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家庭用 PEFC 燃料電池の導入による CO 2 削 減量の定量分析

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家庭用 PEFC 燃料電池の導入による CO 2 削 減量の定量分析
電中研報告
環
境
02−024
家庭用 PEFC 燃料電池の導入による CO2 削
減量の定量分析
背
景
燃料電池は、次世代の高効率エネルギー供給・利用システムとして注目を集めている。
燃料電池には様々な形式があるが、中でも固体高分子型燃料電池(PEFC)は、民生用の
コージェネレーションシステムや自動車用としての開発が進められており、量産効果によっ
て価格低下が期待できることや、動作温度が低いため起動時間が短いことなどの長所があ
る。民生用のコージェネレーションシステムは、燃料供給インフラの整備が不要であり、容
量も自動車の数10分の1で済むため、自動車用より普及が早いと見られている。このため、
2004、5年度頃の販売を目標に、ガス会社や家電メーカーなどの間で開発競争が繰り広げ
られている。
目
的
PEFCを家庭用コージェネレーションシステムとして導入する場合に、CO2排出削減につ
ながるためには、どのような条件が成立する必要があるかについて、電力中央研究所が開
発した最適電源構成モデルOPTIGENを用いて、2020年度までを対象として定量的に分析
する。また、省エネなど電力会社の電力需要が減少するような対策を施した際に、電気事
業のCO2排出量がどの程度減少するかについて、全電源平均のCO2排出原単位を用いる
べきか、火力平均の原単位を用いるべきかに関し、政府の審議会やエネルギー産業界で
評価が分かれている。この点に関し、燃料電池コージェネレーションシステムを導入した場
合について検討する。
主な成果
1.家庭用燃料電池コージェネレーションシステムの導入が電気事業を含めた全体のCO2
排出削減に寄与するかどうかは、システムの燃料の種類や原子力の導入規模、さらには
エネルギー特会の税率変更など様々な条件に依存して、必ずしも保証されてはいない
(図1)。確実にCO2 排出削減につながるためには、発電効率35%、総合効率70%(とも
に低位発熱ベース)程度の水準が必要である。
2.電気事業の電力需要が 1kWh 減少する際の CO2 排出量の変化(=CO2 排出原
単位)は需給両面のシナリオ(図1のケース)に応じて変化する。原子力が順調に導入さ
れ、かつエネルギー特会の税率が変更される場合は、燃料電池の導入によって主に
LNG 複合火力が代替されるため、全電源平均の CO2 排出原単位に近い。一方、原子力
が現在工事中の設備に限られ、かつエネルギー特会の税率が変更されない場合は、主
に石炭火力が代替されるため、火力平均の CO2 排出原単位に近いことを明らかにした。
政策的含意
本分析により、PEFC形燃料電池がCO2排出削減対策として確実に貢献するための条件
の一端が明らかになった。このことは、国がPEFC形燃料電池に対して補助金などにより普
及促進を図る際の指針となりうる。
今後の展開
今回の分析では、燃料電池コージェネレーションシステムの普及見通しや技術条件、運
転パターンなどの前提条件が不確定であったため、予備的な分析にとどまっている。今後、
情報を更新しつつ、運転パターンを季節別に変化させるなど、分析を精緻化する。また、
今回は CO2 排出量にのみ着目したが、発電費用の変化や燃料電池の経済性の観点から
も分析を行うことにより、例えば燃料電池コージェネレーションシステムの CO2 排出削減単
価がどの程度の水準であるかについて検討する予定である。
100
0
-100
-200
-300
-400
-500
-600
-700
万t-C/年
PEFCの燃料:都市ガスと
プロパンガスが半分ずつ
ケース5
ケース7
ケース9
ケース11
ケース6
ケース8
ケース10
ケース12
2010年度
ケースNo.
1
2
3
燃料電池導入量 なし なし なし
燃料電池の効率 −
−
−
エネルギー特別
なし あり なし
会計の税率変更
原子力の新設
10基 10基 4基
基数上限
比較対象ケース
−
図1
研究報告
Y02016
2015年度
2020年度
4
なし
−
5
6
7
8
9
10
11
12
低位 高位 低位 高位 低位 高位 低位 高位
基準 基準 向上 向上 基準 基準 基準 基準
あり
なし
あり
なし
なし
4基
10基 10基 10基 10基 10基 10基
4基
4基
なし
なし
なし
あり
ケース1
ケース3
CO2排出量の変化(電気事業分+PEFC分,各ケースの条件及び
比較対象ケースは表を参照)
キーワード:固体高分子形燃料電池,CO2 排出量,電源構成,家庭部門,
定量分析
関連研究報告書
担当者
永田
連 絡 先
(財)電力中央研究所 経済社会研究所 事務担当
Tel. 03-3201-6601 (代)
E-mail : [email protected]
[非売品・不許複製]
ケース2
c
豊
(経済社会研究所)
財団法人電力中央研究所
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