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Ⅳ 高等学校編 - 東京都教育委員会

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Ⅳ 高等学校編 - 東京都教育委員会
Ⅳ 高等学校編
- 91 -
1 高等学校における安全教育
高校生の特徴としては、中学生と比べると、大人への強い反発心は沈静化し、自分らしい生き
方を模索するようになる。高校生が模索する生き方は、他人から与えられるものではなく、自分
探しの過程を経て自らが発見していくものである。高校生は、こうしたプロセスを経ることによ
って、模索している生き方を自分の納得できるものにつくり上げていくことができる反面、自分
の興味・関心や自分の利害などに傾きがちになる。安全教育の立場からは、社会的貢献など、よ
り大きな視点に立った生き方を促すことも必要になるといえる。
高等学校学習指導要領総則第1款の3において、
「学校における体育・健康に関する指導は、学
校の教育活動全体を通じて適切に行うものとする。特に、体力の向上及び心身の健康の保持増進
に関する指導については、
「体育」及び「保健」の時間はもとより、特別活動などにおいてもそれ
ぞれの特質に応じて適切に行うよう努めることとする。また、それらの指導を通して、家庭や地
域社会との連携を図りながら、日常生活において適切な体育・健康に関する活動の実践を促し、
生涯を通じて健康・安全で活力ある生活を送るための基礎が培われるよう配慮しなければならな
い。
」とされている。
保健体育科における科目「保健」においては、
「現代社会と健康」で交通安全と応急手当が内容
となっている。交通安全では、
「交通事故を防止するためには、車両の特性の理解、安全な運転や
歩行など適切な行動、自他の生命を尊重する態度及び交通環境の整備などが重要であること。ま
た、交通事故には責任や補償問題が生じること。
」を扱い、応急手当では、
「傷害や疾病に際して
は、心肺蘇生法などの応急手当を行うことが重要であること。また、応急手当には正しい手順や
方法があること。
」を取り上げる。また、科目「体育」や理科、家庭科等においても、その指導を
通じて、安全についての知識や技能を習得し、総合的な学習の時間においても、各学校の判断で、
その趣旨に見合った安全に関するテーマを取り上げることができる。
特別活動は、
「望ましい集団活動を通して、心身の調和のとれた発達と個性の伸長を図り、集団
や社会の一員としてよりよい生活を築こうとする自主的、実践的な態度を育てるとともに、人間
としての在り方生き方についての自覚を深め、自己を生かす能力を養う。
」ことが目標となってお
り、ホームルーム活動では、
「健康や安全に関すること」において、
「自他の生命をかけがえのな
いものとして尊重する精神と態度を確立するとともに、学校内外を含めた自分の生活行動を見直
し、安全に配慮し、危険を予測できる力や的確に行動できる力を高めていくよう日頃から注意を
喚起し指導することが一層大切になっている。
」とし、また「自然災害等に対しての心構えや適切
な行動がとれる力を育てることも重要である。
」としている。生徒会活動においては、生徒の自発
的、自治的活動を通じて、安全に関する問題の改善向上を図る諸活動を行い、社会的に自己実現
を図る能力や社会の一員としての資質を培うことが必要である。学校行事では、
「健康安全・体育
的行事」が設けられ、
「心身の健全な発達や健康の保持増進などについての理解を深め、安全な行
動や規律ある集団行動の体得、運動に親しむ態度の育成、責任感や連帯感の涵養、体力の向上な
どに資するような活動を行うこと。
」とし、
「最近の交通事故の実態、交通規則などを理解させ、
事故防止に対する知識や態度を体得させるとともに、災害などの非常事態に際し、沈着、冷静、
迅速、的確に判断して対処する能力を養い、自他の安全を確保することのできる能力を身に付け
ること。
」を目指す。
このことを踏まえ、以下、安全教育や安全管理の観点から各教科等ごとにまとめて示す。
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2 理科
学習指導要領では、観察、実験の一層の充実が強調されている。また、事故防止について十分留
意するとともに、生命の尊重や自然環境の保全に関する態度の育成に留意し、使用薬品などの管理
及び廃棄についても適切な措置を講ずることが述べられている。しかし、高等学校では、理科を専
門とする教師が授業を担当するとはいえ、すべての観察、実験に精通しているわけではなく、事故
の予測やその防止のための手立てを講ずることが不十分である場合がある。また、学習指導要領の
改訂によって「理科総合A」
「理科総合B」や各分野・領域ごとの「Ⅰ」
「Ⅱ」のように「探究活動」
や「課題研究」が重視され、観察、実験も内容の多様化が進み、その指導に際してより高度の専門
的知識が要求されるようになってきた。したがって、これまで以上に生徒への事故防止の指導を充
実し、
学習活動が安全で円滑に行われるよう安全管理・安全指導を徹底することが求められている。
(1) 安全管理
① 施設・設備の安全管理
ア 理科室や準備室の管理
(ア) 理科室の整備
出入口や通路などを確保するために、常に物品の整理をする。施設や器具、薬品の取
扱い方や使用後の後始末等について、一般的な心得を提示する。使用後や放課後の清掃
時に異常のないことを確認する。長期休業日の前後には、室内点検と清掃を入念に行う。
室内換気に留意する。
(イ) 付帯設備の整備と取扱い方
一般的に使用する器具類は、保管場所の配置図を室内に掲示する。電気・ガス・水道
および戸棚や窓の状態は、毎日点検する。
イ 鍵の管理
(ア) 管理責任者による保管
戸口の鍵は責任者が直接保管し、合鍵を職員室及び事務室に置く。器具庫や薬品庫及
びその他の戸棚の鍵は、管理職及び管理責任者が知っている場所に保管する。
(イ) 室内の出入り
生徒が入室するときは、必ず教員が同行する。教員が不在のときは、必ず施錠し、出
入り禁止とする。
ウ 地震対策
(ア) 器具及び薬品戸棚等の転倒・移動防止
戸棚を壁や床に固定する。その場合、振動に対する壁の耐久力や戸棚の強度も十分に
考慮する。戸棚には、容器が転倒・落下しないための措置を施す。
(イ) 薬品容器の転倒・落下防止
薬品は接触や混合により、化学反応を起さないように分類し、分離して保管する。危
険度の高い薬品類は、戸棚の下段やドラフトに収納し、砂箱なども用いる。使用後の薬
品類は、転倒・落下防止策を講じた戸棚に収納し、実験台に放置しない。
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エ 火災対策
(ア) 平常時の注意
消火器具(消火栓・消火器・消火砂)については、緊急時に正常な作動ができること
を定期的に確認する。非常口、非常階段を含めた避難経路については、避難を妨げる障
害物などを除去し、確実な避難ができる状態であることを常時確認する。
室内の可燃物は必要最小限とし、火気から十分に遠ざける。
(イ) 火気を使用する実習における注意
火気の近くに、引火性物質を置かない。使用後の火気の後始末を確実に行う。
② 薬品の購入・保管
ア 薬品の購入
理科の実験で使用する薬品は、年間指導計画にしたがって購入し、使用頻度の高いもの
を除き、少量ずつ購入する。購入後、薬品管理台帳に記入する。また、使用量、在庫量を
適宜確認し、台帳に記録する。
イ 薬品の保管と分類
無機塩類は陰イオン別に分類すると、名前の五十音順と一致する。この分類は危険物の
種類のうちの酸化剤などと一致する利点があり、混合による危険防止にもなる。
生徒の実験に使用する試薬は、100~200ml 程度の試薬ビンに小分けして、実習班の数だ
け用意し、班ごとではなく、同一種類の薬品ごと一箱に納める。生徒用の各種薬品を班ご
と一箱に納めることは、異種の薬品を同じ箱に収めることなり、管理が容易でないばかり
か、混合による危険も予想されるので、避けるべきである。
ウ 危険な薬品の種類とその保管
(ア) 一般的注意
実験等で使用する薬品は、性質、特に爆発・火災・中毒の危険性の有無を調べた上で、
実験等で適正に取り扱う。
危険薬品は、直射日光を避け、冷所に保管し、異物混入を避け、火気から遠ざける。
危険薬品の保管は、法令に従い分類し、所定の薬品庫に納める。特に毒・劇物は他の薬
品と区別して専用の保管場所を設けて表示及び施錠し、使用量や在庫状況を把握する。
危険薬品の紛失や盗難などが判明したときは、直ちに管理責任者に届ける。
(イ) 危険な薬品
危険な薬品とは、爆発、発火、中毒等の恐れのあるもので、それらは関係法令によっ
て系統化されている。したがって、その保管や取扱いについては、法令を熟知しておく
必要がある。
A 発火性物質
◇ 酸化性固体(消防法第1類危険物)
一般に不燃性物質であるが、加熱・衝撃などにより分解し、酸素を発生して、可
燃物を激しく燃焼させ、時には爆発を起す。また、酸化性液体以外の危険物すべて
と混合による危険が予想されるため、単独保管が望まれる。
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【例】塩素酸塩類、過塩素酸塩類、無機過酸化物、亜塩素酸塩類、臭素酸塩類、硝
酸塩類、ヨウ素酸塩類、過マンガン酸塩類、重クロム酸塩類、等
◇ 可燃性固体(消防法第2類危険物)
比較的低温で着火しやすく、燃焼速度が速い。特に酸化性物質との接触・混合は
避ける。
【例】赤リン、硫黄、鉄粉、アルミニウムや亜鉛等の金属粉、マグネシウム等
◇ 自然発火性物質・禁水性物質(消防法第3類危険物)
空気中において水と反応して発熱するとともに、
可燃性ガスを発生して発火する。
したがって、湿気のないところに保管して、容器を密閉する。
【例】アルカリ金属及アルカリ土類金属、黄リン(水中保管)
、炭化カルシウム等
◇ 酸化性液体(消防法第6類危険物)
強酸化剤で、自らは不燃性であるが、可燃物や有機物を混合すると、これを酸化
し、発火することがある。腐食性もあり、皮膚を侵す。したがって、可燃物、有機
物、分解を促す薬品との接触を避ける。特に水との接触は避け、耐酸性の容器に密
閉する。
【例】過酸化水素水(50%以上の水溶液)
、過塩素酸(60 %以上の水溶液)、発煙硝酸
B 引火性物質
◇ 引火性液体(消防法第4類危険物)
引火性の液体である。一般に電気不良導体で、静電気が蓄積しやすく、自らの火
花で引火することがある。蒸気発生防止のため、容器を密閉し、火気を避け、通気
をよくする。
【例】アルコール、エーテル、アセトン、ベンゼン、灯油、等
C 爆発性物質
◇ 自己反応性物質(消防法第5類危険物)
燃焼しやすく、燃焼速度が大きい。加熱・衝撃により爆発しやすい。そのため火
気や加熱を避け、通気をよくする。
【例】セルロイド類、ニトロセルロース、ピクリン酸
◇火薬類(火薬類取締法)
◇可燃性ガス(高圧ガス取締法)
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D 有毒性物質
◇毒性ガス(高圧ガス取締法)
◇毒物(毒物及び劇薬取締法)
◇劇薬(毒物及び劇薬取締法)
※このほか、公害関係の法律(大気汚染防止法、水質汚濁防止法、海洋汚濁防止法、
下水道法、廃棄物処理及び清掃に関する法律)及び労働安全衛生法、農薬取締法、
薬事法、食品衛生法も関係する。
(ウ) 危険薬品の表示
薬品名のほかに、危険性の種類を表示する。ひとつの薬品に幾種類もの危険性が表示
されることになるものもある。
③ 廃棄物とその処理
ア 廃棄物の危険性
(ア) 引火
有機物の多くは、引火性がある。使用後の有機溶媒は、流しに捨てず、回収すること
が望ましい。回収容器は、ガラス製か金属製のふた付容器とし、他の廃棄物と混ぜない
ようにすることが大切である。
