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2015/12/16
馬伝染性貧血(equine infectious anemia)法定伝染病
対象家畜: 馬
原因: 一本鎖RNA、エンベロープを有する馬伝染性貧血ウイルス。
白血病ウイルスやヒト、ネコ、ウシの免疫不全ウイルスと近縁。
発生原因: 吸血昆虫の機械的媒介が主な伝播様式だが、胎盤感染
や初乳や乳汁を介した垂直感染もある。非滅菌手術用具等からの
医原性感染もあり、競走馬の集団発生は汚染注射器の使用による
人為的なものと考えられている。
病状: 急性型では、2~4日の潜伏期の後、40℃以上の発熱が1週
間以上持続し、貧血、口腔粘膜の出血斑、黄疸、下肢および下腹
部の冷性浮腫などが観察され、死亡する。数日で解熱し、再度発
熱を示す回帰熱に移行すると、亜急性型となる。発熱を示さず、慢
性型に移行する場合もある。慢性型から回帰熱が再燃した場合に
は、再燃型と呼ばれる。一般に発熱を繰り返すと、貧血が進行し、
回帰性発熱により衰弱死する馬属の難治性疾患である。
10000
8000
6000
4000
年 2000
間
0
摘
発
頭
数
300
250
200
150
100
50
0
耕
耘
機
の
導
入
8
万
台
戦前は毎年数万頭の軍馬が殺処分され、「伝貧」は
人々から忌み嫌われる病気だった。国内馬総頭数
は、戦前は150万頭前後で維持されていたが、戦後
は1946年の105万頭から1952年には111万頭に達
したが、その後激減した。
飼養頭数の減少とともに、
300万台
発生頭数も減少してきた。
地方競馬での集団発生
新診断法の導入
15 5
1993年に2頭が摘発され
たが、その後の発生はな
かった。2011年に宮崎県
で野生馬である御崎馬の
群で感染が確認された
4
2
日本における伝貧馬の摘発頭数の推移
1
2015/12/16
:情報なし
:これまで報告なし
:この期間に報告なし
:疑い
:感染を確認
:臨床例あり
:複数個所で発生
馬伝染性貧
血は現在も世
界各地で発生
している。ワク
チンという決
定的予防法が
ないためであ
る。
馬インフル
エンザ等とと
もに、競馬や
馬術競技開催
時の障害と
なっている。
20011/7-12
20012/1-6
Hot Zone for EIA (1996)
6
5
5
14
24
2
9
18
11
1
2
30 6
15
32
4
2007年の10万頭当り陽性頭数 (Percent Positive FY 2007)
Since 1978, 92 percent of the test-positive samples have originated from horses
located in what is referred to as the “hot zone”.
USA APHIS
2
2015/12/16
伝播の起こり易さ
アブの数が増加(ウマ
サシバエ、シカアブ)
アブがいない/少ない
馬の飼育環境における 乾燥し、樹木が少ない
アブの生息場所(広葉 環境
樹林の湿地)
大型の吸血昆虫が吸
血を中断し、30分以内
に別の馬を吸血する
昆虫の発生時期
小型の吸血昆虫が一
頭の馬で吸血を完了
冬季
未感染馬と感染馬の
混在
感染馬を未感染馬と物
理的に離す
発熱状態の急性また
は慢性の罹患馬が感
染性血液の供給源
不顕性感染馬が感染
性血液の供給源となる
Equine Infectious Anemia: A Status Report on Its Control, 1996
予防法: ウイルスの特性上、ワクチンと治療法はまだ開発されてい
ない。吸血昆虫の駆除、治療器具の滅菌などが本症の感染を予防するうえで
重要である。清浄状態を摘発・淘汰によって維持するとともに、海外からの侵入
を防ぐ。
日本からOIEへの報告
18/3/2011 緊急通知
発生事例1: 宮崎県のJRA育成牧場で42頭中1頭が定期的発生動向調査で陽性。
疫学的注釈: 3月16日に、国立動物衛生研究所(OIE標準研究所)によって当該馬
がEIA陽性であることが確認された。3月11日に、当該馬は精密検査のために殺処
