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「英国2016年度財政法案」「ブラジル対外不均衡」

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「英国2016年度財政法案」「ブラジル対外不均衡」
BTMU Global Business Insight
EMEA & Americas
June 17, 2016
Ⅰ.最近の中国企業によるドイツ企業買収動向
三菱東京 UFJ 銀行
デュッセルドルフ支店
企画課
調査担当
小林
税務パートナー
国際通貨研究所
…
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…
10
ニック・ニコラウ(Nick Nicolaou)
Ⅲ.ブラジルの対外不均衡は縮小中
公益財団法人
2
敏雄
Ⅱ.英国の 2016 年度財政法案とその他の予算案発表
Greenback Alan LLP
…
経済調査部
上席研究員
森川
央
・本資料は情報提供を唯一の目的としたものであり、金融商品の売買や投資などの勧誘を目的としたものではありません。
本資料の中に銀行取引や同取引に関連する記載がある場合、弊行がそれらの取引を応諾したこと、またそれらの取引の実
行を推奨することを意味するものではなく、それらの取引の妥当性や、適法性等について保証するものでもありません。
・本資料の記述は弊行内で作成したものを含め弊行の統一された考えを表明したものではありません。
・本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成されていますが、その正確性、信頼性、完全性を保証するものではあ
りません。最終判断はご自身で行っていただきますようお願いいたします。本資料に基づく投資決定、経営上の判断、そ
の他全ての行為によって如何なる損害を受けた場合にも、弊行ならびに原資料提供者は一切の責任を負いません。実際の
適用につきましては、別途、公認会計士、税理士、弁護士にご確認いただきますようお願いいたします。
・本資料の知的財産権は全て原資料提供者または株式会社三菱東京 UFJ 銀行に帰属します。本資料の本文の一部または全部
について、第三者への開示および、複製、販売、その他如何なる方法においても、第三者への提供を禁じます。
・本資料の内容は予告なく変更される場合があります。
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BTMU Global Business Insight
EMEA & Americas
Ⅰ.最近の中国企業によるドイツ企業買収動向
近年、特に経済面におけるドイツと中国との間の関係強化について、ドイツのメディアでも取り上げ
られることが多い。中国は、ドイツの輸出先ランキングで 2000 年の 11 位(香港を含む)から 2015 年に
は 5 位に大きく上昇し、輸出金額もこの間に 4 倍以上となった(ちなみに 2015 年にドイツの最大の輸出
先となった米国は 2 倍弱の伸び)
。また輸入先として中国は 2015 年に 1 位であり、ドイツ経済における
中国の存在感は大きく高まっている。
両国間の貿易金額に加え、最近クローズアップされているのは、中国企業によるドイツ企業の M&A
である。中国企業による外国企業の買収は年々増加傾向にあるが、欧州での買収件数は 2011 年以降、英
国を抜きドイツが最多となっている(図 1)
。また 2014 年の中国による欧州域内への投資のうち 40%が
ドイツ向けとされる
(図 1)中国企業によるドイツ及び英国企業買収件数
(資料)EY より三菱東京 UFJ 銀行デュッセルドルフ支店作成
こうした中、中国企業によるドイツ企業買収の目的や業種にも変化が見られるようになっている。ド
イツには「隠れたチャンピオン」と呼ばれる、一般的な知名度は低いものの、高い技術力を背景に特定
の分野においてグローバル市場でトップシェアを有する中小企業が多数存在している。中国企業も世界
の組み立て工場から自前の技術力向上を目的に、これまでドイツの中堅中小メーカーを数多く買収して
きた。
最近の中国企業における M&A の目的に関する調査では、以前高い割合を占めた製造技術・ノウハウ
獲得への関心は減少傾向にあり、被買収企業の持つ高いブランド力や、従来から有している商圏の
