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宗教について考えよう
◆新しい公民教育のためのワークシート◆ 『高等学校 新現代社会』p.46〜47 宗教について考えよう 作業1 宗教の意味と私たちの生活とのかかわりを考える 質問1 現代社会において宗教が私たちの生活に深くかかわりをもつ理由として教科書p.46 10行目に指 摘されている、 「近代科学やそれを支える理性では説明できない事がら」の具体例を書きましょう。 ヒント:教科書p.46側注1を参考に考えよう。 質問2 質問1と同様に、宗教が私たちの生活に深くかかわりをもつ理由として教科書p.46 11行目に指 摘されているように、 「人々が精神の安定ややすらぎを求め、同じ信仰をもつ『われわれ』の共 同体をつくる」のはどのようなときか、具体例を書きましょう。 宗教のもつ普遍性を考える 作業2 質問3 世界宗教とされる仏教、キリスト教、イスラームをはじめ、どの宗教にも共通してある普遍的な 思想を書きましょう。 ヒント:教科書p.47 19行目を参考に考えよう。 質問4 仏教でいう「慈悲」 、キリスト教でいう「隣人愛」 、イスラームでいう「喜捨※」はその信仰をもつ人々 のみに通用する考え方ですか、信仰の有無に関係なく広く共有される考え方ですか、あてはまる ほうに○をつけましょう。また、あなたが、そう考えるのはなぜですか、理由を書きましょう。 ※注 イスラームの五行の一つで、財産から一定額を貧しい者などに分け与えること。 ( ) その信仰をもつ人々のみに通用する考え方 ( ) 信仰の有無に関係なく広く共有される考え方 理由 9 私たちの生き方と宗教の意味を考える 作業3 討論1 私たちは好むと好まざるとにかかわらず苦しみや悩みなど自分ひとりでは解決できない課題を抱 えています。この状況をのりこえ自分の幸福を実現するとともに他者の幸福をも実現し、多様な 価値観と共存するために私たちは宗教とどのようにかかわるべきか、グループで討論しましょう。 自分の考え グループのほかの人の考え 討論の結果たどりついた自分の考え 討論2 グループで討論したことをクラス内で発表し、ほかのグループの討論の内容を確認し、あなたが 望ましいと考える私たちの生き方と宗教のかかわりをまとめましょう。 10 ◆新しい公民教育のためのワークシート◆ 『高等学校 新現代社会』p.46〜47 宗教について考えよう 指導上の留意点・解答 全国公民科・社会科教育研究会授業研究委員会 ■授業展開例 配当時間:1時間 学習項目 導入 展開 まとめ 学習内容 宗教の意味と私たちの生活とのかかわり を考える 作業1 宗教のもつ普遍性を考える 作業2 私たちの生き方と宗教の意味を考える 作業3 ワークシート 質問1、2に取り組ませる 回答を発表させる 質問3、4に取り組ませる 回答を発表させる 討論1、2に取り組ませる グループ発表からクラス内発表へ発展させる ■指導上の留意点 ●特定の宗教に深入りしない。個人の信仰に配慮する。 ●思考の過程を大切にする。例えば[考える→自分の意見を書いてまとめる→まとめたことを発表する→他者の意 見を聞く→自分の考えを客観的に見直す→まとめなおす]という段階をふむことで思考の過程を意識化させる。 ●私たちの日常生活と宗教の関係から私たちの生き方やあり方を考えようという姿勢を大切にする。 ■評価の観点 1 私たちの生活と宗教のかかわりを考えることができたか。 2 宗教のもつ普遍性を考えることができたか。 3 私たちの生き方と宗教の意味を考えることができたか。 4 作業に積極的に参加し意見交換を試みたか。 ◎こぼれ話 11 高校生はともするとイスラームは暴力的で過激、狂信的 「雌牛の項」(190)には「神の道のために敵と戦え。しか だというイメージで語ります。しかし、日本にいる多くの し度を越して挑んではならない。神は度を越すものを愛し 高校生がムスリムに接触する機会はそれほど多くないはず たまわない」とあり、同じく(256)には「宗教には無理 です。それにもかかわらず、なぜ暴力的で過激、狂信的だ 強いがあってはならない」とあり、「女人の項」(90)には というイメージをもつことになったのでしょう。この点は 「彼らが戦うことなく退いて和平を申し出てくるなら、神 高校生に冷静に考えさせる必要があるのではないでしょう はおまえたちに彼らを制する道を与えたもうことはない」 か。 