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第63号

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第63号
vol.63
2011年3月31日
APPROACH
編集責任者:総務部長 大嶋 巖
http://www.jodc.or.jp/approach/
▲バックナンバーが閲覧できます。
岡庭 弘樹専門家
Mr. Hiroki Okaniwa
インドネシア スラバヤ
派遣期間:
2010/9~2011/2
指導内容:
木質建材製品等の製造コスト低減と品質
向上に関する技術指導
現地スタッフとのコミュニケーション
1. 岡庭 弘樹専門家(インドネシア)
2. 近藤 裕俊専門家(中国)
澤田 透専門家(タイ)
3. 古上 睦雄専門家(フィリピン)
4. 川口 哲也専門家(タイ)
APPROACHは、海外各国で専門家として活躍さ
れている方々の指導現場での貴重な体験談を掲載
しております。
ありませんが、せっかくチャンスをいただいて赴任したの
ですから指導をしながら、自分自身も色々なことを学んで
帰国したいと考えております。
インドネシア人の信仰心
ここスラバヤでは90%以上がイスラム教徒で、本当に
熱心な信者が多いことに驚かされました。1日に5回のお
私は出張では数回インドネシアに訪問したことがある
祈りの時間があり(朝4時・昼12時・昼15時・夜18時・夜19
ものの、赴任は初めてのことで言葉の壁に悩みながらの
時)朝4時のお祈りは大音量のマイクロフォンとスピーカ
滞在となっております。私がいるスラバヤ市は、インドネ
ーを使っているため音が大きく、毎朝音で起こされます。
シア共和国の中ではジャカルタに次ぐ第2の都市で、人口
インドネシアはイスラム教徒が90%位で、バリ島はヒンド
は約300万人と聞いております。ローカルスタッフが日常
ゥー教徒、スラウエシーはキリスト教徒が多く、同じインド
的に使用する言語はジャワ語で、共通言語であるインド
ネシア共和国でも様々な宗教であふれています。
ネシア語は公的な場でのコミュニケーションをとるための
イスラム教はアラビアから伝わったと聞いていますが、ス
言語になっています。
ラバヤではアラブ語も学校で勉強しているそうです。
さて、現地スタッフとのコミュニケーションについてです
ビックリしたことは、住民カードに住所・氏名・年齢・性
が、やはり日本国内でも同じことかと思いますが、仲良く
別は当然ですが、信仰宗教も記載されていることでした。
なるためにはまず自分から話しかけ、挨拶することだと心
来日したことのあるローカルスタッフに「日本人は、正月
がけています。赴任当初は、私が日本人ということで言
は神道、クリスマスはキリスト教、お盆やお葬式は仏教で
葉の壁があり、なかなか現地スタッフから声をかけていた
日本人は一体、何を信仰しているのですか?」と聞かれ
だけなかったのですが、とにかく毎朝、インドネシア語~
た時は大変困りました。
日本語の辞書を片手に工場を周り、朝の挨拶「スラマッ
11月17日はイスラムのお祭りのため祝日です。イスラ
パギ~」(おはようございます)とスタッフひとりひとりの顔
ムの教えでは豊かな人が貧しい人を助けるならわしがあ
を見ながらの声がけや、解っていても「何これ?」とスタッ
り、ヤギ・牛等を提供して貧しい人に多くの肉を配ります。
フたちに聞くようにしました。その結果、2ヵ月経った今で
前日の16日は前夜祭ということもあり、会社のスタッフ
は数人のスタッフと辞書を見ながら日常会話をするように
なりました。
毎日、次の日はこの話題を話そうと会話の予習をして
話すように心がけていますが、予想以外の返答はまだ理
解出来ていません。それでも相手がゆっくり話をしてくれ
たり、手振りや絵で伝えてくれるようになりました。
ただ待っているだけでなく、自分から進んで輪の中に
入って行くことが大切だと感じております。残り3ヵ月しか
も太陽が昇っている時間帯は断食をしていました。
その日の夜は近くのモスク(イスラム教のお寺)で夜通
しお祈りが流れていました。ところ変われば習慣も宗教も
ずいぶん変わることに驚かされています。
2ヵ月経った今でも、朝4時のお祈りの大音量には悩ま
されていて起きてしまいますが、徐々に環境にも適合して
いけると思っています。皆様のおかげで日本では絶対に
経験出来ない貴重な経験をさせていただいております。
1
月に数回、現地スタッフと食事に行き交流をはかって
います。前回は3人で会社近くの料理店で夕食を食べビ
ールの乾杯から始まり、白酒(52°)も飲みました。さす
がに白酒は飲んだ瞬間にのどから下が熱くなり、会話も
弾みます。会話は日本語・中国語・英語を交えながら行
い、仕事の話や出身地の話などをしています。
▲現地スタッフたちと(後列中央が岡庭専門家)
近藤 裕俊専門家
Mr. Hirotoshi Kondo
中国 上海市