獲得を求める戦略が強まっている(図 2)。業種別では引き続きドイツ企業が強い機械・自動車部品が多
いものの、これまで買収実績が少なかった生活用品や被服などの消費財メーカーや、技術面でもデジタ
ル技術や環境技術への関心が高まっているのも最近の傾向である(図 3)
。
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BTMU Global Business Insight
EMEA & Americas
(図 2)ドイツ企業買収の目的
(資料)MelchersRaffel より三菱東京 UFJ 銀行デュッセルドルフ支店作成
(図 3)業種別買収案件の推移
工業(製造業)
自動車
テクノロジー
エネルギー
鉱業・金属加工
消費財
ライフサイエンス
輸送・ロジスティクス
不動産
金融
その他
2013
11
5
3
1
1
4
0
0
0
0
0
2014
11
8
6
3
3
3
0
1
0
0
0
2015
12
4
2
0
0
6
5
3
1
1
2
(資料)EY より三菱東京 UFJ 銀行デュッセルドルフ支店作成
企業買収の動機の変化は、中国企業の技術力が着実な進歩を遂げ、一部の最先端技術を除き、一般製
品では日本や欧米のメーカーと比しても遜色の無いレベルへと向上しつつあることの裏返しともいえ
よう。更に中国は自国製造業の更なる発展を目的に、昨年ドイツのインダストリー4.0 に倣い“Made in
China 2025”を打ち出しており、製造工程のオートメーション化に寄与する高いデジタル技術やソフトウ
ェア開発能力を誇る企業が次なる買収のターゲットとなる可能性もある。
またこれまで中国企業によるドイツ企業の買収先は、隠れたチャンピオンに代表される小規模企業が
多かったが、最近は大規模な M&A も見られるようになっている。特に 2016 年に入り大型買収案件が相
次いでおり、第 1 四半期の買収案件 12 件の総額は 32 億ドルとなり、第 1 四半期のみで過去 5 年間の通
年実績を上回る水準を記録した。中国企業によるドイツ企業の買収としては 2012 年のプッツマイスター
(建設機械、買収金額 6 億 9,400 万ドル)が大型案件として当時盛んに報道されたが、2016 年に入り 1
月には機械メーカーの Kraus-Maffei(10 億 1,100 万ドル)、2 月には廃棄物発電メーカーEEW(15 億 7,600
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EMEA & Americas
万ドル)などの大型案件が相次いでいる(図 4)
。
大型の買収案件が増加している背景としては、豊富な資金力を持つ中国企業が、最近の中国経済の減
速に伴う国内需要の縮小を背景に、投資の矛先をますます海外に向けていることにある。また従来は国
営企業が政府の後ろ盾を得て買収を行うケースが中心であったが、最近は民間企業による買収も目立つ
ようになっており、海外のハイテク企業買収の際に中国国内で補助金支給や税制面での優遇が得られ
やすいことも民間企業による買収を後押ししていると見られる。
(図 4)中国企業による主なドイツ企業買収案件
時期
買収金額
(百万ドル)
1,690
被買収企業(ドイツ)
Kion(自動車部品等)
2012
2013
2014
2015
Weichai Power
金額は12年~15年の総額
Preh(自動車部品)
Putzmeister(建設機械)
KHD Humboldt Wedag International(環境技術
等)
183
694
Liaoyuan Joyson Elec
Sany Heavy Industry
343
AVIC
SAG Solarstrom(太陽光発電)
237
Shunfeng Photovoltaic
Hilite International(自動車部品)
ZF Friedrichshafen, Gummiund Plastiksparte(自動車部品)
644
Hazemag&EPR(機械製造)
138
AVIC
Zhuzhou Times
New Materials
Sinoma International
Engineering
Hanwha SolarOne
399
Hanwha Q Cells(太陽光発電)
1,199
Bilfinger Water Technologies
(水関連技術)
2016
買収企業(中国)
224
Chengdu Techcent Env.