(イ) 自然発火
廃棄物が互いに反応したり、空気に触れ酸化したりして、不安定な物質を生じること
がある。例えば、アルカリ金属などの小片が水に触れれば発火することがある。金属の
粉末が酸性の物質と反応して、水素を発生し発火したこともある。また、薬品が浸み込
んだ布から発火した例がある。特に、硝酸やニトロ化合物をふき取った雑巾が危険であ
る。つまり、廃棄物収納容器に、廃棄物同士が反応する恐れのあるものを不要に捨てる
ことは、極めて危険である。
(ウ) 爆発
廃棄した薬品が反応して、爆発性の物質になることがある。そのため、銀溜めや水銀
溜めには、アルコールをはじめとした有機物が混入しないように注意する必要がある。
銀からは、雷銀などの強爆発性の極めて不安的な化合物ができることがあるので、廃液
を酸性に保つようにしておくと良い。特にアセチレンの実験を行ったときの廃棄物は、
回収容器に入れる時、単独であることを確かめることが大切であり、使用済みのろ紙な
ども、回収容器にいつまでも放置しないよう注意する必要がある。これらには不安定な
物質が残留しており、小さな火種で爆発することがある。
(エ) 腐食性
酸性やアルカリ性の廃液をそのまま流しに捨てると、排水溝を腐食したり、有毒ガス
を発生させることがある。
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(オ) 毒性
有毒物質をそのまま流してはならない。銀メッキの廃液には、シアンイオンが含まれ、
ガラス器具の洗浄に用いるクロム酸混液には有毒な六価クロムを含んでいる。水銀やカ
ドミウムなどを含む廃液も不用意に排出してはいけない。
イ 廃棄の方法
高等学校の実験で使用する薬品の年間使用量は、危険物取扱いに関する法規(下水道法、
水質汚濁防止法、廃棄物の処理及び清掃に関する法律など)の適用を受けるほど多くはな
い。しかし、一時期に多量に使用する場合があり、このような場合には業者に引き取って
もらうなど適切に処理すべきである。
(ア) 希釈
普通、使用している薄い酸やアルカリなどの少量の廃液は、水道水で希釈して、放流
しても差し支えないが、濃度が高く多量である場合、中和して多量の水で希釈して放流
する。しかし、有毒物は、無毒な状態に処理し、希釈して放流しなければならない。例
えば、強酸性物質は、石灰水で中和した後、希釈する。また、クロム酸混液は、還元剤
(チオ硫酸ナトリウむなど)で三価クロムにし、さらに水酸化ナトリウムで中和する。
これを静置後、上澄液(硫酸ナトリウム溶液)は放流し、沈殿は廃棄物の回収容器に蓄
える。ただし、無害なものであっても、着色の著しい排水は、十分に希釈して放流する。
なお、重金属イオン(水銀、鉛など)やシアン酸イオンを含む廃液は、絶対に放流しな
い。
(イ) 濃縮
塩類を多量に使用した場合、再結晶させるなどして再利用を図る。また、廃棄できな
い物質は濃縮し、容積を小さくして回収容器に蓄える。その際、操作は、ドラフトや野
外で行い、有毒ガスを吸入しないように注意する。特に、加熱によって分解し、爆発す
る恐れのある物質が含まれないことを確認して実行し、乾固するまで熱してはならない。
廃棄するものも、完全に廃棄するものと再利用するものとに分けることも大切である。
その際、再結晶、抽出及び蒸留などの方法があるが、溶媒の廃液を蒸留する場合、爆発
事故が起こらないよう、十分に注意する必要がある。
(ウ) 廃棄物・回収物の処理
廃棄物を学校で完全に処理することは不可能に近い。回収容器に回収された廃棄物な
どの処理は、専門機関に依頼して処理する必要がある。このとき、廃棄物の組成、発生
経緯に関する情報を廃棄物に添付することが不可欠である。これらのことに関しては、
社団法人「東京産業廃棄物協会(連絡先 03-5283-5455)
」などに相談するとよい。
ウ 廃棄や再処理を考慮した実験計画
廃液処理などの設備が完備している学校は少ない。したがって、実験計画を工夫すると
ともに、廃液及び廃棄物の処分方法およびその予算計上も十分に考えておくことが大切で
ある。
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(2) 安全指導
①
高等学校における事故のおそれのある観察、実験一覧
観察、実験名
予想される事故例
○物理天秤を用いた質量の測定
○交流式記録タイマー等の交流電源を
用いた実験
物 ○力学台車を用いた運動の実験
○振り子による力学的エネルギー保存の実験
○比熱や熱の仕事量の実験
○フラスコやガラス製注射器を用いた圧力実験
理 ○ガスバーナーを使った加熱実験
○液体窒素等による低温実験
○ガラス管を使った共鳴実験
○レーザー光を用いた光学実験
領 ○ガラス製スリットを用いた光学実験
○静電高圧装置による静電実験
○コンデンサーの充放電実験
域 ○電磁誘導の実験
○真空管やe/m管による実験
○X線発生の実験
○放射性物質を使った放射線測定
○有毒、腐食性気体の発生
化
学
領
域
○水素の発生
○酸素の発生
○アセチレンの発生
○濃塩酸を用いた実験
○濃硫酸を用いた実験
○濃硝酸、氷酢酸、フェノールを用いた実験
○水酸化ナトリウムを用いた実験
○濃アンモニア水を用いた実験
○硫黄を用いた実験
○アルカリ金属を用いた反応
○有機溶媒を用いた実験
○メタノール、エタノールを用いた実験
○ベンゼン、トルエンを用いた実験
○アニリン、ニトロベンゼンを用いた実験
○ホルマリンを用いた実験
○アンモニア性硝酸銀溶液
○フェーリング溶液の反応
○ガラス器具、ルツボ等の加熱
○反応水溶液の加熱
○水上置換法による気体捕集
○レーザー光線装置を用いる実験
○顕微鏡を用いた実験
生 ○光合成色素の抽出実験
○呼吸の実験
物
○培養実験
領 ○電気生理実験
○解剖実験
域 ○採集、野外観察
天秤の指針による刺傷
コードの断線、短絡等による感電
実験台からの台車の落下による負傷
カミソリの刃による切傷
火傷や温度計の破損による負傷、水銀汚染
フラスコや注射器の破損による負傷
点火時の火傷、頭髪等の焼失
凍傷、気化に伴う圧力増の為の容器破損による負傷
ガラス管の破損による負傷
レーザー光の直視による目の負傷
ガラスの破損による負傷
静電高圧発生器による感電
帯電による感電、耐電圧オーバーによる破損に伴う
負傷と空気汚染
誘導コイルやチョークコイルによる感電
真空管電源装置による感電
X線発生用電源装置による感電、X線被ばく
放射線被ばく、放射能汚染、放射線障害
目や粘膜の損傷、呼吸器への障害、中毒
(NH3、NO、NO2 、H2S、SO2、Cl2 、HCl等)
爆発
過酸化水素水の皮膚の損傷、燃焼実験による火傷
爆発 爆発性の金属アセチリドの生成
夏季に栓が飛ぶ、目や粘膜の損傷
皮膚の損傷 希釈による飛散
皮膚の損傷 皮膚の損傷 飛散による目への重大な障害
夏季に栓が飛ぶ、吸入による呼吸器への障害
加熱融解した硫黄による火傷 SO2による中毒
水との爆発的反応による飛散で目や皮膚に損傷
引火 中毒(エーテル、クロロホルム、二硫化炭素)
引火
中毒 引火
頭痛 吐気 意識不明 引火
目や鼻への刺激
爆発の危険
突沸による飛散で目や皮膚に損傷
火傷
突沸による飛散で目や皮膚に損傷
冷却時の水の逆流による器具の破損
直接光源を見ることによる目の損傷
カバーガラス、スライドガラスの破片による切傷
安全カミソリ、ミクロトームの刃による切傷
トルエン、キシレンなどの吸入による頭痛や吐気
トルエン、キシレンなどへの引火や火災
キューネ発酵管・ツンベルグ管の破損による切傷
二酸化炭素の吸収用アルカリによる皮膚の損傷
オートクレーブの蒸気による火傷
乾熱滅菌器の発火による火傷
オシロスコープなどによる感電
実験動物による咬傷。病原菌の感染
エーテル、クロロホルムなどの麻酔剤による中毒
交通事故、危険な生物(スズメバチ、マムシなど)に
よる事故
○飼育、栽培
恒温器による感電、ヒーターによる感電
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観察、実験名
予想される事故例
○太陽の観測
太陽直視による網膜損傷
サングラスの破損による目の損傷
投影法による接眼レンズ結像面での火傷
満月直視による目の損傷
暗闇での転倒
露天観測時のエーテルによる引火、中毒
岩石カッターによる負傷 岩石研磨機による指先負傷
バルサム加熱時の火傷 キシレンの吸引による頭痛や吐気
キシレンの引火
ハンマーやタガネによる負傷、交通事故
露頭からの滑落
危険な生物(スズメバチ、マムシなど)による事故
地
○月の観測
学 ○夜間観測
○気象観測
○岩石、鉱物実習
領
○野外実習
域
②
ガラス器具の取扱
事故例・ ゴム栓に温度計を差し込むとき、無理に力を入れたため、温度計が折れて、
割れたガラスが手に刺さった。
・
試験管を洗浄中、ブラシで底を突き破り、破片で指を切った。
・
固着しているガラス共栓を取ろうとして、机の角でたたいたら、びんが割
れ薬品を浴びた。
・
平底フラスコ内の空気を真空ポンプで抜いていたら、フラスコが割れて、
破片で負傷した。
・
三角フラスコの集めた水素に引火・爆発したため、破片が顔に刺さった。
・
ガラス管による気柱共鳴の実験で、管口の近くでおんさを叩いたのでガラ
ス管を割ってしまい、手にけがをした。
・
カバーガラスやスライドガラスを強く押さえすぎたため破損して切り傷を
負った。
ア
ガラスの特性
ガラス器具の破損等による事故を防ぎ、有効に使用するためには、次に示すような
ガラスの特性をよく理解して扱う。
(ア)無理なカや衝撃に弱い。
(容器に圧カがかかるときは必ず丸底フラスコを使用する)
(イ)急冷や急加熱により、ひずみを生じて破損することが多い。(ひび、かけのあるガ
ラス器具は使用しない)
(ウ)長年使用するとガラスは劣化する。
イ
栓やガラス管の取扱
(ア)使用薬品が固着の原因となるため、試薬や溶剤により栓の種類を変える。
アルカリ類試薬・・・ゴム栓、有機溶剤・・・コルク栓、シリコン栓
(イ)ゴム栓にガラス管や温度計を通すときの留意点
ゴム栓やガラス管に潤滑剤(水や石鹸水など)をつけて摩擦を小さくし、ガラス管
などの栓に近い部分を持って回転させながらゆっくり少しずつ押し入れる。
- 99 -
③ 物理の実験・観察
ア 高電圧装置の取扱
物理実験に用いられる高電圧装置には、誘導コイル、静電誘導起電機、真空管電源装置、
ブラウン管電源部、ガイガー計数管電源部、X線管電源部、ネオントランス、パワーハウス
高圧部等がある。
(ア) 日常点検で、装置の安全を確認し、使用に当たっては、感電ショックによる二次的な事
故(驚いて、机上の物を落として破損するなど)を防ぐよう注意する必要がある。
(イ) 通電中の配線や端子に不用意に触れたり、放電・スパークを受ける等の事故を未然に防
ぐように対策と注意喚起が必要である。
(ウ) 配線の確認、濡れた手で触らない、アースの使用、実験終了後の放電など、電気の取り
扱い上の基本的な留意事項を遵守する。
イ レーザー光源装置の取扱
一般に学校で使用するレーザー装置の出力は小さいが、直視すると失明の恐れもあるので
絶対に直視させないようにし、顔に照射しないように注意を喚起する。
ウ X線装置の取扱
(ア) 高電圧を使用するため、湿気の多い場所を避ける。
(イ) アース端子を必ず接地する。
(ウ) 人体に照射しない。
エ 放射性同位元素の取扱
放射線源の取り扱いは、被ばくの低減化の3原則(距離、遮蔽、時間)を遵守する。
(ア) 密封放射性同位元素:鍵のかかる収納庫に入れ、管理責任者は容器などの破損の有無の
確認と紛失防止に努める。
(イ) 非密封放射性同位元素:周囲の汚染防止のため、ポリエチレンシートなどを使用する。
また、人体や使用器具類の汚染の有無について細心の注意を払う。
(ウ) 放射性物質等の廃棄:処理などについては(社)日本アイソトープ協会(環境整備部
電話 03-5395-8030)に相談するとよい。
オ その他の実験上の注意
