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「原子力の安全を問う」シンポジウム ~新安全基準(設計基準、シビアアクシデント対策)骨子案 を巡る論点~ 「新安全基準(設計基準、シビア アクシデント対策)骨子案の論点」 平成25年2月17日 日本原子力学会理事 北海道大学 教授 奈良林 直 新安全基準(設計基準、シビアアクシデント対策)骨子案の論点 日本原子力学会理事 奈良林 直 1 福島第一原発事故の原因と対策 ①地震で受電設備が破損 (外部電源喪失) 受電設備の耐震性向上 ②津波で非常用電源や 電源盤、直流が使用不能 ドアの水密化と高台に電源 車・配電盤・バッテリー設置 ③原子炉冷却・注水不能・ 炉心溶融・水素発生 多様な冷却源と注水手段を 確保、安全弁や除熱の強化 ④格納容器の過温破損 水素爆発と放射能飛散 速やかなベントと格納容器 冷却、フィルター付ベント ⑤計測監視と通信不能 過酷事故時の防災遅延 非常時の訓練・対策強化 原子力防災体制強化 (碍子対策、ガス遮断器採用) 新安全基準(設計基準、シビアアクシデント対策)骨子案の論点 日本原子力学会理事 奈良林 直 2 新安全基準骨子案(2013.1.31) ■新安全基準骨子案ポイント ・地震、津波の自然災害や航空機の墜落などが起きても原子炉施設の 安全性を損なうことのない設計であること ・航空機衝突のテロなどで炉心損傷が起きた場合に多量の放射性物質の 放出を抑制するため、原子炉の冷却設備や電源、第2制御室などを備 えた特定安全施設を設置する ・免震機能を持ち、事故時に現地対策本部となる緊急時対策所を設置する ・格納容器の圧力を下げるために蒸気を排出するフィルター付きベント装置 を設置する ■新安全基準骨子案の要検討項目(テロ対策含む) ・通常の中央制御室が電源喪失などで使用不能になった場合に備え、 原子炉の冷却作業を遠隔操作する特定安全施設の設置を義務づけた。 ・免震機能を備えた「緊急時対策所」も設け、事故時の前線基地として活用。 ・蒸気排出装置「フィルター付きベント」の設置、電源車や移動可能な注水 ポンプ車の配備も求めた。 ・防火対策:防火区画とケーブル火災対策 ・コンピューターウイルスによるサイバーテロ対策 新安全基準(設計基準、シビアアクシデント対策)骨子案の論点 日本原子力学会理事 奈良林 直 3 地震でLOCAは発生していない(1号機) 政府事故調:格納容器の圧力履歴からLOCAは発生していない 国会事故調:LOCAが発生と記載しているが科学技術的根拠なし 0.3cm2 0.1cm2 実測値 新安全基準(設計基準、シビアアクシデント対策)骨子案の論点 日本原子力学会理事 奈良林 直 4 津波に対する深層防護の強化 究極の安全目標:「人と環境を守る」 自然災害・テロ対策強化 防潮壁・水密扉 第1層 津波検知 電源強化 第2層 冷却強化 AM対策強化 防災強化 第3層 第4層 第5層 周辺環境 へのFP 放出防止 被曝防止・ 環境汚染 防止・ 復旧活動 炉心損 傷防止 DBA ECCS 閉じ込める 隔離 安全性向上に対する 不断の努力 保全活動・重要度別QMS 危険予知訓練と対策 非常用 電源の 電源の 防水扉 + 高台の 移動電 源車 ECCS 格納 容器 冷却 + 格納 容器 スプ レイ 冷やす 冷却源 確保 + AM 注水 濾し取る フィル ター付 ベント + 水素 爆発 防止 新安全基準(設計基準、シビアアクシデント対策)骨子案の論点 日本原子力学会理事 奈良林 直 冷やす 循環注 水冷却 + 海水 冷却系 復旧 + 電源 復旧 緊急避難 地元・ 国・自衛 隊との 連携 + 放射能影 響予測 SPEEDI 5 高台の非常電源・所内電源の位置付け <要求事項>・・・(8)信頼性 安全機能を有する構築物、系統及び機器等・・・・多重性及び独立性を備えた設計であること。 但し、共通要因又は従属要因による機能喪失が独立性のみで防止できない場合には、その共通要因 又は従属要因による機能の喪失モードに対する多様性及び独立性を備えた設計であること。 