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家計は貧しくなったか(給与所得者編)
Economic Trends 経済関連レポート なぜ、家計は貧しくなったか(給与所得者編) 発表日:2010年11月2日(火) ~報酬還元の不全、賞与は削減され、労働時間は延長~ 第一生命経済研究所 経済調査部 担当 熊野英生(℡:03-5221-5223) 給与所得者の受け取る 1 人当たり平均給与額は、1988 年以来の低水準になっている。給与削減は、賞与の調整を 中心に進んでいる。労働時間が長くなった分、報酬が相対的に低下して時給換算の給与が伸びないことも、一般労 働者の待遇悪化を意識させている。物価下落に連動するように賞与水準が調整されていることは、主に中堅所得層 の給与を直撃し、一生懸命に働いたときの見返りを感じさせにくくなっている。業績に見合った報酬が少なくなり、 時間当たりの報酬還元が細ってきているが、豊かさの実感を乏しくさせている原因と考えられる。 1988 年以来の低水準 万円/年間 480 460 年は▲2.9%と過去最大の落ち込み幅を記録している。 440 さらに、給与水準については、2009 年は 357 万円と 420 1988 年以来の低位となっている(図表1)。ピーク 400 であった 1998 年から比べると▲15.7%の減少である。 380 360 給与削減の直接的な理由が、リーマンショックだった 340 ことは間違いない。ただし、前年比マイナスが 1998 320 年以来 10 年連続で継続していることは、リーマンシ 300 間給与実態統計調査」によれば、対前年比では、2009 406 2009 2007 2005 357 2003 2001 1999 1997 1995 1993 1991 1989 1年以上勤務の 給与所得者 給与所得者(総 合) 1985 ョックのほかに、趨勢として給与所得水準が下がって (図表1)民間給与者の年間給与額 1987 1人当たりの給与所得者の給与金額は、国税庁「民 出所:国税庁「民間給与実態統計調査」 いる別の理由があると理解できる。 本稿では、「民間給与実態統計調査」と「毎月勤労統 兆円 計」を分析することで、家計所得の中核を成している給 45.0 40.0 35.0 30.0 25.0 20.0 15.0 10.0 5.0 0.0 与所得が趨勢的に下落して停滞している状況を詳しく調 べていくこととする。そこで、まず、「民間給与実態統 計調査」に基づいて、給与・賞与の内訳がどう変化した のかを確認してみたい。給与所得者の賃金調整の特徴と しては、一貫して賞与の削減を中心に行われてきた。給 与・賞与の支払総額(1 年以上の勤続者)は、2009 年の 182.3 兆円は、ピーク時の 1997 年 211.5 兆円から▲ 25.3兆円 民間企業の賞与 支払額(左目盛) 賞与/給与総額 (右目盛) 22% 21% 20% 19% 18% 17% 16% 15% 14% 13% 12% 1985 1987 1989 1991 1993 1995 1997 1999 2001 2003 2005 2007 2009 13.6%(▲28.7 兆円)も削減されている(図表 2)。給 (図表2)減少していく賞与額 与削減の内訳としては、賞与削減額が 55%(ピーク 比・実額▲15.7 兆円、▲38.4%)を占めている。企業 出所:国税庁「民間給与実態統計調査」 が業績悪化に反応して、雇用者への報酬還元を劇的に減 らしたことがわかる。このため、給与所得者の報酬(給与・手当・賞与)に占める賞与の割合(13.8%)は年々低く なり、2009 年では 1955 年以来の低い割合になっている。 本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに 足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載 された内容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。 -1- ただし、リーマンショックのあった 2009 年はやや例外的で、賞与だけではなく、給与本体が前年比▲5.6%と大 きく切り込まれている。経済危機を意識させる企業収益の悪化に直面し、賞与調整だけでなく、給与本体も大きく 削減されたのである。業種別に給与本体の削減が大きかった製造業(前年比▲7.5%)、卸小売(同▲7.5%)、情 報通信(同▲6.0%)、不動産(同▲5.9%)である。 給与本体における質的変化 135 次に、給与本体の内訳について厚生労働省「毎月 勤労統計」を使って調べると、一般労働者では、所 (図表3)給与内訳の金額水準の推移 1993年の平均給与額を100として指数化 従業員5人以上の事業所・一般労働者 データは12か月累計値を指数化 125 定内給与が緩やかに減額されていく中で、所定外給 115 与の方は増えていた(図表3)。これは、一般労働 者の労働時間が長時間化※する傾向にあるというこ 105 とである。一方で所定内給与や賞与で報酬が支払わ 95 2009年 2008年 2007年 2006年 2005年 2004年 2003年 2002年 2001年 78.4 2000年 1999年 1998年 残業をするほどに稼ぎの効率は低下しているのが実 1997年 75 感覚に囚われるが、報酬をパー・アワーで測ると、 1995年 ばしば、私達は残業すると給与水準が増えるような 1994年 85 1993年 当たり労働コスト(時給)は下がる(図表 4)。