物理では様々な新たな演示実験や生徒実験が工夫開発されている。その実施の際には、あ
らかじめ事故の可能性の有無について検討すると共に、予備実験を必ず行うようにする。
(ア) 刃物:カミソリ、カッターナイフなどの使用で切り傷を負わないようにする。
(イ) ガラス:圧力をかける場合には必ず丸底フラスコを使用する。破片が発生する場合には
切り傷を負わないよう注意する。
(ウ) 加熱:ガスバーナーや加熱された器具類や熱湯に触れて火傷をしないよう注意する。
(エ) 冷却:液体窒素やドライアイス、冷却された器具等で凍傷を負わないようにする。
(オ) 放射線:クルックス管やガイスラー管の使用時に微弱な放射線が発生するので被ばく事
故がないよう遮蔽をする。
(カ) 食品:実験で作ったものを試食する場合、食中毒が発生しないよう衛生管理に配慮し、
器具や実験台等が薬品や放射性物質などで汚染されていないことを確認する。
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④ 化学の実験・観察
ア 気体の実験で注意を要するもの
(ア) 二酸化硫黄 (SO2)
腐食性があり有毒な気体であるので、発生量を最小限にし、空気中への拡散を少なくす
る。溶解度が大きいので、気体の発生口が水中に入らないようにする。
(イ) 塩素 (Cl2)
発生量はできるだけ少なくし、空気中に拡散させずにチオ硫酸ナトリウム水溶液に吸収
させる。生徒実験では試験管程度の体積の塩素を用いて、ヨウ化カリウムや色素の漂白作
用を調べるにとどめたい。
(ウ) 塩化水素 (HCl)
溶解性を調べるには、塩化水素の満ちた試験管に大きめのゴム栓をあてて、水中に倒立
させる。亜鉛と塩酸を開放状態で反応させる実験では、水素の発生とともに塩酸ミスト(塩
酸の細かい霧)も生成するので吸入しないように注意する。
(エ) 硫化水素 (H2S)
多量に吸い込むと激しい中毒を起こす。空気中に拡散されると臭覚が麻痺し気付かない
ことがある。可燃性でもあるため多量に発生させない。
(オ) 炭化水素 (CnHm)
アセチレンは、炭化カルシウムに水を加えてつくる。爆発するので、過熱したり衝撃を
与えたりしてはならない。また、酸素との混合気体に点火する実験は、激しい爆発をする
ので行わない。アセチレンを銀、銅、水銀等の重金属塩類の水溶液に通してできる金属の
アセチリドの沈殿は、乾燥させるとわずかな衝撃でも爆発して非常に危険である。
(カ) 臭素 (Br2)
毒性と腐食性の強い液体で、気化すると毒性の強い蒸気を発生する。臭素付加反応を行
うときは、臭素水または、臭素溶液を用いる。
(キ) 窒素酸化物 (NOx)
一酸化窒素は空気に触れると二酸化窒素に変わり、酸化性・腐食性の強い有毒気体にな
るので両方とも捕集を完全にして逃がさないようにする。
(ク) 液体窒素 (N2)
少量の接触では、体温で急激に蒸発が起こり、皮膚との間にガス層を生じ、凍傷になる
心配は少ないが、衣服に滲み込んだ場合には危険であり手袋も布製は用いない。超低温の
ため、容器が常温の場合は急激な収縮を起こしガラス容器を破壊することがあり、内容物
の流出など二次的事故を起こす危険がある。容器はできるだけデュワー瓶を使用する。容
器内の液体窒素は次第にガス化し、容積が増大するため密閉してはならない。
イ 有機溶剤の取扱
事故例 ・エーテル溶液の入ったフラスコを冷蔵庫に入れておいたところ、エーテルの蒸
気が漏れて冷蔵庫内のスイッチの火で引火し爆発して扉が飛んだ。
・フラスコをアセトンで洗って乾燥機の中で乾燥しようとしたところ、残ってい
たアセトンが気化し引火して爆発し、乾燥機の扉がはずれて遠くまで飛んだ。
- 101 -
(ア)
引火性有機溶剤の取り扱い上の注意
・常に容器の栓を確実に閉じておく。実験で続けて使用する時も、その都度必ず栓をする。
栓にはゴム栓など溶剤に溶けるものは使用しない。エチルエーテルにガラス共栓を用いる
と空気と触れ酸化されて生じた過酸化物が摩擦により爆発することがある。
・容器は火気から遠ざけ、直射日光の当たらない、通風の良い冷暗所に置く。低温で蒸気
圧の大きいエチルエーテルや二硫化炭素は、数メートル離れたところでも引火するので、
保 管には厳重に注意すること。
・引火性有機溶剤を加熱するときはヒーターのような安全な引火防護方法を用いる。ガス
バーナーによる加熱を避ける。
(イ) 有機溶剤による障害の防止
・有機溶剤の取り扱いは、できるだけドラフトチャンバー内で行う。室内で取り扱うときは
通気・換気をよくして、蒸気量が許容濃度を大幅に下回るようにする。
・皮膚からの侵入を防ぐためには保護手袋として、合成ゴム製、塩化ビニル加工、ポリエチ
レン製などの手袋をする。皮膚に付着した時は、直ちに石鹸や合成洗剤を用いてよく洗い、
水で十分に洗い流す。
ウ 発火性・爆発性・禁水性物質の取扱
(ア) 自然発火または衝撃などにより、発火・爆発を起こしやすい物質
・黄リン、ニトロセルロース、ピクリン酸、過酸化ベンゾイルが該当するが、基本的には保
管しないことをすすめる。
・マグネシウムやアルミニウムの粉末は空気と接触して発熱・自然発火する場合がある。空
気中の水蒸気との反応で生じた水素の燃焼によって自然発火すると考えられ、水分から隔離
して貯蔵する。酸化剤と混合すると、過熱・摩擦・衝撃により発火する。
事故例:合金の黄銅を作る実験で、残った亜鉛末少量をペーパータオルでふきとり、ごみ箱
に捨てたところ、数時間後にゴミ箱から出火した。
(イ) 水との接触により、発火・爆発や激しい発熱を起こしやすい物質
以下の物質が該当するが、いずれも水との接触を断ち、素手で触れぬよう気を付ける。
【アルカリ金属(ナトリウム・カリウムなど)
】
水と反応させる実験では、
2~3mm角に切ったものを多量の水に落とす。
発火したり、
爆発したりして飛び散ることがあるのでガラス板で上部を覆うとよいが、密閉すると危険。
アルカリ金属は皮膚を激しく腐食し、激痛を起こす。
事故例:金属ナトリウムをメタノールで分解したのち水に捨てたが、分解が不十分で発
火。
(ゲル状のアルコキシド膜ができ、内部まで分解しなかったため。
)
【酸化カルシウム(生石灰)
】
空気中で自然発火することはないが、空気中の水蒸気を吸収、反応して発熱し膨張する
ため、容器を破損することがある。密閉して貯蔵する。
【濃硫酸】
粘性が高く、加熱すると突沸しやすい。濃硫酸に水滴が入ると突沸し、硫酸が飛び散る
ので絶対に行わない。水に濃硫酸を入れるようにする。
※その他 カーバイト、五酸化二リン等、水との接触を断ち、素手で触れぬよう気を付ける。
- 102 -
(ウ) 可燃物との接触により、発火・爆発を起こしやすい物質
ここで挙げるような酸化性物質の固体を粉砕する場合、乳鉢に可燃物が付着していないこ
とを確かめてから注意深く行う。可燃物と混合するときは、両者をあらかじめよく粉砕して
おき少量ずつ紙にのせ、紙を両端から交互にめくって混合する。乳鉢や筒状の容器内で混合
したり、棒やさじを使って混合してはならない。
【液体空気(液体酸素)
】
有機物やアルミニウムを接触させると爆発的に燃焼。断熱材として、多孔質の有機物材料
を使うと、液体酸素が浸透して爆発性となる。
【過酸化水素水(30%水溶液)
】
分解物質や異物が存在すると室温でも爆発。混触危険物質として、アルコール、有機酸、
金属粉、金属酸化物、金属塩。
【濃硝酸】
有機物、アンモニア、硫化水素、二硫化炭素などと混合して、発火・爆発。木片、かんな
くずなどのセルロース類に接触して、発火。
【赤色発煙硝酸】
濃硝酸に二酸化窒素が過剰に溶解したもので強力な酸化剤。有毒な二酸化窒素が発生する
ので注意。熱した有機物に接触すると直ちに発火。
【酸化クロム(Ⅵ)
】
強力な酸化剤。有機物や還元剤と接触して発火・爆発する危険がある。
【塩素酸塩・過塩素酸塩】
塩素酸塩は、有機物、硫黄、リン、硫化物、金属粉と混合すると爆発。濃硫酸と混合する
と爆発的な反応が起き、非常に酸化力の強い二酸化塩素が発生し、これが有機物を発火。
過塩素酸塩も有機物と反応して発火。木炭や硫黄と混合すると激しく発火。
事故例:塩素酸ナトリウムを少量とり、紙の中に包もうとしたら摩擦で発火。
試験管中に塩素酸カリウムと硫黄を入れて振り混ぜたら爆発。
【過マンガン酸塩】
有機物、硫黄、リン、スズ、濃硫酸、過酸化水素などと接触すると発火・爆発。過マンガ
ン酸アンモニウムは特に酸化力が強く、加熱すると爆発。
【二クロム酸塩(重クロム酸塩)】
可燃物や消石灰と混合すると爆発。特にアンモニウム塩が爆発性が強い。
【硝酸塩】
有機物との混合物に点火すると爆発することがある。硝酸アンモニウムは金属粉(亜鉛、ア
ルミニウム、銅、スズなど)との混合物は爆発性となる。
(エ) 他の物質との混合により、発火、爆発を起こしやすい物質
・亜鉛末とヨウ素または硫酸アンモニウムを混合すると爆発することがある。
・ハロゲンとアンモニアまたはアンモニア水を混合すると爆発することがある。
・銀鏡反応用混合液とその廃液及びアンモニア性硝酸銀溶液も爆発することがあるので使用
後は直ちに廃棄する。
- 103 -
エ 酸・アルカリ・腐食性・毒性物質の取扱
(ア) 皮膚に障害を与える腐食性の物質
以下に記した物質が皮膚に付着した場合は、濃度のいかんに拘らず基本的に直ちに多量の
水で洗い流す。
a 酸類の腐食性
【硫酸】濃硫酸が皮膚に触れると激しいやけどを起こす。身体に付着した場合は、直ちに多量
の水で洗い流す。このとき中和剤は使用しない。硫酸は不揮発性のため、希硫酸であ
っても皮膚に触れたまま放置しておくと、水分のみが蒸発して薬傷を残す。
○事故例:希硫酸が付着したと気付かずに、その指で顔を触れたところ、しばらくして顔に
痛みを感じ、触れた箇所が薬傷を起こした。
【塩酸】濃塩酸は皮膚に対しては濃硫酸ほどのやけどは起こさないが、すぐに水で洗い流す。
【硝酸】濃硝酸は皮膚に付着するとなかなか消えない黄色いやけどを起こす。すぐに水で洗い
流す。
【酢酸】濃い溶液は皮膚を刺激し薬傷を起こす。すぐに水で洗い流す。
【ギ酸】濃いギ酸は有毒であり、皮膚に激しい痛みを伴う薬傷をつくる。すぐに水で洗い流す。
【フェノール】皮膚に付着すると激しい炎症を起こす。薄くても皮膚を通して吸収されるので
注意。直ちに石鹸水で繰り返し洗う。
【フッ化水素酸】ごくわずか皮膚に触れても、激しい痛みとひどいやけどを引き起こす。生徒
実験には使用しないことが望ましい。
b 塩基類の腐食性
【水酸化ナトリウム・水酸化カリウム】固体や濃い溶液が皮膚に触れると、炎症が皮膚の深部
にまで浸透するので、強酸よりむしろ大きな障害を起
こすことがある。特に、目に入った場合は、角膜を侵
すので失明する危険もある。
○事故例:友人に水酸化ナトリウムを舐めてみよと言われて、粒状水酸化ナトリウムを舌の
先端に付けたところ、舌の先端が溶けた。
【アンモニア】アンモニアの蒸気を吸入すると、呼吸器系を刺激し、激しく咳き込む。目に触
れると激しく涙腺を刺激する。
c その他の物質の腐食性
【過酸化水素(30%水溶液)
】付着した箇所が白く変色し、痛みが激しい。目に入れば失明の危
険がある。
【黄リン、臭素】皮膚を激しく侵す。生徒実験には使用しないことが望ましい。
【硝酸銀】結晶や水溶液が皮膚に触れると銀が析出し、黒い斑点ができる。衣服に付着すると
斑点がとれなくなるので注意。
(イ) 少量でも中毒を起こす毒性物質
【シアン化カリウム、シアン化ナトリウム】致死量が極めて少量であり保管は避けたほうが望
ましい。
【水銀、水銀化合物】水銀は常温で液体であるが、蒸気圧が高く吸入のほか、皮膚からも吸収
される。これらを使用する生徒実験は避けるほうがよい。
【クロロホルム、エーテル】ともに麻酔性がある。クロロホルムは分解して猛毒性のホスゲン
を生じるため、エーテルがあれば危険性のあるクロロホルムは備
えないほうがよい。
【パラジクロロベンゼン】防虫剤として使用されるが、気体は人体に有毒なので注意が必要。
- 104 -
