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チオりん酸 O,O-ジエチル-O-(3,5,6-トリクロロ-2

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チオりん酸 O,O-ジエチル-O-(3,5,6-トリクロロ-2
徳島県保健環境センター
チオりん酸 O,O-ジエチル-O-(3,5,6-トリクロロ-2-ピリジル)
O,O-Diethyl- O -(3,5,6-trichloro-2-pyridyl)phosphorothioate
別名:クロルピリホス Chlorpyrifos
IUPAC 名:Diethoxy-sulfanylidene-(3,5,6-trichloropyridin-2-yl)oxy-phosphorane
【対象物質の構造】
Cl
H3 C
Cl
S
O
P
O
O
N
Cl
H3 C
CAS 番号:2921-88-2
分子式:C9H11Cl3NO3PS
【物理化学的性状】
分子量
沸点
(°C)
融点
(°C)
水溶解度
(mg/L)
log Pow
350.6
160
42.2~43
0.4(23 °C)
4.96~5.27
文献:神奈川県環境科学センター
kis-net
【毒性、用途】
毒性情報 : 魚毒性分類 C、ラット 経気道吸入 LD50 78 mg /kg
用途
: 農薬(殺虫剤)、シロアリ防除剤
文献:神奈川県環境科学センター kis-net
639
§1
分析法
(1)分析法の概要
水試料 500 mL にサロゲート(クロルピリホス-d10)を添加して、ガラス繊維
ろ紙でろ過し、ろ液を固相カートリッジに通水してクロルピリホスを濃縮し、
脱水後ヘキサンで溶出する。ろ紙は乾燥後ヘキサンで洗浄し、ろ紙洗浄液と固
相溶出液を合わせたものを、メタノールに転溶し、1 mL に定容して試験液とし、
LC/MS/MS-SRM 法 (ESI-positive)で定量する。
(2)試薬・器具
【試薬】
クロルピリホス
クロルピリホス-d10
メタノール
無水硫酸ナトリウム
精製水
:Sigma-Aldrich 製
:林純薬工業製 残留農薬試験用
:LC/MS 用
:残留農薬試験用
:残留農薬試験用
:超純水製造システム(MilliQ Gradient - A10、
ミリポア製)により製造された水
【器具】
固相カートリッジ
:Waters 製 Sep-Pak PS2 Plus
脱水用ぼう硝カートリッジ
:Waters 製 Sep-Pak Dry
ガラスろ過器
:柴田科学製 SPC フィルターホルダー、
SPC ガラスフィルターベース、SPC 保存びん
ガラス繊維ろ紙
:ワットマン製 GMF-150
コンセントレーター
:Waters 製 Concentrator Plus
目盛付受器
:ジーエルサイエンス製 GL-SPE 濃縮管 10 mL(注 1)
注射筒
:10 mL
ビーカー
:100 mL
【試薬の安定性・毒性】
難分解性、中濃縮性の蓄積性があるため、ばく露されないよう取り扱いに注
意する。
(3)分析法
【試料の採取及び保存】
環境省「化学物質環境実態調査実施の手引き」(平成 21 年 3 月)に従う。
640
【採取試料の前処理及び試験液の調製】
水試料 500 mL を量り取り、サロゲート溶液(クロルピリホス-d10 1.0 ng/μL メ
タノール溶液)を 2.0 μL 添加して混合し、予め洗浄したガラス繊維ろ紙(注 2)
をセットしたろ過器でろ過する。ろ液を予めコンディショニングした PS2 カー
トリッジ(注 3)に 20 mL/min で通水し、クロルピリホスを濃縮する。精製水
10 mL でカートリッジを洗浄し、窒素ガスで乾燥する。脱水用ぼう硝カートリッ
ジ(Sep-Pak-Dry)を PS2 カートリッジに接続し、ヘキサン 4 mL でバックフラ
ッシュ法により、PS2 から Sep-Pak Dry を通してクロルピリホスを溶出する(注
4)。
ろ紙は 15 分程度空気を引いて乾燥後、ビーカーに取り、ヘキサン 5 mL で洗
浄し、無水硫酸ナトリウムを水分が無くなるまで加えて(注 5)、洗浄液を先の
固相溶出液と合わせる。
合わせた固相溶出液を窒素ガスで 0.1 mL 程度まで濃縮し(注 6)、メタノール
1 mL を加え、1 mL の目盛り線まで濃縮して、定容し試料液とする。
【空試験液の調製】
試料と同じ量の精製水を用い前述の項に従って操作し、得られた試験液を空
試験液とする。
【標準液の調製】
〔標準原液〕
クロルピリホス 10.0 mg を精秤しメタノールを加えて正確に 100 mL とし、
0.100 mg/mL の標準原液を調製する。
〔サロゲート物質原液〕
クロルピリホス-d10 5.0 mg を精秤しメタノールを加えて正確に 100 mL とし、
0.050 mg/mL のサロゲート物質原液を調製する。