し 1996年 現金給与額(総額) 特別給与 所定内給与 所定外給与 れる部分が少なくなっているため、結果として単位 出所:厚生労働省「毎月勤労統計」 情である。 ※一般労働者の総労働時間は、1999 年から 2008 年にかけて趨勢的に増加してきた。2009 年はさすがに減少したが、2010 年にかけて 急回復している。 極めて興味深いのは、最近でも「毎月勤労統計」では、現金給与総額が前年比伸び率でプラス方向に回復したか にみえるが同じようなことが起こっていることである。一般労働者の報酬をパー・アワーで評価してみると、ほと んど改善していない(図表 5)。ここでも、正社員が大勢を占めている一般労働者は、労働時間が長くなって稼ぎの 効率性が低下している図式が確認される。働く時間が長くなっているのに、報酬がなかなか増えないことが、働き 手の豊かさの実感を低下させてきていると理解できる。 円/時間 12か月 移動平均 前年比% 4 2010年9月 2,500 2 一般労働者 2,450 円/時間 (図表5)現金給与総額の伸び率 0 2,408円/時 2,350 -2 2,300 -4 -6 一般労働者+パート労働者 現金給与総額(左目盛) 時給(右目盛) 2,200 2010年6月 2010年2月 2009年10月 2009年6月 2008年10月 2009年2月 2008年6月 2008年2月 2007年10月 2007年6月 2005年6月 2,400 2005年2月 -8 2010年 2009年 2008年 2006年 2005年 2004年 2003年 2002年 2001年 2000年 1999年 1998年 1997年 1996年 1995年 1994年 出所:厚生労働省「毎月勤労統計」 2007年 2,174円/時 2,150 2006年10月 2007年2月 2,250 2,450 2006年6月 2,400 2006年2月 2,500 (図表4)時間当たりの給与所得者の報酬 2005年10月 2,550 出所:厚生労働省「毎月勤労統計」 趨勢的に正社員の労働時間が増えてきている背景には、近年増えてきているパート・アルバイトなど非正規雇用 者との働き方の差があると考えられる。すなわち、正社員は、決まった時間だけ働くパート・アルバイトにはでき 本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに 足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載 された内容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。 -2- ない仕事を役割分担するかたちで、長時間労働を担っているのであろう(図表 7)。本来、正社員が行う仕事までパ ート・アルバイトが代替していくと、決められた労働以外の部分は、正社員が余計に働いて仕事の穴を埋めなくては ならなくなる。「年々、正社員の仕事がきつくなっていく」という声を聞くこともあるが、これは時代の変化とい う面だけではなく、正規雇用者の人員拡充がされない中で、従来以上の役割分担をこなしていかざるを得なくなっ ていることがあるのだろう。 一方のパート労働者の賃金水準の推移を調べると、こちらの方は時給が上昇する傾向が読み取れる(図表 8)。こ れは、シニアな労働者が非正規で参入していることから、報酬が引き上がっていることがあると考えられる。実は、 パート労働者の側では、非定型の仕事に分野が拡大していき、一般労働者の役割を肩代わりするかたちになってき ている。パート労働者であっても、一般労働者に似たような働き方を要求される人が増えてきているので、全体と して一般労働者とパート労働者の時給が収斂してきているとみることができる。 なお、先に一般労働者は趨勢的に労働時間は長くなっていることを指摘したが、パート労働者の方は趨勢的に労 働時間が短縮される傾向にある。この点は、一般労働者とはコントラストを成しており、パート労働者は、労働時 間が短くなりつつも、時給が趨勢的に増えている。 円/ 時間 1,100 時間/月 (図表6)一般労働者の労働時間の差 78 77 一般労働者の総労働時間からパート労働者の総 労働時間を差し引いた時間、12か月移動平均 76 (図表7)増加していくパート労働者の平均時給 円/時間 2,550 1,050 2,500 1,000 2,450 950 2,400 75 74 73 72 パート労働者(右目盛) 900 71 2,350 一般労働者(左目盛) 2010年 2009年 2008年 2007年 2006年 2005年 2004年 2003年 2002年 2001年 2000年 1999年 1998年 1997年 出所:厚生労働省「毎月勤労統計」 1996年 1994年 2,300 1995年 850 2010年 2009年 2008年 2007年 2006年 2005年 2004年 2003年 2002年 2001年 2000年 1999年 1998年 1997年 1996年 1995年 1994年 70 出所:厚生労働省「毎月勤労統計」 賞与調整のメカニズム 35 えることを単純に喜んでよいかどうかは微妙である。 30 2008 年から 2009 年にかけて、一般労働者の夏・年末の 25 2007 2009 2010 2003 2004 2006 8)。 20 2000 2002 はその分を取り戻すのには程遠いからである(図表 1985 1986 賞与は合計で前年比▲15%削減されたので、現時点で 民間賞与(左目盛) 特別給与(右目盛) 1999 になりそうである。