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資料(PDF) - 東京医科歯科大学

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資料(PDF) - 東京医科歯科大学
東京医科歯科 大学難治疾患研究所 市民公開講座
―最先端生命科学講座シリーズ 第14回―
2016年2月19日(金)文京シビックセンター
キーワード:幹細胞
幹細胞の基本の“き”
国立大学法人
東京医科歯科大学
難治疾患研究所 幹細胞制御分野
田賀 哲也
2
1
幹 細胞
3
Picture ©: myds.jp
幹 細胞
4
幹細胞
幹細胞
チャールズ ダーウィン
種の起源
Charles Darwin (1809-1882)
The Origin of Species (1859)
写真:第6版の最終改稿版 (1876 Ed., 1878 Pr.)
ダーウィンが没する1882年以前の最終稿
木の幹から枝が分かれるように様々な細胞に分化する能力(多分化能)を持つ細胞
5
自身が枯渇しないように自分を複製して増やす能力(自己複製能)を持つ細胞 6
組織幹細胞
(体性幹細胞)
キーワード:組織幹細胞
(体性幹細胞)
1.神経幹細胞
2.造血幹細胞
体の中のそれぞれの組織や臓器に幹細胞が存在する
体の中のそれぞれの組織や臓器に幹細胞が存在する
7
8
幹細胞の分化
キーワード:幹細胞の分化を制御するシグナル
幹細胞
分化
9
幹細胞が変化して形や機能が特殊化した別の種類の細胞になる
10
幹細胞の分化を制御するシグナル
幹細胞の分化を制御するシグナル
「シグナル」を受けたらどうなる?
「シグナル」は1種類だけ?
細胞外シグナル
細胞外シグナル
幹細胞
幹細胞
11
12
Picture ©: illust-imt
幹細胞の分化を制御するシグナル
「シグナル」の特異性と多様性と重複性と相互作用
「シグナル」の先にあるものは?
キーワード:遺伝情報の読み取り
その仕組みは?
細胞外シグナル
幹細胞
増殖・分化
13
14
Picture ©: wallpaper.free-photograph
遺伝情報の読み取り
幹細胞や分化した細胞は、形態や機能が異なってい
ても同じ遺伝子のセットを核の中に保有する。
遺伝情報の読み取り
細胞の種類ごとに使われる遺伝子群が異なる。
幹細胞
細胞質
DNAの構成要素はAとTとGとC
塩基
遺伝子(DNA)
A
…ATGC…
…TACG…
D
B
E
核
15
C
F
A
遺伝子(DNA)
D
B
E
C
F
遺伝子(DNA)
16
遺伝情報の読み取り
幹細胞や分化した細胞は、形態や機能が異なってい
ても同じ遺伝子のセットを核の中に保有する。
遺伝情報の読み取り
遺伝子の選択的活用が細胞の特性を決定する。
幹細胞
細胞
細胞質
細胞質
A
B
F
E
D
A
C
A
遺伝子(DNA)
D
核
B
E
C
D
F
B
E
C
F
遺伝子(DNA)
核
遺伝子(DNA)
18
17
遺伝子の選択的活用が細胞の特性を決定する
転写因子が遺伝子の選択的活用を制御する
遺伝子(DNA)
細胞
蛋白質
細胞質
A
D
B
E
転写因子
mRNA
C
F
遺伝子(DNA)
必要な情報を写し取る
(転写する)
蛋白質を合成する
(翻訳する)
核
19
20
細胞外来性のシグナル
遺伝子の転写を制御するしくみ:
転写因子による遺伝子の選択的読み取り
受容体
細胞膜
転写因子
遺伝子(DNA)
核膜
8個のヒストン蛋白質
活用される標的遺伝子
21
22
シグナル分子
細胞外来性のシグナル
受容体
受容体
蛋白質チロシンリン酸化酵素
細胞膜
細胞膜
P
転写因子
P
転写因子
核膜
核膜
転写因子
mRNA
mRNA
転写因子
活用される標的遺伝子
活用される標的遺伝子
23
24
シグナル分子
シグナル分子
受容体
受容体
蛋白質チロシンリン酸化酵素
細胞膜
P
P
細胞膜
蛋白質チロシンリン酸化酵素
P
転写因子
P
P
Y
転写因子
PY
転写因子
転写因子
核膜
核膜
mRNA
mRNA
転写因子
活用される標的遺伝子
活用される標的遺伝子
25
シグナル分子1
受容体1
受容体2
P
細胞膜
シグナル分子1
シグナル分子2
受容体1
26
P
P
細胞膜
P
P
P
蛋白質チロシンリン酸化酵素
P
P
Y
転写因子その1
Y
転写因子その1
Y
Y
転写因子その2
転写因子その2
核膜
核膜
?
