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3 章 フーリエ変換 §3.1 フーリエ変換の定義
3章 フーリエ変換 テーマと目標 単発現象に含まれる振動数を分析する方法と フーリエ変換の実例 その考え方 デルタ関数の定義と使い方 フーリエ係数からフーリエ変換への橋渡しの フーリエ変換の性質 数学的操作 たたみ込み積分とフーリエ変換 フーリエ変換とフーリエ逆変換の定義 パーセバルの等式 §3.1 フーリエ変換の定義 [周期現象から非周期現象へ] 前章まで,周期現象を扱う数学の道具を学んだ.周期現象には基本振動数があり,その振動数の整数倍の 振動数をもつ周期現象が重なりあって様々なパターンを作り出す.基本振動数で繰り返すサイン・コサイ ンあるいは複素指数関数と,整数倍の振動数で繰り返す関数がどれだけ混ざっているかを表すのがフーリ エ展開(フーリエ級数への展開)であり,各振動数の寄与を振幅として表すのがフーリエ係数であった. しかし, (見ている間には)1 回しか起きない現象もたくさんある.ある時間だけ続く音,繰り返しな く続くメロディーを思い起こせばよい.たとえば,楽器がある高さの音を数秒間鳴らしたあと沈黙してい るとしよう.このとき「どんな振動数の音が入っていたか」と問うのは自然なことだろう.繰り返さない 現象(非周期現象)に適応できる「フーリエ展開の拡張」がどうあるべきかを学ぶのが本節の目的である. フーリエ展開は周期関数しか扱えない.そこで「周期が非常に長くなれば非周期現象とほとんど同じ」 と考えることにしよう.1000 年に 1 度の繰り返しでも生きている間に 1 回しか起きなければそれでよいの だ!「フーリエ展開において周期を無限大にするとどうなるか」を考察すればよいことになる. [周期の変化とスペクトルの変化] フーリエ級数では基本振動数をωと書いてきたが,以後Δωと書くことにする.なぜなら,フーリエ級数で 現れる振動数の間隔が基本振動数となるから: ∞ 𝑓(𝑡) = ∑ 𝑐𝑛 𝑒 𝑖 𝑛 𝛥𝜔 𝑡 , 𝑛=−∞ 𝑐𝑛 = 1 𝑇/2 ∫ 𝑓(𝑡)𝑒 −𝑖 𝑛 Δ𝜔 𝑡 𝑑𝑡 𝑇 −𝑇/2 横軸に振動数,縦軸に𝑐𝑛 の実部や虚部を描いた図を𝑓(𝑡)のスペクトル(2 章参照)と呼ぼう.周期𝑇の現象 をフーリエ展開すると,振動数の間隔𝛥𝜔 = 2𝜋 𝑇 ごとに振幅𝑐𝑛(の実部や虚部あるいは絶対値,以後この注を 省略することがある)のスペクトルが現れる. 例題 01 6 5 4 𝑖 𝑖𝑛 Δ𝜔 𝑡 𝑓(𝑡) = π + ∑ 𝑒 𝑛 𝑛=−∞,≠0 ∞ 3 2 1 5 10 15 20 1 のスペクトル(実部と虚部)をスケッチせよ. 解 Re 𝑐𝑛 Δω = Im 𝑐𝑛 2π Δω = 𝑇 2π 𝑇 問題 01 例題 01 では,虚部のスペクトルに負の振動数が現れる.負の振動数は何を意味するか. また,原点について対称(奇関数)となるのはどのような意味があるか. 例題 01 において,周期𝑇を大きくしていくと,スペクトルの間隔が狭くなることがわかる.この例では, 周期を大きくすると「のこぎり波」のパターンも間のびするから,間隔だけでなくスペクトルの形も相似 的に変化する. つぎに,パターンを同じ形に保ち,繰り返しの周期だけを大きくする.次の例では,矩形パルスの幅 を変えずに間隔(したがって周期)を大きくする: mathematica 20 下図のアニメーション 2 0.6 0.4 1 0.2 T 40 20 20 40 0.0 10 20 30 40 50 10 20 30 40 50 10 20 30 40 50 0.2 1 0.4 0.6 2 2 0.6 0.4 1 0.2 T 0.0 40 20 20 40 0.2 1 0.4 0.6 2 2 0.6 0.4 1 0.2 T 0.0 40 20 20 40 0.2 1 0.4 0.6 2 これらを観察すると,周期𝑇を大きくするときに 2 1) スペクトルの間隔が密になる 2) スペクトルの形は変わらない(縦方向には縮む) ことがわかる.理由は 1) は既に学んだとおりスペクトルの間隔が2π/Tとなるから. 2) は 1 個のパルスの波形がスペクトルの形を決めているからである.縦軸はフーリエ係数の大きさ(ある 振動数の振幅)を表すが,パルス列が粗になるほど信号の強度が落ちるという意味である. [単発現象へのアプローチ] 単発の現象を「周期𝑇を無限大にした極限と同じ」と考え,フーリエ展開の極限の形を求めることにする. フーリエ展開において𝑇 → ∞の極限ではΔω = 2π 𝑇 → 0になる.これに関連して,リーマン和の極限による定 積分の定義を復習しよう: 𝑁 𝑏 ∫ 𝑔(𝑥) 𝑑𝑥 = lim ∑ 𝑔(𝑘Δ𝑥)Δ𝑥 Δ𝑥→0 𝑁→∞ 𝑘=1 𝑎 そこで,右辺の形に合わせるようにフーリエ展開の式を変更する: ∞ 𝑓(𝑡) = ∑ ∞ 𝑐𝑛 𝑖 𝑛 𝛥𝜔 𝑡 𝑐𝑛 𝑇 𝑖 𝑛 𝛥𝜔 𝑡 𝑒 Δ𝜔 = ∑ 𝑒 Δ𝜔 Δ𝜔 𝑛=−∞ 𝑛=−∞ 2π ∞ 𝑐𝑛 𝑒 𝑖 𝑛 𝛥𝜔 𝑡 = ∑ 𝑛=−∞ 𝑐𝑛 右辺に現れるΔ𝜔について考察しよう.本来, 𝑐𝑛 は𝜔𝑛 = 𝑛 𝛥𝜔という 1 点における振幅であるが,区間𝑛 𝛥𝜔 𝑐 𝑛 を中心とする幅Δωの範囲の振動の振幅が𝑐𝑛 であると考えてもよい.このとき,Δ𝜔 は単位振動数あたりの振 幅,すなわち振幅(ないしスペクトル)の密度 𝐹(𝜔𝑛 ) を与える: 𝑐𝑛 𝑐𝑛 𝑇 1 1 = ≡ 𝐹(𝑛Δ𝜔) = 𝐹(𝜔𝑛 ) 𝛥𝜔 2𝜋 2π 2π 1 2π 1 𝐹(𝜔𝑛 )の1/2𝜋は,必然性はない.2π → 1 √2π , 1 2π → 1などの選択肢がある. この段階で,フーリエ展開とフーリエ係数を書き直す: 𝑓(𝑡) = ∞ 1 ∑ 𝐹(𝜔𝑛 ) 𝑒 𝑖 ωn 𝑡 Δ𝜔 , 2𝜋 𝑛=−∞ 𝑻 → ∞の極限で𝜔𝑛 → 𝜔(連続変数), Δ𝜔 → 𝑑𝜔, 𝑓(𝑡) = 𝑇 𝑇 1 2 2 𝐹(𝜔𝑛 ) = 𝑇𝑐𝑛 = 𝑇 × ∫ 𝑓(𝑡)𝑒 −𝑖 𝑛 Δ𝜔 𝑡 𝑑𝑡 = ∫ 𝑓(𝑡)𝑒 −𝑖 𝜔𝑛 𝑡 𝑑𝑡 𝑇 𝑇 −𝑇 − ∑∞ 𝑛=−∞ Δ𝜔 1 ∞ ∫ 𝐹(𝜔)𝑒 +𝑖 𝜔 𝑡 𝑑𝜔 , 2π −∞ 2 ∞ → ∫−∞ 𝑑𝜔だから 2 ∞ 𝐹(𝜔) = ∫ 𝑓(𝑡)𝑒 −𝑖 𝜔 𝑡 𝑑𝑡 −∞ となる.複素指数関数の引数の符号に注意せよ. 用語: 𝑭(𝝎)を𝒇(𝒕)のフーリエ変換という.単位振動数あたりのフーリエ係数(振幅の密度)に相当する量である. ∞ 𝑭(𝝎) = ∫−∞ 𝒇(𝒕)𝒆−𝒊 𝝎 𝒕 𝒅𝒕を実行することを𝒇(𝒕)をフーリエ変換するという. 1 ∞ 𝑓(𝑡) = 2π ∫−∞ 𝐹(𝜔)𝑒 +𝑖 𝜔 𝑡 𝑑𝜔は,𝐹(𝜔)から逆に𝑓(𝑡)を求める変換なので逆フーリエ変換という. 問題 02 スペクトル密度を𝑐𝑛 𝑇 = 𝐹(𝜔𝑛 )とせず,(i) 𝑐𝑛 𝑇 = 2𝜋 𝐹(𝜔𝑛 ) , (ii) 𝑐𝑛 𝑇 = √2𝜋 𝐹(𝜔𝑛 )としたとき,フーリエ変 3 換とフーリエ逆変換の式はどのようになるか.これらの定義も頻繁に用いられるので,各文献で使われる 定義を確認することが肝要である. [フーリエ変換が存在する(有限の値になる)条件] 存在しない(計算しても値がでない)ものを扱っても意味のないことなので,フーリエ変換が存在するか 否かを見分ける方法が欲しい.それは ∞ ∞ ∫ |𝑓(𝑡)|𝑑𝑡 が存在する(絶対可積分という)なら 𝐹(𝜔) = ∫ 𝑓(𝑡)𝑒 −𝑖𝜔𝑡 𝑑𝑡 も存在する −∞ −∞ である.なぜなら ∞ ∞ ∞ ∞ −∞ −∞ −∞ −∞ ∫ 𝑓(𝑡)𝑒 −𝑖𝜔𝑡 𝑑𝑡 < ∫ |𝑓(𝑡)𝑒 −𝑖𝜔𝑡 |𝑑𝑡 < ∫ |𝑓(𝑡)||𝑒 −𝑖𝜔𝑡 |𝑑𝑡 = ∫ |𝑓(𝑡)|𝑑𝑡 であるから. 絶対可積分という条件を少しゆるめる,それ自身が絶対可積分でなくても「絶対可積分関数列の極限」 として定義できる関数については,極限値をもってフーリエ変換とする.章末の「ファインマンの処方」 にこの考え方の例を見る. (この項目は難易度が高いので跳ばしてよい. ) [フーリエ・サイン変換とフーリエ・コサイン変換] 「複素フーリエ級数とフーリエ三角級数の関係」は,フーリエ変換でも同様であり ∞ ∞ ∞ 𝐹(𝜔) = ∫ 𝑓(𝑡)𝑒 −𝑖𝜔𝑡 𝑑𝑡 = ∫ 𝑓(𝑡) cos 𝜔𝑡 𝑑𝑡 + 𝑖 ∫ 𝑓(𝑡) sin 𝜔𝑡 𝑑𝑡 ⏟−∞ ⏟−∞ −∞ フーリエ・コサイン変換 フーリエ・サイン変換 である.𝑓(𝑡)が実数で偶関数のとき𝐹(𝜔)はフーリエ・コサイン変換となり,奇関数のとき𝐹(𝜔)はフーリエ・ サイン変換の𝑖倍となる. 