もっとも、2009 年よりも賞与が増 120 115 110 105 100 95 90 85 80 40 1996 1997 果になっている。おそらく、年末賞与も前年比プラス (図表8)時系列でみた賞与水準の変化 1994 労統計」でも、夏季賞与が前年比 1.1%増加という結 45 1992 1993 ということが喧伝されることが多い。9 月の「毎月勤 兆円 1987 1989 1990 2010 年の賞与については、前年比でプラスになった 出所:国税庁、厚生労働省 一般的に、賞与は業績に連動して動くと理解される が、本当にそうした通説的な理解が正しいのかどうかはわからない。最近のように企業業績が回復しても、雇用者 への報酬還元は慎重姿勢が続いているのではないか。そこで、賞与水準の変化と、所定外給与の変化がどんな経済 本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに 足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載 された内容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。 -3- 指標と連動しているかを確認すると、賞与水準は物価指数と連動していた(図表9)。意外なことに、データ上は 企業収益と連動性が高いのは、所定外給与の方であった(図表 10)。企業収益と所定外給与の関係は、稼働率が高 まるので、所定外給与も増えて、企業収益も回復するという見せかけの相関である可能性が高い。 105 (図表9)賞与水準と物価の推移 103.0 特別給与(賞与)は指数 (図表10)所定外給与と企業収益の推移 32 億円 160,000 所定外給与は指数 100 102.0 140,000 30 95 28 90 101.0 26 85 24 120,000 100,000 80,000 出所:厚生労働省「毎月勤労統計」、総務省「消費者物価」 40,000 2010年 2009年 2008年 2007年 2006年 2005年 2004年 2003年 2002年 2001年 2000年 1999年 1997年 1996年 1995年 20,000 1994年 20 2009年 2008年 2007年 2006年 2005年 2004年 2003年 2002年 2001年 2000年 1999年 1998年 1997年 1996年 99.0 1995年 75 1994年 所定外給与(超過労働給与) 営業利益・全産業 22 消費者物価コア 1993年 60,000 100.0 1998年 特別給与 80 出所:厚生労働省「毎月勤労統計」、財務省「法人企業統計」 ここでみられるように、賞与水準が企業収益とは連動せず、むしろ物価に似た動きになっているのは意外な結果 である。その背景には、デフレだから賞与が切り下げられる作用と、賞与が切り下げられるからデフレになる作用 の双方向の因果関係があるだろう。デフレ脱却の視点で考えると、賃金を増やしてデフレ脱却を図ろうとしても、 企業経営者にとっては物価下落が続くことが不安材料になって、業績回復のペースほどは賞与を十分には増やせな いということになる。賞与を通じた雇用者報酬の還元には、下方バイアスが強く働いて、デフレ脱却を困難にする 作用があると考えられる。 中堅所得者がますます減少 2009 年の「民間給与実態統計調査」をみて驚く のは、所得階層別で年収 600 万円以上の人数が激 減していることである(図表 11)。具体的に 2009 年が対前年でどのくらいの人数変化になっている 140 (図表11)所得階層別にみた人数の推移 1999年の給与水準を100として指数化 130 -100万円 120 -200 -300 110 -400 100 -500 -600 かを示すと、600-800 万円が前年比▲13.4%、 800-1,000 万円が同▲16.4%、1,000-1,500 万円が 同▲21.3%、1,500-2,000 万円が同▲24.5%、 2,000 万円以上が同▲17.0%である。この階層の -700 90 -800 うち、2,000 万円以上の高額所得者は 2008 年まで 2000以上 2009 2008 2007 2006 2005 2004 2003 2002 60 堅所得層が大きく所得を絞り込まれる反面、年収 300 万円以下の給与所得者が急増していることで -2000 2001 特徴的なのは、おおむね年収 500 万円以上の中 -1500 70 2000 に見舞われて、その人数は減少に転じている。 -1000 1999 は数が増えていたが、さすがにリーマンショック -900 80 出所:国税庁「民間給与実態統計調査」 ある。家計は 2009 年に軒並み低所得化していて、 年収 400 万円以下が全体の 60%を占めるに至っている(年収 300 万円以下は 42%)。 本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに 足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載 された内容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。 -4- こうした給与削減は、賞与を中心に進められてきたことと深い関係があると考えられる。年収階層別に、給与全 体に占める賞与の割合が高いのは、年収 600-1,500 万円までの中堅層を中心とした給与所得者である(図表 12)。 