⑤ 生物の観察、実験
ア 生物実験に使用する機器の危険性
(ア) 光学機器(顕微鏡、紫外線ランプ、滅菌灯)
;強光や紫外線による視覚障害。
(イ) ガラス器具(ビーカー、試験管、カバーガラス、スライドガラス、温度計)
;ガラスに
よる切傷、やけど等。
(ウ) 解剖器具(ピンセット、メス、カミソリ、はさみ)
;切傷。
(エ) 電気機器(各種測定機器、オシロスコープ、照明機器);電気による感電、火災、爆発
等。
(オ) 高圧機器(オートクレーブ、各種高圧ガスボンベ);蒸気によるやけど、気体の圧力に
よる傷害、爆発、災害等。
(カ) 定温装置・燃焼器具(乾熱滅菌器、定温装置、ガスバーナー、アルコールランプ);温
度による火傷、凍傷等。
(キ) 遠心機(電動遠心機、手動遠心機)
;材料の飛散、遠心管による傷害。
イ 生物実験で使用する薬品で注意を要するもの
(ア) 強酸性物質(濃硝酸、濃硫酸、無水クロム酸);衣服や有機物などと混合すると、発熱
発火することがある。容器は冷暗所に破損せぬように貯蔵する。
(イ) 特殊引火物(エーテル、二硫化炭素);引火点が低く、きわめて引火しやすい。一度引
火すると爆発的に広がり、消火しにくい。使用時は通風を良くし、火気厳禁とする。
(ウ) その他の引火物(石油エーテル、石油ベンジン、ベンゼン、トルエン、キシレン、アル
コール類、アセトン、灯油、ギ酸、酢酸、各種油類、など)
(エ) 有毒性物質(一酸化炭素、インスリン、インドール、塩化水素、コルヒチン、ピリジン、
フェノール、ベンゼン)
(オ) 特定有害物質(クロロホルム、トルエン、フェノ-ル、ベンゼン、メタノール)
(カ) 腐食性物質(アンモニア、ギ酸、クロロホルム、酢酸、硝酸、水酸化カリウム、水酸化
ナトリウム、ピリジン、フェノール、ベンゼン、硫酸、リン酸)
ウ 飼育・採集・野外観察など
(ア) 飼育;飼育動物の糞・尿・食べ残しの飼料などは、ハエやゴキブリの増殖を促進し、病
気の感染源になることがあるので、常に清掃と清潔に心掛ける。また、小動物などの唾液
には細菌等が含まれるので、噛まれた時には、直ちに殺菌・消毒の手当てを行い、病院で
診察・治療を受ける。
(イ) 採集・野外観察;野外での行動には、さまざまな事故もあり得るので、危険防止につい
ては細心の注意が必要である。
・道路などでは、交通妨害にならないように、また、交通事故に注意する。
・野外調査をするときは、活動に適した服装を整え、必要な救急薬品などを携帯する。
・校外や農村地域での夏の野外調査では、スズメバチの巣があったり毒ヘビがいたりする
ので、不用意に触らないように留意する。
・野外での生物採集は、その地での採集の可否について、予め確認をするとともに、採集
許可を得ているものについても必要最小限にとどめ、自然を不必要に傷つけるような行為
は厳に慎む。
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⑥ 地学の実験・観察
ア 天体観測
○事故例:太陽の観測中に目を痛めた。天体望遠鏡のおもりを足に落として負傷した。電気
のコードに足を引っかけて転倒し負傷した。
(ア) 太陽観察は必ず投影法で行いサングラスを用いた直視法は行わない。また、誤ってファ
インダーを覗いたり、投影板と接眼部との間に顔を入れないよう対策と注意を徹底する。
また、接眼レンズが非常に熱くなるため火傷にも注意が必要である。
(イ) 天体望遠鏡のおもりを足に落下させたり、赤道儀架台のクランプや歯車で指を挟むこと
があるので注意が必要である。
(ウ) 夜間観測の場合、暗闇での転倒など様々な危険が伴うことを十分に配慮し、観測中はも
とより、準備・後片付けに際しても留意が必要である。
イ 気象観測
○事故例:台風接近中に屋外で観測し、飛来物が当たって負傷した
台風接近中は予想を超える事態の発生が予想される。また、雷雨時には落雷によ
る感電などの危険性がある。これらの場合には、観測を行わない。テレビ、ラジオ、
Web ページなどから最新の情報を入手して、その都度、的確な判断をする。
ウ 岩石、鉱物実習
○事故例:岩石切断中に試料が飛散して生徒に当たり負傷した。岩石スライド作成中に接着
用のバルサムで火傷をした。岩石スライド作成用のカバーガラスを破損して切り傷
を負った。
(ア) ダイヤモンドカッターや電動研磨機の使用中に試料が飛散することがあるので、操作者
にはしっかり保持することを徹底し、周囲の生徒にも注意喚起が必要である。
(イ) ダイヤモンドカッターや電動研磨機の回転部分への巻き込みや、指先の切断・擦傷をし
ないよう、適切な使用方法を指導する。
(ウ) バルサム、ホットプレート、ガスバーナーなどで火傷などをしないよう指導する。
(エ) キシレンへの引火や、吸引による中毒が発生しないように指導する。
エ 野外観察
○事故例:ハンマーで自分の手をたたき負傷した。調査地で転倒して捻挫した。
(ア) ハンマーやタガネの使用方法、携行方向について指導を徹底し、生徒自身のみならず周
囲の人に対する配慮を徹底する。
(イ) 露頭での転落や滑落がないよう場所の指定や服装等について指導する。また、落石事故
にも細心の注意を払い、危険な場所には立ち入らないよう指導する。
(ウ) 調査地への移動中や調査中の交通安全、交通ルールの遵守について指導する。
(エ) 落雷、大雨、強風など天候の急変や河川の増水・高波の変化に留意し、早期に中止等の
判断をする。また、河川や海への転落が起きないよう、行動場所を限定するなど指導する。
(オ) 危険動物(マムシ、スズメバチ)や植物によるかぶれについて理解させ、注意を喚起す
る。
(カ) 私有地への無断立ち入りなどによるトラブルを未然に防ぐため、立入禁止区域を明確に
し、生徒に立ち入らないよう指導する。
- 106 -
3 美術
美術や工芸は、さまざまな材料を加工して作品を制作する場面が多い教科であり、特に用具に
ついては、材料と加工の仕方とのかかわりを考え、その基本的な使用法、安全で的確な取扱がで
きるように生徒を指導しなければならない。用具の取扱に習熟し、さらに用具を大切にし、適切
な管理や整備ができる態度を身に付けさせる必要がある。生徒が用具等を正しく取扱うことによ
って、制作活動の可能性の幅を広げ、生徒の制作意欲や興味・関心を高めることができる。
(1)
安全管理
美術室等には、多様な材料や用具があり、また、生徒が製作した作品などがある。事故を防
止するためには、材料や用具にかかわる管理を徹底して行う必要がある。
①
棚の引き出し等を有効に利用し、用具を整理する。また、用具の所在が明らかとなるよう
に、引き出しに用具名を貼ったり一覧表を教室前に貼ったりするなどして、用具の整理を工
夫する。
②
刃物類は、使用後、必ず保管場所にもどし、数を確認する。
③
机等の配置を工夫し、座席間にゆとりを設けることにより、生徒の作業スペースを確保し、
安全に制作活動ができるようにする。
④
教室内の環境整備や備品等について日常点検で安全確認をするとともに、用具類が安全に
使用できるように整備し、安全管理に努める。
⑤
(2)
材料と用具のかかわりを考え、生徒が安全に制作できるように学習指導計画を作成する。
安全教育
教員は、材料や用具の特徴や性質を理解し、生徒が制作活動において用具を適切に扱うこと
ができるよう指導するとともに、落ち着いた雰囲気の中で生徒が制作に取組み、基礎的技能を
生かして、創造的な制作活動が行われるよう指導することが重要である。
※ 予想される事故事例と指導内容
①絵画
事
例
屋外での写生でハチなどの虫に刺される。日焼けする。
事前に場所や時間を十分調査し、安全を確認するとともに、医療施設等の場所を確
指導内容等
認しておく。事前に、生徒に帽子の着用や服装について指導する。
ハチ、毛虫、毒蛾等に刺された時は、傷口を清潔にし、すぐに医療機関に行く。
事
例
定着液、溶き油などから揮発した気体を吸い込む。
締め切った部屋で作業しないように、換気扇等により換気をするように指導する。
指導内容等
生徒の様子に留意し、気分が悪くなった生徒にはすぐに退出させ、保健室に連絡す
るとともに、他の生徒の安全確保に努める。
- 107 -
②彫刻
事
例
版画用彫刻刀で手などを傷つける。
版木台を使い材料を固定し、刃の進む方向には手を絶対に置かないように指導す
指導内容等
る。両手で刀を持つなど、正しい用具の扱い方や姿勢等を指導する。
事
棚の上などに置かれた石膏像などのモチーフが落下する。
例
大型モチーフ専用の収納庫に保管するのが望ましい。収納庫に保管できない時は、
指導内容等
できるだけ低い場所に置くなど工夫する。生徒には、大型モチーフに触れないよう指
導する。
事
例
電動ノコギリの刃が折れてはじけ飛ぶ。
電動工具を事前に点検し、安全であることを確認する。生徒には、力の入れ具合な
指導内容等
ど、正しい取り扱い方を指導する。また、危険性を理解させ、安全な立ち位置等を指
導する。
③デザイン
事
例
素材のアルミ缶などで手などを傷つける。
素材の選択に十分注意し、手袋を用意し、生徒に手袋を使用した上で、制作作業を
指導内容等
行うように指導する。
④鑑賞
事
例
天井から吊るした作品が落下する。
作品展示場所や展示方法には細心の注意を払い、万が一、作品が落ちたとしても、
指導内容等
生徒に危害が及ばないよう、生徒の活動範囲を規制するなどの工夫をする。生徒には、
落ち着いた中で鑑賞させ、作品の取り扱いについて指導する。
⑤映像メディア表現
事
例
指導内容等
写真現像の際に薬品の取扱を誤る。
使用する薬品以外、用意しない。生徒には、薬品の危険性や、安全な取り扱い方を
理解させ、混ぜることのないよう指導する。また、換気をするように指導する。
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4 家庭
家庭科では実験・実習などの体験的学習を重視している(普通教科「家庭」の各科目、専門
教科「家庭」の各科目ともに、総授業時数のうち原則として10分の5以上を実験・実習に配当す
ることが学習指導要領に示されている)。これは実践的・体験的な活動を通して家族や家庭の
機能を理解し、生活に必要な基礎的・基本的な知識と技術を身に付けさせるためであり、また、
これからの時代に必要な「生きる力」として、主体的に考え判断する力や、問題解決能力など
を生徒たちに育成するためでもある。
したがって、家庭科の授業においては、実験・実習等の体験的学習を積極的に取り入れ、安
全に実施するための学習環境を整えることが重要である。これには、実験・実習用具等の確認
や、施設・設備の定期点検といった安全管理はもちろん、生徒への事故防止のための指導が含
まれる。
さらに、実験・実習等の体験的な学習以外でも、生活の様々な場面において適切に判断し安
全に行動できるような、生活に即した学習の充実を図ることが求められる。
(1) 安全管理
校内の施設・設備の不備等が原因で発生する事故は、本来あってはならない。定期的な安全
点検による異常の有無の確認の他、使用前後の点検整備を確実に行い、「このままにしておい
たら危ない」「事故やけがが起こる可能性がある」ということを敏感に察知し、素早く対応す
ることが必要である。
① 施設・設備、用具等に関する留意事項
ア 実習室共通
(ア) 採光・照明、通風・換気など学習に適した室内環境の点検・整備
(イ) 作業動線を考慮した通路、設備、用具等の配置
(ウ) 実習室の床・壁・窓等の破損等の点検
(エ) 地震・火災対策(防災上必要な設備の点検、什器類の転倒・落下防止措置)
(オ) 情報通信機器、視聴覚機器、掲示資料、模型等の適切な設置と管理
(カ) 実習室出入口、器具庫等の施錠及び鍵の管理
イ 調理・食物実習室
(ア) 電気設備・器具(コンセント、照明、電子レンジ、冷蔵庫等)の点検・整備
(イ) ガス設備・器具(ガス栓、こんろ、オーブン、湯沸かし器等)の点検・整備
(ウ) 水道設備(蛇口、排水管、浄水器、製氷器等)の点検と定期的な洗浄