?
活用される標的遺伝子1,2
活用される標的遺伝子1,2
27
28
シグナル分子1
シグナル分子2
受容体2
受容体1
蛋白質チロシンリン酸化酵素
P
P
細胞膜
P
P
Y
細胞膜
転写因子その2
P
P
P
P
蛋白質チロシンリン酸化酵素
P
Y
転写因子その1
PY
Y
PY
転写因子その2
PY
核膜
核膜
mRNA1
PY
転写因子その1
PY
活用される標的遺伝子1,2
活用される標的遺伝子1,2
転写因子その1が認識する場所
30
29
シグナル分子1
+ +
+
受容体1
細胞膜
P
P
P
P
蛋白質チロシンリン酸化酵素
- ++ +
- -+ ++
- - - - - - - + +
- + + ++
HAT
P
PY
Y
PY
転写因子その2
PY
核膜
転写共役因子
mRNA1
基本転写因子
HAT
Nucleosome (histone-DNA complex)
ヌクレオソーム(ヒストンDNA複合体)
PY
転写因子その1
PY
+ +
+
活用される標的遺伝子1,2
転写因子その1が認識する場所
HAT, histone acetyltransferase(ヒストンアセチルトランスフェラーゼ)
31
HAT, histone acetyltransferase(ヒストンアセチルトランスフェラーゼ)
32
Ac Ac
Ac
Ac Ac
Ac
-- - - 転写因子
- - Nucleosome (histone-DNA complex)
- ヌクレオソーム(ヒストンDNA複合体)
- - - HAT
Ac
Ac Ac
Ac
Ac Ac
Ac
Ac Ac
Ac
Ac Ac
HAT, histone acetyltransferase(ヒストンアセチルトランスフェラーゼ)
今日のキーワード:幹細胞
再び
33
34
組織幹細胞の特性
幹細胞の特性
自己複製能
(多分化能を維持した増殖)
自己複製能
組織幹細胞
幹細胞
自己複製能
(多分化能を維持した増殖)
多分化能
(組織の構築に必要な細胞の供給)
多分化能
組織の構築・再構築
多分化能
(組織の構築に必要な細胞の供給)
幹細胞
35
36
組織幹細胞の特性
血液系
組織幹細胞
排他性
自己複製
自己複製
分化抑制
分化抑制
可塑性
その他の系
中枢神経系
排他性
自己複製
分化抑制
可塑性
排他性
可塑性
37
38
キーワード:エピジェネティック制御
(エピゲノム制御)
エピゲノム制御:DNA配列の変化を伴わない
遺伝子発現調節の仕組みで、ヒストンの修飾
やDNAのメチル化、非翻訳RNA等による制御
39
40
幹細胞の制御におけるエピジェネティック制御機構の関与
Waddington’s Epigenetic Landscape
幹細胞の制御におけるエピジェネティック制御機構の関与
41
Waddington’s Epigenetic Landscape
Waddington, C. H., The Strategy of The Genes., 1957
幹細胞の制御におけるエピジェネティック制御機構の関与
42
Waddington, C. H., The Strategy of The Genes., 1957
幹細胞の制御におけるエピジェネティック制御機構の関与
幹細胞
幹細胞
細胞外来性
シグナル
Waddington, The Strategy of The
Genes (1957) Figures 4, 5より改変
細胞内在性プログラム
(エピジェネティック制御)
43
Waddington, The Strategy of The
Genes (1957) Figures 4, 5より改変
44
45
46
Picture ©: hozugawa.cocolog
Picture ©: hozugawa.cocolog
Waddington’s Epigenetic Landscape
47
Picture ©: togetsutei
48
分化した細胞をリプログラムして多能性幹細胞を樹立する
1.核移植
ジョン ガードン
キーワード:リプログラミング
2.細胞融合
多田 高
3.リプログラミング因子導入
iPS細胞
49
山中 伸弥
Nature. 2010 Jun 10;465(7299):704-12.
Nuclear reprogramming to a pluripotent state by three approaches.
Yamanaka S, Blau HM.