問題 03 𝑓(𝑡)が実数のとき ̅̅̅̅̅̅̅ (i)𝐹(−𝜔) = 𝐹(𝜔) (ii)フーリエ・コサイン(サイン)変換は ω の偶(奇)関数 (iii)𝑓(𝑡)が偶(奇)関数なら𝐹(𝜔)は実数(純虚数) を示せ. §3.2 フーリエ変換の例 「ある関数のフーリエ変換」の逆フーリエ変換はもとの関数である(フーリエ変換の双対性).フ-リエ変 換の例を学習するとき,フーリエ変換と逆フーリエ変換を対にして「覚える」のがよい. 4 例題 02 𝑑 1⋯− 2 < 𝑡 < 幅𝑑,高さ 1 の単一パルス 𝑓(𝑡) = { 0 ⋯ その他 𝑑 2 のフーリエ変換を求めよ. 解 sinc(𝑥) ≡ sin 𝑥 𝑥 の関数のグラフを知っていると話が楽だが → ∞ 𝑑/2 𝐹(𝜔) = ∫ 𝑓(𝑡)𝑒 −𝑖𝜔𝑡 𝑑𝑡 = ⏟ −∞ ∫ 1 𝑒 −𝑖𝜔𝑡 𝑑𝑡 −𝑑/2 𝑓=0 の 領域を積分区間 から除外する = 1 𝑒 −𝑖𝜔 𝑑/2 − 𝑒 𝑖𝜔 𝑑/2 𝑑/2 [𝑒 −𝑖𝜔𝑡 ]−𝑑/2 = −𝑖𝜔 −𝑖𝜔 = 𝑒 𝑖𝜔 𝑑/2 − 𝑒 −𝑖𝜔 𝑑/2 𝑒 +𝑖𝜔 𝑑/2 − 𝑒 −𝑖𝜔 𝑑/2 =𝑑× 𝑖𝜔 2𝑖(𝜔𝑑/2) =𝑑× 𝐹(𝜔) = 𝑑 × sinc ( 𝜔𝑑 2 𝜔𝑑 sin ( 2 ) 𝜔𝑑 (2 ) ) ; 𝐹(0) = 𝑑, 𝜋 𝐹 (±2 𝑑 ) = 0 → 中央ピークの裾の幅 W = 4π d → 高さ × 幅 = 4π 𝑓(t) 𝑑 𝑡 𝐹(ω) W ω mathematica 21 アニメーション:パルスの𝑑が小→W が大:広範囲の周波数にわたる成分を持つ(スペ クトルが横に広がる) 矩形パルスのフーリエ変換が sinc になるのだから,sinc の逆フーリエ変換は矩形になるはずである.それ は記憶に値する内容なのだが,その逆フーリエ変換を正直に積分計算で求めようとすると(絶対可積分で ないし)非常に難しい.結果だけを覚えるのがよいだろう: sinc(ω) = 1/2 ⋯ − 1 < 𝑡 < 1 sin(ω) 1 ∞ の逆フーリエ変換, ∫ sinc (𝜔)𝑒 +𝑖 𝜔 𝑡 𝑑𝜔 = 面積 1, 幅 2 の矩形波 { 𝜔 2π −∞ 0 ⋯ その他 5 問題 04 例題 02 のフーリエ変換𝐹(𝜔)は実数である.それは𝑓(𝑡)のどのような性質によるか. 例題 03 𝑒 −𝑎𝑡 ⋯ 0 < 𝑡 𝑡 = 0から始まる指数関数的減衰𝑓(𝑡) = { 0 ⋯ その他 (𝑎 > 0) のフーリエ変換を求めよ. 解 ∞ 𝐹(𝜔) = ∫ 𝑓(𝑡)𝑒 −𝑖𝜔𝑡 𝑑𝑡 −∞ ∞ ∞ = ∫ 𝑒 −𝑎𝑡 𝑒 −𝑖𝜔𝑡 𝑑𝑡 = ∫ 𝑒 −(𝑎+𝑖𝜔)𝑡 𝑑𝑡 = 0 0 Re 𝐹(𝜔) = 𝑎2 𝑎 , + 𝜔2 1 1 ∞ [𝑒 −(𝑎+𝑖𝜔)𝑡 ]0 = ( lim 𝑒 −𝑎𝑡 = 0 ) −(𝑎 + 𝑖𝜔) 𝑎 + 𝑖𝜔 t→∞ Im 𝐹(𝜔) = −𝜔 + 𝜔2 𝑎2 mathematica 22 計算とグラフ 1.0 0.8 1.0 Re 𝐹(𝜔) 0.6 0.8 0.4 𝑓(𝑡) 0.6 0.2 0.4 3 2 1 1 0.2 0.2 2 3 Im 𝐹(𝜔) 0.4 1 1 2 3 1.0 1.0 0.8 0.5 0.6 0.4 3 2 1 1 2 3 0.2 1 0 1 2 3 0.5 パルスの幅が狭まると,スペクトルが拡がり高い振動数成分まで含まれるようになる. 𝑎 𝑎 2+𝜔 2 の関数形は,分野により異なる名称がある:確率統計ではコーシー分布,物理ではローレンツ関数 (ローレンツィアン)あるいはブライト・ウィグナー分布.経済学などでローレンツ曲線というと全く別 の関数. 指数関数とローレンツ関数はフーリエ変換の双対であることは記憶に値する. 6 問題 05 −𝑎𝑡 (i) 𝑔(𝑡) = { 𝑒𝑎𝑡 ⋯ 0 < 𝑡 𝑒 ⋯t < 0 −𝑎𝑡 (ii) ℎ(𝑡) = { 𝑒 𝑎𝑡 ⋯ 0 < 𝑡 −𝑒 ⋯ t < 0 (𝑎 > 0) (𝑎 > 0)の関数形を例題 03 と比較 し,𝑔とℎの対称性に留意せよ. 𝑓(𝑡)のフーリエ変換をℱ 𝑓 と書く. ℱ 𝑔 ,ℱ ℎ を求めよ. 例題 04 ガウス関数(正規分布)𝑓(𝑡) = 𝑒 −𝑎 2𝑡 2 のフーリエ変換を計算せよ. 解 ∞ ∞ 𝐹(𝜔) = ∫ 𝑓(𝑡)𝑒 −𝑖𝜔𝑡 𝑑𝑡 = ∫ 𝑒 −𝑎 −∞ 2𝑡 2 ∞ 𝑒 −𝑖𝜔𝑡 𝑑𝑡 = ∫ 𝑒 −∞ =e 𝑖𝜔 2 𝑎 2( 2) 2𝑎 −∞ ∞ ∫ 𝑒 −𝑎 2 2(𝑡+𝑖𝜔 ) 2𝑎 − 𝜔2 4𝑎2 ∞+ ∫ 𝑖𝜔 2𝑎 2 𝑖𝜔 −∞+ 2 2𝑎 𝑒 −𝑎 2𝑧 2 𝑑𝑧 𝑑𝑡 = 𝑒 = ⏟ − 𝑒 複素積分 𝑖𝜔 𝑡) 𝑎 2 𝑑𝑡 ∞ =∫ 𝑒 −𝑎 2(𝑡+ 𝑖𝜔 2 2 𝑖𝜔 2 ) +𝑎 ( 2) 2𝑎 2 2𝑎 𝑑𝑡 −∞ −∞ =𝑒 −𝑎2(𝑡 2+ ∞ 𝜔2 𝑖𝜔 2 −𝑎 2(𝑡+ 2) 4𝑎 2 ∫ 𝑒 2𝑎 𝑑𝑡 −∞ − ∞ 𝜔2 2 2 4𝑎 2 ∫ 𝑒 −𝑎 𝑠 𝑑𝑠 −∞ 2 = √𝜋 − ω 2 e 4𝑎 𝑎 ∞ ∞+𝑖𝑏 この複素積分は,複素平面の実軸上の積分∫−∞ 𝑑𝑧 𝑔(𝑧)と,実軸と平行な直線上の積分∫−∞+𝑖𝑏 𝑑𝑧 𝑔(𝑧)が等し い.その理由は被積分関数𝑒 −𝑎 2𝑧 2 が 2 直線に挟まれた部分で正則(§2.7 参照)かつ無限遠で値が 0 になる からである.複素積分になじんでいない場合は次の問題を解いて納得してほしい. mathematica 23 計算とグラフ よく引用される結論: ・𝑡を変数とするガウス関数のフーリエ変換はωを変数とするガウス関数になる.すなわち,ガウス関数は それ自身がフーリエ変換の双対である. ・フーリエ変換の幅ともとの関数の幅の積は一定値で,フーリエ変換の高さはもとの関数の幅に反比例. 2.0 3.0 𝑓(𝑡) 1.5 𝐹(𝜔) 2.5 2.0 1.0 f t 1.5 1.0 0.5 0.5 4 2 0 2 4 4 2 0 2 「パルスの時間幅が短いとスペクトル幅が広い」 4 3.0 2.0 2.5 1.5 2.0 1.0 1.5 f t 1.0 0.5 0.5 4 2 0 2 4 4 2 0 2 4 問題 06 ∞ ガウス関数のフーリエ変換𝐹(𝜔) = ∫−∞ 𝑒 −𝑎 法を適用できるように変形することで, 𝑑 𝑑𝜔 2𝑡 2 𝑒 −𝑖𝜔𝑡 𝑑𝑡を𝜔で微分し(微分してから積分してよい) ,部分積分 𝐹(𝜔) + 𝜔 2𝑎 2 𝐹(𝜔) = 0を導け.𝐹(0) = √𝜋 を用いてこの微分方程式 𝑎 の特解を求めよ. 7 問題 07 𝜔2 𝐹(𝜔) = 𝑒 −4𝑎2 の逆フーリエ変換が 𝑎 √𝜋 e−𝑎 2𝑡 2 となることを示せ. §3.3 デルタ関数 δ(t) 不思議だが便利なデルタ関数𝛿(𝑡)を定義しよう.それは: 𝑓(0) ・関数値は原点を除きどこでも 0:𝛿(𝑡) = 0 ⋯ 𝑡 ≠ 0 ∞ ∞ ・原点を含む区間で積分すると 1:∫−∞ 𝛿(𝑡)𝑑𝑡 = 1, より一般的には∫−∞ 𝑓(𝑡)𝛿(𝑡)𝑑𝑡 = 𝑓(0), というものである.いわば,大きさのない点に質量を与えた質点を表したり,ある一点における関数値を サンプリングするための関数であり,幅広く利用される. ∞ 原点を𝑡′だけ移動すると,𝑡′でサンプリングするデルタ関数𝛿(𝑡 − 𝑡′)となる:∫−∞ 𝑓(𝑡)𝛿(𝑡 − 𝑡′)𝑑𝑡 = 𝑓(𝑡′) [フーリエ変換によるデルタ関数の定義] フーリエ変換とその逆変換の式を組み合わせると,デルタ関数が浮かび上がってくる: 𝑓(𝑡) = ⏟ 逆変換 ∞ 1 ∞ 1 ∞ ′ ∫ 𝐹(𝜔) 𝑒 𝑖𝜔𝑡 𝑑𝜔 = ∫ [∫ 𝑓(𝑡 ′ )𝑒 −𝑖𝜔𝑡 𝑑𝑡 ′ ] 𝑒 𝑖𝜔𝑡 𝑑𝜔 2π −∞ 2π −∞ ⏟−∞ 𝐹(𝜔)の定義 の定義 ∞ ∞ ∞ 1 𝑖𝜔⋅(𝑡−𝑡 ′) ∴ 𝑓(t) = ∫ 𝑓(𝑡 ′ ) [∫ 𝑒 𝑑𝜔] 𝑑𝑡 ′ = ∫ 𝑓(𝑡 ′ )𝛿(𝑡 − 𝑡′) 𝑑𝑡 ′ ⏟−∞ 2𝜋 −∞ −∞ 𝜔の積分を先に ∞ 1 𝑖𝜔⋅(𝑡−𝑡 ′) 𝑒 𝑑𝜔 2𝜋 −∞ 𝛿(𝑡 − 𝑡 ′ ) = ∫ 問題 08 ∞ 積分することを「寄せ集める」と考え,∫−∞ 1 2𝜋 ′ 𝑒 𝑖𝜔⋅(𝑡−𝑡 ) 𝑑𝜔を複素平面上の操作として観察し,𝑡 ≠ 𝑡′のとき 積分が 0 となり,𝑡 = 𝑡′のとき無限大に発散することを確認せよ. . 1 ∞ ′ デルタ関数の定義式 𝛿(𝑡 − 𝑡 ′ ) = 2𝜋 ∫−∞ 𝑒 𝑖𝜔⋅(𝑡−𝑡 ) 𝑑𝜔 の変数の記号を取り替え 𝛿(𝜔 − Ω) = 1 ∞ −𝑖(𝜔−Ω)𝑡 ∫ 𝑒 𝑑𝑡 2𝜋 −∞ も頻出(複素指数関数の肩の符号:{t, t ′ , ω} → {ω, Ω, −t}と取り替えている.フーリエ変換および逆変換の積 分核e±𝑖𝜔𝑡 の符号と合わせた) . [フーリエ変換でデルタ関数を利用する] フーリエ変換では振動数が連続に変化することを前提としているため,振動数に有限の幅をもって成分が 分布するときは自然な表現ができるが,ある振動数だけに成分が集中するときはデルタ関数で表現せざる 8 をえない.