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博士 (工学) 王 補 学位論文題名

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博士 (工学) 王 補 学位論文題名
博士(工学)王
学位論文題名
楠
石炭の脱灰性に関する研究
学位論文内容の要旨
近年, 酸性 雨,地 球温暖 化など ,地球環境をめぐる看過できない問題が深刻化しており,石油,
石炭な どの化 石燃 料の使 用に際 しては ,よル クリ ーンな ものに 対する 要望 が高まってきている。
そのた め,石 炭処 理の分 野にお いては ,従来 から の選炭 技術の 向上と とも に,一度山元で選炭さ
れた石 炭から 良質 の石炭 を得る 高度石 炭精製 技術 が注目 を集め ている 。こ の精製技術として種々
の方法 が提唱 され ている が,実 用的な 観点か らは 物理的 選別法 が優れ てい る。石炭中の鉱物質を
物理的 選別法 によ り効率 的に除 去し, 低灰分 炭, 低硫黄 炭を得 るうえ で, 鉱物質の存在状態と脱
灰プロ セスに おけ る挙動 を明ら かにす る必要 があ るが, 従来, この問 題を 系統的に研究した例は
ない 。本論 文は, この物 理的 選別法 による 石炭の 脱灰 性を定 量的に 把握す るため ,国 内外6種類
の石炭 を対象 に, 石炭中 の鉱物 の種類 ,量, 粒度 分布, 単体分 離性, 脱灰 性評価試験法などにつ
いて基 礎的な 研究 を行っ たもの であり ,各鉱 物の 諸性状 と選別 におけ る除 去性との関係を明らか
にし, 脱灰性 の評 価と精 炭灰分 の予測 を可能 にし た。
本論文 は8章で構 成し た。以 下に, 各章の 概略 を述べ る。
第1章で は,本 研究の 背景 および 目的, 従来の 関連す る研 究の概 要と当 面する 課題 ,本論 文の
構成に っいて 述べ た。
第 2章 で は, 本 研 究 で 用い た 大 同 , I
llino
is, Wa
ndoan
, Battl
e Riv
er, 太 平洋 , Wyom
ing
の6種類 の石炭 試料の 基本的 性質を 明ら かにす るため ,工業 分析 ,元素 分析, 浮沈試 験,密 度測
定を行 い,こ の結 果に基 づき浮 遊性指 数,純 炭密 度,総 発熱量 を求め た。 また,比重選別で得ら
れる精 炭中の 最も 低比重 炭の灰 分を示 す限界 灰分 を,可 選曲線 から求 めた 。限界灰分値は,大同
炭 , Illinois炭 , Wandoan炭, Batt
le Ri
ver炭 , 太平 洋 炭 , Wy
oming
炭 の 順 に 高 くな っ た 。
第 3章 で は, 各 石 炭 試 料に っ い て JI
S法 に よ ル マセ ラ ル 分 析 を行 う とと もに画 像の濃 淡レベ
ルを比 較的簡 単に 測定で きる画 像解析 装置を 用い て微粉炭マセラル分析を試みた。5
炭種の中で,
ビト リ ナ イ ト グ ルー プ の 量 が 最も 多 い の は B
attleRive
r炭 , 少 な いの は大同 炭であ った。 工
クジ ナ イ ト グ ル ープ に っ い て は最 大 は 太 平 洋炭 , 最 小 は 大同 炭 , イ ナ―チ ナイト グルー プに
379
っいては最大は大同炭,最小は太平洋炭であった。また比重で区分けした石炭試料でt
ま比重が高
くなるほど,イナーチナイトグループが多くなる傾向が認められた。画像解析装置によルビト
リナ イ卜 グ ルー プ, 工ク ジ ナイ トグ ルー プとイナーチナイ トグループとの判別が可能で
あった。これに基づき石炭中のイナーチナイトグループの面積率の測定法として面走査法を提
案 し , 本 法 に よ り 徴 粉 炭 に っ い て も 精 度 よ く , 簡 便 に 測定 でき るこ とを 確 かめ た。
第4章では,顕微鏡 下で石炭中の鉱物質を外観 の性状により, A,B
,C,Dの四っのグルー
プに分類し,各グループの鉱物質の粒度分布を濯|臚した。顕微鏡観察の結果とX
線マイク口アナ
ライザによる元素分析結果,低温灰化試料のX線回折結果から,各グル―プに属する鉱物質につ
いて,主にAグループは石英,B
グループは黄鉄鉱,Cグループはカオリナイトなどの粘土鉱物,
Dグループは鉄酸化鉱物であることを明らかにした。
いずれの石炭試料の場合も粒度―2
0mesh
の試料中で最も細粒側に分布しているのはAグルー
プ鉱物質であり,
B, C,Dグル―プ鉱物質の順に 粗粒側に分布した。A,Bグループの鉱物質
はCグループの鉱物質に比べ硬く,石炭粒子中に存在する粗粒のものは粉砕時にあまり粉砕され
