...

他誌発表論文抄録 - 北海道立衛生研究所

by user

on
Category: Documents
35

views

Report

Comments

Transcript

他誌発表論文抄録 - 北海道立衛生研究所
感染症新法と北海道のエキノコックス症対策
Control Measures for Echinococcosis in Hokkaido under the New Infectious Diseases Control Law
田村 正秀
Masahide Tamura
北海道公衆衛生学雑誌, 14(2), 86-91 (2000)
「エキノコックス症」は長らく北海道の風土病と言われ
続けたが,近年,本州でも患者の発生や豚からの虫体検出
位置付けられるなど,もはや一地方の特殊な病気とは言え
などが報告され,また,平成11年4月施行の感染症新法の
なかで本症が医師の届け出が義務付けられる4類感染症に
キノコックス症,北海道におけるエキノコックス症対策に
なくなっている.こうした背景のもとで,新法におけるエ
ついて述べた.
新生児のほ乳量評価に関する研究
Studies on Milk Intake in Neonates
市原 侃 新井 純理 山野 公明 中山 憲司
寺井 格 住吉 好雄1) 成瀬 浩2)
Naoshi Ichihara, Junn Arai, Kimiaki Yamano, Kenji Nakayama,
Itaru Term, Yoshio Sumiyoshi and Hiroshi Naruse
日本マス・スクリーニング学会誌, 10, 59-63 (2000)
北海道の産科医療機関における新生児のほ乳量評価の調
査結果から,
1. 「殆どほ乳不良」の目安はかなり巾があったが,約8
割の産科医療機関では, 0∼50mL/kg/day程度の範囲
にあると考えていた.
2.生後4∼6日のほ乳量は,約8割の産科医療機関では,
100∼170mL/kg/day程度の範囲にあると考えていた.
1)横浜市愛児センター
2)杏林大学東京総合医学研究所
-123-
Proteolytic Activities of Two Types of Mannose-binding
Lectin Associated Serine Protease
Misao Matsushita1), Steffen Thiel2), Jens C. Jensenius2)
Itaru Terai and Teizo Fujita1
T. Immunol, 165, 2637-2642 (2000)
マンノース結合蛋白(MBL)は補体系を活性化するこ
は捕らえられるがMASP-2は素通りしてしまう.単離し
とによりinnate immunityで働くオリゴマー状の血清レク
チンである.ヒトでは二つのMBL関連セリンプロテアー
たMASP-1とMASP-2は,各々C3とC4に対してプロテ
ゼ(MASP-1とMASP-2)およびMASP-2を一部切り取っ
性化を受けた. C1rとC1sのinhibitorであるClinhibi-
た蛋白(sMAPあるいはMAp19)がMBLと複合体を形成
torはMASP-1やMASP-2と等量の複合体を作り,それら
している. MASP-1とMASP-2の,補体成分C4, C2,
のプロテアーゼ活性を抑制した.
1)福島県立医科大学
C3に対するプロテアーゼ活性を明らかにするために,ヒ
ト血清から連続的なアフィニテイクロマトグラフィーによ
りこれら二つの型のMASPを活性型で単離した.抗
アーゼ活性を示した. C2は二つのMASPによって共に活
2)Department of Medical Microbiology and Immunology, University of Aarhus, Denmark
MASP-1カラムでは, EDTAと高塩濃度存在下, MASP-1
Cu-metallothioneins (Cu (Ⅰ)8-MTs) in LEC Rat Livers 13 Weeks
after Birth Still Act as Antioxidants
Naomi Shishido1) Kenji Nakayama, Akira Takasawa2
Tohru Ohyama3) and Masao Nakamura1
Arch. Biochem. Biophys., 387, 1-7 (2001)
著者らは,先にヒト・ウィルソン病モデル動物である
Long-Evans Ciunamon (LEC)ラットを用いた実験により,
第一銅と結合したメタロチオネイン[Cu(Ⅰ)-MTs]から
cu (Ⅰ)が遊離するだけで活性酸素種が生成されることを明
らかにした.本実験においては, LECラットの肝炎.肝
癌発症への遊離Cuの関与の有無を明らかにするために,
肝炎直前のLECラット肝臓からCu (Ⅰ)-MTsを精製し,
更なるCu結合性を有するか否か,そして活性酸素種の生
成及び消去能を示すか否かについて検討を行った.