分された。当該農場のその他の馬は検査されEIA陰性であった。
8/4/2011 経過報告2
発生事例1: 福岡県の観光牧場で4頭中1頭が陽性。
疫学的注釈: 宮崎県で発生した同じ群(緊急通知)から2008年に導入したものであ
る。当該農場で飼育されていた他の3頭は4月7日に検査され陰性であった。
15/4/2011 経過報告3
発生事例1: 宮崎県都井岬の御崎馬で110頭中12頭が陽性。
疫学的注釈: 罹患動物は疫学調査の結果発見された。この地域における全ての野
生馬について血清学的検査を行う予定である。
26/1/2012 経過報告6(最終報告) 事態は解決した。これ以上の報告はない。
疫学的注釈: 馬は公園内に区分けされており、公園内外の馬の移動は公的管理
下で制限されている。次の秋に向けて、さらなる発生動向調査が計画されている。
3
2015/12/16
馬インフルエンザ
届出伝染病
対象家畜: 馬
原因: 血清亜型は今までに1型と2型の2つの亜型があり、前者は
欧州型 H7N7、後者はアメリカ大陸型 H3N8である。
疫学: 年齢や季節に関係なく発生する。咳などで排泄されたウイル
スを含む飛沫によって伝播する。1型は1980年まで発生が確認された
が、以降報告されておらず、近年流行しているのは2型だけである。
臨床症状: 感染馬は1~3日の潜伏期
間で40~41℃の高熱を発し、激しい乾性
の咳とともに多量の水様性の鼻汁を出す。
二次感染がなければ2~3週間で回復す
る。気管支粘膜にウイルスが感染すること
で、気管支炎を起こす。死亡例では肺水
腫と胸膜炎を伴う気管支炎が認められる。 肺の奥深くから発する特異な
咳をしている罹患馬
予防: 不活化ワクチン。
ウマ1型インフルエンザウイルスH7N7が最初に分離されたのは、
1956年チェコスロバキアのプラハであった。その後、ヨーロッパ、アメリ
カをはじめ世界中でウマ1型ウイルスによる流行がみられ、1980年ま
ではこのウイルスが分離されていたが、それ以降は確認されていない。
一方、1963年にはウマ2型ウイルスH3N8が米国のマイアミで競走馬
から分離され、現在までウマ2型ウイルスによる流行が世界各国で引
き続き起きている。
わが国では1971年の暮
れから翌年明けに大流行
した。12月4日から翌年1月
11日の僅か39日間で、全
国的に6,782頭が発症した。
東京競馬場では在厩馬
963頭中956頭(99.3%)が
発症した。
1971年の東京競馬場における罹患頭数
4
2015/12/16
日本における2007年の流行
2008年には、33件183
頭発生があり、2009年ま
で散発が続いた。
2007年8月15日、35年ぶりに発
生したフロリダ亜系株(H3N8)に
よる馬インフルエンザは8月中に
16都道府県に広まり、中央競馬、
地方競馬が相次いで中止になっ
た。また、10月5日から開催された
秋田国体で参加馬170頭中37頭
の感染が確認され、競技中止に
追込まれた。
フランスの凱旋門賞(10月)、香
港国際競走(12月)、ドバイミー
ティング(3月)、シンガポールエア
ラインズインターナショナルカップ
中央競馬(札幌・新潟・小倉)、地方競馬 (5月)など海外遠征の出走取り消
(大井、金沢、旭川、名古屋、園田、笠松、
しの影響も出てしまった。
佐賀)の開催中止
日本からOIEへの報告
28/8/2007 緊急通知
発生事例 2件: 滋賀県栗東で227頭、茨城県美浦で247頭が陽性。
18/9/2007 経過報告1
疫学的注釈
発生事例 49件: 1297頭が陽性。
経過報告9: 2009年3月31日現在、2008
23/10/2007 経過報告2
年7月1日に特定された最後の症例以降、新
発生事例 29件: 467頭が陽性。
たな発生は報告されていない。
16/11/2007 経過報告3
発生事例 8件: 34頭が陽性。
経過報告10: 2997年8月に、馬インフルエ
27/12/2007 経過報告4
ンザが36年振りで報告された(前回72~73
発生事例 3件: 16頭が陽性。
年)。感染と疑い症例は合計2,512頭で、33都
24/1/2008 経過報告5
