Y. Mizukami and H. Shoji, Asian Workshop on Polymer
Processing in Singapore 2002, O-14-1(2002)
18)Kamal M. R., Sourour S. and Ryan M. E.:SPE Tech. Papers, 19,
187(1973)
(2)ウェルドボイド,ワイヤ変形,パドルシフトは,キャ
ビティ内せん断速度を代表する50s−1における粘度と強い相関
19)Papo A. and Cafin B.:Hungarian J. of Industrial Chemistry, 16,
270(1988)
が認められ,これらの抑制には,低せん断域粘度を低くする
20)Han S. and Wang K. K.:J. Rheol. 41, 177(1995)
ことが望ましい。
21)Castro J. M. and Macoscko C. W.:SPE Tech. Papers, 26, 434
(3)ワイヤ変形について,溶融樹脂内の気泡の影響が認め
(1980)
られ,気泡を抑えることができるカウンタプレッシャー成形
22)水上,吉井,外:特許申請中(2002)
法はワイヤ変形の抑制に効果がある。
23)例えば,Han S. and Wang K. K.:J. of Electro. Packaging, 122, 20
(4)ワイヤ径15µmを用いたファインピッチ化に対応できる
(2000)など
24)佐藤,山口,横井:成形加工’95,103(1996)
低粘度封止材を開発した。
(5)実パッケージの連続成形における離型力の測定を可能
にし,これにより離型性に優れる封止材を早期に開発した。
成形性の課題は,封止材だけでなく,パッケージの構造設
計,金型技術,成形技術など,総合的なアプローチが重要で
ある。そのため,今後とも関連分野の研究機関,メーカーな
25)佐藤,横井:成形加工シンポジア’96,159(1996)
26)Nguyen L. T., Quentin C. G. and Lee W. W:49th Electro. Comp.
& Tech. Conf., 177(1999)
27)M. Yoshii, et al, Asian Workshop on Polymer Processing in
Singapore 2002, O-15-1(2002)
28)吉井,水上:特許申請中(2002)
どと協力し技術開発を進めていく予定である。
20
日立化成テクニカルレポート No.40(2003-1)
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