〔サロゲート物質溶液〕
先に作成したサロゲート物質原液より 1.0 mL を分取し、メスフラスコを用い
てメタノールで 50 mL とし、1.0 ng/μL のサロゲート物質溶液を調製する。
【検量線用標準液】
先に作成した標準原液をメタノールで順次希釈し、0.0200~10.0 ng/mL の検量
線作成用標準液を調製する。各溶液にはサロゲート物質溶液を 2.0 ng/mL となる
よう添加する。
641
【測定】
〔装置条件〕
[LC 条件]
機種
:Waters Alliance 2695
カラム
:Mightysil RP-18 MS、150×2.0 mm (5 μm) 関東化学製
移動相
:A:0.1%ギ酸水溶液
B:メタノール
10- 2分 A=60, B=40 →A=0, B=100 linear gradient
2-15分 A=0, B=100
15-25分 A=60, B=40
流量
:0.2 mL/min
カラム温度:40 °C
注入量
:20 μL
[MS条件]
機種
:Waters Quattro micro
イオン源温度
:100 °C
脱離ガス温度
:350 °C
脱離ガス流量
:1000 L/hr
コーンガス流量
:50 L/hr
イオン化法
:ESI+
クロルピリホス定量用 プレカーサーイオン
:351.8
クロルピリホス定量用 プロダクトイオン
:199.9
クロルピリホス確認用 プレカーサーイオン
:349.8
クロルピリホス確認用 プロダクトイオン
:96.8
クロルピリホス-d10 プレカーサーイオン
:359.9
:199.1
クロルピリホス-d10 プロダクトイオン
キャピラリー電圧
:2.0 kV
コーン電圧
:20 V
コリジョン電圧
:20 V
〔検量線〕
検量線用標準液 20.0 μL を LC/MS/MS に注入し、対象物質のサロゲートに対す
る相対ピーク面積と濃度比から検量線を作成する。
〔定量〕
試料液 20.0 μL を LC/MS/MS に導入して分析する。得られた対象物質のピーク
面積をサロゲート物質のピーク面積で割った比から、検量線を基にして、対象
物質濃度をサロゲート物質濃度で割った比(R)を求める。
642
〔濃度の算出〕
試料水中濃度 C (ng/L)は次式により算出する。
C =R・Q/V
R : 検量線から求めた対象物質濃度をサロゲート物質濃度で割った比
Q : 試料中に添加したサロゲートの量 (ng)
(=添加するサロゲートの濃度 (ng/μL)× 添加するサロゲートの容量(μL))
V : 試料水量(L)
本分析法に従った場合、以下の数値を使用する。
Q = 2.0 (ng)
( = 添加するサロゲートの濃度 (1.00 ng/μL)×添加したサロゲートの容量 (2.0 μL))
V = 0.500 (L)
即ち、
C = R×4 (ng/L)
である。
〔装置検出下限値 (IDL)〕(注 7)
本分析に用いた LC/MS/MS(Waters Quattro Micro)の IDL を表 1 に示す。
表1
物質名
クロルピリホス
IDL
(ng/mL)
0.0064
IDL の算出結果
試料量
最終液量
(L)
(mL)
0.500
1.0
IDL 試料換算値
(ng/L)
0.013
〔測定方法の検出下限値 (MDL)及び定量下限値 (MQL)〕(注 8)
本測定方法における MDL び MQL を表 2 に示す。
物質名
クロルピリホス
表 2 MDL 及び MQL の算出結果
試料量
最終液量
検出下限値
(L)
(mL)
(ng/L)
0.500
1.0
0.015
643
定量下限値
(ng/L)
0.038
注
解
(注 1)ここで示す製品は実際に使用した商品を掲げたが、これらを推奨するわ
けではなく、これらと同等以上の品質、性能のものを用いても問題ない。
今回使用したものは特注品で、10 mL の透明擦りを使用したが、2 mL ま
での目盛は正確であるが、それ以上の目盛は精度がない。
(注 2)ろ紙のコンディショニングは 300 mL 程度の精製水で洗浄して水滴が落
ちなくなるまで空気を吸引する。
(注 3)固相は予め重量を測定し、ヘキサン 10 mL、メタノール 10 mL、精製水
30 mL でコンディショニングを行う。固相の洗浄が悪いと金属成分等に
より回収率が低下する。
(注 4)固相に残存する水分が回収率に大きく影響を及ぼすので、固相は最初に
測定した重量になるまで窒素ガスで乾燥し、さらに Sep-Pak Dry を接続
して溶出する。固相の乾燥は 40 °C 程度まで加温しても良い。
(注 5)無水硫酸ナトリウムの量は、無水硫酸ナトリウムがビーカーの中で動く
程度まで加える。
(注 6)濃縮は 30 °C 以下で濃縮する。
(注 7)IDL は、「化学物質環境実態調査実施の手引き」(平成 21 年 3 月)に従
って、表 3 のとおり算出した。
644
表3