道府県に及んだ。最後の症例は北海道で7月
発生事例 2件: 18頭が陽性。
1日に特定された。制御措置によってその後
28/2/2008 経過報告6
の発生はない。 OIE陸生動物衛生規約に
発生事例 1件: 29頭が陽性。
従って発生動向調査が1年間実施された。規
25/6/2008 経過報告7
発生事例 23件: 175頭が陽性。
約に従って、 日本は2009年7月1日以降馬イ
8/8/2008 経過報告8
ンフルエンザ清浄であると宣言する。
発生事例 2件: 2頭が陽性。
1/4/2009 経過報告9 こ報告背は新規発生なし。
2/7/2009 経過報告10(最終報告) 事態は解決した。これ以上の報告はない。
5
2015/12/16
Disease outbreak maps
Disease distribution maps
モンゴル
2011年
2011/7-12
:情報なし
:これまで報告なし
:この期間に報告なし
:疑い
:感染を確認
:臨床例あり
:複数個所で発生
チリ
2012年
2012/1-6
発生通知(outbreak)があった国と疾病分布(distribution)は一致しておらず、
ヨーロッパ諸国と米国では本病が地方病として常在化している(橙の臨床例あり)。
2004年にフロリダ州にあるドッグレース場で22頭の犬が呼吸器病を起こし、8頭の
犬が死亡した。分離ウイルスが馬インフルエンザH3N8型と塩基配列の相同性が
96%であり、種の壁を超えたと考えられている。 2009年以降にカナダ産肥育用素馬
の日本の輸入検疫でウイルス分離や遺伝子検査で3群が陽性となった。
馬の用途別輸入頭数
年度
繁殖用
乗用
競走用
肥育用
その他
合 計
1999
248
234
352
2000
179
201
338
3,535
0
4,369
4,130
24
4,872
2001
166
205
353
4,224
13
4,961
2002
117
187
327
4,036
9
4,676
2003
136
129
269
3,658
8
4,200
輸入馬の監視伝染病の摘発状況
1999年
2000年
2001年
2002年
2003年
馬伝染性貧血
0
0
0
0
1
馬パラチフス
2
2
2
0
4
馬ウイルス性動脈炎
2
0
0
0
0
馬鼻肺炎
1
2
0
0
1
日本生物科学研究所 「わが国における重要な馬のウイルス感染症と防疫」
競走馬の殺処分のエピソード:
フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
6
2015/12/16
輸入馬の監視伝染病の摘発状況(2012年)
ピロプラズマ病
馬インフルエンザ
馬インフルエンザ
馬鼻肺炎
馬伝染性子宮炎
馬パラチフス
肥育用
乗用
肥育用
競走用
繁殖用
乗用
カナダ(1)
ドイツ(1)、ベルギー(3)
カナダ(2)
米国( 2 )
米国( 1 )
英国( 1 )、ドイツ( 2 )、ベルギー( 1 )、米国
( 1 )、オーストラリア( 2 )
ダ貧スよ疾
馬パラチフス
肥育用
カナダ(3)
が血、っ病
最が伝て発
馬の用途別輸入検疫頭数(2012年)
も摘染異生
繁殖用
乗用 競走用 肥育用
計
国
多発性な状
10
10
香港
いさ子る況
がれ宮。
7
7
アラブ首長国連邦
お
、る炎イ
1
2
3
アイルランド
全 はンよ
び
37
5
21
63
英国
ての近フ
ル
は
41
肥 年エ輸
41
ドイツ
育希多ン入
6
6
4
11
フランス
相
用で
140
140
ベルギー
あくザ手
で
、
、
37
25
100
162
米国
ある伝パ国
2,480
2,480
カナダ
。
っカ染ラは
1
23
10
34
オーストラリア
たナ性チ年
フに
2
2
。
ニュージーランド
ウエストナイル
届出伝染病
1.蚊が吸血する際に運ばれる。
2.自然界では鳥類との間でウイルスが維持されている。
3.ヒトや馬は感染し、発病しても、ウイルス血症を起さない終末宿主である。
蚊
ヒト
鳥類
ウマ
その他の動物
7
2015/12/16
ウエストナイルウイルス(赤)と
日本脳炎ウイルス(緑) の分布地域
密輸された野鳥?