派遣期間: 2010/6~2011/2
▲白酒と置物
指導内容: 産業用バーナーの製品開発及び改良に関す
る技術指導
中国での生活について
私の赴任先である受入企業は、上海浦東国際空港よ
り車で約20分、上海市内(浦東地区、世界的にも有名な
仕事中の彼らと違う一面も見られ、言葉の問題はあり
ますが交流は深められていると感じています。これから
寒い季節になりますので、次回は現地スタッフと鍋料理
(火鍋)を食べに行くことを考えています。
テレビ塔の東方明珠)まで地下鉄で約1時間の川沙
(Chuansha)にあります。
2010年の5月から10月まで上海万博が開催され、万博
開催中は地下鉄の手荷物検査も日本の空港の手荷物検
査と同等の検査が行われていました。
地下鉄の利用者は市内に行けば整列乗車が行われて
澤田 透専門家
Mr. Toru Sawada
タイ チョンブリ
派遣期間: 2010/6~2010/12
いましたが、市外では相変わらず人が降りる前に乗り込
指導内容: 自動車用シートクロスとドアクロス製品の事業
んで来るため注意が必要です。
拡大に向けた品質・納入管理能力向上に関する技術指
車の運転マナーは初めて上海に来た4年前とあまり変
わらず、前方に遅い車が走っているとクラクションの演奏
会が始まりますのでとにかくうるさいです。また横断歩道
の信号機の時間設定が短く、広い道路ではのんびり歩い
ていると反対側にはたどり着けませんので車に注意し、
早足での横断を心がけています。
現在、夕食は自炊をしていますが、食材の買い出しは
毎週近くのスーパーまで行っています。肉・野菜は計り売
りが基本です。米も初めの内は水の量が分からず、硬い
米や軟らかい米を食べていましたが、何度か炊いている
うちに米1合に対して水1.2の分量が最適であることが分
かり、今ではおいしい米が食べられるようになりました。
導
優しい気持ちが表れたタイの結婚式
タイのバンコク都から車で1時間半、チョンブリ県でも地
方のバンブン市に着任して早5ヵ月が経ちました。タイの
人たちはいつも笑顔を絶やさず、気さくに接してくれて居
心地は結構良いものです。今回指導先の現地女性社員
の結婚披露宴に出席させてもらい、タイの人たちの生活
文化の一面を見ることが出来たのでご紹介します。
午前11時頃、自分を含む日本人スタッフたちが現地に
到着した時にはもう何やら始まっていました。
ここタイでは、どんな行事も大体いつ始まって、いつ終
わったかハッキリしないのが通例だそうです。披露宴の
行なわれる場所は生活道路にテントを張ったところで、そ
の中に円テーブルを置き、そこに着席します。ざっと見渡
すと150人ほどがガヤガヤ集まっており、お祭り状態で
す。
2
着飾った花嫁さんと花婿さんは、雛人形のように綺麗
に装飾された部屋の中に座っています。「いつものBeeち
ため、鉄骨加工工場や工事現場を見ると思わず、足を止
めて見入ってしまうことがしばしばです。
ゃん(花嫁さんの名前)ではない!」と驚きました。
すでに式は終わっており、聞くと朝早くから色々な行事
皆さんご存じかと思いますが、日本の工事現場では
があり、近所のお寺にもお参りをして来て、今から中華料
「安全第一」というスロ-ガンが掲げられ、毎朝打ち合わ
理の会食とのことでした。この会食は近所の人たちへの
せと体操が行われ、徹底した安全管理がされています。
披露が目的のようです。傍らには近所の犬までウロチョ
そういう頭でこちらの工事現場を見たため、初めは衝撃を
ロしていて、実にカジュアルな雰囲気です。
受けました。
とあるビル(マンション)の工事現場では、ヘルメット無
花嫁さんは、中国系の家なので中国式の結婚式でし
しで普通の私服に近い格好で作業をしています。なかに
た。後日写真と共に話しを聞いて、式のやり方を聞いたと
は寝間着のような服装に顔を覆っただけというような作業
ころ、仏教国らしく合掌に始まり合掌に終わり、お坊さん
員もいます。そんな軽装備にも関わらず、この2人の作業
から額にお目出度い文字を書いてもらったそうです。
している場所が、実は建物の隅で柵もないところなので
す。(作業場所①)
ちなみに私は、ビルの12階で撮影をしていますが、彼
らがいるのは10階付近になります。建物の壁面を塗装す
る足場が下の写真です。(作業場所②)決して頑丈とは言
えないこれが足場なのです。
▲結婚式の様子
この国の人は、目上の人を非常に大事にすることで知
られています。親、兄弟、親戚が順番に椅子に腰掛け、
主役の2人はその前に低く座り、食べ物などを捧げます。
今の日本人が忘れている素直な優しい気持ちが表れ
▲作業場所①
▲作業場所②
ています。我々日本人は癒されたような優しい気持ちに
こんな写真を見てしまうと、黄色のバケツのようなヘル
なりました。
メットをかぶっただけの作業員が、実はこんな環境で作業
していることが当たり前で、驚かなくなってしまうほどです
古上 睦雄専門家
が、もし突風が吹いてきたらどうするのでしょう?