IDL の算出結果
物質名
クロルピリホス
0.500
試料量(L)
1.0
最終液量(mL)
0.020
注入液濃度(ng/mL)
20.0
装置注入量(μL)
0.0165
結果1(ng/mL)
0.0195
結果 2(ng/mL)
0.0161
結果 3(ng/mL)
0.0179
結果 4(ng/mL)
0.0192
結果 5(ng/mL)
0.0159
結果 6(ng/mL)
0.0155
結果 7(ng/mL)
0.0172
平均値(ng/mL)
0.00164
標準偏差(ng/mL)
IDL(ng/mL) *
0.0064
0.013
IDL 試料換算値(ng/L)
12
S/N 比
9.5
CV(%)
* IDL = t (n-1, 0.05) × σn-1 × 2
645
(注 8)MDL 及び MQL は、
「化学物質環境実態調査実施の手引き」
(平成 21 年
3 月)により、表 4 のとおり算出した。
河川水から対象物質が IDL 値の 5 倍以内ではあるが検出されたため、標
準品を添加せずに MDL、MQL を算出した。
表4
MDL 及び MQL の算出結果
物質名
クロルピリホス
試料
河川水
0.500
試料量(L)
0
標準添加量 (ng)
0
試料換算濃度 (ng/L)
1.0
最終液量 (mL)
0
注入液濃度 (ng/mL)
20.0
装置注入量 (μL)
*1
ND
操作ブランク平均 (ng/L)
*2
0.0293
無添加平均 (ng/L)
0.0310
結果1(ng/L)
0.0300
結果 2 (ng/L)
0.0314
結果 3 (ng/L)
0.0353
結果 4 (ng/L)
0.0254
結果 5 (ng/L)
0.0248
結果 6 (ng/L)
0.0268
結果 7 (ng/L)
0.0293
平均値 (ng/L)
0.00378
標準偏差 (ng/L)
*3
0.015
MDL (ng/L)
*4
0.038
MQL (ng/L)
55.3
サロゲート回収率(%)
4.9
S/N 比
12.9
CV(%)
0.1
要求感度 (ng/L)
*
1: 操作ブランク平均:試料マトリックスのみがない状態で他は同
様の操作を行い測定した値の平均値 (n = 7)
*
2: 無添加平均:MDL 算出用試料に標準を添加してない状態で含ま
れる濃度の平均値 (n = 7)
*
3 : MDL = t (n-1,0.05) × σn-1 × 2
*
4 : MQL = σn-1 × 10
646
std-0.02ppb
27-Jan-201017:08:58
CPFS-std11
100
9.31
MRM of 4 Channels ES+
359.9 > 199.1
1.26e5
9.36
MRM of 4 Channels ES+
351.8 > 199.9
1.57e3
サロゲート
クロルピリホス-d10
%
0
CPFS-std11
100
クロルピリホス
定量イオン
%
1.36 2.002.242.85
0.51
8.27
8.53
8.11
3.68 4.13 4.644.725.28 5.956.35 6.99
13.44
10.40 10.83
11.25 12.5912.88
9.79
17
CPFS-std11
MRM of 4 Channels ES+
349.8 > 96.8
1.09e3
9.36
100
14.4014.59
クロルピリホス
10.77
10.72
確認イオン
%
0.59
0.88 1.65
2.45 2.59 3.07 3.33 4.354.43 5.41
7.95
5.57 6.21 6.48
6.887.63
9.87
8.19 8.72
10.53
11.36
11.60
12.93 13.65 14.32
14.75
12.00
13.00
24
Time
1.00
2.00
3.00
4.00
図1
5.00
6.00
7.00
8.00
9.00
10.00
11.00
14.00
標準物質(IDL 測定)クロマトグラム
CPmutenka-kasen
01-Feb-201013:09:46
H21-MDL04
MRM of 4 Channels ES+
359.9 > 199.1
7.56e4
9.25
100
サロゲート
%
0
H21-MDL04
MRM of 4 Channels ES+
351.8 > 199.9
1.02e3
8.35
100
8.64
8.69
%
0.270.691.09
1.87
2.51
2.29
7.07
3.49
4.27
定量イオン
9.31
7.73
7.68
9.89
5.25 5.95 6.43 6.91
11.01 11.52
13.25 14.11 14.56
12.27 12.6113.95
17
H21-MDL04
12.80
100
確認イオン
MRM of 4 Channels ES+
349.8 > 96.8
1.77e3