〈課題〉 既設発電所の非常用DGは3台独立に 設置されているが、すべて海水冷却方式 〈対応策〉 SA事象に対する多様性要求は、SA対策設備 の有効活用を許容する規定とすることが必要 (旧安全設計審査指針27改定案にはその旨の明記有り) AFC 原子炉建屋 浸水防止対策 (高層階設置等) 津波による冷却源喪失LUHS は共通要因 高台代替電源はSA対策設備で DBA対象ではない点が課題 原子炉圧力容器 高台代替電源(空冷式DG等)を追設し、 冷却源喪失LUHSに対する多様性確保 空冷式DG G 高台建屋 電源盤 M → RHR-P 新安全基準(設計基準、シビアアクシデント対策)骨子案の論点 日本原子力学会理事 奈良林 直 6 1号機にも自然冷却系(IC)があった ■強力な冷却・減圧性能があったが、バッテリー切れで 制御盤が機能喪失。動いていたら、事故収束できた。 IC:非常用復水器 建屋外へ 蒸気放出 原子炉圧力容器 圧力抑制プール ■バルブのフェイル・クロー 純水タンク ズ設計が致命傷 防火用水 ■ベント時のSGTSのファ イル・オープン設計も IC出口弁 4号機の致命傷 ■弁の作動ロジック見直要 新安全基準(設計基準、シビアアクシデント対策)骨子案の論点 日本原子力学会理事 奈良林 直 7 格納容器の損傷後に放射線量率急増 ウェットベントに比べ2号機の格納容器損傷後の放射線量率急増 3/11 3/12 3/13 3/14 3/15 3/16 3/17 3/18 日経サイエンス7月号より 新安全基準(設計基準、シビアアクシデント対策)骨子案の論点 日本原子力学会理事 奈良林 直 8 過熱蒸気による格納容器過温破損 ■格納容器のトップフランジやハッチから漏洩 原子炉建屋 運転床 (オペレーションフロア) 遮蔽プラグ 放射性物質と 水素の漏洩 格納容器 トップフランジ 格納容器 ドライウェル Oリング パッキン 原子炉 主蒸気管 炉心 SR弁 制御棒駆 動機構 ベント弁 蛇腹管 圧力抑制室 プール水 9 新安全基準(設計基準、シビアアクシデント対策)骨子案の論点 日本原子力学会理事 奈良林 直 9 PWRの格納容器(CV)破損防止対策 ① CV再循環ユニットを使用したCV気相部冷却(既設海水ポンプ使用) ② CV再循環ユニットを使用したCV気相部冷却(可搬式海水ポンプ等使用) ③ CVスプレイ再循環運転によるCV気相部冷却(可搬式海水ポンプ等使用) 格納容器スプレイ ③ ② 自然対流 蓄圧タンク 可搬式 海水ポンプ 蒸気発生器 制御棒 再循環 ユニット ① 補機冷却水 系統 海水ポンプ 原子炉補機冷却水ポンプ 自然対流 大気への放射 性物質なし 海水 格納容器スプレイポンプ 新安全基準(設計基準、シビアアクシデント対策)骨子案の論点 日本原子力学会理事 奈良林 直 10 BWRの格納容器の破損防止対策 ■過圧・過温破損防止:多種・多様な設備により、損傷炉心を 冷却し、格納容器内を冷却・崩壊熱を除去する ①電源喪失時も給水車の接続と格納容器ベントで安定的冷却 ②最終的には、電源および補機冷却系を確立し、冷温停止 原子炉建屋 給水車 可搬式バッテリ,窒素ボンベ等 排気筒 格納容器 消火系 D/Wベント 原子炉 圧力容器 SRV 復水補給水系 DWC 給電 電源車 注水 W/Wベント フィルタベント 圧力 抑制室 Hx 耐圧強化ベント (水フィルタ) 給電 S/P ペデスタル注水 車載代替UHSS (可搬式代替RCWユニット) 空冷電源 RHR 大容量電源車 新安全基準(設計基準、シビアアクシデント対策)骨子案の論点 日本原子力学会理事 奈良林 直 11 BWRの最終ヒートシンクの確保例 ■最終ヒートシンク確保策は,プラントの状態により優先度が異なるが,種々の方策 を持つことで確定した対策のみに依存することなく,柔軟な対応が可能となる。 原子炉への注水 プラント 状態 崩壊熱により発生した蒸気は,逃し安全弁からサプレッションプール(S/P)に 排出され,PCV内に保持する。 