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敬和学園大学の現状と課題
2007 年度大学基準協会大学評価申請 敬和学園大学の現状と課題 ―自己点検・評価報告書― は じ め に 敬和学園大学長 新井 明 敬和学園大学が大学基準協会の正式会員としての歩みを始めたのは2003年4月 1日からのことであった。それより5年をへて、今回、2008年4月1日から向こう 7年間の正式会員としての認証を得ることができた。また気を新たにして、革新に革新 を積みかさねつつ、歩みを始めることになる。 本学はキリスト教主義のリベラル・アーツ教育を基本としつつ、創設いらい 18 年を 歩んできた。「神に仕え、人に仕える」ことを、日々の研究・教育の実際面に生かして ゆく。学生たちと同じ目線で向き合い、かれらがおのが内に秘める「人間としての尊厳」 を知り、謙虚に、しかし自らに自信のもてる人格に成長していってもらいたい。その結 果が奉仕の精神に立つ人格を生み出してゆく。 その目的に向かって、本学では教員と職員とは一致団結の態勢を組んでいる。(学長 選出の場合も、教員・職員に平等の選挙権が与えられている。) その教職員と学生。 この三者が一体となって、いわば「愛の共同体」を構成する。小さき学園だからこそ可 能の、家庭的雰囲気のなかで、上記三者が睦みあっている。田圃に囲まれた小さな森の 学園である。 新潟はこの数年、大型の水害、地震などによる被害を各地で蒙った。そのたびに奉仕 の精神に立つボランティア活動が、澎湃として敬和の園に沸き立ち、教員・職員・学生 は肩を組んで各地へ散った。(その中に、いつでも相当数の外国人留学生の姿があった。) 「共生」のこころが生きているのである。 基準協会からの報告でも評価されたところであるが、本学はその学園そのものを招聘 したこの地域への奉仕のこころをもつ。小さな大学としては、まさかと思われるほどの 回数の公開講座 (オープン・カレッジ) を開く。新発田、聖籠、豊栄、村上、三条、そ の他。土地の方がたとの学び合いの姿勢を尊ぶ。また新発田市とその商工会議所との連 携によって、2006 年度には市街のど真ん中に「新発田学研究センター」なるものを立 ち上げ、学生たちが町に出る機会をもち、市民も利用できる空間をつくった。市民との 「共生」を求めるこころが、そこにある。市民とともに地域の歴史・文化を探求し、地 域の特色を見出し、若い世代に伝達したい。これは地域社会への貢献と評価されていい 面をもつ。 その角度から、中高教員対象の「リフレッシュ・セミナー」、地域の学生、社会人、 外国人に呼びかけて行なわれる「外国語スピーチ・コンテスト」なども、社会貢献、楽 しい社会奉仕と呼びうるものであろう。これとはやや視点は異なるが、敬和はその隣接 地を購入して、社会福祉法人 シャロームに「グループホーム 冨塚・のぞみの里」を設 立していただいた。この施設が敬和の学生たちに、社会的弱者とともに生きることへの 意欲と経験を授けることになるやもしれぬと期待している。社会への貢献の生きた姿と なることが期待されるのである。 地方に在る大学として、敬和学園大学はこの地域に「仕える」の姿勢を堅持してゆく。 しかし学問そのものは一地域を超えるものである。 学問の超越的な価値のわかる研究 者こそが、かえって一地域のもつ(眠れる)価値に目がゆくものである。本学はこの二 重の視点を捨てずに、これからの時代を切り開いてゆくつもりである。 2008 年 6 月 目 次 自己点検・評価報告書 序 章 1 1. 敬和学園の沿革 1 2. 大学教育の改革・改善の諸方策 1 3. 大学基準協会の加盟判定審査 5 第 1 章 大学・学部等の理念・目的および学部等の使命・目的・教育目標 1. 教育理念・目的等 7 7 第2章 教育研究組織 11 第3章 学士課程の教育内容・方法等 13 Ⅰ.教育課程等 13 1.学部・学科等の教育課程 13 2. カリキュラムにおける高・大の接続 29 3. インターンシップ、ボランティア 30 4. 履修科目の区分 32 5. 授業形態と単位の関係 34 6. 単位互換、単位認定等 35 7. 開設授業科目における専・兼比率等 40 8. 生涯学習への対応 42 9. 正課外教育 43 Ⅱ.教育方法等 45 1.教育効果の測定 45 2.厳格な成績評価の仕組み 49 3.履修指導 53 4. 教育改善への組織的な取り組み 58 5. 授業形態と授業方法の関係 65 Ⅲ.国内外における教育研究交流 69 第4章 学生の受け入れ 78 1.学生募集方法と入学者選抜方法 78 2.入学者受け入れ方針等 82 3.入学者選抜の仕組み 84 4. 入試選抜方法の検証 87 5. アドミッションズ・オフィス入学試験 88 6. 入学者選抜における高・大の連携 89 7. 科目等履修生・聴講生等 91 8. 定員管理 92 9. 編入学者・退学者 93 第5章 教員組織 99 i 1.教員組織 99 2.教育研究支援職員 104 3.教員の募集・任免・昇格に対する基準・手続 105 4.教育研究活動の評価 108 第6章 研究活動と研究環境 110 Ⅰ.研究活動 110 1.研究活動 110 2.教育研究組織単位間の研究上の連携 111 Ⅱ.研究環境 116 1.経常的な研究条件の整備 116 2.競争的な研究環境創出のための措置 120 第7章 施設・設備等 122 1.施設・設備等の整備 122 2.キャンパス・アメニティ等 124 3.利用上の配慮 126 4.組織・管理体制 127 第8章 図書館および図書・電子媒体等 129 1.図書、図書館の整備 129 第9章 社会貢献 136 1.社会への貢献 136 第 10 章 学生生活 145 1.学生への経済的支援 145 2.生活相談等 148 3.就職指導 153 4.課外活動 157 第 11 章 管理運営 161 1.教授会 161 2.学長、学部長の権限と選任手続 163 3.意思決定 167 4.教学組織と学校法人理事会との関係 167 第 12 章 財務 169 1.教育研究と財政 169 2.外部資金等 170 3.予算配分と執行 171 4.財務監査 172 5. 私立大学財政の財務比率 172 第 13 章 事務組織 175 1.事務組織と教学組織との関係 175 2.事務組織の役割 176 ii 第 14 章 自己点検・評価 179 1.自己点検・評価 179 2.自己点検・評価と改善・改革システムの連結 179 3.自己点検・評価に対する学外者の評価 180 4.大学に対する指摘事項および勧告などに対する対応 181 第 15 章 情報公開・責任説明 183 1.財政公開 183 2.自己点検・評価 183 第 16 章 キリスト教主義教育 185 1.建学の精神とキリスト教主義教育 185 2.キリスト教主義教育とカリキュラム 187 3.学内のキリスト教主義教育の教育研究支援組織と態勢 189 4.学内のキリスト教主義教育活動 192 5. 学外の諸団体との関係 196 第 17 章 ボランティア活動 200 1.建学の精神とボランティア活動 200 2.ボランティア活動教育とカリキュラム 201 3.学内のボランティア活動支援組織と態勢 202 4.ボランティア活動の指導体制 205 5.学内のボランティア活動 207 6.学外の諸団体との関係 209 章 213 1.大学基準協会の相互評価に向けて 213 2.大学教育の改善・改革の諸方策 214 3.敬和学園大学の将来 215 終 資 料 2007(平成 19)年度大学評価 大学基礎データ 217 2007(平成 19)年度大学評価 大学基礎データ 287 (表 24 専任教員の教育・研究業績) 大学評価結果並びに認証評価結果 Ⅰ 評価結果 383 Ⅱ 総評 383 Ⅲ 大学に対する提言 388 「敬和学園大学に対する大学評価結果ならびに認証評価結果」について 390 敬和学園大学提出資料一覧 392 敬和学園大学に対する大学評価のスケジュール 394 iii 2007(平成 19)年度大学評価 自己点検・評価報告書 序 章 1.敬和学園大学の沿革 学校法人敬和学園は、新潟開港 100 周年記念事業の一環として新潟市から提供された新 潟市太夫浜の土地に、1968 年 4 月に太田俊雄を初代校長として敬和学園高校を創立した。 幕末から明治初期に開港した 5 港で、新潟だけキリスト教主義学校が消えてしまったが、 敬和学園は 1887~1893 年に新潟にあったキリスト教主義学校の新潟女学校と北越学館の 再興を願う長年に亘る教会の祈りの中から生まれてきたのであった。 敬和学園大学は 1991 年 4 月に、地元の新発田市・聖籠町・新潟県の多大な支援の下で、 学校法人敬和学園の学園構想に基づいて、入学定員各々100 人の英語英米文学科と国際文化 学科の 2 学科で構成された人文学部の単科大学として発足した。1993 年 4 月には、英語英 米文学科に英語科教職課程を設置した。専任教員(それに準ずる教員)は 35 人前後で構成 されてきた。その教育方針として、キリスト教主義、国際主義、地域主義を掲げ、キリス ト教主義リベラル・アーツ教育を標榜する教育大学である。2000 年には共同研究を盛んに するために、大学に付設した人文社会科学研究所を開設した。原則として専任教員がそこ に所属するが、主に学際的な共同研究をする複数の研究グループが活動している。 1999 年に一つの学科で始まり、2000 年に大学全体に及んだ入学定員割れに対する抜本的 な対策として、2004 年 4 月から入学定員 200 人を変えずに、従来の 2 学科の入学定員を 100 人から 80 人に変更し、共生社会学科 40 人を新設し、英語英米文学科を英語文化コミ ュニケーション学科に名称変更した。こうして、2 学科体制から 3 学科体制に移行した。ま た、教員組織も 3 学科に変更し、同時に第三回目のカリキュラム改革を行った。コース制 度も、英語文化コミュニケーション学科の英米文化コースとコミュニケーション・コース、 国際文化学科の比較文化コースと国際関係コース、共生社会学科の共生とケア・コースの 合計 5 コース制度に変更した。また、2005 年 4 月から国際文化学科に高校公民科の教職課 程を設置し、2006 年 4 月から中学社会科の教職課程を設置した。 2006 年 5 月 1 日現在の在学者数は 714 人であり、学生の男女比はほぼ 1 対1である。地 元の新潟県を中心にして多岐に渡る各方面で活躍する 2,514 人(2006 年 3 月。2006 年 9 月、2,518 人)の卒業生を既に輩出している。 2.大学教育の改革・改善の諸方策 (1)1995 年度カリキュラム改革 開学時の 1991 年度から学生による授業評価を全科目で実施し、1995 年度からはその結 1 果をデータ化して、授業の改善のために担当教員にフィードバックするシステムを構築し た。また、1993 年度からシラバスを発行し、現在に至るまで改善を重ねてきた。 1995 年度には旧一般教育を中心とした第一回目のカリキュラム改革を行った。その要点 は、第一に、英語を中心にした外国語改革でレベル(Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ)とコース(読む・書く・ 聴く・話す)に分けて少人数の能力別段階履修を導入し、そのためにプレースメント・テ スト、共通テキスト、共通テスト、並びにコーディネーター制度とネイティブ・スピーカ ーの契約講師制度を導入した。第二に、旧一般教育を共通基礎科目として A~G 群に分類 し直した。 このカリキュラム改革と密接に関連して、1994・95 年度には第一回目の自己点検・評価 を行い、教育・研究に関しては『敬和学園大学の現状と展望―1994 年度自己点検・自己評 価報告書』を発行し、管理運営に関しては『敬和学園大学の現状と展望―1995 年度自己点 検・自己評価報告書』を発行して公表した。また、1998・99 年度には第二回目の自己点検・ 評価を実施し、教育・研究・管理運営に関して『敬和学園大学の現状と改革―1998・89 年 度自己点検・自己評価報告書』を発行して公表した。 (2)2000 年度カリキュラム改革 2000 年には、専門科目を中心にした第二回目のカリキュラム改革を行った。その要点は、 第一に、専門科目のコース制度の導入である。英語英米文学科に英米文学コースと英語学 コースを設け、国際文化学科に比較文化コースと国際関係コースを設け、さらに両学科に 跨るコミュニケーション・コースを設けて、5 コースに分けた。また、学科の壁を低くし、 学生のニーズに応じて、浅く広く学ぶことも狭く深くも学ぶことができるようなオープ ン・コースの単位設定にした。第二に、演習教育の改革である。基礎演習(1 年次必修)を 導入し、共通テキストとして『基礎演習ハンドブック』を作成した。また、従来の 3・4 年 次の専門演習(必修)を 2・3 年次(2 年次必修、3 年次選択)に下ろした。同時に複数の 専門演習を受けることができる演習制度に改めた。第三に、セメスター制度の導入である。 外国語の一部は既にセメスター制度を導入していたが、卒業論文を除くすべての講義科 目・演習科目を前期と後期に分けて、それぞれの学期で完結するセメスター制度を導入し た。第四に、1994 年度から学生関係・教務関係で一部導入していた GPA 制度を本格的に 導入して、学期毎に履修登録単位の上限を原則として 24 単位とするキャップ制度やアドバ イザー制度とリンクさせた。すなわち、履修登録単位数の上限は各学期通常は 24 単位であ るが、GPA3.0 以上のハイ・グレードの学生には 27 単位まで履修を認め、GPA1.0 未満の ロー・グレードを 2 学期連続取った学生は、前学期の 3 分の 2 に制限して集中して履修す る制度を導入した。また、各学期の初日は、アドバイザーと面談する履修指導日を設けた。 (3)大学教育会議・FD 研修会 2 予想よりも早く迎えた定員割れに対して最初に二つの対策を取った。第一に大学教育会 議であり、第二にFD研修会である。1996 年度から 1999 年度まで毎年一回「教員リトリ ート」と称して教員全員参加を原則とした一泊研修会を開催し、教授会や各種委員会では 審議できない全学的な問題を提案して議論する場を設けてきた。しかし、火急で危機的な 場面を迎えて、1999 年 3 月には有志の教員を中心にして「ブレーン・ストーミング」の会 議を何度も繰り返して開催した。また、1999 年度には法人・大学・高校の中枢的構成員で 構成された将来構想委員会を繰り返して開催し、大学有識者を招いて助言を受けた。さら に、2000 年度に法人内に敬和学園高校大学連携委員会を立ち上げ 1 年間連携について協議 した。 2000 年 11 月から「教員リトリート」や「ブレーン・ストーミング」に代えて、教授会 に準じる会議として「大学教育会議」を設置した。大学教育会議は、教育機関として質の 向上をはかるために教授会と同様に学長が召集し、専任教員、事務局長、総務課長、教務 課長で構成される。大学教育会議では、学長や教員のプレゼンテーションの後に、議論を 中心に進められる。大学教育会議の開催は不定期であるが、2000 年度後期から 2002 年度 前期にかけて毎月 1 回程度頻繁に開かれた。主要な議題は、学科や学部の名称変更の問題、 大学基準協会に加盟判定審査への準備、ミッション・ステートメントの作成、新学科の設 立に関する諸問題などであった。コンセンサスが得られた重要な結論は教授会で決定され た。 2000 年度後期から 2002 年度前期にかけて大学教育会議と同時に、講義や演習の内容の 改善を目指して、FD 研修会を頻繁に開催した。FD の領域は多岐に亘って幅広いが、FD 研修会では授業の改善に限ってテーマを取り上げた。例えば、コンピュータを用いた授業 や資料の作成方法、マッピングの手法を取り入れた授業、ポートフォリオを取り入れた評 価方法、問答法を取り入れた講義法、演習の取り組みの事例などである。FD 研修会の講師 は、FD 委員会で学内の教員の中から選んで依頼した。FD 研修会はしばしば教育会議の前 段に、プレゼンテーションと質疑応答を入れて 30 分程度の短時間で行った。専任教員には 『FD ハンドブック』(大学セミナー・ハウス)、『カリフォルニア大学バークレー校授業改 善のヒント集』(東海大学出版局)、『成長するチップス先生』(玉川大学出版局)などを配 布し、学生による授業評価の結果と併せて、授業改善のヒントに用いた。 (4)2004 年度カリキュラム改革 このような組織改革をする中で、2001 年 12 月に理事長は 2 学科の定員を 100 人から 80 人に削減し、40 人の新学科を増設する方針を示し、2002 年 2 月に理事長の下で新学科設立 のために数人の教員で構成されたタースク・フォースが組織された。タースク・フォース の主導の下で、大学教育会議での度重なる協議を経て教授会で承認され、2003 年に文部科 学省と厚生労働省の認可を得て、2004 年 4 月から共生社会学科が発足した。また、英語英 3 米文化学科を英語文化コミュニケーション学科に名称変更した。 2004 年度には、共生社会学科の新設と英語文化コミュニケーションの名称変更に伴って、 専門科目の大幅なカリキュラム改革を中心にして第三回目のカリキュラム改革を行った。 すなわち、従来の英語英米学科(英語学コース、英米文学コース)と国際文化学科(比較 文化コース、国際関係コース)の 2 学科 5 コース制度(以上の 4 コースに両学科に共通の コミュニケーション・コースを加える)から英語文化コミュニケーション学科(英米文化 コース、コミュニケーション・コース)と国際文化学科(比較文化コース、国際関係コー ス)と共生社会学科(共生とケア・コース)の 3 学科 5 コース制度に変更した。また、共 生社会学科に社会福祉士国家試験受験課程を設置した。 (5)他の高等教育機関との連携 他大学との単位認定に関しては、1991 年度からアメリカのキリスト教主義大学であるノ ースウェスタン大学(アイオワ州オレンジ市)とカリフォルニア州立大学サンバナディー ノ校(サンバナディーノ市)に派遣する短期留学制度を導入して単位認定してきた。また、 中国の長春師範学院(吉林省長春市)とも協定書を交わした。その後、イギリスのアング ロ・コンチティンタル外国語学校(ボーンマス市) 、アメリカのワシントン・ランゲージー ズ・スクール(ワシントン州シアトル市) 、オーストラリアのメルボルン大学ホーソン英語 センター(メルボルン市)の5大学・高等教育機関に英語研修のために学生を派遣する短 期留学制度を発足させた。それに加えて、長期留学制度(半年・1年)並びに自由留学制 度を導入して充実させてきた。さらに 2004 年度には中国の内モンゴル放送大学外国語学院 (内モンゴル自治区フフホト市)と台湾のキリスト教主義大学である長栄大学(台南市) と協定を結び、2005 年度には黒竜江・東方学院(黒龍江省ハルピン市)と湛江師範学院(広 東省湛江市)と協定を結び留学制度を充実させている。長期留学制度・長期自由留学制度 は日本の授業料の半額を限度に支給する奨学金制度も導入した。 国内では、1998 年度から放送大学と単位互換制度を導入し、2001 年度から県立新潟女子 短期大学との単位互換制度、2002 年度から新潟大学人文学部・新潟国際情報大学との単位 互換制度を導入した。 (6)地域との連携 1999 年度以後、高校訪問を強化し、従来の入試室職員の高校訪問とは別に、専任教員が 県内 120 校の県立・私立高校を手分けして訪問し、入試室を中心にした職員が近隣の県外 の高校訪問する方針を取って実施してきた。しかし、2003 年度に新井学長が就任して以後 は教員の高校訪問を改めて出前講座に切り替えて、職員が高校訪問に専従する方針に改め た。その結果、高校大学の連携が深まり、新潟県立高校への出前講義が増えている。 開学時以来、地元の新発田市での公開講座を始め、次第に輪を広げて地元の聖籠町、近 4 隣の旧豊栄市や三条市の公民館、時には新潟市や村上市や旧笹神村の公民館で公開講座を 開催して、地元の市民の生涯教育や啓蒙活動に力を入れてきた。しかし、2003 年度から土 曜日・日曜日を連続させた短期集中のオープン・カレッジを開講して一層充実してきてい る。さらに、大学本体のカリキュラムでは社会人を主な対象としたイブニング・コースや 昼間の授業にも科目等履修生が毎年 100 人程度在学している。これらの中には公開講座か ら関心を深めて科目等履修生になった社会人もいる。 英語文化コミュニケーション学科を中心にして、一方では英語教職課程の学生を中心に して地元の新発田市と聖籠町の小中学校に学生がインターンシップやボランティアの枠組 みで英語の授業の補助をしてきた。他方では、高大連携委員会の指摘を受けて、2001 年度 から中学・高校の英語科教員を対象にした「リフレッシュ・セミナー」を開始し、さらに 小学校での英語教育の導入と絡んで、主に地元の小学校教員を対象にした「児童英語教育」 の科目を開講した。両者を一つにまとめて、 「地域循環型英語教育」と称する地域密着型の 教員養成・リカレント教育を展開している。 2003 年 4 月に新井明学長が就任して以来、地元の自治体との交流を深めている。また、 地域に密着したテーマを取り上げて、地元にその成果を還元する科目が出始め、地元住民 もその成果に注目している。それまでも市長や町長と学長との地域のトップ同士の交流は あったが、中間管理職との交流が深まり、各種の提携が実を結んできている。その象徴的 な出来事として、2004 年 10 月に新発田商工会議所・新発田市観光振興課と大学という産 官学の三者の連携により新発田市中央町の新潟中央銀行新発田支店跡地に「まちの駅」が 発足した。さらに、このような取り組みから 2006 年 11 月に「まちの駅」のエクステンシ ョンとして、「まちの駅よろず・敬和学園大学新発田学研究センター」が新発田大栄町のま りも書店跡の空き店舗を改築して開所した。 (7)施設について 1991 年の開学以後の主な施設の増改築に関しては、1993 年には食堂(オレンジ・ホール) のアネックスを増築し、1997 年 11 月に体育館新築並びに校舎増築(演習室と中教室の増 設、図書館の増改築、就職指導室、国際交流室、ボランティア・センターの新設)をして、 学生へのサービスの改善に努めた。2003 年には栄光館 1 階ピロティに喫煙室を設置し、そ れ以外では校舎内を全面的に禁煙とした。また、2005 年には栄光館 1 階のトイレをファッ ション感覚のあふれる最新式のものに改修した。 3.大学基準協会の加盟判定審査 1995 年から大学基準協会の研修会に毎年参加していたが、1998 年にはその賛助会員にな 5 った。大学教育の改革・改善に努め 2 度の自己点検・評価を行い、さらに改善・改革に努 めてきたので、2001 年度に第三回目の自己点検・評価を実施して 2002 年度に大学基準協 会の加盟判定審査を受けた。そのために、2001 年秋には、大学教育会議に大学基準協会の 外間寛会長(中央大学元学長)と事務局員を招いて準備をし、2002 年秋には、大学基準協 会理事であった絹川正吉前大学教育学会長(国際基督大学前学長)を教育会議の講師に招 いて日本の大学改革を巡る現況と将来について講演して頂いた。 大学基準協会への加盟判定のための自己点検・評価は、従来の私大連盟の自己点検・評 価に基づいて作成した本学の独自の点検項目を改めて、大学基準協会の点検項目に従って 行った。さらに、大学基準協会の点検項目には全くないが、従来の本学の自己点検・評価 で行ってきたキリスト教主義教育とボランティア教育に関しては、独自の点検項目として 最後の 2 章を追加した(詳しくは、 『自己点検・評価報告書 2001 年度―大学基準協会加盟 判定審査報告―敬和学園大学』敬和学園大学、2003 年、参照) 。2003 年 3 月に大学基準協 会の加盟判定審査に合格し、2003 年 4 月に、新潟県内の4年制大学 15 校の中で、新潟薬 科大学と新潟青陵大学に続いて新潟工科大学と並んで 3 番目に大学基準協会の正会員とし て認定された。 2001 年度から 5 年経過した 2006 年度に第四回目の自己点検・評価を行い、2007 年度に 大学基準協会の相互評価を受けることにした。その間に、加盟判定審査で指摘された勧告・ 助言の改善に努め、参考意見の多くを採用することに心がけてきた。2006 年度の自己点検・ 評価は大学基準協会の改定された評価項目に従って行い、A 群・B 群の評価項目に、本学で 該当する C 群の評価項目も加えて行った。また、前回と同様に本学に特徴的な「キリスト 教主義教育」と「ボランティア活動」という独自の評価項目を最後の 2 章として加えた。 6 第1章 大学・学部等の理念・目的及び学部等の使命・目的・ 教育目標 〔目標〕 1.大学の教育理念を簡潔に表現して、現代的な教育目標として明示する。 2.キリスト教主義リベラル・アーツ教育の理念を分かりやすく提示する。 3.スクール・モットーなどにより、教育理念を周知させる。 1.理念・目的等 (1) 大学・学部等の理念・目的・教育目標とそれに伴う人材養成等の目的の適切性 〔現状の説明〕 大学設置基準の大綱化以降に、大学の個性化と密接に関連して、大学は教育研究理念や 教育研究方針を明確にすることが求められている。大学は広い意味での非営利組織の一つ であるが、非営利組織にとって最も重要なことは、その組織の存在理由である「ミッショ ン」にある(P.ドラッカー『非営利組織の経営』ダイヤモンド社)。大学の「ミッション」 は、その存在理由である教育研究理念や教育研究目的を記した学則第 1 条に記されている。 敬和学園大学の教育研究理念と教育研究目的は、次のように記されている。 「本学は、教育基本法(昭和 22 年法律 25 号)及び学校教育法(昭和 22 年法律第 26 号)に従い、福音主義キリスト教の精神に基づく自由かつ敬虔な学風の中で真理 を探究するとともに心の教育を実践し、国際的教養豊かな良心的人材を育成するこ とを目的とする。」(学則第1条)。 定員割れという危機的な場面に直面して、教育の改善改革をさらに強く推進すると同時 に、もう一度原点である教育理念・教育方針に立ち返ってその存在理由を点検し、確認す る必要が生じた。内外の大学の「ミッション・ステートメント」を研究した上で、敬和学 園大学の過去 12 年の教育活動を振り返り、学則第 1 条を分かりやすく現代化して、以下の 「ミッション・ステートメント」の言葉にまとめた。それは教育会議の議論を経て、大学 運営委員会で取りまとめられ、2002 年 12 月に教授会で承認された。 「敬和学園大学は、キリスト教精神に基づく自由かつ敬虔な学風の中でリベラル・ アーツ教育を行い、グローバルな視点で考え、対話とコミュニケーションとボラ ンティア精神を重んじ、隣人に仕える国際的教養人を育成します。」 7 キリスト教主義リベラル・アーツ教育と密接に関わる教育基本法改定問題について学内 で議論するために、2005 年 11 月に大学運営委員会の下部組織として教育基本法改定問題 検討小委員会を発足させ、2006 年 3 月までに 5 回の研究会を開催した。2006 年 4 月に教 育基本法改定が閣議決定され国会で審議されると、教育基本法改定問題検討小委員会は、 同一法人の高校の委員を加えて、教育基本法改定問題検討高校大学合同委員会に拡大して 衣替えし、2006 年 6 月までに 5 回の合同委員会を開催して教育基本法改定問題に対する対 応策を同一法人の問題として検討した。また大学では教育基本法改定問題に関する教育会 議を 2006 年 5 月に 2 回開き、高校も教育基本法学習会を 5 月から開催し始めた。このよう な議論の中で、本学は現行の教育基本法の教育理念に基づいて「一人ひとりの人格を大切 にし」 、人権・平和・共生にポイントを置いた教育研究・カリキュラム改革・人事などを行 ってきたが、「敬和の教育」として今後も益々この方向を強めていくことを高校と大学が共 に確認した。 〔点検・評価の結果〕 学則第 1 条に盛られている事柄は、 「ミッション」そのもの、 「ユニバーシティ・アイデ ンティティ」そのものである。しかし、企業の「コーポレイト・アイデンティティ」と比 較して考えると、学則で謳われた教育理念・教育目的は時代を越えて不変の「マインド・ アイデンティティ」に相当し、 「ミッション・ステートメント」は時代や社会の要請や構成 員の必要に応じて変わる行動目標である「ビヘイビュア・アイデンティティ」に相当する。 「ミッション・ステートメント」によって、時代に即した具体的な行動目標として教育理 念を具体化して表現することは適切である。 また、それは多様な組織に分化し、多様な科目を提供し、多様な活動を展開してマルテ ィ・バーシティ化している大学が、ユニ・バーシティとして一つの教育組織として共同体 の意識を共有するには、簡単な言葉で表現した共通の行動目標を掲げる必要がある。学生 や教職員の誰でも口ずさめる程度の短い言葉で表現することが望ましい。また、保護者・ 高校生・高校教員を始めとする学外の人々にも理解しやすい言葉にまとめる必要がある。 本学の「ミッション・ステートメント」では、キリスト教主義リベラル・アーツ教育の 教育理念は「キリスト教精神に基づく自由かつ敬虔な学風の中でリベラル・アーツ教育を 行い」で表現され、国際主義の教育理念は「グローバルな視点で考え」「国際的教養人」の 育成に表明され、地域主義の教育理念は「隣人に仕える人」の育成に表明されている。ま た、国際文化学科、英語文化コミュニケーション学科、共生社会学科のキー・ワードがそ れぞれ「(文明間)対話」 「コミュニケーション」 「ボランティア精神」に象徴的に表現され ている。 8 〔改善の具体的方策〕 大学の教職員学生や保護者などには、キリスト教主義リベラル・アーツ大学の教育方針 は浸透しているが、 「ミッション・ステートメント」を『大学案内』などのパンフレット類 やホームページでより前面に出して、さらに周知徹底させる必要がある。 また、 「ミッション・ステートメント」に基づいて、 「アドミッション・ステートメント」 や「アドミッション・ポリシー」を「入試案内」ばかりでなく、 『大学案内』や大学ホーム ページなどに掲載する必要がある。 (2)大学・学部等の理念・目的・教育目標等の周知方法とその有効性 〔現状の説明〕 教育理念を具体的な行動目標にしたミッション・ステートメントは、 『大学案内』や大学 ホームページにも掲載されている。さらにその中核をなす「リベラル・アーツ教育」に関 しては、『大学案内』や大学ホームページばかりでなく『敬和カレッジ・レポート』を始め 各種の大学パンフレット類でも頻繁に取上げて言及し、高校教員に対する大学入試説明会 や保護者会の講演でもたびたび説明している。 また広く社会に訴えるために、新井明学長が朝日新聞社新潟支局長と「リベラル・アー ツ教育」について対談した全面広告を 2006 年 1 月に朝日新聞紙上に掲載した。さらに、 2006 年 2 月にはキリスト教教育同盟関東地区研究会で主に他大学の教員向けに山田耕太共生社 会学科長が「リベラル・アーツ教育と聖書」と題する講演をし、2006 年 7 月には一般市民 向けに、新発田市文化会館で富士ゼロックス相談役・最高顧問の小林陽太郎氏の「共生時 代の可能性:リベラル・アーツの可能性」と題する財界人のリベラル・アーツ教育に関す るアスペン研究所の紹介とその背後にある理念に関する講演とパネル・ディスカッション を開催して、「リベラル・アーツ教育」の周知に努めている。 スクール・モットーとして敬和学園高校は「敬神愛人」を掲げてきたが、大学は「敬和」 と命名された聖書の言葉に遡り「神を愛し、隣人を愛す(Diliges Deum et Proximum)」 (マ ルコ福音書 12 章 28~34 節)と表現し直した。2003 年以後に新井明学長はそれを「神に仕 え、人に仕える」と言い換えている。さらに、従来からキリスト教リベラル・アーツ教育 の教育理念を聖書の言葉「あなたがたは真理を知り、真理はあなたがたを自由にする」(ヨ ハネ福音書 8 章 32 節)に根拠づけてきた。書家の手によるこの聖書の言葉は、大学の玄関 を入った大学事務局の窓口に掲げられている。また、ここから「VERITAS」(真理)と名 づけた学生論文集が毎年全学生に配布されている。 キリスト教主義リベラル・アーツ教育を表すキャッチ・コピーとして、「人間らしい心を 備えた人間になる教育」「木を育てるように人を育てる」などが、『大学案内』や『敬和カ 9 レッジ・レポート』などのパンフレット類やテレビの大学案内の番組で用いられている。 〔点検・評価の結果〕 リベラル・アーツ教育の意味や現代社会における意義を明らかにすること、さらにそれ らは現行の教育基本法の目指す教育理念と深く連動しており、これらを解明して、学生や 教職員のみならず、広く社会に訴えることは、本学のアイデンティティの形成を促し、教 育理念を点検し再構築していくという意味で重要である。 「神に仕え、人に仕える」と言い換えたスクール・モットーや「人間の心を備えた人間 にする教育」や「木を育てるように人を育てる」というキャッチ・コピーによるキリスト 教主義リベラル・アーツの教育の理念や、そこから醸成される少人数教育による家庭的な 校風は、学生や教職員の間でかなり浸透している。 また、スクール・アイデンティティの一環として、広報委員会が中心になり、学生に親 しみやすいイメージ作りを心がけ、2005 年度には卒業生・在学生の協力を得て、大学のイ メージ・ソング的雰囲気を持つキャンパス・ソングとキャンパス・キャラクターを作成し、 広報誌などに積極的に活用している。 〔改善の具体的方策〕 2006 年 10 月には大学のチャペル・アッセンブリ・アワーの時間帯を用いて、高校は特 別の時間帯を設けて「マザー・テレサ」の映画を高校と大学の学生が鑑賞した。 「神に仕え、 人に仕える」と言い換えたスクール・モットーをこのように映像などを用いてイメージし 易くして具体的に学生に分かりやすく伝える方法をさらに検討する必要がある。また広報 委員会などとも連携して、具体的にスクール・アイデンティティを明確にして伝達する方 法を考える必要がある。 また、 『大学案内』や JR 新潟駅・佐々木駅・新発田駅の看板などの入試広報のスクール・ モットー「自分を知る、世界を知る」との統一を検討する必要がある。 さらに、大学のスクール・バスは、敬和学園のスクール・カラーに統一したが、広報関 係で敬和学園のスクール・カラーやロゴ・マークを前面に出して用いる必要があろう。2005 年度には学生歌が誕生したが、今後は大学歌や大学旗を考えることが必要になるであろう。 10 第2章 教育研究組織 〔目標〕 1.キリスト教主義リベラル・アーツ教育を行うのにふさわしい教育研究組織とする。 2.建学の精神を生かして、人間らしい温かい心をもった人間を教育し、社会に奉仕する 人間を教育する教育研究組織とする。 (1)当該大学の学部・学科・大学院研究科・研究所などの組織の教育研究組織としての 適切性、妥当性 〔現状の説明〕 本学は 1990 年 12 月に大学設置認可が下りて、 「福音主義キリスト教の精神に基づく自由 かつ敬虔な学風の中で真理を探求するとともに心の教育を実践し、国際的教養豊かな良心 的人材の育成することを目的」 (学則第 1 条)として、入学定員各 100 人の英語英米文学科 と国際文化学科の 2 学科で構成された人文学部の単科大学として 1991 年 4 月に開学した。 当初の専任教員の教員組織は、一般教育 12 人、英語英米文学科 8 人、国際文化学科 12 人 であった。1993 年 4 月には学生の要望に応じて英語文化学科に高校英語科・中学英語の教 職課程を設置した。英語英米文学科に 2 人の教職課程の教員を増員し、また一般教育に 1 人の英語教員を増員した。こうして 1994 年の完成年度には、教員組織は 35 人の専任教員 で構成された。 1995 年には一般教育の改組に伴うカリキュラム改革を行ったが、一般教育の教員の英語 と教職に関連する体育の教員は英語英米文学科に所属し、その他の教員は国際文化学科に 所属するという方針の下で教員の希望に従って分属した。その結果、1995 年の専任教員は 英語英米文学科 14 人、国際文化学科 19 人、それに外国語改革に伴う新たな契約講師制度 の導入による英語のネイティブ・スピーカーの 2 人が加わった。また、契約講師制度を充 実させるために 1997 年には留学生のために日本語担当の契約講師を新たに 1 人加え、 2000 年のカリキュラム改革に伴い、英語のネイティブ・スピーカーを新たに 1 人増員させた。 2000 年 9 月には、教育に重点を置いた大学ではあるが、新機軸を打ち出すための第一弾 として、研究面で人文社会科学研究所を開所させ、研究所は専任教員全員が所属する組織 として始まった。しかし、2003 年度から研究所は独自の活動は維持したままで、共同研究 費を補助して共同研究を促し支援する組織に衣替えしていった。また、2006 年 11 月には、 大学と地域の交流を目的とする研究所のセンターとして、新発田商工会議所と新発田市と 本学の産官学の連携で新発田学研究センターを新発田市内の商店街の空き店舗を改築して 発足させた。ここでは、地域から学んだものを地域に返すという新しい教育研究の理念の 下で、 「隣人に仕える」という教育理念を実現することを目指している。 11 2004 年には、新機軸を打ち出す第二弾として、教育面で従来の 2 学科の入学定員を各 100 人から 80 人に削減し入学定員 40 人の共生社会学科を新設して改組転換させた。また英語 英米文化学科を英語文化コミュニケーション学科と名称変更した。これらの改革に伴って、 専門科目を中心として大幅なカリキュラム改革を行った。また、共生社会学科には社会福 祉士国家試験受験課程を設置した。それに伴い、主に国際文化学科の教員の移動と一部の 英語英米文化学科の教員による移動並びに国際文化学科の教員人事の振替による新任人事 により共生社会学科の教員組織を新たに生み出した。その結果、2006 年度の教員組織は、 英語文化コミュニケーション学科 14 人(他に客員教授 1 人)、国際文化学科 9 人(後期は 10 人。他に特任教授 1 人、客員教授 1 人)、共生社会学科 6 人(他に特任教授 2 人)、契約 講師 4 人(英語 3 人、日本語 1 人) 、特任講師 1 人で構成されている。2005 年には国際文 化学科に高校公民科の教職課程を設置し、2006 年には中学社会の教職課程をそれに加えた。 〔点検・評価の結果〕 大学設置基準第 13 条別表 1 に従えば、3 学科で構成する人文学部の英語文化コミュニケ ーション学科と国際文化学科と共生社会学科の教員数はそれぞれ 6 人以上であり、第 13 条 別表 2 に従えば、総収容定員 800 人に対して、12 人の教員が加算される。本学の英語文化 コミュニケーション学科の専任教員 14 人(学長を含む)、国際文化学科の専任教員 9 人(後 期 10 人) 、共生社会学科の専任教員 6 人は、3 学科ともこの基準を越えている。また、契約 講師 4 人を加えて、大学全体の総数も基準を越えている。 〔改善の具体的方策〕 今後の人事では全学的な場で柔軟かつ慎重に補充の必要な分野を検討する必要がある。 大学全体の教育方針と学科や科目の特質にも配慮した上で、3 学科の専任教員数とバランス を取ることが望ましい。また、定員の回復の度合いに応じて、特任教授や客員教授の見直 しも検討していく方針である。 12 第3章 学士課程の教育内容・方法等 〔目標〕 1.教育理念を具体化したミッション・ステートメントに則した特色のあるカリキュラム の実現を目指す。 2.社会の要請や学生のニーズに応えるために、柔軟なカリキュラムへの改善を目指す。 3.厳格な成績評価の体制を維持して教育の質的保持に努め、社会的信用と付託に応える。 4.地域社会との連携や国際的な視野での連携を深める。 Ⅰ.教育課程等 1.学部・学科等の教育課程 (1)学部・学科等の教育課程と各学部・学科等の理念・目的並びに学校教育法第 52 条、 大学設置基準第 19 条との関連 〔現状の説明〕 本学はキリスト教主義リベラル・アーツ教育の大学として自覚し自らを位置づけてきた。 本学のキリスト教主義リベラル・アーツ教育は、以下のように全人教育を行う構造になっ ている。 第一に、キリスト教学やチャペル・アッセンブリ・アワーやボランティア論その他のキ リスト教関連科目による教育課程と、ボランティア活動並びにキリスト教による大学行事 などの課外教育の両面によるキリスト教主義教育により「心の教育」を行う。 第二に、共通基礎科目や共通専門科目によって、またこれらの科目群と連携し教養に配 慮した展開教育にも位置づけられる専門教育によっても、人間の教育である「リベラル・ アーツ教育」で、広い視野をもった教養教育を行う。 第三に、その上で、英語をコミュニケーションの手段として身につけ文化を理解する人 を育てる英語文化コミュニケーション学科の専門教育、国際社会を多面的に理解し国際的 視野を身につけ地域社会に仕える人を育てる国際文化学科の専門教育、21 世紀の地域社会 や国際社会を理解し福祉マインドを身につけヒューマン・サービスに励む人を育てる共生 社会学科の専門教育、これらの専門教育によって、社会で活躍できる実践的な人間の教育 を行う。 こうして、学校教育法第 52 条の「大学は、学術の中心にして、広く知識を授けるととも に、深く専門の学芸を教授し、知的、道徳的及び応用的能力を展開させることを目的とす る」という大学の目的、並びに大学設置基準第 19 条の「教育課程の編成に当たっては、大 13 学は、学部等の専門の学芸を教授するとともに、幅広く深い教養及び総合的な判断力を培 い、豊かな人間性を涵養するように適切に配慮しなければならない」という教育課程の編 成方針を実現するように配慮している。 〔点検・評価の結果〕 本学は小規模大学ではあるが、多様な動機と背景と学力をもった学生が在学している。 しかし、一人ひとりを大切にし、それぞれの動機と背景と学力に応じた少人数教育を行う ために、2006 年度前期は 300 コマ、同後期は 296 コマを開講して、きめ細かい教育を行い、 その中で、各人の動機・背景・学力に応じた教育が施されている。 2006 年度前期の講義科目の 1 クラス平均履修人数は、講義系科目 42.1 人、外国語科目 16.6 人、演習系科目の 9.1 人、全体の 1 クラスの平均履修人数は 26.4 人である。 〔改善の具体的方策〕 今後は、さらに学生と教職員が、キリスト教主義リベラル・アーツ教育の理念とそれを 具体的に実現している教育課程と課外活動の全体像との関係を共通に理解し、共通認識を 形成するように努力すべきである。そのためには、大学案内やホームページなどに分かり 易く提示し、また学生にもそれを提示する機会を設ける必要がある。 (2)学部・学科等の理念・目的や教育目標との対応関係における、学士課程としてのカ リキュラムの体系性 〔現状の説明〕 本学の学則第 1 条の「良心的な国際的教養人の育成」を具体化するために、キリスト教 主義教育・国際主義教育・地域主義教育の 14 年の教育実践から、以下のミッション・ステ ートメントが生まれてきた。 「敬和学園大学は、キリスト教精神に基づく自由かつ敬虔な学風の中でリベラル・ アーツ教育を行い、グローバルな視点で考え、対話とコミュニケーションとボラ ンティア精神を重んじ、隣人に仕える国際的教養人を育成します。」 ミッション・ステートメントの文言で、キリスト教主義教育の教育理念は「キリスト教 精神に基づく自由かつ敬虔な学風の中で(リベラル・アーツ教育を行い) 」に、国際主義教 育の教育理念は「グローバルな視点で考え」 「国際的教養人」の育成に、地域主義教育の教 育理念は「隣人に仕える人」の育成に表明されている。また、国際文化学科、英語文化コ 14 ミュニケーション学科、共生社会学科のキー・ワードがそれぞれ「(文明間)対話とコミュ ニケーションとボランティア精神を重んじ」ることに表現され、大学教育全体で「リベラ ル・アーツ教育を行う」ことが述べられている。 また、このミッション・ステートメントをカリキュラムに実現するために、カリキュラ ムの背後には、次の 21 世紀の教養人の教養の基準と教育理念がある。 ①21 世紀の教養人は、分析的・批判的に考えて、明瞭かつ効果的に考えることができる (主に演習教育の理念) ②21 世紀の教養人は、少なくとも一つの外国語を操ることができる(主に外国語教育の 理念) ③21 世紀の教養人は、コンピュータを操ることができる(情報教育の理念) ④21 世紀の教養人は、異なる文化について複眼的に見ることができる(主に専門教育の 理念) ⑤21 世紀の教養人は、倫理的基準を持ち、他者に奉仕することができる(主にキリスト 教主義教育の理念) 2004 年度のカリキュラム改革では共生社会学科を新設し、英語英米文化学科を英語文化 コミュニケーション学科に名称変更し、また国際文化学科の内容も、それらの学科に合わ せて刷新した。すなわち、英語文化コミュニケーション学科のカリキュラムは、英語学コ ースとコミュニケーション・コースに分け、国際文化学科を比較文化コースと国際関係コ ースに分け、それらに共生社会学科の共生とケア・コースを加えて、3 学科・5 コース体制 に移行した。また、共生社会学科には社会福祉士国家試験受験資格課程を付設した。さら に、2005 年度には、国際文化学科に高校公民科の教職課程を設置し、2006 年度には国際文 化学科に中学社会科の教職課程を設置した。 〔点検・評価の結果〕 共生社会学科の新設と英語文化コミュニケーション学科の名称変更並びに国際文化学科 を含めたカリキュラムの改定は、それぞれ時代と社会の要請と学生のニーズに応え、また 教育理念の現代化から生まれたカリキュラムの改定である。それぞれの改革が有効であっ たことは、2000 年から連続して大幅な入学者数の減少が続いた定員割れは、2002 年度入学 者数を底にして学長が交代した 2003 年度に歯止めがかかり、2004 年度には入学定員割れ が大幅に改善され、2005 年度入学者は定員を越えたことからも明らかである。 〔改善の具体的方策〕 今後とも、マイナーな改革であれ、時代と社会の要請と学生のニーズに応じ、教育理念 15 に合致するカリキュラム改革を推し進めていかなければならない。そのためには、学生と 教職員の間で教育理念の共有化を徹底させて、時代と社会の変化と要請並びに学生のニー ズを的確にキャッチした上で、中長期的計画を立てて改革を推し進めなければならない。 また、ことある毎に、学生と教職員にミッション・ステートメントや教育理念について説 明し、教育共同体としての共通理解を形成しなければならない。 (3)教育課程における基礎教育、倫理性を培う教育の位置づけ 〔現状の説明〕 教育課程における基礎教育の科目として 2000 年度カリキュラムから1年次生必修の「基 礎演習」を新設して、大学教育への導入とした。共通テキストとして 2000 年度に『基礎演 習ハンドブック』を作成したが、2005 年度に FD・カリキュラム委員会の委員がその改訂 第二版を分担執筆した(B5版、70 頁)。 『基礎演習ハンドブック(改訂第二版) 』は、以下の内容で構成されている。 巻 頭 アッシジのフランシスの平和の祈り はじめに 第1章 人権について(1.人権とは何?、2.人権の歴史、3.世界人権宣言の精神) 第2章 リベラル・アーツについて(1.リベラル・アーツとは何、2.リベラル・アー ツの歴史、3.敬和学園大学のリベラル・アーツ教育) 第3章 本の読み方(1.大学でこそ本を読もう、2.本を読むときに、3.読書ノートの すすめ) 第4章 文章の書き方(1.原稿用紙とワープロ原稿、2.論理的な文章) 第5章 要約の仕方・ノートの取り方(1.縮約をしてみよう、2.マッピングをしてみ よう、3.授業の受け方、ノートの取り方) 第6章 情報の集め方(1.自分の勉強を広げるステップ、2.図書館での検索、3.イン ターネット検索、4.インタビュー、5.アンケート調査、6.情報収集のおもし ろさ) 第7章 議論の展開の仕方(1.根拠のある主張を行う、2.議論の構成、3.順序を立て ること) 第8章 口頭発表の仕方(1.表現方法の一つとしての口頭発表、2.発表のための準備、 3.口頭発表の実際) 第9章 レポートの書き方(1.レポートとは何、2.報告から論述へ、3.発想の仕方) 巻 末 「敬和 100 冊の本(2004 年度版) 」ブックリスト 16 基礎演習では、大学教育での読み書きに力を入れており、共通テキストである『基礎演 習ハンドブック』の他に、各演習担当者が選んだ新書・文庫・ジュニア新書あるいは新聞 記事などを用いて、学生に読み書き口頭発表の訓練や添削指導を行っている。また、図書 館での図書館利用のオリエンテーション(40 分)と就職指導室での就職オリエンテーショ ン(40 分)がその中に加わる。ボランティア・デーに基礎演習担当教員は、社会福祉施設 などに基礎演習の学生を引率して学生と共にボランティア活動を行う。 1 年次前期の基礎演習に引き続き、1 年次後期(ただし共生社会学科では 1 年次前期に基 礎演習と並行して)には専門科目への導入として、英語文化コミュニケーション学科では 「英米文化入門」「コミュニケーション入門」 (選択必修) 、国際文化学科では「文明史・文 明論」「国際関係入門」(選択必修)、共生社会学科では「共生とケア入門」(必修)が用意 されている。それぞれ専任教員がオムニバス方式の講義を担当し、2 年次・3 年次・4 年次 の専門演習の導入科目ともなっている。 さらに、専門教育への基礎教育として「共通基礎」科目群が用意されている。 倫理性を培う教育として、 「キリスト教学 1, 2」やキリスト教関連科目(「キリスト教史 1, 2」、 「哲学 1, 2」、 「現代哲学 1, 2」 、 「比較宗教思想 1, 2」、 「人間学 1, 2」 、 「倫理思想史 1, 2」 、 「ヨーロッパ思想史 1, 2」 、 「環境倫理学 1, 2」 、 「死生学 1, 2」、 「共生の哲学 1, 2」、 「生命倫 理学 1, 2」 、他)のキリスト教主義教育の科目群が用意されている。また、毎週金曜日 2 限 のチャペル・アッセンブリ・アワーは礼拝(約 30 分)と講演(約 60 分)で構成されてい る。チャペル・アワーは、讃美歌、祈祷、説教などで構成されているが、近隣の教会など の学外の牧師他や学長・宗教部長をはじめとする学内のキリスト者の教員が説教をするの で、倫理性を培う役割も果たしている。アッセンブリ・アワーは、毎回各界で活躍されて いる講師の講演で構成されているが、講義では触れられることが少ない「いかに生きるか」 や人生から得た教訓などにより生きる指針を与えるので、大学教育の導入の役割を果たし ている。 〔点検・評価の結果〕 基礎演習は、1 クラス 15 人程度で運営されており、学生は第三希望まで希望を書いたア ンケートに基づいてクラスが割り当てられている。その際には、学生の希望を第一にする が、3 学科の学生が分散して 1 学科のみに偏らないこと、男女比が適当であること、留学生 が集中しないことなどの点に配慮してクラス編成を行い、学科を越えて友人を作ることが できるようにも工夫している。また、基礎演習と専門への入門科目は、学生を育成する大 学の生命である 2 年次、3 年次、4 年次の専門演習への導入として位置づけられている。 倫理性を培う教育では、聖書の人物と思想を学ぶ「キリスト教学 1, 2」は、1 年次生の必 修であるが、それ以外のキリスト教関連科目は原則として選択科目であり、また原則とし 17 て専門科目の中に配置されており、学年進行とともに段階的に展開していくように配置さ れている。また、チャペル・アッセンブリ・アワーには前期は 8 割近い 1 年次生が、後期 は 6~7 割近くが毎回出席し、2 年次生以上も数は少ないが出席している。 〔改善の具体的方策〕 基礎演習は、1 年次の前期の科目として設定されているが、後期も連続して開講する要望 が教員からしばしば出ていたが、担当コマ数の関係他から実現していない。しかし、共生 社会学科では専門への導入として福祉入門演習を 2006 年度後期から開講した。今後は他の 学科も専門への入門演習を開講することを検討すべきかもしれない。 また、基礎演習は毎年 13 演習前後が開講されているが、この担当者が 3 学科からバラン スよく配分されることが望ましい。 (4) 「専攻に係わる専門の学芸」を教授するための専門教育的授業科目とその学部・学科 等の理念・目的、学問の体系性並びに学校教育法第 52 条との適合性 〔現状の説明〕 専門教育科目は、専門教育への入門で選択必修である入門科目、専門教育の基礎で選択 必修である基幹科目、歴史的視点を学ぶ選択科目の展望科目、それぞれの展開である選択 科目の展開科目をそれぞれふさわしい学年に配当して開講している。また、演習科目は 2 年次・3 年次は選択必修であるが、4 年次は選択科目である。さらに、卒業論文は 4 年次の 選択科目で、通年の個人指導により卒業論文を作成している。 ミッション・ステートメントを受けて、英語文化コミュニケーション学科は、「『英語を 学ぶ』とともに『英語で学ぶ』ことにより、実践的な運用能力を身につけること」をその 目的としている。英語文化学科の専門科目は、イギリス文学・アメリカ文学系の英米文化 コースとコミュニケーション・英語学系のコミュニケーション・コースに分かれている。 英米文化コースでは、「英米文化入門」を入門科目とし、 「英語学習の技術」 「書くための 英文法 1, 2」「中級英文法 1, 2」を基幹科目とし、 「イギリス文化と歴史 1, 2」「アメリカ文 化と歴史 1, 2」を展望科目としている。また、「フォークロアと神話 1, 2, 3, 4」「フィクシ ョン 1, 2, 3, 4」 「ドラマ 1, 2, 3, 4」「詩 1, 2」 「エッセイ 1, 2」「文化・文学比較論 1, 2」「英 語文化圏研究 A1, A2, B1, B2」 「英語文化スペシャル・トピックス 1, 2, 3, 4, 5, 6」を展開科 目に位置づけている。さらに「英米文化演習 1A, 2A, 3A, 4A, 5A, 6A, 1B, 2B, 3B, 4B, 5B, 6B, 1C, 2C, 3C, 4C, 5C, 6C, 1D, 2D, 3D, 4D, 5D, 6D, 1E, 2E, 3E, 4E, 5E, 6E, 1F, 2F, 3F, 4F, 5F, 6F」を演習科目としている。 コミュニケーション・コースでは、「コミュニケーション入門」を入門科目とし、「英語 18 学習の技術」「書くための英文法 1, 2」「中級英文法 1, 2」を基幹科目とし、 「イギリス文化 と歴史 1, 2」「アメリカ文化と歴史 1, 2」 「文化交流論 1, 2」を展望科目としている。また、 「言語コミュニケーション論 1, 2」 「対人コミュニケーション論 1, 2」 「メディア・コミュニ ケーション論 1, 2」 「異文化コミュニケーション論 1, 2」「地域コミュニケーション論 1, 2」 「メディア英語 1, 2」「北米社会・環境政策 1, 2」 「英語コミュニケーション講読 1, 2」 「英 語学 1, 2」 「言語学 1, 2」 「英語の歴史 1, 2」 「英語の発音 1, 2」「英語学講読 1, 2」「英語文 化圏研究 A1, A2, B1, B2」 「英語スペシャル・トピックス 1, 2, 3, 4」を展開科目に位置づけ ている。