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柴 健次 - 会計人コース

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柴 健次 - 会計人コース
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会計人コ−ス
新4 3 回
税理士試験新試験委員のプロフィ−ル
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簿記論
簿記論
税理士試験新試験委員のプロフィール
柴
次委員の横顔と学説
九州大学経済学研究院 助教授
1.は じ め に
このたび,税理士試験委員に関西大学商学部教
授柴
澤
紀生
(LSE)において在外研究を行われている。二度
目の在外研究では前半をロンドン大学で過ごされ
た後,後半の6ケ月間はスペインのアルカラ大学
次先生が就任されることになった。日頃
を拠点として精力的に研究活動を展開された。驚
より柴先生の薫陶を得ている者のひとりとして筆
くべきことに初めて訪れたスペインでのわずか半
者は,先生のお人柄と学説についてつたないなが
年の滞在期間中に5回もの学会報告を行われてい
らも紹介させていただく。
る。むろんその報告はスペイン語で行われたもの
である。
2.柴先生の略歴
柴先生は1978年に大阪府立大学経済学部を卒業
学界では,日本会計研究学会評議員,ディスク
ロージャー研究学会副会長,日本地方自治研究学
会常任理事,国際
会計学会常任理事等々の要職
後,神戸商科大学大学院経営学研究科に進学さ
を努められており,また企業財務制度研究会委
れ,1982年に大阪府立大学経済学部に助手として
員, 設業振興基金 設業経理研究会委員,大学
赴任されている。その後,同大学教授等を経て,
評価・学位授与機構委員などを歴任されている。
1996年に関西大学商学部教授に着任され現在に至
端からみていても,その精力的な活動ぶりには驚
っている。
嘆するばかりである。
大学院において最初に取り組まれた研究課題が
外貨換算会計であり,同じ時期に恩師吉田寛教授
とともにジョージ・M・スコットの『時価会計−
3.柴先生のお人柄と学説
測定と効用』(税務経理協会,1980年)を訳出され
その他にも柴先生は会計フロンティア研究会,
ている。柴先生の研究領域は広大かつ多様である
造空間「日本」(CSN),未来簿記研究所,イベ
が,評価論を軸とする独自の計算構造論を基礎に
ロアメリカ社会文化研究所(ISOCIA)等々,数
会計と環境との相互作用について探求されている
多くの私的研究会・勉強会の中心となって活躍さ
その姿勢は研究生活の最初から一貫している。そ
れている。筆者がはじめて柴先生の知己を得たの
の成果は,1991年度日本会計研究学会学会賞を受
もそのような研究会のひとつにおいてであった。
賞した論文「金融資産の証券化と資産の認識」
個性的としか言いようのない風貌の柴先生が,研
(『会計』第139巻第6号)として結実している。
究会の最中においては切れ味鋭い議論をびしばし
その間,1993年から1994年にかけての9ヶ月間
と展開されているのに圧倒され,研究会が終わっ
と2001年の半年間の二度にわたりロンドン大学
た後もさらにさえわたる弁舌にすっかり魅了され
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たことを昨日のことのように思い出す。
たものであり,続いて執筆された「金融資産の証
柴先生はこれまでに著書だけでも『外貨換算会
券化と資産の認識」は,資産の認識問題という観
計論』(大阪府立大学経済学部叢書,1987年),『グロ
点から,金融資産の証券化が伝統的な会計の概念
ーバル経営会計論』(共編著,税務経理協会,1997
では捉えきれない問題を有していることを明らか
年)
,
『日本企業の会計実態』(共編著,白桃書房,
にした論文である。この論文が日本会計研究学会
1999年)
,
『テキスト金融情報会計』(中央経済社,
学会賞を受賞したことは既に述べたとおりであ
1999年)
,
『自己株式とストック・オプションの会
る。
計』(新生社,1999年),『市場化の会計学』(中央経
近著『市場化の会計学』は,現時点における柴
済社,2002年)を執筆されており,そのいずれも
会計学の集大成であり,この書物によって多様性
が新しいフロンティアを切り開いた業績として高
によってのみ特徴付けられているかに見えた柴先
く評価されている。
生の仕事が,実は「市場化現象」を勘定によって
個別研究テーマのレベルでいうと,外貨換算会
表現・理解しようとしてきたものであり,つまり
計,時価会計,インフレーション会計,金融商
は問題意識と研究方法において首尾一貫している
品・デリバティブ会計,自己株式会計,
会計,
ことが明らかにされた。表面的には全く異なるよ
