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4 消化と吸収の機構(2)(ノート)
4 消化と吸収の機構(2) 2-3 吸収の機序 2-4 栄養素の吸収経路 •小腸と大腸が物質の吸収の場。 一般に血流に入るが毛細血管壁を通過できない大きな •消化管での吸収とは、管腔内の物質を上皮組織を通過 粒子はリンパ管に入る。血流に入ったものは門脈を経て させて体内に入れ、さらに循環系に取り込む過程/経 肝臓に行く。脂質などはリンパ管を経て左鎖骨下静脈で 細胞経路と傍細胞経路。 血流に合流する。 経細胞経路 (1)糖質の吸収経路 •細胞膜を通過する。濃度の高いほうから低いほうへ取 •グルコースとガラクトースはNa + とともに SGLT1と り込まれる「受動輸送」と濃度勾配に逆らって移動す GLUT2によって輸送される/管腔側にNa+が必要。 る「能動輸送」に大別。さらに「受動輸送」は「単純 •フルクトースはGLUT5によって促進拡散される。 拡散」と「促進拡散」に、「能動輸送」は「一次性能 •ガラクトースやフルクトースは吸収上皮細胞ではあま 動輸送」と「二次性能動輸送」に分けられる。 り代謝されず、肝臓でグルコースなどに転換される。 •一次性能動輸送:ATP(エネルギー)を利用する能動 輸送/濃度の低い側から高い側へ輸送される場合/Na (2)アミノ酸・ペプチドの吸収経路 +・K+-ATPase •さまざまなアミノ酸輸送系が存在/基質特異性が一部 •二次性能動輸送:ある物質の吸収といっしょに別の物 重複している/Na+が共役しているものもあればしてい 質を吸収する/(例)グルコース共輸送体1(sodiumglucose cotransporter 1: ないものもある。 SGLT1)はNa+の吸収といっ •一般にジペプチドやトリペプチドは、同じ組成のアミ しょにグルコースを吸収する。 ノ酸混合物よりも吸収がよい/細胞内に取り込まれた 傍細胞経路 ペプチドの多くは細胞内ペプチダーゼでアミノ酸に分 •細胞と細胞の間のタイト結合の狭いすき間を通って吸 解され細胞外に輸送されて、門脈を経て肝臓に行く。 収。 •輸送体などは関与せず、タイト結合の透過性に従って水 (3)脂質の吸収経路 や低分子の電解質が単純拡散によって輸送される。 •脂質の分解産物のうち長鎖脂肪酸(炭素数14以上)や コレステロールは難水溶性なので、胆汁酸やモノアシ エンドサイトーシスとエキソサイトーシス ルグリセロールと混合ミセルを形成して、吸収上皮細 •エンドサイトーシス:細胞外の物質が、細胞膜の一部 胞表面の水層を通過。 が貫入して袋状になった部分に取り込まれ、続いて、 •細胞内で中性脂肪などに再合成され、アポリポたんぱ その部分がちぎれてできた小胞の中に物質が取り込ま く質と合体してリポたんぱく質を形成/脂質摂取後に れること。 小腸でつくられるリポたんぱく質はキロミクロンが主 •エキソサイトーシス:細胞内の小胞が細胞膜と融合し /エキソサイトーシスによって分泌。 て開口し、小胞内の物質が細胞外に放出されること。 •直径が大きい(100 nm以上)ので毛細血管に入れない •酵素の分泌や脂質の吸収はエキソサイトーシス。 ため、乳麋管に入る。 •中鎖脂肪酸(炭素数8∼12)は脂肪に再合成されず、毛 13 4 消化と吸収の機構(2) 細血管に入り血清アルブミンと結合して肝臓へ運ばれ 吸収をよくする/植物性食品に多いフィチン酸は鉄イ る。 オンと結合して吸収を悪くする。 •胆汁酸はNa+・胆汁酸共輸送体によって能動的に再吸収 •Na + の吸収は多くの栄養素や水の吸収と密接に関連/ される/門脈を経て肝臓に入り再利用される/胆汁酸 Na + の1日の摂取量は約5g(食塩量として約13g)だ の腸肝循環。 が、消化液などで分泌されるものと合わせると、その 数倍が消化管管腔内に入る/大部分は再吸収され糞便 (4)ビタミンの吸収経路 中には少量しか排泄されない/Na + ・栄養素共輸送体 •脂溶性ビタミン(A、D、E、K)の吸収は基本的に脂 は、栄養素と Na+ とを共輸送するもので種々存在する 質と同様/混合ミセルに取り込まれて吸収上皮細胞に (SGLT1や Na+・アミノ酸共輸送体)。 