具体的な例で見ていこう. 例題 05 デルタ関数 𝛿(𝜔 − Ω) = 1 ∞ −𝑖(𝜔−Ω)𝑡 𝑑𝑡 ∫ 𝑒 2𝜋 −∞ を用いて 𝑓(𝑡) = sin Ω𝑡 のフーリエ変換を求めよ. 解 ∞ 𝑒 𝑖Ω𝑡 − 𝑒 −𝑖Ω𝑡 −𝑖𝜔𝑡 𝜋 1 ∞ 1 ∞ −𝑖(𝜔+Ω)𝑡 𝑒 𝑑𝑡 = ( ∫ 𝑒 −𝑖(𝜔−Ω)𝑡 𝑑𝑡 − ∫ 𝑒 𝑑𝑡) 2𝑖 𝑖 2𝜋 −∞ 2𝜋 −∞ −∞ 𝐹(𝜔) = ∫ sin 𝛺𝑡 𝑒 −𝑖𝜔𝑡 𝑑𝑡 = ∫ −∞ = ∞ 𝜋 (𝛿(𝜔 − Ω) − 𝛿(𝜔 + Ω)) = 𝑖𝜋𝛿(𝜔 + Ω) − 𝑖𝜋𝛿(𝜔 − Ω) 𝑖 スペクトルを描くと,実部は 0 で,虚部が次のとおり: 𝜋𝛿(𝜔 + Ω) −Ω Im 𝐹(𝜔) Ω 𝜔 −𝜋𝛿(𝜔 − Ω) 問題 09 𝑓(𝑡) = cos Ω𝑡のフーリエ変換を計算せよ. 例題 06 𝑓(𝑡) = 𝛿(𝑡)のフーリエ変換を求め,結果を物理的な意味として説明せよ. 解 ∞ 𝐹(𝜔) = ∫ δ(t) ⋅ 𝑒 −𝑖𝜔𝑡 𝑑𝑡 = 𝑒 0 = 1 −∞ すでに学んだとおり,パルスの幅が小さいほどスペクトルが拡がる.パルスの幅とスペクトルの幅は反比 例する.𝛿(𝑡)は無限に短いパルスの表現と考えられるから,そのフーリエ変換の幅は無限に広い:𝐹(𝜔)=1 は,無限に拡がった振動数の成分が,どこでも同じ振幅を持つことを示す. 問題 10 𝑓(𝑡) = 1のフーリエ変換を求め,その結果を物理的な意味として説明せよ [デルタ関数のフーリエ変換に関わる式] まとめと若干の拡張をしておく. デルタ関数の定義にしたがい計算すると,𝛿(𝑡)のフーリエ変換ℱ δ は ∞ ℱ δ = ∫ 𝛿(𝑡) 𝑒 −𝑖𝜔𝑡 𝑑𝑡 = [𝑒 −𝑖𝜔𝑡 ]𝑡=0 = 1 −∞ 9 時間原点に非常に短いパルスがあるとき,非常に広い振動数にわたって同じ振幅(さらに同じ位相←時間 原点に対称であることによる)の成分を持つ.逆変換は 𝛿(𝑡) = ∞ 1 ∞ 𝑖𝜔𝑡 ∫ 𝑒 𝑑𝜔,あるいは ∫ 𝑒 𝑖𝜔𝑡 𝑑𝜔 = 2𝜋𝛿(𝑡) 2𝜋 −∞ −∞ 変数は自由に選んでよいから,たとえば, 𝛿(𝑥) = 1 ∞ 𝑖𝑘𝑥 ∫ 𝑒 𝑑𝑘 2𝜋 −∞ と書いてもよい.また上の逆変換で変数を変えて ∞ ℱ 1 = ∫ 1 𝑒 −𝑖𝜔𝑡 𝑑𝑡 = − ∫ −∞ ∞ ∞ 1 𝑒 𝑖𝜔(−𝑡) 𝑑(−𝑡) = ∫ 1 𝑒 𝑖𝜔𝑡′ 𝑑𝑡′ = 2𝜋𝛿(𝜔) 𝑡=−∞ −∞ とすれば,直流の振動数が 0 であることを表す式となる. 振動数ω0の単振動 𝑒 𝑖𝜔0𝑡 のフーリエ変換は ∞ ∞ −∞ −∞ ℱ[𝑒 𝑖𝜔0𝑡 ] = ∫ 𝑒 𝑖𝜔0𝑡 𝑒 −𝑖𝜔𝑡 𝑑𝑡 = ∫ 𝑒 𝑖(𝜔0−𝜔)𝑡 𝑑𝑡 = 2πδ(ω − ω0 ) となる. 時刻𝑡 = 𝑡0 に非常に短いパルス𝛿(𝑡 − 𝑡0 )が来るとき,そのフーリエ変換は ∞ ∞ −∞ −∞ ∫ 𝛿(𝑡 − 𝑡0 ) 𝑒 −𝑖𝜔𝑡 𝑑𝑡 = 𝑒 −𝑖𝜔𝑡0 ∫ 𝛿(𝑡 − 𝑡0 ) 𝑒 −𝑖𝜔(𝑡−𝑡0) 𝑑(𝑡 − 𝑡0 ) = 𝑒 −𝑖𝜔𝑡0 すなわち(𝑡 = 0に来るパルスδ(t)のフーリエ変換に較べて)位相が−𝑖𝜔𝑡0 だけシフトする. 問題 11 デルタ関数δ(ω − Ω)の逆フーリエ変換を求めよ. [デルタ関数のその他の性質] ∞ 定義式 ∫−∞ 𝛿(𝑥)𝑓(𝑥)𝑑𝑥 = 𝑓(0)にもどって証明する必要がある. ・偶関数: ∞ −∞ ∫ 𝛿(−𝑥)𝑓(𝑥)𝑑𝑥 = ⏟ ∫ −∞ ∞ ∞ −∞ −∞ 𝛿(𝑥 ′ )𝑓(−𝑥 ′ )𝑑(−𝑥 ′ ) = ∫ 𝛿(𝑥 ′ )𝑓(−𝑥 ′ )𝑑𝑥 ′ = 𝑓(0) = ∫ 𝛿(𝑥)𝑓(𝑥)𝑑𝑥, 𝑥=−𝑥 ′ ∞ ∴ 𝛿(𝑥) = 𝛿(−𝑥) ・縮尺(スケーリング)(𝑥軸方向を1/𝑎に縮めた𝛿(𝑎𝑥)の性質) : ∞ ∞ ∫ 𝛿(𝑎𝑥)𝑓(𝑥)𝑑𝑥 = ⏟ ∫ 𝛿(|𝑎|𝑥)𝑓(𝑥)𝑑𝑥 −∞ 偶関数 −∞ ∞ = ⏟ ∫ 𝛿(|𝑎|𝑥)𝑓(𝑥) デルタ関数の引数 −∞ 𝑑(|𝑎|𝑥) 1 = 𝑓(0) |𝑎| |𝑎| にあわせて dx を変更 = ∞ 1 ∞ 𝛿(𝑥) ∫ 𝛿(𝑥)𝑓(𝑥)𝑑𝑥 = ∫ 𝑓(𝑥)𝑑𝑥 |𝑎| −∞ −∞ |𝑎| 10 ∴ 𝛿(𝑎𝑥) = 𝛿(𝑥) |𝑎| ・導関数: ∞ 𝑑 ∫ ( 𝛿(𝑥)) 𝑓(𝑥)𝑑𝑥 𝑑𝑥 −∞ = ⏟ ⏟𝛿(𝑥)𝑓(𝑥) 部分積分 ∞ −∞ デルタ関数は ∞ ∞ 𝑑 𝑑 − ∫ 𝛿(𝑥) ( 𝑓(𝑥)) 𝑑𝑥 = − ∫ 𝛿(𝑥) ( 𝑓(𝑥)) 𝑑𝑥 𝑑𝑥 𝑑𝑥 −∞ −∞ 両端で 0 デルタ関数の導関数を𝑓(𝑥)にかけて積分すると,−𝑓(𝑥)の導関数の値が求まる. デルタ関数を矩形パルスの幅が無限に短くなったものと想像する. 有限の幅のときに微分をすると,パルスの立ち上がりと立ち下がり で鋭いピークがでる.その状態で積分して,その後にパルス幅を狭 めていくと,微分の計算と同等になる. ・合成関数: ∞ ∞ ∫ 𝛿(𝑓(𝑥))𝑔(𝑥)𝑑𝑥 −∞ = ⏟ ∫ 𝛿(𝑓) 置換積分 −∞ 𝑥→𝑓 𝛿(𝑥 − 𝑎𝑖 ) 𝑑𝑓 (𝑑𝑥 ) すべての𝑎𝑖 𝑔(𝑥)𝑑𝑓 𝑔(𝑥) = ∑ 𝑓=0 となる 𝑑𝑓 𝑑𝑓 (𝑑𝑥) すべての点で (𝑑𝑥 ) サンプリング 例:δ(𝑥 2 − 𝑎2 ) = ∴ 𝛿(𝑓(𝑥)) = ∑𝑓=0 となる 1 1 δ(𝑥 − 𝑎) − δ(𝑥 + 𝑎) 2𝑎 2𝑎 ・積分: 𝑥 0⋯𝑥 < 0 ∫−∞ 𝛿(𝑥)𝑑𝑥 = 𝜃(𝑥) = { 1⋯0 < 𝑥 𝑑𝜃 𝜃(𝑥)は単位階段関数 (unit step function).𝑑𝑥 = 𝛿(𝑥)はわかりやすい. メモ mathematica の組み込み関数として UnitStep[x]と HeavisideTheta[x]がある: UnitStep[0]=1,HeavisideTheta[0]=未定義. HeavisideTheta[x]を微分すると DiracDelta[x]を与える.UnitStep[x]を微分すると x=0 で不定, それ以外で 0 と返す. 例題 07 𝑑 𝑑𝑡 𝛿(𝑡)のフーリエ変換を計算せよ. 解 ∞ ∞ 𝑑 𝑑 ∫ ( 𝛿(𝑥)) 𝑓(𝑥)𝑑𝑥 = − ∫ 𝛿(𝑥) ( 𝑓(𝑥)) 𝑑𝑥 𝑑𝑥 −∞ 𝑑𝑥 −∞ より ∞ ∞ ∞ ∞ 𝑑 𝑑 ∫ ( 𝛿(𝑡)) 𝑒 −𝑖𝜔𝑡 𝑑𝑡 = − ∫ 𝛿(𝑡) ( 𝑒 −𝑖𝜔𝑡 ) 𝑑𝑡 = − ∫ 𝛿(𝑡)(−𝑖𝜔)(𝑒 −𝑖𝜔𝑡 )𝑑𝑡 = 𝑖𝜔 ∫ 𝛿(𝑡)(𝑒 −𝑖𝜔𝑡 )𝑑𝑡 = 𝑖𝜔 𝑑𝑡 −∞ 𝑑𝑡 −∞ −∞ −∞ あるいは,デルタ関数の定義を直接に用いて 11 ∞ ∞ ∞ 𝑑 𝑑 ∞ ∫ ( 𝛿(𝑡)) 𝑒 −𝑖𝜔𝑡 𝑑𝑡 = [𝛿(𝑡)𝑒 −𝑖𝜔𝑡 ]−∞ − ∫ 𝛿(𝑡) 𝑒 −𝑖𝜔𝑡 𝑑𝑡 = 0 + 𝑖𝜔 ∫ 𝛿(𝑡) 𝑒 −𝑖𝜔𝑡 𝑑𝑡 = 𝑖𝜔 𝑑𝑡 −∞ 𝑑𝑡 −∞ −∞ 例題 08 間隔τ 等間隔𝜏で繰り返されるデルタ関数のパルス列 ∑∞ 𝑘=−∞ 𝛿(𝑡 − 𝑘𝜏)のフーリエ変換を求めよ.⊥⊥⊥⊥⊥⊥ 解 まず, ∑∞ 𝑘=−∞ 𝛿(𝑡 − 𝑘𝜏)は基本周期が τ だから,そのフーリエ級数を求めよう: 𝜏/2 ∞ 2π 2π 1 𝜏/2 1 ∞ 𝑐𝑛 = ∫ (∑ 𝛿(𝑡 − 𝑘𝜏)) 𝑒 −𝑖 𝑛 𝜏 𝑡 𝑑𝑡 = ∑ ∫ 𝛿(𝑡 − 𝑘𝜏)𝑒 −𝑖 𝑛 𝜏 𝑡 𝑑𝑡 𝜏 −𝜏/2 𝜏 𝑘=−∞ 𝑘=−∞ −𝜏/2 2π 2π 1 𝜏/2 𝑒 −𝑖 𝑛 𝜏 ⋅0 1 = ∫ 𝛿(𝑡 − 0 ⋅ 𝜏)𝑒 −𝑖 𝑛 𝜏 𝑡 𝑑𝑡 = = 𝜏 −𝜏/2 𝜏 𝜏 2𝜋 1 𝑖𝑛 𝑡 ∞ ∑∞ 𝑘=−∞ 𝛿(𝑡 − 𝑘𝜏) = ∑𝑛=−∞ 𝑒 𝜏 :振動数が等間隔 ∴ 𝜏 1 2𝜋 𝜏 1 で並ぶ,振幅 の単振動の重ね合わせ ∞ これから,∑∞ 𝑘=−∞ 𝛿(𝑡 − 𝑘𝜏)のスペクトルは ∑𝑛=−∞ 𝛿 (𝜔 − 𝑛 1 𝜏 2𝜋 2𝜋 𝜏 𝜏 間隔 2π/τ )に比例することがわかる.