本研究より,肝炎発症直前のLECラット肝臓でも,
MTsは更に2分子程度のCu Ⅱを還元して結合する能力
を有し,十分に抗酸化的に働いていることが明らかとなっ
た.また,共存するグルタチオン量からも,触媒活性を有
する遊離Cuの存在は否定的であると考えられた・
1)旭川医科大学化学教室
2)北海道大学電子科学研究所
3)東京農業大学生物産業学部
-124-
エゾシカから検出されたシカシラミバエ
Lipoptena fortisetosa Maa, 1 965
(Diptera : Hippoboscidae)
First Record of Lipoptena fortisetosa Maa, 1965 (Diptera : Hippoboscidae)
from a Cervus nippon yesoensis in Hokkaido, Northern Japan
福本真一郎1) 譽田 顕1) 新山 雅美1) 佐々木 均2)
奥田 敏男3) 茂木 幹義4) 高橋 健一
Shin-ichiro Fukumoto, Ken Homareda, Masami Niiyama, Hitoshi Sasaki,
Toshio Okuda, Motoyoshi Mogi and Kenichi Takahashi
衛生動物, 51(3), 227-230 (2000)
1997年に北海道日高地方で捕獲されたエゾシカの体表か
1)酪農学園大学獣医学部
らシカシラミバエの成虫が採集された.このシラミバエは
2)酪農学園大学酪農学部
形態的検討の結果, Lapoptenafortisetosaと同定された.
3)十勝家畜保健衛生所
北海道産エゾシカからの本種の報告は今回が初めてであっ
4)佐賀医科大学
た.
Dermatosis Caused by the Bite of Trombiculid Mite Larvae,
Leptotrombidium intermedium
(Nagayo, Mitamura et Tamiya, 1920) (Prostigmata : Trombiculidae)
Hitoko Misumi1), Mamoru Takahashi2), Kenichi Takahashi and Hiroshi Uragami3)
Med.Entomol.ZooL 51 4 , 293-298 2000
アラトツツガムシ末吸着幼虫によるヒト刺咬性とその皮
膚症状を被験者2名で観察した.一名の被験者では1個体
のアラトツツガムシが66時間にわたり吸着し,満腹離脱し
た.吸着部位の紅斑は痒みと痛みを伴った小水疱に変化し,
ダニの離脱後も数日間認められた.もう一名の被験者にも
1個体のダニの吸着が見られたが,吸着部位にはわずかな
痒みを伴う紅斑が見られたのみであった.以上の結果から,
本種にはヒト刺咬性のあることが確認された.また,吸着
時間はマウスで実験した場合とほぼ同じであったが,ヒト
に対する吸着率はマウスの場合に比べて非常に低かった.
1)埼玉医科大学医学部
2)埼玉県立川越総合高校
3)新潟薬科大学薬学部
-125-
GC/MS (SIM)による農作物中110農薬の一斉分析法
Multi-Residue Determination of 110 Pesticides in Agricultural Products by GC/MS (SIM)
根本 了1) 佐々木久美子1) 衛藤 修一2) 斉藤 勲3)
酒井 洋4) 高橋 哲夫 外海 泰秀5) 永山 敏廣6)
堀 伸二郎7) 前川 吉明8) 豊田 正武1)
Satoru Nemoto, Kumiko Sasaki, Syuichi Eto, Isao Saito,
Hiroshi Sakai, Tetsuo Takahashi, Yasuhide Tonogai, Toshihiro Nagayama,
Shinjiro Hori, Yoshiaki Maekawa and Masatake Toyoda
食品衛生学雑誌, 41 (4), 233-241 (2000)
農作物中の残留農薬スクリーニング試験法として,日本
の範囲の回収率を示したのは77農薬であった.回収率が
で基準値が設定されている多数の農薬を対象とした
GC/MSによる一斉分析法を作成した.農作物の摩砕物を
アセトニトリル抽出後,塩析により水層を分離,除去した.