さらに「コミュニケーション演習 1A, 2A, 3A, 4A, 5A, 6A, 1B, 2B, 3B, 4B, 5B, 6B, 1C, 2C, 3C, 4C, 5C, 6C, 1D, 2D, 3D, 4D, 5D, 6D, 1E, 2E, 3E, 4E, 5E, 6E, 1F, 2F, 3F, 4F, 5F, 6F, 1G, 2G, 3G, 4G, 5G, 6G, 1H, 2H, 3H, 4H, 5H, 6H, 1I, 2I, 3I, 4I, 5I, 6I, 1J, 2J, 3J, 4J, 5J, 6J, 1K, 2K, 3K, 4K, 5K, 6K,1L, 2L, 3L, 4L, 5L, 6L, 1M, 2M, 3M, 4M, 5M, 6M」を 演習科目としている。 ミッション・ステートメントを受けて、国際文化学科は、「多様な文化間、言語間、地域 間の対話をするために、自国の文化、他国の文化を比較・理解し真の教養を身につける」 ことを目的としている。国際文化学科の専門科目は、比較文化系の「比較文化コース」と 国際関係系の「国際関係コース」に分かれている。 比較文化コースでは、「文明史・文明論」を入門科目とし、「日本文化論 1, 2」「アジア文 化論 1, 2」 「ヨーロッパ文化論 1, 2」を基幹科目とし、 「アジア史概説」 「アジア史」 「西洋史 概説」 「ヨーロッパ史」「日本近現代史 1, 2」を展望科目としている。また、 「日本芸能論 1, 2」 「宗教民俗学 1, 2」 「アジア民俗学 1, 2」 「国際文化学 1, 2」 「現代社会論 1, 2」 「東アジア 文化圏研究 1, 2」「イスラーム文化圏研究 1, 2」「ヨーロッパ思想史 1, 2」「ドイツ語文化圏 研究 1, 2」 「フランス語文化圏研究 1, 2」 「比較文化論 1, 2」 「文化交流論 1, 2」 「異文化コミ ュニケーション論 1, 2」 「環境倫理学 1, 2」 「倫理思想史 1, 2」 「比較宗教思想 1, 2」 「現代哲 学 1, 2」を展開科目として位置づけている。さらに、 「文化論演習 1A, 2A, 3A, 4A, 5A, 6A, 1B, 2B, 3B, 4B, 5B, 6B, 1C, 2C, 3C, 4C, 5C, 6C, 1D, 2D, 3D, 4D, 5D, 6D, 1E, 2E, 3E, 4E, 5E, 6E, 1F, 2F, 3F, 4F, 5F, 6F, 1G, 2G, 3G, 4G, 5G, 6G, 1H, 2H, 3H, 4H, 5H, 6H, 1I, 2I, 3I, 4I, 5I, 6I, 1J, 2J, 3J, 4J, 5J, 6J, 1K, 2K, 3K, 4K, 5K, 6K,1L, 2L, 3L, 4L, 5L, 6L」を演習科目 としている。 国際関係コースでは、「国際関係入門」を入門科目とし、 「マーケティング論 1, 2」 「国際 政治論 1, 2」 「国際経済論 1, 2」 「国際法 1, 2」を基幹科目とし、 「国際関係史 1, 2」 「経済史 1, 2」 「経営史 1, 2」を展望科目としている。また、 「地域統合論 1, 2」 「国際文化学 1, 2」 「国 際機構論 1, 2」 「国際人権論 1, 2」「国際協力論 1, 2」「平和学 1, 2」「環境経済学 1, 2」 「経 営情報論 1, 2」 「言語コミュニケーション論 1, 2」 「メディア・コミュニケーション論 1, 2」 「メディア英語 1, 2」 「北米社会・環境論 1, 2」 「北米社会論 1, 2」を展開科目に位置づけて いる。さらに、 「国際関係演習 1A, 2A, 3A, 4A, 5A, 6A, 1B, 2B, 3B, 4B, 5B, 6B, 1C, 2C, 3C, 19 4C, 5C, 6C, 1D, 2D, 3D, 4D, 5D, 6D, 1E, 2E, 3E, 4E, 5E, 6E, 1F, 2F, 3F, 4F, 5F, 6F, 1G, 2G, 3G, 4G, 5G, 6G, 1H, 2H, 3H, 4H, 5H, 6H」を演習科目としている。 ミッション・ステートメントを受けて、共生社会学科は、「共生社会という新しい視点か ら、ヒューマン・サービスに関わる人材を育成」することを目的としている。共生社会学 科は、共生とケア・コースの 1 コースのみである。 共生とケア・コースでは、 「共生とケア入門」を入門科目とし、 「共生福祉と倫理 1, 2」 「共 生の哲学 1, 2」をそれぞれ必修の基幹科目とし、 「キリスト教社会事業史 1, 2」を展望科目 としている。また、 「倫理思想史 1, 2」「環境倫理学 1, 2」「生命倫理学 1, 2」「死生学 1, 2」 「福祉心理学 1, 2」 「医療と福祉 1, 2」 「環境と健康 1, 2」 「コミュニティと共生社会 1, 2」 「ジ ェンダーと共生社会 1, 2」 「共生社会と家族ケア 1, 2」「共生社会と高齢者ケア 1, 2」「共生 社会と障害者ケア 1, 2」 「NGO・NPO 組織起業論」 「福祉経営論」 「国際福祉論」 「国際人権 論 1, 2」「地球環境論」 「社会・環境政策 1, 2」「平和学 1, 2」 「国際協力論 1, 2」「文化交流 論 1, 2」「言語コミュニケーション論 1, 2」「ケア・コミュニケーション論 1, 2」「異文化コ ミュニケーション論 1, 2」 「メディア・コミュニケーション論 1, 2」 「共生とケア・スペシャ ル・トピックス 1, 2」を展開科目として位置づけている。さらに、 「福祉入門演習」 「共生と ケア演習 1A, 2A, 3A, 4A, 5A, 6A, 1B, 2B, 3B, 4B, 5B, 6B, 1C, 2C, 3C, 4C, 5C, 6C, 1D, 2D, 3D, 4D, 5D, 6D, 1E, 2E, 3E, 4E, 5E, 6E, 1F, 2F, 3F, 4F, 5F, 6F, 1G, 2G, 3G, 4G, 5G, 6G, 1H, 2H, 3H, 4H, 5H, 6H, 1I, 2I, 3I, 4I, 5I, 6I, 1J, 2J, 3J, 4J, 5J, 6J」を演習科目としてい る。 これらの科目群に加えて、英語文化コミュニケーション学科に高校英語科・中学英語の 教職課程が設置され、国際文化学科に高校公民科・中学社会の教職課程が設置され、共生 社会学科に社会福祉士国家試験受験資格課程が設置され、それぞれ実践的な教育にも力を 入れている。 さらに共通基礎科目の展開として、専門科目の他に共通専門科目(キリスト教史 1, 2、音 楽・音楽史 1, 2。並びに上級外国語科目、詳しくは本章(6)、参照)とエクステンション 科目( 「初等英語教育:理論と実践」 「コリア語入門 1, 2」 「コリア語中級 1, 2」 「イタリア語 入門 1, 2」 「イタリア語中級 1, 2」 「留学生のための初級英語 1, 2」 「日本語教育入門 1, 2」 「日 本語学 1, 2」、 「新約聖書緒論 1, 2」 「新約ギリシア語入門 1, 2」「新約聖書神学 1, 2」「組織 神学 1, 2」以上の 4 科目は 3 年周期で開講、 「教養スペシャル・トピックス A, B, C, D」)を 開講している。 以上のように、それぞれの学科の教育目的に従って体系的に専門科目の授業科目が位置 づけられている。このようにして「広く知識を授けるとともに、深く専門の学芸を教授し、 知的、道徳的及び応用的能力を展開させる」 (学校教育法第 52 条)という大学の目的に適 合するように配慮している。 20 〔点検・評価の結果〕 少人数教育ではあるが、リベラル・アーツ教育に従って「専門の学芸」を提供するため に多様な学問領域をカバーし、古典的で基礎的な学問領域と現代のニーズに応じて展開し た学問領域のバランスを取るように工夫している。また、体系的な知識を得る講義とさま ざまな知識を繋げ問題解決の糸口を探る演習とのバランスを取るように、多様な演習を提 供し、それぞれが単位となるように工夫している。 〔改善の具体的方策〕 リベラル・アーツ教育を実践するために、多様な科目を原則として毎年開講しているが、 非常勤講師の講義が 5 人未満の履修者の場合はその年度は閉講するという申し合わせがあ る。専任教員の講義や演習であれ、それぞれの科目の履修者数に応じて、隔年開講にした り閉講したりすることも、それぞれの学科や教務委員会並びに教育と財政委員会などで検 討する必要がある。 (5)一般教養的授業科目の編成における「幅広く深い教養及び総合的な判断力を培い、 豊かな人間性を涵養」するための配慮の適切性 〔現状の説明〕 一般教養的授業科目は、本学では共通基礎科目として称され、専門科目への基礎教育と しても位置づけられている。それは次の 7 群にグループ分けされている。 A 群 宗教と思想:「キリスト教学 1, 2」「哲学 1, 2」「人間学 1, 2」「科学史 1, 2」「文学 1, 2」 B 群 人間行動と歴史:「心理学 1, 2」「文化人類学 1, 2」「日本史概説」「歴史学」「考古 学 1, 2」 C 群 人間と社会:「政治学 1, 2」「経済学 1, 2」 「日本国憲法 1, 2」「社会学 1, 2」 D 群 情報とコンピュータ・サイエンス:「情報処理論 1, 2」「情報メディア論 1, 2」 「情 報管理基礎論 1, 2」 E 群 言語とコミュニケーション:外国語科目(詳しくは本章の(6)、参照) F 群 スポーツと健康:「スポーツ健康科学」 「スポーツ実習 1, 2, 3, 4」 G 群 思考と実践: 「基礎演習」 「ボランティア論」 「ホームヘルプ・サービス論 1, 2」 「ボ ランティア A, B, C, D, E, F」 「インターンシップ A, B, C, D, E, F, G」 「キャリア開 発 1, 2」「チャペル・アッセンブリ・アワー1, 2, 3, 4」 21 知育・徳育・体育というリベラル・アーツ教育の基礎科目として重要であるので、「基礎 演習」 (2 単位)の他に、共通基礎科目の中でもキリスト教主義教育の基礎科目( 「キリスト 教学 1, 2」 「ボランティア論」計 6 単位)とコミュニケーションのツールとしての外国語科 目(英語文化コミュニケーション学科と共生社会学科は英語、国際文化学科は英語・フラ ンス語・ドイツ語のいずれか、国際文化学科と共生社会学科の留学生は日本語にすること ができる。それぞれ 8 単位。ただし、共生社会学科は 2006 年度入学生から 4 単位)と情報 処理科目( 「情報処理論 1」または「情報メディア論 1」2 単位)並びにスポーツ( 「スポー ツ実習 1, 2」計 2 単位)が必修(合計 18 単位、ただし共生社会学科は 2006 年度から 14 単位)となっている。 〔点検・評価の結果〕 国際文化学科に高校公民科の教職課程を導入した関係で、2006 年度より共通基礎科目の B 群人間行動と歴史の「歴史学 1, 2」を「日本史概説」 「歴史学」に変更した。また、国際 文化学科に中学社会科の教職課程を導入する関係で、2007 年度より共通基礎科目の C 群人 間と社会に「地理概説」と「地理学」を新たに新設することが、教職課程委員会と FD・カ リキュラム委員会の協議と検討を経て教授会で承認された。 また、 「ホームヘルプ・サービス論 1, 2」は、ヘルパー2 級の資格が取れる科目であるが、 介護福祉士制度の変更に伴い将来は介護福祉士がヘルパー2 級の資格に代わるために開講 の基準が厳しくなり、その基準をクリアするための設備投資と資格獲得のメリットとデメ リットを勘案した上で共生社会学科での協議・検討の結果を受けて、2006 年度から休講に した。 「ボランティア A, B, C, D, E, F」「インターンシップ A, B, C, D, E, F」 「キャリア開発 1, 2」「チャペル・アッセンブリ・アワー1, 2, 3, 4」は、ボランティア活動はボランティア 委員会、民間会社や地方公共団体のインターンシップとキャリア開発は就職委員会、学校 でのインターンシップは教職課程委員会、チャペル・アッセンブリ・アワーはキリスト教 と教育委員会が、それぞれ広い意味でのソーシャル・サービスやインターンシップに準ず る概念で、単位を出す基準と評価基準を決め、単位認定の具体的な作業を行い、教務委員 会に原案を提出している。 〔改善の具体的方策〕 今後も「リベラル・アーツ教育」とは何か、という人間教育の理念に関係する研究を深 めると同時に、その理念を具体的に実現するカリキュラムについての検討が必要であろう。 (6)外国語科目の編成における学部・学科等の理念・目的の実現への配慮と「国際化等 22 の進展に適切に対応するため、外国語能力の育成」のための措置の適切性 〔現状の説明〕 本学の外国語教育は、建学の精神並びにミッション・ステートメントに掲げられる国際 主義に基づき、国際的教養人として異文化を理解し、世界の人々と連携していくために、 国際化の進む社会で何らかの貢献ができる外国語運用能力を持った人材の育成を目標とし ている。「教育を受けた人間像」として挙げられる「少なくとも1つの外国語を操ることが できる」人間を育てるとともに、「分析的・批判的に考え、明瞭かつ効果的に発言し、書く ことができ」、「異なる文化について、複眼的に見ることができる」という能力を養成する ことも外国語教育の目的と考えられている。 外国語プログラム上では、2001 年度の「自己点検・評価報告書」から大きく変わった点 として、次の 5 点を挙げることができよう。 ① 2004 年度より外国語プログラムにセメスター制を導入した。 ② 2004 年度の改組により、学部構成が「英語文化コミュニケーション学科」 「国際文化 学科」 「共生社会学科」の 3 学科構成となった。 ③ 2004 年度より「コリア語入門 1,2」 「コリア語中級 1,2」 (2005 年度から開講) 「イ タリア語入門 1,2」「イタリア語中級 1,2」(2005 年から開講)をエクステンショ ン科目として開講している。 ④ 留学生数の増加に伴い、留学生の必要に応えるカリキュラムが整えられてきた。 ⑤ 児童英語教育に対する社会的な関心に応えるべく、大学として取り組んできた。 以上の 5 点について、詳しく説明する。 第一に、本学の開講科目のほとんどが、2000 年度のカリキュラム改革によりセメスター 制を導入した。外国語プログラムはスキル別にレベル設定をした段階履修を実施していた ため、不合格となった学生のために再履修クラスをすべてのスキル、すべてのレベルで提 供することが難しく、2003 年度までは通年制で開講していた。しかし、他の開講科目との 協調、短期・長期留学希望の学生に不利にならないカリキュラムの設定、また後期にモチ ベーションが下がり、なかなか授業に出られない学生の前期成績評価を単位取得につなげ る必要などの視点から、外国語科目も一部「聴く」 「話す」では 1995 年度より完全セメス ター制を採用していたが、プログラム全体でセメスター制に移行することが決まった。そ の際、本学の外国語プログラムは、契約講師の雇用、共通テキスト、共通テストによる段 階履修など全国的にも先駆けてプログラムの充実を目指してきたこともあり、英語のコ ア・プログラムでは完全セメスター制を導入することになった。 そこで従来の「読む」 「書く」はそれぞれ 90 分週 1 回の開講だったが、2 科目を合わせて Unit A(読む・書く)とし、90 分週 2 回の開講とした。 「聴く」 「話す」を Unit B(聴く・ 話す)とし、これまでどおり 60 分週 3 回開講とした。レベルは基礎からレベルⅣまで設定 23 し、学期毎に次のレベルへと段階的に履修する構成とし、入学時から英語力の高い学生対 象に飛び級クラスと、不合格となり再履修する学生用の再履修クラスを毎学期提供してい る。以前に比べてきめの細かいクラス分けが必要となり、教員数確保が難しいため、コア・ コースは 3 年間かけるのではなく、2 年間ないし 2 年半で履修できるようになった。その分 オプション・コースを充実させることでコア・コースを補うという対策をたてた。2006 年 度の英語オプション・コースとして以下の科目を開講している。「翻訳Ⅰ1,2」「検定試験 準備コースⅠ1,2」 「検定試験準備コースⅡ1,2」 「インターネット英語 1,2」 「海外旅行・ 留学の英語 1,2」 「児童英語教育概論 1,2」 「児童英語教育実践:歌とチャンツ 1,2」 「ビ ジネス英語 1,2」 「映像で学ぶアメリカ文化 1,2」「コミュニケーション・スキルズ」 「読 む・書く:応用」 「アメリカーナ:知られざるアメリカ 1,2」 「グローバル・イシューズ 1, 2」「英語で学ぶ環境問題 1,2」「オンライン・アドバンスト・ライティング 1,2」 「英語教 採準備コース 1,2」である。また、試行錯誤を続けたプレースメント・テストであるが、 本学の学生に適したテストが見つかり、この 2 年間このテストを実施している。 日本語についても、英語と同じようにコア・コースのレベルをレベルⅠからⅣまでとし、 Unit A(読む・書く)と Unit B(聴く・話す)をそれぞれ 90 分週 2 回ずつ開講することにした。 またオプション・コースとして「日本事情 1,2」を開講し、留学生と日本人学生がさまざ まな社会事象について報告したり、討論したり、レポートにまとめたりしている。 フランス語、ドイツ語、中国語に関しては、非常勤講師に頼る部分が多く、完全セメス ター制を導入することが困難なため、フランス語とドイツ語はレベルⅠからⅢまでとして、 レベルⅠでは「文法1,2」を 90 分週 2 回、「読む・書く 1,2」「聴く・話す 1,2」をそれぞ れ 90 分週 1 回、レベルⅡで「文法 1,2」「読む・書く 1,2」「聴く・話す 1,2」をそれぞ れ 90 分週 1 回、レベルⅢでは「読む・書く 1,2」 「聴く・話す 1,2」をそれぞれ 90 分週 1 回ずつ開講することにした。中国語は選択外国語であるため、レベルⅠは「文法 1,2」 を 90 分週 2 回、レベルⅡとⅢはそれぞれ「読む・書く 1,2」「聴く・話す 1,2」を 90 分 週 1 回ずつ開講することにした。 第二に、学部構成の変更により、必修外国語の要件が変わった。2004 年度共生社会学科 の学生は英語の Unit A と Unit B(計 8 単位)を必修外国語として履修することが求めら れたが、2006 年度からは、福祉の勉強に専念できるように Unit A か Unit B のどちらかを 選択することとし、外国語の必修単位数は 4 単位(前・後期各 2 単位)となった。なお共 生社会学科の留学生は、日本語を必修外国語として履修することもできる。 第三に、留学生により本学のキャンパスも「国際化」してきていることと無関係ではな い。学生からの強い要望でコリア語とイタリア語の授業を 2004 年度から開講することとな った。しかし履修希望者数がまだつかめないことから、社会人も履修できるようにクラス を夕方から夜間の時間帯に設定して開講に踏み切った。履修希望者数が数年間にわたって 一定数以上いるようなら、外国語プログラムに加えることも検討するという前提で、パイ 24 ロット事業として始めたものである。 第四に、留学生の要望に応えて、英語を一から学べる「留学生のための初級英語 1,2」 を 2004 年度から開講したが、すでに 2002 年度から単位のつかない学習支援制度の一環と して、学生や教員による英語の入門クラスが持たれていた。しかし、2004 年度から単位化 することになり、この科目を履修した留学生は、次年度継続して基礎英語クラスを履修で きるようになった。また日本語を母国語としない人のための日本語教育に関心のある学生 を対象に、2002 年度より「日本語教育入門 1,2」を開講してきたが、留学生が本国に帰っ てから日本語を教える際に有効な日本語教育関連のその他の科目の整備も進行中である。 第五に、社会的に大きな関心を呼んでいる児童英語教育関連の科目設定である。これは 本学の標榜する「地域循環型英語教育」の一環として、2002 年度より近隣の小学校の依頼 を受けて、子どもたちに英語のゲームや歌を紹介して、遊び感覚で英語に触れてもらうた めに学生ボランティアを派遣してきた。これは小学校の昼休みを利用して、希望する児童 が大学生のお兄さん、お姉さんと一緒に英語で遊ぶという活動である。このような学生た ちがより良い活動をできるように支援する目的もあり、2003 年度から児童英語教育の専門 家を招いて「児童英語教育概論 1,2」 「児童英語教育実践:歌とチャンツ 1,2」を開講し、 エクステンション科目として、主に現役の小学校教諭を対象に「初等英語教育:理論と実 践」を前期に開講している。 〔点検・評価の結果〕 まず初めに、外国語プログラムのセメスター制への移行はスムーズであり、特に英語、 日本語では、週に 2 回、3 回の授業であるため、効果的な授業が行われている。フランス語、 ドイツ語、中国語は再履修クラスがないため、不合格の学生は次の学期を待たなければな らない。そのため、担当教員は個人的に補習するなどしており、学生の単位修得にこれま で以上に授業外での支援が必要となってきている。しかし、どの外国語を履修するにして も、セメスター制が導入された結果、短期・長期留学に出かけた学生にとっては、留学か ら戻ってきた時にロスがなく、効率的に履修できるという利点は特筆すべきであろう。 反面、コア・コースがおおむね 2 年次で終わるため、3・4 年次に学生が履修できる科目 数をある程度高いレベルまでそろえなければならない。オプション・コースは充実してき たが、それでも高いレベルの学生を対象としたコースをさらに増やすことが今後の課題で ある。 なおコリア語、イタリア語については、まだエクステンション科目から正規の外国語プ ログラムに移すには至っていない。今後しばらく履修者数の動向を見ていく必要がある。 最後に、小学校での英語教育には賛否両論あるものの、すでに総合学習の時間に英語を 取り入れている学校は多い。1 学期に数回しか会えない ALT に頼るのではなく、子どもた ちのことを一番良く知っている担任の先生が英語の授業を担当することで、英語学習にも 25 多くの意味を見出すことができるであろうと考えられる。児童英語関連の科目では、学生 だけではなく、地域で児童に英語を教える社会人や、小学校の先生方など、開講以来毎年 多くの社会人が科目等履修生として受講している。本学の学生たちとっても、そのような 社会人と一緒に協同的に学ぶということで、知識のみならず、授業に対する姿勢なども含 めて、良い学びの時となっている。 〔改善の具体的方策〕 2002 年度の「大学基準協会の加盟判定審査結果」では、 「外国語教育のレベル別のカリキ ュラム編成、ネイティブ・スピーカー担当の授業比率の高さ、設けられたコースの多彩さ など」や「英語教育について、ディプロマ制度を導入し、学生の勉学意欲を高めようとし ている点」が高く評価された。反面「契約講師の授業担当数が非常に多いため、労働法上 の問題が生じないかどうか、慎重に検討することが望まれる」という参考意見も頂いた。 本学の契約講師の労働時間は最大週 20 時間であり、90 分の授業に換算して 13 コマであ る。これは労働基準法に抵触する時間数ではないが、セメスター制が導入されてからは、 契約講師の担当時間数は 11 コマとなっており、また学生の TA の補助が入り授業に遅れが ちな学生の支援をするため、契約講師の負担感はある程度少なくなっている。他大学の契 約講師採用の条件を調べてみたが、本学の担当コマ数は少なくはないが、非常に多いわけ ではないことが明らかになっている。 これまでどおりレベル別のカリキュラムで、どの学生も Unit B はネイティブ・スピーカ ーの授業に参加できるというシステムに変わりはない。しかし、入学者の質的変化もあり、 来年度は英語の Unit A の基礎レベルは 2 クラス開講し、留学生で英語を一から始める者に は TA をつけて、学習の支援を図ることが決定している。英語に限らず、人とのコミュニケ ーションがうまく取れない学生が増えている。特にペア活動、グループ活動の多いコミュ ニケーション主体のクラスでは、このような学生をどのように巻き込むかで教員の多くが 頭を悩ましている。TA の学生の助けをうまく借りることも一つだが、今後は外国語プログ ラムのあり方についても検討の余地があるであろう。 また学生の英語力をさらに伸ばす工夫が必要である。TOEIC の IP 受験は毎年 2 回ずつ 実施しており、英語自習用のソフトもそろえてある。特に英語文化コミュニケーション学 科の学生の英語力を、ある程度保証できるようなシステムやカリキュラムを考えていくこ とが必要である。 学科の専門科目とうまく連動させて、 「外国語を学ぶ」と「外国語で学ぶ」が車の両輪の ようになって進んでいけるように、その時々の必要に合わせて外国語プログラムを常に見 直していくことが今後も必要であろう。 26 (7)教育課程と開設授業科目、卒業要件単位に占める専門教育的授業科目・一般教育的 授業科目・外国語科目等の量的配分とその適切性、妥当性 〔現状の説明〕 本学の教育課程で、卒業要件単位は 124 単位に定められている。その内訳は、以下の通 りである。 共通基礎科目 44 単位以上(必修 18 ないしは 14 単位を含む) 学科専門科目・共通専門科目 50 単位以上(コース科目 20 単位以上を含む) 自由科目 30 単位 合計 124 単位以上 「幅広く深い教養及び総合的な判断力を培い、豊かな人間性を涵養」するために、それ ぞれの学科とコースの壁を低くするように単位が設定されている。すなわち、卒業用件 124 単位の中で、専門科目の各コースの最低履修単位数を 20 単位とし、各コースを含めた学科 専門科目と共通専門科目の合計の最低履修単位数を 50 単位として、幅広く学ぶことも深く 専門を学ぶこともできるように選択の幅を広げている。また自由単位 30 単位を設定して、 自学科の科目でも、他学科の科目でも、共通基礎の科目でも、エクステンション科目でも、 協定した他大学の特別聴講制度の科目でも、留学で修得した海外の高等教育機関の単位で も読み取れるようにし、幅広く深い教養と総合的な判断力を育成することができるように 配慮している。 原則として教職課程の単位や社会福祉士国家試験受験資格課程の単位は、卒業要件単位 に含まれない。しかし、これらの課程を履修した場合に単位数が極めて高くなるので、卒 業要件単位に含めた科目や読み替えた科目により、単位数を多少低くする工夫をしている。 〔点検・評価の結果〕 2006 年度の卒業生は平均 132.3 単位を修得して卒業している。また履修科目数は平均 68 科目程度である。120 単位台は 49.2%、130 単位台は 34.8%、140 単位台は 9.0%、150 単 位台は 4.5%、160 単位台は 0.8%、170 単位台は 1.5%である。また、教職課程を修了し教 職資格を取得した卒業生は平均 138.6 単位を修得して卒業している。極めて高い単位数で 卒業する少数の学生と平均値に近い単位数で卒業する大多数の学生に二分しているが、履 修科目を見るとそれぞれまんべんなくさまざまな科目を履修して卒業している傾向が見ら れる。 〔改善の具体的方策〕 27 さまざまな動機と背景と学力をもって入学してくるが、今後はこれらの多様な学生のニ ーズと学力に基づいて一人一人の個性を伸ばして実力をつけさせるために、教職課程や社 会福祉士国家試験受験資格課程を履修する学生と履修しない学生に大きくコースを分けて、 両者の必要に応じたカリキュラムの組み立てから就職に至るまでの一貫した学生の指導に あたることが必要になるであろう。 (8)基礎教育と教養教育の実施・運営のための責任体制の確立とその実践状況 〔現状の説明〕 本学の教育課程は、カリキュラムの本体である共通基礎科目・共通専門科目・学科専門 科目と、それに付設されている教職課程と社会福祉士国家試験受験資格課程並びにエクス テンション科目で構成されている。これらは一連の流れのように展開しており、本学は小 規模大学であり教員組織も小さいので、基礎教育と教養教育を含めて、当該年度のカリキ ュラムの実施・運営のすべては、教務委員会が統括している。そして、教務委員会で協議 された事柄が教授会に諮られる。また、新規の授業科目の追加や削除などのマイナーな変 更を含めて、近い将来のカリキュラムの変更や改革に係わる事柄のすべては、FD・カリキ ュラム委員会で協議された上で教授会に諮られる。 しかし、教務委員会や FD・カリキュラム委員会で協議される以前に、学科専門科目やそ れと関連する共通基礎科目や共通専門科目に関連する事柄は、それぞれの学科で協議され、 外国語科目に関連する事柄は外国語改革委員会で、情報処理に関する事柄はネットワーク 委員会で、教職課程に関する事柄は教職課程委員会で、社会福祉士国家試験受験課程に関 する事柄は社会福祉士養成課程委員会で、外国の高等教育機関への留学に関する事柄は国 際交流委員会で、「ボランティア」に関連する事柄はボランティア委員会で、「インターン シップ」に関連する事柄は就職委員会並びに教職課程委員会で、 「キャリア開発」に関する 事柄は就職委員会で、「チャペル・アッセンブリ・アワー」に関連する事柄はキリスト教と 教育委員会で協議される。そして、それぞれの委員会で出された原案を教務委員会や FD・ カリキュラム委員会が検討する。複数の委員会に跨る事柄は合同委員会を開催して協議す る。 〔点検・評価の結果〕 2006 年度には、地元の町との共催でスポーツ実習(セーリング)の新設に関するアンケ ート調査をすることにしたが、教務部長が関係者と協議して教務課の職員が調査して複数 の人々の意見を反映させ原案を作成して FD・カリキュラム委員会で検討した。このように どの学科にもどの委員会にも属さない事柄は、臨機応変に対応している。 28 〔改善の具体的方策〕 2000 年度と 2004 年度に専門科目の大幅なカリキュラム改革を行ってきた。次の 2009 年度のカリキュラム改革に備えて、それぞれの学科や外国語改革委員会で準備や協議を始 める必要がある。既にカリキュラム改革の準備に取り組みを始めた学科があるが、教育理 念を実現化する中長期計画を策定して、それに従っていくことが望ましい。 2.カリキュラムにおける高・大の接続 (1)学生が後期中等教育から高等教育へ円滑に移行するために必要な導入教育の実施状 況 〔現状の説明〕 後期中等教育から高等教育へ円滑に移行するために、本学は主に三つの取り組みを行っ ている。 第一に、大学入学以前の大学教育への予備教育として、本学は「高校大学連携プログラ ム」と称して 2001 年度から新発田市内の高校へ出前講義を提供し始めた。2002 年度には それが新潟県内の高校に広がり、2003 年度から新潟県下の高校全体に本格的に出前講義を 数多く出し始め、2004 年度からは需要と要望に応えて、出前講義専用のパンフレットを作 成し始めた。2006 年度のパンフレットには 34 人の専任教員(専任に準ずる特任教員を含 む)の高校生向きの 76 講座を出前講座として用意した。 第二に、1998 年度から入学者の約半数を占め、11 月下旬に合格が決まる推薦入試の合格 者に対して、また AO 入試を始めてからは AO 入試の合格者に対しても、大学教育への準 備教育として「敬和 100 冊の本」のブックリストの中から1冊選んで原稿用紙 5 枚程度の ブック・レポートを提出させている。 「敬和 100 冊の本」は、専任教員が選書し、毎年マイ ナーな変更を加えて改訂している。ブック・レポートは、取り上げられた本の選書者が添 削してコメントを加え、教務課が入学前に合格者に郵送して返却している。 第三に、リメディアル教育として、学生の学力低下と関連して、2000 年度からプレース メント・テストで英語の最低レベルの「英語Ⅰ」に達していない学生に対して英語の補習 クラスを設けて補習教育を行ってきたが、それを不名誉に感じる学生や出席しない学生が 出てきたので、2002 年度からは「英語Ⅰ」の下に「基礎英語」というレベルのクラスを設 けて単位化した。そこでは基礎的な学力を身につけるようにしている。 さらに、英語文化コミュニケーション学科の「英語学習の技術」 「書くための英文法 1,2」 は英語のリメディアル教育の要素が強く、国際文化学科の「国際関係史 1,2」は世界史のリ 29 メディアル教育の要素が強い。 〔点検・評価の結果〕 2005 年度は新潟県下の県立・私立高校 128 校の内 42 校(延べ 45 校)に対して出前講義 を提供し、2006 年度は 50 校に出前講義を提供した。出前講義の内容は、幅広いジャンル からの要望があるが、一部の教員には集中する傾向がある。 「敬和 100 冊の本」のブック・レポートでは、リストをジャンル分けし、幅広いジャン ルから選書されているが、いくつかのジャンルと特定の本に集中する傾向が見られる。 〔改善の具体的方策〕 出前講義の担当教員の偏りを少なくして、似たジャンルの教員とのローテーションをも っと進めるべきである。敬和学園高校の土曜講座への出前講座の提供を進めると同時に、 その内容や出し方を工夫すべきである。 「敬和 100 冊の本」の中でレポートに取り上げられた本の頻度を調査し、例えば過去 5 年間で取り上げられなかった本は入れ替えるなどの対策を取るべきであろう。 リメディアル教育に相当する科目の内容を点検し、履修者数の統計を取ってその効果な どを計るべきである。 3.インターンシップ、ボランティア 〔現状の説明〕 本学では、就職活動を控えた 3 年次生を対象に、夏休みを利用して 2 週間(受け入れ企 業の都合で 1 週間の場合もある)のインターンシップを実施している。2001 年度から導入 されたこの制度は、2002 年度から単位化されるようになった。インターンシップ期間に応 じて、2 週間の場合は 2 単位、1 週間の場合は 1 単位が認定される。認定については、イン ターンシップ後に提出される企業からの「評価表」 、学生が提出する「レポート」に基づい て判定資料を就職委員会が作成し、教務委員会で決定される。 学生に対する周知は、3 年次生向けの「キャリア開発 1,2」の授業で行い、希望者を募る。 希望者に対しては、インターンシップ・ガイダンスにおいて大学が独自に作成した『イン ターンシップの手引き』に基づき、インターンシップの流れや注意事項を説明している。 学生の希望により、新規の派遣先を開拓するのも就職指導室の仕事となっている。 年度別の派遣企業等と派遣学生数については以下の表のとおりである。2004 年度に派遣 学生数が減少したが、徐々にその数は伸びてきている。企業等の業種も公務、金融業、宿 泊業、卸・小売業、サービス業、製造業と多岐に及び、派遣企業もわずかながら増加して 30 いる。 インターンシップ派遣先一覧 2001 年度 2002 年度 2003 年度 2004 年度 2005 年度 2006 年度 派遣先 (財)新潟県国際交流協会 ― ― ― ― 4 4 新発田市役所 3 ― ― ― 1 2 聖籠町役場 2 2 1 2 1 ― 新潟市役所 ― ― ― ― ― 2 ㈱第四銀行 ― 2 2 2 2 2 ㈱新潟グランドホテル ― ― 1 2 4 3 ㈱ホテル新潟 ― 2 1 ― ― 2 ― ― ― ― 1 ― 一正蒲鉾㈱ ― 1 1 ― ― ― ㈱キューピット ― 2 7 2 2 3 ㈱滝沢印刷 ― ― ― ― ― 1 ㈱新潟ダイハツモータース ― ― ― ― ― 1 日旅サービス㈱ ― ― ― ― ― 1 ㈱ハードオフコーポレーション ― 1 1 ― 1 ― 企業数 2 6 7 4 8 10 参加者 5 10 14 8 16 21 長岡都市ホテル経営㈱ (長岡グランドホテル) 〔点検・評価の結果〕 インターンシップについては、アルバイトとインターンシップの違いを十分説明はする が、インターンシップ導入当初は、まだその意義を理解する学生は少なかった。しかし、 徐々にその重要性が認識されるようになり、2006 年度は希望者全員に対する受け入れ先が 確保できず、断念する学生が出たほどだった。就職活動を目前にしながらも、就職する実 感が持てず、自分に合った業種・職種が分からずに苦悩する学生は増加傾向にあり、就業 体験を通して何かきっかけをつかみ取りたいという思いや、インターンシップ体験者の体 験談がインターンシップ希望者の増加につながっていると思われる。 インターンシップでは、各企業での業務について実体験を通して学ぶことができる一方、 実社会で多くの社会人と接することにより、働くことに対する忍耐力や責任感を養い、自 己評価・自己認識を深めることができるメリットがある。インターンシップを体験した学 生には、こうした点での成長が明らかに見て取れる。 31 ほとんどの学生は希望する派遣先を、過去のデータから選択するため、派遣先の企業は ほぼ毎年固定され、当然のことながら受け入れ能力を超えれば、インターンシップを断ら れることになる。2006 年度は、新規の企業を希望する学生があり、受入先が拡大された。 学生にはこうしたチャレンジ精神を望みたい。 〔改善の具体的方策〕 インターンシップに参加する学生数を今後も着実に増やしていく必要がある。そのため には、 「キャリア開発」のインターンシップ説明会において、体験談を組み込むなど学生に インターンシップの意義を分かりやすく伝えることが効果を上げるだろう。 一方、派遣先企業の拡大を目指して、就職委員会・就職指導室は日常的に企業と接触す る際に、インターンシップ実施に対する企業の姿勢を確認し、そのリストを学生に開示す るというのも一つの手だてとなろう。 なお、ボランティアについては第 17 章を参照。 4.履修科目の区分 (1)カリキュラム編成における、必修・選択の量的配分の適切性、妥当性 〔現状の説明〕 2004 年度改定のカリキュラムでは、共通基礎科目の卒業要件 44 単位のうち、20 単位(共 生社会学科 2006 年度入学生は 16 単位)が必修科目である。共通専門科目・学科専門科目 の卒業要件 50 単位のうち、英語文化コミュニケーション学科では必修 18 単位、国際文化 学科では必修 14 単位、共生社会学科では 2006 年度入学生必修 20 単位、2004・2005 年度 入学生必修 18 単位である(いずれも選択必修を含む) 。従って卒業要件 124 単位のうち必 修科目は、英語文化コミュニケーション学科では 38 単位、国際文化学科では 34 単位、共 生社会学科 2006 年度入学生は 36 単位、2004・2005 年度入学生は 38 単位である。 〔点検・評価の結果〕 本学は 1991 年開学以来、1995 年、2000 年、2004 年にカリキュラム改革を行ってきた が、必修科目(選択必修を含む)は一旦減少した後、増える傾向にあると言える。これは、 一旦は履修上の自由度を高めることを重視したが、その後、大学での学びの基礎としての 必要性の認識、本学での学びの特徴を出すこと、専門分野の学びの特徴を出すこと、アド バイザーが学生にきめ細かく対応していくこと等のために、必修科目を設置してきたこと 32 による。 共通基礎科目では、従来からの「キリスト教学 1,2」、外国語科目((6) 、参照)、「スポ ーツ実習 1,2」に加え、「基礎演習」及び「ボランティア論」を 2000 年に(「基礎演習」に ついては、 (3) 、参照) 、情報処理科目を 2004 年に必修とした。情報処理科目については 「情報処理論 1」 (初習学生向け)または「情報システム論 1」 (経験者向け)の選択必修と した。 「情報システム論 1」は 2006 年度入学生からは「情報メディア論 1」と科目名称を変 更した。 2000 年に各学科にコースを設置し、以来各コースの「入門科目」と「演習」が必修であ る。2000 年度カリキュラム改革では、演習は、2 年次履修の「演習 1」 「演習 2」のみが必 修で、3 年次の「演習 3」 「演習 4」は選択であったが、2004 年度改革では「演習 1」 「演習 2」「演習 3」「演習 4」を必修とし、4 年次履修の「演習 5」 「演習 6」を選択科目として新 設した。これは、専門分野の学びを深めるだけでなく、アドバイザーである演習担当者が 学生をきめ細かくみていくことをめざしたものである。 英語英米文学科は 2004 年度に英語文化コミュニケーション学科と名称変更し、英米文化 コースとコミュニケーション・コースの 2 コースとなったが、コースにかかわらず英文法 科目と文学史科目は必修とすることとした。英文法科目は「書くための英文法 1,2」 (1 年次) または「中級英文法 1,2」 (2 年次)の選択必修とした。 「書くための英文法 1,2」は基礎英 文法という位置づけで、「中級英文法 1,2」が標準レベルととらえている。英語を専攻する 学生でも英語力にはかなりの幅があるため、力のない学生には 1 年次から「書くための英 文法 1,2」を履修させ、合格したら「中級英文法 1,2」も履修するよう勧め、力のある学生 には「中級英文法 1,2」のみでよいと指導している。 (「力のある」とは、おおよそ英語プレ ースメント・テストでの上位者をいう。)英語教職課程履修者には「中級英文法 1,2」を必 修と指定している。文学史科目は、文学を通して文化や歴史を学ぶ科目と位置づけ「イギ リス文学と歴史 1,2」 「アメリカ文学と歴史 1,2」とし、このいずれかを選択必修とした。 国際文化学科のカリキュラムについては、2002 年度大学基準協会加盟判定の際、 「選択の 自由を保障するあまり、やや自由度が高すぎるように思われる。科目の必修化についての 検討が望まれる。」との参考意見が示された。これを受けて、2004 年度カリキュラム改革で は、学科専門科目に次のような選択必修を設けた。すなわち、比較文化コースにおいては 「日本文化論 1,2」 「アジア文化論 1,2」 「ヨーロッパ文化論 1,2」から 1 種類、国際関係コー スにおいては「マーケティング論 1,2」 「国際政治論 1,2」「国際経済論 1,2」 「国際法 1,2」 から 1 種類を選択必修とした。 共生社会学科は 2004 年度開設の福祉系学科で、科目の新設や履修年次変更等の微調整を しながら進んできている。 「共生福祉と倫理 1,2」 「共生の哲学 1,2」が当初より必修である のは、 「ケアの心」を大切にし、 「ケアの本質」「ケアの倫理」という視点で共生社会のあり 方を学ぶという、この学科の特徴を表すものである。これに加え、2006 年度入学者より「福 33 祉入門演習」を 1 年次後期の必修として新設し、早くから福祉分野を学び始めるようにし た。 〔改善の具体的方策〕 共生社会学科は 1 年次後期の必修科目として「福祉入門演習」を設置したが、英語文化 コミュニケーション学科と国際文化学科には 1 年次後期に演習タイプの必修科目がない。 学生にきめ細かい対応をしつつ専門分野に導いてゆくために、両学科にも入門演習を望む 声はあるが、専任教員の担当コマ数等の事情により、実現していない。学科のめざすもの の実現に向けて、専門科目全般を見渡したうえで、実現への方策を検討すべきであろう。 5.授業形態と単位の関係 (1)各授業科目の特徴・内容や履修形態との関係における、その各々の授業科目の単位 計算方法の妥当性 〔現状の説明〕 授業形態は講義、演習、実習に分けられる(各形態の授業科目の特徴・内容について、 詳しくは「授業形態と授業方法の関係」 、参照) 授業科目の単位計算法については、学則 21 条で 1 単位の履修時間を教室内及び教室外を 合わせて 45 時間としている。そして「講義及び演習については、1 時間の授業に対して 2 時間の教室外学修を必要とするものとし、15 時間の講義をもって 1 単位とする。ただし、 外国語科目等講義の種類によっては 2 時間の授業に対して 1 時間の教室外学修を必要とす るものとし、30 時間の講義をもって 1 単位とすることができる。」 、実習及び実技について は、45 時間の実習をもって 1 単位とすると定めている。 1 年の授業暦は前期 15 週、後期 15 週で構成される。2000 年度から卒業論文以外のすべ ての科目が各学期完結のセメスター制をとるようになったので、90 分授業週 1 回の講義・ 演習科目は 2 単位である。外国語科目には、90 分授業週 2 回で 2 単位のもの(英語「Unit A(読む・書く)」 、フランス語・ドイツ語・中国語の「I-文法 1」 「I-文法 2」 、日本語「Unit A(読む・書く) 」 「Unit B(聴く・話す)」)、60 分授業週 3 回で 2 単位のもの(英語「Unit B(聴く・話す)」) 、90 分授業週 1 回で 1 単位のもの(前記以外)がある。スポーツ実習は 90 分授業週 1 回で 1 単位、卒業論文は通年履修で 6 単位に設定されている。 通常の授業科目以外で単位認定を行っているものがいくつかある。 「インターンシップ」 は実習量 1 週間で 1 単位、2 週間で 2 単位を認定する。ボランティア活動は、その内容・ 活動時間により、 「ボランティア」として 1 単位または 2 単位認定する。海外留学は「異文 34 化研究」として単位認定する。短期海外留学(約 4〜5 週間)はプログラム内容により 3〜4 単位、長期海外留学(15 週間以上)は内容により 16 単位まで認定する。また、一般市民向 けのオープン・カレッジ(公開講座)のうち、指定したもの(本学で一定時間以上行われ、 学生にもぜひきいてほしいと思われるもの)は、受講しレポートを提出すると、 「教養スペ シャル・トピックス」として 1 単位認定している。 〔点検・評価の結果〕 単位の計算方法は学則 21 条に基づいて行われている。 「インターンシップ」や「海外留 学」など通常の授業科目以外のものもこれに基づいて単位数が計算されている。外国語科 目の単位数は講義・演習科目の半分であるが、予習・復習・課題提出など教室外の学修が 相当求められるので、講義・演習科目と同等の単位であるべきであるという意見もある。 〔改善の具体的方策〕 外国語科目の単位数は伝統的に講義科目の半分に設定されてきたが、これは実態に合わ ないという意見が、主として外国語科目の担当者から出ている。次のカリキュラム改革に おいては、協議すべきかもしれない。また、セメスター制の中で唯一の通年科目である「卒 業論文」の取り扱いを検討すべきであろう。 6.単位互換、単位認定等 (1)国内外の大学等と単位互換を行っている大学にあっては、実施している単位互換方 法の適切性 〔現状の説明〕 本学は県立新潟女子短期大学、新潟大学人文学部、新潟国際情報大学、放送大学と単位 互換に関する協定を結んでいる。学生は特別聴講学生として、協定を結んでいる大学・短 期大学の授業を履修し単位認定を受けることができる。本学はこれらの大学・短期大学に 対して、外国語科目、演習科目、非常勤講師担当科目以外のすべての科目について単位互 換を認めている。県立新潟女子短期大学は各学期約 20 科目を、新潟大学人文学部は各学期 約 20 科目を、新潟国際情報大学は各学期約 50 科目を単位互換科目としている。放送大学 についてはその 300 余りの開講科目の内、本学の科目と重複せず、また本学の科目を補う 約 110 科目を、本学の卒業要件単位として認定している。本学学生が単位互換科目で修得 した単位は、30 単位を限度として卒業要件となる単位として認められる。 県立新潟女子短期大学、新潟大学人文学部、新潟国際情報大学との単位互換制度では、 35 それぞれ検定料、入学金、授業料は徴収しない。放送大学の特別聴講学生として単位互換 科目を履修する場合は授業料を払い、単位を修得したときには本学の報償金規定に基づい て、授業料の半額を支給する。 〔点検・評価の結果〕 単位互換協定に基づいて、単位認定を受けた本学学生は、2002 年度 9 人 28 単位、2003 年度 12 人 54 単位、2004 年度 7 人 30 単位、2005 年度 2 人 4 単位、2006 年度 8 人 12 単 位である(表4、参照) 。また本学が上記大学・短期大学から受け入れた学生はこれまでに 3 人である。登録する学生は決して多くはない。また、放送大学については授業料を払うに もかかわらず、レポート提出にも至らない学生が見られるのは、自己管理をして学んでゆ くことの難しさであろう。しかし本学学生で単位互換をめざす者は毎学期とぎれることな く続いている。 〔改善の具体的方策〕 本学と県立新潟女子短期大学、新潟大学人文学部、新潟国際情報大学の間には距離があ り、これらの大学で授業を受けるためには、半日程度は本学の授業のない時間帯を確保し なければならない。多くの学生は 3 年次までは本学での履修科目が多いため、単位互換科 目に関心をもった学生には、計画的な履修を助言するなどして、多様な履修の機会を生か すことをすすめていくことが必要であろう。 (2)大学以外の教育施設等での学修や入学前の既修得単位を単位認定している大学・学 部・学科等にあっては、実施している単位認定方法の適切性 〔現状の説明〕 学則第 17 条(編入学、再入学)第 4 号は「大学入学資格を有する者で、専修学校の専門 課程のうち、文部大臣の定める基準を満たすものを修了した者」と定めている。具体的に は専修学校に 2 年以上在学し、1,700 時間以上の学修を終えた者の編入学を認めている。 入学前の既修得単位については、 学則 26 条において「本学が教育上有益と認めるときは、 学生が本学に入学する前に大学または短期大学において履修した授業科目について修得し た単位を、本学に入学した後の履修により修得したものとみなすことができる。2 前項の 規定により修得したものとみなす単位数については、編入学の場合を除き、教授会の議を 経て、30 単位を限度として卒業要件となる単位として認めることができる。 」と定めている。 単位認定は、成績表とシラバス及び本人との面接に基づいて、本学の科目への読み替え を行い、教務委員会で審査した上で、教授会の議を経て行う。専修学校は単位制度を取っ ていないので、シラバスや時間割を検討し、単位制度が定める時間数に換算して単位認定 36 を行っている。 〔点検・評価の結果〕 専修学校からの編入学者は 2002 年度 1 人、2003 年度 3 人、2005 年度 1 人、2006 年度 2 人であった。新潟県は専修学校への進学率が高い土地柄であったが、近年大学進学率が高 まってきており、専修学校から大学への編入学が可能になったことで、専修学校進学者に も大学でさらに学修を深めようとする者は着実に出てきていると思われる。また入学前の 既修得単位についても、2004 年度に 2 人認定された。 〔改善の具体的方策〕 本学は編入学の制度も既修得単位認定の制度も整えており、短期大学卒業者のみならず、 専修学校卒業生、大学中退者にも対応できる。しかし、この制度は必ずしも広く知られて はいない。高校生向けの入試広報だけでなく、多様な学生を想定した広報の工夫が望まれ る。 (3)卒業所要総単位中、自大学・学部・学科等による認定単位数の割合 〔現状の説明〕 編入学生の既修得単位の認定は 62 単位までというのが原則だが、柔軟に対応している。 〔点検・評価の結果〕 過去に、大学の英文系の学科を卒業した学生が、教職課程を履修するために本学英語英 米文学科(当時)に編入学した際には、認定単位数が相当多くなったことがある。 〔改善の具体的方策〕 認定単位数の上限を定めて、本学での定まった履修単位数を求めるべきであろう。 (4)海外の大学との学生交流協定の締結状況とそのカリキュラム上の位置づけ 〔現状の説明〕 海外の大学等との協定に関して、1991 年の開学時から交流協定を結んでいる、アメリカ・ アイオワ州オレンジ・シティにあるキリスト教主義のノースウェスタン大学とアメリカ・ カリフォルニア州サンバナディーノにあるカリフォルニア州立大学サンバナディーノ校に 37 はそれぞれ夏期短期留学に学生を派遣している。また、カリフォルニア州立大学サンバナ ディーノ校には 2002 年度 2 人、2003 年度 5 人と 2006 年度 3 人の学生を夏期短期留学に、 ノースウェスタン大学には、2002 年度 3 人の学生を短期夏期留学と 2005 年度 1 人の学生を 長期留学にそれぞれ派遣した。 長期留学制度が導入された 2001 年に交流協定を結んだ、アメリカ・ワシントン州シアト ルにあるワシントン語学学校には 2002 年度 1 人の学生を夏期短期留学に派遣したが、その 後は派遣していない。また、オーストラリアにあるメルボルン大学ホーソン・カレッジと 中国・吉林省にある長春師範学院には、2002 年度以降学生を派遣していない。 2001 年度以降中国・台湾に目を向け、交流の接点を求めてきた結果として、2004 年度に 中国・内モンゴル放送大学外国語学院と台湾・長栄大学、2005 年度に中国・黒龍江東方学 院と湛江師範学院のそれぞれと交流協定を結んだ。 大学ではない高等教育機関として、イギリス・ボーンマスにあるアングロ・コンティネ ンタル英語学校には、2006 年度に 1 人を派遣したが、アメリカ・ハワイ州ホノルルにある アジア・太平洋交流研究所の英語プログラムには 2003 年度以降学生を派遣していない。 海外の協定校や協力校で修得した単位は、それぞれの大学で得た成績と単位に基づいて、 国際交流委員会で審議したうえで教務委員会に諮って、教授会の議を経て自由科目のカテ ゴリーの中で卒業要件単位として認定される。2001 年度から自由留学の単位も認定されて いる。 本学が海外の協定校や協力校との間で英語の留学プログラムに学生を派遣しているのは、 外国語科目の実践面を補い、体験に基づいた実践的な語学力を高めるためである(表 11、 参照) 。 〔点検・評価の結果〕 海外の協定校や協力校での短期留学、長期留学による単位認定については、本学の学則 第 25 条に基づき実施しているものであり、またこの学則第 25 条は大学設置基準第 28 条に 準拠していることから、この留学による単位認定は大学設置基準上も適切であると言える。 交流協定を交わしていない語学学校での短期留学や自由留学についても、本格の学則第 25 条の「他の大学、短期大学等」に含まれ、自由留学での語学学校もアングロ・コンティ ネンタル語学学校やワシントン語学学校と同様にその国の大学と密接な関係にあり、語学 プログラムを提供している。これらの点から考えると、本学が交流協定を交わしている協 定校とは組織的には異なるが、教育内容は変わらない。従って、これらの語学学校での単 位認定も妥当であると考える。 〔改善の具体的方策〕 本学は、開学時から本学プログラムによる英語の短期留学に力を入れてきたが、最近の 38 経済状況の変化や学生の意識の変化などもあり、ここ数年短期自由留学が増えつつある。 また、高度経済成長を背景に、中国を初めアジア諸国の国際社会への進出が目覚しく、 今後、我が国との交流もさらに深まることが予想されることなどから、以前からの協定校 に加えて、2004 年度と 2005 年度の 2 年間に、中国(黒龍江東方学院、内モンゴル放送大 学、湛江師範学院)と台湾(長栄大学)の 4 つの大学との教育交流協定を結び、教員と学 生の相互交流を可能にしたことは意義深い。