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国民生活審議会 総合企画部会「雇用・人材・情報化委員会」報告(ポイント)

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国民生活審議会 総合企画部会「雇用・人材・情報化委員会」報告(ポイント)
資料2
国民生活審議会 総合企画部会「雇用・人材・情報化委員会」報告(ポイント)
働き方とライフスタイルの変革
―IT を活かして多様な選択肢の実現を―
雇用をめぐる近年の変化と課題
<雇用をめぐる近年における変化(現象)>
近年、IT等の技術の変化、経済のグローバル化、経済成長率の低下、労働力の中高年齢化等を背景
として、雇用をめぐって、以下のような変化が起こっている。
① 失業率の上昇、長時間労働者の増加
② 非正規雇用比率の上昇(主に人件費節約のため)、フル・パートタイマー間の賃金格差の拡大
(以上の2つはこれまでの雇用慣行が変化していくことを示唆)
③ 従来の日本型雇用慣行(長期雇用、年功賃金、企業内人材育成)に変化の動き
<雇用慣行、個人の職業生活の変化と課題>
雇用慣行の変化は、高齢化、IT等の技術の変化、グローバル化等を背景としており、今後も続くと
みられる。
こうした中、職業等をめぐる個人の生活には次のような変化がおこる。
①(長期雇用が変わることにより)
・ひとつの企業での雇用から転職を前提とした職業人生へ
→個人はキャリアの自己選択、自己責任へ、企業と個人のマッチング機能がますます重要に
②(年功賃金が変わることにより)
・成果・実績重視の賃金・処遇へ、生活給の変化
→働きに応じた公平・透明な評価・処遇へ
「世帯単位」から「個人単位」の賃金へ(年功賃金による生活保障から自立した人生設計へ)
③(企業内人材育成が変わることにより)
・企業内人材育成から企業を超えた横断的な技術・技能へ
→企業内技術・技能形成から自らの研鑚へ
IT等による速い変化に対応した生涯を通じた自己研鑚が必要に
<従来型の雇用慣行の生活上の問題点>
個人は以上のような変化に対応していかなければならないが、他方で、従来型の雇用慣行には、もと
もと個人の生活に関して次のような問題があり、従って、その慣行の変化は個人にとってプラスの影響
も大きい。
(4つの問題点)
① 個人の企業への依存、企業による強い拘束
→ 画一的なライフスタイル
(キャリアの自己選択の制約、長時間労働等)
(選択への制約)
② 女性に負担の大きい働き方、男女間の固定的な役割分担、少子化
③ 高年齢期の就労を不利にするような仕組み
④ 教育への影響 (「就社」を目標としたランク付けのための教育)
1
国民生活の視点から見た雇用をめぐる政策のあり方
今後の雇用をめぐる政策のありかたを考えるに当たっては、雇用慣行の変化に伴なうマイナス面(雇
用への不安等)を小さくし、国民生活面のメリットを生かしていくことが重要で、具体的には、以下の
ような視点が重要となる。
(1) <個人の安心等の確保>
○一つの企業だけでの雇用保障から、転職しながらの労働市場での雇用保障へ
→(政策のありかた)
・企業間の移動を前提として、再就職を積極的に支援
個人と企業の円滑なマッチングの前提として、社会横断的な職業能力評価システムの整備
労働力需給マッチング機能の強化
・セーフティネットは、単なる失業中の所得保障というだけでなく、再挑戦への支援、職業能
力の向上への支援等、再就職促進に向けより積極的に。
・ライフサイクルに応じた生活費への配慮(年功賃金等の変化と生活給的な部分の縮小への対応)
教育、住宅、育児支援等を含めた生活全般のセーフティネットの整備
↓
(効果)円滑な転職、再挑戦が可能に。そのことも通じてキャリアの自己選択へ。
より拘束・制約の少ない働き方へ。雇用と生活の安心へ。
(2) <個人の能力形成・自己実現機会の確保>
○生涯を通じた自らによる職業能力開発機会の確保へ(企業内能力形成からの変化への対応)
→(政策のありかた)
・個人が自ら企業横断的な職業能力を形成する機会、選択肢の確保。
・IT等の技術の高度化と変化の速さ、グローバルな競争の強まりに対応し、生涯を通じた
能力向上機会の確保。
↓
(効果)能力を磨くことができ、挑戦が可能な社会へ。キャリアの自己選択へ。
リカレントな教育へのニーズの充足。
若い頃からの企業横断的な技術の取得で、中高年齢期にも良好な就業機会を確保。
(3) <多様な選択肢の確保>
○働き方の選択肢の拡大
○女性、高齢者、障害者を含め、全ての人が意欲と能力に応じて職業生活に参加できる社会へ
→(政策のありかた)
・パートの処遇改善等と短時間正社員等の多様な働き方の実現
(働きに応じた処遇へ=「世帯単位」から「個人単位」の賃金へ、早く「正社員」という
言葉を不要に)
・社会保険等における就業意欲を阻害する仕組みの見直し(個人単位へ)
・IT を用いたテレワーク、SOHO への支援等(成果主義等への処遇制度見直しの促進等)
↓
(効果)個人にとっては、ライフスタイルの選択肢拡大へ(家庭と仕事の両立、育児・介護との両
立、仕事とボランティアの両立、自己啓発の余裕等)
マクロ的には、雇用の創出、高齢社会の支え手の拡大へ