70%未満のデータが3割以上を占めたものが20農薬あった.
アセトニトリル層をGPC及びカートリッジカラム(弱陰
イオン交換カラム及びシリカゲルカラム)処理によりク
リーンアップ後, GC/MS (SIM)で定量する試験法につ
いて検討を加えた.
平成10年3月までに残留基準値が設定された農薬中
1)国立医薬品食品衛生研究所
GC/MSで分析可能な110農薬について, 4または5分析
機関で添加回収試験を実施した. 6農作物についての添加
回収試験で,全分析機関のデータの7割以上が70%∼120%
回収率が120%を上回ったものが13農薬あったが,スクリー
ニング法としての適用は可能と考えられた.
2)北九州市環境科学研究所
3)愛知県衛生研究所
4)新潟県保健環境科学研究所
5)国立医薬品食品衛生研究所大阪支所
6)東京都立衛生研究所
7)大阪府立公衆衛生研究所
8)日本食品分析センター多摩研究所
Characterization on Nicking of the Nontoxic-Nonhemagglutinin
Components of Clostridium botulinum Types C and D Progenitor Toxin
Yoshimasa Sagane1), Toshihiro Watanabe1), Hirokazu Kouguchi1), Hiroyuki Sunagawa,
Kaoru Inoue2), Yukako Fujinaga2), Keiji Oguma2) and Tohru Ohyama1
J. Protein Chem., 19, 575-581 2000)
ボツリヌスC及びD型菌はMとLの2種類のプロジェ
ニター毒素を産生する.われわれは先にD型CB-16株の
産生するM毒素の130-kDa nontoxic-nonhemagglutinm
(NTNHA)構成成分が特異的なサイトで切断され,
15-kDaのN末端断片と115-kDaのC末端断片が生じる
ことを報告した.本研究では,ボツリヌスC及びD型菌
の産生するM毒素のNTNHAにおける切断サイト周辺の
アミノ酸配列をC及びN末端の配列とマススペクトルの
分析により明らかにした.これらの株から得られた
15-kDa断片C末端はLysl27であることが判明し,この
ことから切断は細菌のトリプシン様プロテアーゼによると
考えられる. 115-kDa断片はLeu135, Val139, Ser141か
ら始まる3種類のN末端アミノ酸配列の混合であり, 7-13
アミノ酸残基が切断サイトから欠落している. Leu135で
始まる配列はトリプシン様プロテアーゼによる分解を示唆
するのに対し, Val139とSer141で始まる他の2種類のN
-126-
末端アミノ酸配列は不明のプロテアーゼによる分解による
ものと思われる.ニックの入ったNTNHAはSDSなしで
成する.
は分離されない2本の断片で形成される2本鎖複合体を形
2)岡山大学医学部
1)東京農業大学生物生産学部
Detection and Characterization of Shiga toxin-producing
Escherichia coli from Seagulls
S. Makino1), S. Kobori1), H. Asakura1), M. Watarai1
T. Shirahata1), T. Ikeda and T. Takeshi
Epidemiol. Infect, 125, 55-61 (2000
北海道の港湾でカモメの糞便を採取し,志賀毒素産生性
大腸菌の分離を試みた.被検試料50検体中2検体から本菌
が分離され,血清型は各々, O136: H16, O153: H-で
あった.両株とも志賀毒素1及び2産生株で,溶血毒非産
性 eaeA遺伝子を保有していなかった.本結果から,
カモメが志賀毒素産生性大腸菌のキャリアーとなり得るこ
とが示唆された.
1)帯広畜産大学畜産学部
Does Enterohemorrhagic Escherichia coli O157 : H7
Enter the Viable but Nonculturable in Salmon Roe?