ないで石炭粒子から単体分離される傾向が認められた。一方,C
グループの鉱物質は,石炭表面
に薄く広がっている場合が多く,石炭粒子の粉砕時に石炭表面に付着したままの状態で粉砕され
細粒化していくものが多かった。また,比重分離した試料にっいての測定結果より,粗粒のCグ
ループの鉱物質は比 重選馴により高比重産物として容易に除去できることを明らかにした。
第5章では,各石炭 にっいて高温灰化試料のI
CP発光分析を行い,高温灰化過程で生ずる鉱
物分解に関する知見を基に,分析結果から石炭中の各鉱物の重量%を計算した。石炭中の鉱物の
種類と量は炭種によ り異なり,各石炭の特徴は次のようであった。Wy
oming
炭を除く5炭種で
は,石英,カオリナイトが石炭中の鉱物重量の約2/3を占めており,これらが石炭中の鉱物質
の主要成分となっている。大同炭,I
llino
is炭は黄鉄鉱が多く,Wando
an炭は石英が少なく,
Wy
oming
炭はバッサナイ卜,方解石を多く含んでいる。
また,浮沈試験により得た各比重区間の試料にっいて,同様な方法で試料中に含まれている鉱
物の種類と量を求めた。石炭中の石英,カオリナイト,黄鉄鉱及び鉄酸化鉱物は,比重選別によ
り高比重鉱物として比較的容易に除去することができるが,方解石などの鉱物は除去困難であつ
た。またバッサナイトは炭種によっては除去困難な場合があった。各石炭にっいて,除去困難な
鉱物の重量からこれに相当する灰分値を求めると,この相当灰分値と限界灰分値との間には直線
関係が認められた。このことから,限界灰分値が炭種によって異なる原因は,炭種毎に除去困難
な鉱物の種類と量が異なるためであることを明らかにした。
380
第 6章 で は ,第 4章 の 結 果を 基に各 グル ープの 鉱物質 の粒度 ,硬 度,粉 砕特性 などを 考慮し た
鉱物 質単体 分離モ デルを 作成し ,シ ミュレ ーショ ンによ り石 炭の粉 砕粒度 と鉱物質の単体分離度
との 関係に っいて 調べた 。単体 分離 度の計 算値と 実測値 はよ く一致 してお り,本章に述べた方法
で 石炭 中 の各 鉱 物 質の 単 体分 離 性 をお お よそ把握 できるこ とを示し た。
第 7章で は,ま ず, 微粒及 び超微 粒石炭 試料 の脱灰 性を評 価する 方法を 確立 するた め,脱 灰試
験 にRelea
se An
alysi
s試 験 法と 水中造 粒試験 法を 用い, 両方法 にっい て比 較倹討 した。 この結
果 ,水 中 造 粒 試 験 法は 微 粒 及び 超微粒 の石炭 の脱灰 試験 法とし てRe
le
as
eAna
ly
si
s試験 法より
優れ た方法 である ことを 明らか にし た。次 に,選 別プロ セス で単体 分離し ている鉱物が精炭中へ
紛れ 込む量 を補正するため選別補正係数を定義し,水中造粒における各鉱物の選冐l
亅補正係数を各
石炭 試料に っいて 求めた 。黄鉄 鉱の 選別補 正係数 の値は 石英 ,カオ リナイ トなどに対する値より
2
0°6以上 大きく なった 。これ は, 黄鉄鉱 が他の 鉱物よ り疎水性であるため水中造粒では精炭中へ
紛 れ込 みや すい ことを 示して いる。 この選 別補 正係数 と第6章で 示した 単体分 離度 の計算 法に基
づき ,精炭 中の各 鉱物の 重量及 び精 炭灰分 を予測 する方 法を 導き, この予 測法による計算値が水
中造 粒試験 による 実測値 とよく 一致 するこ とを実 証した 。
第8章は ,結論 であり ,本研 究で 得られ た成果 を総括 した。
学 位論 文審査の要旨
主査
副査
副査
副査
教授
中
教授
佐
教授
田
助教授 恒
島 巌
藤寿一
中 威
川昌美
近 年,酸 性雨, 地球 温暖化 など, 地球環 境をめ ぐる 問題が 深刻化 してお り,石油,石炭などの
化 石燃料 の使用 に際し ては, よル クリー ンなも のに対 する 要望が 高まっ てきている。そのため,
石 炭処理 の分野 におい ては, 石炭 中の鉱 物質を 物理的 選別 法によ り効率 的に除去し,超低灰分を
得 る高度 石炭精 製技術 が注目 を集 めてい る。本 論文は ,こ の物理 的選別 法による石炭の脱灰性を
定 量的 に把握 する ため, 国内外 6
種 類の石 炭を対 象に, 石炭 中の鉱 物の種 類,量 ,粒 度分布 ,単
体 分離 性,脱 灰性 評価試 験法な どにっ いて研 究し た結果 をまと めたも ので あり, 8
章 で構成 して
381
いる。 以下 に,各 章の概 略を述 べる。
第 1章では ,本 研究の 背景お よび目 的,従 来の 関連す る研究 の概要 と当 面する 課題, 本論文 の
構成に っい て述べ ている 。