10.32
8.40
8.53
8.24
%
0.61 0.93
1.76 2.21
5.23
4.83
6.08
3.073.17
7.39
6.596.99
8.16
7.877.95
8.59
9.31 9.87
9.17
10.40
10.69 11.12
11.76
12.13
13.44
14.53
14.69
10
1.00
2.00
3.00
図2
4.00
5.00
6.00
7.00
8.00
9.00
10.00
11.00
12.00
13.00
14.00
Time
15.00
MDL 試験試料のクロマトグラム(河川無添加試料)
647
§2
解
説
【分析法】
〔フローチャート〕
水質試料
ろ過
ろ液
固相抽出
500 mL
水洗
Sep-Pak plus PS2 精製水 10 mL
20 mL/min
脱水
窒素ガス
サロゲート添加
(クロルピリホス-d10 2 ng)
乾燥
吸引通気
窒素ガス
バックフラッシュ
ヘキサン 4 mL
Sep-Pak Dry連結
ろ紙
濃縮
溶出
抽出
脱水
ヘキサン 5 mL
無水Na2SO4
LC/MS/MS-SRM
転溶
メタノール 1 mL
ESI-Positive
約0.1 mLまで
図3
分析法のフローチャート
面積比(対象物質/サロゲート物質)
面積比(対象物質/サロゲート物質)
〔検量線〕
検量線を次に示す。
0.3
y = 0.83762 x + 0.00128
R2 = 0.99969
0.2
0.1
0.0
0
(0)
0.05
(0.1)
0.1
0.15
0.2
0.25
(0.2)
(0.3)
(0.4)
(0.5)
0.3
(ng/mL)
濃度比
(括弧内の数値は標準液濃度。サロゲート物質濃度=2.0 ng/mL)
図 4 低濃度域検量線(0.0200~0.500 ng/mL)
648
面積比(対象物質/サロゲート物質)
5.0
y = 0.79463 x + 0.00841
R2 = 0.99988
4.0
3.0
2.0
1.0
0.0
0.00
(0)
1.00
2.00
3.00
4.00
(2)
(4)
(6)
(8)
5.00
6.00
(10)
(12)
(ng/mL)
濃度比
(括弧内の数値は標準液濃度。サロゲート物質濃度 = 2.0 ng/mL)
図 5 高濃度域検量線(0.0200~10.0 ng/mL)
表5
検量線作成用データ一覧
標準試料濃度
応答値
(単位:ng/mL)
調査物質(As)
サロゲート物質(Ais)
(Cs)
【クロルピリホス】
【クロルピリホス-d10】
(m/z = 351.8 > 199.9)
(m/z = 359.9 > 199.1)
0.02
96.05
応答比
相対感度係数
(As/Ais)
(RRF)
(Cis/Cs)*(As/Ais)
9361.2
0.01026
1.026
0.04
247.3
13084.3
0.01890
0.945
0.06
282.1
11010.4
0.02562
0.854
0.08
412.5
12668.4
0.03256
0.814
0.1
548.2
12282.2
0.04463
0.893
0.5
2716.6
12890.4
0.21075
0.843
1
5356.2
13119.9
0.4083
0.817
2
10771.6
13289.7
0.8105
0.811
5
26204.6
12911.1
2.0296
0.812
10
48409.8
12217.1
3.9625
0.792
相対感度係数の相対標準偏差(%)
※サロゲート物質濃度:2.0 ng/mL (Cis)
649
7.4
〔標準物質のマススペクトル〕
クロルピリホスのマススペクトルを図 6、図 7、図 8 に示す。
std1ppm
25-Jan-201011:12:58
CP-msscn01 938 (9.380)
Scan ES+
1.81e7
351.72
349.73
100
352
350
%
353.69
371.62
0
60
80
100
120
140
図6
160
180
200
220
240
260
280
300
320
340
360
クロルピリホス(プレカーサーイオン)
std1ppm-collision20
25-Jan-201011:58:52
CP-daughterscn02 465 (9.305)
1: Daughters of 352ES+
2.79e6
199.90
100
124.89
200
96.80
125
97
%
m/z
400
380
295.73
114.85
152.91
215.87
0
50
図7
60
70
80
90
100
110
120
130
140
150
160
170
180
190
200
210
220
230
240
250
260
270
280
290
m/z
300
クロルピリホス(プレカーサーイオン 352 に対するプロダクトイオン)