今後、これら協定校との学生交流を併せて促 進していく必要がある。 さらに、国際交流委員会が短期留学生や長期留学生への事前指導を行っているが、留学 後の教育プログラムとの連携が十分に図られているとは言えない。 2001 年度から導入した長期留学制度では、留学先の授業料は、単位が修得された場合に 本学の各当該学期毎の授業料の半額を限度として奨学金として給付される。2004 年度から は、本学提供の長期留学プログラムに加え、長期自由留学の場合にもこの長期留学奨学金 制度を利用することができるようにした。 2000 年度から導入した自由留学制度は、アドバイザーと国際交流委員会との相談・指導 の下で進めてきた結果、短期では 2001 年度アメリカ 4 人、2002 年度オーストラリア 3 人、 2003 年度アメリカ1人、ドイツ1人、2004 年度アメリカ1人、オーストラリア1人、2005 年度アメリカ 2 人、ドイツ 2 人、イギリス 1 人、2006 年度アメリカ 2 人、オーストラリア 1 人、ドイツ 2 人、韓国 1 人、タイ 1 人の学生が自由留学をしている。これからも増える傾 向にある。長期では 2002 年度オーストラリア 3 人、2003 年度アメリカ1人、2005 年度ア メリカ 2 人、イギリス 1 人、アメリカ 1 人の学生が自由留学をしている。 短期留学・長期留学の経験者の成績を追跡調査し、アフターケアを考慮した対策を考え る必要がある。また、従来の短期留学は、アメリカやイギリスという欧米を中心とした英 語圏に偏っていたが、今後は費用の面でも欧米に比べ格安の中国、韓国、台湾などアジア 諸国への留学を積極的に図っていく必要がある。 また、本学が行う短期留学生や長期留学生への事前指導と、留学先の教育プログラムと の連携について、現状は十分とは言えず、今後、解決を図る必要がある。 <2002~2006 年度の留学者数> 1.短期留学 ①本学留学プログラム 02 年度 03 年度 04 年度 05 年度 06 年度 計 ノースウェスタン大学 3 0 0 0 0 3 カリフォルニア州立大学サンバナディーノ校 2 5 0 0 3 10 留学先 39 ワシントン・アカデミー・オブ・ランゲージーズ 1 0 0 0 0 1 アングロ・コンティネンタル英語学校 0 0 0 0 1 1 黒龍江東方学院 - - - 0 3 3 6 5 0 0 7 18 02 年度 03 年度 04 年度 05 年度 06 年度 計 アメリカ 0 1 1 2 2 6 オーストラリア 3 0 1 0 1 5 ドイツ 0 1 0 2 2 5 イギリス 0 0 0 1 0 1 韓 0 0 0 0 1 1 0 0 0 0 1 1 3 2 2 5 7 19 02 年度 03 年度 04 年度 05 年度 06 年度 計 ノースウェスタン大学 0 0 0 1 0 1 ワシントン・アカデミー・オブ・ランゲージーズ 0 0 0 2 0 2 メルボルン大学附属ホーソン英語センター 0 0 0 0 0 0 黒龍江東方学院 - - - 0 0 0 0 0 0 3 0 3 02 年度 03 年度 04 年度 05 年度 06 年度 計 アメリカ 0 1 0 2 1 4 オーストラリア 3 0 0 0 0 3 イギリス 0 0 0 1 0 1 計 3 1 0 3 1 8 計 ②自由留学プログラム 留学先 国 タイ 計 2.長期留学 ①本学留学プログラム 留学先 計 ②自由留学プログラム 留学先 7.開設授業科目における専・兼比率等 40 (1)全授業科目中、専任教員が担当する授業科目とその割合 〔現状の説明〕 2006 年度、本学の専任教員は 33 人、特任教授・講師 4 人、客員教授 2 人、非常勤講師 38 人である。担当科目数では全開設授業科目 300 コマ中、専任担当は 241 コマすなわち 80.3%である。それぞれの部門の専任担当率については、共通基礎科目 68.5%(必修・選 択必修は 71.4%)、共通専門科目 70.4%、英語文化コミュニケーション学科専門科目 93.8% (必修・選択必修は 100%)、国際文化学科専門科目 84.7%(必修・選択必修は 88.6%) 、 共生社会学科 92.9%(必修・選択必修は 100%)である。(表 3、参照) 〔点検・評価の結果〕 本学は小規模私立大学であるが、専任教員の担当率は高く、殊に学科専門科目の専任担 当率は非常に高い。 〔改善の具体的方策〕 国際文化学科専門科目の専任担当率は他の 2 学科よりは低いが、2007 年度には「マーケ ティング論」等を専門とする商学系の専任教員の人事を進める予定であるので、専門担当 率は高まることになるであろう。 (2)兼任教員等の教育課程への関与の状況 〔現状の説明〕 外国語科目には兼任教員が担当しているものが相当数あるが、教材や授業内容について 専任教員が常に連絡をとり、外国語プログラムの円滑な実施に努めている。殊に英語で複 数クラスを開講しているレベル(前期の I と III、後期の II と IV)では、授業の進度調整、 提出課題の決定等に、専任教員と兼任教員は協力し合っている。この他、教職課程では 2 年次の宿泊研修に参加する兼任教員もいる。 〔点検・評価の結果〕 専任教員だけではできない教育を兼任教員は担当している。兼任教員もまた本学のめざ す教育の一部を担う存在であるといえる。その多くは新潟地域在住だが、科目によっては この地域に適切な担当者がいないために、首都圏在住者等に依頼することもあり、その場 合は集中講義となることが多い。 41 〔改善の具体的方策〕 集中講義があまり多くなるのは望ましくない。科目によってはその必要性や専任教員の 配置をカリキュラム全体の見地から検討すべきであろう。 8.生涯学習への対応 (1)生涯学習への対応とそのための措置の適切性、妥当性 〔現状の説明〕 本学は、社会人入試制度、オープン・カレッジ等の公開講座や講演会、科目等履修生制 度、エクステンション・コースといったさまざまなプログラムによって地域の人々の生涯 学習に対応している。 まず社会人入試については、本学は 1991 年の開学当時から制度を持っており、現在まで に 5 人が入学した。ただし、社会人入試以外の入試で入ってくる社会人もいることも併せ て考えなければならない。 次に公開講座についても、開学当初から新発田市や新潟県下各地で行ってきた。これは 次第に制度を整え、広報委員会管轄のものは 2001 年度からはオープン・カレッジと名称を 変更して行っている。2006 年度には本学、新発田市、聖籠町、三条市において行った。ま た、各学科主催の講演会も行っており、英語文化コミュニケーション学科(2003 年までは 英語英米文学科)は 2001 年以来「中学校・高等学校英語科教員対象リフレッシュ・セミナ ー」を開催している。この他新入生歓迎学術講演会やチャペル・アッセンブリ・アワーな ど学内の行事を、一般市民にも開放している。(詳細は、第9章、参照) 科目等履修生制度については、「科目等履修生・聴講生等」 (第 4 章 7)の項、参照。 エクステンション・コースについては、学則第 56 条に「社会人の教養を高め、文化の向 上に資するため、本学にエクステンション・コースを開設することができる。」と定めてい る。2000 年に社会人のためにイブニング・コースを開設し、昼間の授業で行っている講義 科目のいくつかと英語ネイティブ・スピーカーによるオプション科目を夜(19:00-20:30) に提供し始めた。この後いくつかの科目が加わり、2004 年度には、本学学生の受講も念頭 に置き、カリキュラム本体に付帯する科目を昼・夜の開講時に関わりなく「エクステンシ ョン・コース」とすることにした。2006 年度には「初等英語教育:理論と実践」 「コリア語 入門 1」「コリア語入門 2 」「コリア語中級 1」「コリア語中級 2」 「イタリア語入門 1」 「イ タリア語入門 2」 「イタリア語中級 1」 「イタリア語中級 2」 「留学生のための初級英語 1」 「留 学生のための初級英語 2」 「日本語教育入門 1」「日本語教育入門 2」「新約聖書神学 1」 「新 約聖書神学 2」「キリスト教音楽 1」「キリスト教音楽 2」がエクステンション科目として開 42 講された。 〔点検・評価の結果〕 社会人入試での入学者数は多くはないが、入学者はいずれも意欲的であり、行動的で成 績も良い。成績最優秀者となった人もいる。このような人と共に学ぶのは他の学生にとっ てもおおいに刺激となっている。新潟県下はかつて大学が少なく、進学率も低かったが、 地元に学ぶ場があれば学びたいと思っている人はいると思われるので、ことあるごとに働 きかけをすべきだろう。 エクステンション科目の開講は比較的柔軟に決めることができるので、社会のニーズに 応えるものを提供できている。 〔改善の具体的方策〕 社会人として仕事をしながら学生として学ぶのも、定年退職後に学生となるのも、経済 的に負担が大きいこともあると思われる。そうした人たちを念頭に置いて、従来とは異な る修業年限や履修形態、学費による長期履修生制度を設定することが必要であろう。これ は、心の問題を抱えて少しずつしか授業には出られないが学びたいという気持ちは持って いる学生のためにも必要な制度であり、早期の実現が望まれる。 9.正課外教育 (1)正課外教育の充実度 〔現状の説明〕 本学では就職に対する学生の意識を高め、要望の高い資格を在学中に取得できるよう各 種資格取得支援講座を開講している。受講を促す目的で、大学が一部受講料を負担してい る。 2003 年度にまず Microsoft Office Specialist (Word・Excel)、秘書検定、簿記検定、販売 士検定講座を開講した。その後、受講者が集まる Microsoft Office Specialist (Word・Excel) と秘書検定講座は毎年前期、後期に開講する一方、漢字検定や色彩検定、福祉住環境コー ディネーター検定など、注目度の高い新しい講座を開講し、受講者数に応じて常時開講す べきか検討している。開講時間帯は休暇中や週末等に設定され、正課授業と重ならないよ う配慮されている。講師は専門学校等に依頼している。 開講初年度の延べ受講生数は 77 人とまだ少なかったが、2004・2005 年度とも 224 人と 大きく伸び、2006 年度も前期開講講座の受講生だけですでに 185 人に達しており、過去を 43 大きく上回ることは確実である。受講は一年次生から可能となっており、資格取得支援講 座は、就職に対する低学年からの意識付けの一環として位置づけられている。 年度別開講資格取得講座 2003 年度 2004 年度 2005 年度 2006 年度 Microsoft Office Specialist (Word) 16 59 65 74 Microsoft Office Specialist (Excel) 19 66 71 80 8 8 15 10 17 37 46 47 販売士検定講座(3 級) 19 7 13 ― 簿記検定講座(3 級)※1 17 ― ― 36 漢字検定講座(2・準 2 級) ― 21 5 ― 色彩検定講座(2・3 級)※2 ― 7 5 8 福祉住環境コーディネーター検定講座(3 級) ― 20 4 ― 秘書検定講座(準 1 級) (2・3 級) ※1 簿記講座のうち、2003 年度は 2・3 級講座として開講。 ※2 色彩検定講座のうち、2004 年度は 3 級講座として開講。 〔点検・評価の結果〕 企業からは、コンピュータを使いこなせること、マナー・常識が学生に要請されており、 Microsoft Office Specialist と秘書検定講座の開講はそれに応えるものである。受講者数の 増加は、そうした要請に対する学生の意識が高まってきたことの証でもある。また、年間 スケジュールを早期に作成し、学生への告知を文書で行ったことで、資格取得講座への学 生の意識を向上させることができた。2005 年度の Microsoft Office Specialist Word の合格 率は 85%、Excel は 93.9%、秘書検定 3 級の合格率は 90%、2 級は 76.9%と高いポイント を出しており、両講座の開講が成功であったことを物語っている。 他方、資格取得支援講座を開講して数年が経ち、試行的に開いた講座の中で受講者を集 められなかったものについては整理する必要がある。しかし、受講者数が安定しないもの の販売士検定や簿記検定は、講座としての重要性は高い。希望する職種がなかなかイメー ジできない最近の学生には、職種とこうした資格との有機的な関係が不明なため、受講へ の動機が希薄であると考えられる。 〔改善の具体的方策〕 3 年次生に対しては「キャリア開発 1,2」の授業において、1、2 年次生に対しては年度始 めの就職ガイダンスで資格取得の意味や、資格と職種との有機的な関係を丁寧に説明して 44 いきたい。 Ⅱ.教育方法等 1.教育効果の測定 (1)教育上の効果を測定するための方法の適切性 〔現状の説明〕 学生の教育上の効果を測定する方法は、外国語科目や情報処理科目やスポーツ系の科目 などのスキルを身につける科目と講義科目などの知識や価値観などを身につける科目や演 習科目などの情報を分析し発信する科目の間では、教育効果の測定方法はかなり異なるば かりでなく、その測定方法の妥当性も異なってくる。しかし、一般的に言って、教育効果 を測定したり、教育目標を測定したりするために、本学で極めて日常的に用いられている 方法は、以下の 3 点である。 第一に、出席である。スキル系の科目や演習科目では、出席は極めて重要であり、少人 数教育が徹底している上に授業形態の関係上、教員は学生の履修状況を把握しながら授業 を進めることができる。講義科目においても出席は重要であるが、授業形態も関係して学 生の履修状況の把握が難しい。そこで、講義科目では、出席だけでは、当該授業をどの程 度理解し、どの程度関心をもって参加したかが不明であるので、本学では、ミニッツ・ペ ーパーを用いて出席票の代わりとしている。 第二に、レポートである。学生の関心の持ち方や理解度を測る適切な方法の一つは、レ ポートである。これはスキル系の科目よりも、演習科目や講義課目において、より教育効 果や教育目標の到達度を測ることができる。ただし、最近ではインターネットの検索等に よる剽窃の問題が生じやすいのでレポート課題を工夫しなければならない。また、ミニッ ツ・ペーパーは用い方によれば、毎回その日の授業に関してミニ・レポートの役割を果た すことができる。 第三に、小テストを含めた試験である。試験は、学生の理解度や教育効果を測る端的な 方法である。スキル系の科目や講義課目の習熟度や理解度を測るのに向いているが、演習 科目の目標達成度や教育効果を測るには向いていない。また、スキル系の科目の試験と講 義科目の試験では、履修内容が異なるので、同じ時間を限った試験とは言え、問題の出し 方も異なってくる。 〔点検・評価の結果〕 45 本学では、一般的に言って、出席とミニッツ・ペーパーの内容とレポート並びに試験の 結果の複数の評価の組み合わせによって、教育効果や目標達成度が測られている。ただし、 外国語科目や情報処理科目などのスキル系の科目では、出席と小テストを含めた試験で評 価されることが多く、演習科目では出席と演習への参加度・貢献度並びにレポートで評価 されることが多い。 〔改善の具体的方策〕 担当科目の教員は、当該科目に関しては、教育効果や教育目標の到達度について考える ことは多いが、外国語科目や情報処理科目などのスキル系の科目を除くと、コースや学科 の教育目標の到達度や教育効果を考える機会はほとんどない。今後は各組織単位で教育効 果や教育目標の到達度を考えることが必要になってくるであろう。 (2)教育効果や目標達成度及びそれらの測定方法に関する教員間の合意の確立状況 〔現状の説明〕 本学の教育理念については、学則第 1 条の文言を現代化したミッション・ステートメン トにまとめられている。それに基づいて、各学科の教育の特徴と方針を述べたアドミッシ ョン・ステートメントを高校出前講座のパンフレットや大学案内に示している。また、担 当科目の教育効果や目標達成度を測る方法として、以下の合意が形成されている。 第一に、出席について、本学では成績評価の最低基準として出席 7 割を求めている。こ れは成績評価の基準として、教員に周知されている。しかし、この大学の基準を適用する か否かは、各教員に委ねられている。 第二に、レポートについて、本学では書くことに力を入れた教育を行うことについては、 教員間に共通認識がある。毎回授業の終わりにミニッツ・ペーパーを書かせて書くことに 対して抵抗をなくさせ、多くの講義課目とほとんど全ての演習科目では書くことを通して 考えることを促すために、レポートを要求している。また、少人数で双方向の演習教育を 通して学生を育て、書くことを通して考えることを促す教育を推進するために、演習科目 が非常に多く提供されている。 第三に、試験について、本学では外国語科目では小テストやノートや提出物の添削を経 て試験を行い、講義科目では試験でも小論文形式の試験が多く、ここでも単に学んだこと の記憶量で教育効果や目標達成を測ることを避ける暗黙の合意が形成されている。 〔点検・評価の結果〕 外国語科目や情報処理科目などのスキル系の科目やスポーツ実習や教育実習や社会福祉 46 現場実習などの実習系の科目では、出席に関しては厳格である。しかし、その他の大多数 の担当科目の教員も、大学の出席基準を採用している。また、多くの科目では、レポート はコメントを加え添削した上で学生に返却されている。試験の答案を返却する科目も見ら れる。 〔改善の具体的方策〕 外国語科目の中で履修者が最も多い英語では、プレースメント・テストによりクラス分 けをして、統一テストをしているので、読む・書く・聴く・話す、というジャンル毎の英 語力を点数化して履修以前と履修以後を比較することが可能である。しかし、講義科目や 演習科目では、教育効果の比較を点数化して測ることは容易ではない。だが、何らかの形 で履修以前と履修以後を比較する方法を考えて、合意の得られる形成的評価方法を検討す ることが必要であろう。 (3)教育効果を測定するシステム全体の機能的有効性を検証する仕組みの導入状況 〔現状の説明〕 各担当科目の教員は、当該科目の履修によって教育効果があれば単位認定をし、教育効 果がなければ単位認定をしない。カリキュラム全体で、教育効果の機能的有効性を検証す る仕組みとして、次のような程度の異なる幅広い段階的履修制度を導入している。 すなわち、外国語科目と情報処理科目などのスキル系の科目では、前の段階の履修を終 えると次の段階の履修に進み、低いレベルの段階の学習から高いレベルの段階の学習へ進 んでいく、段階的履修制度を採用している。また教育実習や社会福祉現場実習などの実習 系の科目も、基幹的な科目を履修していないと実習を履修できない、緩やかな段階的履修 となっている。また、カリキュラム全体でも、履修モデルによって想定された履修により 講義科目や演習科目は履修年次が定められており、指定された年次以上の学生が履修する 極めて緩やかな段階的履修となっている。 また、教職課程や社会福祉士国家試験受験課程のようにカリキュラム本体から別置され ている課程では、その課程の履修状況によって、その課程における教育効果を測ることは 比較的に容易である。 〔点検・評価の結果〕 段階的履修制度は外国語科目の場合には、厳格に適用されている。順次履修のレベルを 上げて学修する学生の教育効果は次第に上がっていると想定される。反対に、途中で履修 レベルの高い段階に進むことができない学生は、教育効果が上がっていないと想定される。 47 再履修者に対しては、英語では次の学期に再履修クラスが用意されているが、ドイツ語・ フランス語・中国語などのように履修者が比較的に少ない場合には再履修クラスは用意さ れておらず、次の年度にまで待って、再履修するか、学修を断念するかの選択が迫られる。 〔改善の具体的方策〕 学科やコースの科目の履修状況によって、教育効果を測る全体的なシステムについて検 討する必要があろう。 (4)卒業生の進路状況 〔現状の説明〕 本学卒業生の進路は、就職が主であるが、さらに進学(大学院、専門学校、留学)、その 他に分類される。 ① 就職 2001 年度から 2005 年度までの就職内定率は、86.4%、90.3%、92.9%、92.6%、96.6% となっている。一方、就職希望率は、74.4%、67.4%、72%、64.8%、77.2%と推移してい る。2005 年度の私立大学の平均就職内定率は 95.5%、就職希望率は 78.4%であるから、本 学の就職内定率は私立大学平均より若干上回り、就職希望率はやや下回っている。 2005 年度の主な就職先は、新潟県内に拠点を置く「卸売・小売業」36%、 「サービス業」 10.5%、つづく「製造業」と「情報通信業」を合わせると全体の 60%を超える。例年、パ ーセンテージに若干の動きはあるものの、上位業種は変わらない。この傾向は英語英米文 化学科と国際文化学科に共通しており、また男女間にも大差はない。 ② 進学・その他 就職以外では毎年少数ではあるが、大学院への進学者が出ている。2001 年度以降の進学 先は、新潟大学 5 人、宇都宮大学、国際大学、上越教育大学、姫路獨協大学である。 また、就職との関係で、専門的な能力を身につけるため、専門学校へ進学する者もある。 この他、公務員を目指して、在学中採用試験に不合格だった者が、卒業後も再受験する 例が増えてきている。 〔点検・評価の結果〕 依然として厳しい経済状況にあって、徐々に就職内定率を上げていった点は評価したい。 その背景には、2001 年度からのインターンシップの導入と 2002 年度からの単位化、2003 48 年度からの「キャリア開発 1,2」の単位化、及び各種資格取得支援講座の開講、個別指導 の強化など、就職委員会と就職指導室が改善案を次々に実行に移したことにある。 しかし、就職希望率は全国平均値を下回っている。自己の将来像を見いだすことができ ず、結果的に厳しい就職戦線の中で遅れをとる学生が増える傾向にある。目下、そうした 学生には就職指導室職員による個別指導で対応しているが、自己分析や自己表現の困難な どコミュニケーション能力の低い学生をどう指導していくかが問題となっている。しかし、 こうした能力の開発は、学生の進路選択に関わる指導を行う就職担当部署の守備範囲を超 えているように思える。 〔改善への具体的方策〕 就職内定率 100%を目指すために、インターンシップの推進、 「キャリア開発 1,2」のプ ログラムの体系的展開と内容の充実、資格取得支援講座への参加者の拡大に努めたい。 一方で、学生のコミュニーション能力、言い換えれば「人間力」をどう身につけていく かの問題は、就職担当部署の課題とせず、全学的教育の中で解決すべきであると考える。 2.厳格な成績評価の仕組み (1)履修科目登録の上限設定とその運用の適切性 〔現状の説明〕 2000 年度改定のカリキュラムより、履修登録単位数の上限は、1 学期につき 24 単位とし ている。これは GPA 制度と連動し、GPA3.0 以上のハイ・グレードを取った場合は、次の 学期の履修登録単位数を 27 単位まで上げることができ、GPA1.0 未満のロー・グレードを 2 学期連続して取った場合には、次の学期の履修登録単位数の上限を直前学期の登録単位数 の 2/3 に制限する。卒業要件に含まれない教職課程科目、社会福祉士国家試験受験資格課程 科目、他大学との単位互換科目、海外留学、ボランティア、インターンシップ、チャペル・ アッセンブリ・アワー、キャリア開発、エクステンション科目は履修登録単位数の上限に は含めない。 〔点検・評価の結果〕 履修登録単位数の上限が 1 学期につき上限 24 単位というのは、順調に単位修得していけ ば 3 年次修了時に卒業要件が満たされ、少し不合格の科目があっても 4 年間で卒業できる というところで、適切であると思われる。 1999 年度までは、履修登録単位数の上限は 1 年間で 52 単位であり、卒業年次にはこれ 49 は適用されなかった。したがって卒業年次で単位修得不足の学生が時間割上可能なあらゆ る科目を履修登録するというようなこともあったが、結局卒業延期となることが多かった。 現在の 1 学期につき上限 24 単位という規則はすべての学年に適用されているので、1 年次 のときから常に、目標とする修得単位数を意識させ、計画的に履修を行うよう指導してい る。卒業年次で単位不足の学生は、履修登録単位数の上限に含まれない科目を履修して単 位を取ろうとする傾向がある。 ロー・グレードが続くと履修登録できる単位数は減っていく。その場合アドバイザーと 相談の上、10 単位は登録することを認めている。履修登録単位の制限は、本来は成績が思 わしくない学生が少なめの科目を着実に学修することで立ち直るための方策である。だが、 4 年間で卒業できる可能性はなくなったとわかったときに学習意欲を失って退学に至る場 合もある。 〔改善の具体的方策〕 社会に対して卒業生の質を保障するためには、キャップ制度を維持すべきである。さま ざまな理由で履修が長引いて卒業が遅れる学生をじっくりと育てていくことが必要である。 (2)成績評価法、成績評価基準の適切性 〔現状の説明〕 成績評価については、学則 22 条において「履修した授業科目の成績評価は試験、レポー ト等の課題提出状況、出席状況等により行う」と定めている。 2000 年度改定のカリキュラムにおいて、成績は A+(100〜90 点)、A(89〜80 点)、B(79 〜70 点)、C(69〜60 点)、D(59〜0 点)の 5 段階評価とし、2004 年度改定のカリキュラムで も引き続き 5 段階評価を行っている。それぞれの成績評価基準については、A+は「要求さ れた程度を越えて優秀な成績」 、A は「平均を超えた優れた成績」 、B は「一応要求を満たす 平均的な成績」 、C は「合格と認められる平均以下の最低の成績」、D は「不合格とされた 成績、途中で放棄した科目、課題未提出又は試験を欠席した科目(0 点)」である。 「異文化研 究」(海外留学)や他大学との単位互換科目等は、合格と認定した科目は P、認定されなか った科目は F の評価とする。外国語科目で履修を免除された科目は M とする。 〔点検・評価の結果〕 成績評価は学期末試験、レポート提出の他、小テストや授業時の活動等によって行われ ており、授業には 70%以上の出席を求めている。各科目の成績評価の方法はシラバスに記 載されている。多くの教員が授業への貢献度ないしは参加度を評価するとしており、学ん 50 だ結果だけでなく、学ぶ過程を重視していると言える。 〔改善の具体的方策〕 学ぶ過程を重視し多元的な評価を行うことは、ほぼ教員全員に浸透しているといえる。 成績評価の分布については、次の項目で述べる成績評価分布状況の配布が効果をもつこと が望まれる。 (3)厳格な成績評価を行う仕組みの導入状況 〔現状の説明〕 本学では成績評価方法として GPA 制度をとっている。GPA とは A+(4 点)、A(3 点)、 B(2 点) 、C(1 点)、D(0 点)の評価点をそれぞれの修得単位数に掛けて、その総和を総 履修単位数で割った評価点の平均点である。 GPA3.0 以上はハイ・グレードと呼ぶ成績優秀者であり、GPA1.0 未満はロー・グレード と呼ぶ成績不良者である。先に述べたとおり、ハイ・グレードを取った場合は、次の学期 の履修登録単位数を 27 単位まで上げることができ、ロー・グレードを 2 学期連続して取っ た場合には、次の学期の履修登録単位数の上限を直前学期の登録単位数の 2/3 に制限する。 これらはアドバイザーの履修指導のもとで行われる。 GPA は奨学生の選定、特待生として入学した学生が 2 年次以降において特待生であり続 けるための条件、卒業式での表彰学生の選定や答辞を述べる学生の選定、入学式で歓迎の 言葉を述べる在学生代表の選定などに用いている。 〔点検・評価の結果〕 GPA が上記のようなことに使われるとき、成績評価の分布が科目によって極端に異なる のは望ましくない。そこで、すべての授業担当者に成績評価分布状況を通知することにし た。これは、各科目の科目コードが記され、担当者の氏名は記載されない様式で、担当者 本人は自分が行った成績評価の分布が他の教員と比べてどうであるかがわかる。これによ って、徐々に適正な成績評価分布ができることが期待されている。 〔改善の具体的方策〕 成績評価分布の均質化についてはさまざまな場で議論されてきているが、授業科目によ って履修者のレベルあるいは学ぶ姿勢は均一ではないので、すべての科目に同じ成績評価 分布を求めるのは難しい点もある。しかし、たとえば平均が 75 点くらいになるように評価 を調整するというのは、ひとつの方策である。 51 (4)各年次及び卒業時の学生の質を検証・確保するための方途の適切性 〔現状の説明〕 各学年末の標準修得単位数は、1 年次末 34 単位、2 年次末 70 単位、3 年次末 106 単位で ある。1 学期の履修登録単位数の上限が 24 単位であるので、3 年次末の修得単位数が 76 単 位未満であると 4 年間での卒業は困難となる。成績が思わしくない学生には、学期初めの 履修相談日にアドバイザーが指導を行っている。 〔点検・評価の結果〕 卒業予定者数に対する卒業者の割合は、2002 年度は 87.7%、2003 年度は 84.8%、2004 年度は 81.9%、2005 年度は 77.0%であった(表 6)。少なくともこの数年、割合は下がっ ている。1 学期の履修登録単位数の上限を 24 単位とし、ロー・グレード者の履修登録単位 数を制限する制度が適用された学生が初めて 4 年次になったのは 2003 年度である。卒業者 の割合が下がっているのがこの制度のためであるかどうかは、これだけでは断定できない が、4 年間で卒業できない仕組みはある程度質の確保として機能していると言えよう。 4 年間で卒業できないことになったとき、それで勉学を断念してしまう学生もいる。かつ てほとんどの科目が通年であったときは、1 科目不足でも 1 年分の学費が必要であり、その 経済的負担をしてまで卒業しようと思わない、もしくは経済的に無理であるという人もい た。すべての科目がセメスター制となった今は、残り単位が少なければ、1 学期の履修で卒 業できるようになった。実際に、前期卒業(9 月卒業)の学生が最近数人ずついる。 外国語科目のうち英語では、1995 年度から一定の科目の単位を修得した学生に、卒業式 時にディプロマ(修了証)を授与してきた。これを 2004 年入学者からは、一定の科目の単 位を平均 B 以上の成績で修得した学生にディプロマを、平均 A 以上の成績で修得した学生 にはディプロマ特別賞を授与することにした。単に必要な単位を修得すればよいのではな く、一定以上の成績であることを求めるということで、質の確保をめざすものである。 教職課程における「教育実習」や、社会福祉士国家試験受験資格課程における「社会福 祉援助技術現場実習」については、それぞれの条件をこなした学生にだけ履修させている。 これも質の確保である。 〔改善の具体的方策〕 さまざまな問題を抱えて一旦勉学がうまくいかなくなった学生がなんとか卒業をめざす とき、最低修業年限を超える期間については、励ましなど何らかの配慮があってもよいか もしれない。 52 3.履修指導 (1)学生に対する履修指導の適切性 〔現状の説明〕 1991 年の開学時からアドバイザー制度を導入しオフィス・アワーを定めて、学生がいつ でも教員に相談できる体制を整えてきた。シラバスはウェブでも公開され、学生にも利用 しやすくなっている。また、毎学期初めにアドバイザーと顔を会わせて履修相談や生活相 談を受けるために、学期毎に履修相談日を設けて、学生全員の面会時間を定めて履修指導 を行っている。欠席状況調査もセメスターごとに行い、欠席の多い学生については早期に 発見し、問題点を面談によって解決することの出来るシステムをとっている。 ① アドバイザー制度 本学のアドバイザー制度は、変化する学生に対応するため、学生と教員との「垣根」が 非常に低く設定されており、学生たちが何でも気軽に相談できる文字通りの“アドバイザ ー”制度となっている。2000 年度に導入された基礎演習に伴い、1 年次生のアドバイザー は、基礎演習の教員が担当する。授業負担の公平性の観点から、現在は、英語文化コミュ ニケーション学科から 3 人、国際文化学科から 5 人、共生社会学科から 4 人、そして 1 人 の特任教授がアドバイザーに任命されている。 1 年次生は 15 人程度を1クラスとし、基礎演習を必修科目として履修している。基礎演 習は毎年 13 クラスほど開講されており、 担当する教員が入学式の後で学生全員に紹介され、 学生本人が希望するクラスを選択する。また、基礎演習を担当しない教員の中から、サブ・ アドバイザー1 人がそれぞれの基礎演習に割り当てられている。1 年次生後期も、同一のア ドバイザー、サブ・アドバイザーが引き続き担当する。また、2 年次生以降は各学科の専門 演習科目が選択必修科目として開講されるため、それぞれの学生が選択した演習を担当す る教員がその学生のアドバイザーとなる(2 年次以降はサブ・アドバイザーを置かない) 。 アドバイザーは、学生一人ひとりについて、演習科目の授業やそれに関連する行事など のほか、履修上の細かな指導、学生生活上の問題点について相談を受ける。とくに 1 年次 生については、4 月下旬に開催される一泊の新入生オリエンテーションにおいて、学生たち が大学生活に上手く適応できるようにするために、アドバイザーを中心としてクラス別集 会を行い、学生相互及び学生と教員との意思疎通を容易にするよう担当の学生たちに働き かけている。さらに、敬和ボランティア・デーにおいて、福祉施設に学生を、基礎演習を 単位として派遣しているが、アドバイザーには、学生が福祉施設で行う行事の準備などを 53 本学のボランティア・センターとの連携で指導することが求められている。 留学生については、日本語契約講師が留学生の動向を把握しているほか、教務課に国際 交流係を設置し、留学生担当の職員を配置しており、査証に関連した事項や様々な相談に 乗っている。履修指導についてはアドバイザーが当たっている。 また、アドバイザーの教員には、欠席状況調査を通じて欠席・不登校が明らかになった 担当の学生について、呼び出して相談したり、必要と認められた場合は、学生係との連絡 の上、学生の住居・家庭を訪問したりして、個別に対応することが求められる。そのため、 アドバイザーには大学全体で新入生向けに実施している心理テストの結果を教務係で閲覧 することが許可されている(第 10 章、2、参照) 。 ② シラバスのウェブ公開 1993 年度からシラバスを作成しているが、2001 年度以降は教員がウェブ上で入力する形 となり、教員は 12 月下旬から 1 月初めにかけてセキュリティ上の所定の手続きを経て、各 授業のシラバスを入稿する。履修ガイダンスで、製本済みのシラバスを時間割と学生便覧 と共に各学生に配布している。また、シラバスは本学ホームページから自由に閲覧できる ようになっている。 ③ 履修ガイダンス 学生の履修指導について特に意を用いている。毎年、教務ガイダンスとよばれる履修ガ イダンスを学年の初めに行い、2 年次生以上は各学年別・学科別に学生を集めて、当該学科 の履修上の特徴・注意点などを詳細に説明している。学生の資質の変化に伴い、一度の説 明では徹底しない場合が多くなってきているが、この点については、履修相談日で個別に 対応することが可能である。 ④ 履修相談日・履修登録確認 2000 年度のセメスター制導入を機会に、 「履修相談日」と呼ばれる履修指導制度を導入し た。この日には各学生が、自分のアドバイザーもしくはサブ・アドバイザーである教員の 研究室を訪ね、自分の作成した履修時間割を教員と一緒に点検する体制となっている。こ の時に学生は履修登録に必要な履修登録票を受け取る仕組みになっている。また、その後、 学生が記入した履修状況をアドバイザーもしくはサブ・アドバイザーが最終確認を行うこ とが出来るよう、履修登録票は、学生本人ではなく、アドバイザーもしくはサブ・アドバ イザーが教務係に提出することになっている。こうした体制を敷くことにより、学期毎に それぞれの学生の学業成績や履修状況について細かい指導・相談を行うことが可能になっ た。また、こうした指導・相談を行う副次的な効果として、学生が家庭や学生生活で悩み を抱えているときに、問題化する前にそれを教員が把握できることがある。 54 また、履修登録後は、5 月の中旬に履修登録確認期間と呼ばれる期間が設けられ、そのと きに各学生は自分の履修登録を確認し、自分が登録したと思っている通りに登録されてい るかどうかを確認する。 ⑤ 欠席状況調査 1996 年から 1 年次生を中心に、現在は在学生全員を対象に、学生の出席状況を知るため に、「欠席状況調査」という調査を行っている。これは、共通基礎科目と外国語科目及び各 学科の必修科目の出席状況を調査し、不登校・長期の欠席などの問題を早期に把握し、学 生と面談して解決するという制度である。これは、前期は 5 月末、後期は 11 月末に、該当 科目を担当する教員に調査用紙を配布し、各教員が自分のクラスについて、欠席の目立つ 学生の名前などを記入して教務係に提出する。それらの学生のリストを受け取ったアドバ イザーは、該当する学生を呼び出して、面談を行い、その結果を所定の報告用紙に記入し て教務係に提出する。提出された報告書は、教務委員会でさらに検討し、それぞれの学生 についてより適切な履修方法を模索することもある。 〔点検・評価の結果〕 アドバイザー制度に関して、前回の自己点検・自己評価報告書において指摘された、基 礎演習を担当する教員の学科別の人数の不平等については、授業その他の業務負担の総合 的な判断に基づいて、適切に改善されている。 履修相談日に関して、前回の自己点検・自己評価報告書では「履修指導日」としていた が、教員が学生の履修上の相談に乗る、というやわらかなイメージを持たせるために、「履 修相談日」と改称した。 コンピュータでの履修登録に関して、本学は小規模校で、履修登録の際にアドバイザー とアドバイジーが顔と顔を合わせて円滑な関係を築くことを重要に考えているので、現段 階では導入すべきではないと考える。 欠席状況調査に関して、学業不振の学生について、適切な指導や相談を早期に行うこと ができる点で優れた制度であると言える。 〔改善の具体的方策〕 本学の履修指導は手厚いものになっており、そのための教職員の負担も大きいが、学生 の資質の変化を考えると、こうした制度はある程度やむをえないところがある。これまで も履修相談日などの指導で発覚した、履修登録上の問題や、学生生活のうえで問題を抱え る学生についての情報は、教務委員会では取り上げられてきたが、今後は学科会議などを 通じて教務と直接には関係ない教員も取り上げることが出来るよう、工夫すべきである。 具体的には、教務委員会で電子メールによるアンケートを実施して複雑な科目間の履修制 55 限の問題点や時間割やその他に問題のある学生の情報などを書き込んでもらう、というよ うな方法が考えられる。 (2)オフィス・アワーの制度化の状況 〔現状の説明〕 本学においては、学生たちが教員に自由に質問・相談を持ちかけることが出来るように、 1991 年の開学時からオフィス・アワーを制度化している。各教員は原則として一週間に1 時限をオフィス・アワーとして設定し、その時間は研究室で待機し、学生の質問や相談に 答えている。だが、オフィス・アワー以外の時間に予約なしで研究室を訪れる学生も多い ので、実質的には教員が研究室にいる時間帯すべてがオフィス・アワーの役割を果たして いるとも言える。 〔点検・評価の結果〕 本学では教員と学生との間の「垣根」が低いので、オフィス・アワーに学生が研究室を 訪れるのは当然であるが、それ以外の時間帯にも学生が教員の研究室を気軽に訪れる。そ うしたことが学生にとっては精神的な安定感を与えることにも繋がっているようである。 〔改善の具体的方策〕 現状では教員が自由にオフィス・アワーを決めているが、時間割等を勘案して、学生が 来やすく、また教員も確実に研究室に居られる時間を選ぶようにすることが必要である。 また、なかには教員のオフィス・アワーに相談に来られない学生もいる。こうした場合 に、学生本人が何らかの問題を抱えていることが多いが、こうした学生にとっては、教員 よりも職員・他の学生のほうが話しやすいこともある。職員による「動く相談室」(第 10 章、2、参照)や、TA 制度などを効果的に活用して、オフィス・アワーや教員の空き時間 では十分対応できない学生を指導していくことが期待される。 (3)留年者に対する教育上の配慮措置の適切性 〔現状の説明〕 本学においては修得単位数について、履修相談日に学生が教員に相談することが出来る。 また、3 年次生の場合、学年末に修得単位が 76 単位に満たない学生については、GPA 制度 によって容認されている標準の修得単位数の上限(年間 48 単位)を加えても卒業要件であ 56 る 124 単位に到達しないため、4 年では卒業できないことになり、卒業見込み証明書を発行 することが出来ない。こうした点について、3 年次生には、履修ガイダンスで繰り返し指導 している。こうした教職員側の努力にもかかわらず、留年が決定した者については、アド バイザーを通して学業についての細かな指導が行われている。また、こうした学生は授業 に出席することをやめてしまうことがあるが、アドバイザーの担当する授業(主に専門演 習)以外の授業での出席状況については、欠席状況調査によって知られ、アドバイザーに 報告されるシステムが確立している。本学では、履修相談日、卒業見込み証明書の発行、 履修ガイダンス、アドバイザーの個別指導、欠席状況調査などによって、出来るだけ留年 者が出ないように工夫されている。それにもかかわらず、同一科目を何度か履修しても合 格しない者、意欲がなくなり授業に出ないで留年してしまった者など、個別の対応が必要 な学生が出ている。 〔点検・評価の結果〕 留年者数は、2002 年度 22 人、2003 年度 17 人、2004 年度 19 人、2005 年度 25 人、2006 年度人 11 人である。 留年者数は 20 人前後で推移しているところから、本学で行われている学生に対する手厚 い支援が一定の効果をあげているといってよい。なお、身体的・精神的疾患で授業に出席 できない時期が続いた学生には、該当学生の友人やアドバイザーなどを通して授業の内容 を伝え、レポートを提出させるなどして、出来るだけ 4 年間で卒業できるように配慮が払 われている。 〔改善の具体的方策〕 留年することが決まっている学生が、必ずしも性格的・能力的な問題を抱えているわけ ではなく、むしろ他の活動のほうに時間をかけ、そのうち授業に出席すること自体が億劫 になってくる、という経過を辿ることが多いようである。そうした学生には、教員との談 話を通した個別の対応と、制度による取り組みとの両方が必要であると思われる。 具体的には、個別の対応として、学生が自ら適切な時間管理が出来るよう、アドバイザ ーの教員がもっと親身になって指導を行っていく必要がある。また、能力的に問題を抱え ている学生たちについて、教員が指導するのは当然であるが、TA など学生に身近な人たち が、学生たちにきちんと授業に出席することを促し、また、授業内容についての質問も受 ける体制が整うことが期待される。 (4)科目等履修生、聴講生等に対する教育指導上の配慮の適切性 57 〔現状の説明〕 大学設置基準の改正に伴い、聴講生制度は 1993 年度で廃止され、1994 年度より科目等 履修生の制度を設けている。本学においては、毎年科目等履修生を 100 人前後受け入れて いる。また、社会人が受講しやすいように、時間割を工夫している。夜間に 6 限(7:00-8:30) を設け、文学、イタリア語、コリア語、新約聖書学、英語による時評など、様々な科目が 提供されている。これらは地域に対する本学の社会貢献といえる。 〔点検・評価の結果〕 2006 年度前期の科目等履修生は 104 人である。2006 年度後期の科目等履修生は 49 人で ある。ほとんどが社会人や定年退職者である。様々な動機と目的をもって科目等履修生と して入学している。英語のネイティブ・スピーカーの授業を受講したいなどの明確な目標 で、楽しんで学んでいる科目等履修生もいる。数年間にわたって継続して本学の科目を履 修している科目等履修生が大変多い。 〔改善の具体的方策〕 科目等履修生が多いことは、本学の他の学生にも教職員にも刺激になっている。こうし た方々が、若い学生と同じように本学に入学して履修するには課題もある。そこで、修業 年限についてより柔軟な対応の出来る長期履修生制度を導入するなどを検討することが必 要である。 4.教育改善への組織的な取り組み (1)学生の学修の活性化と教員の教育指導方法の改善を促進するための措置とその有効 性 〔現状の説明〕 本学では、学生の学修の活性化を促すために主に以下のことを行っている。 第一に、前期・後期の履修相談日にアドバイザーはアドバイジーと研究室で個人面接を して、先学期までの成績表と当該学期の時間割予定表を見ながら履修指導している。アド バイザーは、すべての学生に対して学修への励ましと助言の言葉を述べ、とりわけ精神面 などで問題のある学生で、カウンセリングが必要である学生に対しては、学内のカウンセ ラーに紹介し、カウンセラーと連絡を取り合いながら学修の指導をしている。 第二に、GPA 制度(『学生便覧』82 頁、参照)で、GPA が 1.0 未満のロー・グレードの 学生に対して精神面や生活面での助言と指導をするばかりでなく、連続 2 学期ロー・グレ 58 ードの成績であった学生に対しては、学修に集中するために先学期の履修登録単位数の三 分の二に登録単位数を制限している。また GPA3.0 以上のハイ・グレードの成績優秀な学生 に対しては 24 単位の履修登録制限を越えて、27 単位まで履修登録を認めている。 第三に、大学ではミニッツ・ペーパーを教務課で授業の小道具として用意しているが、 専任教員か非常勤教員かを問わず、講義の担当の大多数の教員がそれを毎回授業中に配布 して、出席を確認する手段として用いるばかりでなく、授業内容の理解と反応を確認する 手段として用いている。また、多くの教員が毎回授業の始めにミニッツ・ペーパーの中の 代表的な質問やコメントに答えて、前回の授業の復習や補足を行うことから授業を始め、 講義においても双方向の授業に心がけている。また、毎回授業内容を反省して、次の授業 への改善に心がけている。 第四に、成績は基本的には試験とレポートと出席の組み合わせで評価する場合が多いが、 出席に関しては、毎学期に行われる出席状況調査で、アドバイザーは問題のある学生を呼 び出して、その状況と背後にある問題を把握した上で、助言を与えている。レポートはか なりの教員がコメントをつけて返却し、学修意欲を促している。また、試験の模範解答を 提示する教員もいる。 第五に、CPU 教室はコンピュータに習熟するように、授業のない時には学生に開放して おり、学生にコンピュータ指導できる TA を配置している。また、英語のネイティブ・スピ ーカーの授業の補助にも TA を配置している。2006 年度後期からは、LL 教室で、英語の自 習プログラムを補助するために TA を配置し、町中の空き店舗を改築した「まちの駅よろ ず・新発田学研究センター」の開所に伴い、そこにも TA を配置している。 第六に、単位互換制度で特別学生として他大学で学修する場合、授業料等は無料である が、放送大学の場合には一科目 2 単位 1 万円の授業料を登録時に支払い、単位が認定され た場合には、本学の自由科目の単位として認定して、授業料の半額を報奨金として支給し ている。また、長期留学制度により提携校に留学して単位認定された場合にも、16 単位を 限度に自由科目として認定して、本学に納めた授業料の半額を限度に、報奨金を支給して いる。 第七に、各学科とも 2 年次以上各学年の学生に対して、GPA のポイントで上位の成績優 秀者には、学業優秀奨学金として、第一位の学生には授業料の半額、第二位の学生には 20 万円、第三位の学生には 10 万円を支給している。また、特待生入学者には授業料の全額を 支給し、GPA3.0 のハイ・グレードの成績を収めた場合には、その翌年度も特待生としての 資格を保持する。キリスト教教育に顕著な貢献をした学生には、ケーリ・ニューエル奨学 金 5 万円を支給している。さらに、各種の難易度の高い資格や公認された外部テストの合 格者には、資格取得奨励奨学金1万円以上を支給している。 第八に、CAH のエッセイ・コンテストの優秀者は、学期毎に CAH で表彰され、エッセ イはチャペル・ニュース『プニューマ』に掲載される。また、顕著な活動をした学生団体 59 も年度毎に CAH で表彰される。卒業年度の学生で各学科の GPA のポイント最上位の学生 は、4 年間に顕著な活動をした学生や英語のディプロマ取得者とともに、卒業式で表彰され る。英語文化コミュニケーション学科の卒業論文の優秀者は、卒論発表会で卒業論文を発 表する。国際文化学科のいくつかのゼミでも卒論発表会をしている。さらに、全学科の優 秀な卒業論文と優秀なレポートは、学生論文集『VERITAS』に掲載されて公表される。 教員の教育指導方法の改善のために、本学では次のことを行っている。 第一に、すべての大教室・中教室・小教室・演習室にテレビ・モニター、DVD プレーヤ ー、ビデオ・プレーヤー、無線 LAN を設備し、すべての大教室・中教室といくつかの小教 室にスクリーンを設置し、映像やパソコンを用いた授業をできるように整備している。年 度を追う毎に、ビデオや DVD の映像やパソコンを授業の一部に用いる教員が増えている。 第二に、学生と教員には成績評価の基準が示されているが( 『学生便覧』81 頁)、教員間 の成績評価にはバラツキが見られる。そこで学期毎に成績評価をする前に、先学期の全教 員(匿名)の成績評価の度数分布一覧と当該教員の成績評価の度数分布を明示して、当該 教員の成績評価が全教員の成績評価の中でどのように位置づけられるかを提示して、成績 評価の標準化と GPA 制度の等質性を目指して、極端な成績評価をしている教員には改善を 求めている。 第三に、教員の FD 研修会とは別に、主に教育問題を取り扱うために発題と自由なディス カッションを中心とした大学教育会議を不定期に開催している。大学教育会議は教授会に 準じて全教員と事務局幹部が出席する。2003 年度はカウンセリングについて、2004 年度は LD・ADHD などについて、2005 年度には学生のマナーについて、2006 年度には本学の教 育理念と深く関係する教育基本法に関する教育会議を 2 回開いた。事務局では、これとは 別に、事務局のスタッフのみの研修会を毎年開催している。 第四に、学内研修会として、6 月下旬または 7 月上旬と 12 月上旬の年に 2 回、 「学びあ って築く敬和の教育」という学園に共通するテーマで、同一法人の高校大学合同研修会を 開催している。これには大学と高校の教員と職員が出席する。高校大学合同研修会は、礼 拝・講演・分団協議の三部構成で持たれる。分団では高校と大学・教員と職員がそれぞれ 適度に混じり合ったいくつかのグループに分かれて、それぞれ違った立場から主にその日 の講演について協議し、その協議の結果が後日報告書で報告される。 第五に、外部研修会として、教員は、キリスト教学校教育同盟研究会や夏期学校、IDE の研修会、私立大学連盟の研修会、大学セミナー・ハウスの研修会など各種の外部研修会 に出席して研修を受けている。職員は、各種の職能に応じた研修会に参加して研修を受け ている。 〔点検・評価の結果〕 多様なニーズと背景と学力を持った学生の学修を活性化する方策として、学力がありあ 60 るいは意欲のある学生をさらに引き上げ、学力が低くあるいは意欲が低い学生をケアする システムを確立しなければならない。また、一人ひとりの学生のニーズに対応しなければ ならない。 ハイ・グレードの学生の履修登録数の上限の緩和や各種の報奨金制度・奨学金制度・表 彰制度や学生論文集などへの掲載等は、上位成績者や意欲の高い学生をさらに引き上げる トップ・アップ方式のシステムであり、ロー・グレードの学生の履修登録数の制限やカウ ンセリングなどのメンタルな面でのケアや出席状況調査などはボトム・アップ方式のシス テムである。また、ミニッツ・ペーパーを用いて質問やコメントに応答することやレポー トにコメントをつけて返却すること、各種の TA の配置などは、集団の中での個人のニーズ に応じた個別指導の対応である。これらの様々な取り組みが網の目のように組み合わせら れたシステムは、学生の学修の活性化には有効である。 教員の資質の改善には、教員としての授業の改善の他に、学生に対応する方法の改善と 教育問題全般の理解も含まれる。このような点で各種の研修会での研修は有効である。 〔改善の具体的方策〕 学生にとっても教職員にとっても、重要な点は自主性・自発性である。自主性・自発性 に基づく学生の学習意欲の向上を促す組織的なシステムと、自主性・自発性に基づいた教 員の授業や教育方法の改善の取り組みを促す組織的な仕組みを作り上げていくことが大切 である。とりわけ、人文系の世界においてもコンピュータ化した社会に対応した学びや授 業について、さらに研修などを通して、個別のスキルを習熟上達させるばかりでなく、コ ンピュータを用いたシステムを立ち上げる方策を考えなければならない。 (2)シラバスの作成と活用状況 〔現状の説明〕 1993 年からシラバスを導入し、その何度か様式を改定し、現在に至っている。現行のシ ラバスは、科目名、担当者、開講年次、単位数(必修、選択必修、選択かを明示)、授業形 態、開講期を示した後に、講義概要、講義計画、教科書、参考図書、成績評価の方法、そ の他の事項を列挙している。 シラバス全体の構成は、1.授業科目一覧、2.授業科目シラバス、という二部構成に なっている。授業科目シラバスは、外国語科目、共通基礎科目、コース別の学科専門科目、 旧カリキュラムの学科専門科目、教職科目、社会福祉士国家試験受験資格過程科目、エク ステンション科目のカテゴリー順に配列されている。また、巻末には人名索引として、教 員の名前をアルファベット順に記載し、教員名から開講科目名とその科目のシラバス内の 61 該当ページが検索できる。 2001 年からシラバスは電子化され、大学のウエブページ上に掲示されている。そこでは、 シラバス検索機能も付いている。また、2001 年度からのシラバスの電子化体制に伴い、教 員がシラバス入力システムによって翌年のシラバスを各自のパソコンで入稿するようにな っている。 〔点検・評価の結果〕 本学はシラバスを比較的早く採用した。シラバスには、履修計画を立て、履修登録に必 要な基本的な情報が盛られている。とりわけ、学生便覧に示されている成績評価基準に基 づいて、具体的な成績評価の方法が明示されているので、適切である。