(4)<新しい技術であるITの活用>
○ユニバーサルデザインの推進等により全ての人にITへのアクセシビリティと利用能力
(リテラシー)を確保。雇用・人材育成面の課題への対応にはITを十分に活用
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提言1.労働市場で雇用を保障する仕組みの整備
(職業能力評価システムの整備、労働力需給マッチング機能強化、生活全般を通じたセーフテ
ィネットの整備等)
① 市場横断的な職業能力評価システムの整備、労働力需給マッチング機能強化等
② 生活面を含めたセーフティネットの整備
③ 雇用の創出
○評価システム、マッチング機能強化
・マッチングの基礎となる市場横断的な職業能力評価システムの整備(イギリスのNVQを参考に)
・キャリア・コンサルタントの拡充(民間の活用等)
・職業紹介事業、労働者派遣事業に関する規制改革、等
○セーフティネットの整備
・雇用保険制度の課題
働き方等の多様化に対応した雇用保険制度の見直し、等
雇用維持支援から労働移動・能力開発支援へ
・雇用保険制度非加入者のセーフティネットの整備
起業のセーフティネットの整備(債務不履行の場合の取立て範囲の見直し)、等
・住宅関係のセーフティネットの整備(住宅ローン負担への対応、住宅の住替えなどを容易にする施策)
・介護施設・サービス等の充実(家族の介護が再就職等の障害にならないようにする施策)
・子供の教育費関係のセーフティネットの整備(貸与奨学金の拡充等)
・夫婦での共稼ぎによるリスク分散を容易にするための仕事・育児の両立支援等
○ 雇用の創出(ケアサービス分野等での雇用の創出、NPO・起業・SOHO・テレワーク支援等)
④転職を不利にする制度等の見直し
・退職金・企業年金に関し、税制の長期勤続者優遇の見直し等
⑤人事管理制度等の課題への対応
・企業による公平で透明な従業員評価制度の整備と、
その基礎としての政府による詳細統計情報等の提供による支援
(例えば、職場における同じ職種の労働者間の賃金格差(分散等)についても、他社(世間)の状況も
含めた詳細な情報データをインターネットを通じて公表する、等)
・企業内での個人のキャリアの自己決定
・個別的交渉についての個人を支援する仕組み等の整備
提言2.個人の職業能力開発等とITに関わるリテラシーの向上等
① 個人の職業能力開発(自己啓発)への支援
○職業能力開発(自己啓発)等に関する情報提供等
・キャリア選択に必要な情報インフラの整備(例:職業の内容と賃金水準、必要な教育・学位・資格・スキ
ル等を詳細に記載した「職業ハンドブック」の公表、個人が自分の能力を知ることができるような職業能力
評価システムの整備、キャリア・コンサルタントの養成等)
・教育訓練機関情報等の能力開発機会に関する情報提供体制の整備
○自己啓発への資金面の支援
・教育訓練の支援のための貸与制度の充実
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②社会人学生等への支援、奨学金の拡充等
・社会人学生、大学院生の受け入れの拡充(長期履修学生(パートタイム学生)の拡充、等)。
・貸与奨学金の一層の拡充
③若年者のキャリア形成支援
・インターンシップや若年トライアル雇用等の促進、等
④ITに関するリテラシーの向上
・ITに関する基礎的なリテラシーの取得のための学校等のIT環境の整備
・生涯を通じたメディア・リテラシー向上のための学習機会の確保
・ITに関する基礎的なリテラシーの取得、メディア・リテラシー向上のための情報NPO、情報ボランテ
ィアの活用
・メディア・リテラシー学習のための教材・プログラムに関する研究の推進
提言3.働き方、ライフスタイルの選択肢拡大と社会参画機会の確保
① 働きに応じた処遇の実現と働き方の選択肢拡大
○パート等の待遇改善と短時間正社員等実現のための環境整備
・パートとフルタイマーの均衡処遇のための法律による原則の明記とガイドラインの提示
(働きに応じた賃金へ = 世帯単位から個人単位の賃金・処遇へ)
・パートタイマーへの社会保険(年金・医療)の適用拡大
・働き方の多様化に対応した雇用保険制度の見直し(再掲)
・パート労働者に対する職業能力向上支援
○働き方の選択肢の拡大のための規制改革等
・労働者派遣、有期雇用契約、裁量労働制に関する規制改革
② 働く意欲を阻害する制度の見直し
・年金における第3号被保険者制度、税制における配偶者関係の控除の見直し(世帯単位から個人単位へ)
・公務員の配偶者扶養手当の見直し
③ 女性、高齢者、障害者の就業・社会参画機会の確保とITの活用
・ITを活用したテレワーク・SOHOの促進
(普及の前提としての成果主義的評価促進のための市場横断的な能力評価システムの整備等、
SOHOへの情報面の支援、SOHOと発注者を結ぶ仲介機関等に関する情報提供の充実、
NPO・ボランティア支援、等)
・ 高齢者、障害者がアクセスしやすいIT機器の開発・普及への支援と高齢者・障害者の参画
・ 高齢者、障害者のIT学習機会の拡充、NPO、ボランティアとの連携
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