std1ppm-collision20
25-Jan-201011:58:52
CP-daughterscn02 465 (9.315)
2: Daughters of 350ES+
5.50e6
197.89
100
198
124.89
96.81
%
125
97
293.74
114.83
152.91
213.87
0
50
図8
60
70
80
90
100
110
120
130
140
150
160
170
180
190
200
210
220
230
240
250
260
270
280
290
m/z
300
クロルピリホス(プレカーサーイオン 350 に対するプロダクトイオン)
650
〔操作ブランク〕
操作ブランク試験のクロマトグラムを図 9 に示す。
sousablnk
18-Feb-201016:34:35
CP-sousablnk01
MRM of 4 Channels ES+
359.9 > 199.1
9.35e4
9.24
100
サロゲート
%
0
CP-sousablnk01
MRM of 4 Channels ES+
351.8 > 199.9
2.40e3
8.17
100
定量イオン
%
8.09
6.58 6.776.90
6.26
10
CP-sousablnk01
8.62
9.27
7.66 7.76
7.52
7.15
9.99
8.33
8.49
10.16
10.21 10.53
9.67 9.75
8.84 9.05
10.32
100
MRM of 4 Channels ES+
349.8 > 96.8
1.23e3
確認イオン
8.06
%
7.55
6.18
6.56 6.66
6.82 6.93 7.20 7.36
8.01
7.90
8.27 8.44 8.54
7.85
8.97 9.05 9.27 9.35
9.48
9.62
8.87
10.48
10.56
9.91
10.83
19
Time
6.50
7.00
図9
7.50
8.00
8.50
9.00
9.50
10.00
10.50
操作ブランク試験クロマトグラム
〔添加回収試験〕
河川水(新町川、B 類型)
、海水(小松島港、B 類型)への標準物質添加回収
実験結果を表 6 に示す。
表6
試料
河川水
海水
添加回収試験結果
試料量
(L)
添加量
(ng)
検体
数
検出濃度
(ng/L)
0.5
無添加
7
0.029
0.5
0.2
5
0.45
0.5
無添加
3
0.025
0.5
0.2
5
0.41
651
回収率
(%)
106.2
96.9
サロゲート
回収率(%)
変動係数
(%)
55.3
12.9
57.2
5.6
63.3
8.4
62.5
6.9
〔分解性スクリーニング試験〕
分解性スクリーニング結果を表 7 に示す。
表 7 分解性スクリーニング試験結果
pH
5
7
9
初期濃度
(ng/mL)
1 時間後の残存率
(%)
0.05
0.05
0.05
100
100
100
7 日後の残存率 (%)
暗所
明所
100
100
93
94
-
〔保存性試験〕
保存性試験結果を表 8 に示す。
河川水、海水の保存性試験は各試料 500 mL に 0.1 ng のクロルピリホスを添加
し、7日後にサロゲートを添加して測定した。
粗抽出液の保存性試験は、添加回収試験の試料(500 mL に 0.2 ng 添加した試
料の固相抽出液)を冷蔵保存し、14 日後に測定した。
表8
試料名
河川水
海水
標準溶液
保存性試験結果
初期濃度
(ng/mL)
0.0002
試料
0.2
粗抽出液
0.0002
試料
0.2
粗抽出液
MDL の 10 倍程度 0.1
10
検量線最高濃度
残存率 (%)
7 日間
100
14 日間
1 ヶ月
105
100
113
100
100
〔定量イオン選定検討〕
[M+H]+である m/z = 350 をプレカーサーイオンとする最大のプロダクトイ
オン m/z = 198 を定量イオンとすると、図 10 のように、常に後ろにピークが現
れるため、塩素の同位体である m/z = 352 をプレカーサーイオンとする m/z = 200
のプロダクトイオンを定量イオンとした。
652
0.04ppb
15-Dec-200916:21:41
CPF-std02
MRM of 3 Channels ES+
349.8 > 198.1
2.50e3
9.32
100
350 > 198
クロルピリホス
9.54
%
14.76
14.44
13.66
13.40
13.30
12.1612.86
8.128.56
8.00
8.62
7.34 7.64
1.74
1.10
1.181.96
0.64
5.98
6.94
3.28
3.663.904.36 5.02 5.40
2.12
14.28
8.98
7.30
13
1.00
2.00
図 10
3.00
4.00