EEW Energy from Waste
(エネルギー供給・廃棄物処理)
1,576
Beijing EnterprisesGroup
Krauss-Maffei(機械製造)
1,011
Chem China 他
イタリック:未締結
(資料)ハンデルスブラット紙より三菱東京 UFJ 銀行デュッセルドルフ支店作成
更に、ドイツ企業の中国企業に対する見方に次第に変化が生じていることも大きな要因になっている
と考えられる。以前は、中国企業による買収・提携により、知的財産、パテント、技術などの面で中国
側への提供・開示が要求され、一定期間を過ぎた後に約束が反古にされるなどのケースがドイツのメデ
ィアでも喧伝されることも多かった。また解雇規定や労働時間等、労働者の権利が保護されているドイ
ツと比して、法整備の未成熟な中国の企業に買収されると、労働コストが相対的に高いドイツでの国内
の立地・雇用が喪失し、産業空洞化が進むとの不安も根強かった。
事実 2012 年のプッツマイスター買収の際は、労働組合からは「中国企業へたたき売りした」と激しい
憤りの声が沸きあがったが、その後ドイツの立地を保証する取り決めがなされ、2015 年には更に 5 年間
取り決めが延長されたことで、この様な不安の声は沈静化している。また最近では、長い歴史と伝統を
誇るドイツのピアノメーカー Schimmel が世界最大のピアノメーカーである中国 Pearl River に買収され
ることが発表されたが、Pearl River は買収後も Schimmel を欧州及びドイツ市場を牽引する重要拠点と
して従来の体制と経営の独立性を維持することを明言しており、被買収企業側に配慮した形での経営統
合が進められると見られる。中国企業による被買収先のガバナンスにおいて実績が積み上げられてきた
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ことで、最近では中国企業へのアレルギーが低下しており、企業の買収にも理解が得られやすくなって
いると考えられる。
しかし乍ら、中国企業側にとってドイツ企業買収後の課題は大きいと思われる。買収の対象が製造技
術そのものから、知的財産やブランド、また市場の拡大などへも多様化する中で、中国企業側にそれを
うまく受け入れ、自社技術に活用させる下地が整わなければ、買収が単なる資金面でのスポンサーに留
まってしまう懸念が残る。またこれらの無形資産は、急速な技術革新の中で十分な研究開発費の投入無
しには陳腐化してしまうリスクも高い。多くの従業員を抱える大企業の場合、人件費が高止まりしてい
るケースもあり(それ故に外資企業の傘下に入ることになった会社も多い)
、事業が買収当初の目論見と
比して下降局面に陥った場合は、当初の想定を大きく上回るコスト負担が生じる可能性もある。
中国企業の最近の動きは、日系企業が自社技術を補完する技術・製品の獲得を目的に主な買収のター
ゲットを引き続き「隠れたチャンピオン企業」としている状況と比して、かなりリスク面で踏み込んでい
る感がある。しかしながら、中国企業がこの様な課題を乗り越え市場での存在感を高めてくれば、元々
買収先企業は高い技術力を有しているだけに、日系企業にも非常に大きな脅威となるものと思われる。
ドイツ市場において攻勢を強める中国企業の動向は、ドイツ企業との連携を模索する日本企業にとって
も非常に注目すべき事象であり、今後ともよく注視していく必要があろう。
記事提供:三菱東京 UFJ 銀行 デュッセルドルフ支店
企画課 調査担当 小林俊雄
(2016 年 5 月 6 日作成)
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Ⅱ.英国の 2016 年度財政法案とその他の予算案発表
2016 年 3 月に英国財務相が 2016/2017 年度予算案を発表したのに続き、政府は 2016 年度財政法案を
公表しました。今後、議会で可決されれば 2016 年度財政法が成立・発効されます。同法案の主要点は以
下の通りです。
事業課税
法人税の税率は 2020 年 4 月 1 日から 17%に引き下げられます。また、当初の計画通り、この前の
段階として 2017 年 4 月 1 日から同税率が 20%から 19%に引き下げられます。
2017 年 4 月 1 日から、企業の利益が 500 万ポンドを超える場合に繰り越して相殺できる損失は、最
大で利益の 50%に制限されます。グループ企業の場合は改定され、500 万ポンドの許容額がグルー
プ全体に適用されます。現行のストリーミング・ルールは、2017 年 4 月 1 日以降に生じる損失によ
る相殺については、繰り越す際に他の収入源やグループ内の他の企業の利益と相殺できるようにな