Sou-ichi Makino1), Tsutomu Kii1), Toshikazu Shirahata1),
Tetsuya Ikeda, Koichi Takeshi and Kikuji Itoh2)
Appl. Environmen. Microbiol., 66(12) , 5536-5539 (2000)
イクラ醤油潰食中毒事件で分離されたイクラ由来及び患
者由来志賀毒素産生性大腸菌を用い,本棟のVNCへの移
行について検討した.両株を漬込み液に接種後,経時的に
株では減少が顕著であった.生菌数の減少が確認された漬
試料を採取し, NaClを13%添加したL-agarに培養した
ところ,両株とも生菌数の減少が認められ,特に患者由来
1)帯広畜産大学畜産学部
込み液を蛍光染色処理して観察した結果,多数のVNCの
存在が確認された.
2)東京大学農学部
-127-
HPLCによる畜産食品中の5種動物用医薬品の迅速定量
Rapid Determination of Residues of Five Kinds of Veterinary Drugs in Livestock Products by HPLC
長南 隆夫 西村 一彦 平間 祐志
Takao Chonan, Kazuhiko Nishimura and Yuzi Hirama
食品衛生学雑誌, 41(5), 326-329 (2000)
畜産食品中の5種(6化合物)の動物用医薬品(5-プロ
ピルスルホニル-1/7-ベンズイミダゾール-2-アミン,チア
ベンダゾール, 5-ヒドロキシチアベンダゾール,トリメト
プリム,パナゾン,ピリメタミン)の一斉分析法を検討し
た.試料をアセトニトリルで抽出し,脱脂後,肉の場合は
抽出液をアルミナカラムで精製する方法で,肝臓・腎臓・
牛乳の場合は必要に応じてpH7.0の緩衝液を加えて硫酸
アンモニウム飽和として酢酸エチル-n-ヘキサン(8 :
2)で抽出後,アルミナカラムで精製する方法で試験溶液
を調製した.試験溶液を紫外及び蛍光検出器付きHPLC
で分析した.
試験溶液のクロマトグラム上に妨害ピークは認められず,
6化合物の添加回収率は60%以上であった.
本法は,簡便かつ迅速で基準値に対応できることから,
これら動物用医薬品の実用的なスクリーニング法と考えら
れた.
A Strong Association between HLA-DR9 and
Gelatin Allergy in the Japanese Population
Takuji Kumagai1), Tatsuru Yamanaka1), Yasuhiko Wataya1), Akiko Saito,
Toyo Okui, Shoki Yano, Hiroyuki Tsutsumi2), Shunzo Chiba2)
and Akemi Wakisaka
Vaccine, 19, 3273-3276 (2001)
アナフィラキシー症状8例を含む即時型副反応群23症例
及び非即時型副反応群18症例についてHLAクラスⅠ及び
Ⅱの出現頻度を求めた.日本人に広く分布するHLA-DR9
は4.1であった・非即時型副反応群(ゼラチンIgE陰性群)
は,健常人対象者では24.0%が陽性であったのに対し,
1)札幌小児アレルギー感染症研究会
IgE陽性ゼラチンアレルギー患者群では56.5%が陽性であ
った (p<0.002).また,算出された相対危険度 RR
2)札幌医科大学医学部
では対照群と比べて明らかに頻度に偏りのある抗原は検出
されなかった.
3)日本赤十字血漿分画センター
128-
The Lymphoproliferative Response to Enzymatically Digested
Gelatin in Subjects with Gelatin Hypersensitivity
Takuji Kumagai1), Tetuo Nakayama2), Makoto Kamada1), Chiharu Igarashi1
Kenji Yuri1), Hidetsugu Furukawa1), Kouji Wagatsuma1), Hiroyuki Tsutsumi3),
Syunzo Chiba , Hiroyuki Kojima, Akiko Saito, Toyo Okui
and Shoki Yano
Clin. Exp. Allergy, 30(10) , 1430-1435 (2000)
FreAlaginRは,従来のゼラチンに代わるワクチン安定
剤として開発されたコラゲナーゼ処理された改良ゼラチン
である.著者らは,ゼラチンアレルギー患児のFreAlagin
Rに対する反応性をリンパ球増殖反応試験(LPT)及び
陽性血清を用いた試験において,全血清でFreAlaginR
IgE抗体との反応により検討した.対象はワクチン接種後
に副反応を呈した患児で,ウシゼラチン(和光純薬製)に
示唆された・このことから, FreAlaginRの臨床現場で
対するLPTで陽性を示した110症例である. LPTでは110
例中58例(53%)において, FreAlaginRに対する反応
が陰性を示した.また, 12例のウシゼラチンに対するIgE
に対する反応性はウシゼラチンに比べ低下したことを認め
た.今回の検討で,ウシゼラチンと比較してFreAlaginR
はリンパ球及びIgE抗体との反応性を低下させることが
の応用が可能と考えられた.