とあります。 「現代社会」は学び方を学ぶ科目でもありますから、イ イスラームの教えの原点にあたって冷静に考えるとき、 スラームの教えの原点である『クルアーン』(中公クラシ 高校生の前にはこれまでと異なるイスラームの姿があらわ ックス、2002年)にあたってみることは有効です。例えば、 れることでしょう。 ■解説と回答例 作業1 質問1:何かひとつ正解があるわけではありません。教科書の側注では「なぜ人間がこの世界に誕生したのか」が 例として示されています。生命の誕生や宇宙の始まりなど、生徒に自由に回答させましょう。 考えるヒント 教科書の記述では側注に「『なぜ人間がこの世界に誕生したのか』など、近代科学の前提と なっているもの」とあります。これを手がかりとして考えることができます。例えば、生命の起源を考え るとき、たんぱく質までさかのぼることができます。では、そのたんぱく質はどのようにして生まれたの かを考えるとき、これが神の御業により生まれたのだと考えれば宗教が生まれるわけです。 質問2:何かひとつ正解があるわけではありません。人々が避けられない貧しさや病、災いなどからわが身を守る 手段として共同体の絆を求めることや、農作業のように共同作業が社会の維持に不可欠である場合に人々 の連携を深めさせる必要があったことなど、生徒に自由に回答させましょう。 考えるヒント 「精神の安定ややすらぎを求め」という表現からは、人々の精神を不安定にし、疲れさせ、 いらだたせる現代社会の姿が想像できます。「共同体をつくる」という表現からは、人々の絆や連携が希 薄となり、人々が個々の弱い存在として生きることを余儀なくされている現代社会の姿が想像できます。 作業2 質問3:何かひとつ正解があるわけではありません。ただ、広く人々の苦しみをやわらげ、悩みを解き、生きる希 望を与え、おだやかに生きることができる方法や指針を示しているとみることはできます。 考えるヒント 教科書47ページ19行目にある「人々に生きる意味を与え、苦しみから救おうとする点では共 通している」が手がかりとなります。 質問4: 「慈悲」 「隣人愛」 「喜捨」などは「信仰の有無に関係なく広く共有される考え方」とみなすことができます。 理由は「いつでも、どこでも、誰にでもあてはまる考え方だから」です。このふところの深さゆえに仏教、 キリスト教およびイスラームは普遍宗教、世界宗教とよばれます。 考えるヒント 質問3の考えるヒントを参考にしてください。宗教のもつ普遍性に注目させましょう。 作業3 言語能力向上への手がかりとして討論形式に挑戦しましょう。生徒同士、うまく議論がかみ合わなくても、授業 者として気にする必要はありません。1年間かけて、あるいは高校生活3年間をかけて育てていくのが言語能力で す。また、国語科や外国語科などさまざまな教科・科目を通してつちかわれる能力が言語能力です。その第一歩を ここで試みるつもりで挑戦してみましょう。 討論1を考えるヒント 正しい答えがあるわけではありません。ある生徒は宗教をよりどころとすることに 否定的な意見をもつことでしょう。また別の生徒は厚い信仰心が救いであると肯定的な意見を述べるかも しれません。よくわからないとして是々非々でのぞむ生徒も少なからずいることでしょう。結論をまとめ るのではなく、さまざまな意見があること、それぞれが尊重されるべきであること、私たちが決して強い 存在ではないこと、助け合わなければならない存在であることなどが討論によって明らかになれば十分だ と考えます。授業者として留意することは、特定の宗教に深入りしたり、自分の信仰を他者に強制したり、 他者の無信仰を批判したりするなど、人権上の配慮に欠く言動です。作業の過程で、自分の考えを書かせ ることで自分の考えをまとめさせることになり、他者の考えを書かせることで他者の意見に耳を傾ける力、 他者の考えをまとめる力を養うことになります。討論の結果たどりついた考えは、最初の考えと変わって かまいません。ゆれ動くことはむしろ大切でさえあります。結果よりも思索の過程を大切にしましょう。 討論2を考えるヒント グループで討論したことをクラス内で発表することでプレゼンテーション能力を高 めることができます。同じような意見のなかにハッとさせられる意見があるかもしれません。場数をふま せることも大切な経験です。意見をまとめること、まとめた意見を発表すること、他者の意見を聞き取る こと、これらは簡単なようにみえて意外とできないものです。 12