ります。
2017 年 4 月 1 日から、大手多国籍企業が利子費用について損金として所得控除を受けることを制限
する新たな規則が導入されます。利払いに対する控除は英国における EBITDA の 30%に制限され
ますが、グループ企業で、グループの利子費用:EBITDA 比率が 30%より高い場合は、その比率を
制限比率として使用することができます。
ロイヤルティーについては、租税条約または欧州連合(EU)の利子・ロイヤルティー指令により
課税権を放棄している場合を除き、政府は源泉徴収制度を改正して英国で発生する全ての国際的な
ロイヤルティーの支払いについて、所得税の課税を適用します。この改正の狙いは以下の通りです。
- 英国の源泉徴収税が課されるロイヤルティーの支払いに、従来よりも広い定義を適用する。
- 租税条約の悪用を取り締まる国内規定を設けて、例えばロイヤルティーを源泉徴収せずにタッ
クス・ヘイブン(租税回避地)を活用して支払うことを阻止する。
- たとえロイヤルティーが英国内で支払われない場合でも、英国の恒久的施設(PE)に起因する
支払いには必ず英国の源泉徴収税を適用する。
ハイブリッド・ミスマッチ(複数国間での税務上の取り扱いの差異)の取り決めに対処するため、
2017 年 1 月 1 日から適用される新たな法規が盛り込まれています。これにより、多国籍企業が国境
を越えた事業構造や財務取引の利用により租税を回避することを阻止します。
経済協力開発機構(OECD)が策定した一連の新たな国際ルールを順守するため、パテントボック
ス税制が改正されます。この新ルールにより、税制優遇を求める企業が支払った研究開発費の程度
に応じた低税率、またはその費用の程度に比例した低税率が設けられます。この改正は 2016 年 7
月 1 日から施行されます。
大企業による研究開発費の課税控除の請求方法が改正されたため、中小企業が引き続き法規で定め
られた計算方法で控除による恩恵を受けられるよう修正が行われました。この修正を導入しなけれ
ば、2016 年 4 月 1 日以降、中小企業に対して当該控除は適用されません。
政府は、英国の居住用不動産の開発において、英国の開発事業者と英国以外の開発事業者の公平性
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を徹底するよう取り組んでいます。英国の土地取引や開発から発生する営業利益への課税について、
一連の標準規則が法規により導入されます。この法規は議会の報告審議を経て導入され、導入日か
ら施行されます。また、一般租税回避防止規則(GAAR)が予算発表日に施行され、巧妙な租税回
避に関する取り決めが設けられることを防ぎます。新規則は、英国内に PE を持たない国外の開発
事業者にも適用され、開発事業者が用いる事業構造によって、所得税または法人税のいずれかが利
益に対して課税されます。
個人課税
所得税率が課されない基礎控除額については、2016/2017 年度の 1 万 1,000 ポンドから、
2017/2018
年度には 1 万 1,500 ポンドに引き上げられます。40%の高所得税率が適用される課税所得の下限は、
2016/2017 年度の 3 万 2,000 ポンドから、2017/2018 年度には 3 万 3,500 ポンドに引き上げられる
ため、高所得税率が適用される所得の下限は基礎控除額を含めると 2016/2017 年度は 4 万 3,000
ポンド、2017 年/2018 年度は 4 万 5,000 ポンドになります。社会保険料(NIC)の所得基準額につ
いても、高所得税率が適用される所得額の下限に沿って引き上げられます。
2017 年 4 月から、不動産収入に対して 1,000 ポンド、取引収入に対して 1,000 ポンドの新たな控除
額が導入されます。これにより不動産収入と取引収入が 1,000 ポンド以下の個人は、その収入につ
いての申告・納税いずれも不要となります。1,000 ポンドを超える収入がある場合は、通常通りに
費用を控除するか単純に 1,000 ポンドの控除を利用できます。
従来の配当控除は 2016 年 4 月から撤廃され、新たに年間 5,000 ポンドの配当控除が導入されます。
この控除額を超える配当収入に対しては、以下のような税率が適用されます。
- 基本税率(20%)の納税者:7.5%
- 高所得税率(40%)の納税者:32.5%
- 最高税率(45%)の納税者:38.1%
2017 年 4 月から英国のノンドミサイル(非永住者・永住する意思のない者)の個人は、過去 20 年
間の課税年度のうち英国での居住期間が 15 年間の場合、ドミサイル(永住者・英国に定住する意