1)札幌小児アレルギー感染症研究会
2)北里研究所
3)札幌医科大学医学部
The Phenobarbital Response Enhancer Module
in the Human Bilirubin UDP-Glucronosyltransferase
UGTIAT Gene and Regulation by the Nuclear Receptor CAR
Junko Sugitani1), Hiroyuki Kojima, Akiko Ueda1), Satoru Kakizaki1
Kouichi Yoshinari1), Qi-Hui Gong2), Ida S. Owens2), Masahiko Negishi1
and Tatsuya Sueyoshi1
Hepatology, 33, 1232-1238 (2001)
肝UDP-グルクロノシル転移酵素 UGT1A1 は,ビリ
ルビンの解毒に関わっている主要な酵素であり,フェノバ
ルビタール(PB)投与により誘導されることが報告され
ている.著者らは constitutive active receptor (CAR)
導入HepG2細胞を用いて UGT1A1遺伝子上流
(-3483/-3194)の290-bpにPB応答配列(gtPBREM)を
見出した.その配列には3つの核内受容体モチーフが含ま
れ,その一つにCARとretinoidXreceptor (RXR)の
ヘテロ二量体が結合することをゲルシフトアッセイにより
確認した.さらに,マウス初代肝細胞を用いた290-bp導
入レポーターアッセイによりPB添加で転写活性の克進を
認めた.このことから invivoにおいてもPBにより核
内でCAR/RXR複合体が形成され, gtPBREMを介した
UGT1A1遺伝子の発現が誘導されていることが示唆され
た.一方, PB投与でUGT1A1酵素が誘導されずに重篤
な高ビリルビン血症を呈するCrigler-Najjar type Ⅱ患者
の発症原因として, gtPBREMの遺伝子多型が関与して
いる可能性が考えられた.
1)National Institute of Environmental Health Sciences
2)National Institute of Child Health and Human Development
-129-
Arsenic Compounds in Marine Sponge (Haliclona permolis.
Halichondria japonica, Halicondria okadai and Haliclona sp・ white)
from Seto Inland Sea, Japan
Yukiho Yamaoka1), Marvelisa L. Carmona2), Jose M. Oclarit2
Kazuo Jin and Yasuyuki Shibata3)
Applied Organometallic Chemistry, 15, 261-265 (2001)
環境におけるヒ素の動態に関する研究の一環として瀬戸
内海産の海綿4種類についてHPLC-ICPMSを用いて化学
形態を調べた.海綿は流水系と体を支持する組織で構成さ
合は異なっていた.また,石灰海綿では他の海綿よりヒ素
れ,多細胞生物の中で分類学的に最も下等な体制をした動
物であり,ヒ素の化学形態は不明であった.
ムラサキ海綿(Haliclonapermolis),ダイダイ海綿
は海綿の共生藻類の種類が異なるためであると考えられた.