(エ) 調理器具(包丁などの刃物)の保管と衛生管理
(オ) 食材の保管
ウ 被服実習室
(ア) 電気設備・器具(コンセント、照明、洗濯機、アイロン・こて等)の点検・整備
(イ) ミシン(コントローラー・スイッチの作動確認、手元灯、各部品)の点検・調整
(ウ) 裁縫用具(はさみ、針等)の管理
(エ) 薬品・実験器具(洗剤類、実験用薬品、アルコールランプ等)の管理
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エ 保育実習室
(ア) ベビーベッド、沐浴槽等の点検・整備
(イ) 遊具・玩具等の故障・破損の確認
オ 福祉・介護実習室
(ア) 介護ベッド、介護浴槽・入浴システム等の点検・整備
(イ) 高齢者・障害者疑似体験具の点検・管理
(ウ) 福祉用具(車いす、自助具等)の管理
② 安全点検
安全管理のための点検の時期や方法は場所やものによって異なるが、使用予定の設備・
用具等については実習の前後に必ず確認を行い、さらにすべての管理項目について定期的
に点検を行う必要がある。確実に行うための安全点検表の作成や年間の点検計画、実施日
時の記録など、点検マニュアルを作成しておくことが望ましい。
また、施設全般や共通の設備等については学校全体で定期点検日を設けるなど、組織的
な安全点検の体制づくりが求められる。
【実習室の安全点検表の例】(調理・食物実習室:点検項目は時系列順)
平成
年
月
日(
実習前(
月
日
)
時間目
時)確認
□ 部屋の照明と換気の状態
□ ガスの開栓、コンロの点火状況
□ 調理器具の準備
・包丁(
丁)
・○○(
個・台)
□ 石けん・消毒液の準備
□ けがへの対応
(氷、消毒薬、絆創膏等の準備)
□ 冷蔵庫の温度・衛生状態
□ 実習材料の鮮度・消費(賞味)期限
□ 実習材料の配布・保存・温度管理
□ 生徒の健康状態
年
実習後(
組
第
月
回調理実習
日
時)確認
□ 生徒の健康状態の確認
□ 調理台・床の清掃
□ 調理道具の数と状態
・包丁(
丁)
・○○(
個・台)
□ 残った食材の保管
□ ごみの分別と処分
□ まな板、ふきん等の消毒
□ 冷蔵庫の清掃
□ 換気
□ ガスの元栓・電源等の確認
□ 消灯・施錠
③ 安全点検の事後措置
安全点検の結果に応じて、施設・設備の修繕、危険物の除去、危険箇所の明示、使用場
所の変更など、適切な措置を講じなければならない。また、状況によっては学校内で措置
できないものも考えられるが、このような場合には学校の設置者に速やかに報告し、適切
な措置が講じられるよう処理する。
また、学校全体で安全管理に関する予算を組んでおくことも重要である。
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(2) 安全指導
家庭科では、実験・実習等の指導過程で特別な教材・教具を使用することが多く、また限
定された空間内で集団で身体を動かすため、事故やけがが起こる危険性が高い。特に危険が
予想される教材・教具の使用については、実習中に細心の注意を払うことはもちろんである
が、年度初めのオリエンテーションや新たな単元等に入るたびに、過去の事故事例等を示し
ながら、起こりやすい事故や注意すべきことがらについて繰り返し具体的に指導する必要が
ある。
① 指導項目と配慮事項
ア 調理実習・食品に関する実験等
(ア) 服装
a 衛生面への配慮(清潔なエプロンと三角巾の着用、頭髪・爪の処理)
b やけど、けがの予防(袖口・腕カバー、スリッパ等)
(イ) 火気・熱源への注意
a ガスこんろ、鍋類の使用方法(点火、消火の確認、余熱への注意)
b オーブン、電子レンジの安全な使い方
【参考】 電子レンジの使い方と危険性
○食品・飲み物を加熱し過ぎない(特に油の付いたもの、少量のもの)
→食品が燃えたり、飲み物が急に沸騰して飛び散る恐れ
○庫内に汚れを残さない
→汚れに電波が集中し発煙・発火の恐れ
○壁・窓に近づけて設置しない
→壁面や家具の変色・変形、排気熱で窓ガラスが割れる恐れ
(ウ) 調理器具、食器の扱い方
a 包丁・はさみ・皮むき器等の扱い方(持ち方、運び方)
b 食器の扱い方(破損の確認、洗浄、収納)
(エ) 食中毒の予防
a まな板、ふきんの衛生(使い分け、消毒、乾燥)
b 手洗いの徹底(洗い方、けがの有無の確認)
c 食材の適切な取扱い(保存方法、加熱時間)
【参考】調理実習等における事故防止について(平成15年6月11日 東京都教育庁)
「調理実習に際しての留意事項」
1 原材料のうち食肉、魚介類等冷蔵保管を要するものは、蓋付きの容器等に入れ冷蔵庫等
で10℃以下になるよう保管すること。
2 実習中は食材の配布から盛りつけ等に至るまでのすべての調理作業等において調理器具
の使い分けや異なる作業に移る際の手洗いの徹底など、二次汚染を受けないよう注意する
こと。とくに、調理加工品やサラダ用野菜など加熱調理工程を経ずに食べるものを、生の
- 111 -
食肉や魚介類の切り分け等を行う作業の隣で同時に作業しないよう注意すること
3 食肉、魚介類に用いたまな板等の調理器具を洗浄する際には跳ね水等に注意し同じシンク
内で生食用の野菜などの洗浄・水さらしなどを同時に作業しないよう注意すること。
4 加熱調理時は食品の中心部まで十分に加熱すること。
5 調理実習に際しては、別添「カンピロバクターによる食中毒の防止について
(昭和60年12月24日 60衛環食第448号)」の3「消費者に対する衛生教育」についても
参照し、衛生的な取扱に留意すること
イ 被服製作・服飾手芸・被服に関する実験等
(ア) 針・はさみ等裁縫用具の扱い方
a 針の種類と本数の確認、折れ針の処理
b はさみの数と配置、受け渡し方法、カバーの装着
(イ) ミシンの扱い方
a 誤作動の防止(使用場所、置き方、コントローラーの踏み方)
b 針の折れ・曲がりの危険防止(部品の確認と調整、布地との関係の確認)
(ウ) アイロンの扱い方
a 落下による事故防止(使用場所、置き方、電源の取り方)
b スチーム・余熱によるやけどへの注意
(エ) 実験器具・薬品類の扱い方
ウ 保育・介護実習等
(ア) 遊具・福祉用具の扱い方
a 遊具の使用方法(使用対象の確認、悪ふざけによる破損・けが等)
b 自助具の使用方法(使用対象、目的、各用具の材質や特徴の確認)
c 車椅子の扱い方と実習場所の安全確認
(イ) 介護体験実習時の注意
a 食事の介助(食器等の扱い方、誤飲等の防止)
b ベッドでの介助(体位交換、衣服の着脱介助時の落下・衝突によるけが)
c 移動の介助(転倒によるけが)
d その他(入浴・排泄の介助時の器具によるけが)
(ウ) 体験具の扱い方と活動上の注意
a 体験具の扱い方(身体への負担や破損によるけが)
b 感覚の鈍化に対する注意(歩行の際の転倒・衝突等への注意)
(エ) 保育・福祉施設見学の際の注意
a 園児・入所者及び生徒のけが
b 施設への移動の際の事故
エ その他
・ 住居模型作成(工具・材料の扱い方)
・ 園芸作業(園芸用具の扱い方、土の衛生等)
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② 事故事例と事故発生時の対応
ア 事故事例
(ア) 食中毒
発症日時
平成15年5月11日午後10時頃から19日午前5時頃まで
患者症状
下痢、腹痛、発熱等
患者総数
55名(16歳~18歳)うち入院者2名
○調査の結果、以下の調理実習での食品が原因と特定された。
原因食品
5月 9日 … 親子丼、和風サラダ、はんぺんとみつ葉のすまし汁
5月13、14、15日 … カレーチキンピラフ、コンソメスープ、サラダ、カスタードプリン
病因物質
カンピロバクター
原因施設
高等学校
(イ) 調理実習時の刃物によるけが、加熱中の火傷
(ウ) 被服実習時の針によるけが(ミシン含む)、アイロンでの火傷
(エ) 介護実習時の転倒、ベッドからの落下
(オ) 校外実習への移動時の交通事故
イ 事故発生時の対応
事故発生の際は、現場での速やかな対応とその後の連絡・報告が重要である。実習中のけが
の場合、応急処置と同時に他の生徒への指示、養護教諭・担任への連絡、管理職への報告等、
事故発生時の対応マニュアルに従いスムーズな対応ができるよう日頃から確認をしておく必要
がある。また、活動の内容によってはボランティア保険などへの加入を行うようにする。
(3) 安全学習
生徒の安全教育・安全学習については、自他の生命を尊重し、他の人々の集団の安全を確
保するための適切な判断や対処する能力を培う取組を一層進めることが大切である。これま
では災害にかかわるものが中心であったが、今後は危機的状況が発生した場合に、生徒が速
やかに対応できる能力を身に付けさせることが求められる。
① 内容ごとの学習項目例
ア 食生活
(ア) 食中毒(細菌性、化学物質、自然毒)
(イ) 食品添加物
(ウ) 輸入食品(残留農薬、遺伝子組み換え食品等)
(エ) 食品表示(期限表示、アレルギー物質を含む食品、トレーサビリティ等)
(オ) 衛生管理(食品衛生法、HACCP等)
(カ) 食事と生活習慣病
- 113 -
イ 衣生活
(ア) 被服の機能、着装(身体保護、清潔)
(イ) 被服材料の種類と特徴(燃焼事故、皮膚障害)
(ウ) 被服の管理(洗濯・洗剤、保管方法)
(エ) 被服製作(状況・目的に応じた被服の製作)
ウ 住生活
(ア) 室内環境汚染(一酸化炭素中毒、シックハウス症候群、アレルギー等)
(イ) 家庭内事故とバリアフリー住宅(間取り、動線、家具の配置等)
(ウ) 防犯・災害対策(防火・耐震、まちづくり)
エ 家族・家庭
(ア) 家族の人間関係(児童虐待、DV等)
(イ) 労働(女性と労働、労働時間等)
(ウ) 法律
(エ) 社会保障
オ 保育
(ア) 母体の健康管理(性感染症、飲酒・喫煙、栄養)
(イ) 子どもの生活と遊び(ベビーフード、おもちゃの安全性)
(ウ) 子どもの権利と児童福祉
カ 高齢者の生活と福祉
(ア) 高齢者の心身の特徴
(イ) 介護実習
キ 消費生活・環境
(ア) 消費行動、契約・販売方法(悪質商法、携帯電話やインターネットによる犯罪被害の
防止と適切な利用方法)
(イ) 家計管理、経済計画
(ウ) 環境問題
ク ホームプロジェクト・学校家庭クラブ
(ア) 福祉施設での奉仕活動
(イ) 災害時のボランティア(地域の安全に関する活動、災害時のボランティア活動)
<参考>高等学校学習指導要領解説
第3 内容の取扱いについての配慮事項
3 実験・実習を行うにあたっては、施設・設備の安全管理に配慮し、学習環境を整
備するとともに、火気、用具、材料などの取扱いに注意して事故防止の指導を徹底
し、安全と衛生に十分留意するものとする。
実験・実習を行うに当たっては、被服実習室、食物実習室、家庭総合実習室などにおける施
設・設備の定期点検及び整備を行い、安全管理や衛生管理を徹底するとともに、生徒の学習意
欲を喚起するよう、資料、模型、視聴覚機器、情報通信機器などを整備し、学習環境を整える
ことが必要である。
また、電気、ガスなどの火気、薬品、針、刃物などの取扱いや、食材、調理器具などの衛生
的な管理と取扱いについての指導を徹底し、事故や食中毒等の防止に努めることが必要であ
る。
- 114 -
② 安全学習に関する情報サイト
分 野
サイト名とアドレス(「 」内はトピックス等)
厚生労働省 食品安全情報
http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/
「食中毒・食品監視関連情報」
掲載情報
・食品の安全に
関するQ&A
・食中毒予防
http://www.mhlw.go.jp/topics/syokuchu/index.html
・食中毒発生事例
「食品添加物」
・添加物に関する
http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syokuten/index.html
内閣府 食品安全委員会