また、2001 年度か らの導入したシラバスの電子化体制は、完全に定着した。 本学のシラバスは、講義概要、講義計画、教科書、参考図書、成績評価の方法、その他、 全てで 999 文字のスペースが与えられており、比較的に詳しく書くことができる。一方で、 かつては教員内でややまちまちだった記載内容もこれまでの点検・評価の結果、だいぶ均 等なものになりつつある。例えば、教育目標や到達目標について言及する教員がかなり増 えてきた。そのため、学生は到達目標からの距離を測ることが可能になりつつある。また、 学生の視点に立ち、学生にとって読みやすい記載も増えてきた。 〔改善の具体的方策〕 学生にとって、さらに読みやすく、興味のある科目を検索しやすくするシラバス構成が 必要となっている。2004 年度から本学は 3 学科体制に改組しているほか、学生の多様なニ ーズに即した科目提供を目指していることもあり、実際にシラバス冊子の分量は毎年少し ずつ大きくなっている。 シラバスには、レポートなどのための課題図書や参考文献、授業の具体的な日程などを さらにはっきりと示す必要がある。しかし、現行のシラバスではそのスペースがないため、 大学のシラバスとは別に、個々の教員が課題図書や参考文献などを中心にした、あるいは 日付とテキストの頁数等が入った、さらに詳しいシラバスを作成する教員が増えている。 (3)学生による授業評価の活用状況 〔現状の説明〕 学生による授業評価は 1991 年度から行われているが、1995 年度に現行の様式に改められ で毎学期末に実施されてきた。回答は無記名で、学期終了時の授業中に実施され、授業担 当者が回答をとりまとめて教務課に提出している。評価項目は以下の1)~3)の通りで、 62 自由記述を含む全ての5件両極評定値を教務課で集計し、全ての授業担当者にクラス、科 目、全科目の平均値を知らせている。 1)授業態度 ①出席 ②予習 ③努力 ④復習 ⑤取り組み 2)授業内容 ①シラバスとの対応 ②理解度 ③授業方法の工夫 ④興味 ⑤満足感 3)担当教員 ①熱意 ②対応 ③時間配分 ④話し方 ⑤教具等の補助手段の利用 〔点検・評価の結果〕 実施手続きに関して、回答率は毎回7割以上であるが、授業最終回に実施されるために、 放棄した学生の評価は得られていない。また、出席率の十分でない受講者の回答も含まれ ている。この状況は、実施手続きと回答が無記名であることに因る。 授業担当者が集計結果を参照して次年度の授業計画に活用するためには、少なくともシ ラバスの作成時期までにフィードバックが必要である。しかしシラバスの作成時期が早ま ってきたこともあり、前期の評価結果の集計が間に合わない状況がある。 全ての授業担当者に対して授業評価の集計結果はフィードバックされているが、その利 用の仕方は各授業担当者に一任されている。専任教員に関しては、教育会議や FD 研修会で テーマに採りあげられる機会もあるが、毎年の定期的・恒常的テーマではない。 2000 年度から導入された GPA 制度の実施に伴い、FD 委員会の提案のもとに全ての授業 担当者に成績評価分布状況を通知するようにしてきた。その主なねらいは、GPA の均質化を 図り、学生による授業評価と授業担当者による成績評価の整合性を高めることにある。こ の情報提供によって極端な学修状況が補正され、成績評価の基準が明確になることが期待 される。これは相対評価に馴染み易い GPA 制度と、現行の成績評価である絶対評価との整 合性を高める取り組みでもある。GPA の均質化を求めることは、各授業間の評価基準の相 対化を意味するが、現行の絶対評価とのジレンマを緩衝し、学生の授業に対する満足感を 高めるためにも、絶対評価の基準になる学習目標の明確化と到達基準を周知徹底すること は極めて重要である。 〔改善の具体的方策〕 実施手続きに関して、授業を放棄した者の評価は評価する条件を満たしていないために やむをえないが、最後の授業に出席している受講生でも、出席率が少なくとも7割以上の 者に回答を限る必要がある。 集計結果と授業形態別の成績分布状況は、全ての授業担当者に配布されているが、その 効果は十分に検証されていない。この問題は FD 委員会において分布の均質化が数年で図ら 63 れてきているかを確認していく必要があろう。 (4)FD 活動に対する組織的取り組み状況の適切性 〔現状の説明〕 FD 活動は、教育・研究・管理運営・社会奉仕の全般にわたって教員の資質の向上を図る 大学全体の組織的な活動に関わるものであるが、ここではその中でも中心的な課題である 授業の改善に主眼をおいて論を進める。 本学では 2001 年度より FD・カリキュラム委員会に予算が付き、講師招聘、学会に対す る教員の派遣、資料の配布等様々な活動が当委員会を中心に取り組まれるようになってい る。そして FD・カリキュラム委員会での準備を受け、全学的な取り組みとする際には FD 研修会・教育会議が開催されている。本学は専任教員が 30 人程度の小規模大学であること から、全教職員が参加する教育会議が機能し、FD が一部の教員の活動に限られるというこ とはない。 〔点検・評価の結果〕 FD・カリキュラム委員会は年 4 回程度、FD 研修会・大学教育会議は最近では年 1~2 回 開催されている。また教員が FD のために研修に派遣される機会も増えてきており、 「大学 教育研究フォーラム」などでは本学教員が研究発表を行っている(発表者:中村義実、第 12 回大会、2006 年)。また大学教育学会には FD・カリキュラム委員長が参加するようになっ てきている。それらの成果は FD・カリキュラム委員会、FD 研修会・教育会議を通して学内 に還元されている。 その他の活動としては、FD 関連資料として 2001 年度末に全専任教員に対して『成長す るチップス先生』(玉川大学出版局)を配布した。また 2004 年度には FD・カリキュラム委 員が中心となって、基礎演習用のテキスト『基礎演習ハンドブック』を作成した。もちろ んその内容にはこれまでの FD 活動の成果も活かされている。 〔改善の具体的方策〕 FD・カリキュラム委員会を中心に組織的取り組みは着実に充実されてはきているが、そ の質的改善には今後も継続的に取り組まなければならない。具体的には FD 研修会・教育会 議の回数を増やし、その討議内容を充実させていく必要はあろう。また現在は、これまで の FD の成果を評価し、これからの教育にフィードバックする努力をしなければならない時 期にさしかかっているように思われる。そこで学生・教員に対する包括的なアンケートを 行い、その結果に基づく討議を全学的に開始する必要がある。 64 5.授業形態と授業方法の関係 (1) 授業形態と授業方法の適切性、妥当性とその教育指導上の有効性 〔現状の説明〕 現行のカリキュラムは、授業形態に関して、講義、演習、実習に分けることができる。 ① 講義 講義と一口に言っても、教室で教員が黒板やホワイトボードに授業の要点を書きながら 口頭で学生たちに内容を伝達する方法もあれば、ビデオや DVD などを用いて画像的な情報 を与えることを重視する授業もあり、また、下段で述べるように、意見交換を主とする“演 習的な”授業もある。本学には、240 人収容の大教室がひとつ(これは講堂を兼ねている)、 120 人収容の中教室が 3 室、90 人収容の中教室が 1 室、60 人収容の小教室が 7 室あり、そ のほかに 74 人収容の AV 教室が一つ、CPU 教室が一つ、LL 教室が二つある。 (なお、小教 室をひとつ改装して LL 教室としたため、前回の自己点検・自己評価報告書(2001)のときよ りも小教室がひとつ減っている。)小教室にはすべてビデオと DVD が観られる設備が備え られ、大教室や中教室では天井から吊るされたプロジェクターを備える。 講義はおおむね教員一人が教室で行うわけだが、 「日本文化論 1, 2」 「東アジア文化圏研究 1, 2」「メディア・コミュニケーション論 1, 2」などでは講義の中にディベートやディスカ ッションを取り入れたり、 「社会福祉援助技術 1, 2, 3, 4」「ボランティア論」などでは教員 の知人など、授業の内容に関連する人物を授業に招いたり、また「異文化コミュニケーシ ョン論 1, 2」などではネイティブ・スピーカーを招いたりして、学生相互もしくは学生と大 学の外部の人々との間で意見交換をすることで、単なる知識の伝達に留まらない効果をあ げる講義もかなりの数にのぼる。各学科では、コース入門科目を提供し、それぞれのコー スで学ぶべきことの鳥瞰的な概説を行っている(演習や講義の内容と同じというわけでは ない)。それらは、「共生とケア入門」(以上、共生社会学科)、「文明史・文明論」「国際関 係入門」(以上、国際文化学科)、 「英米文化入門」 「コミュニケーション入門」 (以上、英語 文化コミュニケーション学科)であるが、いずれの科目も複数の教員による連続講義(本 学では「チェーン・レクチャー」と呼んでいる)の形態をとっている。こうして、社会福 祉、国際文化、国際関係、英語文化、コミュニケーションという 5 つのコースで学習すべ き内容が、特定の見方に偏ることなく、バランスよく提供できている。また、ネイティブ・ スピーカーの教員が提供する科目(例えば下記の Unit B の科目や「イギリス文学と歴史 1, 2」「英語スペシャル・トピックス 1, 2」など)は、基本的に英語で授業が行われている。 65 外国語科目は、いわゆる「少人数クラス」(1 クラスの人数を抑えることで、履修者一人 一人に練習の機会を与え、効果を上げようとするもの。本学では 1 年生の英語クラスは 18 人を上限とし、その他の語学のクラスはそれ以下の人数で行われる)を実現しているため、 ほとんどの授業が小教室で行われている。2004 年度に運用が開始された現行のカリキュラ ムにおいては、英語の授業はレベル1からレベル4までの到達度別クラスとなっているが、 それぞれのレベルの授業が半期ずつあり、主に英語の読み書きを鍛えることを目的とした Unit A と、主に英語を話したり聞いたりする技能を鍛えることを目的とした Unit B に分か れている。Unit A は一週間に 2 時限あり、同一の教員がレベルに共通の教科書を用いて教 授する。こうした授業では適宜ビデオや CD や DVD を用いて、映像・音楽も教材として利 用されている。Unit B は一週間に 3 時限あり、同一のネイティブ・スピーカーの教員がレ ベルに共通する教科書を用いて英語で教授する。こうした授業では、教室内の机や椅子の 並び方を変え、英語を用いたゲームなどで、学生が相互にコミュニケーションできるよう にして、英会話力の増進を図っている。 また、いくつかの講義では、長期休暇の期間中に講義内容に関係する国内外の地域を学 生たちと共に訪れるといった独自の展開を見せるものもある。 ② 演習 演習は基礎演習と専門演習があるが、いずれも演習室で行われる。本学には 24 人収容の 演習室が一つ、30 人収容の演習室が 3 つ、34 人収容の演習室が 4 つある。演習室にも全て ビデオなどの AV 機器が備えられている。授業の形態としては、基本的にテキストを講読し たり、その内容を発表したり、そこで質問したり、といった方法で行われる。基礎演習は 学生が大学で学習していく際に必要な技術(たとえば授業でのノートの取り方、発表レジ ュメの作り方、レポートの作成など)を教授していく。基礎演習は、本章のⅡの3、履修 指導の項で既述のように、1 年生のアドバイザーを担当する教員が行う。それに対して、2 年次以降の専門演習では、学生が特定の専門分野について自らのテーマを発見し、それに ついて調査できるように指導していく。これは本学の特徴であるが、専門演習は 2 年次と 3 年次に履修することになっていて、2007 年度からは 4 年次にも専門演習を開講する予定で ある。多くの専門演習において、学生の啓発のために、ビデオや DVD などの映像資料や CD などによる音声資料、その他、多数のプリント類が利用されている。さらに、学生たち の専門分野の理解を深めるために、県内外の有名な演劇を観る機会をもうけたり、学生た ちが学んでいる外国語とその背景の理解に資するために外国を旅行したり、専門分野の指 導の一環として関連する学会に学生を連れて行ったり、教室内にとどまらない多様な機会 を用いて専門教育を行う演習も多い。また、教育実習の事前事後指導(演習相当)では、 二泊の妙高宿泊研修も行っている。 66 ③ 実習 本学において実習とは、 「スポーツ実習 1, 2, 3, 4」や教職課程の「教育実習 1, 2」のほか、 社会福祉士国家試験受験資格課程の「社会福祉援助技術現場実習 1, 2」という実習科目があ り、6 月と 11 月に実習を行っている。 〔点検・評価の結果〕 本学の授業形態は講義、演習、実習という名前ではあるが、それぞれの科目が独自の工 夫を凝らして新たな取り組みを行っていて、講義といっても演習のような形態であったり、 実習の前後に演習を行って理解を深めたりしている。また、それぞれの専門分野において コースを設定しているが、その中で科目を入門科目、基幹科目、展開科目、演習科目とい うように、シラバス上の科目の位置づけを明確化して、学生にも周知している。 本報告書の他所でも述べられているように、学生と教員との活発なインターアクション を通じて、教室の中に留まらない授業の展開が見られるほか、教室内においても、様々な 工夫をして学生を啓発している。このように、小規模大学であっても、新しいことを貪欲 に取り入れつつ、古きよき講義形式の授業も多く残すなど、その多様性は本学の独自性を 示すものといえよう。当然、教員に多くの時間と労力を要求することとなるが、学生を成 長させつつ、教員も人間的に成長していくという良い関係が構築できていると考えられる ので、こうした点はさらに進めていくべきであろう。他方、こうした授業は学生に体系的 知識を定着させるという点で工夫の余地があるといえる。学生気質も変化してきており、 体系的知識を定着させることが容易でないことは確かであるが、今後とも、授業があまり にイベント的にならないように気をつけながら、しかし工夫を凝らした授業を展開すると いう、難しい役どころを教員が担っていかなければならない。 〔改善の具体的方策〕 教務分野の案件のひとつに、大学の授業を映像化し、それを出前講義(本学教員が高校 などに出張して行う講義)などで活かそうという提案がある。授業の形態と方法という点 では、映像を見せるだけで授業したことになるわけではなく、また映像を見せることが講 義・演習・実習のいずれにもならないことは明らかであるが、こうした授業コンテンツの データ化を推し進めることは、MIT の Open Course Ware をはじめ、世界的な潮流となっ てきており、学生が自らの休んだ講義を(出席にはならないにしても)そうした形で視聴 することが出来る体制を整えておくことは、今後の課題といえるだろう。その中で、教員 の講義ノートであるとか、配布資料であるとか、関連する書籍の該当部分のネット上での 閲覧であるとか、といったことがさらに可能になる日が来るかもしれないが、こういった ものも、本学の教育方針との整合性に意を用いつつ、検討していく必要があるであろう。 67 (2)マルチメディアを活用した教育の導入状況とその運用の適切性 〔現状の説明〕 小教室には全てビデオや DVD が見られる設備が整っており、中教室や大教室では天井に 吊るしたプロジェクターを用いてパソコン内に取り込んだ情報を学生と共有する形で授業 することもできる。移動用のプロジェクターやスクリーンも教務係で常備しており、どこ でも画像・映像を履修者に提供することが可能である。 「音楽・音楽史 1, 2」や「映像で学 ぶアメリカ文化 1, 2」などの科目でも AV 機器が多用され、そして、とりわけ「英語文化圏 研究 A 1, 2」ではアメリカの映画を通して学べるようになっているので、こうした授業では 映像がとても効果的に用いられているといえる。また、英語の Unit A の授業でも CD やビ デオや DVD が用いられることが多く、小教室の AV 機器は頻繁に利用されている。本学で はチェーン・レクチャーと呼ぶ連続講義の中でも、とくに文化を扱う講義でプロジェクタ ーを利用した映像の紹介が行われる。 また、一部の Unit B のクラスや「検定試験準備コースⅠ 1, 2」(英語の検定試験である TOEIC470 点や英検 2 級などを目標として英語の訓練を行う科目) 「検定試験準備コースⅡ 1, 2」 (TOEIC730 点や英検準一級を目標として英語の訓練を行う) 「英語音声学 1, 2」では、 LL 教室を用いて授業が展開されている。 コンピュータ関連の科目としては、 「情報メディア論 1, 2」「情報処理論 1, 2」「情報管理 基礎論 1, 2」が提供され、すべて栄光館 4 階の CPU 教室(60 人収容、パソコンを各机に 配置している)において授業が展開されている。また、電子メールやインターネットを用 いた英語の作文指導を行う「オンライン・アドバンスト・ライティング」も開講されるこ とがある。 〔点検・評価の結果〕 本学では学生が映像・画像の情報を授業で取り上げることを望む傾向があることから、 早い時期から映像・画像を授業に取り入れる工夫が見られた。机に突っ伏してしまう学生 もいるが、多くの学生はこうした珍しい映像・画像を楽しみにしており、彼らにとって大 きな刺激になっている。 こうした 21 世紀のメディア時代に対応するため、 前回の自己点検・自己評価報告書(2001) で不備を指摘された本学の LAN(Local Area Network)の設備を拡充し、現在はほとんどの 教室で無線 LAN が利用可能になっている。英語学習についても、 「検定試験準備コースⅠ」 及び「検定試験準備コースⅡ」の授業と関連する TOEIC 向けのソフトウェア(ネットアカ デミー)も LL 教室のコンピュータにインストールされており、授業で利用されている時間 帯以外に学生が利用できる体制になっている。また、これらの授業を履修していない学生 68 も、無線 LAN を活用して TOEIC 向けの自習用のソフトウェアを利用することができるよ うになっている。 CPU 教室を授業時間以外は開放しているので、無線 LAN 接続のパソコンを所有してい ない学生も LAN に気楽にアクセスできるようになっている。図書館にも 20 台のコンピュ ータが設置されており、学生は授業の下調べから個人的なメールのやり取りにいたるまで、 自由に行うことが出来る。 〔改善の具体的方策〕 学内の建物の中でほぼどこでも無線 LAN などを通じてインターネットに接続できる環境 が整うなど、本学のマルチメディアのハードウェアはかなり質が高いと言えるだろう。こ うした環境を利用した教員側からの情報発信はかなりの頻度で行われるようになったとい えよう。 ここで、学生側からネットや AV 機器を利用した発信がやや少ないことが課題として挙げ られる。先日、 「情報処理論 1」という授業において、学生たちにパワーポイントによるプ レゼンテーションを競わせるというイベントが学内で開催されたが、こうした試みをパイ ロットモデルとして、マルチメディアによる学生発信の授業を展開することが必要である と思われる。同時に、学生生活とも関連するが、学生からの発信が増加した場合に、ネッ ト上での犯罪・いじめなどが起こらないよう、学生を適切に指導することも、心に留める べきであろう。 他方、履修指導の項でも述べたが、本学は学生と教員との談話などを通したコミュニケ ーションを重視する大学であり、その点でこうしたマルチメディアによる授業と従来から の談話と黒板による授業との適切なバランスを保つ必要がある。 Ⅲ.国内外における教育研究交流 (1)国際化への対応と国際交流の推進に関する基本方針の適切性 〔現状の説明〕 本学は開学以来、 「国際的教養豊かな良心的人材」の養成を目的として掲げている。国際 交流はその目的を遂げるための主軸をなす活動の一つとして位置づけられ、多様な価値観 に対する受容性と他者への共感を広げつつ、主体的に生きる国際意識を育てるという基本 方針のもとで、国際化に真に対応するために、多種多様な活動を通して幅広く国際交流の 推進につとめてきた。 本学の英語文化コミュニケーション学科(英語英米文学科)と国際文化学科、また 2004 69 年度に設置された共生社会学科においても、国際理解、異文化理解が必要とされる分野で ある。本学での国際交流の重要な位置づけは、学科との関連もあるが、大学として一貫し た姿勢で基本方針の実践に臨んできたことは現在においても同じである。 外国人教員の採用、留学生の受け入れ、海外留学制度、外国語教育の充実などの学内に おける国際化に対する対応や国際交流に留まらず、大学の所在地である新発田市と、本学 と姉妹校提携を結んでいるノースウェスタン大学の所在地、米国アイオワ州オレンジ・シ ティとの姉妹都市提携を実現させ、その関係を発展させてきた。 さらに、アジアに目を向け、中国、台湾の複数の大学との教育交流協定を締結し、これ からの国際社会の動向を見据えた国際交流の実現のためにその関係を強めている(表 11、 参照) 。 〔点検・評価の結果〕 基本方針に基づいての実践ではあるが、国際交流という点では、2004 年度には中国の内 モンゴル自治区内蒙古放送大学と台湾の長栄大学、2005 年度には中国黒龍江省の黒龍江東 方学院と広東省の湛江師範学院との教育学術交流協定を結んだことは評価に値する。この 協定により、留学生の受け入れや送り出しが可能となった。 21 世紀の国際社会に生きていく本学学生の視野を広げる上で、よりアジアやヨーロッパ の交流を検討する必要がある。 〔改善の具体的方策〕 時代にあった国際化への対応と国際交流を迅速に進めるためには、基本方針の適切性を 教職員全体で確認し、関係する各委員会のそれぞれ関係を意識して再構築すると同時に、 関係職員においても、単なる役割分担的認識を超えて、常に情報を共有し、スムーズな情 報交換のできるシステムを作り上げねばならない。組織として国際化への対応と国際交流 の実践に大学全体で取り組まない限り、継続的・発展的な展開は期待できない。 (2)国際レベルでの教育研究交流を緊密化させるための措置の適切性 〔現状の説明〕 本学では前述の基本方針に基づき、様々な国際交流活動を実践している。具体的には1. 外国人留学生の受け入れ、2.海外留学制度、3.大学と地域が連携する国際交流の3つ を中心とした国際教育交流が行われている。 ① 外国人留学生の受け入れ 70 (a) 外国人正規留学生の受け入れ 本学を志望する外国人留学生は、内規に基づく外国人留学生入学試験を経て入学を許可 される。入学年次は、外国において修学した学校教育の課程により、1 年次から 3 年次に分 かれる。2 年次及び 3 年次に入学する場合、既に取得した単位を資料等で調査の上、認定で きるものについては、本学の卒業要件単位として換算する。 2006 年度現在における留学生総数は 52 人で、その留学生の国籍は中国 46 人、韓国 3 人、 イタリア 1 人、スペイン1人、ネパール 1 人が在籍している。所属学科の内訳は英語文化 コミュニケーション学科 7 人、国際文化学科 40 人、共生社会学科 5 人である。 留学生の日本語指導については、本学では正規の授業科目として、英語などの外国語同 様、各自の能力に応じて、日本語カリキュラムにおけるレベル I~III までの「読む」 「書く」 「聴く」「話す」の各コースの授業を受ける。専従で留学生の日本語教育を担当するのは日 本語教育の有資格者であり、留学生ケアの経験を持つ、日本語契約講師である。 留学生に対する支援態勢としては、上記の日本語教育の他に、既に設置されている国際 交流室のほかに、人的支援として国際交流 TA が 2007 年度からスタートする。また、経済 的支援として、既に給付している「敬和学園大学外国人留学生奨学金」のほかに、「敬和学 園大学私費外国人留学生学生納付金減免規程」を定め(2005 年)、留学生の入学時から学生 納付金年額の 40%を減免することで留学生の経済的負担を軽減した。 現在、毎年 5 人の枠で外国人留学生にこの奨学金を給付している。その他、日本国際教 育協会を通じ、外国人留学生授業料減免措置(授業料年額の 30%)や私費留学生学習奨励 費の給付などを受け、留学生の財政的負担を軽減することに努力を注いでいる。 また、1995 年より毎年、日本基督教団新潟地区世界宣教委員会主催の「留学生の集い」 を通して、本学留学生と日本人学生、教職員が互いの親睦を深める場を提供している。新 潟県主催の留学生交流会にも毎年参加し、本学留学生と県内の他大学留学生との交流をは かっている。 (b) 日本文化と日本語の短期集中研修への英語文化圏からの学生の受け入れ 本学ではかねてより、学生が海外での英語研修を受けるだけでなく、逆に英語文化圏の 国々の学生が同様に日本語を集中的に学ぶ機会を提供し、彼らを受け入れる側になり、相 互理解をはかり、本当の意味の国際交流を育てていきたいと考えてきた。 2001 年度より、本学留学生用の日本語教育カリキュラム及び本学教員の専門領域を活か して、 「日本文化と日本語研修プログラム」 (Japan Culture and Language Program)を設 け、英語文化圏からの学生を受け入れることからスタートさせた。4 週間のプログラムは 40 時間の日本語研修と 20 時間の日本文化についての講義、実習、フィールド・トリップか ら構成され、全員が 1 泊 2 日のホスト・ファミリー宅でのホームステイが盛り込まれてい る。 71 2004 年度からこの JCLP のプログラムの充実を図るために検討を行い、フィールド・ト リップにも力を入れたことで、協定校からの参加が期待できるようになった。2005 年度に 協定校となった長栄大学から 15 人の学生が参加し、さらに 2006 年度には長栄大学から 9 人に加えて、2005 年度に協定校となった湛江師範学院から 2 人、アメリカ・ミシガン大学 から 1 人の参加があった。この中国からの受け入れは初めてで、2007 年度に続くものとな った。 ② 海外留学制度 現在、本学の海外留学制度には短期・長期・自由留学の 3 つの制度があり、これらの留 学を通じ、本学学生が在学中に他大学等で習得した科目の単位は 30 単位を上限に、本 学の正規カリキュラムと連動した形で、規定に基づき本学の卒業に必要な単位として認 定される。 (a) 短期留学 短期留学制度は大学の創設当初から存在し、本校の在学生が夏期休暇を利用して本学と 姉妹校提携や教育交流協定を結んだ大学、または語学学校で5週間、基本的には英語を集 中的に学習するものである。現在、夏期に5校、春期に 2 校に学生を送っている。プログ ラム、実施開始年度も含めた各校の内訳は次の通りである。 夏期:Northwestern College・Summer Institute(ノースウェスタン大学、米国ア イオワ州オレンジ・シティ、1991~) California State University San Bernardino・American Culture and Language Program(カリフォルニア州立大学サンバナディーノ校、米国カリフォルニア州 サンバナディーノ市、1991~) Anglo-Continental・Intensive English Language Course(アングロ・コンティ ネンタル英語学校、英国ボーンマス市、1992~) Washington Academy of Languages・Intensive English Program(ワシントン・ アカデミー・オブ・ランゲージーズ、米国ワシントン州シアトル市、1999~) 黒龍江東方学院(中国黒龍江省ハルピン市、2006~) 春期:Anglo-Continental・Intensive English Language Course(アングロ・コンテ ィネンタル英語学校、英国ボーンマス市、1992~) 黒龍江東方学院(中国黒龍江省ハルピン市、2006~) それぞれのコースにおいて提供される英語(中国語)研修の課程を修了した学生は、本 学の単位認定審査を経て、所定の単位(「異文化研究」として最高 4 単位まで、ノースウェ スタン大学のみ「聖書学基礎」2 単位を加え 6 単位まで)が認定され、自由科目として卒業 要件単位に組み入れられる。 72 (b) 長期留学 2000 年度より一部の科目を除いて導入されたセメスター制に伴うカリキュラム改革によ って自由単位が 30 単位まで認められたことを土台として、2004 年度からは提携校で、休 学扱いにならずに学部の修業年内で長期留学をすることがさらに可能となった。 ノースウェスタン大学 ワシントン・アカデミー・オブ・ランゲージーズ メルボルン大学附属ホーソン英語センター 黒龍江東方学院 また、長期留学プログラムの授業料は、留学中に本学に支払った当該学期毎の授業料の 半額を限度として、単位修得後に奨学金として本学から給付される。 (c) 自由留学 本学の短期留学が夏期、春期の長期休暇を利用し、留学先を本学との提携校に限ってい るのに対し、自由留学制度は、学生が自主的に計画を立て、本学の許可を得て留学し、そ の学習の成果によって本学の自由科目として卒業要件単位に組み入れられる。自由留学に は、大学の長期休暇を利用した「短期自由留学」と長期休暇に限らず 15 週間以上の期間で 実施する「長期自由留学」がある。 外国の大学または教育研究機関等において、語学のみならず、本学でのカリキュラムに 関連する学問研究分野で、一定の基準で評価可能なプログラムの学習を希望する者がこの 制度の対象となる。希望者は本学教員(アドバイザーもしくは自分が留学先で研究する分 野に関係のある本学専任教員)の指導のもとに計画を立て、出発前に「自由留学計画書」 及び「自由留学許可願」を、指導教員を通して国際交流委員会に提出し、審査の結果、許 可を受けた者が留学することになる。留学終了後、留学先の成績評価と成果報告を基に本 学の単位認定審査を行う。 また、この「長期自由留学」にも、長期留学奨学金制度が適用され、その授業料は、留 学中に支払った本学の各当該学期毎の授業料の半額を限度として、単位修得後に奨学金と して本学から給付される。 ③ 大学と地域が連携する国際交流 本学は設立当初から、キリスト教主義のリベラル・アーツ・カレッジという本学と共通 の教育理念を掲げるノースウェスタン大学と姉妹校提携を結び、積極的に交流をはかって きた。両大学の教育交流を地域の交流に発展させるべく、1995 年、本学所在の新発田市と ノースウェスタン大学所在の米国アイオワ州オレンジ・シティとの間に姉妹都市関係が結 ばれた。以来、両市の間の人的交流が続いている。 73 地域に根ざす大学として、海外からの研究者が本学で講演をする際は、できるだけ公開 講演の形をとり、地域の人々の国際理解や交流に役立つよう努力を重ねている。 〔点検・評価の結果〕 ① 外国人正規留学生の受け入れ 日本語教育に関しては小人数教育を徹底させており、コース別、レベル別のクラス数に 比して学生数が少ないので、個別指導に近い教育が行われている。特に、学生の日本語能 力によって、その学生に最も適切なコース・レベルが決定されること、また、シラバスに も記載されているように、日本語の指導においては上級レベルに上がるにつれ、留学生が 履修する通常の講義科目や演習科目の理解向上につながるような授業構成となっており、 レポートの書き方やリサーチの仕方なども含めた実戦的な方針のもとで日本語教育が展開 されている。小人数だからできることで、この 2 点は評価に値すると考える。 留学生への財政的支援は本学の奨学金制度やその他の留学生奨学制度の活用を通じて、 現在の留学生の規模では機能していると思われる。しかし、留学生の本国からの送金状況、 日本国内の昨今の経済事情などによる留学生の生活の全般的な厳しさを考えると、留学生 の総数を増やす上でも、財政面での更なる援助が必要であるとの指摘から、2005 年度から 「敬和学園大学私費外国人留学生学生納付金減免規程」を定め、留学生の入学時から学生 納付金年額の 40%の減免を断行したことは、留学生にとって経済的負担の軽減に大きく寄 与したと評価できる。現在の総数 52 名で、この制度の初年度は 30 名の留学生が本学に入 学した。 留学生の学校生活全般のケアについては、留学生同士の情報交換の場所、授業や文化摩 擦に関係する問題などを関係者に伝えたり、話し合ったりする場として、国際交流室が大 きな役割を果たしているが、この部屋に常駐している日本語契約講師によるケアや助言を 留学生が必要としているのも事実である。留学生の生活の精神面での充実に欠かせない、 日本人学生や地域の人々との交流に関しても、大学行事やサークル活動、ゼミ単位での活 動を通して、留学生との交流は深まりつつあると評価できるが、特に新入留学生の大学生 活全般のケアの必要性を考え、2007 年度から始動する「国際交流TA」の成果に期待でき ると考えている。 留学生が地域との交流を直接的に行うものとして、新発田市教育委員会の総合学習ワー ルドタイムや聖籠町教育委員会の国際理解教育の講師として近隣の小学校に出向いての交 流、聖籠町の「ぶどう狩り」での近隣住民との交流、また民間団体としては国際ソロプチ ミスト新潟の「留学生交歓会」 、茶道石州流怡渓会清閑会近藤社中主催「春の茶会」等への 参加交流が挙げられる。特に、教育委員会との連携で実施されている国際理解教育への協 力は留学生が直接近隣の小学校の子供たちに自国の文化や言葉に触れさせ、さらに日本と 違った外国の遊びや家庭料理を実際に体験して、同じ時間を共有することでかけがえのな 74 い記憶を持てたことは何ものにも変えがたい宝物となった。これらの直接的な交流は今後 も続くことになったことは評価したい。 ② 日本文化と日本語の短期集中研修への英語文化圏からの学生の受け入れ 日本文化と日本語の短期集中研修への英語文化圏からの学生の受け入れに関しては、 一つの成果があった。国外の教育交流提携校の開発により中国、台湾の学生が参加してい ることで、国際交流委員会主導による受け入れまでの準備が大変であったが、研修自体は 成功で、参加者から高い評価が得られた。2007 年度には、中国、台湾からの参加が見込ま れると同時に、アメリカの大学からのまとまった参加の申込もあり、2007 年度はプログラ ムを 5 月から 7 月にかけて 2 回の実施が予定されている。 本学学生にとって、正規の留学生の受け入れはもちろんだが、この JCLP の実施は学期 中であったので、希望者を募り、「会話パートナー」という名の留学生のサポート・システ ムを実施した。日本人の学生との会話を楽しみたい留学生には毎日朝の時間に集まっても らい、それぞれが都合のつく時間に集まった日本人学生が日本語学習の相手になり、必要 に応じて生活上の手助けや遊び相手になるというものである。このシステムは学生間の交 流という点では大変効果があった。本学では英語教育に力を注いでいるが、生活の場で英 語を使うという状況は、現実にはそれほどあるわけではないので、英語文化圏の同世代の 若者だけでなく、自分達と同じように英語が話せる英語文化圏以外の若者との英語を使っ ての交流は、新鮮に感じたことだろう。さらに正規の留学生との日本語での交流とは異な るものがあったように思われる。 ③ 海外留学制度 本学の海外留学は制度的にも、プログラム面でも、2004 年度以降さらに充実してきたと いえる。留学の種類も留学先も増え、留学生へのケアも含めて、留学経験者の満足度は高 くなってきている。 英語の短期留学に関しては、留学先の地域的多様性、プログラムの内容などの面におい て充実していると考えてよいだろう。ノースウエスタン大学、カリフォルニア州立大学サ ンバナディーノ校、ワシントン・アカデミー・オブ・ランゲージーズとも本学の教員を通 じて信頼関係を築いているので、コミュニケーションが万全で、運営に支障をきたすこと がなく、問題が生じた場合でも、すばやい対応で臨んでくれる。 また、英語圏以外でも、中国、台湾、韓国などのアジアに目を向けた留学プログラムの 整備も進んできている。2006 年度には中国〔黒龍江東方学院〕に 3 人、韓国(韓国外国語 大学校)に1人、ドイツ(ルーブレヒト・カール大学ハイデルベルグ校)に 2 人が留学し、 それぞれ単位認定されている。 さらに、留学中の学生のケアについてはそれぞれの留学先でのサポート・システムが確 75 立されており、各校とも基本的には本学教員の引率を必要としていない。その背景として 本学が提供している丁寧な事前指導がある。留学制度を利用するすべての学生に対し、ビ デオによる説明を含む数度のオリエンテーションを行い、パスポート取得、所定の書類記 入の実際などの初歩的な事務手続きから、安全上注意すべきこと、ホームステイで注意す べきこと、知っておくべき留学先の国の基礎知識、政情、文化摩擦の実態にいたるまで、 予測される留学してからの戸惑いをできるだけ軽減するようにしている。この件では帰国 後にアンケートをとり、指導が留学の現場で有用であったかどうかを調べ、改善に努めて いる。 本学の提供する留学プログラムだけでなく、自由留学に対しても単位認定がなされるよ うになったことから、留学を希望する学生の意識が向上したと思える。短期留学では原則 として日本語での体験レポートの提出を求めているが、長期留学においては原則として英 語での体験レポートの作成をさせていることも意識向上への一助となっている。また、中 国への長期留学の場合は中国語での体験レポートの提出とし、今後は留学先の言語での体 験レポートの提出を考えている。 自由留学・長期留学についても、英語以外の分野での留学を現実的に可能にしたという 点で評価される。加えて評価に値するのは、長期留学の場合、自由科目として卒業単位と される 30 単位という枠が与えられ、セメスター制の改善により 4 年間での卒業がさらに可 能になっただけでなく、長期留学奨学金制度を長期自由留学にも広げたことである。この 措置は海外長期留学者の経済的負担を二重に軽減することで、その意義は大きい。 (3)教育研究及びその成果の外部発信の状況とその適切性 〔現状の説明〕 研究論文・研究成果の公表を支援する制度的な措置として紀要委員会が設置され、年間 230 万円の予算を確保して、学術誌発行費として計上されている。紀要委員会では年 1 回『敬 和学園大学研究紀要』を発行し、2006 年 2 月で 15 号を刊行した。これを国内各機関 206 箇所、海外各機関 50 箇所に配布して、外部発信の場を提供している。また紀要論文は国立 情報学研究所によってデジタル化されている。 研究成果の外部からの受信は図書館経由で行っている。 〔点検・評価の結果〕 現状では研究発表に対する金銭的な支援は一応のレベルにあるといえよう。 『敬和学園大 学研究紀要』に関しては、原稿募集、印刷・出版社との連絡などの業務はすべて専任教員 が行っており、支障はない。 76 論文の公表の機会は『敬和学園大学研究紀要』に限らず、 『敬和学園大学人文社会学研究 所年報』もあり、問題はない。 〔改善の具体的方策〕 将来はデータベース化して、本学のホームページ上で公開し、オンラインで講読が可能 になることが望ましいと考える。 77 第4章 学生の受け入れ 〔目標〕 1. 定員確保を維持する。 2. 敬和学園高校、海外提携校などとの関係を強化する。 3. ウェブをさらに活用した入試広報を展開する。 1.学生募集方法と入学者選抜方法 (1)大学・学部等の学生募集の方法、入学者選抜方法、殊に複数の入学者選抜方法を採 用している場合には、その各々の選抜方法の位置づけ等の適切性 〔現状の説明〕 各年度に学生募集方法と入学者選抜方法、及び合格者決定などに関する重要案件は、最 高審議機関である教授会で決定され、実施されている。 原案は、入試実施に責任を持つ入試委員長のもとで、教務課入試室によって作成され、 入試委員会(学長、入試委員長、各学科長計 3 人、その他教員 2 人、事務局長、教務課長、 入試室職員 3 人で構成)で審議される。同委員会は月 1~2 回の頻度で開かれ、学生募集方 法及び入学者選抜方法を検討し実施に移す。また実施後はその検証を行い、より有効な募 集活動や新たな選抜制度を構想することを任務としている。ついで合否判定原案も、学長 によって教授会に提案される。なお、入試事務は教務課入試室が行っている。 ① 学生募集方法 入試広報活動の主なものとして、マス・メディア、入試説明会、オープン・キャンパス、 高校訪問、大学見学受け入れなどがある。 (a) マス・メディア(パンフレット、ホームページ、雑誌、新聞、ラジオ、テレビなど) 大学が発行するパンフレットの中心をなすものが「大学案内」で、カリキュラムや教員 紹介から学生生活、就職状況などの紹介と受験情報が満載されている。その他、直接入試 情報を提供する冊子類として「学生募集要項」、「入試問題集」も作成し、各年度「大学 案内」は 5 月から、その他の冊子類も 6 月から配布している。また、本学のホームページ などインターネット上での広報に加えて、受験雑誌、新聞、公共交通機関に広告を掲出し、 オープン・キャンパスの時期にはテレビと FM ラジオのコマーシャルも利用している。 (b)入試説明会、オープン・キャンパス及び進学相談会 78 本学主催の入試説明会は、高等学校の進路担当教員を主な対象とし、各年度 6 月に開催 し、本学のカリキュラム、入試制度、就職状況について説明するとともに、意見交換を行 っている。 受験生と保護者を対象として 6 月、7 月、9 月、10 月の 4 回オープン・キャンパスを開催 し、模擬授業、模擬面接、入試対策などに加えて、保護者対象のガイダンスや在学生によ るキャンパスガイドも実施している。 (c) 高校訪問 各年度の 7 月と 9 月ごろを中心に、さらにそれぞれの入学者選抜試験に合わせて、おも に教務課長と入試室職員が県内及び隣接県の高等学校訪問を行う。「大学案内」、「学生 募集要項」、「入試問題集」などを持参し、本学のカリキュラムの特徴や入試制度の変更 点を中心に説明し、訪問校出身の在学生の成績や卒業生の就職先などの情報提供を行って いる。 (d) 大学見学の受け入れ 高校から高校生あるいは PTA のグループが本学見学に訪れることが多くなった。受け入 れにあたっては、オープン・キャンパスに準じたプログラムを用意して対応している。 ② 入学者選抜方法 入学者の選抜は入学試験によっているが、これは推薦入学試験、一般入学試験、アドミ ッションズ・オフィス入学試験、特別入学試験からなる(表 13、15、16、参照)。 (a) 推薦入学試験 指定校推薦(専願制)と公募推薦(併願制)とがある。 指定校推薦は、本学への入学実績のある高校を基に指定校を定め、英語文化コミュニケ ーション学科については英語の評定平均値 3.5 以上の者(国際文化学科については入学後 必修外国語として英語以外にドイツ語またはフランス語の選択が可能なため、また共生社 会学科についても、英語の評定平均値は問わない)の推薦を高等学校長に依頼して行って いる。敬和学園高等学校からの推薦も、この指定校推薦に含まれるが、大学から特定の推 薦基準は設けていない。推薦を受けた受験者に対して面接を行い、面接と調査書を合わせ て合格を判断している。また、2002 年度入試から指定校推薦の枠に、全学科において全体 の評定平均値が 4.0 以上の者が出願できる特待生制度を設けている。 公募推薦も、英語文化コミュニケーション学科についてのみ英語の評定平均値 3.5 以上 であることが、高等学校長の推薦を受ける条件になっている。小論文、面接、調査書に基 づいて合否が判定される。 79 (b) 一般入学試験 本学独自の学力検査(A、B 及び C 日程)と大学入試センター試験利用入試がある。 一般入試 A 日程と B 日程は 2 月上旬に実施されている。A 日程では英語(リスニング含む) と国語の2科目を課し、B 日程では英語または国語の1科目を選択受験する。3 月に行われ る C 日程は課題面接型入試で、面接前に課題が与えられ一定時間内で自分の考えをまとめ たうえで、面接に臨むものである。2003 年度入試から、A・B・C 日程は、総合評価(A+、 A、B、C、D)によって合格を決めている 大学入試センター試験利用入試では、2004 年度入試から、英語(200 点)のほか、国語、 地歴、公民、数学、理科の 23 科目より1科目を選択受験し(200 点)、合計 400 点で得点 上位者から合格を決めている。なお、大学入試センター試験利用入試による入学者で一定 数の成績優秀者には、奨学金制度が設けられている。 (c)特別入学試験 編入学試験、帰国子女入学試験、社会人入学試験、外国人留学生入学試験(国外、国内) 秋季入学試験があり、2005 年度入試から帰国子女入学試験と秋季入学試験は 1 回、編入学 試験と社会人入学試験は 3 回、外国人留学生入学試験は 2 回実施している。いずれも小論 文と面接を課しているが、外国人留学生入学試験の場合はさらに日本語能力検定試験の1 級ないし 2 級または日本留学試験の成績を合否判定の基準に加えている。日本語能力検定 試験の1級合格者または日本留学試験で相応の成績を取得した外国人留学生は、2002 年度 入試から設置された特待生制度に出願する資格を持つ。また、編入学試験には指定校推薦 制度が併用されている。 〔点検・評価の結果〕 ① 学生募集方法 入学者数の減少に直面して、早急に有効な入試広報を打ち出す必要に迫られた。入試広報 をいっそう強化することを目的として、2003 年度に入試室が強化され、3 人の職員が入試 事務を精力的にこなしている。 第一に、広報の対象を 18 歳人口に限らずに、知名度をあげることを心がけた。新聞広告 を始め、多様なメディアを使用し、掲出も複数回行っている。第二に高校生向けの人文学 部のイメージ戦略を展開した。視覚に訴えて人文学部のイメージを印象づけるためにキャ ラクターを採用し、あらゆる広報活動に活用している。「大学案内」についても、イラス トを多用し、イメージ重視の戦略を打ち出している。第三に高校との信頼関係を築くこと を重視し、2004 年度からは、入試室職員が高校訪問を、教員が出前講義を分担して行って いる。この分担作業の結果、かなりの数の高校に本学の特徴やカリキュラムが理解される 80 ようになり、一定数の高校とは信頼関係を築きつつあるという手応えがある。その他、オ ープン・キャパスや、できるだけ参加を心がけている業者による進学相談会は直接高校生 に本学を紹介する機会として、入学後のアンケート調査からも有効であることが分かって いる。とりわけ、2005 年度入試では定員確保を達成でき、入試広報活動の有効性を示すも のと評価している。 ② 入学者選抜方法の有効性 本学では多様な入学試験をそれぞれ適切な時期に、全体を通してみれば長期間にわたっ て実施している。これにより、本学の入学者選抜方法は多様な人材の受け入れに有効に作 用していると考えられる。しかしながら、大学を取り巻く状況の変化とともに、本学にと って、個々の入学者選抜方法の意味合いも変わりつつある。 入学者全体のほぼ半数は推薦入試による入学者であり、その大部分は指定校推薦による。 毎年、指定校と指定校枠のチェックを行っており、指定校の変遷がある一方で、一定数の 高等学校との信頼関係ができあがってきている。そうした高校では、本学のカリキュラム や教育の特色をよく理解しており、推薦を受ける受験生の大部分はオープン・キャンパス に参加し、事前に大学を理解しようと努めている。その意味において、今後も重要な入試 制度と考えられる。なお、推薦入試による入学者にはブックリストを基に読書感想文を課 し、教員によるコメントを添付して返送し入学後の勉学へつなげる工夫をしている。した がって、合格者は複数回のやり取りをすることになるが、高校側からも、こうした指導を 歓迎する意見が届いている。 推薦入試とアドミッションズ・オフィス入試が今後ますます有効性を強めることが期待 される一方で、一般入試の学力検査による選抜制度そのものの意味合いは薄れつつある。 しかし、センター入試や一般入試受験を指導している高等学校も多く、志望動機の高い受 験生がこの入試区分で入学してくることを考えれば、そのニーズに適切に応えてゆく必要 がある。 〔改善の具体的方策〕 ① 学生募集方法について 入試広報の基本は、本学のカリキュラムの内容と教育の質の高さを理解してもらうこと である。また、現在の入試制度を広く知らしめ、できるだけ多くの受験生をひきつけてい かなければならない。とりわけ、注目される入試制度であるアドミッションズ・オフィス 入試の良さは、この入試で入学した学生も本学の教員も認めるところなので、アドミッシ ョンズ・オフィス入試を充実させていく必要がある。 広報の取り組みも多様化し、変化も大きいため、マスコミや業者など外部と日常的に良 好な関係を保つことで、さまざまな情報を手に入れることも肝要である。また、今後の入 81 試広報にとって、大学ホームページの効果的な活用は緊急かつ重要な課題である。 現在、入学者の 9 割以上が県内高校の出身者である。したがって、近県に対する広報活 動の充実も課題である。財政的な問題はあるが、県内の高校に対するのと同様に高校訪問 を行い、進学相談会でできるだけ数多くの高校生に接触するなど、地道な活動を積み上げ ていかなければならない。 外国人留学生についても、国内で確保することが年々困難になっているため、とくに海 外提携校との交流を強化するなどして、全在籍学生数の一割程度の受け入れを図る必要が ある。 ② 入学者選抜方法について キリスト教精神に基づいたリベラル・アーツ教育を基本とする本学にとって、敬和学園 高校からの推薦入学者が中心的役割を果たし、大学がその特徴を出していくことができる 点は長所である。ところがこれまでは、高校より歴史の浅い大学と先輩格の高校の間で、 必ずしも教育方針の理解や連携の努力が充分でなかった。漸く最近になって、大学を理解 してもらうための出前講義、説明会や見学会などを積極的に企画し合うようになり、高大 連携の強化がなされるようになってきた。こうした試みを重ねることによって、リーダー 的存在となる人材を高校から受け入れられるかどうかが今後の課題となるであろう。しか し、単に進学と入試のつながりだけで終わるのではなく、教育内容に踏み込んだ高大連携 を進めるなど多様な交流を推進することによって、敬和学園高校との強い信頼関係を築く ことが今後必要となろう。こうした関係を築く必要性は、本学に安定した数の学生を送る 指定校にも言えることで、これまで以上の努力が望まれるところである。 また、入学後の勉学に困難がみられる学生に関しては、多様な学生をきめ細かく指導す ることが大学の責務である以上、アドバイザー制度の活用、チューター制度の導入、リメ ディアル教育の実施など教務上の新たな対処方法が必要である。 2.入学者受け入れ方針等 (1)入学者受け入れ方針と大学・学部の理念・目的・教育目標との関係 〔現状の説明〕 本学は建学以来、キリスト教精神に基づき、国際的教養豊かな人材の育成を教育理念と してきた。したがって、外国語習得とリベラル・アーツ精神を大切にした本学のカリキュ ラムを理解し、本学での学びを通じて、「人間とは何か、人生をいかに生きるべきかにつ いて考えてみたい人」を求める学生像として掲げ、多様な人材の確保をねらいとして入学 82 者選抜を行っている。具体的には、選抜方法の多様化、評価基準の多元化、受験機会の複 数化などにより、受験生の多様な個性や適性、意欲を幅広く評価することを主眼に入学者 を選抜している。 〔点検・評価の結果〕 建学の理念、教育目標は、受験生に本学の特色を理解してもらうための第一の手立てと して、大学案内や受験雑誌等で巻頭に掲げてきた。しかし、本学を志望する際に大学・学 部の理念や教育目標がどう影響しているかは把握しがたく、また、人文学部がどのような 学部であるのか分かりにくいという声も高校側からあった。そこで、2001 年度入試用大学 案内から「president's message」のページで、高校生に分かりやすい表現で本学の教育理 念、教育目標、リベラル・アーツについて説明しているのに加えて、進学説明会など機会 があるごとに本学の教育理念等の広報に努めている。さらに、2001 年度入試から導入され たアドミッションズ・オフィス入試の募集要項でも、求める学生像を明示している。とり わけ、アドミッションズ・オフィス入学試験では、本学の教育理念や目標を理解したから こそ、あるいはそれを魅力と感じたからこそ志願していることが明確になっている。 〔改善の具体的方策〕 建学以来の広報活動によって、本学の教育理念は、地域では徐々に理解されつつあると 感じられる。今後は、大学案内等の文書だけではなく、受験者世代の利用が活発になって きているウェブ上の大学ホームページなどにおいて、本学が目指す教育についてさらに分 かりやすく紹介し、本学が求める志願者層を開拓していく努力が必要であろう。 (2)入学者受け入れ方針と入学者選抜方法、カリキュラムとの関係 〔現状の説明〕 入学者選抜にあたっては、筆記試験では、英語、国語、小論文の 3 科目いずれについて も、「自分を知る。世界を知る」という本学が掲げる教育目標に即した問題を選んでいる。 大学における学業に対する志願者の適性を厳密にはかるため、従来行っていた選択式の問 題を 2003 年度入試から深い思考能力を求める記述型・論述型の論文に改めた。また、面接 試験でも、志願者が本学の教育理念を十分に理解しているか必ず確認することにしている。 このように、志願者が入学前に持つ期待と、入学後に受けるリベラル・アーツ教育とが齟 齬を来さない工夫を凝らしている。 〔点検・評価の結果〕 2003 年入試から導入した記述型・論述型の筆記試験は、高校教員や受験者からの評価も 83 高く、ほぼ完全に定着したと思われる。入試問題によって、大学生に必要な読解力と表現 力の基準を提示するためにも、今後も、受験生に考えさせるような筆記試験が望ましいと 考える。国語、小論文とともに、英語でも記述型・論述型を採用しているが、本学の教育 目標を提示するためには不可欠であろう。同様に、面接試験においても、質問事項につい て受験者と本学のカリキュラムとのミスマッチが入学後に生じないような配慮を行ってい る。 〔改善の具体的方策〕 英語の記述型・論述型問題については、簡単であっても、評価の善し悪しが明確化する ことも多く、さらに工夫を要するかもしれないが、受験者が興味を持てる問題を作り続け ていくことが肝要であろう。面接試験についても、質問内容と質問方法をさらに検討し、 本学が求める学生の獲得を図る必要がある。 3.入学者選抜の仕組み (1)入学者選抜試験実施体制の適切性 〔現状の説明〕 受験生の様々な状況や少子化などの社会状況を反映して、本学は多様な入学者選抜試験 を実施している。大別すると、次の 9 種類に分かれている。 アドミッションズ・オフィス(AO)入学試験、推薦入学試験(指定校推薦Ⅰ、指定校推 薦Ⅱ=特待生試験、公募推薦) 、一般入学試験(A、B、C 日程) 、センター試験利用入学試 験(第 1 期、第 2 期、第 3 期)、編入学入学試験(1 期、2 期,3 期) 、社会人入学試験(1 期、2 期、3 期)、外国人留学生試験(1 期、2 期) 、海外指定校入学試験、秋季入学試験で ある。 