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2-1 ウイルスのいろは

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2-1 ウイルスのいろは
2−1 ウイルスのいろは
昨年はウェストナイル熱、暮れには SARDS、続いて年初には鳥イ
ンフルエンザなど、最近はとみにウイルス性の感染症が問題にな
っています。そこでウイルスの素顔を大まかに眺めてみましょう。
ウイルスの大きさ・起源・性質
多くのウイルスの大きさは 20∼40 ナノメートルで、電子顕微鏡で
しか見ることが出来ない超ミクロの世界です。(原子 1 個の大き
さは 0.1 ナノメートル(100 億分の1メートル)で高性能の電子顕
微鏡で観察出来ます)。ウイルスは生きている細胞の中でのみ、
生存し、増殖します。したがって、ウイルスは地球上に最初に誕
生した生物ではなく、細胞の遺伝子の一部が何らかの原因で細胞
から飛び出したと考えられています。「裸の遺伝子」と呼ぶ学者
もいるほどです。
ウイルスは飛び出した親の遺伝子に非常に強い好み(親和性)を
示します。親遺伝子の細胞がサル、ネコ、トリであると、それら
の動物には感染しますが、他の動物には見向きもしません。この
性質を「種特異性」と呼んでいます。種には天然痘ウイルスのよ
うに人間にだけ限定しているものもあれば、鳥インフルエンザウ
イルスのように豚や野鳥など複数の種を持つものもあり ます。そ
の「種特異性」を越えて鳥インフルエンザウイルスが人間に感染
した! というのですから、大騒ぎとなりました。
またウイルスの親遺伝子が肝細胞であると、肝細胞だけに感染し、
風邪のウイルスは呼吸器の細胞のみ、脳炎ウイルスは脳神経にの
みに感染して、それぞれの感染症を引き起こします。この現象を
「臓器特異性」といいます。
鳥インフルエンザウイルスが人間に感染した!
「種特異性」の立場からいえば、鳥から人への感染経路はあり得
ません。では、どうして今回鳥インフルエンザが人に感染する現
象が起こったのでしょうか。中国南西部の奥地では、ニワトリ以
外にアヒルや豚が放し飼いにされています。またカモ類の渡り鳥
の越冬地でもあります。人間とこれら動物が、排泄物なども含め
一体となって生活が営まれています。カモ類が持ち込んだウイル
スは同じ湖沼でアヒルに感染します。渡り鳥−ニワトリ−豚が湖
沼を共有し、鳥のウイルスと豚のウイルスが豚の体内で交雑して、
鳥ウイルスの遺伝子を持った豚ウイルスが新しく出来上がる可能
性を否定出来ません。
その新型ウイルスを持ったニワトリが集荷場に集められます。狭
い場所に押し込められたニワトリの篭は山積みされ、ニワトリの
集団はストレスとホコリによって集団感染の場となることは必定
でしょう。
このような場所で働いている人は、頻回にウイルスの襲撃を受け
てウイルスに感染すると思われます。感染した人が家族にうつし
ます。この頃になると鳥インフルエンザウイルスは人間も感染対
象にしてしまったと推測されます。インフルエンザウイルスに感
染しても、大分部は軽症か、自覚症状が無く、抵抗力の低い幼児
や高齢者が重症化します。
鳥インフルエンザウイルスは発症率や重症化率が高いとはいえ、
基本的にはこの構図には変わりはないと思われます。人に住み着
くことに適応したウイルスは種特異性を人間にまで拡大して、容
易にインフルエンザ流行の大爆発を引き起こすと推測されます。
「種特異性」が示すように、ウイルスは単独または複数種の動物
に住み着いています。
野生動物の住み家(森林など)が人間の開発によって狭められ、
行き場所を失っているものさえ出てきています。とすると、ウイ
ルスは「種特異性」の原則を緩めて、繁栄を続けている人に「住
み家」を求めるのではないでしょうか。環境破壊、移動手段の発
達で、これから人間は新種ウイルスとの遭遇頻度を高めるものと
推測せざるを得ません。
変異しやすいインフルエンザウイルス
インフルエンザウイルスやエイズウイルスの遺伝子は、変異しや
すい構造をしています。遺伝子が大なり小なり変異すると、ウイ
ルスの表面構造が変化します。ウイルスを撃退する免疫細胞は、
この表面構造を目標としておりますから、表面構造が大きく変化
すると、免疫力を発揮できない事態になります。「インフルエン
ザの型が変わると予防接種の効果が無い」と言われてきましたが、
今では遺伝子の変化を予測して、ワクチン作りをしていますから、
昔のようなことは影を潜めました。
しかし人間のインフルエンザウイルスに鳥インフルエンザウイル
スの遺伝子が組み込まれた「新型」では、事態は大きく変わりま
す。「新型」の場合は、免疫システムも対応に時間がかかります。
幼児や高齢者では危険に曝される時間が長くなりますので、犠牲
者の増加を認めざるを得ない状態に追い込まれます。
未知ウイルスの遭遇に備えて−免疫力を高める!
免疫システムの主役は白血球で、血球全体の千分の1を占めてい
ます。そして活躍する大事な細胞は、ヘルパーT細胞とキラーT
細胞です。両細胞は白血球の一種であるリンパ球から生じたもの
で、ヘルパーT 細胞は免疫システムを指揮するボスです。ボスの
役目は、免疫システム構成員の ”だれが” ”何時” ”何をすべ
きか”を命令することです。キラーT 細胞は、ウイルスに感染し
た細胞をウイルスもろともやっつける「殺し屋」が役目です。と
くに感染初期に活躍するのがナチュラルキラー細胞です。
免疫力は不変ではなく、強いときも弱いときもあります。バラン
スのとれた栄養下で、適度の運動を続け、十分な睡眠をとってお
れば、免疫システムは強固となり、「笑い」はさらに免疫力を強
化します。
インフルエンザや SARDS や新型ウイルス感染症の発生がメデイ
アで報じられたら、速やかに上述の免疫力を強化する対策を講じ
ましょう。手洗いや「うがい」の励行は申すまでもありません。
これに反して、過労やストレスの継続は免疫システムをダウンさ
せてウイルスの侵入を許す(感染する)ことになります。過労を
避け、継続するストレスを消去することが強く望まれます。
病気を引き起こす代表的なウイルスの形
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