思のある者)と見なされます。これは 2015 年夏の予算案で発表されました。また、英国生まれで
元は英国のドミサイルであった個人は、英国に居住する間はドミサイルに戻ります。さらに政府は、
英国外の組織を通じて間接的に保有する英国の全ての住居用不動産に対して、2017 年 4 月 6 日から
相続税(IHT)を課すことを法制化します。
キャピタルゲイン課税(CGT)
、付加価値税(VAT)、土地印紙税(SDLT)
2016 年 4 月 6 日以降に適用される資産譲渡に対する CGT の税率は、以下のようになります。
- 高所得税率を適用されない納税者(個人)に対しては、18%から 10%に軽減。
- その他の納税者に対しては、28%から 20%に軽減。
- 個人の居住用不動産としての控除が適用されない居住用不動産の譲渡、およびキャリード・イン
タレスト(成功報酬)には、引き続き 18%と 28%の税率が適用される。
納税者が、利用していない所得税の基本税率の区分を最も有利な方法で利用できる規定が導入され
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ます。
VAT 税率に変更はないため、標準税率は 20%、軽減税率は 5%となります。
VAT 登録が必要となる売上高の最低額は、年間 8 万 2,000 ポンドから 8 万 3,000 ポンドに引き上げ
られます。
VAT 登録者が登録抹消を適用できる売上高は、年間 8 万ポンドから 8 万 1,000 ポンドに引き上げら
れます。また、EU 内での買収による VAT 登録と登録抹消の金額についても、年間 8 万 2,000 ポン
ドから 8 万 3,000 ポンドに引き上げられます。
オンライン市場を通じて英国の消費者に販売した商品の売上高に対する VAT 支払いを回避する国
外企業の一部の不履行に対処するため、歳入関税庁(HMRC)の権限を強化する改正が行われます。
この改正は 2 点あり、HMRC は自動的には適用せず、順守について非常に高いリスクがある場合
に対処する時のみ適用します。一つ目の改正は、HMRC が国外企業に対して VAT 代理人を指名す
るよう指示する権限を強化するもので、これには VAT 代理人を英国内に置くことを求める権限も
含まれます。
もう一つの改正は、オンライン市場を通じて英国で販売された商品の VAT を国外企業が支払わな
い場合に、HMRC がオンライン市場運営者に連帯支払い責任を負わせることができるようになり
ます。
非居住用不動産の購入および居住用・非居住用の不動産が混在する取引に課せられる SDLT は、2016
年 3 月 17 日以降の取引に適用される部分について改正されました。同日以降の SDLT は、購入価
格のうち各税率区分に該当する部分について、それぞれの税率が課せられます。取引価格の区分と
新税率は以下の通りです。
新たなリースホールド(定期賃貸権)の取引については、各区分に該当する賃貸料の正味現在価値(NPV)
の部分に対して SDLT の各税率がすでに変更されています。2016 年 3 月 17 日以降は、非居住用のリース
で支払われる賃貸料に対して、賃貸料の NPV が 500 万ポンドを超える場合に新たに 2%の税率が導入さ
れました。リースで支払われる賃貸料の NPV に対する区分と適用税率は以下の通りです。
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EMEA & Americas
セカンドホームや不動産投資のように自身が居住する不動産の他に居住用不動産を購入する場合には、
SDLT のうち高い税率が課せられるようになります。この税率は、現行の SDLT の税率に 3%が上乗せさ
れる形となります。
記事提供:Greenback Alan LLP
税務パートナー ニック・ニコラウ(Nick Nicolaou)
(2016 年 4 月 19 日作成)
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Ⅲ.ブラジルの対外不均衡は縮小中
ブラジルの4月の経常収支は+4 億ドルの黒字となった。単月ながら黒字となるのは 2009 年4月以来
7年ぶりである。1~4 月累計では-72 億ドルの赤字であるが、これは昨年(2015 年)1~4 月期の-319
億ドルの赤字と比較すると実に 77%減である。
以下 1~4 月期で比較していこう。
輸出は昨年の 576 億ドルから 19 億ドル減少し 557 億ドルであった。
まだ減少が続いている。一方、輸入は昨年の 631 億ドルから 432 億ドルへと 199 億ドルも減った。率に
すると 31%の減少である。内需の低迷、レアル下落による国産品へのシフトが対外不均衡の是正を強く