⊥⊥⊥⊥⊥⊥ 𝑖𝑛 𝑡 ∞ ∞ 実際, ∑∞ 𝑘=−∞ 𝛿(𝑡 − 𝑘𝜏) = 𝜏 ∑𝑛=−∞ 𝑒 𝜏 の右辺の形を用いて∑𝑘=−∞ 𝛿(𝑡 − 𝑘𝜏)のフーリエ変換を求めよう: ∞ ∞ ∞ 2𝜋 2𝜋 1 ∞ 1 ∞ 𝛿(𝑡 − 𝑘𝜏)) 𝑒 −𝑖 𝜔 𝑡 𝑑𝑡 = ∫ ( ∑ 𝑒 𝑖𝑛 𝜏 𝑡 ) 𝑒 −𝑖 𝜔 𝑡 𝑑𝑡 = ∫ ∑ 𝑒 𝑖(𝑛 𝜏 −𝜔)𝑡 𝑑𝑡 𝜏 −∞ 𝑛=−∞ 𝑘=−∞ 𝑛=−∞ −∞ 𝜏 ∞ ∫ (∑ −∞ ∞ 2𝜋 1 ∞ = ∑ ∫ 𝑒 𝑖(𝑛 𝜏 −𝜔)𝑡 𝑑𝑡 𝜏 𝑛=−∞ −∞ = ⏟ δ 関数のフーリエ積分 2𝜋 ∞ 2𝜋 ∑ 𝛿 (𝜔 − 𝑛 ) 𝜏 𝜏 𝑛=−∞ による定義を用いる 例題 09 0⋯t < 0 単位階段関数 𝜃(𝑡) のフーリエ変換を求めよ. (少し高級) ⏟ ={ 1⋯0 < 1 unit step 解 1 1 θ(t)を偶関数と奇関数に分解する:𝜃(𝑡) = 2 + 2 sgn(𝑡), sgn ⏟ signus −1 ⋯ t < 0 (𝑡) = { 1⋯0 < 1 または sign 1 2 のフーリエ変換は,ℱ 1 = 2πδ(ω)だから,ℱ 1/2 = πδ(ω) −𝛼𝑡 sgn(𝑡)を𝑓𝛼 (𝑡) = { 𝑒 𝛼𝑡 ⋯ 0 ≤ 𝑡 の α → 0 の極限と考える:sign(𝑡) = limα→+0 𝑓𝛼 (𝑡) −𝑒 ⋯ 𝑡 < 0 sgn(𝑡)のフーリエ変換は,𝑓𝛼 (𝑡)のフーリエ変換を求めてからα → 0 の極限をとる. ∞ 0 −∞ −∞ ∞ ∫ 𝑓𝛼 (𝑡) 𝑒 −𝑖𝜔𝑡 𝑑𝑡 = − ∫ 𝑒 𝛼𝑡 𝑒 −𝑖𝜔𝑡 𝑑𝑡 + ∫ 𝑒 −𝛼𝑡 𝑒 −𝑖𝜔𝑡 𝑑𝑡 = = 0 −1 1 0 ∞ [𝑒 (𝛼−𝑖𝜔)𝑡 ]−∞ + [𝑒 (−𝛼−𝑖𝜔)𝑡 ]0 𝑎 − 𝑖𝜔 −𝑎 − 𝑖𝜔 −1 1 −(𝑎 + 𝑖𝜔) + (𝑎 − 𝑖𝜔) −2𝑖𝜔 + = = 2 𝑎 − 𝑖𝜔 𝑎 + 𝑖𝜔 𝛼2 + 𝜔2 𝛼 + 𝜔2 ℱ 𝜃 = π𝛿(𝜔) + → α→0 − 2𝑖 2 1 𝑖 = :ℱ [ sgn] = − 𝜔 𝑖𝜔 2 ω 1 𝑖𝜔 12 §3.4 フーリエ変換の性質 [線型性] 𝑓(𝑡)のフーリエ変換 ∞ 𝐹(𝜔) = ∫ 𝑓(𝑡)𝑒 −𝑖𝜔𝑡 𝑑𝑡 −∞ は「𝑓(𝑡)に含まれる振動の成分の単位振動数あたりの密度」という意味をもつが, 「𝑓(𝑡)を与えると𝐹(𝜔)が 決まる」すなわち関数から関数への演算と見ることもできる.この立場を表すのが ℱ 𝑓 = 𝐹(𝜔) という書き方である. フーリエ変換は線形演算である: ℱ 𝑎1 𝑓1 + 𝑎2 𝑓2 = 𝑎1 ℱ 𝑓1 + 𝑎2 ℱ 𝑓2 その物理的な意味は ・𝑓(𝑡)が𝑎倍になれば,どの振動数成分の振幅も𝑎倍になる ・𝑓1 (𝑡)と𝑓2 (𝑡)の和(重ね合わせ)で表せる信号の振動数𝜔の成分は,𝑓1 (𝑡)と𝑓2 (𝑡)の𝜔の成分の和である 問題 12 これまでにフーリエ変換の線型性を用いて計算した場面(たくさんある)を確認せよ. [搬送波を振幅変調したときのスペクトル] 振動数ω0で単振動する波に情報を乗せて送るときの方法として振幅変調(AM)という方法がある.それは, 情報が波形𝑓(𝑡)で与えられるとき,𝑓(𝑡)𝑒 𝑖𝜔0 𝑡 を送る方法である.たとえば AM 放送の短波ラジオや中波ラ ジオでは,振動数ω0のラジオの電波を搬送波とし,その振幅を音声信号に比例して変化させる. 𝑓(𝑡)𝑒 𝑖𝜔0𝑡 のフーリエ変換から,振幅変調によるスペクトルの変化を調べる.ℱ 𝑓(𝑡) = 𝐹(𝜔)とする. ∞ ∞ −∞ −∞ ℱ[𝑓(𝑡) × 𝑒 𝑖𝜔0𝑡 ] = ∫ 𝑓(𝑡) × 𝑒 𝑖𝜔0𝑡 𝑒 −𝑖𝜔𝑡 𝑑𝑡 = ∫ 𝑓(𝑡)𝑒 −𝑖(𝜔−ω0 )𝑡 𝑑𝑡 = 𝐹(𝜔 − 𝜔0 ) 𝐹(𝜔)のグラフが𝜔0だけ右にシフトしたことがわかる. 問題 13 −𝑎𝑡 ℎ(𝑡) = { 𝑒 𝑎𝑡 ⋯ 0 < 𝑡 (𝑎 > 0) (問題 05 参照)と𝑒 𝑖𝜔0 𝑡 の積のフーリエ変換を求めよ. −𝑒 ⋯ t < 0 問題 14 −𝑎𝑡 𝑔(𝑡) = { 𝑒𝑎𝑡 ⋯ 0 < 𝑡 (𝑎 > 0) (問題 05 参照)とcos(𝜔0 𝑡)の積のフーリエ変換を求めよ. 𝑒 ⋯t < 0 13 問題 15 周波数スペクトルを𝜔0だけシフトしたときは,もとの波形が𝑒 i𝜔0𝑡 倍され𝑓(𝑡) × 𝑒 i𝜔0𝑡 となることを逆フーリ エ変換により確かめよ. 以上の内容を言い換えると,振動スペクトルのシフト𝝎𝟎 は時間波形の位相変化𝒆𝒊𝝎𝟎 𝒕を引き起こす. これに対応して,時間波形のシフトはスペクトルの位相変化を引き起こす.実際, ∞ ∞ −∞ −∞ ℱ 𝑓(𝑡 − 𝑇) = ∫ 𝑓(𝑡 − 𝑇)𝑒 −𝑖𝜔𝑡 𝑑𝑡 = 𝑒 −𝑖𝜔𝑇 × ∫ 𝑓(𝑡 − 𝑇)𝑒 −𝑖𝜔(𝑡−𝑇) 𝑑𝑡 = 𝑒 −𝑖𝜔𝑇 𝐹(𝜔) となり,スペクトルの位相が𝜔𝑇だけずれる. たとえば𝑓(𝑡)が偶関数であるとすると𝐹(𝜔)は実数.このとき ℱ 𝑓(𝑡 − 𝑇) = 𝑒 −𝑖𝜔𝑇 𝐹(𝜔) = (cos 𝜔𝑇 − 𝑖 sin 𝜔𝑇 )𝐹(𝜔) = (cos 𝜔𝑇) 𝐹(𝜔) − 𝑖(sin 𝜔𝑇) 𝐹(𝜔) となり,スペクトルに実部と虚部が現れる(偶関数を横にずらすと,対称ではなくなることに対応) . 1.0 1.0 0.5 0.5 1.0 0.8 0.6 30 20 10 10 20 30 30 20 10 10 20 30 0.4 0.5 0.5 1.0 1.0 0.2 30 20 10 0 10 20 30 偶関数のスペクトル → 位相シフトした スペクトルの実部 と スペクトルの虚部 問題 16 時間波形cos Ω𝑡をどれだけシフトするとsin Ω𝑡になるか.cos Ω𝑡とsin Ω𝑡のスペクトルの関係を位相差の見地 から説明せよ. 問題 17 時間波形sin Ω𝑡をどれだけシフトするとcos Ω𝑡になるか.cos Ω𝑡とsin Ω𝑡のスペクトルの関係を位相差の見地 から説明せよ. 問題 18 sin(Ω𝑡 + 𝜙)のフーリエ変換を計算せよ(Ω, ϕ は定数). 問題 19 𝑡 > 0で𝑒 −𝑎𝑡 𝑒 𝑖Ω𝑡,t<0 で 0 という関数のグラフを描き,フーリエ変換を計算せよ. [導関数のフーリエ変換] 𝐹(𝜔)の逆フーリエ変換 14 𝑓(𝑡) = 1 ∞ ∫ 𝐹(𝜔)𝑒 +𝑖 𝜔 𝑡 𝑑𝜔 2π −∞ に注目しよう.この式は「時間波形𝑓(𝑡)が単振動𝑒 +𝑖 𝜔 𝑡 の寄せ集めで,ω ∼ ω + Δωに含まれる振幅が𝐹(𝜔) Δ𝜔 2𝜋 」 と述べている. 𝑑𝑓 𝑓(𝑡)の導関数 を求めるとき,それぞれの単振動の導関数を求めて寄せ集めればよいだろう(項別微 𝑑𝑡 分に相当し,積分が収束する必要がある) .これを実行すると 𝑑 +𝑖 𝜔 𝑡 𝑒 = 𝑖𝜔𝑒 +𝑖 𝜔 𝑡 𝑑𝑡 より d 1 ∞ 1 ∞ 𝑓(𝑡) = ∫ 𝐹(𝜔) 𝑖𝜔𝑒 +𝑖 𝜔 𝑡 𝑑𝜔 = ∫ 𝑖𝜔𝐹(𝜔) 𝑒 +𝑖 𝜔 𝑡 𝑑𝜔 → dt 2π −∞ 2π −∞ 𝑑𝑓 ℱ [ ] = 𝑖𝜔𝐹(𝜔) 𝑑𝑡 となる.導関数のフーリエ変換は,もとの関数のフーリエ変換に𝑖𝜔を掛けたものである. 問題 20 𝑑𝑓 導関数の定義 𝑑𝑡 = limΔt→0 𝑓(𝑡+Δ𝑡)−𝑓(𝑡) Δ𝑡 は,時間シフト𝑓(𝑡 + Δ𝑡)を含む線型演算である.定義式の右辺を用い 𝑑𝑓 てℱ [ 𝑑𝑡 ]を計算せよ(極限操作 lim とフーリエ変換の積分は順序を変えてよい) . Δt→0 高階の導関数についても同様である.たとえば ℱ[ 𝑑2 𝑓 ] = (𝑖𝜔)2 𝐹(𝜔) = −𝜔 2 𝐹(𝜔) 𝑑𝑡 2 である. 問題 21 𝜋 sin( Ωt)のフーリエ変換が (𝛿(𝜔 − Ω) − 𝛿(𝜔 + Ω))となること,および「導関数のフーリエ変換」を既知と 𝑖 して,cos( Ωt)のフーリエ変換を求めよ. cos( Ωt)のフーリエ変換を既知としてsin( Ωt)のフーリエ変換を, 同様に求めよ. [フーリエ変換を用いて微分方程式を解く] 微分方程式 𝑑2 𝑓 𝑑𝑓 +𝛾 + ω20 𝑓 = 0 2 𝑑𝑡 𝑑𝑡 を解くとき,𝑓 = 𝑒 𝜆𝑡を仮定して代入し(λ2 + 𝛾𝜆 + ω20 )𝑓 = 0 そこで特性方程式 (λ2 + 𝛾𝜆 + ω20 ) = 0 を解いて λ を決める・・・という方法がある.微分方程式の各項のフーリエ変換に注目すると背景が見え てくる. ℱ 𝑓 = 𝐹(𝜔)のときℱ [ 𝑑 2𝑓 𝑑𝑡 2 𝑑𝑓 𝑑 2𝑓 𝑑𝑡 𝑑𝑡 2 ]=−𝜔 2 𝐹, ℱ [ ] = 𝑖𝜔𝐹だから, +𝛾 𝑑𝑓 𝑑𝑡 + ω20 𝑓 = 0のフーリエ変換は 15 −𝜔 2 𝐹 + 𝑖𝛾𝜔𝐹 + 𝜔02 𝐹 = (−𝜔2 + 𝑖𝛾𝜔 + 𝜔02 )𝐹 = 0 → (𝜔 2 − 𝑖𝛾𝜔 − 𝜔02 ) = 0 よって,解のスペクトルとしては, ω± = 𝑖𝛾 ± √(𝑖𝛾)2 + 4𝜔02 𝑖𝛾 ± √4𝜔02 − 𝛾 2 = 2 2 だけが許される.