アドミッションズ・オフィス入学試験については、受験者は、本学教員との面談を行い、 受験者の適性を確認した上で、大学も受験者も両者を十分理解しあった上で入学が決定さ れる。 「面談型」と「オープン・キャンパス参加型」の 2 つの方法があり、前者の場合、受 験者は本学教員と2度にわたって面談を行う。後者の場合、年4回(2007 年度からは5回) 開催されるオープン・キャンパスの模擬授業に受験者が参加し、授業に関するレポートを まとめた上で、本学教員との1度の面談が行われる。 いずれも、特定の試験日はなく、3 月末まで随時申込を受けつけ、志願者の希望に合わせた日程を設定している。 推薦入学試験に関しては、指定校推薦Ⅰは、本学の指定校枠がある高校で選抜されるこ とを条件に、面接のみの試験となる。英語文化コミュニケーション学科を志望する場合は、 84 英語の評定平均値 3.5 以上を満たすことも条件となっている。指定校推薦Ⅰは専願扱いで ある。指定校推薦Ⅱ(特待生試験)については、専願扱いではないものの、出願には指定 校推薦 1 の条件のほか、評定平均値 4.0 以上を満たすことが出願条件となる。合格した者 は、最長で4年間の授業料全額免除の特典が与えられる。試験に関しては、面接、小論文、 調査書を基軸に総合的な判断で選抜される。公募推薦は、他大学との併願が可能で、試験 では面接と小論文が課される。 一般入学試験は、A 日程、B 日程、C 日程のいずれも、1 月から 3 月にかけて実施される。 「A 日程」では、英語・国語 2 科目の筆記試験、「B 日程」では、英語・国語いずれか 1 科 目の筆記試験が課される。 「C 日程」は「課題面接型」で、志願者には文章で課題が与えられ、 それを元に面接が課される。 センター試験利用入学試験については、第 1 期、第 2 期、第 3 期のいずれも 1 月から 3 月にかけて行われ、大学入試センター試験の成績を基にして合否が判断される。センター 試験については、英語と他 1 科目(全科目より選択)の受験が必要となっている。本学独自 の 2 次試験は課さない。また、 「センター試験利用」(第 1 期募集)の成績上位者には入学 金と同額を支給する奨学金給付制度があるほか、各学科の成績最優秀入学者には、入学金 と同額及び授業料の半額が入学年次に支給される。 そのほか、編入学(1 期) 、社会人(1 期)は 11 月に、外国人留学生(1 期)、編入学(2 期)、 社会人(2 期)は 1 月に、外国人留学生(2 期)、編入学(3 期)、社会人(3 期)は 3 月に実施さ れる。いずれも小論文と面接が受験生に課される。2007 年度入試から海外指定校入試が導 入された。対象となるのは、本学が指定した外国の教育機関である。 2006 年に導入した秋季入学試験は受験生の多様なニーズに着目した制度である。高卒生、 帰国子女、社会人、編入学、外国人留学生のいずれも応募でき、7月末から8月中に実施 される(2006 年度は 7 月 30 日) 。アドミッションズ・オフィス入試、一般選抜、センター 試験利用、帰国子女、社会人、編入学の 6 つの入試形態があり、このうち、アドミッショ ンズ・オフィス入試、センター試験利用、社会人、編入学については、上述の選抜形態と 同じである。一般選抜、帰国子女入試については、小論文と面接で選抜される。 (2)入学者選抜基準の透明性 〔現状の説明〕 すべての入試に当たっては、学長の総括と入試委員長の実務指揮のもとで、面接や試験 監督と採点には教員が、その他補助的業務には入試室職員の主導の下、各職員が当たり、 全学体制により実施している。いずれの試験についても、選抜に当たっては、高校の調査 書なども包括的に判断し、入試委員会、教授会で慎重に協議が図られる。 85 アドミッションズ・オフィス入学試験については、「面談型」と「オープン・キャンパ ス参加型」のいずれの面接に関しても、複数の教員(通常は1回の面接に就き 2 人)が担 当し、選抜基準の透明性を確保している。各教員は A+、A、B、C、D の評価を行い、受験 生の適性を判断する。 推薦入学試験に関しては、指定校推薦Ⅰは、複数の教員(通常は 2 人)が担当する。面 接評価において、得点が低い場合には大学生としての適性などを総合的に考え、不合格に することもある。指定校推薦Ⅱ(特待生試験)については、面接、小論文を基軸に総合的 な判断で選抜される。特待生試験という性質上、他の入試区分よりもさらに厳密な選抜を 行っている。小論文(100 点満点で評価)と面接(A+、A 、B、C、D 評価)については、 独自に点数化され、それぞれ別の採点者が担当する。採点者は小論文と面接のいずれも 2 人の計 4 人が担当し、小論文の結果が面接に影響しないように、そして、面接の結果が小 論文に影響しないように、別々の教員が担当する。小論文については、文章を要約させた 上で自分の意見をまとめる形の問題を採用している。合計得点とともに、受験者の総合能 力を考慮し、厳密に合否を決める。公募推薦は、他大学との併願が可能で、試験では面接 と小論文(100 点満点で評価)が課される。面接評価において、極端に得点が低い場合には 大学生としての適性などを総合的に考え、不合格にすることもある。 一般入学試験は、筆記試験である A 日程、B 日程のいずれも点数化されており、点数に よって合否が決定される。C 日程についても、面接評価(A+、A 、B、C、D)に従って 合否が慎重に検討される。 編入学、社会人、外国人留学生試験については、小論文(100 点満点)と面接評価(A+、 A 、B、C、D)に従って合否が検討される。小論文については短い文章や課題を与え、そ れについて自分の意見を述べる形の試験となっている。海外指定校入試については、日本 語(100 点満点)と面接評価(A+、A 、B、C、D)に従って合否が検討される。海外指定 校ということもあり、日本語の能力の把握に重点が置かれており、試験(日本語読解と作 文)と面接(日本語による質疑応答)が課されている。 〔点検・評価の結果〕 (1)入学者選抜試験実施体制について ここ数年導入した新たな入試区分についても、入試室や入試委員会が積極的に高校側に PRすることで、本学の多様な入試区分が理解されてきた。また、入学試験が一つ終わる たびに、試験実施に携わった教職員にアンケート調査を行い、点検と改善を繰り返し、遺 漏のない効率的な実施体制を維持している。 (2)入学者選抜基準の透明性について これまで問題は出ていない。これについては、アドミッションズ・オフィス入試も定着 86 したと言えるため、広く高校側に理解されてきた。指定校推薦Ⅱ(特待生試験)について も、高校側に採点基準などを十分に説明し続けている。 〔改善の具体的方策〕 本学の多様な入学者選抜試験は、受験者の様々な状況や少子化などの社会状況を反映し た時代に即したものであると考えられる。一方で煩雑に見える可能性も否定は出来ないた め、さらなる高校側への PR が不可欠となる。また今後、社会人入試の充実など、さらなる 社会状況に合わせた入試区分を導入することも入試委員会を中心に検討されている。 4.入試選抜方法の検証 (1)各年の入試問題を検証する仕組みの導入状況 〔現状の説明〕 入学試験問題は、入試実務を総括する入試委員長のもとで作成される。英語、国語、小 論文はいずれも複数の教員が作成を担当する。3 科目いずれについても作題にあたっては、 「自分を知る。世界を知る」という本学の掲げるスローガンに適した問題を選んでいる。 志願者の大学での教育の適性を厳密にはかるため、従来行っていた選択式の問題を 2003 年 度入試から基本的には廃止し、深い思考能力を求める記述型・論述型の論文に変更した。 実際の作成に当たっては、入試委員、作題者が複数の検討会議を開き、前年度問題を参考 に難易度の確認、新入生アンケート調査の中から入試問題に関わる結果などを参考として 出題方針が話し合われる。問題ができあがると、作題者以外の入試委員が加わってチェッ クを行っている。校正は 3 校まで行うが、初校段階で再度作題者のほかに入試委員も加わ って読み合わせを行っている。 〔点検・評価の結果〕 これまでのところ、採点に影響する重大な出題ミス・印刷ミスはない。入試問題の内容 についても、高校訪問の折りなどに、その完成度の高さやユニークな出題を評価する意見 をもらっている。 〔改善の具体的方策〕 記述型・論述型の論文は 2003 年入試から導入し、現在までにほぼ完全に定着したといえ る。いまのところ、高校教員や受験生からの評価も高い。入試問題を通じ、大学生として 必要な読解力、表現力の基準を提示する意味もあり、今後も引き続き、さらに受験生に考 87 えさせるタイプの出題が望ましいと考えている。国語、小論文とともに、英語も記述型・ 論述方を採用している点も、本学の求める教育を提示する意味で不可欠である。ただ、問 題によっては、受験者の中には英語で論述をさせる点については、簡単な問題であっても、 出来不出来がややはっきりすることも多く、さらに出題を工夫する必要があるかもしれな い。何れにせよ、今後も受験者に興味と関心を起こさせる問題作りを続けていかなければ ならない。 5.アドミッションズ・オフィス入学試験 (1)アドミッションズ・オフィス入試について、その実施の適切性 〔現状の説明〕 2001 年度入試から導入している。2006 年度の面談申込期間は、6 月 1 日から 3 月 30 日ま でである。2004 年度入試から、面談申込順に個々にスケジュールを調整しながら2回の面 談を行う「面談型」及びオープン・キャンパス参加後に 1 回の面談を行う「オープン・キ ャンパス参加型」を実施している。「面談型」については、1回の面談は 40 分から1時間 程度で、面談希望者から提出された「志望理由書」に基づいて志望理由と大学に対する関 心、期待を語ってもらい、本学教員からは教育方針、教育内容の説明を行い、併せて学内 の施設見学を実施する。2回目の面談では本人の個性や適性を見極めながら、大学が本人 の目標を実現できる場として適切であるか話し合う。「オープン・キャンパス参加型」に ついては、オープン・キャンパス体験レポートの提出と 1 回の面談を行うが、面談は面談 型の 2 回目に準じた内容としている。なお、全ての面談は、本学の教員 2 人が担当する。 面談終了後、入試委員会は詳細な面談記録に基づき出願許可を与えるかどうか審議する。 出願許可を得て志願者から出願があると、調査書を含めて総合的に合否を判断する。 また、2006 年度には以下の「アドミッション・ポリシー」を作成し、本学が求める学生 像を明確化し、多様な人材の確保をねらいとして入学者選抜を行っている。 ① グローバルな視点に立って、対話的思考、コミュニケーション、ボランティア精 神を重視する、国際的教養人を目指す人を求めています。 ② 本学における学びを通じて「人間とは何か、人生をいかに生きるか」を考える意 欲を持つ人を求めています。 〔点検・評価の結果〕 定員割れの状況に対応すべく導入されたアドミッションズ・オフィス入試は、入学者数の 増加につながっただけでなく、全入状態における有効な入試制度であると認識している。 88 すなわち、志願者が入学前に大学の教育内容を十分確認し、教員と話す機会を持つことに より、納得したうえで入学することができる。たしかに手間暇のかかる入試制度ではある が、大学側も志願者の意欲や熱意、人柄まで把握できるため、非常にパーソナルな形で入 学を許可できる点を高く評価している。なお、推薦入試による入学者に対してと同様に、 ブックリストを基に読書感想文を課し、教員によるコメントを添付して返送し、入学後の 勉学へつなげる工夫をしている。このように、早期に合格が確定した者も本学教員と複数 回の交流を持つことになる。高校側も、こうした指導を歓迎する意見を寄せている。 〔改善の具体的方策〕 本学のアドミッションズ・オフィス入試は人物重視を謳っており、学力を重視した合否 判定を行っていないため、今後は入学後の追跡調査をする必要があろう。そもそも学生の 学力の問題については、学力検査を課さないアドミッションズ・オフィス入試のみならず、 一般入試でもほぼ全入となっていることから、入学後の学習指導に工夫が必要な学生が増 加しつつあることは問題点であると言えよう。しかし、多様な学生を丁寧に指導すること が大学の責務であるならば、アドバイザー制度、チューター制度、リメディアル教育など を活用することが必要である。 6.入学者選抜における高・大の連携 (1)推薦入学における、高等学校との関係の適切性 〔現状の説明〕 推薦入学試験については、大学案内パンフレットや学生募集要項等の文書によって、 本学のホームページによって、また入試室職員による高校訪問、高校生及び高校教員 対象の進学説明会、オープン・キャンパス等の直接の交流によって、可能な限りあら ゆる機会を利用して高校への説明を行っている。また、指定校推薦Ⅱ(特待生試験)に ついても、本学が求める学生像、出願資格、採点基準などを高校に十分に説明する努力を 払っている。さらに、各受験者について必要な場合には、高校の担任教員や保護者との連 絡を取ること惜しんでいない。 〔点検・評価の結果〕 推薦入学試験の指定校推薦Ⅰと指定校推薦Ⅱ(特待生試験)とについて、あらゆる機会 に入試室や入試委員会が中心となって積極的な説明を行うことによって、高校側に本学の 推薦入試が理解されつつある。 89 〔改善の具体的方策〕 推薦入学試験についても、ウェブなどをさらに有効活用した広報活動が必要である。ま た、特待生の採用基準については、学内でも異論がある。したがって今後は、高校側 の意見を十分に聞きながら、採用基準の見直しを検討する必要があろう。 (2)入学者選抜における、高等学校の「調査票」の位置づけ 〔現状の説明〕 アドミッションズ・オフィス入試を除くすべての入学試験において、入学者の選抜に当 たっては、筆記試験と面接試験の成績だけに限らずに高校の調査書も斟酌しつつ、入試委 員会と教授会で慎重な合否判定が行われている。なお、英語文化コミュニケーション学科 を志願者は、英語の評定平均値 3.5 以上を満たすことが、指定校推薦Ⅱ(特待生試験)の志 願者は、評定平均値 4.0 以上を満たすことが出願条件となっている。 〔点検・評価の結果〕 英語文化コミュニケーション学科を志願者は、英語の評定平均値 3.5 以上を満たし、特待 生試験の志願者は、評定平均値 4.0 以上を満たすことが出願条件としている。しかし、本学 の場合、県内の高校からの入学者がほとんどであり、県内の高校間には大きな学力差が存 在する以上、調査書を合否判定の決定的材料とすることにはあまり意味がない。したがっ て、合否判定に当たっては、まず筆記試験と面接試験の結果を重視し、調査書を参考とし ながら慎重な協議をそれぞれの受験者について行っている。 〔改善の具体的方策〕 特待生試験については、評定平均値 4.0 以上を出願条件とし、面接と小論文とを基に総合 的な判断で、他の入試区分よりもさらに厳密な選抜を行っている。しかし、特待生制度の あり方については、学内にも議論があり、高校側にも十分に説明しながら、慎重に検討 していく必要があろう。 (3)高校生に対して行う進路相談・指導、その他これに関わる情報伝達の適切性 〔現状の説明〕 高校生に対しては、大学案内パンフレット、学生募集要項等の文書、本学のホーム 90 ページ、様々なメディア等による広報活動のほか、高校生対象の進学説明会、オープ ン・キャンパスにおける入試説明会と進学相談会等の機会を利用して説明を行ってい る。また、問い合わせが多い指定校推薦Ⅱ(特待生試験)についても、本学が求める学生 像、出願資格、採点基準などを高校に丁寧に情報伝達するよう努めている。 〔点検・評価の結果〕 2003 年度に入試室が強化され、高校生に対する積極的な広報活動を展開している。同時 に、出前講義や大学見学会等を頻繁に行うことによって、地域においてはかなりの数の高 校に本学の教育理念やカリキュラムが理解されるようになってきている。その他、オープ ン・キャパスや、できるだけ参加を心がけている業者による進学相談会も、高校生に本学 の教育を直接紹介する貴重な機会として活用している。 〔改善の具体的方策〕 現在、ウェブを利用して入試情報を得る高校生が増加している。したがって、大学のホ ームページ等を高校生がさらに容易に検索することができるように、いっそう見やすくす るように改め、より効果的な広報活動を行っていく必要がある。 7.科目等履修生・聴講生等 (1)科目等履修生、聴講生等の受け入れ方針・要件の適切性 〔現状の説明〕 科目等履修生制度は、学則第 41 条(科目等履修生)と「科目等履修生細則」によって運 用されている。 本学は 1991 年の開学当初から聴講生制度を設置していたが、1994 年大学設置基準の改 正に伴い、聴講生制度は廃止して、科目等履修生制度を発足させた。科目等履修生として 入学することができる者は、高等学校以上を卒業した者又はこれと同等以上の学力がある と認められた者とする。在学期間は 6 箇月または 1 年で、延長することができる。科目等 履修生として履修できる単位数は、原則として 1 学期 15 単位以内である。授業料は 1 単位 につき 1 万円である。 聴講生制度の頃及び科目等履修生制度発足当初は、この制度について積極的な広報をし ていなかったこともあり、履修者数は毎年数人程度であった。2000 年に出願手続きの簡素 化を行い、検定料を廃止し、イブニング・コースを開設し、チラシ、パンフレット等を作 成し地域に宣伝し始めたところ、履修者数はかなり増えた。 91 〔点検・評価の結果〕 かつての聴講生制度から科目等履修生の制度になって、単位の認定ができるようになっ た。これは累積単位加算制度にもつながる対応で、生涯学習として重要なことである。 2006 年度前期の科目等履修生数は 103 人、後期は 49 人であった。何年も継続して学ん でいる人たちも相当数おり、地域の人々の生涯学習の場としての役割は定着しつつあると 言えよう。科目等履修生には意欲的な人たちが多く、学生にとっても学びのよい刺激にな っている。こうした人たちは、本学の他の催しなどへの参加も多い。また小学校での英語 学習が話題になってきている状況で、小学校教員の受講を念頭に置いた「初等英語教育: 理論と実践」をエクステンション・コースの科目として 2004 年以来開講しており、社会の ニーズに応えることになっている。 (上記の履修者数が前期と後期で大きく異なるのは、こ の「初等英語教育:理論と実践」が前期開講の科目だからである。) 〔改善の具体的方策〕 本学ではほとんどの科目が科目等履修生の受け入れを認めているので、昼間は多様な科 目の履修が可能ということになる。イブニング・コースは数が限られるので、ニーズに応 えるような科目の出し方を検討していかなければならない。長期履修生制度の実現は科目 等履修生制度の発展としても実現させるべきである。 8.定員管理 (1)収容定員と在籍学生数、(編)入学定員と入学者数の比率の適切性 〔現状の説明〕 2006 年の在籍学生者は 714 人で、収容定員の充足率は 89%である。学科別に見ると 4 年 次生のみの英語英米文学科は 67 人で 67%、1 年次生から 3 年次生までの英語文化コミュニ ケーション学科は 221 人で 92%、国際文化学科は 297 人で 87%、1 年次生から 3 年次生の 共生社会学科は 129 人の 108%である。 入学定員 200 人に対する入学者数 190 人の比率は 95%である。学科別に見ると英語文化 コミュニケーション学科の入学者数は 73 人で入学定員の充足率 91%、国際文化学科の入学 者 68 人で充足率 85%、共生社会学科の入学者は 49 人で充足率 122%である(表 14、参照)。 〔点検・評価の結果〕 英語文化コミュニケーション学科と国際文化学科は入学定員を 100 人から 80 人に減らし 92 て入学定員充足率は上がって来たが、まだ定員割れしている。共生社会学科は収容定員の 充足率も入学定員の充足率も好調である。共生社会学科の発足により定員割れの状況が回 復してきた。 〔改善の具体的方策〕 共生社会学科は来年度完成年度を迎えるが、その後の様子を見守る必要がある。 (2)定員充足率の確認の上に立った組織改組、定員変更の可能性を検証する仕組みの導 入状況 〔現状の説明〕 本学は、定員割れの状況に対して新たな改組転換の改革をした所であるので、まだ定員 充足率の確認の上で改組を考える時点ではない。ただし、定員変更の可能性はないわけで はない。 〔点検・評価の結果〕〔改善の具体的方策〕 特に英語文化コミュニケーション学科の定員充足率と国際文化学科の定員充足率の変化 に注目しつつ、長い目で見てさまざまな可能性を考えていくことが必要であろう。 9.編入学者・退学者 (1)編入学生及び転科・転部学生の状況 (a)編入学生の状況 〔現状の説明〕 編入学者は 2002 年度 3 人(英文 3 人)、2003 年度 5 人(英文 2 人、国際 3 人)、2004 年度 1 人(国際 1 人)、2005 年度 3 人(英文 2 人、国際 1 人)、2006 年度 10 人(英文 3、 人、国際 6 人、共生 1 人)である。 〔点検・評価の結果〕 編入学者数の変遷は、1991 年度開学であるため、編入学者の受け入れは翌年からとなる。 1992 年度 2 人(英文 2 人)、1993 年度 3 人(英文 3 人) 、1994 年度 4 人(英文 2 人、国際 93 2 人) 、1995 年度 4 人(4 人とも英文)、1996 年度 4 人(英文 3 人、国際 1 人)、1997 年度 2 人(2 人とも英文)、1998 年度 5 人(英文 3 人、国際 2 人) 、1999 年度 5 人(英文 3 人、 国際 2 人) 、2000 年度 9 人(英文 3 人、国際 6 人) 、2001 年度 4 人(英文 1 人、国際 3 人) である。 編入学については教務委員会が審査し、これまでの他の教育機関での修得単位数を本学 の科目に対応させて計算し、可能な限り卒業要件単位に認定していくという作業を行う。 このとき、前に在籍していた教育機関での履修状況について、編入希望者と面談を行い、 成績証明書に書かれている修得単位とその授業の内容や進度について、詳細に調査した上 で本学での単位数を決定している。また、そのように認定された単位数を勘案しながら、 編入年次を決定している。通常は 3 年次への編入であるが、2 年次の編入も可能である。 編入学者は、年間数人であり、カリキュラムに大きな変更を要求するような数ではない。 英語英米文学科及び英語文化コミュニケーション学科への編入学は、本学の教職課程で英 語の教員免許を取得することを目的とする学生が大半である。編入学者が本学の前に在籍 していた高等教育機関は、様々な専門学校や短期大学のほか、4 年制大学である。専門学校 や短期大学の学生が本学に編入学するのは、主として学士号(及び教員免許)の取得を目 的とする場合が多く、4 年制大学から編入学するものの中には、その大学に適応できなかっ た、一人暮らしが出来ない、あるいは学業不振である、などの理由で本学を志望する者も いる。 〔改善への具体的方策〕 編入学について問題は今のところ認識されていない。従って、現行の制度を変更する必 要はない。国際文化学科において社会と公民の教職課程が開設されたので、今後、社会や 公民の免許を取得することを目的とするものが編入学を希望することもあると思われるの で、対応できるよう、準備を怠らないようにすべきである。また、編入学の理由が前に在 籍した大学での不適応であった場合、本学でも不適応にならないよう、教員側からの指導 が必要になってくることも想定しておく必要がある。この場合、アドバイザーと並んで、 教務委員の教員がその点について継続的に指導できるようにしておきたい。また、そうし た点については、来年度以降、ティーチング・アシスタントも一定の役割を担えるかもし れない。 (b)転科学生の状況 〔現状の説明〕 本学は人文学部のみの単科大学であるため、転部学生は存在しない。以下では転科学生 についてのみ述べる。転科を希望する学生は、アドバイザーとの相談の上で、「転科願」に 94 必要事項と転科する理由を記して、教務係に提出する。転出する学科の学科長は、転科希 望学生と面接の上で、それを学科会議で諮り、承認されればその学生の転出を許可する。 同様に、転入先の学科の学科長も同様に転科願を受け、転科希望学生と面接の上で、学科 会議で承認が得られれば、その学生の転入を許可する。また、学則第 33 条にも示されると おり、そうした転科は、最終的には、教授会の議をへて承認される。 転入先の学科の定員が満たされている場合は、転科を認めないこともあることになって いるが、過去 5 年間についてこうしたケースは出現していない。また、履修の仕方に著し い違いがあるため、英語文化コミュニケーション学科や国際文化学科の学生が共生社会学 科に転ずることは、入学直後でなければ、原則的に認めていない。しかし、それ以外の場 合については、転科はそれぞれの学生の履修状況を見たうえで承認しており、転科はかな り容易であると思われる。 2006 年度の転科については、英語英米文学科(2003 年度以前に入学した学生)から国際 文化学科に転じたものが 2 人、英語文化コミュニケーション学科から共生社会学科に転じ たものが 1 人、国際文化学科から英語文化コミュニケーション学科に転じたものが 2 人、 共生社会学科から英語文化コミュニケーション学科に転じたものが 1 人、同じく共生社会 学科から国際文化学科に転じたものが 3 人である。 〔点検・評価の結果〕 本学の転科の制度は自由度が高く、学生の理由が正当なものであれば、転科することは 容易である。過去 5 年間のうち、上段で報告した 2006 年度より前の転科の年次推移は次の ようである。(英語英米文学科は 2004 年度より英語文化コミュニケーション学科に名称変 更しているが、2003 年度以前に入学した学生は英語英米文学科に所属するので、以下でも そのように記述している。 ) 2002 年度 英語英米文学学科→国際文化学科:8 人、国際文化学科→英語英米文学科:1 人 2003 年度 英語英米文学科→国際文化学科:5 人、国際文化学科→英語英米文学科:1 人 2004 年度 英語英米文学科→国際文化学科:4 人、国際文化学科→英語英米文学科:3 人 2005 年度 英語英米文学科→国際文化学科:7 人 英語文化コミュニケーション学科→国際文化学科:1 人 転科の理由については近年、かなり固定化した傾向が見られる。すなわち、英語文化コ 95 ミュニケーション学科(英語英米文学科)から国際文化学科への転科においては、英語の 授業についていけず、このままでは卒業が危ぶまれるという学生が、外国文化について学 びたいという希望を持ち続けたまま、語学の授業の負担が少ない国際文化学科へ転ずるも のである。あるいは、国際文化学科から英語文化コミュニケーション学科への転科におい ては、自らの進むべき道を考えた結果、英語の教員免許状を取得することを希望して、当 該免許を取得するのに有利であり、また英語を専門的に学ぶことのできる英語文化コミュ ニケーション学科へと転ずるものである。いずれも合理的な理由とみなされるので、転科 を許可している。 本学においては、社会福祉士国家試験受験資格課程の授業など一部の授業を除いて、あ る学科に所属する学生が他の学科の授業を履修することには制限はなく、他学科のゼミで も自由科目として履修することが出来ることから、学生が自らの興味の変化に応じて、他 学科の授業を多く履修し、それが高じて転科を希望することもある。 近年、学生の中には転科を繰り返し、入学時にもともと所属していた学科へ転入する、 いわゆる「出戻り」のケースが出現した。言うまでもなく、こうした行為は望ましくなく、 これまでも学生に注意してきたが、当該のケースでは諸般の事情により認めた経緯がある。 しかし、こうした複数回にわたる転科は履修の継続性という点から問題が多く、体系的に 知識を身に付ける妨げになることから、1 人の学生が本学在籍中に転科できるのは原則的に 一回までにすべきであると、教務委員会では申し合わせている。 〔改善への具体的方策〕 複数回にわたる転科という問題については、すでに解決済みである。しかし、これまで 学生の意志を尊重するあまり、学科を隔てる「垣根」をやや低く設定しすぎた嫌いがある。 したがって、転科についての具体的な判断基準をある程度、各学科間で申し合わせておく 必要がある。 本学はリベラル・アーツ・カレッジを標榜するものであり、その観点から、転科が難し いというのでは困るが、同時に、先に述べた理由により、学生があまりに安易に転科する ことも避けなければならない。そのバランスを探る努力を、今後とも継続してゆく必要が あるだろう。 (2) 退学者の状況と退学理由の把握 〔現状の説明〕 退学者は、2002 年度 24 人、2003 年度 24 人、2004 年度 23 人、2005 年度 36 人である。 除籍者は 2002 年度 2 人、2003 年度 5 人、2004 年度 1 人、2005 年度 2 人である。 96 〔点検・評価の結果〕 退学者数・除籍者数は、概ね、それぞれ在学者数の 5 パーセント、0.2 パーセントである。 参考のために、退学者の推移は、1991 年度 8 人、1992 年度 23 人、1993 年度 23 人、1994 年度(完成年度)22 人、1995 年度 18 人、1996 年度 31 人、1997 年度 36 人、1998 年度 29 人、1999 年度 25 人、2000 年度 13 人、2001 年度 28 人である。 除籍者の推移は、1991 年度 0 人、1992 年度 0 人、1993 年度 4 人、1994 年度(完成年 度)3 人、1995 年度 6 人、1997 年度 3 人、1998 年度 4 人、1999 年度 5 人、2000 年度 5 人、2001 年度 6 人である。 退学は進路変更や学業不振、勉学意欲の減退、疾病などが理由である。日本経済の現状 を反映して、学生を取り巻く経済的状況も必ずしも良好とは言えず、保護者の経済的困窮 が背後にある場合もある。進路変更では、専門学校やその他の実業学校を目指す者や、首 都圏の有名大学に合格したためという学生もいる。また、少数ではあるが、学生本人は必 ずしも本学に入学したいと思っていなかったのに、親の勧めなどがあって、やむなく入学 してきた(いわゆる不本意入学)という学生がいるが、こうした入学時の事情が学業不振 や意欲の減退に繋がっていることもある。疾病は、身体的なものと精神的なものがある。 退学後に病状が回復して再入学を希望することもある。 除籍は主として学業意欲の喪失や経済的理由による。本学で学業を継続することが不可 能になったにもかかわらず、退学届を提出せず、学納金が支払われない状態で半期を過ご してしまい、しかも学納金を支払うことができず、除籍にいたるという場合が多い。通学 しなくなったのでアドバイザーが連絡を取ろうとしたら、連絡が取れなくなっていた、と いう場合もかつてはあった。また、残念ながら、本人死亡により除籍となるケースも存在 した。 退学を申し出た学生については、一度はアドバイザーが学生と(しばしば学生の親を交 えて)面談を行い、退学の決断にいたった理由を聞き取ると共に、場合によっては慰留す ることもある。言うまでもなく、退学については、学生の意志を尊重し、助言する。この ように、学生一人ひとりを大事にするという本学の教育方針に合致するように指導が行わ れている。 全ての退学や除籍は教授会での協議事項に挙げられ、それぞれのアドバイザーから退学 や除籍に至った経緯が説明された後に承認される。教員が学生たちの動向を知るのに、こ うした情報を共有することは重要なことであると本学では認識されている。 〔改善への具体的方策〕 退学の理由のうち、進路変更と勉学意欲の減退は、本学のカリキュラム・授業内容・雰 囲気・設備などに満足できなかった、あるいは馴染めなかったということである。これは 97 退学者によって本学が蒙る経済的損失の問題ではなく、本学の大学としての魅力に関わる 問題である。不本意入学であっても、本学に馴染んで、学業でも人間的魅力の点でも成長 していってくれるような、カリキュラムや雰囲気を醸成するように努力していく必要があ る。このためには、不満を持っている学生を発見し、その意見を自由に述べさせるような ことが必要になるが、学生と一番懇意にしていると思われるアドバイザーなどが知り得た、 他の教職員が気づかない学生本人の困難や、本学の改善すべき点などを学科会議で報告す るように今後とも努める必要がある。 除籍については、その可能性のある学生に話を聞くなどして、出来るだけ早期に問題を 整理してあげるような対応をより徹底すべきであると思われる。また、学生に経済的困難 があって、除籍(あるいは退学)になる可能性がある場合は、本学で準備している各種奨 学金(敬和学園大学緊急援助資金、敬和学園大学学業支援奨学金など、)の存在を早めにア ドバイザーのほうから学生に伝え、学業継続を可能にする方策を示すように努力すべきで ある。 98 第5章 教員組織 〔目標〕 1.教育理念を実現するのにふさわしいバランスの取れた教員組織とする。 2.適材適所の教員を配置し、公平で透明な教員の募集・昇任を行う。 1.教員組織 (1) 学部・学科等の理念・目的並びに教育課程の種類・性格、学生数との関係における 当該学部の教員組織の適切性 〔現状の説明〕 本学は、1 学部 3 学科で構成された収容定員 800 人という小規模な大学であり、教員組 織も専任教員 33 人で構成されている。そのうち、教授が 15 人、助教授が 10 人、講師が 8 人である(表 19、20、参照)。 英語文化コミュニケーション学科は、教授 7 人(学長を含む)、助教授 5 人、専任講師 2 人の 14 人で構成され、英語文化コースは、イギリス文学系教員 3 人(学長を含む) 、アメ リカ文学系教員 3 人で構成され、コミュニケーション・コースは、英語学系教員 2 人、コ ミュニケーション系教員 4 人、教育学系教員 2 人で構成されている。 国際文化学科は、教授 6 人、助教授 2 人、専任講師 1 人の 9 人で構成され、比較文化コ ースは、宗教思想系教員 1 人、文化人類学系教員 1 人、歴史学系教員 2 人、文学文化系教 員 2 人で構成され、国際関係コースは、経済系教員 1 人、法政治学系教員 2 人で構成され ている。なお、2006 年度後期には、国際関係コースに情報系の教員 1 人が着任し、国際文 化学科の専任教員は 10 人となり、大学全体では 34 人となった。 共生社会学科は、教授 2 人、助教授 3 人、専任講師 1 人の計 6 人で構成され、共生とケ ア・コースは、思想倫理系教員 2 人、社会福祉系教員 3 人、保健医学系教員 1 人で構成さ れている。 また、専任教員に準ずる英語契約講師 3 人、日本語契約講師 1 人が学部に属している。 さらに、特任教授が国際文化学科に 1 人、共生社会学科に 2 人、学部に属する特任講師 1 人、客員教授が、英語文化コミュニケーション学科と国際文化学科にそれぞれ 1 人所属し ている。兼任教員は 38 人である。 なお、学部・学科の理念・目的等と教員組織との関係に関しては、第 2 章を参照。 〔点検・評価の結果〕 2006 年度の英語文化コミュニケーション学科(1~3 年次生)と英語英米文化学科(4 年 99 次生以上)の在籍学生数の合計は 288 人、国際文化学科の在籍学生数は 297 人、共生社会 学科の在籍学生数(1~3 年次生)は 129 人であり、在籍学生の総数は 714 人である(表 14、参照) 。 英語文化コミュニケーション学科並びに英語英米文学科の教員 1 人に対する平均在籍学 生数は 20.6 人、国際文化学科の教員 1 人に対する平均在籍学生数は 33.0 人、共生社会学科 の教員 1 人に対する 1~3 年次生の平均在籍学生数は 21.5 人であるが、現在のように推移 すれば共生社会学科が完成年度に達した時には 28.7 人前後となると予想される。 また、大学全体で教員 1 人に対する平均在籍学生数は、21.6 人となる。本学は少人数教 育を標榜しているが、専任教員 1 人に対して 1 学年あたり平均 5 人であり、文字通り少人 数教育を実践していると言えよう。 〔改善の具体的方策〕 国際文化学科の専任教員 1 人に対する平均在籍学生数は、他の学科に比べて高いが、2006 年後期に専任教員が 1 人加わり、また近い将来に経営系の教員 1 人の教員採用する予定で あるので、 その場合には現在と同じ在籍学性数と仮定すると、 33.0 人から 27.0 人に減少し、 かなり緩和される。 また、特任教員制度は、定員割れに対する緊急避難的な措置として、専任教員の代わり に定めた制度であるが、定員の回復に応じて、専任教員に変えていくことが望ましい。 (2)主要な授業科目への専任教員の配置状況 〔現状の説明〕 本学では、共通基礎科目の必修科目は一部の情報処理科目を除いて専任教員が担当し、 また選択必修の基礎演習や外国語科目の主要な科目は専任教員が担当している。また、学 科専門科目では、演習科目は選択必修であるが、すべて専任教員が担当し、基幹科目は選 択必修科目であるが、国際文化学科の一部を除いて、すべて専任教員が担当している(表 3、 参照) 。 〔点検・評価の結果〕 専任教員の担当率は、共通基礎科目では必修科目の 87.5%、選択必修科目の 54.8%、学 科専門科目では、英語文化コミュニケーション学科の必修科目の 100%、選択必修科目の 100%、全科目の 93.6%、国際文化学科では必修科目はないが、選択必修科目の 85.6%、 全科目の 84.7%、共生社会学科の必修科目の 100%、 選択必修科目の 100%、 全科目の 92.9% である。とりわけ英語文化コミュニケーション学科と共生社会学科の必修科目と必修選択 100 科目は専任教員がすべて担当していることは注目に値する。 〔改善の具体的方策〕 国際文化学科の 2006 年度後期に情報処理系の専任教員が 1 人着任し、また 2007 年度以 降に経営系の専任教員を採用する予定であり、主要な科目の専任教員の担当率は上昇する と思われる。 (3)教員組織における専任、兼任の比率の適切性 〔現状の説明〕 本学は、少人数教育に力を入れると同時に、専任教員が学生を育てることに力を入れて いる。とりわけ、主要な講義課目と演習科目は専任教員が行い、兼任教員が多く担当して いるのは、主に外国語科目と教職科目、それに本学の教員がカバーできない領域の講義科 目である。 なお、本学では、原則として、次の順序で科目の開講を決めている。 ① 原則として専任教員が担当する。 ② 専任教員が担当できない領域であれば、兼任教員が毎週担当する。 ③ 兼任教員が毎週担当できない場合には、兼任教員が集中講義を行う。 ④ 専任教員も兼任教員も担当できない場合には、その年度は開講しない。 〔点検・評価の結果〕 本学の専任教員の担当比率は、共通基礎科目では、全科目 108 コマの 68.5%、共通専門 科目では全科目 27 コマの 70.4%ある。学科専門科目の専任教員の担当比率は、英語文化コ ミュニケーション学科の全科目 65 コマの 93.8%、 国際文化学科の全科目 72 コマの 84.7%、 共生社会学科の全科目 28 コマの 92.9%である。大学全体では、すべての科目 300 コマの 80.3%を専任教員がカバーしている。他大学に比べて専任教員の担当比率は、極めて高い。 〔改善の具体的方策〕 カリキュラム改定を進める際には、できるだけ専任教員がカバーするように心がける。 カバーできない領域を兼任教員が担当する場合には、新たに開講する科目と同時に閉講す る科目も視野に入れ、スクラップ・アンド・ビルト方式で、科目の新設を考えることが必 要である。 101 (4)教員組織の年齢構成の適切性 〔現状の説明〕 専任教員の年齢構成は、71 歳以上 1 人、66~70 歳 3 人、61~65 歳 2 人、56~60 歳 4 人、51~55 歳 5 人、46~50 歳 3 人、45~49 歳 6 人、36~40 歳 6 人、31~35 歳 3 人であ る(表 21、参照)。 〔点検・評価の結果〕 専任教員の年齢構成は、71 歳以上 3%、66~70 歳 9%、61~65 歳 6%、56~60 歳 12%、 51~55 歳 15%、46~50 歳 9%、45~49 歳 18%、36~40 歳 18%、31~35 歳 9%であり、 バランスが取れている。本学の教員の定年は 70 歳であるが、70 歳以上の教員は、定年を越 えた例外が適用されている学長である。 〔改善の具体的方策〕 今後も、新任人事を行う時には、教員組織全体の年齢構成にも配慮していくべきである。 (5)教育課程編成の目的を具体的に実現するための教員間における連絡調整の状況とそ の妥当性 〔現状の説明〕 4~5 年に一度の大幅なカリキュラム改革は、各学科の委員で構成されている FD・カリ キュラム委員会主導の下で、大学全体のカリキュラム改革の方針を決めて原案を作成し、 それを各学科で検討して修正を加え、FD・カリキュラム委員会と各学科の間で何度か議論 をやり取りして、教授会で決定する。また、大幅なカリキュラム改定の間に行われる小さ な改定は、各学科で発意された案を FD・カリキュラム委員会で、さまざまな角度から検討 した上で、原案を教授会に諮る。また、以前は、FD 委員会とカリキュラム委員会は別の委 員会であったが、大きな改革の間の現在は、両者を一つにまとめた組織にしている。 〔点検・評価の結果〕 カリキュラム改革は学科主導で行うと大学全体のバランスが崩れ、大学全体の利益が損 なわれる可能性があるので、大学全体の意向と学科の意向のバランスを図りつつ改革しな ければならない。FD・カリキュラム委員会と各学科の間での議論の往復が大切である。 また、教員が転任したり退職したりした場合には、学科の主導で、新任人事を起こすが、 カリキュラム改革を視野に入れる場合は、必ずしも従来の科目の担当者を採用するばかり 102 でなく、学科の利益ばかりでなく全体の利益を考えて、新しい科目の担当者を採用するこ ともあり得る。その場合には、学科間の調整などで、学長や学科長の調整作業も重要な働 きをする。 〔改善の具体的方策〕 大幅なカリキュラム改革は、2004 年度カリキュラム改革が完成年度を迎えた後に、2009 年度を予定している。そのために 2008 年度中にはカリキュラム改革の原案を作成し決定し なければならない。そのためには、大学全体のビジョンと方針を明確にし、その中で各学 科の方針も明確にしなければならない。 (6)教員組織における外国人研究者の受け入れ状況 〔現状の説明〕 本学は、国際主義を教育研究理念の一つに掲げているが、基本的には国籍を問うことな く人事を進めている。現在、英語文化コミュニケーション学科には、3 人のアメリカ国籍の 教員が所属し、国際文化学科には 1 人の中国国籍の教員が所属し、共生社会学科には 1 人 の韓国国籍の教員が所属している。また、人文学部には 1 人のアメリカ国籍の契約講師、1 人のオーストラリア国籍の契約講師、1 人のニュージーランド国籍の契約講師が所属してい る。契約講師を含めて大学全体では 8 人の外国人教員が所属している(表 20、参照) 。 また、人文学部には 1 人のアメリカ国籍の特任講師が所属している。この他、兼任講師 には、フランス国籍 1 人、ドイツ国籍 1 人、中国国籍 1 人、韓国国籍 1 人、イタリア国籍 1 人がいる。 〔点検・評価の結果〕 専任教員に対する外国人教員の比率は、英語文化コミュニケーション学科では 21.4%、 国際文化学科では 11.1%、共生社会学科では 16.7%、大学全体では 24.2%であり、4 人に 1 人が外国人教員であり、その比率はかなり高い。また、外国人専任教員 1 人に対する平均 在籍学生数は、全国 714 大学の中で毎年 20 位以内にランクされている。 〔改善の具体的方策〕 今後も、国籍に囚われることなく適任者を採用する方針を貫いていくことが、今後の社 会を見据えるとふさわしいと思われる。 103 (7)教員組織における女性教員の占める割合 〔現状の説明〕 本学は、キリスト教主義を教育研究理念の根底に据えている関係から、男性か女性かを 問うことなく人事を進めている。現在、女性教員は英語文化コミュニケーション学科では 6 人、国際文化学科では 5 人、共生社会学科では 2 人、契約講師では 2 人、大学全体では、 専任教員 33 人中、15 人が女性教員である(表 20、参照)。 〔点検・評価の結果〕 専任教員に対する女性教員の比率は、英語文化コミュニケーション学科では 42.9%、国 際文化学科では 55.6%、共生社会学科では 33.3%であり、大学全体では 45.5%である。女 性教員の比率は学問分野を問わず、他大学に比較して高い。学生の男女比はほぼ 1 対 1 で あるが、教員の男女比もそれに近づいている。 〔改善の具体的方策〕 今後とも、人事において男女の違いを問うことなく、適任者を採用する方針を堅持して いきたい。 2.教育研究支援職員 (1) 実験・実習を伴う教育、外国語教育、情報処理関連教育等を実施するための人的補 助体制の整備状況と人員配置の適切性 教員と教育研究支援職員との間の連携・協力関係の適切性 ティーチング・アシスタントの制度化の状況とその活用の適切性 〔現状の説明〕 英語のネイティブ・スピーカーの担当する外国語科目では、優秀で意欲的な学生にボラ ンティアとしてネイティブ・スピーカーを補佐している。また、情報処理の CPU 教室の管 理並びに教員のパソコンのトラブル処理と図書館の事務処理などを兼ねて、情報処理のア ルバイト学生を雇っている。 さらに、ボランティア・コーディネーターの職員が、共生社会学科の社会福祉現場実習 の実習助手を兼ねて、社会福祉現場実習や事前実習などの実習実務を処理している。また、 「まちの駅」担当の職員が、週三日はボランティア・センターでボランティア・コーディ 104 ネーターの仕事を補佐しいている。 このような学生や職員のシステムとは別に、2006 年 12 月から、①LL 教室で TOEIC 自 習学習システムを支援するための TA、②留学生の生活を支援し、地域の公的情報紙を翻訳 して国際交流を促し、本学に来る短期留学生の送迎並びに大学間の交流を支援するための TA、③「まちの駅よろず・新発田学研究センター」に常駐し、地域交流や地域研究を支援 するための TA、という 3 種類の TA を導入して、新たに TA 制度を新たに発足させた。 〔点検・評価の結果〕 従来は大学の構成員である教員と学生と職員は、それぞれ異なった役割を果たす組織と 考えられてきた。しかし、これらの三者は密接な相互関係にある。本学では、教員と事務 職員の間はかなり近い。教員も事務的な事柄をかなりこなし、職員も教育的配慮で学生に 接することを心がけている。教員と事務職員が委員会の委員となって協力して大学の管理 運営にあたっている。また、教員と学生の間もかなり近い。しかし、今後は大学教育にお いて、教員と学生の間のグレー・ゾーン、教員と事務職員の間のグレー・ゾーンが重要な 働きをしていく。 〔改善の具体的方策〕 教員・職員・学生の三者の関係について、新しい大学の組織を教育理念に基づいて、新 しいコンセプトで形成していくことを心がけなくてはならない。ボランティアとアルバイ トと TA の三者の区別を明確に把握しなければならない。また、ボランティア精神を損なわ ない形で TA 制度を導入していかなければならない。 3.教員の募集・任免・昇格に対する基準・手続 (1) 教員の募集・任免・昇格に関する基準・手続の内容とその運用の適切性 〔現状の説明〕 本学では従来から教員の新任や昇任に際して、大学教員の職務と資質に関して教育・研 究・管理運営・社会貢献の四つの視点から適性を審査してきた。しかし、その主たる所は 研究の面に注がれ、専任講師となるためには論文 3 点以上、助教授には 6 点以上、教授に は 12 点以上が基準であった。また、教育の面では、原則として大学での教育歴が問われ、 専任講師には非常勤歴があること、助教授昇任には 3 年以上の専任講師歴、教授昇任には 5 年以上の助教授歴が原則として求められていた(旧「敬和学園大学教員選考細則」)。 しかし、ある分野の教員は論文という表現方法に合致せず昇任が遅れる傾向があること 105 から、学長の発意で小委員会の検討を経た後に大学運営委員会並びに教授会の承認を経た 後に 2005 年度末からポイント制の新任制度・昇任制度に改めた(「敬和学園大学教員選考 細則」 、参照)。 すなわち、教授となるためには、 (助教授昇任以後)業績点数が 35 点以上で、5 年以上の 助教授歴があり、助教授になるには、(専任講師着任以後)業績点数が 20 点以上で 3 年以 上の専任講師歴があり、 専任講師になるには業績点数が 15 点以上を基準としている。また、 業績点数のうち、教育・管理運営・社会貢献に関して 2 割以上 4 割以下を求めている。 業績点数のいくつかを例示すると、研究面では、著書並びに博士論文 10 点、修士論文 3 点、レフェリー付き研究論文 8 点、レフェリーなし研究論文 5 点などとなっている。教育 面では、啓蒙書・教科書・辞書・辞典 5 点、教育改善の特記すべき業績 3 点、優れた教育 実践 2 点などとなっている。管理運営面では、大学運営の特記すべき業績 3 点、各種学内 委員会の特記すべき業績 3 点などとなっている。社会貢献面では、社会教育・生涯教育で の顕著な業績 3 点、国際会議の企画・運営・研究報告など 3 点、地方公共団体での顕著な 業績 3 点、NGO・NPO に係わる顕著な業績 3 点などとなっている。企業から大学教員にな る場合は、他の方法によっても研究や教育を確認することも認めている。また、新任の場 合には、公募を原則としている。 〔点検・評価の結果〕 主に著書と論文による研究業績を中心とした新任・昇任制度からポイント制度の新任・ 昇任制度に移行して、すでに新任人事と昇任人事をそれぞれ何件か終えているが、総合的 に評価する傾向が強まってきている。ただし、研究評価は、以前と変わることはない。ま た、昇任人事ではポイント制度がより有効に働いているが、基準点を遥かに越えている。 〔改善の具体的方策〕 まだポイント制新任・昇任システムに移行したばかりであるので、改善するまで様子を 見なければならないが、ポイントが極めて高い場合、研究面以外のポイントを 2 割から 4 割求めている点は、全体の 2 割~4 割を求めることは不可能に近くなるので、「基準点の 2 割から 4 割」であることを合意し、明記した方がよいであろう。 (2)教員選考基準と手続きの明確化 〔現状の説明〕 新任・昇任人事は、各学科が発意し、3 学科長で調整の上、大学運営委員会の議を経て、 資格審査委員会が構成されて、審査にあたる。資格審査委員会は、審査結果について大学 委員会並びに教授会に報告する。教授会では、報告の会議の後に、二度目の会議で無記名 106 投票する。出席者の 3 分の 2 以上の賛成によって可否を決定する(「敬和学園大学教員選考 内規」第 7 条、第 8 条) 。また、教授会の決定は理事会の承認を経なければならない。 資格審査委員会は、当該学科長が委員長になり、学問領域が最も近い者が主査と副査と なり、他の 2 人の学科長がそれに加わる。主査と副査を中心にして公募の応募者の業績、 履歴、教育観についてのエッセイを見て候補者を絞る。原則として複数の候補者と資格審 査委員会の面接を経た後に、最終候補者を決定する。 〔点検・評価の結果〕 従来は、新任人事も昇任人事も、教授会とは別に教授のみで構成された人事教授会で審 議されていた。この方法だと当該学科以外の助教授と専任講師は学科会議でも教授会でも 審査の協議に加わることができなかった。2003 年度に着任した新井明学長は、第一に、人 事教授会を撤廃して、新任人事も昇任人事も人事に係わることはすべて教授会の協議事項 に変えた。また、従来の人事教授会では過半数で決していたが、人事は教授会の最も重要 な協議事項であるとして、3 分の 2 の賛成で決する方法に改めた。また従来の人事委員会は 学科内で立ち上げていたが、新たに設置した資格審査委員会には他学科の学科長が入り、 また主査や副査も場合によっては学科を越えて出ることもあり得るようにした。また、人 事を進めるにあたり 3 学科長の調整の会議が新たに入ることになった。これで人事に纏わ る疑念・紛糾等は一切なくなった。また、学科の壁を越えて、大学全体で活力がみなぎる 源となった。 〔改善の具体的方策〕 現在の人事にかかわる手続はうまくいっている。ただ、学科の利益を越えた大学全体の 利益を考えて改革をする場合には、学科主導でなく、学長と学長の意向を反映した 3 学科 長のリーダーシップの下で人事を行うシステムを考えなければならない。 (3)教員選考手続における公募制の導入状況とその適用の適切性 〔現状の説明〕 本学は、1991 年に開学して 1994 年に完成年度を迎えた後の人事はすべて、原則として 公募制で行ってきた。ただし、リクルートしにくい分野の人事を行う際には、公募ではな く推薦で行った人事も例外的にはある。 当初の公募は、諸大学院や学会や専門雑誌の公募覧等に公募案内を郵送していたが、イ ンターネットの普及と共に現在では学術情報センターの公募欄を中心に公募案内を送って いる。 107 〔点検・評価の結果〕 公募は、比較的に短い時間で、人間的な関係に縛られない幅広い人材の候補者を数多く 集めることができるメリットがある。しかし、その反面に、当該領域の質の高い人材を数 多く候補者として確保することは容易ではなく、最終候補者として決定した後も断られた り、短期間で移動されたりするデメリットがある。 〔改善の具体的方策〕 原則として公募制で新任人事を行うことは、「敬和学園大学教員選考細則」でも定めてい るが、リクルートしにくい分野の人事や大学全体にとって重要な人事では例外的に推薦制 を例外的に併用していくことが賢明である。 4.教育研究活動の評価 (1)教員の教育研究活動についての評価方法とその有効性 〔現状の説明〕 教員の教育活動については、学期毎にすべての科目で学生による授業評価を実施して、 データ化した結果を当該科目の担当教員にフィードバックしている。全教員のデータのフ ァイルは学長、学科長、教務部長並びに教務委員は回覧して閲覧しているが、それは授業 改善のためのものであり、それを用いて評価しているわけではない。 教員の研究活動については、学年末に個人研究費成果報告書を学長に提出しているが、 それは翌年度の個人研究費支給のためのものであり、それを用いて評価しているわけでは ない。 教員の研究教育活動の評価は、昇任人事の際になされるポイント制で測られることにな る。 〔点検・評価の結果〕 教員の研究教育活動の評価は、一定に定められた統一した基準により点数化されている ので、容易に比較することができる。 〔改善の具体的方策〕 ポイント制の評価は始めたばかりであるので、多少の長い時間の中で改善することがふ さわしい。ただし、これは昇任の時のみしか評価されないので、今後、検討の余地がある。 