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保湿性の評価方法の確立(その1)

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保湿性の評価方法の確立(その1)
技術委員会第 1 分科会
チクチク感の評価方法 (その3)
保湿性の評価方法の確 立(その1)
副委員長
新賀
一郎
第一分科会では、今年度、2 テーマを並行して取り組んでいる。
2007 年より継続している「チクチク感の評価方法(その 3)」と、新規テーマとして「保温
性の試験方法の確立(その 1)」について報告を行う。
■ チクチク感の評価方法(その 3)
チクチク感を数値化することが出来ないかと考え、痛みを数値化できる知覚・感覚定量分
析装置【PAIN
VISION
PS-2100】
(ニプロ社)を用いた評価方法を考案した。これは、試
料となる生地を乗せた(自重で当てた)右前腕を 5cm ストロークで往復する装置の上に置き、
腕のみを往復運動させることにより腕の上で生地を滑らせ、前腕に対して継続的に生地刺激
を与え、同時に、他方の腕に一定値の電気刺激を段階的に与え、どちらの刺激(生地刺激と
電気刺激)が大きいかを判定する方法(以下、方法②)である。この方法②により比較的安
定したデータが得られ、着用評価とも相関関係が取れたことはこれまで報告してきた。そこ
で今回、方法②における「季節差」について研究した。
2009 年 4 月、方法②の追加試験を実施し、前回 2008 年 6 月,8 月のデータと比較した。
同じ生地でも季節によるチクチク感の感じ方には差が生じ、絶対評価は難しいという結果
だったものの、試料計 4 点(市販品生地)でのチクチク感の順位に変動はなく、相対的な評
価は季節によらず可能であることが確認された。
また、これまでは市販品の生地を用いており、生地物性要因を明確にすることができなかっ
たが、今回、条件を揃えた生地を独自に作製した。ウール 100%(編組織:フライス)
・繊維
直径約 20μm の生地を用意し、晒し温度工程の変化や、加工剤を用いた表面形状の変化を施
し た 。 で き あ が っ た 14 種 類 の 生 地 候 補 を 風 合 い 計 測 装 置 で あ る KES ( Kawabata s
Evaluation
System)により計測し、そのデータをもとに条件を更に絞り、6 種類の生地を
選択した。今後、この 6 種類の生地の着用による官能評価の実施、及び KES 評価と PAIN
VISION との相関関係を検証していく。
■ 保湿性の評価方法の確立(その 1)
市場には「保湿」を謳った衣料品が多く売り出されているが、実際に衣服から「保湿効果」
は得られるのかという疑問がある。また、統一された「保湿性」の評価方法が繊維業界には
存在しない。そこに着眼し、新規テーマとして今回より「保湿性の評価方法の確立」を目指
すこととした。
今回、靴下の着用試験を実施し、冬場の乾燥が著しい下腿部(すね部)に対する保湿効果
を以下の方法で確認した。化粧品で効果の認められている「グリセリン」を付着させたハイ
ソックス(表糸:綿 100%)を一方の脚に、他方の脚に未加工の同ソックスを、1 日最低 8
時間
連続約 30 日間着用し、この間フットケアは行わないものとした。加工品の洗濯耐久性
は乏しいので、毎日新しい試料に履き替えた。測定項目は、角層水分量・蒸散量・レプリカ・
鱗屑とし、加工品と未加工品の比較を行った。
1 回目(2009 年 1 月∼2 月)は被験者 15 名(男性 10 名・女性 5 名)で実施し、角層水分
量・蒸散量・鱗屑で、加工品に効果が認められ、着用アンケートでも多くの被験者が効果を
実感したと回答した。季節を変えて、2 回目(2009 年 5 月∼6 月)は被験者 13 名(男性 8
名・女性 5 名)で同試験を行ったが、加工品と未加工品に差は認められなかった。
これらの結果より、今回の方法を用いれば、乾燥している季節においては衣料品の保湿性
を評価できることがわかった。今後、グリセリン濃度を下げた試料を用い、被験者数を増や
した試験を実施し、保湿性の評価方法の確立を目指す。
メ
モ
技術委員会第 2 分科会
リンスオフ製品の刺激 性評価(その2)
委員長
鈴木
民恵
1.はじめに
第2分科会では、昨年度に引き続き、シャンプーや洗顔料などのリンスオフ製品の安全性