こうして 𝛾 𝑓(𝑡) = 𝐴𝑒 𝑖𝜔+ 𝑡 + 𝐵𝑒 𝑖𝜔− 𝑡 = 𝐴𝑒 −2𝑡 𝑒 𝛾 2 2 𝑖𝑡√𝜔02−( ) 𝛾 + 𝐵𝑒 −2𝑡 𝑒 𝛾 2 2 −𝑖𝑡√𝜔02−( ) 𝛾 = 𝑒 −2 𝑡 (𝐴𝑒 𝛾 2 2 𝑖𝑡 √𝜔02−( ) + 𝐵𝑒 𝛾 2 2 −𝑖𝑡 √𝜔02−( ) ) ̅ = Bとなる. A = 𝛼 − 𝑖𝛽と書くと 𝑓(𝑡)が実数なら最右辺の括弧内が互いに複素共役になるのでA 𝛾 𝑓(𝑡) = 𝑒 −2 𝑡 ((𝛼 − 𝑖𝛽)𝑒 𝛾 2 𝑖𝑡√𝜔02−( ) 2 + (𝛼 + 𝑖𝛽)𝑒 𝛾 2 −𝑖𝑡√ 𝜔02−( ) 2 ) 𝛾 𝛾 2 𝛾 2 = 𝑒 −2 𝑡 (𝛼 cos [𝑡√𝜔02 − ( ) ] + 𝛽 sin [𝑡√𝜔02 − ( ) ]) 2 2 例題 10 𝑑2 𝑓 𝑑𝑡 2 𝑑𝑓 + 𝑑𝑡 − 6𝑓 = sin 𝑡 の解のフーリエ変換𝐹(𝜔)を求めよ 解 (−ω2 + 𝑖𝜔 − 6)𝐹(𝜔) = 𝑖π(δ(ω + 1) − δ(ω − 1)) → 𝐹(𝜔) = 𝑖π(δ(ω + 1) − δ(ω − 1)) δ(ω + 1) − δ(ω − 1) = 𝑖π (−ω2 + 𝑖𝜔 − 6) −(𝜔 + 2𝑖)(𝜔 − 3𝑖) 𝑖 −1 1 = 𝑖π(δ(ω + 1) − δ(ω − 1)) × { + } 5 𝜔 + 2𝑖 𝜔 − 3𝑖 = π 1 1 1 1 (δ(ω + 1) { − } − δ(ω − 1) { − }) 5 −1 + 2𝑖 −1 − 3𝑖 1 + 2𝑖 1 − 3𝑖 = π 1 𝑖 1 𝑖 (δ(ω + 1) (− − 7 ) − δ(ω − 1) ( − 7 )) 5 10 10 10 10 =− 𝜋 (δ(ω + 1)(1 + 7𝑖) + δ(ω − 1)(1 − 7𝑖)) 50 例題 11 例題 10 で得た𝐹(𝜔)を逆フーリエ変換し,微分方程式の解を求めよ. 解 𝑓(𝑡) = 1 ∞ −1 −1 𝑒 𝑖𝑡 + 𝑒 −𝑖𝑡 𝑒 𝑖𝑡 − 𝑒 −𝑖𝑡 ∫ 𝐹(𝜔)𝑒 𝑖𝜔𝑡 𝑑𝜔 = ((1 + 7𝑖)𝑒 −𝑖𝑡 + (1 − 7𝑖)𝑒 𝑖𝑡 ) = ( +7 ) 2𝜋 −∞ 100 50 2 2𝑖 =− 1 (cos 𝑡 + 7 sin 𝑡) 50 16 問題 22 デルタ関数のフーリエ変換がℱ δ(𝑡) = 1,単位階段関数のフーリエ変換がℱ θ(𝑡) = π𝛿(𝜔) + を既知として,ℱ [ 𝑑 𝑑𝑡 1 𝑖𝜔 となること 𝑑 𝜃] = ℱ 𝛿 したがって𝑑𝑡 𝜃 = 𝛿を確認せよ. [時間軸の圧縮と拡大の影響] 早送りで再生する音声は,特別な操作をしないと,ピッチ(音の高さ)が高くなる.オリジナルの信号が𝑓(𝑡) のとき,𝑎倍の早送りによって得られる信号は𝑓(𝑎𝑡)となる.ピッチが変わる様子をフーリエ変換により調 べる: ∞ ∞ −∞ −∞ 𝜔 ℱ 𝑓(𝑎𝑡) = ∫ 𝑓(𝑎𝑡)𝑒 −𝑖𝜔𝑡 𝑑𝑡 = ∫ 𝑓(𝑎𝑡)𝑒 −𝑖 𝑎 (𝑎𝑡) 𝜔 𝑑(𝑎𝑡) 1 ∞ 1 𝜔 = ∫ 𝑓(𝑡′)𝑒 −𝑖( 𝑎 )𝑡′ 𝑑𝑡′ = 𝐹 ( ) 𝑎 𝑎 −∞ 𝑎 𝑎 1 𝜔 ℱ 𝑓(𝑡) = 𝐹(𝜔) → ℱ 𝑓(𝑎𝑡) = 𝐹 ( ) 𝑎 𝑎 1 𝑎 𝜔 2.0 𝐹 ( )のグラフは 𝑎 1.5 ・𝐹(𝜔)のグラフを𝜔軸方向に𝑎倍に拡大し(原点は動かさない) , 1.0 ・縦軸方向に1/𝑎に縮小したもの 0.5 である. 𝑎倍で早送りした結果,どの振動数成分も振動数が𝑎倍のところに 0 2 4 6 8 10 移動し,グラフが𝑎倍に拡大する.ω ∼ ω + Δωの範囲に含まれる振幅𝐹(𝜔)Δωが𝑎ω ∼ 𝑎ω + 𝑎Δωの範囲に移 動したのだから,早送りのフーリエ変換は𝑎倍に「薄まり」縦軸方向に1/𝑎となる. §3.5 たたみ込み積分とフーリエ変換 𝑓(𝑡)と𝑔(𝑡)のたたみ込み積分(convolution)は ∞ 𝑓 ∗ 𝑔 = ∫ 𝑓(𝑡 − 𝜏)𝑔(𝜏)𝑑𝜏 −∞ と定義される.広範囲の応用がある.しかし積分計算をそのまま実行すると非常に手間がかかる(数値計 算の時間がかかる) .フーリエ変換を用いると容易に計算ができる. [システムの応答と,たたみ込み積分] たとえば,大ホールで「手を 1 回たたく」とその後しばらく残響で鳴り続ける.パルス入力( 「1 回たたく」 ) に対するシステムの応答(しばらく鳴り続ける)を衝撃応答という. 時刻𝑡 = 0のパルス入力の後の系の応答(残響の音の振幅)を𝑓(𝑡)としよう.入力がパルスでなく時間 的に変化する音(たとえば会話)𝑔(𝑡)のとき,部屋の残響の影響でどんな 音に聞こえるかを数式で表したものがたたみ込み積分になる.入力波形 𝑔(𝑡)をパルスに分解して考えると,𝑡 = 𝜏で入力の大きさが𝑔(τ)のパルスが 応答 g g f t t 17 来たとき,その後の応答が時刻𝑡において 𝑓(𝑡 − 𝜏)𝑔(𝜏) となる. システムの応答が線型のとき(すなわち,入力が𝑎倍になれば応答も𝑎倍,入力が 2 個の和のとき応答 はそれぞれの応答の和),連続的に変化する入力𝑔(𝑡)による応答は, 𝑓(𝑡 − 𝜏)𝑔(𝜏)の𝜏を過去から未来まで変化させて和をとることで与えられ る: ∞ ∫−∞ 𝑓(𝑡 − 𝜏)𝑔(𝜏)𝑑𝜏 例題 12 𝜏⋯0 < 𝜏 < 1 衝撃応答が階段関数𝑓(𝑡 − 𝜏) = 𝜃(𝑡 − 𝜏), 入力波形が𝑔(𝜏) = { のときの系の応答を求めよ. 他 0 解 ∞ 1 𝑓 ∗ 𝑔 = ∫ 𝑓(𝑡 − 𝜏)𝑔(𝜏)𝑑𝜏 = ⏟ −∞ 0 𝑔が 0 でない 𝑡 𝑡−1 ∫ 𝜃(𝑡 − 𝜏)𝜏𝑑𝜏 = ⏟ 次の等号で階段関数 範囲に積分区間 にあわせて変数 x を導入 を変更 する準備 𝑡 −∫ 𝜃(𝑡 − 𝜏)𝜏𝑑(𝑡 − 𝜏) 𝑡 𝑡 = ∫ 𝜃(𝑥)(𝑡 − 𝑥)𝑑𝑥 = ∫ 𝜃(𝑥)𝑑𝑥 − ∫ 𝜃(𝑥)𝑥𝑑𝑥 𝑡−1 𝑡−1 𝑡−1 0 ⋯𝑡 < 0 (∵ 𝜃 = 0) 1 2 1 2 𝑡 ∫ 1𝑑𝑥 − ∫ 1 ⋅ 𝑥𝑑𝑥 = t ⋅ t − t = t ⋯ 0 < 𝑡 < 1 (積分の下限が 0) 2 2 0 0 𝑡 𝑡 1 1 𝑡 ∫ 1𝑑𝑥 − ∫ 1 ⋅ 𝑥𝑑𝑥 = t − (t 2 − (t − 1)2 ) = ⋯1 < 𝑡 2 2 { 𝑡−1 𝑡−1 𝑡 = ⏟ 階段関数 の定義に 従って計算 𝑡 問題 23 𝑓(𝑡 − 𝜏) = 𝑒 −(𝑡−𝜏) 𝜃(𝑡 − 𝜏), 入力波形が𝑔(𝜏) = 𝜏 ⋯ 0 < 𝜏 < 1, 他 0 のときの系の応答は? mathematica 24 例題と問題↑のアニメーション 定積分の数値計算では,積分区間を N 個の小区間にわけて被積分関数の和をとるから,計算量は N に比例 ∞ する.しかし,たたみ込み積分では,1 個の t に対して∫−∞ 𝑓(𝑡 − 𝜏)𝑔(𝜏)𝑑𝜏で𝑁,異なる𝑁個の𝑡について計 算するので,全部で少なくともN2 に比例した計算量になり,N が大きくなると負担が増える. [たたみ込み積分の応用例] 音響システムの応答を例としてたたみ込み積分を説明したが, 「手ぶれ」がある画像もたたみこみ積分の例 である(図は前章を参照). また,2 個の関数𝑓(𝑡)と𝑔(𝑡)がどれくらい似ているかを評価するとき,横にずらしながら重ねてみて, 18 一番よく重なったところをとらえることが行われる(相関関数) . 「サインとコサインは 90 度ずらせばぴっ たり重なるから本質的には同じものと判定する」という具合である. 「横にずらして」 「重ねる(内積をと る) 」作業は,たたみこみ積分である. ランダムなノイズの性質を考察するとき,そのノイズを表す関数それ自身とのたたみ込み積分に注目 する(自己相関関数) . [たたみこみ積分にフーリエ変換を利用する] フーリエ変換を利用すると,たたみこみ積分の計算量を減らせる.また,衝撃応答(残響や手ぶれの性質) が既知のとき,たたみ込み積分の結果(残響がある部屋の録音やぶれた画像)から入力信号(もとの音声 やもとの画像)を取り出す作業にもフーリエ変換を利用することができる. 例題 13 畳み込み積分のフーリエ変換が,フーリエ変換の積となることを示せ. 解 ∞ ∞ ∞ ∞ −∞ −∞ −∞ −∞ ℱ 𝑓 ∗ 𝑔 = ∫ [∫ 𝑓(t − τ)g(τ)dτ] 𝑒 −𝑖𝜔𝑡 𝑑𝑡 = ∫ (∫ 𝑓(t − τ)𝑒 −𝑖𝜔𝑡 𝑑𝑡) g(τ)dτ ∞ ∞ −∞ −∞ = ∫ (∫ 𝑓(t − τ)𝑒 −𝑖𝜔(𝑡−𝜏)𝑑(𝑡 − 𝜏)) 𝑔(𝜏)𝑒 −𝑖𝜔𝜏 𝑑𝜏 ∞ ∞ −∞ −∞ = (∫ 𝑓(t − τ)𝑒 −𝑖𝜔(𝑡−𝜏) 𝑑(𝑡 − 𝜏)) × ∫ 𝑔(𝜏)𝑒 −𝑖𝜔𝜏 𝑑𝜏 = ℱ 𝑓 × ℱ 𝑔 たたみこみ積分のフーリエ変換は,それぞれのスペクトルを掛け合わせたものとなり,概念的にも非常に わかりやすい.入力がδ関数ならば系の応答は応答関数𝑓(𝑡)そのものである(𝑓(𝑡)を衝撃応答という) .δ 関数のフーリエ変換は 1 であり,時間的なδ関数にはすべての振動数が均一に含まれることを意味する. 𝑓(𝑡)のフーリエ変換𝐹(𝜔)と 1 の積をとると再び𝐹(𝜔)だから,その逆変換は衝撃応答𝑓(𝑡)となっている. 入力の時間波形𝑔(𝑡)は,そのフーリエ変換すなわち振幅𝐺(𝜔)で振動数𝜔の成分を含む.