108 (2)教員選考基準における教育研究能力・実績への配慮の適切性 〔現状の説明〕 現在の新任人事では、履歴書、業績一覧、 (代表的な)著書・論文の他に、担当予定の科 目を教えることに関する教育観や教育哲学のエッセイの提出を求めている。候補者との面 接の際には、主な質問事項は研究・教育・管理運営・社会貢献について問うが、教育面で は教育観や教育哲学に関する質問をし、担当予定科目の年間を通した概要を質問すること を心がけている。また学生の立場に立って、いくつかのキー・ワードの説明を求めること もある。 昇任人事では、教育的な著作、授業改善や教育改善、実践的な教育などの教育面の業績 を点数化して評価している。 〔点検・評価の結果〕 教育観や教育哲学などのエッセイは、ポートフォリオ形式の自己評価の一つの方法であ る。また、点数化した評価は、より客観化させた他者評価の一つの方法である。 〔改善の具体的な方策〕 今後は、自己評価や他者評価などを組み合わせたさまざまな評価方法の検討に取り組む べきであろう。 109 第6章 研究活動と研究環境 〔目標〕 1.キリスト教精神に基づくリベラル・アーツ教育・研究を遂行するという建学精神に則 り、人文科学、社会科学、自然科学を連携させた学際的共同研究・調査を推進する。 2.社会の要請や学生のニーズに応えるために、学問の結果を分かりやすい形で還元する。 3.研究教育の質的保持に努め、社会的信用と付託に応える。 4.地域社会との連携や国際的な視野での連携を深める。 Ⅰ.研究活動 1.研究活動 (1)論文等研究成果の発表状況 〔現状の説明〕 大学の使命は、学生を教育して学生に大卒にふさわしい就職をさせることばかりではな い。就職率を上げたければ、とりあえず学生が一般教養の試験が解けるようになればよい。 そのためには別に厳しい論文審査をへて採用される大学の専任教員は不要である。予備校 の講師の方がずっと技術的には優れているからである。 同一法人の高校の上層部から、 「敬和学園大学は研究大学ではない、教育大学のはずであ る」という発言が合同研修会の席上で出たことがある。確かに、昨今の教育行政を見れば、 COE など高額の補助金を受領する大学こそが研究大学であり、それらは旧帝国大学、大手 の私立大学に特化しているようにも見える。しかし、教育を中心にした大学は研究をしな くてもよい、という意味ではない。仮にそのようなコンセンサスができたとすれば、その 大学の存在意義はもはやない、といっても過言ではないだろう。教育は日々の研究の継続 がなければできないはずである。少なくとも、学界の先端において研究をし、それを発表 しようという意志と努力がなければ、それはやがて授業や講演等を通して学生や地域の聴 衆を啓蒙し啓発することはなくなるであろう。 すなわち、教員が日々研究をしているか否かという点が、高校までの中等教育と大学以 降の高等教育との大きな違いの一つである。もちろん、教員は研究論文ばかり書くのでは なく、教育実践上のたゆまぬ努力とのバランスが必要なことは言うまでもない。 以上の観点に立って、本学教員の教育・研究業績一覧表を見ると、以下のことがわかる (表 24、参照)。 1)若手教員はおしなべて教育と研究のバランスに留意して積極的な活動を行っている。 110 2)中堅教員以上にはかなりのばらつきが見られる。特に、論文等研究成果がほとんど ない人から頻繁に学会誌に書き、学会口頭発表する人までと、その違いは大きい。 3)社会的活動に関しても、一定の人に仕事が偏る傾向がある。 〔点検・評価の結果〕 2)に関しては、現状のままでは、研究をする人と研究をしない人が分かれていく。 大学の教員は採用時に、教育経験と同様に論文の内容や経歴で判断されることからわか るように、何よりも教育と研究を愛する人が選ばれている。もし大学の日常の中に、研究 しなくても職を失わないという雰囲気が作られつつあるのならば、それこそ襟を正すべき であろう。ここでは別に点数制度の導入や競争原理の導入を主張しているのではない。た だ、少なくとも、2 年に1本ぐらいは論文を書き、発表するという学内のコンセンサスが形 成されることが必要であろう。もちろん、一部の教員の論文等研究成果が出にくい理由に は、学問領域や教育内容の違いや委員会活動による多忙という理由も鑑みなければならな いだろう。しかし、それは他大学もほぼ同じ状況にある。 〔改善の具体的方策〕 第一に、2007 年度をめどに他大学が行っているように、ホームページで教員全員の経歴 と業績を公開することが望まれる。ホームページはいまや大学の顔である。そこに教育・ 研究業績一覧が載るということは、その大学の教員の教育研究活動が第三者にも可視的に 公にされるということでもある。第二に、教授会等でこの問題点を共有しつつ、教育・研 究の拡充をめざす。第三に、人文社会科学研究所の共同研究助成金への応募を強く促す。 2.教育研究組織単位間の研究上の連携 (1)附置研究所とこれを設置する大学・大学院との関係 〔現状の説明〕 敬和学園大学はその附属研究所として、敬和学園大学人文社会科学研究所を 2001 年 5 月 に立ち上げた。キリスト教精神に基づくリベラル・アーツ教育・研究を遂行するという本 学の建学精神に立脚し、人文科学、社会科学、自然科学を連携させた学際的共同研究・調 査を推進し、新しい人文科学の構築を模索するとともに一層の教育の充実と発展に寄与す ることがその設立の目的であった。現在もその趣意に基づき事業を展開している。本研究 所の事業内容は、以下の通りである。 (1)学際的な共同研究、調査及び共同研究への助成;(2)講演会、フォーラム、セミナ 111 ー、シンポジウムの開催及び助成; (3) 『敬和学園大学人文社会科学研究所年報』の発行; (4)関係学会その他研究機関及び研究者との交流などである。 組織としては、研究所長、研究院、客員研究員、事務職員からなり、研究所委員会は事 業計画の運営、企画をするほか、研究申請の採否、客員研究員の委嘱と解任、研究所予算 及び決算などを行っている。 2004 年度には、本研究所の研究補助金制度を設立した。この制度は本研究所の設立目的 をさらに具体的な形にするために設立された。2005 年度からは、この研究補助金制度の申 請のためには、日本学術振興会の科学研究費補助金に申請済であることを条件とすること とし、科学研究費補助金が残念ながら不採択になった課題についてのみ研究所委員会で審 議して採択することとしている。2006 年度までに助成した学際的な共同研究・調査及び共 同研究には以下のものがある。 2004 年度 研究課題: 「第二次世界大戦下における女性の戦争協力についての国際比較 研究」(研究代表者:杉村使乃;研究分担者:加納実紀代、松崎洋子、神田より子、 佐藤渉、桑原ヒサ子、松本ますみ、前嶋和弘 2005 年度 研究課題: 「対人コミュニケーションにおける表情と発話の適性処遇交互作 用の分析」 (研究代表者:益谷眞;研究分担者:伊藤敦美、中村真 宇都宮大学 助 教授、本研究所客員研究員) 2005 年度 研究課題: 「社会福祉における共生概念の神学的、哲学的、比較思想的研究」 (研究代表者:山田 耕太;研究分担者:趙晤衍、矢嶋直規) 2006 年度 研究課題: 「現代日本における社会福祉思想の再構築:東洋、近代、キリス ト教の思想との対比において」 (研究代表者:趙晤衍;研究分担者:山田 耕太、矢 嶋直規) 2006 年度 研究課題: 「ステーク・ホルダーとのパートナーシップ形成を目指すコミュ ニケーションの比較研究」 (研究代表者:前嶋和弘;研究分担者:中村義実、富川尚、 マーク・フランク) 2006 年度までの講演会、フォーラム、セミナー、シンポジウムの開催及び助成には以下 のものがある。 2001 年度 人文社会科学研究所開所記念敬和フォーラム(6 月 30 日、敬和学園大学 S21 教室) 「日本人の自然観――西洋との比較――」東京大学名誉教授 渡辺正雄 国際シンポジウム「東北アジア歴史像の共有を求めて II」 (7 月 14~15 日、新潟会館: 14 日、敬和学園大学 S31 教室:15 日) ) 112 司会:古厩忠夫;パネリスト:李啓煌 档案館副館長、歩平 ー 韓国仁荷大学教授、趙煥林 中国黒龍江省社会科学院副院長、ボリス・スラヴィンスキ ロシア科学アカデミー研究員、サラ・ハンナシ 全権大使、浅倉有子 中国遼寧省 上越教育大学助教授、呉文星 島根県立大学助教授、田中利幸 チュニジア共和国駐日特命 台湾師範大学教授、鹿錫俊 敬和学園大学教授・本研究所研究員(以下、研 究員と略す);コーディネーター:小澤治子 新潟国際情報大学教授 連続講演会「激動する世界と日本」 (新発田市民会館:10 月 3 日、敬和学園大学 S21 教室:10 月 24 日、11 月 14、21、28 日) 10 月 3 日 「テロに対する報復戦争は正当か?」作家 小田実 10 月 24 日「日本経済の崩壊の原因を探る―土建国家の行末」オーストラリア国立 大学教授 ガヴァン・マコーマック 10 月 14 日「慰安婦問題の歴史と現状」アジア女性資料センター代表 松井やより 11 月 21 日「戦争の記憶をどう伝えるか」都留文科大学教授 笠原十九司 11 月 28 日「東アジアの非軍事化へ向けての市民運動の展望」ピープルズ・プラン 研究所共同代表 武藤一羊 2002 年度 シンポジウム「変動する世界とイスラーム」 (9 月 28 日、新発田市生涯学習センター) パネリスト:延原時行研究員、永野茂洋研究員、松本ますみ研究員、前嶋和弘研 究員、松本耿郎英知大学大学院教授、遠藤晴男(中東研究家) シンポジウム「地球時代の良寛」 (3 月 1 日、新発田市生涯学習センター) パネリスト:加藤僖一新潟大学名誉教授、延原時行研究員、荒井魏客員研究員、 若月忠信客員研究員 2003 年度 国際研究会議「環日本海の玉文化の始原と展開」 (12 月 13 日、富山県民会館) コーディネーター:藤田富士夫客員研究員 2004 年度 敬和フォーラム「反ナチ抵抗牧師の決断」(6 月 17 日、敬和学園大学 S21 教室) 講師:山崎和明四国学院大学教授 シンポジウム「国際文化学とは何か――国境を越える文化の創造」 (11 月 6 日、敬和学 園大学 S32 教室 パネリスト:「ヨーロッパ・アイデンティティ」富川尚研究員 「現代アメリカの反移民主義」伊藤豊山形大学専任講師 113 「地球時代の政治神学」 延原時行研究員 コメンテーター 前嶋和弘 研究員 2005 年度 講演会「戦後 60 年に考える:内村鑑三の信仰と平和論」 (6 月 2 日、敬和学園大学 S21 教室) 講師:富岡幸一郎関東学院大学教授 講演会「北の玉器文化―よみがえる中国・紅山文化」(10 月 23 日、敬和学園大学 S21 教室) 講師:徐子峰中国・赤峰学院歴史学科教授、客員研究員 創立 15 周年記念講演会「戦後 60 年に考える:あなたは戦争を知っているか」 (11 月 12 日、敬和学園大学 S31 教室) 講師:若桑みどり川村学園女子大学教授 聞き手:加納実紀代客員研究員 2006 年度 シンポジウム「共生の時代の教育――リベラル・アーツの可能性」 (7 月 22 日、新発 田市民文化会館) パネリスト:山田耕太研究員、鈴木佳秀 新潟大学現代社会文化研究科長、鈴 木聖二 新潟日報社情報文化部長・編集委員 『敬和学園大学研究所年報』は、既に第 4 号を数え、第 2 号からは論文を掲載し、第 3 号からはいくつかの特集を組んで編集をしている。また、第 4 号からは、研究所助成の補 助金を使った研究論文の掲載も始めており、研究助成の成果が現れ始めている。 また、研究所主催の創立 15 周年記念講演会をブックレットにして、研究所ブックレット (若桑みどり著『戦後 60 年に考える:あなたは戦争を知っているか』2006 年 4 月)を出 版した。 〔点検・評価の結果〕 設立当初は暗中模索ではじまった人文社会科学研究所ではあるが、 年に約 2 回の講演会、 フォーラムもしくはシンポジウムの開催が定着し、敬和オープン・カレッジとともに、ア カデミックな研究成果を市民に提供する場となっている。特に、2005 年の若桑みどり氏の 講演会では、232 人の参加者を数え、希望者全員が入場できないまでの大反響を呼んだ。こ れは、若桑氏の知名度と秀逸な問題設定もさることながら、本研究所が地域社会に認知、 評価されたことの現れであるとみることができよう。 年報に関しても、当初はどのように『敬和学園大学研究紀要』との差異化を図るかとい 114 うことが議論されたが、第 3 号から、特集をいくつか設け、統一テーマを掲げることで差 異化をはかることなり、その編集方針が続いている。 また、特筆すべきは、2004 年度から本研究所の研究補助金制度が設立されたことで、研 究補助金申請書を日本学術振興会の科学研究費補助金申請とリンクしたことから、飛躍的 に学内の共同研究が盛んとなったことである。その内、一つの研究課題(研究代表:加納 実紀代客員研究員)は 2005 年度から日本学術振興会の科学研究費補助金基盤研究 B に採択 され、月に約一回ペースで活発な研究会活動を行っている。他大学の研究者や学生の参加、 意見交換も頻繁にみられることは喜ばしいことである。この研究グループは 2007 年度に、 大規模な講演会とシンポジウムを新潟市で開催予定である。また、その他の研究グループ も活発な研究活動を続けており、学内の研究環境及び水準が飛躍的に改善されつつある。 しかしながら、科学研究費補助金申請にそぐわないながらも本学の共同研究としてはふ さわしい課題も提起されるようになった。あらたな研究振興の方策が提起されるべきであ ろう。 さらに、客員研究員を研究員の推薦で委嘱しておきながらも、一部の客員研究員の研究 活動がいまだ活発でないことは問題として挙げられよう。さらには、投稿原稿の水準も今 後学外の客員研究員が増えることによって保てないのではないかという危惧も生じてくる。 せっかく向上してきた研究水準を保つためにも『敬和学園大学人文社会科学研究所年報』 にレフリー制度を設けるかどうかについて、今後の検討課題としたい。 〔改善の具体的方策〕 補助金制度は研究振興のために効果があったが、しかし、研究所の研究補助金予算は限 られており、研究員、研究グループの要求にすべて応えられるわけではない。そこで、今 後は、日本学術振興会の科学研究費補助金により多く採択されることを期待し、科学研究 費補助金の申請書に関してより採択されるような内容の提案をしていくことも考えられよ う。いくつかの専門をつぎはぎしたような研究課目は、科学研究費補助金の審査員の歯牙 にもかけられないということに留意すべきであるからである。また科学研究費補助金申請 にはそぐわない本学独自の研究内容については、他の競争的資金への申請をも考慮に入れ、 選考に外れたものに対して援助をするということも行わなければならないであろう。 また、客員研究員の委嘱に当たっては、推薦された人をすべて委嘱するのではなく、や はり厳正な審査を経て行われなければならないであろう。そのためには、少なくとも学術 論文を含めた業績を持っている人物でなければならないと考える。客員研究員が名誉職の ようになってはならない。あくまでも研究の一翼をになう人物でなければならないからで ある。具体的には、3 年間委嘱して、まったく本研究所の研究に協力してもらえない人―― 論文を書かない、シンポジウムにパネリストとして参加しないなど――に関しては、委嘱 を取り消すことも考慮に入れなければならない。 115 また、講演会、フォーラム、シンポジウムの開催についても、本研究所の特色が出るよ うなテーマ設定を考えていく必要があろう。そのためには、やはり共同研究をいかに振興 して、それとイベントをリンクさせていくのか、ということが問われよう。具体的には、 2006 年 11 月に開設された新発田学研究センターとのリンケージをも視野にいれ、アカデ ミックで、かつ地域社会と密着した方法論を模索していくことになろう。そのためにも、 厳選した客員研究員の委嘱が問われてくると思われる。 『人文社会科学研究所年報』の今後の編集方針として、一流の学者に依頼原稿を掲載し たり、一部に関してレフリー制度を導入したりして、学会誌としてのプレステージを上げ ていく努力を怠らないようにしなければならない。 Ⅱ.研究環境 1.経常的な研究条件の整備 (1)個人研究費、研究旅費の額の適切性 〔現状の説明〕 学科に所属する専任教員(特任教授、特任講師を除く)には全員一律年額 340 千円の個 人研究費を前期後期それぞれ半額ずつ支給し、この半額までは研究旅費とすることができ ることになっている(表 29、参照) 。この他、研究旅費として教授 111 千円、助教授及び専 任講師 89 千円を支給している(表 30、参照) 。 また、専任教員が研究の成果として出版する学術図書出版については、審査の上、年間 1,000 千円を限度として助成している。 〔点検・評価の結果〕 個人研究費及び研究旅費の水準としては、学内では必ずしも充分であるとの意見ばかり ではないが、(社)日本私立大学連盟が毎年発行している『「研究費調査」報告書』で比較す ると、同規模大学の中では遜色ないことが窺われる。 〔改善の具体的方策〕 国庫補助金について護送船団方式から競争的資金へと移行されてきていることから、個 人研究費及び研究旅費についても、一律の支給で良いのかを充分に検討する必要が出てき た。年齢、研究の重要度及び成果の査定等、様々な角度から額を決定するために学内で認 知された組織を設置する必要があるのではないか。 116 (2)教員個室等の教員研究室の整備状況 〔現状の説明〕 学科に所属する専任教員(特任教授、特任講師を含む)には、全員研究室が与えられて いる(表 35、参照)。個室については、研究室の 18.8 ㎡が 17 室、18.2 ㎡が 16 室、16.3 ㎡ が1室、国際交流室の 37.8 ㎡が1室の計 35 室を計上している。国際交流室が広いのは、 教員は 1 人(契約講師)だが、外国人留学生の相談室を兼ねるためである。共同としてい る部屋の面積及び常時使用する教員数は、非常勤講師控室 36.1 ㎡、共同研究室 33.1 ㎡、 契約講師室 33.1 ㎡ 3 人、2 人の客員教授が交替で使用する研究室 18.2 ㎡の 4 室を計上して いる。中の備品については、研究用机・いすをはじめ、書架、ロッカー、平机、学生用い す 4 脚を備えている。 冷暖房については、全館集中式を採用しているため、平日は夜間、休日は終日運転して いないので、必要な教員は別途個々で電気式の器具を置いている。 〔点検・評価の結果〕 ほぼ必要な面積は確保している。冷暖房については創設時に独立式も検討したが、ラン ニングコストよりも管理面を重要視した結果であり、苦情は出ていない。書架については 当初設備した数では不足するため、個人研究費等で増設している教員が多い。 〔改善の具体的方策〕 現在の整備で充分妥当と言える。ただし、既に満室となっているため、これ以上研究室 を必要とする教員が増えると、同じ棟にある演習室(1 室が研究室の 2 倍の面積)を仕切る必 要が出てくる。 (3)教員の研究時間を確保させるための適切性 〔現状の説明〕 本学は、教育に重点を置いた大学であるので、学期中は教育に従事するように心がけて いる。しかし、1991 年の開学以来、学期中でも専任教員には、研究日を 1 日確保すること ができるようにしている。すなわち、時間割作成の段階で、1 日授業がない 1 曜日を確保し ている。 また、2006 年度から 6 年以上在職した 65 歳以下の専任教員は、半期集中的に研究休暇を 117 取ることができる特別研究制度(サバティカル制度)を新設した。特別研究期間中は、通 常通り給与が支給される。ただし、特別研究制度を用いた教員は、その後 2 年間は在職し なければならない義務がある( 「敬和学園大学特別研究制度規程」 、参照)。 〔点検・評価の結果〕 特別研究制度は長年の懸案であったが、小規模大学であるので、半期間として、カリキ ュラム全体に支障がないように、半期毎に各学科 1 人ずつ大学全体で年間 2 人としたのは 妥当である。研究成果は教育にも反映されるからである。各学科間の調整もうまくいって いる。 〔改善の具体的方策〕 特別研究制度は導入されたばかりなので、今後の様子を見たい。 (4)研究活動に必要な研修機会確保のための方策の適切性 〔現状の説明〕 本学で開催される公開学術講演会、共同研究発表会、学会などの研究会は公開されてお り、専門分野の違いを越えて研修の機会がすべての教員に提供されている。 また、各種委員会の予算には、当該委員会に関連する研修会や実践的な学会への参加費・ 交通費・宿泊費などが計上されており、研修の機会が確保されている。 また、個人研究費の旅費を用いて、それぞれの教員が所属する学会の研究活動に従事で きるように配慮されている。さらに、個人研究費の研究旅費の他に研究費の半額まで旅費 に振り替えることができるので、海外での学会などに参加し研究発表することもできる。 研究成果を出版するために、1994 年度から出版助成費が年間総額百万円助成されている (「敬和学園大学学術図書出版助成費交付等規程」 、参照) 。 〔点検・評価の結果〕 本学は小規模大学であるが、公開学術講演会や共同研究発表会は毎年度々開催されてい る。しかし、本学での学会開催は数年に一度の割合である。 各種委員会に関連する研修会や実践的な学会へは、委員会により事情は多少異なるが、 毎年委員が派遣されている。 個人研究費の旅費は、学会出席ばかりでなく、様々な研修会にも出席できるように配慮 されている。 出版助成費は同じ年度に複数の希望者がいる場合には、その年度の予算額を人数で等し 118 く分け合うことになっている。この制度では年間1件程度の応募者がいることが前提にな っているが、複数応募者がいるか否か不明であり、予算計画が立てられず、また複数の応 募者がいる場合は、助成のメリットが少なくなる。 〔改善の具体的方策〕 学内の共同研究発表会は科研費や学内の共同研究費を用いて開催される場合が多いが、 多少の会議費が出るようにすることが望ましい。 出版助成費は、学術図書と教科書・啓蒙書などの内容などによって、申請一件に対する 助成額を定めるべきであろう。 (5)共同研究費の制度化の状況とその運用の適切性 〔現状の説明〕 2004 年度より敬和学園大学人文社会科学研究所の共同研究に対する補助金が出ることと なった。それを受けて、2005 年度からは制度を拡充し、研究と教育の充実、発展のために 学際的共同研究・調査のための研究補助金を共同研究に与えることとし、公募することに なった。そのために、 「敬和学園大学人文社会科学研究所 2005 年度共同研究助成公募要項」 を整えた。 主な内容は以下の通りである。第一に、人文社会科学分野の 1~3 年の共同研究であるこ と、第二に、メンバーの 3 分の 2 以上は本学専任教員であること、第三に、文部科学省及 び日本学術振興会の科学研究費補助金(以下、「科研費」と略す)の申請をしていることで ある。予算総額は年間 100 万円であり、研究所委員会の審査の上、学長が決定する。また、 研究成果は研究期間終了後原則として 1 年以内に研究所発行の『人文社会科学研究所年報』 に掲載する。 以上のような制度化にちなみ、2005 年度には 3 件の申請があり、そのうち 1 件は科研費 の交付があったため、研究所は残る 2 件に交付した。2006 年度には、2 件の申請があり、 いずれも科研費に残念ながら採用されなかったため、研究所は 2 件に交付した。 統計が出ている 2005 年度の内訳は以下のとおりである。 研究課題「対人コミュニケーションにおける表情と発話の適性処遇相互作用の分析」 研究代表者:益谷眞、研究分担者:伊藤敦美、中村真宇都宮大学助教授(客員研 究員) 、交付金額:534 千円 研究課題「社会福祉における共生概念の神学的、哲学的、比較思想的研究」 研究代表者:山田耕太 研究分担者:趙晤衍、矢嶋直規、交付金額:464 千円 119 利用総額は 859,980 円で、すべて会計監査を終え、適切に処理されていた(表 31、参照) 。 〔点検・評価の結果〕 現在は、年間予算 100 万円で定着している共同研究助成金であるが、この制度によっ て、学内の共同研究活動が進み、アカデミックな雰囲気が強化されてきたのは喜ばしいこ とである。ただ、科研費申請とリンクしていることからみても、申請にいたるまでのハー ドルはかなり高い。一部、科研費の水準をクリアしていない申請も見受けられる。 〔改善の具体的方策〕 今後は、より高率の科研費採用率を目指して研究所委員会はさまざまなアドバイスを行 っていくことが望まれる。それとともに、研究成果発表のための『敬和学園大学人文社会 科学研究所年報』のクオリティを向上させていくことが必要である。具体的には、論文の 形式を整えるために、サマリー(400 字以内) 、キー・ワード添付を義務付けるなどである。 2.競争的な研究環境創出のための措置 (1)科学研究費補助金及び研究助成団体などへの研究助成金の申請とその採択の状況 〔現状の説明〕 科学研究費補助金申請・採択件数及び金額とも増加している (表 32、33、参照) 。申請 段階での研究種目としては、2003~2005 年の 3 年間のトータルで基盤研究 C が 7 件、基盤 研究 B が 2 件、萌芽研究が 2 件、若手研究が 2 件となっている。研究代表者は、比較的若 手の 50 歳代前半以下の教員が多く、性別では男性 7 人、女性 6 人とほぼ拮抗している。 研究助成団体への申請は行っていない。 〔点検・評価の結果〕 2006 年度の申請件数が 6 件あったことを見ても、徐々に競争的資金の確保に目を向け、 努力していることが現れている。また、学科を越えた教員が共同しているケースもあり、 多元的視野に立った研究も行われている。 〔改善の具体的方策〕 申請者が特定してきている傾向にあり、また、今後ますます競争的資金の確保が重要に なることを考えると、現代 GP 及び特色 GP も含め、大学全体としての教育・研究テーマを 120 模索し、より多くの申請を目指すべきと考える。 121 第7章 施設・設備等 〔目標〕 1.キャンパス内の環境整備・美化に努める。 2.LL 教室及び CPU 教室の空き時間に対する有効利用を検討する。 3.建設後 20 年を目処に順次外壁の再塗装を行うよう第 2 号基本金の組入計画を作成する。 1.施設・設備等の整備 (1) 大学・学部等の教育研究目的を実現するための施設・設備等諸条件の整備状況の適 切性 〔現状の説明〕 校地については、開学時に農地(田)を大規模開発した 60,957 ㎡に、その後金融機関の不 良債権となった隣接地(農地)4,084 ㎡を購入し、65,041 ㎡有している。また、体育館を除 く校舎の総面積については、8,487 ㎡あり、随時授業を行う教室は、25 室 2,010 ㎡となっ ている(表 36、参照)。 これらの内訳として、講義室は 13 室 1,274.7 ㎡、演習室 8 室 377.6 ㎡である(表 37、参 照)。講堂は記載していないが、講義室の中に 1 室 220 ㎡の 240 人教室を含めており、これ を講堂としてチャペル・アッセンブリ・アワー及びオープン・カレッジ等でも使用してい る。学生自習室は以前設備していたが、使用率が低いことから、現在福祉系科目の実習室 として利用している。学生の自習は、図書館、オレンジ・ホール・アネックス及び空き教 室等で行っている。 〔点検・評価の結果〕 校地・校舎とも大学設置基準と比較するまでもなく、大学としての教育・研究を行う上 で、充分な広さを持っている。 〔改善の具体的方策〕 現在は必要面積を所有していると言えるが、テニス・コート及び学生駐車場の一部が借 用地であることから、いずれ購入したほうが有利であることは言うまでもない。 また、周囲は全て農地(田)であり、売却の意思がある農家もあることが考えられること から、資金の目処があれば購入することは可能と考える。しかし、その際には農振除外及 び農地転用が不可欠であり、具体的使用目的を定める必要があることから、長期的な計画 を策定しなければならない。 122 (2) 教育の用に供する情報処理機器などの配備状況 〔現状の説明〕 LL 教室は開学時に設置した専用のブース 60 台 1 室及び 2002 年に新設した同 28 台 1 室 の計 2 室設備しており(表 38、参照) 、このうち 28 台の方は TOEIC 自習学習システムを 導入するため、CPU を併設しており、CPU 教室としても機能できるようになっている。 CPU 教室は 2003 年に機種を更新した専用の 1 室 123.5 ㎡ 45 台を設置している(表 38、 参照) 。この部屋にはアルバイトの卒業生を常駐させていることから、授業に使用していな い時間は、自由に使用することができ、操作方法がわからない場合には教えることができ るようになっている。この他、図書館に CPU を 20 台設置し、開館時間内は自由に使用し ており、その使用頻度は高くなっている。 また、1997 年からは全館光ファイバーによって無線配線を行っており、どこからでもイ ンターネットに接続可能な設備を配置している。AV 教室は 94.5 ㎡ 74 人 1 室のみだが(表 38、参照) 、普通講義室 13 室のうち 12 室及び演習室 8 室全てにビデオ・DVD 機器を設備 し、大・中教室の全 5 室と小教室 1 室にビデオ・DVD・パソコン対応のプロジェクターと スクリーンを設備して視聴覚教育・情報教育に対応している。また、小教室では移動式の パソコン用のプロジェクターとスクリーンを用いている。 〔点検・評価の結果〕 本学は開学 16 年目で、CPU 教室の CPU は 2 回入れ替えを行っているが、LL 教室の 120 ㎡ブース 60 台については、まだ開学時の機器を使用しているため、 入れ替える必要がある。 視聴覚機器については、使用希望が多いことから、ほぼ全ての教室に設置した。これによ り、必要な機器については整いつつある。 〔改善の具体的方策〕 LL 教室の 60 台のブースについては、機種の選定及び台数について、今後充分に検討す る。ただ、現在使用している機器に慣れ親しんでいることから、新しい機種にすることを ためらう教員もおり、検討しなければならない。また、パソコンを用いて授業の増加に対 応して、順次残りの小教室と演習室にプロジェクターとスクリーンを新たに設置するか、 パソコンに対応できるプラズマ・テレビに入れ替えるかを検討しなければならない。 (3) 社会へ開放される施設・設備の整備状況 123 〔現状の説明〕 グラウンドについては、大学行事及び本学のサークル活動の予定がない日曜日には、地 元のリトル・リーグの野球チームに練習場として無料で貸し出している。 また、体育館については、上記と同様の日を除く土日には、市内の小学校の金管バンド の練習場として、大会が近くなると貸し出している。職員が出勤しない日は体育館の施錠 を外注していることから、その実費分ほどを徴収している。 校舎については、ここ数年自衛隊の採用試験会場等に貸し出すことがあるが、年に数日 にとどまっている。 〔点検・評価の結果〕 本学は地元自治体の誘致によって設立された経緯があり、開学以来地域に開かれた大学 であることを公認していることから、依頼があった場合は支障のない限り施設使用を承諾 している。職員が出勤している日であれば、冷・暖房費等としての使用料は聴取していな い。これは今後も変更する予定はない。 〔改善の具体的方策〕 以上のように、地元の公共性が高い団体からの使用依頼には無償提供している。立地環 境としては、自家用車での来学は容易だが、公共交通機関の利用が不便なことから、限ら れた催しになることは避けられないが、学生納付金以外の収入を増やすために、夏期及び 春期中の校舎の有効利用を検討する必要がある。 2.キャンパス・アメニティ等 (1)キャンパス・アメニティの形成・支援のための体制の確立状況 「学生のための生活の場」の整備状況 大学周辺の「環境」への配慮の状況 〔現状の説明〕 本学におけるキャンパス・アメニティは、学生規模の割には充実が図られてきたと言える。 主な施設だけでも 12,765 ㎡のグラウンドに武道場やトレーニング・ルームを備えた体育館 (ニューエル館)、945 ㎡の図書館、539.95 ㎡の食堂(オレンジ・ホール)、学生の憩いの場と して機能しているアネックス・ホール(216 ㎡)があり、学生の勉学とともに課外活動を支え てきている。 124 そうしたキャンパス・アメニティの形成・支援のための体制としては、学生委員会が学生 のニーズを把握したうえで全体の管轄を行っている。また、管理体制としては学生係並び に施設係が対応する。さらに清掃業務などは業者に委託し、快適な学生生活が確保される ようになっている。またこうした活動は保護者の後援会並びに地元の有志による後援会の 財政的援助を得ている。 次に「学生のための生活の場」の整備状況であるが、上記施設に加え、45 台のコンピュ ータが使用可能な CPU 教室、語学の自習システムを備えた LL 教室、部室棟、ボランティ ア・センター、国際交流室などが学生の生活を支えている。また、キャンパス内には池や 花壇などが整備され、のどかな田園の中にあるキャンパスに彩りを添えている。さらに本 学はきれいなトイレの必要性を感じ、2005 年度には学生用トイレの大規模な改修を行って いる。あとトレーニング・ルームをはじめ体育館は学生に解放されている。駐車場は 300 台 分確保し、 駐輪場は 100 台置けるものである。 また 2004 年度からは原則的に全学禁煙にし、 別に喫煙室を設けるなどして喫煙問題に対応している。 大学周辺の「環境」への配慮状況については、本学が田園に囲まれ恵まれた環境にある ため大きな問題は有していない。ただし、そうした環境にもとけ込むように学内に積極的 に植樹を行い、人工的でない温かさを感じることができるようなキャンパスづくりを心が けている。またサークルなどで農作を行うことがあるため、若干の畑もキャンパス内に作 られている。 〔点検・評価の結果〕 キャンパス・アメニティの形成・支援のための体制の確立状況としては、年間約 10 回開催 される学生委員会が機能していること、施設の整備状況並びに衛生、清掃状況についても 問題はなく、体制として十分機能しているといえる。学生ニーズの把握という点では、毎 年部長会を開くなどしてサークルの要望を把握しようとしているほか、学生の声が届くよ うに心がけられている。この点に関しては小規模大学のメリットが活かされている。具体 的には、全学禁煙を行うにあたっては、教職員全員参加の教育会議に加えて、全学生に参 加を呼びかけた全学集会が開催された。 しかし全く問題がないという訳ではなく、隠れた要望を引き出す努力、認識されていな いアメニティを提案する努力には改善の余地が残されている。 次に「学生のための生活の場」の整備状況についてであるが、設備としての不足はほと んど顕在化していない。図書館の利用状況、体育館の利用状況、駐車場・駐輪場の空き具合 を見てもまだ余裕を持っている。但し、茶道部が使用する和室が必要かどうか、音楽系サ ークルが使用する設備を拡張する必要があるかなど学生委員会の間で議論され、見合わさ れているものも存在する。さらに喫煙スペースの拡張は早急に改善しなければならないと 考えられる。 125 大学周辺の「環境」への配慮の状況であるが、植樹などにより周辺環境にとけ込むよう になっている。またクリスマス時期の電飾など本学の特徴を活かした雰囲気作りにも気を 配っている。郊外商業施設も、隣接はしているが、学生トラブルなどの報告はほとんどな く、大きな問題は抱えていないと考える。 〔改善の具体的方策〕 キャンパス・アメニティの形成・支援のための体制の確立状況であるが、隠れた学生の要 望を引き出し、新たなアメニティの提案ができるようにならなければならない。具体的に は、きめ細やかなアンケートを 2 年に 1 回程度行い、学生のニーズの正確な把握を図ると ともに、新たな提案のヒントを探らなければならない。また教職員が他大学への研修を行 うということも必要とされよう。ただし、こうした問題はただ大学側が与えるというので はなしに、学生側も積極的にかかわっていくという意識の涵養にも取り組まなければなら ない。 「学生のための生活の場」の整備状況については、設備の拡張が必要かどうかを慎重に 審議したうえで、必要な拡張は行わなければならない。さしあたり、喫煙スペースの拡張 は学生からの要請もつよく、取り組む必要があるが、それにあたっては非喫煙者のことを 十分考慮する必要がある。 大学周辺の「環境」への配慮については、大きな問題を抱えてはいないが、周りの住民 や、事業者との対話を通して、さらなる改善を図っていく必要はあろう。 3.利用上の配慮 (1)施設・設備面における障害者への配慮の状況 〔現状の説明〕 本学は設立年度が比較的新しく、基本的にバリアフリー化が図られている。したがって エントランスや教室には比較的楽に車いすで行き来できるようになっている。またエレベ ーターを 2 機、障害者用のトイレも 2 箇所設置しており、現在まで数人の車いす使用者を 受け入れてきている。また聴覚障害を持った学生の受け入れを行った経験もある。 〔点検・評価の結果〕 基本的にバリアフリーは確立されており、大きな問題点は浮上していない。ただし、障 害者の利便のさらなる向上は望めるであろう。また視覚障害を持つ学生の受け入れは今後 の課題として出てくるかもしれない。 126 〔改善の具体的方策〕 まず受益者の声を聞く必要があり、現学生や本学を訪れた障害をお持ちの方のご意見を 伺わなければならない。本学は学園祭にあわせて「ふれあいバラエティ」というボランテ ィアの催し物を行っており、それにいらっしゃる方々にお話を聞くということもできる。 また視覚障害を持つ学生の対応は今後の課題として、その可能性を探っておくという段階 だと思われる。 4.組織・管理体制 (1)施設・設備等を維持・管理するための責任体制の確立状況 〔現状の説明〕 維持・管理については、総務課施設係が一括して行っている。係には主任 1 人、係員 3 人を配置し、そのうち 3 人は主に最寄りの JR 駅からの学生送迎用学バス(大型 2 台、マイ クロバス 1 台)の運行も行う。毎週土曜日の授業にも対応するため、振替休日等で人員が 不足する場合は、総務課長が運行を担当することもある。開学 16 年目ともなると修理が必 要になることが多くなっているが、全て施設係が窓口になり、業務を行っている。 〔点検・評価の結果〕 現在は問題なく運営されている。 〔改善の具体的方策〕 財政が厳しくなってくると、真っ先に負担になるのは外注によるメンテナンス費用であ り、なるべく係員が行うようにはしているが、例えば清掃業務、夜間の警備・施錠業務等 のコストを抑える努力をしなければならない。 (2) 施設・設備の衛生・安全を確保するためのシステムの整備状況 〔現状の説明〕 体育館にはスポーツジム機器を設置しており、毎年 1 年次生のスポーツ実習の最初の授 業で取り扱い説明を行い、その後は自由に使用している。この機器及び体育館全体につい ては科目の担当教員が常に安全を確認している。 127 また、学バスの運行については、大型免許取得職員が常に運行前点検を行い、定期点検 についても毎回業者に委託している。安全運転管理者については、総務課長がその任に当 たっている。 〔点検・評価の結果〕 現在のところ問題なく運営しているが、最近高速道路を走行する長距離の運行の機会が 多くなっており、観光使用の学バス 1 台を購入したため、今後の安全管理については従来 以上の注意を喚起する必要がある。 〔改善の具体的方策〕 1 人が 1 台を担当するのではなく、3 種類のバス等を複数の職員が運行することとし、異 常の早期発見に努めたい。 128 第8章 図書館及び図書・電子媒体等 〔目標〕 1.各学科や教職課程のカリキュラム改変に併せて蔵書構築をする。 2.授業用・学生用の資料に学生の興味・関心を反映させるため、話題になっているファ ンタジー関連などの図書を揃える。また雑誌においても、コンピュータ関係及び週刊 誌の購入を増やし、学生が気軽に図書館を利用できるように工夫をする。 3.情報化時代に備え図書館を情報センターとしての機能を備えるようにする。 4.図書館の開館時間を延長し、6 時間目(イブニング・コース)の授業終了後も利用で きるようにする。土曜日の開館時間も 9:00~12:00 を 12:30 に延長する。 5.地域に開かれた大学図書館とする。 1.図書、図書館の整備 (1)図書、学術雑誌、視聴覚資料、その他教育研究上必要な資料の体系的整備とその量 的整備の適切性 〔現状の説明〕 図書館資料の収集は、教員からの購入希望図書、シラバスに掲載された基本図書、学生 からの購入希望図書に基づき行っている。また授業中に指定した参考書、指定図書なども 図書館に連絡をしてもらうよう教員に依頼し、そろえるようにしている。 一般書及び基本図書については、図書館員も新刊書を中心に選書している。 特色ある資料のひとつとして、新潟県出身で著名な會津八一・良寛関連図書コーナーを 設けた。 本学は人文学部系(英語文化コミュニケーション学科・国際文化学科・共生社会学科) であるので、その蔵書構成は英文学を中心とした文学が全体の 23%、思想・歴史・文化を 中心とした人文科学が 27%、政治・経済・福祉を中心とした社会科学が 27%を占めている。 所蔵冊数は 2006 年 3 月末現在、約 66,900 冊(和書約 50,500 冊・洋書約 16,400 冊)とな り、和書 75%、洋書 25%の構成となっている。 所蔵雑誌種類は 213 種(和雑誌 121 種・洋雑誌 92 種)、DVD・ビデオ・マイクロ資料・そ の他視聴覚資料は 637 タイトルある。(今回はタイトル数を提出するのでシリーズ物は 1 タ イトルとして算出した。) 129 予算額の推移 (千円) 2002 年度 2003 年度 2004 年度 2005 年度 図 書 費 12,000 11,300 11,000 10,700 雑 誌 費 4,600 4,880 4,950 5,900 (内 洋 雑 誌 費) 3,437 3,704 3,730 4,379 視 聴 覚 資 料 費 2,000 1,300 1,400 1,300 資 料 費 合 計 18,600 17,480 17,350 17,900 25% 28% 29% 33% 資料費中の雑誌費の比 図書受け入れ状況 2002 年度 和 書 書 2004 年度 2005 年度 購 入 2,992 2,648 2,614 2,231 寄 贈 150 302 141 815 そ の 他 431 266 163 282 3,573 3,221 2,928 3,328 計 洋 2003 年度 購 入 319 302 303 447 寄 贈 54 352 110 664 そ の 他 206 142 95 143 計 579 796 530 1,254 合 計 4,152 4,017 3,458 4,582 除 籍 0 176 24 261 全 蔵 書 冊 数 55,313 59,154 62,588 66,909 ※除籍:年度末の蔵書点検後、敬和学園大学図書館管理細則第 14 条に基づき除籍する。 学術雑誌受け入れ状況 2002 年度 2003 年度 2004 年度 2005 年度 和 雑 誌 103 102 95 121 洋 雑 誌 94 93 89 92 総 タ イ ト ル 数 197 195 184 213 視聴覚資料 (2005 年度) タイトル数 実 数 マイクロ カセット フィルム テープ ビデオ DVD/ CD-ROM 合 計 CD 29 2 366 166/ 70 4 637 54 5 903 233/174 6 1,375 130 〔点検・評価の結果〕 学生用図書に関しては、毎年授業科目に即した資料を収集しているので、充実してきて いると思われる。この他学生の興味・関心を反映するため、ファンタジー関連書など、そ の年に話題になった図書を購入するように努めた。また、教員の研究用資料の購入も増え ている。視聴覚資料は、主に授業関連のものを購入している。 2004 年度の共生社会学科新設に伴い図書については「社会福祉」の分野を集中的に購入 した。学術雑誌は 26 種(和雑誌 23 種・洋雑誌 3 種)を新規に購入した。 この結果文部科学省が定める設置基準、図書 1,000 冊・雑誌 20 種を超える資料を揃え、 福祉新聞 1 紙も購入した。 2005 年度に高校公民の教職課程、2006 年度に中学社会の教職課程が開講されたが、今の ところ蔵書構成が少ない分野の資料収集が進んでいない。 学術雑誌については予算の推移表が示すように、全資料費に対し、雑誌費の占める割合 が毎年増加し続けている。(特に洋雑誌費の高騰が著しい。)教員の世代交代を機として、 2002 年度に購入の見直しを行った。 〔改善の具体的方策〕 公民の教職課程について所蔵数の少ない、「社会科教育」・「教育制度」・「学級経営」 を中心に資料収集を行う。 雑誌の保管スペースに限界がきているため、利用度の低いタイトルについては今後も調 査・再検討を行うとともに、電子ジャーナルに切り替えていく措置が必要である。 (2)図書館施設の規模、機器・備品の整備状況とその適切性、有効性 〔現状の説明〕 現在図書館は面積 978 ㎡、収容可能冊数 69,700 冊、事務室、会議室も兼ねる荷解室、閉 架書庫、コピー室、職員休憩室を備えている。 (㎡) 各種スペース 総 面 積 978 閲覧スペース 756 視聴覚スペース 26 情報端末スペース 32 書 庫 55 131 事務スペース 88 そ 21 の 他 座席数は 134 席(閲覧用 94 席・コンピュータ・コーナー20 席・視聴覚コーナー12 席・雑 誌コーナー8 席)である。無線 LAN ステーションを設置しているので閲覧机・キャレルでも パソコンの利用ができる。 視聴覚コーナーにはビデオレコーダー12 台、CD・LD プレーヤー8 台、DVD プレーヤー 11 台、パソコン・コーナーには学生用(利用者用)インターネット接続のコンピュータ 20 台 を設置している。その他コピー機 1 台、マイクロリーダー1 台を備えている。 業務用端末 3 台・蔵書検索用端末 3 台・出入口にブックディテクションを設置している。 朝日新聞 Digital News Archives for Library とサイト契約を結び、教員の利用に供して いる。 〔点検・評価の結果〕 視聴覚コーナーの備品については、資料形態の急激な変化に伴い、特に DVD プレーヤー を 2 台から 11 台に増やした。また学生用のコンピュータ 20 台を 2005 年 5 月に買い替え た。同時にノートパソコンを購入する学生が増えたので、学内の無線 LAN の環境整備を行 った。 データベースは、朝日新聞以外にもう一社契約を結ぶ方が望ましい。 図書館の規模は 1997 年 11 月に増築してから変わらないので、手狭になっている。 特に収容可能冊数 69,700 冊に対し、 2006 年 3 月末現在の所蔵数が 66,909 冊まで来ている。 (表 41、参照) 〔改善の具体的方策〕 資料が増え続け配架する場所がなくなってきており、図書館の増築が急務である。 増築を実現するための計画を立案し、予算を確保してもらうよう事務局に働きかける。 (3)学生閲覧室の座席数、開館時間、図書館ネットワークの整備等、図書館利用者に対 する利用上の配慮の状況とその有効性、適切性 〔現状の説明〕 学生閲覧席数は 134 席あり、その内コンピュータ席 20 席、視聴覚コーナー12 席、雑誌 コーナー8 席となっている。 開館時間は、授業のある平日は 9:00~19:00、6 時間目(イブニング・コース)がある日は 132 9:00~21:00、土曜日も 9:00~12:30、長期休暇(夏期・冬期・春期休暇)期間は平日のみ 9:00 ~17:00 となる。 休館日は日・祝日(長期休暇期間は土曜日も)、創立記念日、お盆休み、年末年始となって おり、開館日数は 271 日である。 図書館ネットワークは、国立情報学研究所の学術コンテンツ・ポータル(GeNii)と契約し、 私立大学図書館協会、新潟県大学図書館協議会に加入している。本学図書館に所蔵してい ない資料については、このネットワークを活用し、文献複写依頼等のサービスを行ってい る。 利用者に対しては、毎年「図書館利用案内」を配布し、新入生には 4 月中旬から 5 月上旬 にかけて、基礎演習単位でオリエンテーションを行っている。内容としては、OPAC での 検索方法と実際に指定された図書を探し出す実習である。その他希望者に対してはその都 度指導している。 教員から依頼があった資料を指定図書コーナーに別置する、指定図書制度を設けている。 その他就職・資格取得支援のための関連資料を収集し、資格取得コーナーに別置している。 また、書架のサインシステムの分類標記を細かくし、館内案内図も増やし利用しやすいよ う工夫している。 利用者の読書全般に関する啓発とサービスの充実のため、「図書館だより」を年 2 回発行 しホームページに載せている。 〔点検・評価の結果〕 総座席数は 134 席あり、収容定員 800 人の 17%、在籍者数 712 人の 18.8%で規程数値 の 10%を上回っている。 しかし、コンピュータ・コーナーの端末は日頃から満席で順番待ちが出ている状態である。 開館時間は 2002 年 11 月より 6 時間目がある曜日は 9:00~21:00 の 2 時間延長、土曜日も 9:00~12:00 を 9:00~12:30 と 30 分延長し授業終了後も利用できるようにした。 以前からあった利用者の希望にある程度応えられた。 〔改善の具体的方策〕 コンピュータ・コーナーは、毎日閉館間際まで利用されているので端末の台数を増やす 必要がある。施設拡張の必要性は「(2)図書館施設の規模、機器、備品の整備状況とその 適切性、有効性」の〔改善の具体的方策〕のところで述べた通りである。 (4)図書館の地域への開放の状況 133 〔現状の説明〕 本学図書館は、開学以来市民に開放している。科目等履修生だけでなく他大学の学生・ 一般の人も利用できる。図書の貸出しを希望する利用者には「図書館利用者証」を発行し、 貸出しも行っている。大学の季刊広報誌「カレッジ・レポート」や「ホームページ」に載せ周 知している。また、企画・広報係が主催する公開講座に関連する資料をできる限り購入し、 一般の利用者に供している。さらに、毎年 6 月頃に地元の中学生に対し、図書館業務の体 験実習を行っている。 学外者登録数 学外者貸出冊数 2002 年度 34 人 201 冊 2003 年度 21 人 307 冊 2004 年度 21 人 377 冊 2005 年度 26 人 307 冊 〔点検・評価の結果〕 広報誌とホームページに載せたことにより、図書館が市民に開放していることが以前よ り広く知られ、学外者の貸出数が多くなってきている。なお、「図書館利用者証」は継続し て利用できるため、年度が変わっても更新する必要がない。 地元の中学生に体験実習を行うことにより、図書館業務だけでなく、敬和学園大学全体 について知ってもらう良い機会になっている。 〔改善の具体的方策〕 今後も企画・広報係と連携し、地道に活動を行っていく。 (5)学術情報の処理・提供システムの整備状況、国内外の他大学との協力状況 〔現状の説〕 1995 年 4 月から図書館システムを導入し、毎年バージョン・アップをしている。 本学のホームページに OPAC を公開し、学外からも所蔵検索ができる。 私立大学図書館協会、新潟県大学図書館協議会に加盟し、情報交換や相互協力を実施し ている。また国立情報学研究所の学術コンテンツ・ポータル(GeNii)と契約している。 〔点検・評価の結果〕 私立大学図書館協会、新潟県大学図書館協議会に加盟していることにより文献複写依頼 134 等をスムーズに行える。しかし、国立情報学研究所の CAT/ILL に未加入のためファクシミ リで依頼を行っている。業務を迅速化するために CAT/ILL に加入することが今後の課題で ある。 〔改善の具体的方策〕 現在図書館員が 2 人体制なので、3 人体制に戻れば CAT/ILL に加入する体制をつくって いきたい。多様化する情報媒体に対応するため、ソフトとハードの両面において、より環 境整備を進めていかなければならない。 135 第9章 社会貢献 〔目標〕 1.地域社会におけるリベラル・アーツ及びリベラル・アーツ教育の浸透・深化を目指す。 2.社会や地域の関心・ニーズに応じた公開講座の拡充を目指す。 3.地域の活性化に向け、教員・学生・地域社会との連携を深める。 1.社会への貢献 (1)社会との文化交流等を目的とした教育システムの充実度 〔現状の説明〕 本学は創立以来、様々な形で地域の社会に大学への門戸を開いてきた。その姿勢は前回 の自己点検・評価の 2001 年度以降も変わらず、三つの形で継続・発展している。それらは ①社会人入学制度、科目等履修生制度、及びイブニング・コースに代表される社会人が本 学の授業を履修する形、②公開講座、人文社会科学研究所による講演・シンポジウムなど、 地域の社会人が自分の関心に沿って自由に参加できる形、③学生全員に課している、地域 の児童福祉施設、老人福祉施設、障害者福祉施設でのボランティア体験学習という活動を 通じて、学生が地域に出て人々と交流する形である。その他、図書館の一般への開放も継 続して行っている。 ①においては、これらの制度を利用した社会人は、社会人入学者は 2 人、科目等履修生 はこの 5 年間で延べ 479 人に上がっている。特に科目等履修生の増加傾向は著しく、複数 科目を履修する社会人や継続して学び続ける社会人が多くなっている。 ②については、これまでの公開講座に加え、2003 年度からは同一講師による土日連続の 集中講座を開催し、一つのテーマを集中的に学ぶ機会も提供している。さらに、2001 年度 からは英語文化コミュニケーション学科が近隣の中学校・高等学校の英語教員を対象とし たワークショップ「リフレッシュ・セミナー」を毎年開催し、2005 年度からは国際文化学 科が地域の学生・社会人・外国人に呼びかけ、「外国語スピーチコンテスト」を催し、共生 社会学科は 2005 年度から福祉政策に関連した公開学術講演会を催すなど、各学科がそれぞ れの学科の特色を活かしながら社会との交流に努めている(公開講座については(2)を参 照)。 特筆すべきは 2006 年度 11 月に「新発田学研究センター」が発足したことである。大学 の教員及び学生と新発田市市民が協力して市の歴史や文化を研究し、その成果を広く市民 に知らせるとともに、新発田市の駅前商店街の活性化に役立てようというもので、今後も っとも期待される社会との文化交流を目的とした試みである。 136 〔点検・評価の結果〕 上に挙げた諸活動からも、本学が「地域社会との文化交流を目的とした教育システム」 の充実に向けて、具体的な努力を続けていることは明らかである。大学が地域社会の人々 にとってより身近な存在になり、リカレント教育の場として、また、本学教員の研究内容 や成果を地域社会に広めるためのみならず、地域社会の人々が参加できる活動を提供でき る組織として、本学は地域文化の向上に貢献している。 