故障要因が明確な LUHS状態 炉心損傷状態 FP放出抑制を 考慮した対応 全ての対策 ①RHRの復旧 ②代替RHR ③代替PCVスプレイ ④フィルタベント ⑤耐圧強化ベント(W/W) ⑥耐圧強化ベント(D/W) ⑦ソフトベント(W/W) ⑧ソフトベント(D/W) 建屋内の安全系 (ポンプ等)使用不能 ①RHRの復旧 ②代替RHR ③代替PCVスプレイ ④フィルタベント ⑤耐圧強化ベント(W/W) 外部からの対策を 中心とした対応 ③代替PCVスプレイ ④フィルタベント ⑤耐圧強化ベント(W/W) ⑨原子炉ウェル注水 ⑨原子炉ウェル注水 ⑩CUW代替除熱 ⑪D/Wクーラ 使用可能性と系統の健 全性を確認して実施 使用可能性を 確認して実施 ⑩CUW代替除熱 ⑪D/Wクーラ 新安全基準(設計基準、シビアアクシデント対策)骨子案の論点 日本原子力学会理事 奈良林 直 12 基本対策の効果:リスク低減効果の定量化 ケース1:基本対策実施時の評価結果例(炉心損傷) 起因事象 圧力制御 RCIC 電源車 追設DG 原子炉減圧 給水車 PCVベント 1.0E+00 ※2 ベースケースの主な炉心損傷 シーケンス 9.6E-01 9.9E-01 基本対策実施(ケース1)による 主な成功パス 9.1E-01 4.0E-03 4.0E-02 1.0E-02 1.0E+00 ※2 9.2E-01 9.3E-01 9.3E-01 1 9.0E-02 8.0E-02 7.0E-02 7.0E-02 成功 1 4.0E-03 失敗 0 条件付 炉心損傷 確率※1 (/Event) 健全 損傷 3.5E-03 損傷 3.6E-02 損傷 9.1E-03 健全 損傷 6.2E-03 損傷 5.8E-03 損傷 6.3E-03 損傷 4.0E-03 損傷 ε ε:微小 ※1・・・条件付炉心損傷確率:起因事象(外部電源喪失と非常用海水系機能喪失による全交流電源喪失)の発生確率 を1とした、条件付の確率。 合計 ※2・・・(1-失敗確率): (1-0.004)=0.996であり、表示桁の関係で1.0となっている 新安全基準(設計基準、シビアアクシデント対策)骨子案の論点 日本原子力学会理事 奈良林 直 7.1E-02 13 基本対策の効果:格納容器損傷低減効果 起因事象 圧力制御 電源車 追設DG RCIC 原子炉減圧 給水車 PCV注水 PCVベント ※3 ケース1:基本対策実施時の評価結果例(格納容器損傷) 条件付 格納容器損傷 確率(/Event) ※1 1.0E+00 9.6E-01 ベースケースの主な炉心損傷 シーケンス 4.0E-03 9.9E-01 9.3E-01 9.2E-01 基本対策実施(ケース1)による 主な成功パス 9.1E-01 7.0E-02 4.0E-02 8.0E-02 ※1・・・(1-失敗確率): 表示桁 の関係で1.0となっている ※2・・・計算簡略化のため、 PCV破損を仮定 ※3・・・ PCVベントの失敗確率 は炉心損傷前後とも含む ※1 1.0E+00 9.2E-01 9.3E-01 9.3E-01 8.0E-02 8.0E-01 8.0E-01 2.0E-01 7.0E-02 1 9.0E-02 成功 2.0E-01 7.0E-02 2.3E-03 9.1E-03 格納容器健 全 6.2E-03 格納容器健 全 9.3E-04 ※2 6.3E-03 4.0E-03 0 格納容器健 全 1.2E-03 1 失敗 3.4E-03 2.9E-03 ※2 1.0E-02 格納容器健 全 4.0E-03 ε:微小 ε 条件付格納容器破損合計 新安全基準(設計基準、シビアアクシデント対策)骨子案の論点 日本原子力学会理事 奈良林 直 3.6E-02 14 リスク低減効果の定量化 4.基本対策の効果:リスク低減効果の定量化(6/7) ■各ケースのリスク低減効果評価結果 条件付炉心損傷確率の相対値 条件付格納容器破損確率の相対値 1.0 ケース名 0.8 0.6 0.4 内容(考慮する対策) ベースケース 下記対策実施前 ケース1 基本対策 ケース2 基本対策+恒設DG ケース3 基本対策+恒設DG+フィルタベント 0.2 0.07 0.0 ベースケース 0.04 ケース1 0.06 0.02 ケース2 0.06 0.02 ケース3 ベースケース(対策前)のリスク評価結果を1として、各ケースのリスクを算出 新安全基準(設計基準、シビアアクシデント対策)骨子案の論点 日本原子力学会理事 奈良林 直 15 原子炉建屋の耐津波対策 海抜15m 防潮壁と防潮扉 原子炉建屋を要塞にして、 ECCSの注水系を強化 1号機の敷地高さ5m、7号機は12m 新安全基準(設計基準、シビアアクシデント対策)骨子案の論点 日本原子力学会理事 奈良林 直 16 抜本的対策:フィルター付きベント ■チェルノブイリ事故の教訓:「例え事故が起こっても地元には迷惑をかけません」 (フランス、ドイツ、スイス、フィンランド、スウェーデンのほぼ全ての原発に設置) ■ヨウ素やセシウム などの放射能を 1/100~1/1000 に低減 使用済 燃料プール 原子炉 ミストセパレータ プール水 新安全基準(設計基準、シビアアクシデント対策)骨子案の論点 日本原子力学会理事 奈良林 直 17 スイスのライプシュタット発電所 フィルター付ベント 新安全基準(設計基準、シビアアクシデント対策)骨子案の論点 日本原子力学会理事 奈良林 直 18 FCVS FCVS(フィルター付格納容器ベントシステム) (フィルター付格納容器ベントシステム) ■ベント系の周到な準備がなされている 濾過係数:DF > 1000エアロゾル > 100 I2 ベント弁はシャフトを回して開操作 Stuck Rupture Disk (~3bar) Steam Fuel rod MOV MOV Normal Open Normal Close NaOH Backfitted on 1992 for (mitigation of Sever Accident) Solubility pH10 Solubility pH7 ~50 新安全基準(設計基準、シビアアクシデント対策)骨子案の論点 日本原子力学会理事 奈良林 直 19 SEHR (特設非常用除熱システム) SEHR (特設非常用除熱システム) SEHR (Special Emergency Heat Removal System) ■米TMI事故の直後に設置 ①格納容器の追加の冷却機能 ②格納容器の過酷事故の緩和 Steam 熱交換器 Fuel rod 地下水 Suppression Pool 炉心と格納容器の除熱 D/G Underground Dwells Two D/G for SEHR D/G 新安全基準(設計基準、シビアアクシデント対策)骨子案の論点 日本原子力学会理事 奈良林 直 20 米デュアボロキャニオン原子力発電所 ■サンフランシスコ地震に建設中 ■建設費が高騰したが、万全の地震・津波対策 新安全基準(設計基準、シビアアクシデント対策)骨子案の論点 日本原子力学会理事 奈良林 直 21 米デュアボロキャニオン原発の津波対策 ■海水ポンプモータのシュノーケリング ■ドアの水密化(潜水艦内の ハッチ) 新安全基準(設計基準、シビアアクシデント対策)骨子案の論点 日本原子力学会理事 奈良林 直 22 浜岡原子力発電所の電源対策 泊発電所の耐津対策事例 ■開閉所の高台設置やガスタービン電源車の配備(北電) 標高85m ■水密扉の設置例 ■水素対策 新安全基準(設計基準、シビアアクシデント対策)骨子案の論点 日本原子力学会理事 奈良林 直 23 泊原子力発電所の安全対策強化 新安全基準(設計基準、シビアアクシデント対策)骨子案の論点 日本原子力学会理事 奈良林 直 24 浜岡原子力発電所の海水取水ポンプ 新安全基準(設計基準、シビアアクシデント対策)骨子案の論点 日本原子力学会理事 奈良林 直 25 浜岡原子力発電所の防波壁 浜岡原子力発電所の防波壁 新安全基準(設計基準、シビアアクシデント対策)骨子案の論点 日本原子力学会理事 奈良林 直 26 米:リバーベント(BWR)の運転中保全 「人と環境を守る」安全目標を共有した規制と事業者の不断の努力 100万kW 新安全基準(設計基準、シビアアクシデント対策)骨子案の論点 日本原子力学会理事 奈良林 直 27 米国NRCの常駐検査官の1日 「人と環境を守る」安全目標を共有した規制と事業者の不断の努力 ログ・レポートのレビュー 中 央 制 御 室 の 見 回 り 地 方 局 へ の 連 絡 運営管理のレビュー,準備 モーニングミーティング傍聴 検 査 活 昼 6:15 6:45 7:30 8:00 8:30 9:00 プラント問題点の詳細レビュー 検 査 活 7:30 8:00 8:15 8:45 運転ログ、CAPレポート、リスク プロファイル等のレビュー・意見交換 電力のモーニングミーティングの傍聴 地方局へ電話で過去24時間の状況報告 ~ 2人で本日の予定の調整 10:00 動 食 6:00 出勤 11:30 12:15 12:00 13:00 動 14:00 午後は「問題の対応」 「プラント内巡回」「検査」等 15:00 16:00 RegionⅢでの確認 (Braidwood,Clinton) 18:00 Hatchの場合 (RegionⅡ) 新安全基準(設計基準、シビアアクシデント対策)骨子案の論点 日本原子力学会理事 奈良林 直 28 フィンランド 安全且つ良好な運転実績を支えるもの 状態監視保全 故障が 安全性・運転性に 影響有? 