50
エピジェネティック制御(DNA配列の変化を伴わない遺伝子発現制御)
ヒストンのアセチル化による制御
Ac Ac
Ac
キーワード:エピジェネティック制御
(エピゲノム制御)
Ac Ac
Ac
-- - - 転写因子
- - Nucleosome (histone-DNA complex)
- ヌクレオソーム(ヒストンDNA複合体)
- - - HAT
-
エピゲノム制御:DNA配列の変化を伴わない
遺伝子発現調節の仕組みで、ヒストンの修飾
やDNAのメチル化、非翻訳RNA等による制御
51
Ac
Ac Ac
Ac
Ac Ac
Ac
Ac Ac
Ac
Ac Ac
HAT, histone acetyltransferase(ヒストンアセチルトランスフェラーゼ)
52
エピジェネティック制御(DNA配列の変化を伴わない遺伝子発現制御)
ヒストンのメチル化による制御
NH2
Me Me
Me
Me
MeMe
NH2
Me
Me
NH2
Me Me
エピジェネティック制御(DNA配列の変化を伴わない遺伝子発現制御)
DNAメチル化による制御
Me
・ヒストンのメチル化
・ヒストンの脱メチル化
Me NH2
シトシン
メチル化されたシトシン
CH 3
ヒストン
NH2
Me
Me
Me
NHMe
2
Me
Me
DNA
I
I
CG
CG
転写されにくい遺伝子
転写されやすい遺伝子
54
53
癌の形成
変異の蓄積
キーワード:癌幹細胞
正常細胞
変異細胞
癌の形成
癌の拡大
細胞死
化学療法・
放射線療法
55
56
癌幹細胞に関する論文数の推移
900
癌幹細胞の存在
癌幹細胞に関する論文数(*)
変異の蓄積
800
癌幹細胞
不均質な細胞
集団で構成さ
れる癌組織
正常細胞
変異細胞
癌の形成
癌の拡大・転移
治療抵抗性
細胞死
化学療法・
放射線療法
700
600
500
400
300
200
100
癌の再発
0
57
出版年: 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011
58
(*)PubMed検索でtitleまたはabstractにcancer stemあるいはtumor stemを含む論文数
癌幹細胞モデル:C6グリオーマside population (SP)細胞
癌幹細胞の存在報告
ラットC6神経膠腫における SP (side population) 細胞の癌幹細胞性
グリオーマ
Proc. Natl. Acad. Sci. USA 101, 781-786, 2004
Persistence of a small subpopulation of cancer stem-like cells
in the C6 glioma cell line.
フローサイトメーター(細胞蛍光分析器)
でSP細胞(癌幹細胞)を分離する
50個のSP細胞 と 50個のMP細胞 を
マウス脳内に移植
300
Toru Kondo, Takao Setoguchi, and Tetsuya Taga
Day 33
300
200
100
200
300
解析後の細胞を回収
(特定の細胞を回収可能)
0
100
200
赤色蛍光強度
0.02%
0
100
100
Hoechst
0
100
200
2mm
EGFP (SP-derived)
300
Hoechst 33342 red-fluorescence
(arbitrary intensity)
With verapamil
200
Hoechst
Right striatum
300
0
MP (赤色蛍光で目印した非癌幹細胞)
SP (緑色蛍光で目印した癌幹細胞)
0
(side population)
Hoechst 33342 blue-fluorescence
(arbitrary intensity)
200
100
非SP=癌幹細胞でない癌細胞集団
(main population, MP)
0.38%
Without verapamil
SP=癌幹細胞の集団
0
細胞をDNA染色色素
で染めて、細胞蛍解
析析器に入れる
青色蛍光強度
フローサイトメーター(細胞蛍光解析器)
100μm
DsRed2 (MP-derived)
100μm
Merged
形成された癌は殆どSP
細胞(癌幹細胞)由来
300
59
Tabu et al., Stem Cells, 2016
100μm
100μm
60
正常組織幹細胞の特性
癌幹細胞
米国癌学会2006年の癌幹細胞ワークショップにおける「癌幹細胞」の定義
「がんにおいて、自己複製能と、がんを構成する様々な分化系統のがん細胞を生み出す能力を併せ持つ細胞」
自己複製能
自己複製能
(多分化能を維持した増殖)
(多分化能を維持した増殖)
組織幹細胞
癌幹細胞
自己複製能
自己複製能
(多分化能を維持した増殖)
多分化能
(組織の構築に必要な細胞の供給)
(多分化能を維持した増殖)
多分化能
組織の構築・再構築
(癌組織の構築に必要な細胞の供給)
癌組織の構築・再構築
多分化能
多分化能
(組織の構築に必要な細胞の供給)
(癌組織の構築に必要な細胞の供給)
61
62
米国癌学会2006年の癌幹細胞ワークショップにおける癌幹細胞の定義
(Cancer Research 66, 9339-9344, 2006)
癌幹細胞の生存戦略
The consensus definition of a cancer stem cell that was
arrived at in this Workshop is a cell within a tumor that
possess (sic) the capacity to self-renew and to cause the
heterogeneous lineages of cancer cells that comprise the
tumor. Cancer stem cells can thus only be defined
experimentally by their ability to recapitulate the generation
of a continuously growing tumor. The implementation of this
approach explains the use of alternative terms in the
literature, such as "tumor-initiating cell" and "tumorigenic
cell" to describe putative cancer stem cells.