5.00
6.00
14.88
7.00
8.00
9.00
10.00
11.00
12.00
13.00
14.00
Time
15.00
350 > 198 のクロルピリホスクロマトグラム
〔固相の水分検討〕
固相は前処理前に重量を測定し、通水後に元の重量になるまで窒素ガスで脱
水するが、高湿度時は重量測定前にカートリッジに水分を含んでいる場合があ
り、重量測定のみでは完全脱水ができてない場合があるので、固相カートリッ
ジに脱水用のカートリッジを接続して溶出すると、サロゲートの回収率が大幅
に上昇した。
表 9 Sep-Pak Dry の効果
Sep-Pak Dry なし
Sep-Pak Dry あり
河川水サロゲート回収率 (%)
36.6
57.2
(n=5)
〔固相抽出液のイオン化阻害〕
サロゲートの回収率がやや悪いが、メタノールのみにサロゲートを添加した
場合と比較して、精製水 500 mL と河川水 500 mL を採取試料の前処理及び試験
液の調製に従って(サロゲートは添加しない)得られた固相抽出液に、後でサ
ロゲートを添加した場合のサロゲート検出率を測定した結果が表 10 である。こ
の結果は、固相抽出液によりサロゲートがイオン化阻害を受けたものと考えら
れる。
表 6 の河川水と海水の添加回収試験のサロゲート回収率を表 10 のサロゲート
回収率で除して補正すると、それぞれ 79.6%、86.9%となる。すなわち、サロゲ
ート回収率が悪い原因はイオン化阻害によるもので、固相からは 80%程度回収
されていることが判明した。
653
表 10
固相抽出液のイオン化阻害
試料
サロゲート検出率 (%)
100
メタノール(n=2)
82.1
精製水固相抽出液 (n=2)
71.9
河川水固相抽出液 (n=2)
〔固相の検討〕
固相 8 種類について、精製水を用いて、操作ブランク濃度とサロゲート回収
率を求めた。
ブランク濃度(pg/L )
サロゲート回収率(%)
80
70
60
50
40
30
ブランク濃度(pg/L)
サロゲート回収率(%)
20
10
0
1
2
3
4
5
6
7
8
固相
図 11 固相の操作ブランク値とサロゲート回収率
固相
1:PS2 Waters 製
2:PLS-3 ジーエルサイエンス製
3:RP-1 ジーエルサイエンス製
4:PS@Liq 昭和電工製
5:RP-SG1 日立ハイテクノロジーズ製
6:C18 Waters 製
7:OASIS-HLB Waters 製
8:Bond Elut Plexa バリアンテクノロジーズ製
この結果、2 の固相が最適であると考えられるが、河川水での試験では、サロ
ゲート回収率は、1の固相がやや良かったので1の PS2 を使用した。
654
絶対回収率(%)
〔通水時 pH〕
通水時の最適 pH を検討するために、精製水 500 mL の pH を 5 から 9 まで調
整し、クロルピリホスを 1 ng 添加し、試験溶液の調製に従い測定して絶対回収
率を求めた。その結果が図 12 であり、pH 6~8 での通水が回収率は高かった。
80
70
60
50
40
30
20
10
0
5
6
7
8
9
通水時pH
図 12
通水時 pH による回収率の変化
〔固相からの溶出パターン〕
精製水 500 mL にクロルピリホスを 1 ng 添加し、通水、脱水した固相カート
リッジを、バックフラッシュ法により 1mL ずつヘキサンで溶出したパターンを
図 13 に示す。
100
回収率(%)
80
60
40
20
0
1
2
図 13
3
4
ヘキサン溶出量(mL)
5
溶出パターン
バックフラッシュ法により、4 mL で全量が溶出したので、溶出液量は 4 mL
とした。
655
〔環境試料の分析〕
河川水無添加試料は図 2 の MDL 試験試料クロマトグラムに示した。
river-0.2ng
02-Feb-201014:47:29
CP-riv-rec-02
100
9.28
MRM of 4 Channels ES+
359.9 > 199.1
7.86e4
9.31
MRM of 4 Channels ES+
351.8 > 199.9
8.15e3
サロゲート
%
0
CP-riv-rec-02
100
定量イオン
%
7.44
8.21 8.35
8.67
11.73
2
CP-riv-rec-02
12.77
9.31
100
確認イオン
MRM of 4 Channels ES+
349.8 > 96.8
4.36e3
10.29
%
7.60 7.97 8.32
11.39
11.09
9.73
3.92
13.47
13.52
12.56
14.1114.77
Time
4
1.00
2.00
図 14
3.00
4.00
5.00
6.00
7.00
8.00
9.00
10.00
11.00
12.00
13.00
14.00
河川水添加回収試験(0.2 ng 添加)クロマトグラム