有 直接的影響? 有 無 Priority 1 Priority 2 有 予備品の充実 無 保守は 経済的合理性 有? Priority 3 無 Priority 4 2万2600品の予備品を保管 – 状態監視で予知したら、運転中 保全により即時交換可能 取替方式⇒短期計画停止 – 例:主変圧器は5日で取替完了 安全を大前提とした規制 違反行為は厳しく(警察を使ってで もプラント停止を辞さない) プラント起動前に計画停止に応じ て安全を確認し許可を出す Priority 1 Priority 3 状態監視保全を主とした 予防保全 Priority 4 事後保全 Priority 2 検査の効率性は重視し、休日でも 夜でも検査に立ち会う 停止工程に沿った検査計画 新安全基準(設計基準、シビアアクシデント対策)骨子案の論点 日本原子力学会理事 奈良林 直 29 フランスの事故収束はEDF緊急支援隊が対応 ■EDF(フランス電力庁)原子力緊急支援隊、迅速に出動(事故収束の専門家) 目的:炉心溶融とあらゆる放射性物質の飛散を避けるため、炉の冷却を復旧・継続する 任務 介入出動 24時間以内に当直チーム支援 ※規制当局のASNはもっと迅速な介入を求めている サイトの状況 後方基地の位置決め 評価 装置への注水 注水口への接続・注水 行動 防護 多重防災支援 介入 展開 管理 初期対応確立後の長期継続体制確立 準備 長期管理[造水、廃棄物処理〕 スイスでは軍が 物資輸送 新安全基準(設計基準、シビアアクシデント対策)骨子案の論点 日本原子力学会理事 奈良林 直 30 チェルノブイリ事故のウクライナに学ぶ ■ウクライナは日本と似て、石油・ガスの資源が乏しくロシアから輸入 国会議員が「皆死ぬかもしれない」と言って、パニック発生。 ■90年に「ウクライナでの原子力発電所の建設凍結」を決議。 ■事故後5年経った91年に独立。全原発停止。経済破綻。自殺急増 。 ■2年間経済破綻のなかで原子力を使わざるを得ないと分かった。 建設凍結決議は93年に撤回。 ■安全性向上に注力。 新たに3基が運転開始し、 現在15基。 2030年までに2基新規建設。 ■原子力は必要 (電力の5割が原子力) ■原発で公害もなくなった。 ■これだけは言っておく、 人類に原子力は必要だ。 新安全基準(設計基準、シビアアクシデント対策)骨子案の論点 日本原子力学会理事 奈良林 直 31 まとめ 福島第一発電所の事故は津波対策の甘さ(自然災害に対する畏怖の念と 科学技術に基づく的確な対策の未実施)が主要因(規制と事業者・学会に甘さ) 新安全基準骨子案については、以下の指摘と学会自らの研鑽が必要 (1)格納容器の過温破損を防ぐための多様な冷却機能の活用が不可欠 フィルター付きベントは格納容器冷却を行ってこそ機能する (2)既存ECCSの外的要因に対する備えと強化・活用が不可欠 (3)高台の非常用電源の位置づけと活用 (トレーラーは100年の歴史の車の3次元免震、テロ対策上も有効) (4)「人と環境を守る」安全目標を共有した規制と事業者の不断の努力を行う 仕組みを新安全基準骨子に組み込むこと(性能規定と仕様規定の分離) (5)安全重要度分類に基づく品質保証活動:「安全はハードと人が作るもの」 (6)自衛隊を含む防災体制の強化・機材や予備品の保管と緊急輸送 (7)米スリーマイル島とチェルノブイリ事故と福島第一の教訓を学ぶこと (8)女川・福島第二・東海第二の事故の事故防止・事故収束の教訓の水平展開 が必要 (9)米国NRCは専門家支援組織を有するが、我が国では専門家集団としての 原子力学会をはじめ多くの学協会の支援体制が必要 (10)そのためには日本原子力学会も自らの不断の努力による研鑽が必要 新安全基準(設計基準、シビアアクシデント対策)骨子案の論点 日本原子力学会理事 奈良林 直 32