Mr. Chikao Kokami
つぶさに観察しましたが、安全ロープのようなものはつけ
フィリピン セブ
派遣期間: 2010/8~2011/2
ていません。「地震もないから」と言われてしまえばそれ
指導内容:
現場です。現地スタッフに聞いたり、実際に周辺の現場を
プラント用鉄骨の詳細図面作成における生
産性及び品質向上に関する技術指導
衝撃を受けたフィリピンの工事現場
までですが、それにしてもあまりにも安全を無視した工事
見ましたが、ここだけが特別なわけでもなさそうです。
お国違えば…と言いますが、ここまで違うのもどうかと思
います。やっぱり人命は大事です!
私は土木建築の分野に携わっており、その技術を伝授
するため現在、フィリピンのセブに赴任しております。ここ
数年は建築関連の中でも鉄骨製作の仕事に就いている
3
川口 哲也専門家
Mr. Tetsuya Kawaguchi
タイ チョンブリ
派遣期間:
2010/10~2011/2
指導内容: 各種レンタル機械の整備力強化に関する技
術指導
言葉の壁を乗り越えて
10月16日にタイに到着して1ヵ月が経ちました。タイへは
プライベート旅行で3回ほど来ており、飲食・移動などは1
人で行動出来ましたので、9月末頃に上司から「タイ行き
たい?」と聞かれた時も軽い気持ちで了承しました。
しかし、赴任前日に日本語を話せるスタッフが退社した
ことがわかり、前途が不安になりました。
▲現地スタッフたちと(後列中央が川口専門家)
根気が大切
「タイで指導するには同じことを100回言わなければな
らない。」と誰か言っていましたが、私は1000回では?と
の考えで継続的に指導しています。
私は、暑い工場内でも全スタッフの見本となるように作
私の会社は総合機械のレンタル業であり、顧客のニー
業服を着てヘルメットを常にかぶり、不安全行動をする者
ズに合わせた機械をレンタルしています。現地スタッフは
を注意しています。現在進めていることは、全スタッフで
機械の修繕には長けていますが、根本から修理するので
統一した作業服とヘルメットを全部新品で買い、同時に身
はなくとりあえずの修繕であり、なんとか出庫できる程度
につけさせることによって気持ちを纏めようとしています。
のレベルの機械が多数あります。そのため、出庫→故障
なくしたら給料から天引きで他人のヘルメットも使用禁止
→修繕の繰り返しになっています。
と全スタッフを集めて伝えました。
タイ事業所がオープンした2年前から、経済発展のおか
よく日本の上司のなかでは3回言って聞かない人間を
げで急に忙しくなり、日本のスタッフが短期間(1週間)で
「ダメだ。あいつは使えない」と淘汰したり、別部署へ飛ば
赴任して指導をしていたらしいのですが、短期間のため
したりしていますが、その考えの日本人はタイに来ないほ
現地スタッフに仕事においての意識を植え付けることが
うがよいと、1ヵ月滞在して痛感しました。赴任前には上
出来なかったようです。
司から理想論の指導スケジュールを渡されましたが、実
現地スタッフは明るく素直で機械の整備知識もそこそこ
際には2割程度進んだ状態です。
あり、よく聞いてくれるのですが、全く見当違いな行動をし
私は全スタッフが安全で確実に作業が出来、安全に対
てくれます。最初はがんばって拙いタイ語と英語を駆使し
して皆同じ方向を見て欲しいと思っています。そして修繕
て話していましたが、私が話している意味がわからずま
だけではなく、キチンと点検修理した機械を出庫し、現場
た見当違いな行動をします。前回タイへ行った先輩にど
でのトラブルを未然に防ぎたいと考えています。
のように指導していけばいいか相談したところ「日本語で
まくし立てればいい」との安易な回答でした。
昼食・夕食はタイの料理を食べ、ほぼ日本食を食べな
い生活をしています。現地スタッフとの会話で、晩御飯は
しかし、それでは私たちが伝えたい内容は伝わらず、
昨日30バーツだったと言いましたところ、スタッフからは
変な方向で捉えられてしまいます。最近は整備スタッフの
20バーツでもお腹一杯になる店がある情報を得ました。
顔の表情から何が言いたいのかが分かり指導が出来る
(近日中に一緒に行きます)
ようになりましたが、最初はタイの整備スタッフの中には
私はタイ国内での入手不能部品及びエラーコード表等
私が来ている目的が分からず「あの人は何をしているの
の日本からの集め方を、今後誰に指導していくか検討し
か?」「故障した機械を修理してくれない」などの不満が
ています。男性スタッフではなく女性スタッフのほうがしっ
あったようです。全体ミーティングで私がここに来ている
かりしており、来月初旬に入社予定の日本語を話せる女
目的を話し、ようやく理解してもらえました。
性スタッフがいいのではないかと思っています。スタッフ
の仕事への向上心を上げるのが私の指導方法です。
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