本ワークショップでコンセンサスに達した癌幹細胞(cancer stem
cell)の定義は、「がんにおいて、自己複製能と、がんを構成する
様々な分化系統のがん細胞を生み出す能力を併せ持つ細胞」と
いうものである。それゆえ癌幹細胞は、持続的に拡大する腫瘍
の形成を繰り返す能力にのみ定義されうる。このアプローチの
履行は、文献において推定的な癌幹細胞を記載するのに癌惹
起 細 胞 ( tumor initiating cell ) あ る い は 造 腫 瘍 性 細 胞
(tumorigenic cell)のような表現が使われることを説明している。
変異の蓄積
正常細胞
変異細胞
癌幹細胞
癌の形成
癌の拡大・転移
細胞死
治療抵抗性
化学療法・
放射線療法
癌の再発
63
64
癌幹細胞の生存戦略
変異の蓄積
正常細胞
ニッチ
(壁龕)
一部が
ニッチ
に分化
癌幹細胞
癌の形成
変異細胞
癌の拡大・転移
一部が
ニッチ
に分化
細胞死
治療抵抗性
化学療法・
放射線療法
癌の再発
66
65
ポリマーアレイスライド
合成ポリマーによる人工癌幹細胞ニッチの構築
--癌幹細胞ニッチポリマーのスクリーニング-【エジンバラ大学 Mark Bradley教授のグループと共同研究】
ポリマー
モノマー群
ポリマーアレイ装置
R1
O
N
O
O
N
O
HN
O
O
X
O
OCH3
OCH3
O
O
O
O
C3H6
OH
HO
O
O
C4H8
HO
O
O
R2
インクジェットプリンター
ポリマーをスポット
N
R3
O
HN
O
R4
ポリマーアレイ スライド
ポリマーの性質は、モノマーの種類
や組成、重合度合いで異なる
癌幹細胞にとって、”いごこち”のよ
いものがあるかもしれない
合計 376種類の
ポリマー
癌幹細胞ニッチを擬態するポリマー
を探し出す
48
PA (ポリアクリル系ポリマー)
PU (ポリウレタン系ポリマー)
PA (ポリアクリル系ポリマー)
24
67
PU (ポリウレタン系ポリマー)
68
C6グリオーマSP細胞(癌幹細胞)支持ポリマーのスクリーニング
Hoechst Blue
Hoechst Blue
C6-緑色蛍光 C6-赤色蛍光
SP
Hoechst Red
MP
Hoechst Red
Mix
500,000 SP + 500,000 MP 細胞
(癌幹細胞) SP MP (非癌幹細胞)
ポリマーアレイスライド上に播く
SP (癌幹細胞)増殖速度
=EGFP intensity at 96 hrs / EGFP intensity at 24 hrs
MP (非癌幹細胞)増殖速度
=DsRed2 intensity at 96 hrs / DsRed2 intensity at 24 hrs
SP (癌幹細胞)特異性
=SP growth rate / MP growth rate
培養する
69
24時間と96時間後に蛍光解析
Tabu et al., Stem Cells, 2016
幹細胞とニッチ
1.神経幹細胞 組織(体性)幹細胞
2.造血幹細胞
3.癌幹細胞
細胞外来性のシグナル
1.神経幹細胞
ニッチ環境
2.造血幹細胞
細胞内在性の仕組み =エピゲノム制御機構
3.癌幹細胞
正常細胞
癌
ニッチ環境
癌再発
治療
71
日経産業新聞 2016年2月4日
70
Fly UP