線型応答をす るので,成分ごとに考えて重ねあわせればよい:振動数𝜔の入力の振幅が𝐺(𝜔)で,その振動数の応答が 𝐺(𝜔) × 𝐹(𝜔)となる.その逆フーリエ変換を求めれば時間波形,すなわち,たたみ込み積分を得る. たたみ込み積分のフーリエ変換𝐺(𝜔) × 𝐹(𝜔)と,システムの衝撃応答のフーリエ変換𝐹(𝜔)が既知であ れば,単なる割り算で𝐺(𝜔)が求まり,これを逆変換すれば入力波形を得る. mathematica 25 フーリエ変換を用いてたたみ込み積分を実行 問題 24 1 𝑓(𝑡) ⋅ 𝑔(𝑡)のフーリエ変換は,各関数のフーリエ変換のたたみ込み積分(の2𝜋倍)となることを示せ. 19 §3.6 パーセバルの等式 2 章でフーリエ級数におけるパーセバルの等式を学んだ.同等の内容がフーリエ変換でも成立する: ∞ 1 𝑇/2 |𝑐𝑛 |2 ∫ |𝑓(𝑡)|2 𝑑𝑡 = ∑ 𝑇 −𝑇/2 𝑛=−∞ ∞ ∫ |𝑓(𝑡)|2 𝑑𝑡 = → −∞ 1 ∞ ∫ |𝐹(𝜔)|2 𝑑𝜔 2𝜋 −∞ フーリエ係数がフーリエ変換に対応することを思いだそう: 𝑇 ∞ 1 2 𝑐𝑛 = ∫ 𝑓(𝑡)𝑒 −𝑖 𝑛 Δ𝜔 𝑡 𝑑𝑡 , 𝑇 −𝑇 𝐹(𝜔) = ∫ 𝑓(𝑡)𝑒 −𝑖𝜔𝑡 𝑑𝑡 −∞ 2 フーリエ変換のパーセバルの等式を証明には,たたみこみ積分のフーリエ変換を利用する: ∞ ∫ 𝑓(𝑡 − 𝜏)𝑔(𝜏)𝑑𝜏 = −∞ 1 ∞ ∫ 𝐹(𝜔)𝐺(𝜔)e𝑖𝜔𝑡 dω 2π −∞ ̅̅̅̅̅̅̅さらに t = 0とおくと 上式の右辺で𝐺(𝜔) = 𝐹(𝜔) ∞ ∞ 1 ∞ ̅̅̅̅̅̅̅e0 dω = 1 ∫ 𝐹(𝜔)𝐹(𝜔) ̅̅̅̅̅̅̅dω = 1 ∫ |𝐹(𝜔)|2 𝑑𝜔 ∫ 𝐹(𝜔)𝐹(𝜔) 2π −∞ 2π −∞ 2𝜋 −∞ ̅̅̅̅̅̅̅の逆変換を調べると となり,題意(黄色)の式の右辺が現れる.𝐺の代わりの𝐹(𝜔) ∞ 1 ∞ ̅̅̅̅̅̅̅ 𝑖𝜔𝑡 1 ∞ ̅̅̅̅̅̅̅ −𝑖𝜔(−𝑡) 1 ∞ ̅̅̅̅̅̅̅ ̅̅̅̅̅̅̅̅̅ 1 ̅̅̅̅̅̅̅̅̅̅̅̅̅̅̅̅̅̅̅̅̅̅̅̅̅̅ ̅̅̅̅̅̅̅̅ ∫ 𝐹(𝜔) 𝑒 𝑑𝜔 = ∫ 𝐹(𝜔) 𝑒 𝑑𝜔 = ∫ 𝐹(𝜔) 𝑒 𝑖𝜔(−𝑡) 𝑑𝜔 = ∫ 𝐹(𝜔) 𝑒 𝑖𝜔(−𝑡) 𝑑𝜔 = 𝑓(−𝑡) 2π −∞ 2π −∞ 2π −∞ 2π −∞ である.そこで,𝑔(𝜏) = ̅̅̅̅̅̅̅̅ 𝑓(−𝜏),さらにt = 0とおくと ∞ ∞ ∞ ∞ −∞ −∞ −∞ −∞ ̅̅̅̅̅̅̅̅𝑑𝜏 = ∫ 𝑓(−𝜏)𝑓(−𝜏) ̅̅̅̅̅̅̅̅𝑑𝜏 = ∫ |𝑓(−𝜏)|2 𝑑𝜏 ∫ 𝑓(𝑡 − 𝜏)𝑔(𝜏)𝑑𝜏 = ∫ 𝑓(0 − 𝜏)𝑓(−𝜏) ここで−𝜏 = τ′と置換すれば ∞ −∞ −∞ τ′ =∞ ∫ |𝑓(−𝜏)|2 𝑑𝜏 = ∫ ∞ |𝑓(𝜏 ′ )|2 𝑑(−𝜏 ′ ) = ∫ |𝑓(𝜏 ′ )|2 𝑑𝜏 ′ −∞ よって ∞ ∴ ∫ |𝑓(𝑡)|2 𝑑𝑡 = −∞ 1 ∞ ∫ |𝐹(𝜔)|2 dω 2π −∞ §3.7 補遺(ファインマンの処方) 𝑓(𝑡)の無限大における性質によってはフーリエ変換(の積分)が収束しない場合がある.この積分を出来 る限り救うためにフーリエ変換の定義を拡張する:ϵ > 0とし,𝑡の正の区間でe−𝑖 𝜔𝑡 → e−𝑖 𝜔𝑡−𝜖𝑡 , 負の区間 でe−𝑖 𝜔𝑡 → e−𝑖 𝜔𝑡+𝜖𝑡 とする.lim𝑡→−0 e𝜖𝑡 → 0, lim𝑡→+0 e−𝜖𝑡 → 0だから,𝑓(𝑡)が多項式程度の発散をしてもフ ーリエ変換は収束する.式で書くと,フーリエ変換の拡張定義は ∞ 𝐹(𝜔) = ∫ 𝑓(𝑡)e−𝑖 𝜔𝑡 𝑑𝑡 −∞ 0 ∞ → 𝐹𝜖 (𝜔) = ∫ 𝑓(𝑡)e−𝑖 (𝜔+𝑖𝜖)𝑡 𝑑𝑡 + ∫ 𝑓(𝑡)e−𝑖 (𝜔−𝑖𝜖)𝑡 𝑑𝑡 −∞ 0 である.通常のフーリエ変換では,積分を実行した後で 𝜖 → 0 の極限をとると同じ結果であり,これを 20 フーリエ変換の自然な拡張と考える. 逆変換は 1 0 1 ∞ ′ ′ ∫ 𝐹𝜖 (𝜔)𝑒 𝑖𝜔(𝑡−𝑖𝜖 ) 𝑑𝜔 + lim ∫ 𝐹𝜖 (𝜔)𝑒 𝑖𝜔(𝑡+𝑖𝜖 ) 𝑑𝜔 } ϵ→0 2π ϵ→0 2π −∞ 0 ′ ′ 𝑓(𝑡) = { lim ϵ →0 ϵ →0 この式は次の δ 関数の定義 0 ∞ 1 ′ ′ [∫ 𝑒 𝑖𝜔(𝑡−𝑖𝜖 ) 𝑑𝜔 + ∫ 𝑒 𝑖𝜔(𝑡+𝑖𝜖 ) 𝑑𝜔 ] ϵ′→0 2π −∞ 0 𝛿(𝑡) = lim が成り立つことから得られる.複素積分により証明は比較的簡単: 0 ∞ 1 1 1 1 ′ ′ [∫ 𝑒 𝑖𝜔(𝑡−𝑖𝜖 ) 𝑑𝜔 + ∫ 𝑒 𝑖𝜔(𝑡+𝑖𝜖 ) 𝑑𝜔 ] = [ − ] 2π −∞ 2𝜋𝑖 𝑡 − 𝑖𝜖′ 𝑡 + 𝑖𝜖′ 0 𝑓(𝑧) = 1 ∞ 𝑓(𝑧′) 𝑓(𝑧′) ∫ [ − ] 𝑑𝑧′ 2𝜋𝑖 −∞ 𝑧 − 𝑧′ − 𝑖𝜖′ 𝑧 − 𝑧′ + 𝑖𝜖′ §3.8 補遺(振幅スペクトルと位相スペクトル) 信号𝑓(𝑡)にどのような振動数の振動がどれくらいの振幅で含まれているかを示すのがスペクトルである. 𝑓(𝑡)のフーリエ変換𝐹(𝜔)の実部Re 𝐹(𝜔) と虚部Im 𝐹(ω) のペアがスペクトルとなる.𝑓(𝑡)が実数の場合に は,Re 𝐹(𝜔) は𝑓(𝑡)のフーリエ・コサイン変換,Im 𝐹(ω) は𝑓(𝑡)のフーリエ・サイン変換(の符号を反転 したもの)に他ならず,𝑓(𝑡)が偶関数ならスペクトルは実部だけになり,奇関数なら虚部だけになる. Im 𝐹 一方,𝐹(𝜔) = |𝐹(ω)|𝑒 𝑖𝜙(𝜔) と極形式に変換すると |𝐹(ω)|が振幅スペクトル,𝜙(𝜔) = arctan Re 𝐹 が各 振動数の位相スペクトルとなる.位相スペクトルは,値を−π < ϕ < πに制限した折り返し表示もある. 例題 14 𝑑 1⋯− < 𝑡 < 幅𝑑,高さ 1 の単一パルス 𝑓(𝑡) = { 0 ⋯ その他 2 𝑑 2 のフーリエ変換𝐹(𝜔) = 𝑑 × 𝜔𝑑 ) 2 𝜔𝑑 ( ) 2 sin( の振幅スペクトルお よび位相スペクトルを求めよ. 解 𝜔𝑑 ) 2 | , ϕ(ω) = 0 |𝐹(ω)| = 𝑑 × | 𝜔𝑑 ( ) 2 sin ( 振幅スペクトル 位相スペクトルは,どこでも 0 21 例題 15 例題 14 のパルスを d/2 だけシフトしたときフーリエ変換は位相が𝑒 −𝑖𝜔𝑑/2 だけ変化する.このパルスの振幅 スペクトルと位相スペクトルを求めよ. 解 |𝐹(ω)| = 𝑑 |𝑒 −𝑖 2 𝜔 | × 𝑑 ⏟ 常に1 𝜔𝑑 ) 2 | , ϕ(ω) = − 𝑑 𝜔 ×| 𝜔𝑑 2 ( ) 2 sin ( 振幅スペクトルは例題 14 と同じ,位相スペクトルを折り返して表示 例題 16 𝑓(𝑡) = { 𝑒 −𝑎𝑡 ⋯ 0 < 𝑡 0 ⋯ その他 (𝑎 > 0) のフーリエ変換𝐹(𝜔)は,Re 𝐹(𝜔) = 𝑎 𝑎 2+𝜔 2 , Im 𝐹(𝜔) = −𝜔 𝑎 2+𝜔 2 である.振幅および位相スペクトルを示せ. 解 問題解答 問題 01 例題 01 では,虚部のスペクトルに負の振動数が現れる.負の振動数は何を意味するか. また,原点について対称となるのはどのような意味があるか. 解 正と負の振動数は複素平面上の時計回りと反時計回りの回転運動に対応し,同じ振動数の正と負がペアに なり単振動を表す.この例題の関数に限らず実数値をとる波形をフーリエ展開したとき,𝑐−𝑛 = ̅̅̅ 𝑐𝑛 すなわ ち正負の成分は互いに複素共役であり,虚部は,符号が反対で同じ大きさとなるため,奇関数のグラフと なる.これに対し実部は偶関数である. 22 問題 02 スペクトル密度を𝑐𝑛 𝑇 = 𝐹(𝜔𝑛 )とせず,(i) 𝑐𝑛 𝑇 = 2𝜋 𝐹(𝜔𝑛 ) , (ii) 𝑐𝑛 𝑇 = √2𝜋 𝐹(𝜔𝑛 )としたとき,フーリエ変 換とフーリエ逆変換の式はどのようになるか.これらの定義も頻繁に用いられるので,各文献で使われる 定義を確認することが肝要である. 解 (i) ∞ ∞ 𝑐𝑛 𝑇 𝑖 ω 𝑡 𝑒 n Δ𝜔 = ∑ 𝐹(𝜔𝑛 )𝑒 𝑖 ωn 𝑡 Δ𝜔 → 𝑓(𝑡) = ∫ 𝐹(𝜔)𝑒 +𝑖 𝜔 𝑡 𝑑𝜔 𝑛=−∞ 2π 𝑛=−∞ −∞ ∞ 𝑓(𝑡) = ∑ 𝑇 𝐹(𝜔𝑛 ) = 1 1 2 𝑇𝑐𝑛 → 𝐹(𝜔) = ∫ 𝑓(𝑡)𝑒 −𝑖 𝜔𝑛 𝑡 𝑑𝑡 2𝜋 2𝜋 −𝑇 2 (ii) ∞ ∞ 𝑐𝑛 𝑇 𝑖 ω 𝑡 𝐹(𝜔𝑛 ) 𝑖 ω 𝑡 1 𝑒 n Δ𝜔 = ∑ 𝑒 n Δ𝜔 → 𝑓(𝑡) = ∫ 𝐹(𝜔)𝑒 +𝑖 𝜔 𝑡 𝑑𝜔 𝑛=−∞ 2π 𝑛=−∞ √2𝜋 √2𝜋 −∞ ∞ 𝑓(𝑡) = ∑ 𝐹(𝜔𝑛 ) = 1 √2𝜋 𝑇𝑐𝑛 → 𝐹(𝜔) = 𝑇 2 1 √2𝜋 ∫ 𝑓(𝑡)𝑒 −𝑖 𝜔𝑛 𝑡 𝑑𝑡 − 𝑇 2 問題 03 𝑓(𝑡)が実数のとき ̅̅̅̅̅̅̅ (i)𝐹(−𝜔) = 𝐹(𝜔) (ii)フーリエ・コサイン(サイン)変換は ω の偶(奇)関数 (iii)𝑓(𝑡)が偶(奇)関数なら𝐹(𝜔)は実数(純虚数) を示せ. 