入り、キロミクロンの成分として分泌/食物中の脂質 が少ないと混合ミセルの形成が不十分となり、脂溶性 (6)水の吸収経路 ビタミンの吸収は悪くなる。 •消化管管腔には1日に約9リットルも水が入る/食物や •水溶性ビタミンは、それぞれに特別な仕組みで吸収/ 飲料からは1.5∼2リットル。残りは消化液/98%が再 ビタミンB12は胃で分泌される内因子と結合して吸収さ 吸収される(小腸で85%、大腸で15%)。 れる。 •水は浸透圧の差によって輸送される/管腔内が低張の 場合は水は吸収され、高張の場合は水が分泌され、内 (5)無機質(ミネラル)の吸収経路 溶液を等張に保とうとする。 •ほとんどがイオン(電解質)の形で、それぞれ異なる •消化管を下るにつれて単糖類やアミノ酸、NaClなどが 仕組みで吸収され、門脈を経由して肝臓へ入る。 吸収されるので内溶液の浸透圧が低下し、水分が吸収 •Ca2+には能動輸送と受動輸送があり、前者はビタミン される。 Dによって促進される/大腸もCa 2+ を吸収。大腸内で 生成する短鎖脂肪酸がCa2+を可溶化して吸収を助ける 2-5 大腸での発酵・吸収 ためと考えられている。 •鉄はヘム(ポルフィリンの鉄錯体)あるいは鉄イオン •大腸に移行して来た食物繊維(ヒトの消化酵素で消化 の形で、それぞれ別の仕組みで主として十二指腸から されない食品中の難消化性成分の総体)や消化液、粘 吸収/鉄イオンよりもヘムのほうが吸収が速やか/ヘ 膜から剥離した細胞、血液由来の尿素などが、大腸内 ムは食肉中に豊富/鉄イオンは野菜などに含まれ、還 細菌の栄養素となる。 •腸内細菌の総重量は1kg程度で、全体がもつ酵素の種類 元型のFe2+のほうがFe3+よりも速やかに吸収される。 や活性は肝臓に匹敵。 アスコルビン酸(ビタミンC)などの還元性物質は鉄の 14 4 消化と吸収の機構(2) •セルロース(食物繊維)は消化酵素では分解されない (1)自律神経系による調節 が、腸内細菌は分解することができる。生成した単糖 •消化管の働きを調節する自律神経系:消化管に内在す 類が代謝され短鎖脂肪酸、水素やメタンなどが生成。 る腸管神経系と、外来性の交感神経系及び副交感神経 •難消化性糖質のエネルギーは。最大で60%が短鎖脂肪 系。 酸に変換され、大腸上皮細胞のエネルギー源となる。 •交感神経系は逃走や闘争、副交感神経系はゆったりと •短鎖脂肪酸は、粘膜の血流量や酸素消費量を増大した 食事を摂るような場面で活発化/交感神経系と副交感 り、上皮細胞の増殖を促進したりする/カルシウムを 神経系は拮抗的に作用。 可溶化し吸収を助ける。 •迷走神経:消化器のほとんどを支配し、消化・吸収で •大腸内に入ったたんぱく質や尿素は大腸内細菌により 最重要な副交感神経。 アミノ酸、アンモニア、アミン類などに代謝される。 •大腸内細菌は、ビタミンKやリジン(必須アミノ酸)の (2)消化管ホルモンによる調節 合成にも関与。 •主なホルモン:セクレチン、ガストリン、コレシストキ ニン。 2-6 消化・吸収の調節 •セクレチン:十二指腸粘膜が刺激されると分泌され、 •消化・吸収は意思で調節できない自律機能であり、自 •ガストリン:たんぱく質の消化産物であるペプチドや 血流で膵臓に運ばれて膵液の分泌を増大。 律神経とホルモンによって調節されている。 アミノ酸の刺激で幽門腺から分泌され、胃酸分泌を促 •胃相:胃に食物が入ることによって起きる変化。 進。 •頭相:食物を摂取しなくても、食事の連想、食物によ •コレシストキニン(コレシストキニン・パンクレオザ る視覚や嗅覚の刺激による消化器の働きの変化や、胃 イミン):ペプチド、アミノ酸、脂肪酸によって十二指 に入る前の味や匂い、咀嚼や嚥下による変化。 腸内から分泌され、胆汁や膵液の分泌を刺激。 •腸相:胃から腸へ食物が移行することで起こる変化。 胃液の分泌が停止し、膵液や胆汁の分泌が刺激され る。 Oddi括約筋:膵管と総胆管の十二指腸開口部に存在。膵液や胆汁の分泌を調節。 伝播性運動群:食物の残澄や細菌の塊や異物などを送り出す。 15 4 消化と吸収の機構(2) 16