(Halichondriajaponica),クロイソ海綿(Halicondria
okadai)及び石灰海綿(Haliclona sp. white)のすべてか
らアルセノベタインと2種類のヒ素糖が検出され,これら
の化合物は水溶性ヒ素の74∼96%を占めていたが,存在割
濃度は低かった(3.4∼13.0μg/gに対し0.81μg/g).海
綿の種類によりヒ素の化学種別存在割合が異なっていたの
1)独立行政法人産業技術総合研究所中国センター海洋環境制御
部
2)フィリピンMSU-イリガン工科大学生物学部
3)独立行政法人国立環境研究所化学環境部
シラカンパ花粉症に対する飛散前レーザー治療
Pre-seasonal Nd : YAG Laser Therapy for Patients with Birch Pollinosis
渡邉 昭仁1) 川堀 眞一1) 長内 洋史1)
市川 良之2) 小林 智 神 和夫
Akihiko Watanabe, Shinichi Kawaborl Hirofumi Osanal
Yoshiyuki Ichikawa, Satoshi Kobayashi and Kazuo Jin
耳鼻と臨床, 46(6), 470-474 (2000)
北海道の代表的花粉症であるシラカンパ花粉症に飛散前
レーザー治療を行い,その有効性について検討した.通年
性アレルギー鼻炎に対するレーザー治療はすでに多くの報
告があり,スギ花粉症に対する予防的治療法としても適用
例があるが,シラカンパ花粉症への適用例はない.シラカ
ンパ花粉症の治療方法として花粉飛散前の投薬治療が進め
られているが,薬剤治療による改善がない事例も存在する.
本報告ではシラカンパ花粉症と診断され,薬剤治療によ
るよる改善がない,または薬剤内服のコンプライアンスが
悪い患者に対して本人の了承のもとに下甲介粘膜レーザー
照射術を施行したもので, 1998年4月から5月にかけての
シラカンパ花粉飛散時期の自覚症状と前年までの症状をア
ンケートで比較できた59例を対象とした.レーザー治療後
の1998年シラカンパ花粉飛散時期の鼻症状は,くしゃみ,
鼻汁,鼻閉ともレーザー治療前年度に比べて有意に症状の
改善が認められた.
1)恵佑会札幌病院耳鼻咽喉科
2)いちかわ耳鼻咽喉科
-130-
輸入食品の放射性セシウム濃度とチェルノブイリ原子力発電所事故の寄与
Concentration of Radioactive Cesium in Imported Foods and Contribution
by Chernobyl Reactor Accident
福田 一義
Kazuyoshi Fukuda
RADIOISOTOPES, 49(9) , 433-438 2000)
平成元年度から平成11年度までに実施した輸入食品の放
射性セシウムの調査から,次のことが明らかになった.
480試料のうちの441試料(92%)では137Cs濃度が1
Bq/kg未満のきわめて低いレベルであった.
137Csが検出された147試料のうちの123試料では,その
起源が過去に実施された大気圏核爆発実験によるものであ
った.
137Csとともに134Csが検出された16試料については,セ
シウム単位が0.40Bq/g-Kを上回り,チェルノブイリ原
子力発電所事故に由来する寄与率を算出した.また,この他
の8試料についても,セシウム単位が0.40Bq/g-Kを上回っ
たことから,この事故に由来する寄与を定性的に評価した・
Has Echinococcus granulosus Settled in Hokkaido?
Koji Furuya, Masanori Kawanaka1), Naoki Sato2
Hiroshi Honma and Masahide Tamura
Jpn. J. Infect. Dis., 53, 176-177 (2000)
北海道におけるヒトの単包虫感染について血清学的後向
調査を行ったが単包虫症を疑う症例は認められなかった.
しかしながら,道内の食肉衛生検査所で輸入牛に単包虫感
要とされる.
1)国立感染症研究所
2)北海道大学医学部付属病院
染の剖検例が報告されており,検疫による一層の監視が必
Isolation of Encephalitozoon cuniculi using Primary Tissue Culture
Techniques from a Rabbit in a Colony Showing Encephalitozoonosis
Koji Furuya, Daisuke Fukui1), Masanori Yamaguchi2
Yuji Nakaoka2), Gen Bandct and Masao Kosuge1
J. Vet. Med・ Sci., 63, 203-206 (2001
北海道の市立動物園でエンセファリトゾーン症
cunicu/us)から腎臓の初代培養によりエンセファリトゾー
(encephalitozoonosis)が疑われたウサギ(Oryctolagus
ン胞子(Encephalitozoon spore)を分離した.クロモトロー
-131-
プ染色を施した胞子は,形態学的に微胞子虫類
証明された.