ディスクロージャーの実態調査,英国会計等の各
うにみえる外貨換算会計研究と日本企業のディス
国会計研究と多岐にわたっており,とてもひとり
クロージャー意識の実態調査,あるいは金融商品
の研究者がなし得る仕事とは思えないほどであ
の評価問題とイギリスの
る。しかし,このように多様な柴先生の仕事も,
化」の異なる諸相にしかすぎず,したがって共通
そのルーツをさかのぼると大学院時代の外貨換算
の観点から扱われるべき問題だったのである。た
会計の研究と,大阪府立大学赴任後すぐに取り組
しかに,固定相場制が崩壊し変動相場制に移行し
まれた地方債の研究にたどり着くことが出来る。
たからこそ外貨換算が会計問題となったのであ
外貨換算会計の研究は,多国籍企業の会計問題
り,企業が株式市場の動向を尊重せざるを得なく
や,経済の金融化・グローバル化に伴う会計諸問
なったことから日本企業のディスクロージャー・
題への探求へと発展し,地方債の研究はパブリッ
マインドも変化し,新金融商品が
ク・セクターの会計問題の研究へと展開してい
そ金融商品の会計問題が生じ,民営化が進展した
る。
からこそ 会計問題が浮上したのである。
金融商品・デリバティブ会計の研究や
会計の
会計研究は全て「市場
生したからこ
2000年に 表された「非営利簿記と営利簿記に
研究に見られるように,柴先生の仕事の多くは新
関する一
察」(『 会計研究』第2巻第1号)は,
しい会計問題をいちはやく取り上げたパイオニア
市場化現象を勘定的に理解するばかりでなく,勘
的な性格をもつものである。グローバル化という
定的思 を通じて簿記や会計そのものを正確に理
言葉が一般的ではなかった1987年の時点で,すで
解しようとしたものである。この論文は,市場化
に論文「金融のグローバル化と会計問題」(日本
の進展に従い営利組織会計と非営利組織会計の差
銀行金融研究所『金融研究』第6巻第4号)を
表
異が縮小する傾向にあることを明らかしたうえ
されていることなど驚くばかりである。しかも,
で,複式簿記が導入されたとしても非営利組織の
先生の研究は新しい会計問題を勘定的に表現する
効率性が向上するという根拠はなく,むしろ簿記
ことで,その本質を明らかにしているのが特徴で
そのものの意義は収入から支出までを跡付けるこ
ある。例えば,1990年の論文「金融の証券化と会
とにあることが主張されている。このように,市
計問題」(『旬 刊 経 理 情 報』第577-579号)は,当 時
場化に伴う様々な現象を勘定的思
まだ日本に根付いていなかった資産担保証券(金
し,さらにそれによって会計そのものの理解を深
融の証券化によって生みだされる新しい諸証券の
めようとしているのが柴会計学なのである。
によって
析
称)について,証券化の仕組みを勘定的に表現し
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(
『企業会計』第53巻第1-12号,2002年)として
4.おわりに
表
されている。
柴先生がロンドンにおいて二度目の在外研究生
一緒に研究活動をさせていただいて改めて感じ
活を送られた時期に,幸運にも筆者は同じ英国で
たのが,柴先生の知的成果は,決して受け身にな
国際会計基準形成過程の研究を行っていた。英国
らず精力的に活動することで生みだされてきたも
に来て半年も過ぎ,遅々として進まぬ研究に悩ん
のであるということである。だからこそ世間の常
でいたとき,とある会食の場で柴先生と一緒にな
識に囚われず新しい現実を直視して,そのなかで
った。私の悩みを聞いた先生は開口一番「ツウィ
なにが可能であるのかが論じられているのであ
ーディー達に聞いたらええんや」とおっしゃっ
る。柴先生の議論が,会計学に根ざしながらも,
た。まったくそのとおりであった。それからわず
これまで会計学の問題として扱われてこなかった
か2ヵ月あまりの間に,われわれ二人は,ツウィ
ような領域までもを射程におさめた見通しのよさ
ーディーIASB議長やカーズバーグIASC事務 長
ら10数人の主要人物に対するインタビューに成功
を持ち,そしてなによりも読む者に希望を抱かせ
し,その成果の一部は「国際会計のビジョン」
と筆者は えている。
るのは,そんな活動力に裏付けられているからだ
書籍案内
テキスト
金融情報会計
柴
次 著
本書は,環境変化と会計の関係を
えるた
め,具体的には金融環境の変化と会計上の認
識・測定問題を取り上げて,さまざまな角度か
ら検討を加えている。
とりわけ重視しているのが,経済問題を会計
的に見るということである。会計が環境に適用
するためには会計制度もまた可変的でなければ
ならない。
そのため,現行の会計制度についてその内容
を解釈するだけでは十 でない。
A5判・212頁
本体 3,800円(税別)
そこで,本書では,会計学の基礎的な問題を
える際の主要な論点をとりまとめた。
中央経済社
12
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