http://www.fsc.go.jp/index.html
「食品の安全に関する用語集(PDF形式)」
http://www.fsc.go.jp/yougoshu_fsc.pdf
規制の概要
・リスクコミュニケーション
・一般者向け解説
・食品安全モニター
農林水産省 消費者の部屋
・報道発表資料
http://www.maff.go.jp/soshiki/syokuhin/heya/HEYA.html
・食品表示110番
東京都福祉保健局健康安全室 食品衛生の窓
・食品衛生ハンド
食の安全
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/shokuhin/index.html
ブック
東京都健康安全研究センター
・食教育コーナー
http://www.tokyo-eiken.go.jp/
・安全情報リポート
財団法人 食品産業センター
・食品事故Q&A
http://www.shokusan.or.jp/
・HACCP
「健康・安全 食百科」
・食品の安全性
http://www.shokusan.or.jp/hyakka/index.html
・食品の新素材
社団法人 日本食品衛生協会
http://www.n-shokuei.jp/
「正しい手洗いマニュアル(PDF形式)」
・食品関係法令
・食中毒
http://www.n-shokuei.jp/topics/images/handwash/handwash_manual.pdf
社団法人 繊維評価技術協議会
衣生活
http://www.sengikyo.or.jp/
洗剤メーカー各社ホームページ
- 115 -
・品質情報
・マーク認証
・洗剤
国土交通省
http://www.mlit.go.jp/
「中学生のための住まいの安全チェック(PDF形式)」
http://www2.bcj.or.jp/hm/pdf/files/01.pdf
住生活
住宅情報提供協議会 住まいの情報発信局
http://www.sumai-info.jp/
東京ガス「住まいの中の安全大研究」
http://home.tokyo-gas.co.jp/benri/sumai/
・防災情報
・バリアフリー
・耐震チェック
・高齢者の住宅
・住宅の安心情報
・シックハウス対策
・家庭内事故
・キッチンの安全対策
厚生労働省 子ども・子育て支援情報
家 族
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/index.html
保 育
社会福祉法人 子どもの虐待防止センター
福 祉
http://www.ccap.or.jp/
国民生活センタートップページ
http://www.kokusen.go.jp/
消費生活
生活安全
東京都消費生活総合センター 東京の消費生活
・児童虐待
・DV
・消費生活相談
・消費者トラブル
・商品テスト
http://www.shouhiseikatu.metro.tokyo.jp/
・消費者教育読本
「くらしの安全情報サイト」
・事故防止マニュアル
http://www.anzen.metro.tokyo.jp/
防 犯
警視庁「安全な暮らし」
http://www.keishicho.metro.tokyo.jp/anzen/sub0.htm
総務省消防庁
防 災
http://www.fdma.go.jp/
東京消防庁
http://www.tfd.metro.tokyo.jp/
救 急
環 境
・悪質商法
・薬物
・災害情報
・災害ボランティア
・生活安心情報
日本赤十字社 「とっさの手当・予防」
・応急手当
http://www.jrc.or.jp/safety/index.html
・事故防止
「ボランティアに関する出版物」
・ボランティア検索
http://www.jrc.or.jp/public/volunteer.html
・献血ルーム
国立環境研究所「EICネット-環境情報案内・交流サイト」
http://www.eic.or.jp/index.html
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・化学物質
5 保健体育
保健体育では「安全」そのものが学習の目標であり内容となっている。特に、
「体育」は運動す
ることが中心となる学習であり、また多様な施設、用具を使用することから、安全への配慮は必
要不可欠である。さらに、授業を通して「未然に事故を防ぐ」ための安全に関する知識や技能を
身に付けさせ、生徒自身が積極的に自他の安全を守れるように実践的な態度や能力を養うことが
必要である。
安全を優先するあまり取り扱う内容を少なくするのではなく、
生徒の発達段階や実態に合わせ、
学習内容を計画し、生徒が学習への意欲を高めるよう指導しなければならない。
体育に起因する事故が多いことを認識し、日常的に施設・設備や学習指導内容をチェックし、
安全を期する習慣は体育教師としての大切な姿勢である。
(1) 安全管理
① 学習指導計画の作成や授業前
点検内容
目標(ねらい)について
学習指導要領に即したものか。
生徒の実態や集団の規模に応じたものか。
学校の施設・設備に応じたものか。
計画について(年間計画、単元計画、毎時の授業計画)
季節や時期は妥当か。
時間数は確保されているか。また、必要以上に長く集中できないものではないか。
指導段階は、十分、かつ合理的に安全を重視しているか。
安全に運動できるスペースがあるか。同一施設内(仕切りがない)、同時間に異種目の講座
はないか。
指導方法や学習過程(練習方法等)について
試合や計測をいきなり行っていないか。
ルールやマナーについての学習をさせているか。
技能のみならず安全に関する指導をしているか。
男女の違いや個人差を考慮して指導しているか。
安全に運動できるスペースを確保しているか。
(例:柔道の練習で隣同士の距離が十分か)
生徒の健康状態や心理状態を観察したり、服装や装飾品などにも注意しているか。
② 施設・設備の日常点検と管理
日常的な管理体制について
定期的な点検(毎考査時など教科で決めておく)や日常的な点検をしているか。
施設、設備の点検について事務室、主事及び業者との連携をしているか。
部活動との連携をしているか。
安全な施設、設備のための予算を最優先しているか。
- 117 -
チェック欄
点検内容
グランドについて
地面の土や砂礫などは適切なものか。
凹凸や傾斜がなく整備されているか。
照明やスプリンクラーは有効に稼動するか。
各種ゴールや防球ネットに異常はないか。
ローラーやレーキ等の置き場は適切か。
砂場を覆う物はあるか。使用時は砂質が硬くないか。
必要なラインが正しく引かれているか。
収納倉庫は整理され、施錠されているか。
体育館など屋内施設
床の破損や滑り具合、窓ガラスのひび割れ、天井及び付帯設備
照明の点滅具合などに異常はないか。
壁の凹凸はクッションでカバーされているか。
バスケットゴールや器械運動で用いる付帯設備(つり輪やロープ)に異常はないか。
鏡は引き戸などで覆われているか。
バレーボールやバドミントンの支柱の置き場所や置き方は適切か。
収納倉庫は整理され、施錠されているか。
プール
水質(残留塩素濃度や透明度)
、水量、水温は適切か。
プールサイドやシャワールーム及び更衣室の風通し及び喚起や床の滑り具合に異常は
ないか。
施設への進入路への施錠は可能か。また、鍵の管理はしっかりと行われているか
スタート台は撤去されているか。もしくは使用禁止の表示はあるか。
③ 種目で授業時にチェックすること
(1)水泳
プール内の水の適切な水質や水温等の衛生面全般について管理は良好か。
コースロープ(フロートの劣化、ワーヤーのささくれ)は正常か。
入水時やプールサイド・更衣室・シャワールームの使い方の指導は十分か
人員の確認や点呼時の健康監察を行っているか。
入念な準備運動、段階的な技能指導、個に応じた指導(技能、運動量)をしているか。
技能の指導と全体監視を教員間で分担しているか。
排水溝の蓋は、ボルト等で固定しているか。吸い込み防止金具は設置しているか。
(2)陸上(例:高跳び)
グランドの地面のすべり具合や体育館の床の状態を確認したか。
ポールやバーに異常はないか。
エバーマットの厚さや広さは十分か。
ポール・バーとエバーマットの位置関係は適切か。
入念な準備運動、段階的な技能指導、個に応じた指導(技能、運動量)をしているか。
- 118 -
チェック欄
(2)
安全教育
「科目体育」では、各種の運動の合理的な実践を通して、安全に留意して、運動をする態度
の育成を目指している。各種の運動及び体育理論を指導していく中で、生徒がルールやマナー
を守り、安全に生涯を通じて運動に親しめるよう、教員は、生徒の発達段階や実態に応じて学
習計画を作成し、各種の運動の特性を十分理解し、安全学習や安全指導を行わなければならな
い。体育に起因する事故が少なくない状況を踏まえ、安全教育の観点から評価し、授業内容を
常に改善していく必要がある。
「科目保健」では、ヘルスプロモーションの考え方を生かし、健康・安全に関する基礎的・
基本的な内容を生徒が体系的に学習することにより、健康問題を認識し、これを科学的に思考・
判断し、適切に対処できるようにすることをねらいとしており、生涯を通じて健康で安全な生
活を送るための基盤を培う上で中心的な役割を担っている。
「保健」は、安全学習の中核を担っ
ており、他の関連教科や特別活動及び総合的な学習の時間と関連させ、生徒が「保健」で身に
付けた知識及び資質や能力を生かして、健康・安全に対する課題解決などに取り組むことがで
きるようにする必要がある。
【保健の内容の例】
項目
単元
内容
・
「交通事故の現状」
事故には、車両の特性、当事者の行動や規範を守る意識、
周囲の環境が関連していることを理解する。
・
「交通社会で必要な資質と責任」
事故防止は、自他の生命の尊重、自分自身の心身の状態、
現代社会と健康
交通安全
車両の特性の理解、個人の適切な行動が必要であることを
理解する。また、交通社会の一員として加害事故を起こさ
ない努力が必要であるという視点を重視する。
・
「安全な交通社会づくり」
法的な整備や施設設備の充実、車両の安全性の向上など
を含めた安全な交通社会づくりが必要であることを理解す
る。
・
「環境保健にかかわる活動」
環境
と食品
社会生活と健康
の保健
安全で良質な水の確保や廃棄物の処理を関連付けて環境
保健を理解する。
・
「食品保健にかかわる活動」
食品の安全性の確保は、食品衛生法などに基づいて行わ
れていることを理解する。
労働
と健康
・
「職業病や労働災害と健康」
職場においては、事故・災害を防止するための安全管理
と、働く人の健康管理が必要であることを理解する。
- 119 -
参考資料…体育授業関係通達・通知及び指導資料(近年のもののみ掲載)
(一 )
通達・通知
年月日
収発番号
別名
心臓病の管理・指導を要する児童・生徒の体育
3・3・19
2教体健第 78 号
5・3・8
4教体保第 751 号
11・8・6
11 体体第 26 号
学校水泳プールの安全管理について(通知)
15・3・31
14 教指企第 691 号
登山活動における事故防止について(通知)
15・6・2
15 文科ス第 109 号
水泳等の事故防止について(通知)
13・5・11
13 教体健第 26 号
18・3・3
17 教指企第 1136 号
活動上の事故防止について
学校プールの衛生管理・安全管理等について
(通知)
水泳指導におけるスタートの取扱いについて
(通知)
体育授業中の事故防止の徹底について(通知)
(二) 指導資料
発行年月
資料名
配布対象
2・3
体育活動に起因する事故防止の手引――高等学校編
高校
3・3
体育活動に起因する事故防止の手引――中学校編
中学校
4・3
体育活動に起因する事故防止の手引――小学校編
小学校
5・3
学校体育関係通知・通達集(平成五年版)
全校