を様々な角度から検討している。リンスオフ製品の皮膚への影響を評価する方法として、こ
れまでにもソープチャンバー法や浸漬法をはじめ多くの手法が開発されている。実際の使用
方法に近いとされる浸漬法等は方法が複雑であることから、リンスオフ製品の安全性を確認
する方法として、通常は24時間パッチテストが用いられている。しかし、リンスオフ製品は
主成分が洗浄機能を持つ界面活性剤であるために、安全性評価に用いられる24時間閉塞パッ
チテストでは、時として過剰な陽性反応を示す場合がある。そこでわれわれは、従来の24
時間パッチテスト方法はリンスオフ製品の実使用で起こりうる皮膚変化を正確に捉えてい
ないのではないか、と仮定し、パッチテストの試験条件の検討および、実使用に基づいた評
価方法の開発を進めている。これまでに、4種の代表的なアニオン性活性剤について4時間閉
塞パッチテストを試み、24時間パッチテスト結果および実使用に近い評価方法とされる浸漬
試験結果(文献値)との比較を行った。その結果、24時間貼付結果と比較して4時間貼付の
結果が浸漬試験結果に近い傾向を示した。
2.今年度の検討項目
1)浸漬試験との関連性を追及することを目的に、アニオン性活性剤の被験サンプルを2種
追加し4時間、24時間閉塞パッチテストを実施する。
2)パッチテスト以外の安全性評価の検討として、リンスオフ製品の実使用に近い方法での
安全性評価法の検討。
3.結果と考察
1)2種のアニオン性活性剤を追加し、6種のアニオン性界面活性剤について4時間、24時間
閉塞パッチテストの結果、昨年度と同様に、4時間貼付の結果が浸漬刺激試験で得られ
る刺激スコア順位とよく一致することがわかった。
2)実使用に近い方法として、一定濃度の界面活性剤溶液によって洗浄操作を加えた皮膚表
面観察を試みた。パネラーの前腕に被験品を一定量取り出し、繰り返し洗浄操作を加え
た後の皮膚状態を目視およびレプリカによる鱗屑を観察した。同時に皮膚生理学検査も
行った。その結果、界面活性剤による洗浄前後の皮膚表面はで目視評価に大きな変化は
見られなかった。鱗屑スコアは、ものの、刺激が高いとされるラウリル硫酸ナトリウム
のみ鱗屑スコアでは増加する傾向を示した。また、洗浄処理後の角層水分量はいずれの
被験品でも減少傾向が認められ、今後の検討が必須であるものの洗浄行為で起こる「乾
燥」等の皮膚変化を捉えられる可能性が示された。
4.今後の検討
洗浄操作を加えた前後の皮膚表面観察法について、洗浄操作の回数や観察日時の検討を行い、
評価精度を高める。
メ
モ
技術委員会第 3 分科会
粘着テープの皮膚刺激 性の評価(その 2)
副委員長
矢野
昌彦
昨年は、粘着テープの基材による透湿性の違いや貼付部位の違いにより、皮膚刺激性がどの
ように評価されるのかを検討した。
今回、第3分科会では粘着テープの弾性と貼付部位の皮膚の動きに着目し、これら要因が
皮膚刺激に対して、どのような影響を及ぼしているのかを調べたので報告する。
(検討内容)
1. 腕の曲げ伸ばしを行った場合に生じる上腕部内側の皮膚のひずみについて確認し、基礎的
情報を収集した。
2. 粘着テープの弾性による皮膚刺激を検討するために、ウレタンフィルムタイプの粘着テー
プを長さで 5∼15%引き伸ばしたものを上腕部に貼付し、角層の水分量及び水分蒸散量を
指標として皮膚刺激性への影響を調べた。
3. 腕の曲げ伸ばしにともない皮膚のひずみが大きい部分と小さい部分に粘着テープを貼付
し、貼付部位の違いによる皮膚刺激への影響を角層の水分量、水分蒸散量を指標として調
べた。
上記の検討結果より、粘着テープによる明確な皮膚刺激(かぶれ)が引き起こされるような条件
を見出すことは出来なかった。しかし、粘着テープを 1 回貼付・剥離するだけで水分蒸散量
の上昇をともなう皮膚刺激を引き起こす例も認められたことから、今後、これら皮膚刺激の
引き起こされる条件を調査するとともに、そのメカニズムについても検討を行いたい。
以上
スイミングウェアの商 品開発
㈱デサント
企画開発室品質管理課 参事
清嶋
展弘
1. 競泳 水着 の マト リ クス
我国のスイミング人口は千六百万人といわれる。
年代的にも性別的にも、巾の広い競技人口構成を有する。
近年、消費者ニーズや社会の多様化に伴い、競泳水着も
多様化している、具体的には、用途、素材、デザイン、
カッティングの多様化にほかならない。
2. 競泳 水着 の 歴史
①わが国の水泳の歴史は古く、江戸時代から、「古式泳法」
の泳ぎ方があった。現在も日本水泳連盟は十二の流派を公認している。