科目等履修生履修者数が増加したこと、特に複数科目履修者と継続履修者が増えたこと は履修者の満足度の高さを表しているといえよう。若者や教員との交流は社会人履修者に とって貴重な体験となっているが、同時に、総じて学習意欲が高く、熱心に学ぶ彼らの存 在は若者にも良い刺激を与えている。教員に地域社会の実情を知らせてくれる貴重な存在 でもある。 科目等履修生履修者数の増加はまた公開講座の充実度にも関連している。公開講座に出 席して本学の教育に興味を持ち、科目等履修生になる社会人もいれば、科目等履修生にな ってから興味の範囲を広げ、積極的に公開講座に参加する社会人もおり、この点に関して は相乗効果を上げている。 しかしながら、以下の 2 点はまだ解決を見ていない問題である。 一つはスケジュールの問題で、本学の英語コア・カリキュラムへの社会人参加が難しい ことである。本学では学生の習熟効果を考えて、コア・カリキュラムにおいては週に複数 回(2 回~3 回)外国語の授業が行われているが、科目等履修生の多くが週 1 回ペースなの で、現時点ではコア・カリキュラム以外の英語科目を履修してもらうしかないことである。 もう一つは社会人入学制度利用の入学者数が頭打ちになっていることで、これは授業料 とやはり時間の問題であろう。公開講座時など、折にふれ、社会人入学制度や科目等履修 生制度の案内をしているが、科目等履修生制度ほどの効果は上がっていない。 〔改善の具体的方策〕 すでに、前回の自己点検・自己評価の時点より、①本年発足した「新発田学研究センタ ー」において、市民、教員、学生の三者が協力して、研究結果をベースに、町おこしのプ ロジェクトを立ち上げ、商店街の活性化に向けて活動を開始している点、②公開講座につ いても充実(次項参照)を図った点、③地域社会との交流に向けた学科の努力という点、 で改善がなされてきたので、今後もこの姿勢及び成果を堅持することが当面の方策である。 社会人入学者は若者とは異なる立場で地域社会と大学をつなぐ存在として活躍が期待さ れるので、その数の増加が望まれる。しかし、この問題に対処するためには、潜在的な入 学希望者がどの程度存在するのかを把握しなければならない。アンケートなどでもっと踏 み込んだ調査をする必要がある。 137 (2)公開講座の開設状況とこれへの市民の参加の状況 〔現状の説明〕 ① 推移 本学は公開講座を二つの形で開催してきている。 「敬和学園大学オープン・カレッジ」と いう名称のもとに、広報委員会が中心となり、企画・運営を担っている。それは新発田市 や近隣の地域の生涯学習センターや公民館などを会場にして 4~6 回シリーズで行うスタイ ルのものと、大学を会場にして週末の 2 日間を利用して集中的に行うものと、大きく二つ に分けられる。この二つは定期的に開催しており、前者は主として本学の教員が担当し、 後者は外部からの専門家を講師に招いている。その他、定期、不定期に拘わらず、大学が 直接開催する規模の大きな公開講演会などもこの名称のもとで行われている。「オープン・ カレッジ」以外に、人文社会科学研究所が定期的に開催する公開講座やシンポジウム、各 学科の企画による不定期な公開講座もある。 開催会場は、新発田市、聖籠町、新潟市(旧豊栄市) 、三条市の 4 箇所で、新発田市以外 の会場では受け入れ機関の要望を取り入れて決めたプログラムになる場合が多い。2002 年 度及び 2003 年度には多数の潜在受講生を抱えている新潟市でも開催している。また、テー マによっては別の町村から同じシリーズで開催して欲しいという依頼もあり、本学のオー プン・カレッジが次第に地域に知られるようになったことを示している。 週末の日中を利用した集中講座については、初年度の 2003 年度は新潟市で開催したが、 会場確保の難しさもあり、また大学の存在自体をもっとよく知ってもらうためには会場を 大学にすべきだという結論になり、2004 年度以降は新潟駅・大学間の送迎に本学のスクー ル・バスを使い、受講生の便宜を図るなどして大学を会場にしている。大学を会場にして も参加者の人数が減少することはなかった。2 日連続の講座は 90 分授業に換算すると7コ マにあたり、はたして受講生が集まるかどうか、実施には不安がともなったが、毎回のテ ーマを絵本、絵画、児童文学で扱う「子ども」に絞っていることもあり、一つのテーマを 深く学べるということで好評を博している。これは講義形式ではあるが、内容の濃密さに おいては、過去に一時取り入れた演習形式を引き継ぐものとして機能させている。特に、 2005 年度は水俣病発生から 40 年という年でもあり、被害者救済に取り組んできた弁護士 を講師に迎え、現地を訪ねるツアーも入れた 2 日間の濃密な集中講義はタイムリーな新し い試みとして注目を浴びた。 現在は事務局に公開講座を含めた広報担当の職員が 2 人いるので、広報委員会と連携し た公開講座の拡充が可能になっている。一例として、2005 年度以来、各年度の初めに地域 の社会人用「総合パンフレット」を作成している。ここにはその年度に開催される公開講 138 座と社会人が参加できるすべてのプログラムの紹介が日程とともに掲載されており、社会 人に向けた大学の活動が一読してわかるようになっている。 ② データ 2002~6 年度の公開講座(敬和学園大学オープン・カレッジ)の開催状況は次のとおり である(表 10、参照)。 2002 年度 会場 テーマ 開催日 参加 人数 新発田市 「変動する世界とイスラーム」 5/28~9/28 65 新発田市 「仏教とキリスト教の対話」 10/1~10/29 16 新発田市 「比べて見よう -世界の民話と童話」 10/9~10/30 11 聖籠町 「春講座」 6/6~7/10 35 新潟市 「地球時代の良寛」 9/30~11/18 88 豊栄市 「教養講座」 6/19~7/24 21 三条市 「ジェンダー」 10/7~10/28 27 2003 年度 会場 テーマ 開催日 参加 人数 6/3~7/8 88 「アメリカという国」 9/30~10/28 24 新潟市 「地球時代の目で歴史を読む」 5/12~6/16 42 新潟市 「言葉の力と美しさにふれる」 11/15、16 120 豊栄市 「教養講座」 6/19~7/24 45 三条市 「アメリカという国」 10/1~10/22 29 新発田市 「食を通じて社会と文化を考える」 聖籠町 2004 年度 会場 テーマ 開催日 参加 人数 敬和学園大学 「言葉の力と美しさにふれる2」 6/19、20 152 敬和学園大学 「こどもとカップルの美術史1」 12/4、5 66 敬和学園大学 「こどもとカップルの美術史2」 1/8、9 69 139 新発田市 「知っているようで知らない世界のお話」 5/29~6/29 165 聖籠町 「教養講座」 9/28~10/26 16 豊栄市 「食とコミュニケーション」 6/10~7/15 24 三条市 「民族、宗教、国家を超えて」 10/6~10/27 23 横越町 「ようこそ!!物語の世界へ」 1/29~2/12 25 2005 年度 会場 テーマ 開催日 参加 人数 敬和学園大学 「阿賀の流れに-水俣病への 40 年の思いを語る」 6/18、19 67 敬和学園大学 「いまに生きる昔話-グリム・メルヒェンの世界を楽し 10/1~10/22 132 6/16~7/21 111 む」 新発田市 「民族、宗教、国家を超えて-共存する社会、共生する 社会」 聖籠町 「いのち、ひと、生活」 10/4~11/1 24 新潟市豊栄地区 「ことば、社会、コミュニケーション」 6/8~7/13 31 三条市 「共存する社会、共生する社会」 3/1~3/22 21 2006 年度 会場 テーマ 開催日 参加 人数 敬和学園大学 「生きる上での希望と欲望 -生きかた上手」 敬和学園大学 「児童文学のエッセンスを味わう -『たのしい川べ』 12/9 943 6/3、4 120 再読」 新発田市 「ファンタジー-大人が読む児童文学」 6/22~7/27 141 聖籠町 「これからの教育を考える-さまざまな視点か 10/17~11/7 40 10/31~ 39 ら」 新潟市豊栄地区 「ファンタジー-大人が読む児童文学」 11/14 三条市 「差異を越えて-国際社会の中のわたしたち」 10/12~11/2 45 〔点検・評価の結果〕 2002 年度以降、全体的にオープン・カレッジの参加者は増加傾向にある。新発田市では 過去 5 年間に、それぞれ 60、73、165、111、141 人の参加があり、その前の 5 年間と比べ 140 て増加傾向ははっきりしている。これは一つには地域社会の人々の関心に合わせたテーマ の講座を開催できたこと、もう一つは前項で述べた総合パンフレットやポスター、チラシ の配布など広報活動の徹底である。 聖籠、豊栄、三条の会場は受け入れ先が最初から 30~40 人の規模を設定しているので、 参加者人数の推移に大きな変化は見られないが、2006 年度はいずれの会場においても受講 者数が前年度に比べ、それぞれ 24 人→40 人、31 人→39 人、21 人→45 人と増加しており、 参加者数の変動はテーマの選び方によるところが大きいと推測する。 本学では食の問題、教育、コミュニケーション、宗教と異文化理解、誰もが知っている 児童文学の再読、など比較的身近なトピックからテーマを選んで開催するオープン・カレ ッジ(夜間)と人文社会科学研究所や学科が主催するアカデミックな公開講座(昼間)と 二つに分けているので、参加者が自分の興味の度合いにより、どちらかを選んだり、また 両方を選んだりすることができる点は強みである。また、オープン・カレッジでも週末 2 日間の集中講座(昼間)を提供しているので、スケジュール的にも受講生が自分のニーズ に合わせて学ぶことができる。 新発田市のオープン・カレッジでは、扱うテーマについても基本的には文学・歴史関連 のテーマと社会・経済・政治関連のテーマを交互に提供していることが、幅の広い受講者 層の獲得につながっている。懸案であった、本学教員では充足できない分野では外部講師 に依頼する件についても、各シリーズに一人というベースで実現させている。 「子ども」を中心に据えて、絵本、絵画における子どもの遊び、グリム童話、イギリス 児童文学などをテーマとした集中講座に関しては、学外の支援者の協力を得て外部の専門 家を招くことができ、その分野を研究してきた一人の専門家から、「継続的に一つのことを 深く学ぶ」という姿勢を貫くことができ、受講生の満足度は高い。また、多くの受講生が 継続的に参加しているので、広報活動も焦点を絞りやすいという利点もある。 しかしながら、この 5 年間に活動が本学の規模を超えて広がってしまった感もある。広 報委員会が企画・運営する「オープン・カレッジ」に加え、不定期ではあるが、大学、研 究所、学科がそれぞれに主催する公開講座が毎年のようにあるので、日程の調整が難しい、 企画は別でもすべての公開講座、シンポジウムの広報活動に加え、申し込みなどの事前準 備は事務局の広報係に集中してしまう、つまり、専門部署ができたことで、かえって仕事 の総量への配慮なしに仕事が集中するという問題である。 本学はリベラル・アーツ中心の大学なので、提供できるテーマにどうしても偏りが生じ てしまう。時局に応じたテーマを提供しにくい、これまでの経験から、受講生の間では身 近な文学作品への関心が高いことは分かっていても、その分野の教員に多くの負担をかけ ることは難しい、なども問題点として挙げられる。 新発田市では本学の公開講座を受講するリピーターも年々増えており、参加者の意識が 高まっているのか、アンケートによれば 6 回シリーズでも 6 人の講師がそれぞれのテーマ 141 で 90 分話すだけでは物足りないという声も出ており、こうした意見への対策が必要である。 〔改善の具体的方策〕 大学からの発信という点では公開講座は重要な役割を担っている。参加者の意識の変化 を考慮して、今後はオープン・カレッジにおいても総花的な講座を連ねるのではなく、「学 びの深化」に向けて、さらに多くの外部講師を招く必要が出てくる。受講生のニーズによ っては、長年続けてきた毎回異なる講師による 90 分の講義形式という枠組みを変え、2 週、 あるいは 3 週続けて、同一講師による講義という形を試みるべきであろう。これだけ同じ 会場で長く続けていると、本学の教員に親しみを感じている社会人も多く、 「あの先生の講 義をじっくり聞きたい」という声が出ているのも当然である。 毎年行っている公開講座関連のアンケートの結果を大学だけが参考にするのではなく、 参加者にその結果を報告する機会を持てば、オープン・カレッジは大学と地域の人々が協 力して作るものという意識が生まれ、受講生同士の仲間作りにも、そして将来的には社会 人の科目等履修生のさらなる増加にもつながっていくのではないか。 前項の説明にもあるように、本学では「敬和学園大学オープン・カレッジ」という名称 のもとで開設している公開講座以外にも社会人に開かれた多種多様な公開講座がある。教 員の負担に関しては外部講師の数の拡大という方法がとれるが、職員の負担については、 広報担当の専従職員が現在 2 人いるとはいえ、公開講座関連のすべての仕事を見直し、仕 事の総量を計る必要がある。現在までの発展的な状況を堅持するためにも、必要な作業で ある。 (3)教育研究上の成果の市民への還元状況 〔現状の説明〕 上項で述べたとおり、研究教育上での成果の市民への還元方法として、最大のものは公 開講座であるといえる。その他、社会人学生、科目等履修生もその範疇に含まれる。また、 2003 年度から人文科学研究所が『敬和学園大学人文科学研究所年報』を発刊しており、こ れについては、公開講座で取り扱った内容とタイアップした論文を掲載しており、市民へ の還元を目指している。一般向きの広報誌として季刊誌『敬和カレッジ・レポート』があ り、その中の「クローズアップ」という特集の中で教員の研究教育上の成果を取り扱うこ ともあり、これについては、市民への還元といえる。その他、研究成果を掲載した学術雑 誌『敬和学園大学紀要』などを発刊している。『敬和学園大学紀要』については基本的には 内容が一般向きでない学術誌だが、地域づくりや学内での英語教育の実践などの報告論文 も含まれており、研究成果の市民への還元に貢献している。 142 一方、本学が目指している地域循環型の英語教育の一環として、英語文化コミュニケー ション学科が主催し「リフレッシュ・セミナー」を開催している。2001 年から 2006 年ま では毎年開催され、ワークショップ形式や講演形式で英語教育の実践を行ってきた。毎回、 地元中高の英語科教員らが毎年、参加している。その他、教職課程(教職課程の項参照) において、地元聖籠中学への英語 TA 派遣、村上中等教育学校他への教員派遣、佐々木小学 校への英語教育導入のための講師派遣などを通じて、市民に教育研究の成果を問うてきた。 〔点検・評価の結果〕 公開講座については前項で詳述したとおりであるが、近年の広報担当専従職員の努力も あって、公開講座総合パンフレットの作成、本学ホームページの充実、『敬和カレッジ・レ ポート』発送時のチラシの同封などの工夫により、本学開催の講演会等の情報を迅速に市 民に伝達することが可能になった。そのことがおそらく講座受講者数の増加、ひいては教 育研究上の成果の市民への還元に寄与していると言えよう。ただし、年度によっては講演 が立て込んだ年もあり、今後は本学の規模に見合った形で、公開講座等を実施していく必 要がある。 その他、本学の地域循環型英語教育の一環である「リフレッシュ・セミナー」は、実践 的なプログラムで地域の英語教員の支援と成り得ており、高く評価できる。英語教職課程 のさまざまなプログラムや小学校への英語ボランティアの派遣については、まだ軌道に乗 ったとは言えない。今後も学生の英語力の向上を始め、本学のカリキュラムとの協調など 改善すべき点はある。 新発田市民と共に学ぶという形を最も強調しているのは、新発田市と共催している新発 田学研究センターの取り組みであろう。ただし、このセンターは 2006 年に開所したばかり で、その成果を評価するのは数年待ちたい。 〔改善の具体的方策〕 公開講座については前項参照。地域の市民との交流した上での地域社会再生への新たな 視覚の構築という点では、まだ改善の余地がある。何よりも、社会とともに大学があり、 社会に成果を還元するという意識なしには大学は存続できない。それゆえ、より効果的に 教育研究上の成果を市民へ還元をしていかなければならない。「新発田学研究センター」な どで既に実施しているものの、今後はさらに、市民も参加する形での社会の中での大学の あるべきビジョンをさらに探る必要がある。また、現在、作成の構想が既にある「研究者 総覧」の完成を急ぎ、各教員の専門分野について、広く市民に PR していく必要がある。さ らに、これまで多くの教員が行ってきたように、新聞社やテレビ局からの取材や、行政の 審議会、研究会などへの参加は広く研究を還元する意味で重要であり、今後もさらに積極 的な活動が必要である。 143 (4)地方自治体等の政策形成への寄与の状況 〔現状の説明〕 地方自治体から本学の事務局宛に委員及び講師等の就任依頼があったもの並びに教職員 から申告があったものについて記録を見ると、2003 年度は「新発田市介護保険運営協議会」 「新潟県弁護士会懲戒委員会」 「文化審議会専門委員」等で、14 人(複数の委員会への就任 は 1 としてカウント、以下同じ)、22 種(複数の教職員が就任している委員回答は 1 として カウント、以下同じ)。2004 年度は「全国ふるさと歌舞伎フェスティバル実行委員」「新潟 市歴史資料及び文学資料選定委員」 「新発田商工会議所産業振興諮問委員」等で、11 人、22 種、2005 年度は、 「新発田市情報公開・個人情報保護審議会委員」「新発田市入札監視委員 会委員」「新発田市まちづくり活動支援事業公開審査会特別審査員」等で、20 人、36 種。 2006 年度は、 「新発田市障害福祉計画策定審議会委員」 「新潟県環境影響評価審査会委員」 「新発田市福祉有償運送運営協議会委員」等で、15 人、37 種となっている。2005 年度か ら増加したのは、共生社会学科を増設し、専任教員が着任したことにより、福祉系の就任 以来が増えたためである。特に地元新発田市からの就任依頼が圧倒的に多く、学問的専門 分野以外の審議会等への就任依頼が多くなっている。 〔点検・評価の結果〕 この規模の大学としては、非常に多くの依頼を承諾していると言える。これは、本学の 設立の経緯から地元自治体からの要請にはできる限りのことをしたいとの基本姿勢がある ためである。上記のほか、毎年の新発田まつりの民謡流しには、教職員・学生 60 人程度が 参加していること、クリスマス・キャロリングでは県立新発田病院の待合室で讃美歌等を 歌っていること等、多くの寄与を行っている。 〔改善の具体的方策〕 以上のように、自治体からの依頼に対しては、本学の体力以上の寄与を行っている傾向 があることから、若干の整理が必要であるとの声もある。また、1 人で複数の委員を兼務し ている場合があり、偏った負担になっていることから、是正する必要がある。しかしこれ は、必要とする専門分野(例えば福祉系)が集中していることも原因となっているため、や むを得ないケースも多い。 144 第10章 学生生活 〔目標〕 1.奨学金予算を増額し、奨学金制度の充実を図る。 2.アドバイザー、カウンセラー、学生係の連携を強化し、アドバイザー制度とカウンセ ラー制度が相互に補完しあう体制を整える。 3.スポーツ大会などのスポーツ活動の場を増やし、学生間の友好関係の促進や、健康の 保持増進を図る。 4.課外活動に関して、部室、活動場所などの施設面における援助を進める。また、各学 生団体の予算配分と使用について適切な助言を行い、予算の効果的な運用を図る。 1.学生への経済的支援 (1)奨学金その他学生への経済的支援を図るための措置の有効性、適切性 〔現状の説明〕 本学では、本学奨学金、緊急援助資金の貸与、外国人留学生奨学金の給付、また私費留 学生学生納付金減免を制度として設けてきた。また日本学生支援機構、地方公共・民間育 英団体奨学生の取り扱い及び選考等を実施している。さらに国の教育ローンについても説 明会を行い、手続き等の指導をし、紹介している。また、文部科学省からの外国人留学生 学習奨励費の選考も行っている。 従来、実施されてきた学内奨学金は、学生の家庭の経済状況が急変した場合に、審査に 長期間を要する学外奨学金制度とは異なり、比較的短期間の審査過程を経て迅速に援助で きる体制を備えている。しかしながら、特待生をはじめとした入学時に決定される給付奨 学金制度に比べて、入学後に給付が決定される奨学金は小規模であることが大きな問題と して指摘されてきた。 大学間競争が激しくなる今日、奨学金制度に関しても戦略的改革が必要である。従来の 経済的支援という観点だけではなく、優秀な学生の確保をも視野に入れた改革が必要であ る。また、学生の勉学に対する動機付けといった点でも奨学金を戦略的に用いることがで きる。近年の多くの大学の奨学金制度改革が「優秀者への報奨型」へと軸足を移している ことからも時代の要請と言えよう。 以上の点を踏まえ、2005 年より大学全体の奨学金制度の見直しを行った。そこで、2006 年度からは経済的理由だけでなく学業成績を重視した奨学金制度、学業支援奨学金、学業 優秀奨学金の拡大、資格取得奨励奨学金を制度として開始した(表 44、参照)。 145 ① 敬和学園大学奨学金 本奨学金は経済的理由により就学が困難な学生に対し、奨学金を無利息で貸与する制度 である。出願できる学生は、本学の正規課程の 2 年次以上に在学し、経済的に困窮し学業 を継続することが困難であること、人物・学業ともに優れていること、さらに他の奨学金 または本学緊急援助資金の貸与を受けていないことが必要条件となる。 ② 敬和学園大学緊急援助資金 本学の正規課程に在学し、入学後において保護者の死亡、失職、疾病、災害などにより 家計が急変し、学業を継続することが困難であり、かつ就学の継続が可能な成績を修得し ている者、もしくはそれに準ずる者に対して、緊急援助資金を無利息で貸与する制度であ る。時期を問わず、出願、貸与ができる。 ③ 敬和学園大学外国人留学生奨学金 本学の正規課程に在学し、経済的理由により学業を継続することが困難であり、就学の 継続が可能な成績を修得している外国人留学生で、財団法人日本国際教育協会その他の奨 学金の給付・貸与を受けておらず、さらに当該年度の学費を所定の期日までに納入してい る者に対し給付する制度である。 ④ 学業支援奨学金 従来の貸与奨学金だけでは、学業継続が困難であり、しかも学業成績が優秀な学生を対 象としている。大学の限られた予算の中から給付するものであるため、原則として全学生 は従来の貸与奨学金がすすめられるが、貸与を重ねても、学業継続が困難な優秀な学生に 年間授業料の半額と施設費を給付する。留学生の場合は既存の減免制度を利用する。 ⑤ 学業優秀奨学金 従来から毎年度、各学科で成績がトップの学生に授業料の半額を給付してきた。2006 年 度にはさらに学内全体の勉学への意欲、成績向上を奨励するため、受賞の枠を学科の成績 順位 2 位(20 万円)3 位(10 万円)まで拡大した。学業成績のみを評価するもので出願の 手続きは必要としない。 ⑥ 資格取得奨励奨学金 学内の基準から考えて比較的難易度が高いと思われる資格(例:実用英語検定準 1 級、 TOEIC730 点以上等)を取得した学生に与えられる。資格取得を薦める外国語改革委員会、 就職委員会などと連携し、全学的な資格取得、学力向上への意欲を高めるため 2006 年 4 月 に設置、7 月に第1回の募集が行われた。合格証書、成績証明のコピーの提出が求められる。 146 〔点検・評価の結果〕 敬和学園大学奨学金に関して、現在の不況の中にあって、保護者への経済的な負担の度 合いが増していることからして、学業継続の一助となっている。返済についてもこれまで 卒業後支障なくなされていることから、有効に機能していると考えられる。 敬和学園大学緊急援助資金に関して、毎年、若干名の出願があり、学生の経済的な緊急 事態に対応していると考えられる。 敬和学園大学外国人留学生奨学金に関して、物価高の日本で学業生活を送ることが大変 困難な状況にある外国人留学生にとっては、最も負担が大きいのが学納金である。私費外 国人留学生授業料減免制度と合わせて、この奨学金は有効に機能していると考えられる。 また、選考の際、経済状況に関する客観資料が得られにくく、評価が非常に難しいため、 より一層、国際交流委員会、各アドバイザー、日本語担当教員の連携と情報交換が必要と される。 学業支援奨学金に関して、2006 年 4 月に設置し、5 月に第一回の募集を行ったところ、3 人の非常に学業が優秀で、学業継続が困難な学生が応募し採用された。 〔改善の具体的方策〕 2005 年度を通して、学生委員会を中心に大学全体の奨学金制度の見直しを行った。そこ であげられた問題点を踏まえ、 2006 年度より学業支援、資格取得支援の給付奨学金の設置、 学業優秀奨学金の拡大が実施されるようになった。学業支援奨学金は、奨学金の借り入れ に限度がきている優秀な学生に給付を行い、退学を回避させることを主なねらいとしてい る。学業優秀奨学金の拡大、資格取得奨励奨学金の設置は、学業の動機付けを与えること を目的とする。設置の際、大学の負担増についても検討されたが、学生の学力向上、勉学 への動機付けという効果を考えれば止むを得ない支出と考えられる。 今後は実施に際して出てきた問題点を学生委員会が中心となって検討し、スムーズに、 そして効果的に運用していけるよう見直しを適宜行っていく。特に資格取得奨励奨学金に 関しては、今のところ外国語検定を中心としているが、今後どの資格試験を対象としてい くのか、どの程度の金額(1~2 万円)をどの資格に給付するのかを細かく検討していく必 要がある。 それぞれの奨学金の対象学生を選考する上で、各委員会、各アドバイザーなどが協力し て情報交換を行うことが益々必要とされる。 (2)各種奨学金へのアクセスを容易にするような学生への情報提供の状況とその適切性 147 〔現状の説明〕 各種奨学金は、年度初めの各学年、学科別ガイダンスにて詳しい説明が行われる。学生 便覧に奨学金の内容、募集についての説明が掲載され、学生に配布される。募集について は該当する時期に、学生掲示板にて周知される。資格取得奨励奨学金については上記のほ かに、学内で資格取得を奨励している外国語改革委員会、就職委員会と連携し、該当学生 の推薦をしてもらっている。 〔点検・評価の結果〕 各種奨学金の募集、実施は、これまでのところ必要としている学生によく周知されてい るようである。経済的困難を抱える学生は速やかに各アドバイザーや学生係に相談し、そ こで利用可能な奨学金への応募を勧められる。2006 年度より新しい奨学金制度が設置され たが、前期中に募集があったものに関しては、応募、採用に関して、大きな混乱は無かっ た。奨学金全体に関しても適切に情報が提供されていると考えられる。 〔改善の具体的方策〕 奨学金制度が拡大する中で、どの学生がどの奨学金を必要としているのか、あるいは対 象となるのかを各委員会、各アドバイザーなどが協力して、学生に関する情報交換を行っ ていくことがより一層必要となるであろう。 2.生活相談等 (1)学生の心身の健康保持・増進及び安全・衛生への配慮の適切性 生活相談担当部署の活動の有効性 〔現状の説明〕 本学では学生が充実した学生生活を送ることができるように、全ての専任教員が分担し て全学生一人一人の様々な相談に応じるアドバイザー制度を設けている。また、前回の報 告書にあったように、近年、対人関係の悩みを持った学生や、学校という制度自体になじ みにくい特性を持った学生が増加しているが、そうした学生が気軽に訪れることのできる カウンセリング・ルームを開設している。そして、カウンセリング・ルームの活動の一環 として、新入生には、いわゆる「自分探し」のためのファイルを記入してもらったり、心 理テストを行うことで大学入学以前から問題を抱えている学生を把握したりし、学生たち ができるだけ円滑に学生生活が送れるように努めている。また、動く相談室という試みを 始め、特定の職員を配置し、学生の悩みを聞き、潜在的に問題のある学生を早期に把握す 148 ることが可能になっている。最後に、学生の健康保持・増進を目的として、健康診断とス ポーツ大会を開催している。さらに、体育実習で使用する時間帯を除いて、学内にある体 育施設(グラウンド、テニス・コート、体育館、トレーニングルーム)を開放しているの で、学生は自ら時間を選んで健康増進を図れるようになっている。 ① アドバイザー制度 各教員が 30 人程度の学生を担当し、入学から卒業に至るまで、継続的に学生生活に関わ る心配事や悩み事などについて個別に対応することができる制度である。教員の演習科目 の学生を担当することで、相互のコミュニケーションが容易でしかも密になるように設計 されている。学生がどの教員にでも相談を持ちかけられるよう、全教員が 90 分のオフィス・ アワーを授業時間とは別に設け、事前に教員と連絡が取れない場合にも対応できるように なっている。また、教務係の主導で、授業の欠席状況調査が行われており、各教員が自ら の授業について欠席している学生を報告することになっているが、この過程で不登校の学 生の存在が判明することが多く、その場合にアドバイザーが授業担当者に代わって学生と の面談を行い、欠席・不登校の背後関係を探り、教務委員会に報告することになっている。 これに関連して、通常の受講に支障を来たすと思われる疾患もしくは障害を持つ学生につ いて、学生係がアドバイザーやその他の教員から情報を集め、その学生が受講する授業の 担当教員に連絡するようにもしている。 ② カウンセリング・ルーム 学生が精神生活において直面した問題に専門家の立場から適切に対応できるように、カ ウンセリング・ルームを設けている。ここには週二日、専門のカウンセラーが在室し、予 約した学生の精神的な相談に当たっている。ただし、当日に予約なしで来室する学生に対 しても適切に対応できる体制になっている。必要な場合は、当該の学生の保護者や、その 学生を担当するアドバイザーとの相談も行っている。カウンセリングでは対応できない学 生に対しては、カウンセラーが適切な医療機関を紹介することもある。また、特に注意を 要する学生に対しては、カウンセリング・ルームからの情報(〔現状の説明〕で述べた心理 テストの結果やカウンセリングの利用状況など)や、前項でも述べた欠席状況調査の結果、 障害や疾病に関する調査結果や情報は、個人情報であるから、教務課長の下で厳重に保管 されている。アドバイザーや授業を担当する教員にも適切な範囲でこうした情報が共有化 される仕組みを敷いており、また、機密を要する個人情報についても、教務課長の監督の 下であれば、該当する資料を閲覧することができる。 ③ 動く相談室 教員に自分の悩みを相談することに抵抗のある学生がいることが観察されるため、学生 149 と接する機会の多い職員を動く相談室に任命し、学生が相談しやすい環境を整えている。 学生が相談するチャンネルを増やすことで、彼らの不安材料を取り除き、勉学に励めるよ うになってきているものと思われる。 ④ 健康管理 本学では、学校保健法に基づいて、学生の健康保持・増進を促す役割を果たすために、 学生の疾病等にできるだけ早期に気づくように努めている。具体的には、毎年 4 月上旬に 定期健康診断を行い、身長・体重・視力・聴力の基礎的な検査の他、尿検査で内臓疾患を 検査し、胸部 X 線撮影によって肺などの異常を検査している。最後に医師が問診を行い、 学生の生活習慣などを聞き取り、適切なアドバイスを与えている。健康診断の結果、異常 が認められない学生に対しては、通知しないことが通例であるが、総合所見が「要再検査」 となった学生には精密検査を受診させ、その結果を学生係に提出させている。なお、就職 などで健康診断書が必要となった場合に、学生はこの定期健診の結果を診断書にしてもら うことができる。また、本学には校医が常駐していないが、医務室は常時利用可能な状態 になっており、休養が必要な学生がいた場合にはいつでも利用可能であり、市販薬による 応急処置も行うことができる。また、学生が負ったけがや病気の状況から見て、必要があ れば、校医や救急病院(県立新発田病院)に搬送するなどの処置を取ってきている。また、 学生は学内の体育施設を自由に利用することができるので、スポーツの活動を通じて、健 康を増進し、学生生活上のストレスを解消し、また知人・友人との親交を深めることがで きる。 ⑤ スポーツ大会 毎年 6 月上旬の土曜日に学内において、在学生の体力増進と新入生の歓迎をかねてスポ ーツ大会を開催して、ソフトボール・テニス・バスケットボール・バドミントンなどの競 技を行っている。本学の学生・教員・職員であれば誰でも参加することができ、毎年、学 生たちや教職員が爽やかな汗を流している。スポーツ大会で教職員に対して親しみを持つ 学生も多数いるようである。 〔点検・評価の結果〕 近年、対人関係や性格特性の点で問題を抱える学生が増加してきている。また、学業不 振の悩みを抱える学生も増加し、その影響が他の学生生活に波及する場合も散見される。 こうした新しい学生たちの動向を踏まえ、卒業後にきちんとした社会人として歩んでいけ るように教育するため、学生たちの精神面のケアは非常に重要である。本学では学生と教 員・職員との緊密なコミュニケーションの構築に非常に努力しており、学生と教職員の「垣 根」が低いことが本学の特色のひとつとなっている。 150 〔改善の具体的方策〕 既存の制度をよりよく活用し、教職員とカウンセラーの連携をさらに強化するため、ア ドバイザー制度とカウンセラー制度の緊密な連携が現在でも課題である。スポーツを通じ て学生相互、学生と教職員の間の親睦をはかることが可能になっているので、これをさら に増進することも必要である。年に一度のスポーツ大会だけでなく、スポーツを気楽に楽 しめる環境が実現できればさらに良いと思われる。 次に、現在は欠席・不登校の問題は教務委員会が管理しており、これは本学の制度上適 切であるが、欠席や不登校自体が学生生活上の問題から生じている場合は一定程度以上あ るのではないかと思われるので、教務係・教務委員会と学生係・学生委員会との連携を今 後より一層拡充することが望ましい。 また、学生の悩み相談といった個別の対応は出来ているのであるが、学生の悩みなどは 彼らの社会性の欠如から生み出されることも多いと思われ、学生の社会性を育成するよう な方向での取り組みが必要であるかもしれない。たとえば、就職指導室と連携して、友人 との挨拶、初対面の人への対応の仕方、教員を含む年長者に対する適切な話し方など、ご く基本的な社会的スキルを身に付けさせるとか、授業にきちんと出席できない学生を集め て集中的な指導を行うとか、あるいは、今後創設する予定の学生のティーチング・アシス タント制度を通じて、ティーチング・アシスタントの学生に問題のある学生とのある程度 の橋渡し役になってもらう取り組みなどが必要となる。 (2)ハラスメント防止のための措置の適切性 〔現状の説明〕 本学では、キリスト教主義に基づく大学として、法に基づいてすべての人の人権を尊重 し、性、人種、国籍、年齢、信仰、性指向、障害等によるあらゆる差別を許容しないこと、 男性と女性は平等なパートナーであり、セクシュアル・ハラスメントは人権侵害であるこ とを自覚し、これの防止に努めること等を明言した学長宣言をバックボーンとして、セク シュアル・ハラスメント防止に関する規程、調査委員会規程、相談員の対応等に関する取 り扱い内規を制定し、これに従って調査委員会の設置、相談員の配置を行っている。また、 学生には学生便覧にセクシュアル・ハラスメント防止のためのガイドラインを記載して問 題の所在と被害にあった場合の対応について周知を図っている。 ① セクシュアル・ハラスメントの防止に関する諸規定の制定 本学では、日本国憲法、教育基本法、労働基準法、男女雇用機会均等法等に基づいて「敬 151 和学園大学セクシュアル・ハラスメント防止に関する規程」を制定している。この規程は セクシャル・ハラスメントを防止することにより、教職員及び学生の人権を尊重し、教職 員の職務遂行と快適な学習環境のもとでの学生の勉学を保障すること、また、万一セクシ ュアル・ハラスメントが本学関係者に生じた場合の救済等をすることを目的としている。 この規程の相談窓口等に関する条項により、 「敬和学園大学セクシュアル・ハラスメント調 査委員会規程」及び「敬和学園大学セクシュアル・ハラスメント相談員の対応等に関する 取り扱い内規」が制定されており、調査委員会と相談員の構成や業務が定められている。 ② セクシュアル・ハラスメント調査委員会、セクシュアル・ハラスメント相談員 調査委員会は各学科長、事務局長を含む学長が委嘱した教員 7 人(男性 4 人、女性 3 人)、 事務職員 3 人(男性 2 人、女性 1 人)で構成されており、学長は相談員から委員会の開催 要請があった場合は直ちに委員会を開催して調査を行い、委員会の答申にそって必要な措 置をとる。相談員は現在、学長が委嘱した教員 6 人(男性 2 人、女性 4 人) 、事務職員 2 人 (男性、女性各 1 人)である。相談員は内規に従って苦情相談に応じ、調査活動等問題解 決に協力し、相談者の主張及び要求を調査委員会に通知するとともに学長に報告する。こ のように諸規程に基づいて防止システムが整備されているので、相談があった場合には速 やかな対応が可能であると思われる。 ③ セクシュアル・ハラスメント防止に関する学生への周知 学内ではセクシュアル・ハラスメントの防止に関すること及び相談員の氏名等について は掲示で伝達している。また、学生便覧にセクシュアル・ハラスメント防止のためのガイ ドラインを記載している。前述の学長宣言を冒頭に掲げ、セクシュアル・ハラスメントに 対する本学の考え方を示し、その防止に努めることを宣言している。さらに、セクシュア ル・ハラスメントの具体的な内容、分類、判断基準、相談員名簿について記載し、この問 題が人権侵害であることを理解すること、防止に努めること及び被害にあった場合の対処 方法等について周知を図っている。 ④ 大学のジェンダー・バイアスに対する配慮 本学教職員の構成を男女別にみると、教員では男性が 21 人、女性が 16 人、事務職員で は男性が 18 人、女性が 13 人であり、教職員のジェンダー・バイアスは小さいといえる。 従って、授業や日常生活の中でジェンダー・ハラスメントに関しては敏感に反応し対処し ていく土壌があると思われる。カリキュラムの面からみると、人権に関する科目としては 「人間学 1,2」 、「国際人権論 1,2」などが、ジェンダーに関する科目としては「日本近現代 史 1,2」、「共生社会とジェンダー1,2」が置かれている。他にも人権やジェンダーをとりあ げている科目は多く、また、チャペル・アッセンブリ・アワーでは、人権や人間の尊厳に 152 関する講話が数多く行われている。 〔点検・評価の結果〕 本学では大学院を設置しておらず、教員組織は小講座制をとっていないので講座内での 教員間並びに教員と学生間の地位による権力支配は生じにくい。また、学生と教職員との 緊密な関係がとれているので学生にたいする研究・教育上の嫌がらせも起こりにくい。従 って、本学ではアカデミック・ハラスメントの発生は少ないと考えられるので、この問題 に関しては、現行の対応システムの中で対処していくことができると考える。 〔改善の具体的な方法〕 ハラスメントに関する問題は表面に現れてこない場合もあり、大学側が気づかないだけ で、実際には相談できずに泣き寝入りしている学生がいないとも言いきれない。本学では 学生生活上の問題には、全教職員が連携をとって対処していこうという体制がとられてい る。今後もこの体制を崩さないこと、教職員全員が注意深く学生の言動を観察し、問題を 感じたら速やかに相談員に連絡することが必要である。また、掲示や学生便覧を読まず、 この問題に対する理解が不十分な学生や被害にあった場合に対処のしかたが分からない学 生がいることも考えられるので、アドバイザーによる周知徹底やパンフレット等による啓 蒙が必要であろう。 3.就職指導 (1)学生の進路選択に関わる指導の適切性及び就職担当部署の活動上の有効性 〔現状の説明〕 年度毎の学生の進路指導に関わる原案は、就職指導に責任を持つ就職委員長のもとで、 教務課に属する「就職指導室」 (室長、係長、職員の計 3 人)で作成され、就職委員会(委 員長、教員 3 人、事務局長、教務課長、就職指導室長、就職指導室係長の計 8 人)で審議 され、実施に移される。また、同委員会は、実施後の検証を行い、より効果的な指導・活 動案を構想することを任務としている。なお、就職委員会で決定された改革案、年度計画 は逐次教授会で報告され、承認を受けている。 委員会で決定された年度計画を実施に移す、本学の就職担当部署は「就職指導室」であ る。就職指導室の活動は、データの管理からガイダンスや講座の運営、個別指導まで多岐 にわたる。以下、その内容を項目ごとに概説する。 153 ① 就職統計データの整備と活用 就職指導室には、企業からの求人票が公開され、毎年の学生の就職状況及び就職活動の 内容を調査・収集したデータ、個別企業の採用情報、当該企業に就職している OB・OG に ついての詳細な情報ファイルが揃っている。こうした情報ファイルは就職活動を展開し、 採用試験に臨む学生にとって貴重なデータとなっている。 このほか、指導室では企業説明ビデオや関連文献を自由に手に取ることができ、室内に 設置されたインターネット端末を利用して、学生がいつでも就職情報を収集・発信できる 環境を整えている。 ② 低学年向け就職ガイダンス、3 年次生向け「キャリア開発 1,2」と就職対策講座 依然として続く厳しい経済環境を背景に、1997 年に就職協定が撤廃され、学生には早期 からの進路への動機付けが必要となってきている。このため、1 年次生には前期 4 月の基礎 演習時と、後期 11 月のチャペル・アッセンブリ・アワーを通じて、2 年次生には 4 月の学 年全体ガイダンスを通じて、それぞれ就職ガイダンスを実施している。ここでは、現在の 社会・経済の状況を分析し、働くことの意義、今日的な問題点、及び自己啓発の必要性を 分かりやすく説明している。 3 年次生には、学年末に就職活動が本格化することを見据えて実践的なガイダンスを実施 している。これは 4 年次まで継続するものであり、計 13 回のテーマ別ガイダンスを通じて 就職活動全般にわたる情報提供を行ってきた。この就職ガイダンスは、2003 年度から「キ ャリア開発」と名を改め、後述する就職対策講座への出席と合わせて、単位化されるよう になった。 「キャリア開発 1,2」となってから、授業回数も 20 回程度に増やし、また、学外 の講師を招く割合を高め、内容の専門性も上がっている。2003 年度以前の平均出席率は 30%台だった。単位化初年度の 2003 年度の平均出席率は 46.6%とまだ低かったが、2004 年度 75.1%、 2005 年度 79.7%、 2006 年度は前期が終わった時点で 87.1%と着実に上昇し、 高いポイントを出している。 3 年次生に対しては、「キャリア開発 1,2」と連動して、夏休みと冬休みに 2 日間ずつ集 中講義の形で就職対策講座を実施している。実施にあたっては、就職指導室がサポートす る形で専門業者に依頼している。内容は、自己分析・適性検査の実施、論作文の作成、一 般常識の確認、SPI 対策方法、履歴書・エントリーシートの記入方法(インターネットの活 用も含む) 、及び実践的な面接指導が中心となる。 また、徐々にではあるが、個別の業界研究の機会も設けている。この実施にあたっては、 企業の人事担当者の協力を仰いでいる。 ③ インターンシップ 本学では、就職活動を控えた3年生を対象に、夏休みを利用して 2 週間(受け入れ企業 154 の都合で1週間の場合もある)のインターンシップを実施している(第 3 章、I、3、参 照)。 ④ 資格取得支援講座 本学では就職に対する学生の意識を高め、要望の高い資格を在学中に取得できるよう各 種資格取得支援講座を開講している(第 3 章、I、9、参照)。 ⑤ 個別面談・個別指導 後期の就職対策講座と「キャリア開発 1,2」を修了した学生は「就職登録カード」に必要 事項を記入して、演習担当者との個別面談に臨む。進学なのか就職なのか、この時点で進 路についての確認を行い、就職の場合は業種や職種について話し合う。 しかし、就職活動の時期になっても、自己分析が不十分なため自分の将来像が描けず、 就職活動をスムーズに開始できない学生が年々増えている。就職活動開始後は、個々の学 生の指導については、就職指導室長と職員が対応している。近年、学生の相談は、内容の 多様化、複数化、長期化傾向にあり、就職指導室の活動全体の中で個別指導に割かれる時 間がとみに増大している。 ⑥ 学内合同企業説明会など 毎年 2 月中旬、13:00~17:00 に本学体育館において、多くの企業採用担当者を招いて学 内合同企業説明会を開催している。2002 年度の出席企業数は 63 社、2003 年度 51 社、2004 年度 49 社、2005 年度 69 社となっている。当合同説明会には、本学の学生に関心を持った 企業が出席し、他大学の学生と競合することなく説明を受けられる点で、就職活動を開始 して日の浅い学生たちにとって、絶好の機会となっている。 ⑦ 3 年次保護者との懇談会、企業との懇談会 本学は学年ごとに保護者との懇談会を開いているが、毎年7月に開催される 3 年次生保 護者との懇談会は、テーマを就職活動・就職指導に絞って行われる。懇談会では、就職委 員長と就職指導室長から現在の経済状況、就職の傾向、大学の就職指導体制について説明 を行い、学生本人と大学の指導体制だけでなく、保護者の理解と協力を求めている。 企業との関係維持と情報交換を目的として、毎年 11 月には企業の採用担当者を招いて、 企業との懇談会を開催している。 〔点検・評価の結果〕 過去 5 年間を振り返ると、 就職委員会と就職指導室は現状改善のために掲げた提案を次々 と実施に移してきた。 2001 年度からのインターンシップの導入と 2002 年度からの単位化、 155 2003 年度からの「キャリア開発 1,2」の単位化、及び各種資格取得支援講座の開講、個別 指導の強化などである。こうした努力によって、厳しい就職状況にもかかわらず、2001 年 度から 2005 年度までの就職内定率は、86.4%、90.3%、92.9%、92.6%、96.6%と着実に 伸びてきており、全国私立大学の平均就職内定率を若干上回る成績を出している。この点 は、評価したい。 前回の自己点検・評価では、3 年次生の就職ガイダンスへの出席率の低下が焦眉の問題で あった。この状況は、2003 年度の「キャリア開発 1,2」の単位化によって一変した。たし かに、単位目当てで出席する学生もあるが、出席して初めてこの授業の重要性を認識した ことが、毎回授業後に提出を求める感想や質問の中に見てとることができる。まずは出席 しなければ始まらないことを考えれば、単位化は成功であったと言える。講義内容も学外 の専門家を講師として招き、専門性が高くなり充実の度合いは増している。プログラムの 組み方に整合性と統一性をもたせるようさらなる工夫をしたい。 インターンシップは、短期間ではあるものの、実社会の経験を通じて自らの進路を現実 的に考えるよい教育機会となっている。この制度を導入して 5 年が経ち、インターンシッ プ体験者を通じて学生もその意義を理解しつつある。しかし、その希望者は未だ少数であ り、派遣先の選択においても、過去に本学の学生を受け入れた企業等から選びがちである。 資格取得支援講座のうち、Microsoft Office Specialist(Word・Excel)と秘書検定講座 は安定した数の受講者を受け入れており、検定試験の合格率も高く、期待通りの成果を上 げている。一方、販売士検定や簿記検定は、職種によっては重要な資格であるにもかかわ らず、受講者数が安定していないのが現状である。 就職指導室は、訪れる数多くの学生に対して、企業研究の方法、面接の仕方、礼状の書 き方、採用試験の勉強方法に至るまで丁寧な個別指導を心がけている。そのこともあって、 社会人となった卒業生が近況報告を兼ねて最もよく訪れるのが就職指導室であると言って も過言ではない。しかし、学生の変化とともに、就職相談も変化している。ネットによる 情報収集が進み、就職指導室から企業情報や就業情報を求める声は減り、その代わりに自 己分析ができない学生が増えたために、本人が気づかない「良さ」や「強み」、「過去の体 験によって得たこと」などを引き出すのに割く時間が増えている。そのため、学生一人当 たりの相談回数が増加し、相談は長期化する傾向がある。さらに、一歩を踏み出せない学 生を励まし、悩む学生を勇気づける。就職指導室の職員は、本来の就職担当部署としての コンサルタントの役割のほかに、カウンセラー、コーチの三役をこなすことが求められて いる。緊急な問題は、コミュニケーション能力や論理的思考力の低い学生をどう指導して いくかである。しかし、こうした能力の開発は、学生の進路選択に関わる指導を行う就職 担当部署の守備範囲を超えているように思える。 〔改善の具体的方策〕 156 「キャリア開発 1,2」については、プログラムの体系的展開とさらなる内容の充実を検討 したい。 インターンシップについては、 「キャリア開発 1,2」の授業で先輩の体験談を入れるなど、 学生が具体的なイメージを持ち、その意義を理解しやすくするよう努めたい。また、イン ターンシップの受け入れ先確保のために、就職指導室は日頃企業と接触する際に、インタ ーンシップに対する企業の姿勢を把握するよう努める必要がある。 資格取得支援講座への参加者をさらに拡大するために、年度始めの配布書類に案内を入 れたり、掲示板で申込期日に合わせて告示を行ったり、就職ガイダンスや「キャリア開発 1,2」で資格と職種との有機的な関係を説明するなどして、機会を捉えては宣伝に努めたい。 一方で、学生のコミュニーション能力や論理的思考力、言い換えれば「人間力」をどう 身につけていくかの問題は、就職担当部署の課題とせず、全学的教育の中で解決すべきで あると考える。 今日の学生にみられる「人間力」の低下は、初等中等教育における標準化された知識の 暗記型教育や携帯メールがもたらした非対面型コミュニケーション等に起因していると考 えられる。高等教育においても、これまでは「卒業」を高等教育のゴールと捉え、社会人 としての資質を備えた人間を教育するという意味でのキャリア教育について十分考え、行 動してきたとは言い難い。 正課授業から、自分と向き合い、コミュニケーション能力や論理的思考力といった能力 を修得することを考えると、大・中教室での講義中心の教育形態ではなく、主に学生が主 体的に勉学に取り組み、論理的に問題の本質を捉えていく必要のある、ゼミのような少人 数教育形態が機能を発揮しなければならない。また、レポート、論文の作成により、調査 力、問題発見力、文章表現力やプレゼンテーション能力が醸成されるだろう。2 年後には 2009 年度のカリキュラム改革にむけてその内容の検討が行われるが、こうしたことをふま えて今求められている高等教育のあり方を反映した改革を行うことが肝要である。 4.課外活動 (1)学生の課外活動に対して大学として組織的に行っている指導、支援の有効性 〔現状の説明〕 大学教育の目的は専門の学問研究だけではなく、高度の人格形成と幅広い視野を備えた 人格の育成にあると考える。このために、正課授業の他に授業の余暇を利用した学生が自 主的に行う課外活動(クラブ活動)を通して、学生たちは社会性・協調性・責任感を養い、 豊かな人間形成を図っている。本学には、文化・スポーツ両面に渡って活動している 28 の 157 学生団体があり、これらの団体による課外活動は、学生たちの人格形成に重要な役割を果 たしている。 課外活動への援助としては次のようなものがある。 ① 経済面における援助 ・ 学生団体援助費・・・課外活動への助成のために、毎年各団体へ援助金を交付してい る。この援助金の配分は、学生の自主性の育成を図るために「学生団体代表者会議」 及び「学生団体代表責任者との懇談会」における話し合いや提出された予算案、各団 体の活動実績などを勘案して決定される。各団体は、年間予算額(援助額)に見合っ た節度ある支出計画を立て、常に収支を自己管理することによって自主性を培ってい る。 ・ 学園祭への援助・・・毎年 10 月に実施される敬和祭を自主的に管理・運営する敬和 祭実行委員会に対して援助金を交付している。各団体による模擬店、コンサートやラ イブ・イベント、展示会の運営などに援助金が拠出されている。 ・ 学生団体の表彰・・・特に優れた成績を収めたり、社会に貢献したりした団体・個人 に対して毎年、活動奨励のために表彰を行う「学生団体年度内表彰制度」を設けてい る。 ② 施設面における援助 ・ 部室の使用・・・登録団体 28 のうち 22 団体に対し、部室の使用を認めている。 ・ 体育施設の使用・・・体育館、グラウンド、テニス・コート等の使用について、学生 団体代表者会議において調整した上で、正課授業での使用時間以外で空いている時間 帯の使用を認めている。 ・ アーチェリー部の設立に伴い、2004 年度にアーチェリー場を新設した。 ③ 指導体制の拡充 ・ 監督、講師及びコーチ・・・各団体による課外活動をより充実させるため、必要に応 じて顧問の推薦によって社会人の監督、講師及びコーチを委嘱することができる。 ・ 職員学生アドバイザー・・・社会人の監督、講師及びコーチに加えて、学内の職員に ついても監督、コーチの依頼を行い、学生の課外活動を支援している。 〔点検・評価の結果〕 社会人による監督、講師及びコーチ、職員学生アドバイザーによる監督、コーチを必要 に応じて委嘱できるなど学生団体の課外活動を支援する体制が充実している。 158 〔改善の具体的方策〕 社会人や職員が立ち入った指導をすることは、学生の自主的な活動を損なう恐れがある ことも考えられるので、学生の自主性を活かした活動を支援する。施設面における援助に ついて、部室及び活動場所・時間の不足が生じていることから、これらについての調整を 今後も継続する。 (2)資格取得を目的とする課外授業の開設状況とその有効性 本学では就職に対する学生の意識を高め、要望の高い資格を在学中に取得できるよう各 種資格取得支援講座を開講している(第 3 章 I、9、参照)。 (3)学生代表と定期的に意見交換を行うシステムの確立状況 〔現状の説明〕 課外活動(クラブ活動)によって、学生たちは社会性・協調性・責任感を養い、豊かな 人間形成を図っている。各団体による課外活動は、学生たちの人格形成に重要な役割を果 たしているため、この活動をより充実したものにするための支援を実施している。支援の 具体的な方向性を検討するために、毎年、年度初めに数回の「学生団体代表者会議」 、12 月 に「学生団体代表責任者との懇談会」を設け定期的に各団体の代表者と意見交換を行って いる。 〔点検・評価の結果〕 学生団体代表者会議においては、執行部(3 人)の決定、学生団体援助費(部費)額の予 算配分、部室使用の決定などを行う。