中堅所得層は、賞与を通じて報酬還元を受ける割合が高かっただけに、激しい給与水準の調整のダメージを受けや すかったと考えられる。 また、企業規模別に賞与調整が厳しかったのは、大企業が中 % (図表12)給与全体に占める賞与の割合 25.0 心である。資本金規模別・事業所従業員規模別の各クラスター 所得階層別の分布 20.0 の変化は、資本金 10 億円以上、従業員 1,000 人以上のところ で、年収比で 2009 年は前年比▲5%前後の賞与カットが行われ 15.0 ている。一方、個人企業や従業員規模の少ない事業所では、賞 10.0 与以外よりも給料・手当てのカット率が相対的に大きくなって 5.0 いて、給与削減の手法に違いがあったことを窺わせる。 2,500 〃 2,000 〃 1,500 〃 900 〃 1,000 〃 800 〃 700 〃 600 〃 500 〃 400 〃 2,500万円超 エイトが大きい中堅所得層が、賞与水準を切り上げて以前の待 300 〃 100万円以下 について、大企業の収益拡大が進めば、年収に占める賞与のウ 200 〃 0.0 将来のことを考えるとき、私達は今後の給与所得水準の回復 出所:国税庁「民間給与実態統計調査」(2008年) 遇を取り戻すと考えがちである。しかし、ここ数年、賞与が業 績とは連動せずに切り下げられた経緯を振り返ると、今までのトレンドが続いてしまう前提の下、中堅所得層が元 通りに復元することは容易ではないように感じられる。 若手にまで給与カットが及ぶ ここ数年、中堅所得層が減っていくのと並存するかたちで年齢別のクロスセクション・データでも中高年層の賃金 削減が確認される(図表 13)。すなわち、年収が相対的に高い 40-45 歳が前年比▲5.6%、45-49 歳が同▲6.5%、 50-54 歳が同▲5.6%となっている。給与水準の高い働き盛りの勤労者ほど削減額が大きくなる構図である。 年齢別の給与削減については、勤続年数別のデータを参照することもできる(図表 14)。2009 年は 1-4 年の人が 前年比▲5.9%、5-9 年が同▲5.3%、10-14 年が同▲5.0%、15-19 年が同▲6.0%、20-24 年が同▲5.6%とマイナス 幅が大きく、25 年以上の人はマイナス幅が縮小していく。この説明だけみると、経験年数が浅い人ほど率先して給 与カットを受けたような印象を受けるが、長期時系列で 1990 年以降の時系列の給与水準の推移で確認すると別の側 面がみえる。2008 年までの給与削減では、勤続年数 25 年以上のベテランが大幅に給与水準の引き下げを余儀なくさ れて、若手の方は相対的に給与削減の難を免れてきていた。それが、2009 年は従来は給与カットを回避できていた 若手の方に調整圧力が一気に及んで、なりふり構わず給与削減が進んだのである。 115 (図表13)年齢階層別の給与水準の変化 120 (図表14)勤続年数別の給与水準の変化 20~24歳 110 25~29 30~34 105 1-4年 5-9年 10-14年 15-19年 20-24年 25-29年 30-34年 35年以上 115 110 35~39 40~44 100 45~49 105 100 50~54 2008年 2006年 2004年 2002年 2000年 1990年 2008年 2006年 2004年 2002年 2000年 1998年 1996年 1994年 1992年 1990年 出所:国税庁「民間給与実態統計調査」 1990年の各年数の給与水準を100として指数化 1998年 90 90 1996年 1990年の各年齢の給与水準を100として指数化 95 1994年 55~59 1992年 95 出所:国税庁「民間給与実態統計調査」 本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに 足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載 された内容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。 -5- 巷間、リーマンショックは非正規雇用者ほど厳しい環境に置かれたイメージが流布されているが、正社員も著し い給与削減に遭った。年功賃金制度の仕組みが歪んでいくように、正社員の年功賃金のフラット化が一層進んだ。 経済危機が意識される局面になると、ベースアップの凍結だけではなく、定期昇給を停止する企業も増える。定期 昇給の停止は年功色を薄め、生涯賃金を相対的に小さくさせる。 ここにきて、年功賃金を薄めるような給与水準見直しが経験年数の浅い若手にまで及んでいることは、スキルを 身につけてもすぐには待遇改善に結びつきにくくさせるだろう。このことは、個々の勤労者がスキルを蓄積すれば、 将来所得の増加が見込めるという期待感を低下させ、長期雇用・年功賃金制度の良さを実感させなくさせる効果を 持つ。こうした変容も、若い給与所得者のやりがいを喪失させることにつながっていく。そうした傾向を改めるこ とも、デフレ構造から抜け出すためには重要である。 本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに 足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載 された内容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。 -6-