②1936 年ベルリンオリンピックでは、前畑選手らが活躍した。当時はまだ合繊はなく、絹や
ウールなど天然繊維のニット生地であった。伸縮性も少なく水を含むと重くなった。
③50 年代にナイロンが登場し、水着の歴史は、合繊の発展と重なった。合繊の「強度」、
「耐
久性」
、「染色性」がスポーツウェアの特性に合致していた。
④60 年代に登場した合繊加工糸は、運動機能を妨げない伸縮性と低抵抗確保の面で大きな貢
献をした。
⑤70 年代に開発されたポリウレタン弾性糸は、身体へのフィット性を大幅に向上させ、水着
隙間からの流水浸入軽減、抵抗軽減など革新的な変化を与えた。
3. 記録 を狙 う 水着 と は
競泳水着の第一の目的は記録の更新。そのため、
次の要素技術が挙げられる。
抵 抗 R =1 /2 ・ρ C S V 2
ρ:
水の密度
① 身体の投影面積を小さくする
C:
抵抗係数(形状で変わる)
② 水着が重くならない
S:
正面投影面積
③ 水が水着内部に浸入しない
④ 水着表面の整流性を考慮する
V:
速度
⑤ 水着がストリームラインを維持する
4. ロー マ世 界 水泳 結 果と 今後
今回の第 13 回世界水泳選手会(2009 年 8 月・ローマ)では高速水着の影響で世界新 43 と記録
ラッシュであった。弊社水着を着用した背泳ぎの古賀淳也と
入江陵介らがメダルか獲得した。今回の大会での水着に関する
規定は下記の通りである。
① 首、肩から先、足首から先は覆ってはいけない。
② 一度に着用するのは 1 枚のみ。
③ 浮力は 1N 以下のこと。
④ 生地の厚みは 1mm 以下のこと。
⑤ 体格に合うものを使用する事。
⑥ すべて同じ仕様のこと。個人に合わせた調整はしては
いけない。
事前に国際水連が認可した水着の数は 27 社 384 着であった。
以上の規定は本大会のものであり、世界水連は、来年以降、より厳しい改正を予定している。
成人男女間の皮膚の生 理的・形態的違い について
㈱マンダム
中央研究所基盤研究室
主幹研究員
大西
一禎
男女間で皮膚の基本構造が異なるわけではない。しかしながら、社会的環境、生活習慣、
ホルモンを中心とした生理的状態、そして日々のスキンケア行動の内容が成人男女間で大き
く異なり、これらが両者の皮膚の外観、生理状態に様々な違いをもたらすと考えられる。こ
れまで皮膚生理やスキンケアに関する情報は女性を対象としたものがほとんどであり、男性
に関する報告が少なく、性別間比較が困難であった。本演題では、男性の顔面皮膚生理に関
する我々の調査をベースにし、基本的な皮膚特性やスキンケア意識について、女性に関する
これまでのデータと対比しながら考察する。
皮膚の生理的状態を示す項目の男女間の違いであるが、1.男女とも水分量・水分バリア能は
明確な加齢変化は認められない。2.特に男性では、水分量・水分バリア能に関し、ほほを中
心とするUゾーンよりも額を中心とするTゾーンにおいて良好な状態を呈していた。3.男性
の顔面皮膚の生理的状態は、女性と比較してより複雑かつ大きな季節間変動を示す。4.皮脂
分泌量は男性で 20 歳代をピークに 40 歳代まではほとんど変化せず、50 歳代以降減少する。
これに対し、女性は 20 歳代にピークを示し、30 歳代以降急激に減少する、以上のような差
異が明らかとなった。皮膚の弾力性は、男女共に顔面各部位で加齢に伴い低下していたが、
皮膚の伸びやすさ(表面硬さ)に関しては、特に男性のほほ下部において加齢に伴う低下を
示していた。過去の報告によると、この「伸びやすさ」は生理的老化においては上昇を示す
とされているが、男性顔面、特に髭剃りの対象となる部位では異なる傾向を示していた。ま
た、女性の皮膚色は加齢と共に黄味が増すことに対し、男性では赤味の増加と明度の低下が
認められた。
これらの差異は、男性と女性の化粧習慣の違いや生活習慣の違いが密接に関係していると
考えられた。さらに男性顔面では形態的変化と生理的変化の重なりにより引き起こされる、
「ギラつき」
(中年期に特有の顔面上での光の反射、我々は『グレア』と呼称)が生じる。本
現象の成因解析や定量評価事例についても紹介する。
繊維製品によるアレル ギー性接触皮膚炎
㈱河合産業皮膚医学研究所
主任研究員
中川
幹雄
1. 国内 の現 状
情報が過多気味の今日にあっても、繊維製品によるアレルギー性接触皮膚炎に関する重要
な国内への情報が思いのほか欠落している。このようなアレルギー性の繊維皮膚炎は、これ