なお、教育庁指導部による「体育活動に起因する事故防止についての連絡協議会」が毎年夏季休
業日前に行われ、最新の資料が配布される。
- 120 -
6 特別活動
特別活動は、
「望ましい集団活動を通して、心身の調和のとれた発達と個性の伸長を図り、集団
や社会の一員としてよりよい生活を築こうとする自主的、実践的な態度を育てるとともに、人間
としての在り方生き方についての自覚を深め、自己を生かす能力を養う。
」ことが目標となってお
り、ホームルーム活動では、
「健康や安全に関すること」において、
「自他の生命をかけがえのな
いものとして尊重する精神と態度を確立するとともに、学校内外を含めた自分の生活行動を見直
し、安全に配慮し、危険を予測できるカや的確に行動できる力を高めていくよう日頃から注意を
喚起し指導することが一層大切になっている。
」とし、また「自然災害等に対しての心構えや適切
な行動がとれる力を育てることも重要である。
」としている。具体的な題材としては、生命の尊重
に関すること、日常生活における危険と防犯に関すること、生活安全や交通安全に関すること、
自然災害等の災害時の安全に関すること、環境整備に関することが挙げられる。
学校行事では、
「健康安全・体育的行事」が設けられ、自他の生命の尊重を自覚し、心身の健康
や安全を確保するための適正な判断や対処をする能力を培うことなどが示されている。生徒会活
動においては、生徒の自発的、自治的活動を通じて、安全に関する問題の改善向上を図る諸活動
を行い、社会的に自己実現を図る能力や社会の一員としての資質を培うことが必要である。
(1) 安全管理
特別活動は、家庭や地域との結び付きが深い活動であり、ボランティア活動や就業体験にお
いては、家庭や地域との連携、社会施設等の活用等を工夫し、また、学校行事の内容の取扱い
でも幼児、高齢者、障害のある人々などとの触れ合いや自然体験、社会体験などを充実する工
夫をする必要がある。そのため、校外での活動が行われることから、活動場所の実地踏査によ
る安全の確認や活動場所への移動経路の安全確認、社会施設等との綿密な打合せと危機管理マ
ニュアルの作成、生徒の実態に即した活動計画の作成等安全管理に努めなければならない。
(2) 安全教育
① ホームルーム活動
ホームルーム活動では、生命の尊重に関すること、生活安全や交通安全に関すること、災
害時の安全や防犯に関すること、環境整備に関することを取り上げ、学校内外を含めた自分
の生活行動を見直し、安全に配慮するとともに、危険を予測できる力や、的確に行動できる
力を高めていくことが必要である。
特に、
交通安全については、
高校生の年齢では自転車や二輪車による交通事故が多いこと、
自動車の運転や同乗中の事故が少なくないことを踏まえ、交通社会の一員としての自覚と社
会的責任の意識を高める指導を行うことが重要である。また、実践力の育成につながるよう
な指導の工夫が必要である。
指導計画の作成にあたっては、季節ごとの状況や、学校行事計画、生徒の事故の発生状況
などを踏まえ、一単位時間で行う指導と、いわゆる「ショートホームルーム」などで行う日
常の指導とを組み合わせて、十分な指導ができるよう配慮することが必要である。
② 学校行事
学習指導要領には、学校行事として、
「ア儀式的行事 イ学芸的行事 ウ健康安全・体育的
行事 エ旅行・集団宿泊的行事 オ勤労生産・奉仕的行事」の五つが示されている。
これらの内容を安全指導の立場から見ると、大きく二つに分けられる。
一つは、交通安全指導、避難(防災)訓練及び安全意識を高めるための行事など、直接安
全について学ぶことを目的とした、
健康安全・体育的行事における安全に関する行事である。
- 121 -
- 122 -
(生) 携帯電話・インターネットによる犯罪被害の防止
ホームルーム活動
(生)(交) 通学時の安全
(災) 防災体制の確立
通学時の安全
(生)(交) 事故発生時の対応
(生) 犯罪被害の防止
(生) 部活動と安全
校内生活の安全
(交) 交通安全への参加
(生)(交) 高校生の心理や行動と事故の特徴
(生)(交) 雨の日の安全行動
梅雨期の健康安全
(生)(交) 通学路に潜む危険
(交) 運転者の心理と行動特性
(生) 夏休みの生活と安全
校外活動の安全
(生) 校外活動の安全
(交) 運転免許の取得について
(災) 地震災害対策について
学校行事における安全 (生) 文化祭と安全
(生) 体育行事と安全
(交) 歩行者の安全と交通環境
交通道徳の理解
(交) 交差点に潜む危険
(交) 交通事故と応急手当
(生)(交) 償いきれない事故の責任
事故・災害の防止
(災) 火災の予防とストーブの取り扱い
(生)(交) 危険予測訓練
(災) 非常災害と安全行動
非常災害時の安全
(災) 非常災害と安全対策
(生)(交)(災) 救急処置の方法
(交) 交通事故の対応と応急手当
(交) 交通行動の社会性とパートナーシップ
交通安全の徹底
(交) これからの社会生活と交通問題
(生) 校内マラソン大会と安全
(生)(交) 地域の安全活動
(生)(交) 休業日の事故・犯罪被害防止
安全な環境の整備
指導重点
(災) 避難訓練(総合)
(災) 避難訓練(火災)
(交)(災) 事故・災害防止講話
3
安全な生活
(生)(交)(災) 年間活動のまとめと反省
(生)(交)(災) 保健委員会・安全委員会による安全点検活動
(生)(交)(災) 安全に関する生徒への呼びかけ
(災) 避難訓練への協力活動
(生)(交)(災) 安全に関する写真展
(生)(交)(災) 安全に関する生徒への呼びかけ
(生)(交) ボランティア活動への参加
(生) 安全だよりの発行
(災) 防災訓練への協力活動
(生) 体育委員会による安全活動
(生) 文化祭での衛生管理(保健委員会・安全委員会)
(交) 交通安全キャンペーン
(生) 夏季休業前の安全講話
(生) 保健講話
(生) 薬物乱用防止講話
(災) 防災訓練(地震)
(交) 交通安全映画会
(生)(交)(災) 安全に関するポスター募集
(交) 自転車等の安全点検活動への参加
(災) 避難訓練への協力活動
生徒会活動
(生)(交)(災) 保健委員会や安全委員会の編成
(交) 交通安全教室
(災) 避難訓練(地震)
特別活動
学校行事(健康安全・体育的行事)
(交) 自転車の安全教室
(生) 日常生活の安全
(生) 春休みの生活安全
(生)(交)(災) 活動のまとめと反省
※(生)、(交)、(災)印は、それぞれ生活安全、交通安全、災害安全に関する内容であることを示す。
2
1
12
11
10
9
7
6
5
4
月
表1 安全指導年間計画(例)
内容的は多岐にわたるので、
「生活安全」
「交通安全」
「災害安全」に関する行事の特質
に応じて、重点的なねらいを設定するとともに、学校間やPTA、地域との連携、安全
に関する諸機関との関連に配慮して実施することが重要である。例えば、避難訓練につ
いては、火災や地震対策に加えて、不審者への対策を重点的に取り扱う必要がある。ま
た、交通安全教室では、地域の実態に即して、体験を重視した具体的な内容となるよう
に配慮するとともに、地域の人材、警察署、消防署などの関連公共機関、教育ボランテ
ィアなどの積極的な活用を図っていくことも必要である。
もう一つは、儀式的行事や学芸的行事などの学校行事においても、安全に配慮した指
導を行うことが大切である。例えば、旅行・集団宿泊的行事においては、交通機関の安
全な利用、休憩時間中や自由行動時の安全、宿舎での安全、また、体育的行事や勤労生
産・奉仕的行事などにおいては、競技中や作業などに伴う安全について指導する必要が
ある。
③ 生徒会活動における安全指導
生徒会活動には、学校生活の充実や改善向上を図る活動、生徒の諸活動についての連
絡調整に関する活動、学校行事への協力に関する活動、ボランティア活動などがある。
生徒会活動の特質は、安全指導の観点から捉えると、
「生活安全」
「交通安全」
「災害安
全」の諸問題について、生徒が主体的・自治的に解決しながら、学校生活を向上させる
ことにあるといえる。そのためには、教師の適切な指導の下に、生徒の自発的、自治的
な活動によって、自他の生命を尊重し的確な判断力を伸ばし、適切な意志決定と行動選
択ができる資質や能力を養うことが必要となる。具体的には、各委員会の活動などで話
し合い、問題解決、実践などの活動を通して、学校生活の充実や改善向上を図っていく
ことになる。各委員会の活動内容としては、ア
まり・約束などの設定、イ
安全な学校生活を送るための目標やき
安全な生活実践の状況などに関する情報提供、ウ
生活実践を促すための広報活動の工夫、エ
安全な
安全に関する学校行事への参加・協力など
が考えられる。
④ 部活動における安全指導
放課後などにおける部活動は、学習指導要領には示されていないが、学校において計
画する大切な教育活動であり、学校の管理下で計画し実施する教育活動として適切な取
扱が必要である。
この部活動を安全指導の観点から考えると、学校の実態に応じて部が設置され、学校
の伝統、施設・設備の実態、指導に当たる教師の数、生徒の発達段階に配慮しながら、
活動内容が計画されることになる。そこで、安全管理とも関連させ、安全な活動(体調
管理や水分補給など)の仕方について適切に指導する必要がある。
また、適切に休養日や練習時間を設定していくことが、事故防止の上でも重要である。
- 123 -
(3) 指導事例
① 生活安全
生活安全に関する内容例として、
ア
学校生活における危険と安全確保
イ
体育的行事、旅行・集団宿泊的行事における危険と安全確保
ウ
犯罪被害の危険と安全確保・防犯のための適切な行動の仕方
エ
携帯電話やインターネットによる犯罪被害の防止と適切な利用
などが考えられる。これらの内容は、ホームルーム活動や全校集会などの機会を利用し、
日常的に行うことが望ましい。また、地域の警察署などの諸機関と連携し、地域や生徒
の実態に合わせた指導を行うことが必要である。
長期休業日中における生活安全に関しては、各学期末に生徒および保護者向けのプリ
ントを配布するなどして、徹底を図ることが必要である。
「長期休業中の諸注意(例)」
(1)登下校について
・休業中に登校する際の時間、服装、施設の使用などにおける注意。
(2)部活動について
・活動時間、活動場所、夏場の熱中症予防、事故対策などにおける注意。
(3)生活上の留意点
・規則正しい生活習慣に関すること、学習に関すること、進路に関すること、地域社会におけるボラ
ンティア活動や文化的・体育的な活動などの参加に関すること、問題行動の防止に関すること、交通
事故の防止に関すること、アルバイトに関すること、などにおける注意。
② 交通安全
交通安全教育指針の第2章・第4節「高校生に対する交通安全教育」には、「・・・高校
生に対する交通安全教育においては、二輪車の運転者及び自転車の利用者として安全に
道路を通行するために必要な技能と知識を習得させるとともに、交通社会の一員として
責任をもって行動することができるような健全な社会人を育成することを目的とする」
とあり、二輪車や自転車を中心に指導する必要性を示している。また、四輪車の運転者
としても交通社会に参加できる年齢になることを考えれば、必要となる基本的な心得に
ついて指導することも大切である。さらに、交通事故には責任や補償問題が生じること
について、加害者、被害者の両面から指導することが大切である。そこで、交通安全に
関する内容例として、
ア
二輪車の特性の理解と安全な利用
イ
ドライバーと車両の特性
ウ
高校生の心理や行動と事故の特徴
エ
交通事故の責任と補償問題
などが考えられる。
交通安全については、全校的な共通理解や体験の共有化が全校的水準の向上に欠かせ
ないため、多くの学校では学校行事として取り上げている。生徒が主体的に活動できる
場面を取り入れ、ホームルーム活動や生徒会活動との関連を図った行事となるよう工夫
する必要がある。ここでは、