20XX年
★
ヒトでの主な流行
1950-54年 イスラエル
1950年代 エジプト
1963年 フランス
1974年 南アフリカ
1996-97年 ルーマニア
ウエストナイルウイルスは、1937年にウガンダのウエストナイル州で分離された
1999年8月、ニューヨークにウエストナイル熱が突然流行
死亡野鳥の検査
では、アオカケス、ム
クドリ、イエスズメ、メ
キシコマシコ、コマツ
グミ、マガモなどから
ウイルスが分離され
ている。
2002年における馬の州別発生頭数
日本では、空港周
辺のカラスなどの死
亡野鳥を調べること
で、侵入の有無を確
認している。
馬の発生頭数の年次推移
ウイルスの存在確認(歩哨鶏)
野鳥と蚊の間でウイルス
が増幅するのに3年を要した。
急速に減少したのは、抗
体を保有したためか?
8
2015/12/16
ウマの症状(不顕性感染が大半)
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
診断
口唇、顔面筋、舌の麻痺
血清学的診断
斜頸、嚥下困難
● 抗体陽性+WNVワクチン未接種
情緒不安定
● IgM抗体
音に過敏
剖検
失明
転回困難
嗜眠状態
風邪症状、食欲不振、沈鬱
筋肉と皮膚の痙攣
予防と治療
感覚過敏
不活化ワクチン
努力歩行
● 3~6週間隔で2回接種
衰弱、運動失調、横臥
● 毎年、追加接種
発作
支持療法
米国におけるウエストナイル熱患者発生の推移
神経侵襲性
症例数 死亡数(率)
1999
2000
2001
2002
2003
2004
2005
2006
2007
2008
2009
2010
2011
2012
2013
2014
Total
( 2015
59
7(12)
19
2(11)
64 10 (16)
2,946 276 (9)
2,866 232 (8)
1,148
94 (8)
1,309 104 (8)
1,495 162 (11)
1,227 117 (10)
689
41 (6)
386
32 (8)
629
54 (9)
486
42 (9)
2,873 270 (9)
1,267 111 (9)
1,347
87 (9)
18,810 1,641 (9)
1,181
非神経侵襲性
計
症例数 死亡数(率)
症例数 死亡数(率)
3
2
2
1,210
6,996
1,391
1,691
2,774
2,403
667
334
392
226
2,801
2,801
1,202
22,952
631
0 (0)
0 (0)
0 (0)
8 (1)
32 (<1)
6 (<1)
15 (1)
15 (1)
7 (<1)
3 (<1)
0 (0)
3 (1)
1 (<1)
16 (1)
8 (<1)
10 (1)
123 (<1)
62
7(11)
21
2(10)
66
10 (15)
4,156 284 (7)
9,862 264 (3)
2,539 100 (4)
3,000 119 (4)
4,269 177 (4)
3,630 124 (3)
1,356
44 (3)
720
32 (4)
1,021
57 (6)
712
43 (6)
5,674 286 (5)
2,469 119 (5)
2,205
97 (4)
41,762 1,765 (4)
1,812
98
)
9
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