促していると言える。この結果、貿易収支は昨年の-55 億ドルから+124 億ドルへと符号が逆転した。
図表 1.ブラジルの対外収支
(億ドル)
経常収支
貿易収支
輸出
輸入
サービス収支
所得収支
資本・金融勘定
金融勘定
直接投資
資産
負債
ポートフォリオ投資
資産
負債
デリバ取引
その他
資本勘定
外貨準備
誤差脱漏
(資料)ブラジル銀行
2016年
2015年
2015年
1-4月
1-4月
通年
-72
-319
-589
124
-55
177
557
576
1901
432
631
1724
-87
-136
-369
-108
-128
-397
-51
-320
-543
-45
-354
-563
-211
-100
-616
27
89
135
238
189
751
41
-251
-220
-9
-8
-35
-50
243
185
-3
9
34
128
-12
239
1
1
4
-6
32
16
19
12
37
サービス収支は昨年の-136 億ドルの 3 ケタの赤字から-87 億ドルに縮小した。旅行収支の赤字縮小
が大きい(-48 億ドル→-17 億ドル)
。不況のせいで、所得の流出(海外への利益や配当の送金)も増
加しなかったので、所得収支も-128 億ドルから-108 億ドルへ小幅ながら赤字が縮小している。
資本取引面をみると、資本の純流入が大きく鈍化している。ポートフォリオ投資とその他(貸出など)
投資がネットで資本流出となっている 1。同じく 1~4 月を見ると、金融勘定(民間の資本取引を示す)
は 354 億ドルの流入から 45 億ドルの流入に激減している。内訳はポートフォリオ投資が 41 億ドルの流
出、その他投資が 128 億ドルの流出となっている。但し、直接投資は流入が増加している。昨年の流入
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額は 100 億ドルの流入であったのに対し今年は 211 億ドルとなっている。短期間に逃避する可能性がな
い直接投資だけで経常赤字をファイナンスできていることは、ブラジルにとって大きな安心材料と言え
よう。
ただし、現在起こっていることは景気悪化による縮小均衡であり、ブラジルの将来にとって必ずしも
よいことではない。ポートフォリオ投資など脚の早い投資の流出は、その不安を反映していると考えら
れる。今後も流出が続くようであれば、必ずしも安泰とは言えなくなる。
投資家の不安は財政赤字の拡大と、それを収拾できない政治情勢に根差している。テメル暫定政府の
赤字縮小への手腕が問われている。
1 資本・金融勘定は資産-負債と表記するので、マイナスが資本の流入を示す。
記事提供:公益財団法人 国際通貨研究所
経済調査部 上席研究員 森川 央
(2016 年 5 月 30 日作成)
(編集・発行) 三菱東京 UFJ 銀行 国際業務部
(照会先)高垣 恭 北村 広明
(e-mail): [email protected]
・本資料は情報提供を唯一の目的としたものであり、金融商品の売買や投資などの勧誘を目的としたものではありません。
本資料の中に銀行取引や同取引に関連する記載がある場合、弊行がそれらの取引を応諾したこと、またそれらの取引の実
行を推奨することを意味するものではなく、それらの取引の妥当性や、適法性等について保証するものでもありません。
・本資料の記述は弊行内で作成したものを含め弊行の統一された考えを表明したものではありません。
・本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成されていますが、その正確性、信頼性、完全性を保証するものではあ
りません。最終判断はご自身で行っていただきますようお願いいたします。本資料に基づく投資決定、経営上の判断、そ
の他全ての行為によって如何なる損害を受けた場合にも、弊行ならびに原資料提供者は一切の責任を負いません。実際の
適用につきましては、別途、公認会計士、税理士、弁護士にご確認いただきますようお願いいたします。
・本資料の知的財産権は全て原資料提供者または株式会社三菱東京 UFJ 銀行に帰属します。本資料の本文の一部または全部
について、第三者への開示および、複製、販売、その他如何なる方法においても、第三者への提供を禁じます。
・本資料の内容は予告なく変更される場合があります。
~本レポートに関するアンケートも実施中~
(回答時間:10 秒。回答期限:2016 年 6 月 30 日)
https://s.bk.mufg.jp/cgi-bin/5/5.pl?uri=ia7tWh
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