「命の大切さ」と「社会的責任」に重点を置いた参加・体験
型の交通安全教室の事例を紹介する。
- 124 -
<指導事例>
交通安全教室
① 高校生であっても交通事故を起こした場合、法律上の責任が問われ、自己及び被害者、その家族
の将来に多大な影響を及ぼすことを認識させる。
② 交通事故に対する運転者の責任と、その賠償及び保険の仕組みについて理解を深める。
ねらい ③ 典型的な交通事故現場を想定し、事故時の対応について理解を深める。
④ 現在行われている救急業務の仕組みや救急医療の概要を理解させる。
⑤ 事故時の応急処置の必要性や処置の手順を知り、その正しい方法を身につけさせる。
⑥ シートベルトの重要性について認識させる。
形態
協力
時間
学校行事(学年または全校を対象とした交通安全教室など)として実施する。
東京都青少年・治安対策本部、消防署救急係、社団法人日本損害保険協会 など
学習活動
指導上の留意点など
交通安全教育
講師:東京都青少年・治安対策本部
命の大切さを内容とするビデオ教材を活用し、交通
事故で家族を亡くした方々の実例を通して、交通事故
がいかに悲惨なものであるか、命の大切さを学ぶ。
自転車事故とその責任
事故を起こした場合の社会的責任(賠償責任)や具
体的な事例に基づく損害賠償について学習する。
講師:消防署救急係
バイスタンダー(bystander:そばに居合わせた
人)による応急手当の必要性について、訓練用人形を 4人の班をつくらせる。
活用した体験型の応急手当を行う。
シートベルト体験車による体験
講師:東京都青少年・治安対策本部
シートベルトコンビンサーを生徒に体験させて、
シートベルトの重要性を理解する。
2人の班をつくらせる。
。
応急手当等の体験
、
第1~3時
講師:社団法人 日本損害保険協会
学 習会
で場
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時
間
で
第4時 学習のまとめ
準備
評価
訓練用人形
不織布、消毒用エタノール、ビニール袋
毛布 など
交通事故の悲惨さ、責任の大きさが正しく理解できたか。
運転行動は、日頃の生活習慣と深く関わっていることを理解できたか。
交通事故に遭遇した時の対応の仕方や応急手当の意義・基本的な考え方を理解できたか。
救急体制の仕組みと活用法について理解できたか。
シートベルトの重要性を含め、運転のマナーについて理解できたか。
(参考:教育庁報No.506「高等学校における交通安全教室の開催について」(平成17年8月5日発行))
③
災害安全
各学校においては、生徒・学校・地域の実態に即した安全教育を行い、災害から生徒
の安全を守るための指導の充実・徹底を図らなければならない。
災害安全に関する内容例として、
ア
火災や地震発生時における危険の理解と安全な行動の仕方
イ
地域の防災活動の理解と積極的な参加
などが考えられる。
特に、地震に対する対策は、都及び区市町村における防災対策と関連付けた各学校独
自の防災計画が立案され、防災・避難訓練などの安全指導が適切に実施される必要があ
る。ここでは、地域と連携し、各区市町村防災センターや防災課の職員を講師に招き、
ホームルーム活動や学校行事(防災教室など)で実施できる災害安全指導事例を紹介す
る。
- 125 -
<指導事例>
高校生にできること
① ○区の防災体制を理解する。
② 地震のメカニズムを学ぶ。
ねらい
③ ”自助・互助・協働”の考え方を原則に、必要最小限の技能を身につける。
④ 災害時、高校生として、学校、家庭、地域においてどのように行動するかを学ぶ。
ホームルーム活動または学校行事(防災教室など)として実施する。
「地震と安全」高等学校編(東京都教育委員会)
○区防災センターまたは○区防災課 など
学習活動
指導上の留意点など
講義
・地震のメカニズムを知る。
学校周辺の防災マップをつくらせる。ま
・○区の防災体制について考える。
たは、帰宅経路地図を書かせる。
普段から隣近所の人々と協力体制をつ
・わが家の防災術について考える。
くっておくことの大切さを理解させる。
・水の確保について考える。
家庭や地域での高校生の果たす役割が重
・高校生にできることについて考える。
視され、期待されていることを理解させ
る。
災害用伝言ダイヤルなどを使って、家族
・災害用伝言ダイヤルについて知る。
が自分たちの安否を確認できることを知ら
せる。
第2時 実技
実技1 簡易担架による救出体験、ロープワーク
身の安全を確保する方法、災害救助の方
実技2 三角巾による包帯法の基本
法、初期消火の方法などを学ばせる。
実技3 消火器の使用法
ワークシートによるまとめ・感想
身の安全の確保、災害救助、初期消火の方法を理解できたか。
評価 高校生として、学校、家庭、地域で、一般の人々とどのように協力し、行動したらよいかを理解
できたか。
形態
教材
協力
時間
第1時
「171(災害用伝言ダイヤル)」について
大地震などの時には、学校と保護者との連絡がつかないことも予想され、子どもも保護者も不安になる。
そこで、学校は、安否確認、見舞い、問い合わせなどの対応として、NTTが設置する「171(災害用
伝言ダイヤル)」を活用すると効果的である。このシステムは、被災地内の電話番号をメールボックスとし
て、安否などの情報を音声により伝達する「声の伝言板」である。
学校は、この災害用伝言ダイヤルに、学校や子どもの状況を録音し、例えば、「○○高等学校です。生徒
たちは全員無事です…」と伝言を入れておけば、保護者は、171にかけることで、子どもたちの安否を
確認できる。
① 設置のお知らせ
地震など大災害発生時(震度6弱以上、地震・噴火などの発生)に、テレビやラジオ、ホームページな
どで、NTTが171を設置したことや、利用の仕方、伝言エリアなどを知らせる。
②
利用方法(学校での171の活用)
学校(伝言の録音)
通話料(有料)
録音
保護者(伝言の再生)
保護者の皆様へ。
○○高等学校です。子どもたちは
全員無事です。・・・
通話料(有料)
再生
171
災害用伝言 ダイヤルセンター
①171をダイヤル
②ガイダンス に沿って1をプッシュ
③学校の電話番号をダイヤル
④30秒以内のメッセージを録音
※1電話番号あたり10伝言まで登録可能
①171をダイヤル
②ガイダンス に沿って2をプッシュ
③学校の電話番号をダイヤル
④伝言の再生
詳細は、NTT 東日本ホームページ http://www.ntt-east.co.jp/voiceml/way/index.html を参照のこと。
※
携帯電話各社(NTT DoCoMo, ボーダフォン, KDDI など)は、「災害用伝言板サービス」を提供している
ので、こちらも参照のこと。
- 126 -
7 総合的な学習の時間
総合的な学習の時間の学習活動の例示として、環境、福祉・健康等があるが、安全に関するテ
ーマを設定し、関連教科と有機的に関連付けることにより、安全についての知の総合化を目指す
ことができる。生徒の主体的な学習により、思考力、判断力、問題解決能力等が育成され、生徒
が、安全な生活を営むことができるように指導することが必要である。
(1) 安全管理
総合的な学習の時間のねらいを達成するためには、生徒が直接体験したり、問題解決に取り
組んだりする学習を積極的に取り入れる必要がある。
具体的な体験や事物とかかわり、その課題について観察・実験・実習や調査・研究、体験活
動を行っていく上で、地域社会と触れ合う機会も多くなる。これらのことを踏まえ、事故防止
に努めなければならない。生徒の学習内容を把握し、調査や実験・実習の方法、体験活動場所
等、生徒の活動状況に合わせ、安全管理に努める必要がある。
安全の視点としては、
「生徒の学習内容や学習計画の適正」
「活動場所の安全性の確認」
「事業
所等との安全についての共通理解」
「実験・実習の方法の適正」
「交通機関や経路等の安全性の
確認と危険箇所の把握」
「自然事象の変化に伴う計画変更の有無」などであり、安全管理を徹底
し、事故防止に努める。
(2) 安全教育
総合的な学習の時間をはじめるに当っては、安全についての指導を確実に行わなければなら
ない。生徒が、学習を進める上で、安全に関しての視点や課題、解決方法を指導することによ
って、生徒が、自他の安全確保のために主体的に判断し、意志決定及び行動選択ができる能力
や資質を身に付けさせる。
(3) 具体的学習活動における安全指導・安全管理
① 校外での学習活動における安全への配慮事項
総合的な学習の時間において、予想される校外での学習活動は大別すると、①体験的な学
習(自然体験学習、社会体験学習、ボランティア活動など)
、②進路学習(上級学校見学・訪
問、オープンキャンパス参加、インターンシップ[就業体験]など)の2つになる。以下にこ
のような学習活動を行う場合についての安全への配慮事項を具体的に列挙する。
ア 校外引率をする場合には、事故災害や地震・風水害などの自然災害、火事などの災害も
予想し、避難経路や誘導経路についての手順・方法・分担などについて、事前に必ず確認
しておく。
イ 生徒一人一人の緊急連絡先を把握し、原簿は学校で管理、コピー一部を引率時に持参し
て緊急時には速やかに保護者と連絡が取れるようにしておく。なお個人情報の取扱につい
ては十分に注意すること。
ウ 校外引率時の安全への配慮事項についてのチェックリストを作成し、担当者会議で事前
に安全確認を行う。
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エ インターンシップ[就業体験]を実施する場合には特に、事故の予防やその対処方法につ
いて十分に受入先と事前に打合せを行い、文書による合意書などを作成することが望まし
い。就業体験期間によっては保険の加入を検討する必要がある。
オ 校外引率をする場合の基本的な注意を怠らないように留意する。特に、交通安全や河川・
海洋・野原などでの活動においては、生徒は解放的な気分になることがあるため、事前の
安全確認と当日の安全指導を軽視しないことが大切である。
カ 訪問先の施設・設備などを利用する場合には、訪問先の担当者と、使用・利用上の注意
点や、潜在的な危険箇所などを予め確認した上で、生徒への周知を徹底する。
キ 指導的立場にある者だけが安全に関して配慮し、実践するだけでなく、学習活動の主体
者である生徒自身が、常に自らの身は自らが守るという意識をもって行動する態度を育成
するための安全学習を実施することが肝要である。例えば、生徒が作成する郊外学習計画
について助言を与える際には、安全確保や危険防止の観点からその計画に問題はないか再
確認させ、時には変更を促す指導などが有効である。
② インターネットや携帯電話などを利用しての学習活動における安全への配慮事項
ア 情報科の担当教員と連絡を取りながら、協力体制を整え指導していくことが不可欠であ
る。
イ 生徒が使用するパソコンには、インターネットセキュリティソフトをあらかじめインス
トールしておくなど、コンピューターウィルスへの感染防止のための備品管理を怠りなく
行うこと。
ウ 生徒が有害情報に触れ被害にあったり、学習計画が適切に進行できなくなったりしない
ように、フィルタリングソフトなどで適切な学習範囲の確保を行う。
エ メールなどを利用して、相手に取材申し込みなどをする場合に必要なルール(
「ネチケッ
ト」
)の指導をする。
オ 有害情報による被害事例を示し、生徒に情報モラルを徹底する。
カ 著作権、著作隣接権(違法コピーなど)、肖像権の侵害などについて学習させる。
キ 個人情報に関する配慮の重要性を生徒に理解させる。
ク コンピューターウイルスへの感染防止のための知識や方法を実際に学習させる。
ケ 長時間の利用などにより、ときには身体的、精神的に悪影響を及ぼすことがあることな
どを具体的に伝え、利用方法への十分な注意を促す。
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