sea-blnk
04-Feb-201011:47:35
CP-sea-blnk02
MRM of 4 Channels ES+
359.9 > 199.1
8.84e4
9.24
100
サロゲート
%
0
CP-sea-blnk02
MRM of 4 Channels ES+
351.8 > 199.9
1.23e3
8.06 8.17
100
9.27
定量イオン
8.33
%
9.00
6.26
6.18 6.34
6.61
6.90
6.96
7.09
7.36
8.54 8.65
7.42
9.16
7.47 7.63
9.46
8.89
9.73 9.91 10.24 10.32
12
CP-sea-blnk02
10.26
100
10.69
10.96
MRM of 4 Channels ES+
349.8 > 96.8
1.32e3
確認イオン
%
6.10
12
6.00
6.47 6.56
6.50
図 15
6.82
6.96 7.07
7.00
7.28
7.50 7.68
7.50
7.95
8.06
7.90
8.00
9.30
8.27 8.36 8.57
9.00 9.11
9.56 9.62
8.79
8.50
9.00
9.50
9.75 9.81
10.13
10.00
10.69
10.85
10.50
海水無添加クロマトグラム(小松島港、B 類型)
656
Time
11.00
sea-0.2ng
04-Feb-201015:28:39
CP-sea-rec-01
100
9.27
MRM of 4 Channels ES+
359.9 > 199.1
7.06e4
9.32
MRM of 4 Channels ES+
351.8 > 199.9
8.22e3
サロゲート
%
0
CP-sea-rec-01
100
定量イオン
%
8.25
11.77
8.38
10.05
11.45
3
CP-sea-rec-01
MRM of 4 Channels ES+
349.8 > 96.8
12.90
4.58e4
100
確認イオン
%
9.32
0
Time
1.00
2.00
図 16
3.00
4.00
5.00
6.00
7.00
8.00
9.00
10.00
11.00
12.00
13.00
14.00
海水添加回収試験(0.2 ng 添加)クロマトグラム
海水からも河川水と同様に MDL から MQL レベルの間のクロルピリホスが検
出された。
【評価】
環境水中に含まれるチオりん酸 o,o-ジエチル-o-(3,5,6-トリクロロ-2-ピリジル)
(別名:クロルピリホス)の定量分析法を開発した。本法の MDL は 0.015 ng/L、
MQL は 0.038 ng/L であった。河川水及び海水を用いた添加回収試験(添加量
0.2ng)の回収率はそれぞれ 106.2%(サロゲート回収率 57.2%、変動係数 5.6%)、
及び 96.9%(サロゲート回収率 62.5%、変動係数 6.9%)であった。以上の結果
から、本法は環境水中に含まれる 0.02 ng/L オーダーのクロルピリホスの検出に
適用可能であると判断される。
【参考文献】
環境庁保健調査室編 昭和 62 年度 化学物質分析法開発調査報告書、
岡山県環境保健センター p134~142
【担当者連絡先】
所属先名称:徳島県保健環境センター
所属先住所:〒770-0941 徳島市万代町 5-71
TEL:088-625-7751 FAX:088-625-1732
担当者名 :大野ちづ子、藤井伸基
E-mail
:[email protected], [email protected]
657
O,O-diethyl-O-(3,5,6-trichloro-2-pyridyl)phosphorothioate
(Chlorpyrifos)
This method provides procedures for the determination of chlorpyrifos in water
samples by liquid chromatography/tandem mass spectrometry (LC/MS/MS). Ionization
mode is positive ESI (electrospray ionization). Five hundred milliliters of water sample
is spiked with chlorpyrifos-d10 as the surrogate standard and filtered through a
glass-fiber filter (pore size 1 μm) prior to extract. Then a water sample is applied to
preconditioned Sep-Pak plus PS2 cartridge at a flow rate of 20 mL/min or less. After