(Microspora)の胞子の特徴を示し, PCR法とダイレク
トシークエンシング法により E.cuniculiであることが
1)旭川市旭山動物園
2)北海道上川家畜保健衛生所
Wortmannin, a Radiation Sensitizer, Enhances the Radiosensitivity
of WKAH Rat Cells But NotThat of LEC Rat Cells
Masanobu Hayashi1), Ai Kawana1), Daiji Endoh1) and Toyo Okui
J.Vet. Med.Sci., 62(2 , 191-194 2000
WKAH及びLECラット細胞における放射線増感作用
をもつwortmannmの影響を検討した. WKAHラット細
胞において30μM以下のwortmanninは生存率にほとんど
影響を及ぼさなかったが, LECラット細胞では生存率の
低下が認められた. Wortmanninで処理したWKAHラッ
ト細胞にX線を照射すると放射線増感が認められ,その
増感の程度は処理濃度に依存した.しかし, LECラット
細胞ではwortmannin処理による放射線増感作用は観察さ
れなかった.
1)酪農学園大学獣医学部
Hepatic Copper Accumulation Induces DNA Strand Breaks
in the Liver Cells of Long.Evans Cinnamon Strain Rats
Masanobu Hayashi1), Tomoko Kuge1), Daiji Endoh1), Kenji Nakayama,
Jiro Arikawa2), Akira Takazawa3) and Toyo Okui
Biochem. Biophys. Res. Commun., 276, 174-178 (2000)
肝癌を自然発症するLECラットにおいて銅と鉄の蓄積
がDNA鎖切断に及ぼす影響について検討した. LECラッ
トにおける肝臓中の銅と鉄の蓄積量は4過令から15週令ま
で週令に依存して増加した. 4週令から低銅食を与えた10
過令から15週令のラットでは肝臓の銅の異常蓄積は認めら
れなかったが,鉄の蓄積は減少しなかった. DNAの一本
鎖切断はcomet法を用いて検出した.肝細胞のDNAの
一本鎖切断は4過令から15過令まで週令に伴い増加した.
低銅食を与えた10週令から15週令のラットの肝細胞の
DNAの一本鎖切断の量は4週令のラットと同じであった.
これらの結果は肝細胞のDNAの一本鎖切断が鉄の蓄積で
はなく,銅の蓄積により誘発されることを示唆している.
1)酪農学園大学獣医学部
2)北海道大学医学部
3)北海道大学理学部
-132-
Hypertonic Treatment Inhibits Radiation-Induced Nuclear Translocation
of the Ku Proteins G22pl (Ku70) and Xrcc5 (Ku80) in Rat Fibroblasts
Daiji Endohl), Toyo Okui, Yasuhiro Kon2) and Masanobu Hayashi15
Radiation Research, 155, 320-327 (2001)
ラットの線維芽細胞においてX線照射と0.5NNaClの
高張処理のKuタンパクに及ぼす影響を共焦点顕微鏡とイ
ムノブロッテイングを用いて検討した. Kuタンパクはヒ
トの線維芽細胞ではそのほとんどが細胞の核に存在するが,
ラット線維芽細胞ではその約80%が細胞質に存在した.ラ
ット細胞に4 GyのX線を照射すると照射20分後には全
Kuタンパクの20から50%が核内に移行した. X線照射し
た細胞と非照射細胞のKuタンパクの量には違いは認めら
れなかった. 0.5NのNaClによる高張処理は放射線照射
によ.る潜在致死損傷 PLD の早い時期の修復を阻害す
ることが認められている.修復照射後直ちに0.5Nの
NaClで20分間高張処理するとKuタンパクの核移行は阻
害された.生存率は高張処理をしないときの60%に減少し
た.またX線照射誘発DNA二重鎖切断の修復も減少した.
照射後高張処理をする前に正常培養液で培養すると照射直
後に高張処理した場合に比べて生存率が上昇し, Kuタン
パクの核移行は20-50%増加した.これらの結果はKuタ
ンパクの核移行がPLDの修復過程に重要な関わりを持つ
ことを示唆している.
1)酪農学園大学獣医学部
2)北海道大学獣医学部
-133-
Fly UP