解 (i) ∞ ∞ ∞ ∞ −∞ −∞ −∞ −∞ ̅̅̅̅̅̅̅ 𝐹(−𝜔) = ∫ 𝑓(𝑡) cos(−𝜔𝑡) 𝑑𝑡 + 𝑖 ∫ 𝑓(𝑡) sin(−𝜔𝑡) 𝑑𝑡 = ∫ 𝑓(𝑡) cos 𝜔𝑡 𝑑𝑡 − 𝑖 ∫ 𝑓(𝑡) sin 𝜔𝑡 𝑑𝑡 = 𝐹(𝜔) (ii) ∞ ∞ −∞ −∞ 𝐹C (−𝜔) = ∫ 𝑓(𝑡) cos(−𝜔𝑡) 𝑑𝑡 = ∫ 𝑓(𝑡) cos(𝜔𝑡) 𝑑𝑡 = 𝐹C (𝜔) ∞ ∞ −∞ −∞ 𝐹S (−𝜔) = ∫ 𝑓(𝑡) sin(−𝜔𝑡) 𝑑𝑡 = − ∫ 𝑓(𝑡) sin(𝜔𝑡) 𝑑𝑡 = −𝐹C (𝜔) (iv) ∞ 𝑓(𝑡)が偶関数のとき,奇関数sin(𝜔𝑡)との積は奇関数.フーリエサイン変換∫−∞ 𝑓(𝑡) sin(𝜔𝑡) 𝑑𝑡は,原点 について対称な積分区間で奇関数を積分するため 0 となり,フーリエ変換はフーリエコサイン変換と一致 ∞ し,実数となる.𝑓(𝑡)が奇関数のとき,偶関数cos(𝜔𝑡)との積は奇関数となり∫−∞ 𝑓(𝑡) cos(𝜔𝑡) 𝑑𝑡 = 0, した がってフーリエ変換はフーリエサイン変換の𝑖倍すなわち純虚数となる. 23 問題 04 例題 02 のフーリエ変換𝐹(𝜔)は実数である.それは𝑓(𝑡)のどのような性質によるか. 解 𝑓(𝑡)が偶関数だから. 問題 05 −𝑎𝑡 (i) 𝑔(𝑡) = { 𝑒𝑎𝑡 ⋯ 0 < 𝑡 𝑒 ⋯t < 0 −𝑎𝑡 (ii) ℎ(𝑡) = { 𝑒 𝑎𝑡 ⋯ 0 < 𝑡 −𝑒 ⋯ t < 0 (𝑎 > 0) (𝑎 > 0)の関数形を例題 03 と比較 し,𝑔とℎの対称性に留意せよ. 𝑓(𝑡)のフーリエ変換をℱ 𝑓 と書く. ℱ 𝑔 ,ℱ ℎ を求めよ. 解 0 ∞ ℱ 𝑔 = ∫ 𝑒 +𝑎𝑡 𝑒 −𝑖𝜔𝑡 𝑑𝑡 + ∫ 𝑒 −𝑎𝑡 𝑒 −𝑖𝜔𝑡 𝑑𝑡 = −∞ 0 = 1 1 2𝑎 + = 𝑎 − 𝑖𝜔 𝑎 + 𝑖𝜔 𝑎2 + 𝜔 2 0 ∞ ℱ ℎ = − ∫ 𝑒 +𝑎𝑡 𝑒 −𝑖𝜔𝑡 𝑑𝑡 + ∫ 𝑒 −𝑎𝑡 𝑒 −𝑖𝜔𝑡 𝑑𝑡 = −∞ 0 = 1 −1 0 ∞ [𝑒 (𝑎−𝑖𝜔)𝑡 ]−∞ + [𝑒 −(𝑎+𝑖𝜔)𝑡 ]0 (𝑎 − 𝑖𝜔) (𝑎 + 𝑖𝜔) −1 1 −1 1 0 [𝑒 (𝑎−𝑖𝜔)𝑡 ]−∞ + + = + (𝑎 − 𝑖𝜔) 𝑎 + 𝑖𝜔 𝑎 − 𝑖𝜔 𝑎 + 𝑖𝜔 −2𝑖𝜔 𝑎2 + 𝜔 2 ℱ 𝑔 は実数(𝑔が偶関数) ,ℱ ℎ は純虚数(ℎが奇関数)となることに注意せよ.例題 03 と比較すると 1 𝑓(𝑡) = (𝑔(𝑡) + ℎ(𝑡)) 2 すなわち𝑓(𝑡)を偶関数と奇関数から構成したとき,そのフーリエ変換𝐹は 1 1 1 𝐹 = ℱ [2 (𝑔 + ℎ)] = 2 ℱ 𝑔 + 2 ℱ ℎ となり,右辺の各項が𝐹の実部と虚部を与える. 問題 06 ∞ ガウス関数のフーリエ変換𝐹(𝜔) = ∫−∞ 𝑒 −𝑎 法を適用できるように変形することで, 𝑑 𝑑𝜔 2𝑡 2 𝑒 −𝑖𝜔𝑡 𝑑𝑡を𝜔で微分し(微分してから積分してよい) ,部分積分 𝐹(𝜔) + 𝜔 2𝑎 2 𝐹(𝜔) = 0を導け.𝐹(0) = √𝜋 を用いてこの微分方程式 𝑎 の特解を求めよ. 解 24 ∞ ∞ 𝑑 𝑑 ∞ −𝑎2𝑡 2 −𝑖𝜔𝑡 1 𝑑 2 2 2 2 𝐹(𝜔) = ∫ 𝑒 𝑒 𝑑𝑡 = ∫ 𝑒 −𝑎 𝑡 (−𝑖𝑡)𝑒 −𝑖𝜔𝑡 𝑑𝑡 = −𝑖 ∫ ( × 𝑒 −𝑎 𝑡 ) 𝑒 −𝑖𝜔𝑡 𝑑𝑡 2 ⏟ 𝑑𝜔 𝑑𝜔 −∞ −2𝑎 𝑑𝑡 −∞ −∞ 2 𝑡2 𝑡𝑒 −𝑎 = ∞ ∞ 𝑖 𝑑 −𝑎2𝑡 2 −𝑖𝜔𝑡 𝑖 2 2 −𝑎 2𝑡 2 −𝑖𝜔𝑡 ∞ ∫ ( 𝑒 ) 𝑒 𝑑𝑡 = {[𝑒 𝑒 ] − (−𝑖𝜔) ∫ 𝑒 −𝑎 𝑡 𝑒 −𝑖𝜔𝑡 𝑑𝑡} −∞ 2𝑎2 −∞ 𝑑𝑡 2𝑎2 −∞ = −𝜔 𝐹(𝜔) 2𝑎2 𝜔2 𝑑𝐹 𝜔𝑑𝜔 𝑑𝐹 𝜔 𝜔2 − =− 2 → ∫ = − ∫ 2 𝑑𝜔 → log 𝐹 = − 2 + 𝐶 → 𝐹 = 𝐴𝑒 4𝑎2 , 𝐹 2𝑎 𝐹 2𝑎 4𝑎 ∞ 𝐴 = 𝐹(0) = ∫ 𝑒 −𝑎 2𝑡 2 −∞ 𝑑𝑡 = √𝜋 𝑎 問題 07 𝜔2 𝐹(𝜔) = 𝑒 −4𝑎2 の逆フーリエ変換が 𝑎 √𝜋 e−𝑎 2𝑡 2 となることを示せ. 解 例題 04 の結果 ∞ ∫ 𝑒 −𝑎 2𝑡 2 2 𝑒 −𝑖𝜔𝑡 𝑑𝑡 = −∞ √𝜋 − ω 2 e 4𝑎 𝑎 を既知とし,変数の置き換えにより計算を省略する: 𝜔と𝑡を交換する作業になり混同が起きることを危惧し,変数の記号を𝑡 → 𝑥, ω → 𝑘と変更する: ∞ ∫ 𝑒 −𝑎 2𝑥 2 2 𝑒 −𝑖𝑘𝑥 𝑑𝑥 = −∞ √𝜋 − 𝑘 2 e 4𝑎 𝑎 1 𝑥 → 𝑡, 𝑘 → −𝜔 および𝑎 → 2𝑏の置き換えにより ∞ ∫ 𝑒 − 𝑡2 4𝑏 2 𝑒 𝑖𝑡𝜔 𝑑𝑡 −∞ = 2𝑏√𝜋 e−𝑏 2𝑡 2 となる.左辺の積分とフーリエ変換の定義式 𝑓(𝑡) = 1 ∞ − 𝜔22 𝑖𝜔𝑡 ∫ 𝑒 4𝑎 𝑒 𝑑𝜔 2π −∞ 1 とを比べると,因子 倍および𝑏 → 𝑎の置き換えで同じ式になるので,積分の結果でも同じ置き換えをする: 2π 𝑓(𝑡) = 1 𝑎 −𝑎2𝑡 2 2 2 × 2𝑎√𝜋 e−𝑎 𝑡 = e 2𝜋 √𝜋 問題 08 ∞ 積分することを「寄せ集める」と考え,∫−∞ 1 2𝜋 ′ 𝑒 𝑖𝜔⋅(𝑡−𝑡 ) 𝑑𝜔を複素平面上の操作として観察し,𝑡 ≠ 𝑡′のとき 積分が 0 となり,𝑡 = 𝑡′のとき無限大に発散することを確認せよ. 解 ′ 被積分関数𝑒 𝑖𝜔⋅(𝑡−𝑡 )は単位円上の点(原点から単位円上の点に向かうベクトル)を 25 表す. t ≠ t ′ のとき積分を実行するとωの値が変わり角𝜔 ⋅ (𝑡 − 𝑡 ′ )が変化する.ω: −∞ → ∞だからベクトルの 先端は単位円上を何度も周り,どの向きのベクトルも均等に加算されるだろう.ちょうど反対向きのベク トルのペアごとに和をとると,0 を何度足しても 0.δ(t − t ′ ) = 0を確認した. ∞ ′ t = t ′ のときωによらず𝑒 𝑖𝜔⋅(𝑡−𝑡 ) = 1であり,∫−∞ 1 2𝜋 𝑑𝜔 = ∞.δ(0) = ∞を確認した. 問題 09 𝑓(𝑡) = cos Ω𝑡のフーリエ変換を計算せよ. 解 ∞ 𝑒 𝑖Ω𝑡 + 𝑒 −𝑖Ω𝑡 −𝑖𝜔𝑡 1 ∞ 1 ∞ −𝑖(𝜔+Ω)𝑡 𝑒 𝑑𝑡 = 𝜋 ( ∫ 𝑒 −𝑖(𝜔−Ω)𝑡 𝑑𝑡 − ∫ 𝑒 𝑑𝑡) 2 2𝜋 −∞ 2𝜋 −∞ −∞ 𝐹(𝜔) = ∫ cos 𝛺𝑡 𝑒 −𝑖𝜔𝑡 𝑑𝑡 = ∫ −∞ ∞ = 𝜋(𝛿(𝜔 − Ω) + 𝛿(𝜔 + Ω)) 問題 10 𝑓(𝑡) = 1のフーリエ変換を求め,その結果を物理的な意味として説明せよ 解 ∞ ∞ −∞ −∞ 𝐹(𝜔) = ∫ 1 ⋅ 𝑒 −𝑖𝜔𝑡 𝑑𝑡 = ∫ 𝑒 −𝑖(𝜔−0)𝑡 𝑑𝑡 = 2πδ(ω − 0) = 2πδ(ω) 𝑓(𝑡) = 1は,いわゆる直流信号,すなわちいつまでも同じ値を保つ.その振動数は 0(だけ)である.実際, 𝐹(𝜔) = 2πδ(ω)となる. 問題 11 デルタ関数δ(ω − Ω)の逆フーリエ変換を求めよ. 解 1 ∞ 1 𝑖𝛺𝑡 ∫ 𝛿(𝜔 − 𝛺)𝑒 𝑖𝜔𝑡 𝑑𝜔 = 𝑒 2𝜋 −∞ 2𝜋 問題 12 これまでにフーリエ変換の線型性を用いて計算した場面(たくさんある)を確認せよ. 解 略 問題 13 −𝑎𝑡 ℎ(𝑡) = { 𝑒 𝑎𝑡 ⋯ 0 < 𝑡 (𝑎 > 0) (問題 05 参照)と𝑒 𝑖𝜔0 𝑡 の積のフーリエ変換を求めよ. −𝑒 ⋯ t < 0 解 26 ℱℎ = −2𝑖𝜔 −2𝑖(𝜔 − 𝜔0 ) → ℱ[ℎ(𝑡)𝑒 𝑖𝜔0𝑡 ] = 2 2 2 𝑎 +𝜔 𝑎 + (𝜔 − 𝜔0 )2 問題 14 −𝑎𝑡 𝑔(𝑡) = { 𝑒𝑎𝑡 ⋯ 0 < 𝑡 (𝑎 > 0) (問題 05 参照)とcos(𝜔0 𝑡)の積のフーリエ変換を求めよ. 𝑒 ⋯t < 0 解 1 1 2𝑎 2𝑎 ℱ 𝑔 cos 𝜔0 𝑡 = {ℱ[𝑔(𝑡)𝑒 𝑖𝜔0 𝑡 ] + ℱ[𝑔(𝑡)𝑒 −𝑖𝜔0𝑡 ]} = { 2 + 2 } 2 2 2 𝑎 + (𝜔 − 𝜔0 ) 𝑎 + (𝜔 + 𝜔0 )2 = 𝑎{ 1 1 + 2 } : 実数なのは𝑔 cos 𝜔0 𝑡 が偶関数だから. 2 + (𝜔 − 𝜔0 ) 𝑎 + (𝜔 + 𝜔0 )2 𝑎2 cos(𝜔0 𝑡)のスペクトルはω = ±ω0に鋭いピークをもつ.この 2 つのピークを中心として𝑔のスペクトルがあ り重なる. 1.0 1.0 0.8 0.5 0.6 4 2 2 4 0.4 0.5 0.2 1.0 30 𝑔(𝑡) cos 𝜔0 𝑡 20 10 0 10 20 30 ℱ 𝑔 cos 𝜔0 𝑡 問題 15 周波数スペクトルを𝜔0だけシフトしたときは,もとの波形が𝑒 i𝜔0𝑡 倍され𝑓(𝑡) × 𝑒 i𝜔0𝑡 となることを逆フーリ エ変換により確かめよ. 