第2章では ,本 研究で 用いた 石炭試 料の 基本的 性質を 明らかにするため,工業分析,元素分析,
浮沈試 験, 密度測 定を行 い,こ の結果に基づき浮遊性指数,純炭密度,総発熱量を求めた。また,
比重選 別に おける 限界灰 分を求 めてい る。
第 3章 で は, JIS法 によ ル マ セ ラ ル分 析 を 行 c丶, 各石 炭のマ セラル の特徴 を把握 する ととも
に,比 重分 離した 石炭試 料にっ いての測定結果から,.高い比重区分の試料中ではイナーチナイト
グルー プが 多くな ること を明ら かにし てい る。ま た,従 来法で は測 定困難 である微粒炭にっいて
画 像解 析 装 置 に よる マ セ ラ ル分析 を検討 してい る。 この結 果,石 炭中の イナー チナ イトグ ルー
プ の面 積 率 測 定 法と し て 提 案した 面走査 法によ り簡 便に精 度よく 測定で きるこ とを 確かめ てい
る。
第 4章では ,顕 微鏡下 で石炭 中の鉱 物質を 外観 の性状 により 四っの グル ープに 分類し ,粉砕 及
び 比重 分離に 伴う 各鉱物 質の挙 動を明 らか にして いる。 まず, 顕微鏡 観察 の結果 とX線マイ クロ
ア ナラ イザに よる 元素分 析結果 ,低温 灰化 試料の X
線 回折結 果から ,四っ のグル ープ に属す る鉱
物質は ,そ れぞれ 石英, 黄鉄鉱 ,カオ リナ イトな どの粘 土鉱物 及び 及び鉄 酸化鉱物であることを
確かめ てい る。次 に,粒 度の異 なる試 料に っいて の測定 結果か ら, 石炭中 の石英,黄鉄鉱グルー
プの鉱 物質 は粉砕 時にあ まり粉 砕され ない で石炭 粒子か ら粗粒 のま ま単体 分離され,一方,カオ
ルナイ トグ ル―プ の鉱物 質は, 石炭と とも に粉砕 され細 粒化し てい くもの が多いことを見いだし
ている 。
第 5章 で は, 各 石 炭 に っ いて 高 温 灰 化 試料 の ICP
発 光 分 析 を 行 い, 高 温灰 化過程 で生 ずる鉱
物分解 に関 する知 見に基 づき, 分析結 果か ら石炭 中の各 鉱物の 量を 求め, 石炭中の鉱物質の主要
成分は 石英 ,カオ リナイ トであ ること を確 かめて いる。 また, 浮沈 試験に より得た各比重区間の
試料に っい て,同 様な方 法で試 料中に 含ま れてい る鉱物 の種類 と量 を求め た。石炭中の石英,カ
オリナ イト ,黄鉄 鉱及び 鉄酸化 鉱物は ,比 重選別 により 高比重 産物 として 比較的容易に除去する
ことが でき るが, 方解石 などの 鉱物は 除去 困難で あるこ と,ま たバ ッサナ イトは炭種によっては
除去困 難な 場合が あるこ とを指 摘して いる 。炭種 によっ て比重 選別 におけ る限界灰分が異なるの
は , 炭 種 毎 に 除 去 困 難 な 鉱 物 の 種 類 と 量 が 異 な る た め で あ る こ と を 明 ら か にし て い る 。
第 6章 で は, 第 4章 の 結果 を基 に各 グルー プの鉱 物質の 粒度, 硬度 ,粉砕 特性な どを考 慮し た
鉱物質 単体 分離モ デルを 作成し ,シミ ュレ ―ショ ンによ り石炭 の粉 砕粒度 と鉱物質の単体分離度
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との関係にっいて調べている。単体分離度の計算値と実測値はよく一致しており,本章に述べた
方 法で 石炭 中の 各鉱 物質 の単 体分 離性 を把 握で きる ことを 述べ てい る。
第7
章では,まず,脱灰性評価試験法にっいて検討し,水中造粒試験法は微粒及び超微粒の石
炭試料に対してR
eleas
e An
aly
si
s試験法より優れた方法であることを明らかにしている。次に,
選別プ口セスで単体分離している鉱物が精炭中へ紛れ込む量を補正するため選別補正係数を定義
し,水中造粒における各鉱物の選別補正係数を各石炭試料にっいて求めている。この選別補正係
数と第6章で示した単体分離度の計算法に基づき,精炭中の各鉱物の重量及び精炭灰分を予測す
る方法を導き,この予測法による計算値が水中造粒試験による実測値とよく一致することを実証
している。
第8
章は,結論であり,本研究で得られた成果を総括している。
これを要するに,著者は石炭中の鉱物質の存在状態を調ベ,各鉱物の諸性状と選別プ口セスに
おける除去性との関係を明らかにし,石炭の脱灰性の評価と精炭灰分の予測を可能にしている。
この成果は,鉱物処理工学の発展に寄与するところ大である。よって,著者は,博士(工学)の
学位を授与される資格あるものと認める。
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