まで想定されていたよりもかなり高い頻度で出現していると考えられる。しかし、この分野
への関心は官・民・医のいずれも乏しい傾向があるために、国内における繊維皮膚炎の正確
な発症頻度は把握されていない。
2. 分散 染料 ア レル ギ ー
今日、分散染料はアレルギー性接触皮膚炎の発症リスクが最も高い繊維用染料と考えられ
る。この分野の研究は以前から欧米の主導で行われてきたが、国内ではそれに追随する動き
が今日でもほとんど窺えない。1960 年代後半から分散染料アレルギーの症例報告が欧州で
続々と行われてきたのに対して、国内ではそれから 30 年近くも遅れて 1990 年代中頃に婦人
服による症例が初めて報告された。それ以降、国内でも同様の症例が散発的に報告されるよ
うになったが、欧米は症例報告数が現在でも圧倒的に多く、染料規制において優位な発言権
を持つ。
3. ナフ トー ル A S アレ ル ギー
ナフトール AS による接触皮膚炎の臨床報告は一時期途絶えていたが、昨今再び散見され
るようになった。1980 年代前半まではネル寝巻による色素沈着型の接触皮膚炎が主として報
告されていたが、1990 年中頃にスカーフによる湿疹紅斑型の症例が報告されるに至った。一
般的なアレルギー性接触皮膚炎では湿疹紅斑型の発症頻度が色素沈着型のそれよりも圧倒
的に高いが、ネル寝巻皮膚炎に限って言及すれば、何故か色素沈着型が報告の全てを占める。
今やこの原因が究明されるべき時期に入りつつある。
4. 防菌 ・防 黴 剤ア レ ルギ ー
防菌・防黴剤類は化学的活性が本来高いものが多く、使用薬剤の選択を一旦誤ると、重篤
な接触皮膚炎が高頻度で生じる場合がある。薬剤選択の誤りは、薬剤の防菌・防黴効果のみ
に重点が置かれ、皮膚安全性については考慮しなかったことに起因する。そうした一例を本
研修会で紹介したい。
5. 原因 物質 が 紛ら わ しい アレ ル ギー 性 接触 皮 膚炎
繊維の着用部位に生じた接触皮膚炎の原因物質が、直接に皮膚接触していた着用繊維であ
るとは必ずしも限らない。直接には皮膚に接触していない、ポケットの中の小物が原因物質
となることもあり、着用繊維が接触皮膚炎の文字通り濡れ衣を着せられる場合もある。
本研修会では、われわれが経験した繊維製品による接触皮膚炎の症例を紹介するとともに、
原因物質の化学的特徴、アレルゲン曝露濃度と皮膚症状の関連性、研究上の障壁、等につい
ても微力ながら触れたい。
「医薬部外品の承認申 請における安全 性 に関する資料のあり方 検討会」
からの報告
国立医薬品食品衛生研究所
安全性生物試験研究センター
薬理部新規試験法評価室長
小島
肇
動物実験の3Rs に関する国際情勢を考慮しながら、化学物質、化粧品や医薬品の安全性評
価のために用いる動物実験代替法(以下、代替法と記す)の研究開発が必要とされている。
しかし、これらの試験法が公的に認知されるためには、開発された試験法が科学的に妥当で
あるかを検証するバリデーション研究、専門家による第三者評価、そしてその後に行政試験
法としての適性評価が必要である。
そこで、医薬部外品における安全性試験法として代替法の適性を評価するため、厚生労働
科学研究 「動物実験代替法を用いた安全性評価体制の確立と国際協調に関する研究(H19医薬-003)
(主任研究者:小島 肇)」の中に、
「医薬部外品の製造販売承認申請における安全
性に関する資料のあり方検討会(以降、あり方検討会)と記す」を設立した。このあり方検
討会の委員として、医薬部外品に関係の深い皮膚科医、日本化粧品工業連合会の代表、代替
法の専門家および行政の専門家を招聘した。
さらに、このあり方検討会の下に、試験法毎の案を作成する分科会を設立した。皮膚刺激
性、感作性、皮膚透過性・経皮吸収、光関連毒性、遺伝毒性および眼刺激性の 6 分科会であ
る。これらの分科会は、皮膚科専門医、日本化粧品工業連合会の代表、各試験法の専門家お
よび動物実験代替法の専門家で構成されている。この各分科会において、試験法毎に代替法
の特徴やそれらを用いた場合の安全性評価の問題点に関する検討作業が実施され、提言が報
告書にまとめられた。本年度、これらの提言をあり方検討会で議論し、ほぼ結論案がまとまっ
た。ただし、これはまだ案の段階である。本講演後に皆さんの意見を聞かせて頂き、種々の
意見を反映させて最終的な結論をまとめていきたいと考えている。
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