解 1 ∞ 1 ∞ 1 ∞ ∫ 𝐹(𝜔 − 𝜔0 )𝑒 𝑖𝜔𝑡 𝑑𝜔 = ∫ 𝐹(𝜔 − 𝜔0 )𝑒 𝑖(𝜔−𝜔0)𝑡 𝑒 𝑖Ω𝑡 𝑑(𝜔 − 𝜔0 ) = 𝑒 𝑖𝜔0 𝑡 ∫ 𝐹(𝜔′)𝑒 𝑖ω′𝑡 𝑑𝜔′ 2π −∞ 2π −∞ 2π −∞ = 𝑒 𝑖𝜔0𝑡 𝑓(𝑡) 問題 16 時間波形cos Ω𝑡をどれだけシフトするとsin Ω𝑡になるか.cos Ω𝑡とsin Ω𝑡のスペクトルの関係を位相差の見地 から説明せよ. 解 cos Ω (t − π π 2Ω ) = sin Ω𝑡だから,必要なシフトは時間軸を右向きに . 2Ω ℱ cos Ω𝑡 = 𝜋(𝛿(𝜔 − Ω) + 𝛿(𝜔 + Ω)), であり,説明すべきことは 𝑒 𝛿(𝜔 − Ω) × 𝑒 π −𝑖𝜔 2Ω −𝑖𝜔 π 2Ω 一方,例題 05 と問題 08 の結果は ℱ sin Ω𝑡 = 𝑖𝜋𝛿(𝜔 + Ω) − 𝑖𝜋𝛿(𝜔 − Ω) × ℱ cos Ω𝑡 = ℱ sin Ω𝑡 である. π では,𝜔 = Ωのときだけ𝛿(𝜔 − Ω) ≠ 0だから,第 2 因子の𝑒 −𝑖𝜔2Ω で𝜔 = Ωを代入して 27 も同じ式となる: π π 𝑖𝜋 𝛿(𝜔 − Ω)𝑒 −𝑖𝜔2Ω = 𝛿(𝜔 − Ω)𝑒 −𝑖Ω2Ω = 𝛿(𝜔 − Ω)𝑒 − 2 = 𝛿(𝜔 − Ω) × (−1) = −𝑖 𝛿(𝜔 − Ω) 同様に π 𝛿(𝜔 + Ω)𝑒 −𝑖𝜔2Ω = +𝑖 𝛿(𝜔 + Ω) となり ℱ [cos Ω (𝑡 − π π π )] = 𝑒 −𝑖𝜔2Ω × ℱ cos Ω𝑡 = 𝑒 −𝑖𝜔2Ω × 𝜋(𝛿(𝜔 − Ω) + 𝛿(𝜔 + Ω)) = −𝑖 𝛿(𝜔 − Ω) + 𝑖 𝛿(𝜔 + Ω) 2Ω = ℱ sin Ω𝑡 を得る. 問題 17 時間波形sin Ω𝑡をどれだけシフトするとcos Ω𝑡になるか.cos Ω𝑡とsin Ω𝑡のスペクトルの関係を位相差の見地 から説明せよ. 解 略 問題 18 sin(Ω𝑡 + 𝜙)のフーリエ変換を計算せよ(Ω, ϕ は定数). 解 𝜙 sin(Ω𝑡 + 𝜙) = sin (Ω (𝑡 + )) Ω 𝜙 𝜙 と変形すると,sin(Ω𝑡)を時間軸上でΩだけ左にシフトしたものであり,sin(Ω𝑡)のフーリエ変換を𝑒 𝑖𝜔×Ω 倍し たものである: 𝜙 𝜙 𝜙 𝑖𝜋(𝛿(𝜔 + Ω) − 𝛿(𝜔 − Ω)) × 𝑒 𝑖𝜔Ω = ⏟ 𝑖𝜋 (𝛿(𝜔 + Ω)𝑒 𝑖(−Ω)Ω − 𝛿(𝜔 − Ω)𝑒 𝑖(+Ω)Ω ) ∗ = 𝑖𝜋(𝛿(𝜔 + Ω)𝑒 −𝑖𝜙 − 𝛿(𝜔 − Ω)𝑒 𝑖𝜙 ) ∗ 𝜙 𝛿(𝜔 ± Ω)は𝜔 = ∓Ω のときだけ 0 と異なるから𝑒 𝑖𝜔Ω の ω に ∓ Ω を代入 別解として,直接計算: ∞ ∞ ∞ −∞ −∞ −∞ 𝐹(𝜔) = ∫ sin(𝛺𝑡 + ϕ) 𝑒 −𝑖𝜔𝑡 𝑑𝑡 = cos ϕ ∫ sin(𝛺𝑡) 𝑒 −𝑖𝜔𝑡 𝑑𝑡 + sin ϕ ∫ cos(𝛺𝑡) 𝑒 −𝑖𝜔𝑡 𝑑𝑡 = cos ϕ {𝑖𝜋𝛿(𝜔 + Ω) − 𝑖𝜋𝛿(𝜔 − Ω)} + sin ϕ {𝜋(𝛿(𝜔 − Ω) + 𝛿(𝜔 + Ω))} = 𝑖 π {e−iϕ 𝛿(𝜔 + Ω) − eiϕ𝛿(𝜔 − Ω)} 問題 19 𝑡 > 0で𝑒 −𝑎𝑡 𝑒 𝑖Ω𝑡,t<0 で 0 という関数のグラフを描き,フーリエ変換を計算せよ. 解 28 例題 03 の「𝑡 > 0で𝑒 −𝑎𝑡,t<0 で 0 のフーリエ変換 1 𝑎+𝑖𝜔 」を既知とする.𝑒 −𝑎𝑡 𝑒 𝑖Ω𝑡 は「𝑒 𝑖Ω𝑡 を𝑒 −𝑎𝑡で変調し た信号」だから,そのフーリエ変換は「𝑒 −𝑎𝑡のフーリエ変換を𝜔軸上でΩだけ右にシフトしたもの」となる. すなわち ∞ 𝐹(𝜔) = ∫ 𝑓(𝑡)𝑒 −𝑖𝜔𝑡 𝑑𝑡 = −∞ 1 𝑎 + 𝑖(𝜔 − Ω) 別解として直接の計算を記す: ∞ ∞ ∞ 𝐹(𝜔) = ∫ 𝑓(𝑡)𝑒 −𝑖𝜔𝑡 𝑑𝑡 = ∫ 𝑒 −𝑎𝑡 𝑒 𝑖Ω𝑡 𝑒 −𝑖𝜔𝑡 𝑑𝑡 = ∫ 𝑒 −𝑎𝑡 𝑒 𝑖(Ω−ω)𝑡 𝑑𝑡 = −∞ 0 0 1 𝑎 + 𝑖(𝜔 − Ω) 問題 20 𝑑𝑓 導関数の定義𝑑𝑡 = limΔt→0 𝑓(𝑡+Δ𝑡)−𝑓(𝑡) Δ𝑡 は,時間シフト𝑓(𝑡 + Δ𝑡)を含む線型演算である.定義式の右辺を用い 𝑑𝑓 てℱ [ 𝑑𝑡 ]を計算せよ(極限操作 lim とフーリエ変換の積分は順序を変えてよい) . Δt→0 解 時間シフト 位相シフト ⏞ ⏞ 𝑑𝑓 𝑓(𝑡 + Δ𝑡) − 𝑓(𝑡) −𝑖𝜔𝑡 ℱ 𝑓(𝑡 + Δ𝑡) − ℱ 𝑓(𝑡) 𝑒 𝑖𝜔Δ𝑡 ℱ [ ] = ∫ [ lim ]𝑒 𝑑𝑡 = lim = lim Δt→0 Δt→0 𝑑𝑡 Δ𝑡 Δ𝑡 −∞ Δt→0 ∞ 𝐹(𝜔) − 𝐹(𝜔) Δ𝑡 𝑒 𝑖𝜔Δ𝑡 − 1 × 𝐹(𝜔) = 𝑖𝜔𝐹(𝜔) Δt→0 Δ𝑡 = lim 𝑑𝑓 ℱ [ 𝑑𝑡 ] = 𝑖𝜔𝐹(𝜔) という結論は,つぎの部分積分を実行しても得られる: ∞ ∞ ∞ 𝑑𝑓 𝑑𝑓(𝑡) −𝑖𝜔𝑡 𝑑 ∞ ℱ[ ]= ∫ 𝑒 𝑑𝑡 = [𝑓(𝑡)𝑒 −𝑖𝜔𝑡 ]−∞ − ∫ 𝑓(𝑡) 𝑒 −𝑖𝜔𝑡 𝑑𝑡 = − (−𝑖𝜔) ∫ 𝑓(𝑡)𝑒 −𝑖𝜔𝑡 𝑑𝑡 = 𝑖𝜔𝐹(𝜔) 𝑑𝑡 𝑑𝑡 −∞ 𝑑𝑡 −∞ −∞ ここでは,𝑓(𝑡)のフーリエ変換が存在するためには(まだ説明していないが,現実的な場合を考えれば頷 ける条件)𝑓(𝑡) → t→±∞ 0,したがって部分積分第1項は 0 であることを用いた. 問題 21 𝜋 sin( Ωt)のフーリエ変換が 𝑖 (𝛿(𝜔 − Ω) − 𝛿(𝜔 + Ω))となること,および「導関数のフーリエ変換」を既知と して,cos( Ωt)のフーリエ変換を求めよ. cos( Ωt)のフーリエ変換を既知としてsin( Ωt)のフーリエ変換を, 同様に求めよ. 解 cos( 𝛺𝑡) = 1 𝑑 sin(𝛺𝑡) Ω 𝑑𝑡 29 → ℱ cos( 𝛺𝑡) = ℱ [ 1 𝑑 1 𝑑 1 𝜋 sin(𝛺𝑡)] = ℱ [ sin(𝛺𝑡)] = [𝑖𝜔 × (𝛿(𝜔 − Ω) − 𝛿(𝜔 + Ω))] Ω 𝑑𝑡 Ω 𝑑𝑡 Ω 𝑖 = 𝜋𝜔 𝜋𝜔 𝜋𝜔 (𝛿(𝜔 − Ω) − 𝛿(𝜔 + Ω)) = 𝛿(𝜔 − Ω) − 𝛿(𝜔 + Ω) Ω Ω Ω = 𝜋Ω 𝜋(−Ω) 𝛿(𝜔 − Ω) − 𝛿(𝜔 + Ω) = 𝜋(𝛿(𝜔 − Ω) + 𝛿(𝜔 + Ω)) Ω Ω 問題 22 1 デルタ関数のフーリエ変換がℱ δ(𝑡) = 1,単位階段関数のフーリエ変換がℱ θ(𝑡) = π𝛿(𝜔) + 𝑖𝜔となること を既知として,ℱ [ 𝑑 𝑑 𝑑𝑡 𝜃] = ℱ 𝛿 したがって 𝜃 = 𝛿を確認せよ. 𝑑𝑡 解 ℱ[ 𝑑 1 𝜃] = 𝑖𝜔 × (π𝛿(𝜔) + ) = 𝑖𝜋 𝜔𝛿(𝜔) +1 =1 = ℱ 𝛿 ⏟ 𝑑𝑡 𝑖𝜔 0 問題 23 𝑓(𝑡 − 𝜏) = 𝑒 −(𝑡−𝜏) 𝜃(𝑡 − 𝜏), 入力波形が𝑔(𝜏) = 𝜏 ⋯ 0 < 𝜏 < 1, 他 0 のときの系の応答は? 解 ∞ 1 𝑓 ∗ 𝑔 = ∫ 𝑓(𝑡 − 𝜏)𝑔(𝜏)𝑑𝜏 = ∫ 𝑒 −(𝑡−𝜏) 𝜃(𝑡 − 𝜏)𝜏𝑑𝜏 = − ∫ −∞ 0 𝑡−1 𝑒 −(𝑡−𝜏) 𝜃(𝑡 − 𝜏)𝜏𝑑(𝑡 − 𝜏) 𝑡 𝑡 𝑡 𝑡 𝑡−1 𝑡−1 𝑡−1 = ∫ 𝑒 −𝑥 𝜃(𝑥)(𝑡 − 𝑥)𝑑𝑥 = 𝑡 ∫ 𝑒 −𝑥 𝜃(𝑥)𝑑𝑥 − ∫ 𝑒 −𝑥 𝜃(𝑥)𝑥𝑑𝑥 𝑡 < 0 のとき(𝜃 = 0) : 0 𝑡 t 𝑡 0 < 𝑡 < 1 のとき(積分の下限が 0) :t ∫ 𝑒 −𝑥 𝑑𝑥 − ∫ 𝑒 −𝑥 𝑥𝑑𝑥 = −𝑡(𝑒 −𝑡 − 1) − −(1 + 𝑥)𝑒 −𝑥 = 0 𝑡 { 1 < 𝑡のとき: t∫ 0 = t − 1 + 𝑒 −𝑡 0 𝑡 𝑒 −𝑥 𝑑𝑥 − ∫ 𝑒 −𝑥 𝑥𝑑𝑥 = 𝑒 −𝑡 𝑡−1 𝑡−1 問題 24 1 𝑓(𝑡) ⋅ 𝑔(𝑡)のフーリエ変換は,それぞれの関数のフーリエ変換のたたみ込み積分(の 倍)となることを示 2𝜋 せ. 解 ∞ ∞ ℱ 𝑓 ⋅ 𝑔 = ∫ 𝑓(𝑡) ⋅ 𝑔(𝑡) 𝑒 −𝑖𝜔𝑡 𝑑𝑡 = ∫ [ −∞ −∞ ∞ = 1 ∞ 1 ∞ ′′ ∫ 𝐹(𝜔′′)𝑒 𝑖𝜔 𝑡 𝑑𝜔′′] [ ∫ 𝐺(𝜔′)𝑒 𝑖𝜔′𝑡 𝑑𝜔′] 𝑒 −𝑖𝜔𝑡 𝑑𝑡 2𝜋 −∞ 2𝜋 −∞ ∞ 1 1 ∞ 1 ∞ ′′ ′ ∫ ∫ 𝐹(𝜔′′) 𝐺(𝜔′) ∫ 𝑒 𝑖(𝜔 +𝜔 −𝜔)𝑡 𝑑𝑡 𝑑𝜔′ 𝑑𝜔′′ = ∫ 𝐹(𝜔′ − 𝜔) 𝐺(𝜔′)𝑑𝜔′ 2𝜋 −∞ −∞ 2𝜋 −∞ 2𝜋 −∞ ⏟ 𝛿(𝜔 ′′ +𝜔 ′ −𝜔) 30 31