passing through, the cartridge is rinsed by purified water and dehydrated using nitrogen
gas. Then the PS2 cartridge is joined with Sep-Pak dry cartridge, and eluted with 4 mL
of hexane using back flush method. The filter paper is suctioned for 15 minutes and
eluted with 5 mL of hexane. Then the extract is dehydrated with anhydrous sodium
sulfate and combined to solid phase extract. The extract is concentrated to nearly
dryness under gentle stream of nitrogen gas, and redissolved in 1 mL of methanol. The
components are determined in the selected-reaction-monitoring (SRM) mode as the
precursor/product ion pair of m/z 352/200 for chlorpyrifos and of m/z 360/199 for the
surrogate standard chlorpyrifos-d10. The method detection limit (MDL) and the method
quantification limit (MQL) are 0.015 and 0.038 ng/L, respectively. The average of
recoveries (n = 5) from 0.2 ng chlorpyrifos added surface water from the river and sea
were 106.2% and 96.9% (the average recoveries of surrogate: 57.2% and 62.5%), and
the relative standard deviation were 5.6% and 6.9%, respectively. Using this method,
the target compounds in the river water (the Shinmachi River) and sea water (the
Komatsushima Port) were 0.029 and 0.025 ng/L.
Water sample
Filtration
Filter
500 mL
Clean up spike
(chlorpyrifos-d10 2 ng)
Drying
Extraction
through air
with pump
hexnae 5 mL
Solid phase
Filtrate
Sep-Pak plus PS2
20 mL/min
Elution
Connection of
Sep-Pak Dry
back flush
hexane 4 mL
Concentration
N2 gas
658
anhydrous
Na2SO4
Wash
Dehydration
purified water
10 mL
Solvent exchange
methanol 1 mL
to ca. 0.1 mL
Dehydration
N2 gas
LC/MS/MS-SRM
ESI-Positive
物質名
分析法フローチャート
備考
分析原理:
【水質】
チオりん酸 O,O-ジエ
LC/MS/MS-SRM
チル-O-(3,5,6-トリク
ESI(+)
500 mL
水質試料
ロロ-2-ピリジル)
サロゲート添加
(クロルピリホス-d10 2 ng)
別名:クロルピリホ
ス
検出下限値:
【水質】(ng/L)
0.015
ろ過
分析条件:
ろ紙
機器
ろ液
LC: Waters
乾燥
吸引通気
固相抽出
Sep-Pak plus PS2
20 mL/min
Alliance 2695
MS: Waters
Quattro Micro
抽出
ヘキサン 5 mL
水洗
精製水 10 mL
カラム
Mightysil
脱水
無水Na2SO4
脱水
窒素ガス
濃縮
バックフラッシュ
ヘキサン 4 mL
窒素ガス
約0.1 mLまで
転溶
メタノール 1 mL
LC/MS/MS-SRM
ESI-Positive
659
MS
150 mm × 2.0 mm、
Sep-Pak Dry連結
溶出
RP-18
5 μm
Fly UP