学生団体代表責任者との懇談会においては、大学側 から学生部長、学生委員会の担当者が出席し、学生団体代表者との意見交換を行う。課外 活動に関することにとどまらず、学生生活に関する問題点、要望、意見なども受けつける。 また、大学側の要望を伝えるなどの意見交換を行っている。これらの会議は、各団体の活 動状況を把握し、予算案、体育施設の利用、人材資源の活用についての率直な意見を交換 する機会となっている。その他、協議事項が発生した場合には、適宜、会議が開催される など、学生代表と大学側とが意見交換できる体制が整っている。 〔改善の具体的方策〕 学生係が指導的役割を担い会議を運営しているため、指導事項、注意事項等の伝達、議 159 論の進行がスムーズであり、学生たちが自由に意見を述べ、大学側と意見交換を行うこと ができる環境が整っているが、学生係が会の運営の中心を担うことは、学生の自由な意見 交換を妨げることにつながりかねないため、学生主導で会を運営できるよう指導していく。 配分された年間予算を使い切っていない学生団体が存在する一方で、予算不足に悩む団 体もあることから、各団体の活動状況や予算案についての話し合いをさらに充実させる必 要がある。したがって、各団体の自主性を尊重しつつ、予算配分と使用方法に関して必要 に応じて適切なアドバイスを行う必要がある。 160 第11章 管理運営 〔目標〕 1.教授会の権限と意思決定のプロセスを明確にする。 2.学長の選任を民主的な方法で行い、そのプロセスを透明性の高いものにする。 3.大学の意思を慎重であると同時にスピーディに決定する。 4.理事会と大学の連携と協力を深める。 1.教授会 (1)教授会の権限、殊に教育課程や教員人事において教授会が果たしている役割とその 活動の適切性 〔現状の説明〕 教授会の審議事項は、学則第 6 条によれば、以下のとおりである。 ① 教員の人事に関する事項 ② 教育課程に関する事項 ③ 入学、退学、休学、転学、留学、除籍、賞罰及び奨学制度に関する事項 ④ 学生の試験及び卒業に関する事項 ⑤ 学則その他重要な学内諸規則等に関する事項 ⑥ 学術研究に関する事柄 ⑦ 教室、研究室、図書館その他教育研究施設に関する事柄 ⑧ 学内の宗教活動に関する事柄 ⑨ その他学長の諮問する事柄 これらの事柄を協議して決定するために、各種委員会が教授会の下部組織として位置づ けられ、委員会活動を通して教授会を補佐している。すなわち、教員人事に関しては、そ の都度に資格審査委員会が形成される。教育課程全体の実施や試験や卒業に関しては教務 委員会、教育課程全体の改変に関しては FD・カリキュラム委員会が取り扱っている。また、 それらの下部委員会として教育課程の一部の実施や改変に関しては外国語改革委員会・教 職課程委員会・社会福祉士養成課程委員会が取り扱っている。 入学に関しては入試委員会、留学や国際交流に関しては国際交流委員会、賞罰や奨学制 度に関しては学生委員会、就職に関しては就職委員会、学術研究に関しては研究所委員会・ 紀要委員会、図書館に関しては図書館委員会、情報教育・LAN に関してはネットワーク委 員会、宗教活動に関してはキリスト教と教育委員会、ボランティア教育・活動に関しては 161 ボランティア委員会、広報活動に関しては広報委員会が活動している。これらの各種委員 会は、学則に書かれていない関連した事柄も取り扱っている。 〔点検・評価の結果〕 教授会は「敬和学園大学教授会運営内規」に従って毎月一回定期的に開催され、時折臨 時に開催されている。学長報告、学科長報告、これらの各種委員会の報告事項の後に、こ れらの諸委員会などで協議された原案を協議し決定している。なお、学生の退学、休学、 除籍に関しては、アドバイザーの報告の後で、転科については学科長の報告の後で承認し ている。 〔改善の具体的方策〕 教授会の協議事項で議論が多く出たり、紛糾したりする場合には、ロバートソンの議事 法などの議事進行法を採用するのも一案であろう。 (2)学部教授会と学部長との連携協力関係及び機能分担の適切性 本学は、学長が学部長を兼ねているので、この項目は2(3)に譲る。 (3)学部教授会と評議会、大学協議会などの全学的審議会との間の連携及び役割分担の 適切性 学長と評議会、大学協議会などの全学的審議機関の間の連携協力関係及び機能分担、 権限委譲の適切性 〔現状の説明〕 本学は人文学部 1 学部の単科大学であるが、教授会を支える組織として大学運営委員会 がある。大学運営委員会は重要案件を教授会に出す前に学科長と学長で相談する会議とし て発足したが、その後、学科長に宗教部長、教務部長、学生部長、研究所長、図書館館長 を加えて、大学幹部会の性格を担うようになった。 大学基準協会の加盟判定審査で、管理運営に関して、大学運営委員会の位置づけを明確 にすること並びに学長の補佐機関の設置することが助言されたので、2003 年に新井明学長 が就任すると大学運営委員会の改革に着手した。 第一に、大学運営委員会の委員に、さらに入試委員長、就職委員長、広報委員長を加え て、大学運営委員会で大学全体を見渡すことができるようにした。また、大学運営委員会 162 を学長補佐機関の一つに位置づけた。 第二に、学科や各種委員会を越えた大学全体の問題を解決するために、大学運営委員会 の下部組織として以下のアド・ホックの小委員会を 2004 年度から 2006 年度にかけて順次 設置して、十分に協議した上で、大学運営委員会並びに教授会で承認して、大学改革を推 し進めてきた。 ① ポイント制の新任・昇任制度(→「敬和学園大学教員選考細則」の制定) ② 教員のサバティカル制度(→「敬和学園大学特別制度規程」の制定) ③ 教育基本法改定問題(→敬和学園高校大学合同教育基本改定問題検討委員会) ④ 学長選考制度(→近い将来「敬和学園大学学長選考細則」の制定へ) ⑤ TA 制度(→新発田学研究センター設置、他) ⑥ 学長補佐制度(→学長補佐、近い将来「敬和学園大学学長補佐規程」の制定へ) 〔点検・評価の結果〕 大学運営委員会の改革により、以前より一層、学長のリーダーシップが発揮されている。 この間に、学科を越える大学全体の長年の懸案が解決されると同時に、今後の大学の方向 性を決定する重要な方向づけを行った。大学運営委員会の下部組織としてアド・ホックの 小委員会を設置する際に、学長は委員長を指名し、また問題点と方向性を示して、委員の 構成や議論の内容を委員会に付託している。 教授会は通常の業務を推進しているが、大学運営委員会は教授会で協議する重要な問題 を前もって協議し知恵を出し合う他に、大学改革を推進する源となっている。 〔改善の具体的方策〕 現時点では、大学運営委員会の下部組織の小委員会が大学全体の改革を進める推進力と なっているので、しばらくはこの方向を維持することが望ましい。 2.学長、学部長の権限と選任手続 (1)学長・学部長の選任手続の適切性、妥当性 〔現状の説明〕 本学の学長選考に関しては「敬和学園大学学長選任に関する規定」に従って、大学教職 員から 5 人、理事会から 5 人(理事 3 人、評議員 2 人)の選考委員を選出し、理事長が選 考委員会を招集して、学長候補者を決める。また、学長候補者は、大学の指導者としてふ さわしい学識と見識を備えたキリスト教徒であることが定まっている。 163 しかし、学長選任に関する細則は定まっていないので、慣例に従うことになる。だが、 過去の学長選考においては、しばしば慣例が変更されてきた。そこで、2006 年 5 月に実施 された学長選挙に関しては、学長が学長選考のガイドラインを示して大幅に改革した。そ の骨子は以下の通りである。 ① 学内の選考委員は各学科から 1 人、事務局から 2 人、それぞれ大学の将来を担う 中堅者を選出する。 ② 選考委員会では、学長候補者は、原則として、3 人(複数)立てる。 ③ 学長選挙は選挙管理委員会が行うが、各学科から 1 人、若手の選挙管理委員を選 出する。 ④ 学長候補者は無記名投票によって決めるが、専任教員ばかりでなく、専任職員も 選挙権を持つ。 ⑤ 最終候補者は、有効投票数の 3 分の 2 以上の票によって決する。 ⑥ 最高得票者の票が 3 分の 2 に達しない場合には、3 分の 2 に達するまで投票を繰り 返す。 ⑦ 大学で選出された最終候補者を原案として、理事会選出の委員と大学選出の委員 で構成する学長選考委員会に提案する。 〔点検・評価の結果〕 今回の学長選挙に関しては、学長がガイドラインを示す頃とほぼ同時に、大学教職員の 強い意向で現学長に再選を望む意向が示された。そこで各学科と事務局から選出された学 内の選考委員会は複数の候補者を立てることはせずに、現学長の信任投票という形にはな ったが、教員と職員の投票を実施した。教員とほぼ同数の職員にも投票権を与えるのは、 極めて画期的な試みであるが、学長職が教員組織の教授会と職員組織の事務局の両方を統 括する立場であることを鑑みると極めて平等で、民主的である。また、従来は学内の選考 委員 5 人の内訳が教員 4 人、職員 1 人であったが、今回から中堅の教員 3 人、中堅の職員 2 人としたのも事務局側から複数の意見が反映する工夫でもあり、2 学科体制から 3 学科体制 に移行した点からも評価される。 〔改善の具体的方策〕 学内選考委員会で 3 人の学長候補を立てるのは理想的であるが、学長にキリスト者条項 がかかり、選考委員がキリスト者でない場合には困難なことが予想されるので、原則とし て複数の候補者を立てるとすることが望ましい。また、大学側と理事会側の選考委員会が 開かれる前に最終候補者を決定してしまうのは、理事会側から学長候補者を提案する余地 がなく、大学と理事会との間で意見が分かれる可能性があるので、さらに検討する余地が ある。いずれにせよ、大きな改革であるので、現在のところは細則をさだめるのではなく、 164 ガイドラインに従って選考を進め、何回かの経験を経て修正すべき点を修正して細則を定 めることが望ましい。 (2)学長権限の内容とその行使の適切性 学部長権限の内容とその行使の適切性 〔現状の説明〕 本学では、1 学部で構成された単科大学であるので、開学以来、学長が学部長を兼任して きた。そこで学部長という職務は実質的には存在していない。学長の職務は「学長選任に 関する規定」第 3 条では学長候補者の資質として「大学の指導者としてふさわしい学識と 見識を備えた」キリスト者であることが規定されている。また「学則」第 4 条第 2 項では 「学長は、本学を代表し、本学運営にかかわる一般事項を掌握し、教職員を統括する」と ある。同条第 3 項では「学部長は、学部の教学計画及び学務を監督する」と定められてい る。 その具体的な職務権限は、以下のものが考えられる。 ① 学生の入学、編入学、休学、復学、転学、留学、退学、除籍、及び卒業の認定や 卒業証書の授与、学生の表彰という教育的効果を伴う行為や懲戒という法律的効 果を伴う行為( 「学則」第 16 条第 2 項、第 17 条第 3 項、第 29 条第 2 項、第 31 条、第 32 条、第 34 条、第 35 条、第 36 条、第 37 条、第 39 条、第 40 条) 。 ② 教授会を招集し、その議長となって議事を提出し(「学則」第 5 条第 3 項) 、大学 運営委員会を主宰し議長となり(大学運営委員会規定第 3 条)、大学教育会議を召 集する(大学教育会議内規第 5 条) 。 ③ その他、主要な委員会の委員長ないしは委員の指名、任命、編成、並びに管理運 営に関して学長の権限とされるもの。 学長は以上の職務権限を持ちつつ、次の三つの機能や役割を果たしている。 ① 大学における教育・研究の統括者であり指導者。 ② 教育計画や研究計画を実施する最終責任者。 ③ 大学の意思決定の責任者であり、管理運営の最終責任者。 〔点検・評価の結果〕 学長は、学内ではローワー・マネージメントを行う教育現場とミドル・マネージメント を行う学科長や各種委員会長・各種部長・両課長などの中間管理職を統括して、事務局長 と共にトップ・マネージメントを行っている。また、対外的には大学の代表であり、大学 の顔として種々の交渉や交流を行っている。 165 〔改善の具体的方策〕 学長の職務権限の明確でない部分は、さらに規程などを整えていかなければならない。 現在、学長はトップ・マネージメントに徹しているが、学部長職を設けて、学長と学部長 を分けることも将来の選択肢の一つとしてある。 (3)学長補佐体制の構成と活動の適切性 〔現状の説明〕 大学基準協会の加盟判定審査で、学長の補佐機関を設置すべきであるという助言を受け た。それに応えて、以下の 3 段階の方策を取った。 第一に、既に述べたことであるが、2003 年度から大学運営委員会を学長補佐機関として 位置づけ、大学運営委員会を改革した(詳細は、第 11 章、1.(3) 、参照)。 第二に、2004 年度から学長代行を学長補佐制度に位置づけた。学長代行は、学長が出席 しなければならない行事が重なった場合等に、学長の代わりに一時的に代行を肩代わりす る制度である。主として年齢の高い学科長が代行を務める。 第三に、2007 年度から学長補佐制度を発足させることにした。学長補佐は、学長のさま ざまな問題に関して諮問に答えることを主な仕事とするが、学長代行も兼ねる。学長補佐 は、礼拝等にも代行として出席するので、キリスト教を深く理解する者1人、任期は1年 再任を妨げず、学長が指名することにした。 〔点検・評価の結果〕 大学運営委員会が学長のリーダーシップの下で大学改革を推進していることは既に述べ た。 学長代行は、以前から学長が海外に出張する時に、年齢の高い順に学科長に願うことは あったが、今度の改革では、それを学長補佐制度の一つに位置づけて、学長が海外の出張 ばかりでなく、国内の出張旅行や他の会議が重なる時にも、用いている点が異なる。 学長補佐は、本学は小規模大学であるので副学長ではなく、学長補佐としたのは妥当で ある。 〔改善の具体的方策〕 学長補佐制度は、近い将来学長補佐規程を作ることが望ましい。 166 3.意思決定 (1)大学の意思決定プロセスの確立状況とその運用の適切性 〔現状の説明〕 本学の意思決定は、最終的には教授会でなされている。意思決定のプロセスは大きく分 けて二通りある。 第一に、日常的業務は、教育現場での諸問題が各学科や各種委員会で協議・検討され、 決定された事柄が原案として教授会で諮られて決定する、というボトム・アップ方式で意 思決定がなされている。 第二に、各学科を越えた全体の問題や大学改革を促す問題は、学長が発意し、大学運営 委員会の下部組織である作業小委員会で協議・検討し、大学運営委員会の議を経て教授会 に原案として教授会に諮られて決定し各部署で運用する、というトップ・ダウン方式で意 思決定がなされている。 〔点検・評価の結果〕 現在はトップ・ダウン方式の意思決定も、作業小委員会という下部組織を経て決定され ているので、トップ・ダウンという印象を与えることなく自然に行われ、民主的に行われ ている。 〔改善の具体的方策〕 平素の人事案件はボトム・アップ方式の意思決定で行われているが、学科の枠や利害を 越えて大学全体の利益を考えなければならない重要な人事案件は、学長の意思やリーダー シップを発揮できるソフトなトップ・ダウン方式で行う必要があろう。 4.教学組織と学校法人理事会との関係 (1)教学組織と学校法人理事会との間の連携協力関係及び機能分担、権限委譲の適切性 〔現状の説明〕 現時点で、本学の学長は大学の代表者として学校法人敬和学園の理事会に入り、宗教部 長・共生社会学科長・事務局長も理事会に入っている。とりわけ学長は、大学の教学組織 の責任者であり、教授会ばかりでなく理事会でも重要な役割を果たす(「敬和学園寄附行為」 第 6 条第 1 項)。また、私立学校法の改正により、理事長に代表権があるが、現在理事長が 167 遠隔地に居住していることから、大学に関しては学長に権限を委譲し、高校に関しては校 長に権限を委譲している。 〔点検・評価の結果〕 現在、大学の教学組織と理事会との関係は極めて良好である。やむを得ぬ理由から学長 が大学の権限を理事長から委譲されているのは妥当である。学長は、教授会と理事会の両 方で重要な役割を果たす唯一の存在であるが、両方に会議の要点を報告しているのも良好 な関係を保つのに役立っている。とりわけ、教学理念の形成や交流という点で、高校大学 合同研修会の回数を増やし、教育基本法改定問題で高校大学合同委員会を開催することな どを通して、同一法人の高校と大学が良好な関係を形成していることが、大学と理事会の 関係が密接になっている大きな原因である。 〔改善の具体的方策〕 本学園は、教会の祈りの中から生まれたが、教会と学校が良好な関係を保つと同時に、 今後のビジョンとして、教会と学校が地域社会との関係を一層深めていきつつ、教会と学 校と社会福祉施設が親密な関係を築いていく理事会を目指していくべきであろう。そのよ うなビジョンの中で、大学にも理事会にも必要なのは、ビジョンの構想力と同時にマネー ジメント力の強化である。そのために中長期的な計画を策定していかなければならない。 168 第12章 財務 〔目標〕 1.収支の均衡をはかる。 2.安全性に配慮して資金運用を強化し、収益の増大を目指す。 3.メリハリをつけた資金の配分を行う。 1.教育研究と財政 (1) 教育研究目的・目標を具体的に実現する上で必要な財務基盤(もしくは配分予算) の充実度 中・長期的な財政計画と総合将来計画(もしくは中・長期の教育研究計画)との関 連性、適切性 〔現状の説明〕 2001 年度版の自己点検・評価で 1996 年度から 2000 年度の過去 5 年の総括をしたので、 今回は 2001 年度から 2005 年度の財務諸表を分析したい(表、46、47、参照)。 本学が参考として比較の対象にしている数値は「今日の私学財政」平成 17 年度財務比率 表(規模別)―大学部門―の中の 0.5~1千人であるが、5 年前に比べて今回のこの数値は 大きく落ち込んでいる。それは私学の 40%が定員割れを起こしている実態からみて、当然 のことかもしれない。 この比較表との対比から判断すると、5 年前に比べて本学の数字は改善されているように 見えるが、これはこの規模の大学全体が悪くなっているためであり、その中で本学が平均 より善戦していることを示しているかもしれないが、経営面から見ると、とても安閑とし てはいられない数値である。 全体に経費を削減する中で、学生確保に伴う費用には重点的に予算を配分した。 収入面では余裕資金の暫減と金利低下で、資金運用収入が急減した。少ない余裕資金を 如何に有効活用するかを検討した結果、2003 年に資金運用内規を作り、これにそって 2004 年から安全性には十分配慮しながら、余裕資金の 10%を限度に積極運用をすることができ るようにした。その効果が数値に現れている。 〔点検・評価の結果〕 本学が一時期、定員を大幅に割り込んだが、2004 年度に回復の兆しが見え、2005 年度は 定員を超す入学者が与えられたことが大きく改善に貢献をしている。これは 2004 年度に共 生社会学科が誕生したことによる効果が大きい。 169 定員割れを起こしたことで、入学総定員を変えずに、既存の 2 学科の定員を 20 人ずつ削 り、新たに入学定員を 40 人とする共生社会学科を設立した。新学科は 2005 年 5 月現在、2 学年で 86 人の学生を擁し全体として学生増に大きく貢献した。 定員を割った期間が続いたことで、教職員に危機意識が芽生え、支出を抑えることに教 職員が一丸となって努めた。その結果、人件費の一部である寒冷地手当を削除し、諸経費 の節約に積極的に取り組んだ。この意識を持続することが大切である。 資金運用収入は積極運用の取り組を行った結果、成果は順調に現れている。2002 年度に 320 万円だった収入が、 2005 年度には 860 万円に上がった。安全性には十分配慮しながら、 引き続きこれを続けてゆく。 〔改善の具体的方策〕 国からの補助金が削減される傾向の中で、これに代わる収入源を他に求めなければなら ない。 その一つは資金運用収入の増額と寄付収入の増額である。本学の歴史は 16 年と短く、 卒業生の数はまだ 2 千人強と少ない。しかし、将来の卒業生からの寄付を期待して卒業生 名簿を作成した。今後もこの名簿は充実させてゆく。また、卒業生のみならず、外部から の寄付収入を一つの柱として組み立てる方策を立てる。 このための財政を含めた中長期計画を目下、理事会で協議中である。 2.外部資金等 (1)文部科学省科学研究費、外部資金(寄附金、受託研究費、共同研究費など)の受け 入れ状況と件数・額の適切性 〔現状の説明〕 科学研究費の受け入れ件数については、2006 年度に 6 件あったことも加味し最近増加し ている(表 33、参照)。金額については、2005 年度の実績として合計 5,200 千円、専任教 員 1 人当たり 173 千円となっている(表 34、参照)。 外部資金については、受託研究として、2003 年度に(財)とやま国際センターから人文社 会科学研究所の客員研究員が 3,000 千円獲得している以外に受け入れはない。 〔点検・評価の結果〕 件数については、この規模の大学としては競争的資金の獲得に向け、前向きに努力して いると考える。金額は決して多いとは言えないが、これは人文学部の単科大学として、研 究に必要な資金はハード面よりもソフト面が主体となっていることに所以する。科学研究 170 費の獲得を誇りに感じる教員が多くなっている。 〔改善の具体的方策〕 大学としても昇任人事の際の業績評価には点数加算する等で申請への取り組みを積極的 に奨励する必要がある。また、中堅以上の教員にも、何らかの形で点数化することも今後 検討する必要があると考えられる。 3.予算の配分と執行 (1)予算配分と執行プロセスの明確性、透明性、適切性 〔現状の説明〕 収入の主な項目のうち、帰属収入の 80%近くを占める学生生徒納付金は予算を立てる段 階(毎年 1 月)で、色々なデータを駆使して 4 月 1 日の学生数を予測して計上するが、こ れが最も慎重を期すことになる。この数字がでると、その他の収入は前年比または日常の 活動から、大凡類推して計上できる。 支出面では帰属支出の約 60%を占める人件費は前年1月の時点で、予測ができるし、約 30%を占める教育研究費と約 10%を占める管理経費の流動部分は各委員会による支出及び 学科予算によるところが多いので、これらの予算を立てる段階で、方針を示して、それに 沿った予算の計上をしてもらっている。予算に基づいた執行がなされているかは総務課で チェックしている。 〔点検・評価〕 委員会予算を立てるときに、委員会の活動計画を記し、それに伴う予算を計上している が、大体が前年度の予算を基準にすることになる。予算はどうしても実績主義になるので、 前年に一旦獲得した予算を次年度に減らすことはかなりの困難さを伴う。 〔改善の具体的方策〕 学科予算と委員会予算は過去の年度との比較は容易にできても、他の学科や他の委員会 との比較における適切性を判断することは難しい。委員会予算の合計は 1 億円を越え、消 費支出の約 15%になっているので、学内第三者による適切性の評価を判定することが必要 である。 171 4.財務監査 (1)アカウンタビリティの履行状況を検証するシステムの導入状況 監査システムとその運用の適切性 〔現状の説明〕 学校法人敬和学園と敬和学園大学の監査は高志監査法人が資金収支計算書、消費収支計 算書並びに貸借対照表を精査し、収入と支出に関する証憑書類との整合性を監査している。 決算書類が出来上がり、監査法人による監査が行われるときに、職員のみならず、監事 も同席し監査法人からの意見を聞いている。 理事会と評議員会において、3 人の監事は監査法人の見解を含めて報告し、理事会の承認 を受けている。このために監事は文部科学省が開催する研修会に出席し、監査のあるべき 姿を研鑚している。 〔点検・評価の結果〕 本学では監事 3 人に積極的に研修に参加してもらい、経理の伝票との照合の整合性だけ を監査するのではなく、業務監査にまで踏み込んでもらっている。 〔改善の具体的方策〕 業務監査に踏み込んでいるとは言え、まだある段階までであり、今後は監事が更に積極 的に監査ができるよう定期的な会合をもつなり協力体制をつくる必要がある。 5.私立大学財政の財務比率 (1)消費収支計算書関係比率及び貸借対照表関係比率における、各項目毎の比率の適切 性 〔現状の説明〕 法人全体の消費収支計算書関係比率は、本法人が全日制課程、普通科、入学定員 200 人 の高等学校を併設することから、人件費及び補助金関係比率が高く、学生生徒等納付金比 率が低くなっている。人件費比率が高いのは、高等学校の寮、給食及びスクール・バス運 行を教育の一環と考え、専任の職員で行っているためであり、補助金比率が高いのも高等 学校の特徴である。2002 年度から消費支出比率及び消費収支比率が 100%を超えたのは、 大学の定員割れに起因する学生生徒等納付金の減少が理由である(表 46-1、参照)。 172 一方大学部門では、人件費、教育研究経費及び管理経費比率が 2002 年度から高くなって いる。これは、学生数の減少による収入減のためであり、消費支出比率及び消費収支比率 が 100%を超えているのも同様の理由による。教育研究経費比率については、奨学費が増加 していることも影響している。基本金組入率が若干低いのは、現時点で将来の大きな事業 が具体化されていないため、第 2 号基本金の組み入れを行っていないことが理由である(表 46-2) 。 また貸借対照表関係比率については法人全体を記載しているが、大学と高等学校では経 営状況及び財務内容が異なっている。現在大学は収支バランスが悪化しているが、過去の 消費収入超過により資金が蓄積され、現金預金並びに短期有価証券として多く保有してい る。一方、高等学校は累積消費支出超過額が10億円を超え、保有資金が減少している。 法人全体の保有資金は、大学のプラスが高校のマイナスを上回る結果となり、流動資産構 成比率は平均より高くなっている。固定比率が低いのは、大学の開学時に取得した校地・ 校舎は自己資金で得たものであるからである。流動比率は、短期の借入金の返済能力が高 いことを示し、本法人の比率は平均を上回っている。前受金保有率が 2002 年度から低くな っているのは、新入生の減少によるものであるが、近年は徐々に改善されてきている(表 47、参照。平均は、日本私立学校振興・共済事業団発行の「今日の私学財政」17 年度版に よる規模別大学法人を参照した。) 〔点検・評価の結果〕 法人全体及び大学部門とも消費収支計算書関係比率が平均数値を下回っている最も大き な理由は、大学で定員割れを起こし収入が減少している反面、人件費の自然増及び学生を 確保するための特待生並びに奨学生の増加等による経費の増加が考えられる。しかし、人 件費については、継続して教員の定年退職者があることから、数値は年度によって変動が あり、額も微増程度に抑えられている。 貸借対照表関係比率ではおおむね良好と言える数値になっている。開学後に体育館・校 舎増築のために借り入れを行ったが、開学当初から近年の定員割れを起こすまでの間に収 支バランスを保ち、資金を順調に積み立てたことにより、借入金の返済が年度内の活動資 金に影響を与えることはない。 〔改善の具体的方策〕 学生確保が最重要課題であるが、収入源確保と支出抑制の両面からの取り組みにより、 消費収支比率 100%以下を目指すよう努力する必要がある。収入については、学生確保の他、 長期休暇中の校舎の貸出、海外短期留学生の受け入れ、競争的資金の積極的な獲得並びに 法人としての収益事業の検討等により収入の増加を図っていく必要がある。一方支出につ いては、人件費の見直しや、より学生確保に効果的な奨学費の検討等により支出全体を抑 173 制しなければならない。人件費は、定年退職教員の後任をできるだけ若手の専任講師を採 用する事で抑えることが可能である。その他、予算精度の向上を図り、コストダウン活動・ コスト分析に取り組んでいくことも課題である。 174 第13章 事務組織 〔目標〕 1.研修などを通じて事務職員の能力の向上を計る。 2.学生の満足度を高めるため、事務組織の横断的協力の強化。 1.事務組織と教学組織との関係 (1) 事務組織と教学組織との間の連携協力関係の確立状況 大学運営における、事務組織と教学組織の相対的独立性と有機的一体性を確保させ る方途の適切性 〔現状の説明〕 学長は事務組織と教学組織の長として、それぞれの組織を統括している。人事はそれぞ れの組織内で独立して行われ、学長の推薦を経て理事会の承認を得て実行される。学長の 選任は理事及び評議員と教職員からなる選考委員会を設置して、候補者を決め、専任教職 員がそれぞれ1票の投票権をもって投票し、理事会・評議員会の議を経て専任される。 学長を補佐する大学運営委員会は 3 学科長と 8 委員長と事務局長により構成され、常時 2 課長が陪席している。この他に学内には 23 の委員会があるが、すべての委員会は教職員が メンバーとなり、両者の協力の下に運営されている。 事務組織では毎夏に係長会の世話役が運営して職員研修会を開催し、研鑚を積んでいる し、3 学科はそれぞれ研修会を開催し、学びを深めている。また、大学と敬和学園高校の教 職員が一堂に会し、年に 2 回の研修を行い、同一法人としての建学の精神を確認し、相互 に協力し、理解を深め合っている。 事務職員は 2002 年から人事考課を行っている。導入する前は不安からくる消極的な意見 があったが、相対評価ではなく、絶対評価による自分自身のスキルアップであることを説 明し導入に踏み切った。職員研修会は自分または係の目標とその成果を発表し、1年の仕 事を振り返る場でもある。 〔点検・評価の結果〕 学長選挙は長い間、教員のみによって行われてきたが、学長は事務組織の長でもあるこ とから 2005 年度から準備をはじめ、2006 年度に行われた学長選挙から、専任事務職員に も一人 1 票の投票権が与えられたことは画期的なことであり、大いに評価すべきことであ る。 事務職員の研修会において、教育環境の整備が議論され、教員と共に実行に移すことが 175 話し合われたことは教職員が一体となって本学の教育に携わっていることの現れである。 また、事務職員の能力向上を目指した人事考課制度も定着してきた。 同一法人である大学と高校の教職員が共に学びあう機会が年に 2 回あり、講演を聞き、 分科会で議論を深め合うことが長年続けられてきたことは大いに評価されることである。 敬和学園高校からの入学者が増えたことはこの成果の一つである。 〔改善の具体的方策〕 5年前に比べて、教職員で構成されている各委員会がより一体感がでてきたと思われる。 従来、職員は陪席として補助的な役割を担うことが多かったゆえに、委員会での発言も少 なかったが、正委員としたために自覚がでたと思われる。事務職員には今後とも、与えら れた分野での学びを深め、必要に応じて外部での研修を積ませることで、教職員の一体感 をより深めてゆきたい。 事務職員の学内研修会は 2002 年からスタートし、当初は半日程度であったが、昨今は丸 1日使っても足りない状態であり、外部講師を招くなどして研修と人事考課をいっそう充 実させてゆきたい。 高大合同研修会では、大学教職員の出席者数が在籍者の三分の二程度であり、更なる工 夫が必要である。 2.事務組織の役割 (1) A 教学に関わる企画・立案・補佐機能を担う事務組織体制の適切性 B 学内の予算(案)編成・折衝過程における事務組織の役割とその適切性 C 学内の意思決定・伝達システムの中での事務組織の役割とその活動の適切性 D 国際交流、入試、就職等の専門業務への事務組織の関与の状況 E 大学運営の経営面からの支えうるような事務局機能の確立状況 〔現状の説明〕 A に関しては 2002 年 5 月に総務課の中に企画広報係を新設した。従来、総務係で行って きた企画・立案業務をここで行うようにし、広報委員会(企画広報係長と係員はこの委員 会のメンバー)で立案し、教授会で承認されたオープン・カレッジ、講演会及び広報(出 版を含む)の実務を企画広報係で行っている。教務係長と係員は教務委員会のメンバーと して、教務委員会で決められて、教授会で承認されたことがらの実務を行っている。 B に関しては前年実績とこれからの1年の見通し(学長方針のもとに各委員会で作成され た予算案も含め)を含めた収支の素案を会計係長と総務課長が中心になり作成する。事務 176 局長と学長の承認のもと総務課長が各委員会と折衝する。これらの折衝の後に作成された 予算原案は予算委員会で審議され、理事会と評議員会で決定されたあと、総務課長が教授 会で説明する。 C に関しては学長の意思や学内の意思は総務課を通じて全教職員に E メールまたは書面 で伝達される。教授会と大学運営委員会の準備は教務課長が学長の意向を聞いて行い、教 授会や大学運営委員会の議事録は教務課を通じて関係者に配布される。各委員会からの伝 達事項はその委員会で決められた事務職員から行われる。 D に関しては国際交流委員会には国際交流係長がメンバーとして加わっており、ここで 議され、教授会で承認されたことは国際交流係が実務を担当する。52 人在学している外国 人留学生の生活面でのお世話は国際交流係が主として行う。 入試委員会で決められたことの実務は入試室長を含めた 4 人の事務職員スタッフが、こ れに当たる。教員は出前講座、模擬授業やときには高校での説明会などに主に関わり、高 校訪問、説明会、セミナー、オープン・キャンパスの設営、入試広報などは事務職員が行 う。 就職委員会では企業を招いての懇談会や 3 年次生の保護者との就職懇談会は教職員の共 同作業になるが、日常の就職指導や就職受験対策の指導や企業訪問は、主に事務職員が行 っている。 E に関しては理事長の意向を呈して、事務局長と法人職員でもある総務課長がこれに当た り、時には理事長、学長と事務局長で協議して、実務を総務課長が行う。 〔点検・評価の結果〕 A に関して、企画広報係と教務係は実務面では能力を十分に発揮しているが、ブレインと しての企画・立案ができる体制にはまだ至っていない。 B に関しては、年間予算の総額が 10 億円にも満たない小さな組織ゆえ、経費の配分を毎 年大きく変えることができない。予算の裏づけとなる計画を各委員会で作成する現行のや り方でいいと思われるが、建物の経年劣化や施設の整備に関しては、施設係の報告に基づ いて経営判断が要求される。 C に関して、伝達の方法は書面または、PC で同時に配信されることもあるが、その迅速 さは問題ない範囲で行われている。将来的にはペーパーレスで行われることが望ましい。 D に関しては、外部との接点が重要な専門業務であるが、本学では教員と職員の業務分 担が比較的はっきりしており、職員も自覚して業務に当たっている。 E に関して、小規模大学では、一人が二役(総務課長は法人職員も兼務、会計係長は法人 職員を兼務していなくても法人業務に関わることがある。事務局長は法人の財務担当理事 を兼務)を演じることが要求される。現体制であれば現行のやり方が適切であると思われ る。 177 〔改善の具体的方策〕 A から E に関して共通して言えることは事務職員の更なる能力向上のために、研修を積 み、大所高所から見ることができるような見識をもつこと。 178 第14章 自己点検・評価 〔目標〕 1.自己点検・評価により大学改革を推し進める。 2.大学全体で自己点検・評価に取り組む体制を作り上げる。 1.自己点検・評価 (1)自己点検・評価を恒常的に行うための制度システムの内容とその活動上の有効性 〔現状の説明〕 本学の自己点検・評価を行うために、自己点検・評価委員会が存在するが、それは予算 委員会と自己点検・評価委員会をも兼ねている。 「敬和学園大学自己点検・評価規程」に従 って行い、自己点検・評価委員会が評価スケジュールと評価項目を各種委員会に振り分け た案を教授会に諮った後に、評価項目に該当する各種委員会が、協議の上で報告書を執筆 している。また、各種委員会からの報告書は総務課総務係が取りまとめている。取りまと められた草稿を自己点検・評価委員会で協議・検討の上、完成稿を作成し、教授会で諮り 承認を得ている。 〔点検・評価の結果〕 本学の「自己点検・評価規程」は 1994 年に作成され、1999 年に改定されている。自己 点検・評価の仕方の大枠は以前と異なることはないが、現在では教育評価小委員会、研究 体制小委員会、管理運営小委員会などを作ることなく行っている。小委員会を作って行っ たのは私大連盟の評価方式に従って 1994~95 年度、1998~99 年度に行ったものであり、 2001 年度の大学基準協会の評価方式にはそぐわないものとなっている。また、各種委員会 の担当領域も変わってきている。 〔改善の具体的方策〕 「自己点検・評価規程」を現実の作業に合うように改定すべきである。また、恒常的に 評価するためには、毎年各種委員会が簡単な点検・評価を行い、それを積み重ねていくこ とが望ましい。さらに、各種委員会ばかりでなく、各学科を含めたすべての組織が、自己 点検・評価をする必要な評価項目を新たに作成して取り組むことが望ましい。 2.自己点検・評価と改善・改革システムの連結 179 (1)自己点検・評価の結果を基礎に、将来の発展に向けた改善・改革を行うための制度 システムの内容とその活動上の有効性 〔現状の説明〕 自己点検・評価報告書は、評価項目に従って、過去 5 年間の教育研究活動を中心にして 点検・評価を行っている。その中で、前回の大学基準協会の加盟判定審査で、勧告、助言、 参考意見で指摘された事柄を中心にして改善・改革を行ってきたが、その他、教育現場か ら上がって来た様々な問題に取り組んで改善・改革に取り組んできた。 〔点検・評価の結果〕 “Plan-Do-See”のマネージメント・サイクルの視点から見ると、 “Do-See” “Do- See”はよくやっているが、それが“Plan”に結びつく点が弱い。 〔改善の具体的方策〕 理事会も教授会も中長期計画を立てて“Plan-Do-See”のマネージメント・サイクル を確立して、大学改革に取り組むことが急務である。今後の大学改革にとって、キー・ポ イントになる。そのためには、マクロの環境変化や学生・保護者・地域住民などの顧客層 層の変化に対応した戦略を立てて、理事会も大学もマネージメント力を強化していかなけ ればならない。 3.自己点検・評価に対する学外者の評価 (1)自己点検・評価結果の客観性・妥当性を確保するための措置の適切性 〔現状の説明〕 本学では、自己点検・評価の結果は、毎回印刷・製本して、学内及び学内関係者ばかり でなく、学外にはキリスト教学校教育同盟校、日本私立大学連盟校、新潟県内他大学など の大学関係者、新潟日報社、文部科学省など 200 箇所前後に毎回配布している。 前回の大学基準協会の加盟判定審査では、 「自己点検・評価報告書」に「大学基礎データ 調書」と「提出資料一覧」を加え、さらに巻末には最も信頼できる同僚評価で第三者評価 でもある「大学基準協会の加盟判定審査結果」を添えて、印刷・製本して、先に述べた個 所に配布した。 180 〔点検・評価の結果〕 自己点検・評価の客観性・妥当性の確保されるのは、第一に、誠実で良心的できるだけ 客観的に行う複数の視点による自己評価による。第二に、事情に通じた信頼できる同僚に よる複数の視点の第三者評価による。第三に、利害関係を離れた地域住民などによる一般 的な評価にある程度通じた関係者の第三者評価による。本学の前回の大学基準協会の加盟 判定評価は、第一の評価と第二の評価によるものであった。 〔改善の具体的方策〕 今後は第三の評価もクリアするように心がけるべきであろう。そのためには印刷・製本 して配布したものを評価してフィードバックするシステムを構築すべきであろう。 4.大学に対する指摘事項及び勧告などに対する対応 (1)文部科学省からの指摘事項及び大学基準協会からの勧告などに対する対応 〔現状の説明〕 大学基準協会の加盟判定審査結果の中で、財務三表の公表が勧告として求められた。 この点について従来は予算・決算の概略を学内報の『敬和カレッジ・レポート』で毎年掲 載してきたが、 『敬和カレッジ・レポート』2003 年 7 月号から財務三表の掲載に改めた。 それ以来、予算決算報告を掲載する号では毎年、財務三表を掲載している。 長所の助言として、第一に、「チャペル・アッセンブリ・アワー」、必修科目の「キリス ト教学」と「ボランティア論」などのキリスト教主義教育、第二に、レベル・コース別の 英語教育や学生に対するネイティブ・スピーカーの教員比率の高さ、コースの多彩でディ プロマ制度などの特色のある外国語教育、第三に、キャップ制度・GPA 制度・GPA 制度と 連動したキックアウト制度などが先進的である点、第四に、FD 研修会や外部の研修会への 派遣などで教育方法の改善に努めている点、第五に、相当数の科目等履修生を受け入れて いる点、第六に、教員の出身大学に偏りがなく、外国人教員比率と女性教員の比率の高い 点、第七に、バリアフリーがかなり実現されて「新潟県福祉のまちづくり条例」の適合証 を得ている点が高く評価された。これらの諸点は本学の特色として伸ばしていきたい。 問題点として、第一に、学生の確保という点で定員充足率が 2002 年には 8 割を割るが、 抜本的な策が講じられていない点が指摘された。この点は、2004 年度に 21 世紀向けの新 しいコンセプトでの社会福祉系の共生社会学科を新設して抜本的な対策を取り定員が回復 に向かい始めた。第二に、学長の補佐体制の強化が指摘されたが、新井明学長に交替した 後に大学運営委員会の機能の強化・活性化などの諸改革が実行され、学長代行制度を拡大 181 し、学長補佐制度を新設した。第三に、3 年間に亘って定員充足率が 100%を割っているの で、学科の名称変更や学科の増設によって、定員充足率を上げて財政的な改善を図ること が指摘された。この点も 2004 年度から英語英米文学科の名称を英語文化コミュニケーショ ン学科と変え、共生社会学科を増設したことの効果が目に見えてきて、入学定員の充足と 収容定員の回復を図っている。第四に、企画調整の機能の強化が指摘されたが、事務局に 企画広報係を新設して効果をあげている。 〔点検・評価の結果〕 勧告、助言、参考意見の数多くの指摘に対して、真摯に取り組んできた。しかし、それ 以上に、新たな課題にも取り組んで大学を改革してきた。 〔改善の具体的方策〕 大学基準協会の加盟判定審査、相互評価審査などによって指摘された事柄などを中心し て“Plan-Do-See”のマネージメント・サイクルによって毎年大学の全組織で点検・評 価をするシステムを構築していくことが望ましい。 182 第15章 情報公開・説明責任 〔目標〕 1.ステーク・ホルダーには徹底した情報の公開を目指す。 2.分かりやすい説明をする。 1.財政公開 (1) 財政公開の状況とその内容・方法の適切性 〔現状の説明〕 学校法人会計基準に基づいて作成され、公認会計士の監査を受けた後、理事会と評議員 会で承認された決算報告書と翌年度の予算書を本学の広報誌である『敬和カレッジ・レポ ート』 (9500 部発行)の 7 月発行号に毎年公開している。 その報告の内容は学科別学生数の推移、財務比率の推移、消費収支計算書(大科目) 、資 金収支計算書(大科目)、貸借対照表、法人の概要、実行した公開講座の内容などで 3 頁に 亘り解説を付し公開している(表 48、参照) 。 〔点検・評価の結果〕 5 年前の時点では『敬和カレッジ・レポート』の 1 頁を割いての報告であったが、今では 3 頁にし、より丁寧に、グラフを使い過去の推移などを入れて、読む人に分かりやすい工夫 がされていることは大いに評価できる。また『敬和カレッジ・レポート』の発行部数も 5 年前の 6000 部から 9500 部に増え、本学のステーク・ホルダーには行き渡っていると思わ れる。 〔改善の具体的方策〕 不特定多数の人を対象にした公開には至っていないが、ホームページの大幅な改修を計 画しており、この改修がなされた後にホームページでの公開を実現するようにしたい。 2.自己点検・評価 (1) 自己点検・評価結果の学内外への発信状況とその適切性 外部評価結果の学内外への発信状況とその適切性 183 〔現状の説明〕 〔点検・評価の結果〕 〔改善の具体的方策〕 本学の「自己点検・評価報告書 2001 年度版」は大学基準協会の加盟判定審査結果を付し て、キリスト教学校教育同盟加盟校の大学へ 73 部、日本私立大学連盟(上記と重複してい る大学は省く)へ 94 部、県内大学及び短期大学へ 22 部、加盟団体へ 3 部、地方公共団体へ 6 部、監督官庁へ 2 部、報道機関へ 2 部、敬和学園高校へ 1 部、その他の大学へ 5 部の合 計 208 部を 2003 年 9 月に発送している。今後も同じやり方をとる予定である。 184 第16章 キリスト教主義教育 〔目標〕 1.チャペル・アッセンブリ・アワーの充実をはかり、出席者を増やす工夫をする。 2.キリスト教音楽の充実をはかり、大学行事に花を添えることができるようにする。 3.教会や病院・社会福祉施設などを通して地域社会との連携をはかる。 4.キリスト教主義教育を推し進めるのにふさわしい設備や備品などの充実をはかる。 1.建学の精神とキリスト教主義教育 〔現状の説明〕 本学の建学の精神は、本学の基礎であると同時に刷新の原理を示すものである。それは、 学則の第1条に明確に表現されている。すなわち「本学は、教育基本法及び学校教育法に 従い、福音主義キリスト教の精神に基づく自由かつ敬虔な学風の中で真理を探究するとと もに心の教育を実践し、国際的教養豊かな良心的人材を養成することを目的とする。 」福音 主義キリスト教の精神とは、16 世紀のマルティン・ルターの宗教改革以来、十字架上に磔 刑死を遂げつつ人々の罪の赦しを祈り甦り給うたイエスを、 「我が内に生き給う救い主キリ スト」として受容し、かつイエスの呼びかけに応えて生きる、信仰と実践の両面にわたる 応答的真実のことである。この真実は、神に仕えることからのみ隣人に仕えることが溢れ 出してくること、隣人に仕えることの中でこそ神の礼拝が検証されることを相互に関係す る深い内的緊張のうちに含む。 我々は「福音主義キリスト教の精神に基づく自由かつ敬虔な学風」を本学の風格とした いと心より念ずる。一方、真理探求の自由に関して、イエスの語録「わたしの言葉にとど まるならば、あなたたちは本当にわたしの弟子である。あなたたちは真理を知り、真理は あなたたちを自由にする」(ヨハネ 8:31b-32)は、その本源をあきらかにする。この自由の本 源である真理から、他方、他者に仕える奉仕愛が溢れ出してくる。ルターが『キリスト者 の自由』の冒頭で、 「キリスト者は全てのものの上に立つ自由な君主であって、何人にも属 しない。キリスト者は全てのものに奉仕する僕であって、何人にも従属する」という見事 なパラドックスでこの消息を表現したことが想起される。このキリスト者の人生のパラド ックスは、元来、神の子キリストご自身のパラドックスにほかならない。「神のかたちキリ ストのケノーシス(自己無化)」(フィリピ 2:6-11)に淵源し、そこから湧出する。 その結果、本学の探求する教育上の真理は、基本方向をここに持つわけである。すなわ ち、ひとりの人として神の子キリストに押し出されて無限に自由でありつつ、 「神と会衆(人 類)の前で」あくまでも謙虚に人としての誓約を守り通し、自己の責務と限界性(罪)を認 識して、全人格的奉仕に生きる――ここにキリスト教的人間観が確立するのである。宇宙 185 の真髄を窮めようとする勇猛果敢な「真理への自由」と「全てのもの(ものは、人格だけ でなく地球共同体に属する全ての物を含む)に奉仕する僕であること」への覚悟、認識に 至らせることが、本学の目差す教育の目的(テロス)である。しかし、他者へのこの方向 性は、ただ罪の赦しの先行性の受容と感謝からのみ溢れ出してくることは、忘れられては ならない。奉仕愛は、けっして人間の慈善心の直接的結果ではない。そう悟るところに、 「心 の教育」の急所がある。 「国際的教養豊かな良心的人材」とは何か。これについては、本学のミッション・ステ ートメントがより詳細な背景を示す。「敬和学園大学は、キリスト教精神に基づく自由かつ 敬虔な学風の中でリベラル・アーツ教育を行い、グローバルな視点で考え、対話とコミュ ニケーションとボランティア精神を重んじ、隣人に仕える国際的教養人を育成します。」本 学は学生の知性を鍛えるだけでは満足しない。リベラル・アーツ教育における知育――こ とに知育のグローバルな平和の視点と対話とコミュニケーションとの関連性――は重要で あるが、徳育はさらに重要である。本学は、キリスト教主義を徳育の基盤に据えるもので ある。すなわち、礼拝とボランティア精神がこれである。 〔点検・評価の結果〕 建学の精神は、繰り返し想起し、点検し、再評価されなくてはならない。そのとき、建 学の精神は伝統の言葉であると同時に、変革と刷新の原理として、現実の中で生きてくる。 我々は、戦後のキリスト教教育の歴史の中で、1969 年の学園紛争の頃に出てきた問題意識 を風化させてはならないと思う。あの頃、国内各地のキリスト教主義大学において、キリ スト教的価値観を無批判に絶対化することに、強い批判が表明された。この批判運動には、 そのままが正しいと言い切れない自己絶対化が隠されていたけれども、少なくとも歴史的 にみて、キリスト教の帝国主義への加担、東西冷戦時代における西側のイデオロギーの勝 利に酔った凱旋主義、北アイルランド紛争に見られるカトリックとプロテスタントの相打 ち、また 9・11 以後のアフガン戦争やイラク戦争のような悲しい事態をキリスト者の側で 深く自己反省する端緒は示されていた。今日、深い自己省察がキリスト教諸大学の側にな ければ、世界に蔓延し始めているキリスト教国とキリスト教に対することに青年層におけ る疑いの眼に十分に誠実に応えることにならぬであろう。 しかしながら他面、時代がどのように変転しようとも、福音主義キリスト教の使命とそ の基礎は、上述のように、確固不動にして、躍動的に永遠である。この事実は、国家の教 育方針が時々の政治情勢の変化により動いても、それ自体の価値と意味を失うものでなく、 新たに姿形を変えて、「部分社会の法理」として生成発展するはずである。 もしも、キリスト教に変化してきた点があるとすれば、19 世紀後半から 20 世紀全般にか けて到来した欧米のキリスト教宣教師たちの多くが抱いたようなキリスト教絶対主義を、 キリスト教主義大学である敬和学園大学は取らない、それを不断に脱却する努力を続ける、 186 ということである。もっとも、宣教師たちの明治初年における日本の既成宗教(神仏儒) の道徳的弱体化に対する批判がそのものとして間違っていたというのではない。しかし、 倫理主義的態度の適切性とキリスト教絶対主義の主張の間には、 「キリスト教と文化」に関 わる十分な考察が必要である。キリスト者が自己の信仰の原点に対する謙虚な脚下照顧に 立つならば、他者の信仰の問題について今日世界の多くの宗教者が目差すように「宗教間 対話」を方法として採用することができるのではないか。この道は、対話論的文化形成と グローバルな平和構築に向かうものである。 これも、活きたケノーシス(自己無化)のキリストに立脚し、彼に心底より励まされる からである。越後の良寛に見るごとく、仏教には仏教としての真理(天真)把握があるの であり、それぞれの原点に立つ者同士の宗教間対話は、現代人のニヒリズムに対して、共 に効果的な処方箋を指し示すことができるのではないか、と期待される。21 世紀という時 代は、キリスト教的真理の弁証論に関して、それが教会におけるように直接伝道の形をと るのであれ、キリスト教学校、特にキリスト教主義大学におけるように学術教育の形をと るのであれ、真理と文化的諸領域(諸宗教及び自然諸科学、諸思想を含む)との対話論的 方法でもってこれを推進することが相応しい。そこに豊かな実りが期待されうるのである ――すなわち、地球文明の形成のビジョンである。 〔改善の具体的方策〕 本学は大学であるから、専ら学術と教育の現場で建学の精神としての福音主義キリスト 教を生かす努力を、先ず、なすべきである。その中心は「チャペル・アッセンブリ・アワ ー」の厳守でなくてはならない。第二に、ミッション・ステートメントに謳われているよ うに、建学の精神としての福音主義キリスト教は、それに基づく「リベラル・アーツ教育」 の自由かつ敬虔な学風に結実しなくてはならない。第三に、グローバルな視点からの、「対 話とコミュニケーションとボランティア精神」の三位一体的教育が、英語文化コミュニケ ーション学科、国際文化学科、共生社会学科のあいだの独自性と相互性の尊重において、 検討され、推進されなくてはならない。これを地球的遠心主義の教育学と呼んでも良い。 第四に、「隣人に仕える国際的教養人」という人間像が、全学的に練磨され、共有されなく てはならない。これは地域的求心主義の教育理念に窮極するものである。この目的による、 各種の講演会、学会、公開講座、常設講座は推奨される。因みに、教育における遠心主義 と求心主義の矛盾的相即の解明が、ルターの言う「キリスト者の自由」のパラドックス(全 てのものの上に立つ「自由な王」にして全てのものに「奉仕する僕」 )に内在するのである。 2.キリスト教主義教育とカリキュラム 187 〔現状の説明〕 キリスト教主義大学として本学は、カリキュラム面でも学生に教養としてのキリスト教 への理解を促している。 「キリスト教学 1, 2」 「ボランティア論 1, 2」を全学生の必修として いる他、2003 年度から「チャペル・アッセンブリ・アワー1, 2, 3, 4」を単位化している。 毎週 90 分の時間内に行われるチャペル・アッセンブリに 70%以上出席し、学期末にエッセ イを提出することにより、各1単位の単位が認定される。また「キリスト教学 1,2」とも連 携させて、 「キリスト教学 1,2」を履修する者は、少なくても 4 回以上チャペル・アッセン ブリ・アワーに出席することが求められている。単位化により「チャペル・アッセンブリ・ アワー」出席者が前期は毎回平均 160 人を越えている。学内・学外から多岐に渡る分野の 専門家を招いて講話を聞く事を通して、学生たちはこれまで考えたこともなかったような 世界や、社会のさまざまな出来事、生き方に触れており、彼らの人格形成に貢献している。 さらに、従来は有志を募って行っていたクリスマス行事や卒業式等でのコーラスのため に、継続的にコーラスの練習を重ね、行事の際にコワイヤとして奉仕するグループを養成 している。2006 年度からは、エクステンション科目の「キリスト教音楽 1,2,3,4」として単 位化している。 本学は 1991 年の設立以来ボランティア学習を一年次生全員にかしてきたが、その仕える 理念の発展として 2004 年度から共生社会学科が開設されたことに伴い、 「キリスト教主義 教育」 「リベラル・アーツ」「国際的教養人」に加えて、「共生」という言葉が本学の教育の キー・ワードとなっている。カリキュラム面では、従来のキリスト教関連科目に加えて、 「共 生の哲学 1, 2」「キリスト教社会事業史 1, 2」「倫理思想史 1,2」などが開講されている。単 なる技術としての福祉教育を行うのではなく、キリスト教の実践的側面としての、教養教 育に裏づけられた福祉マインドを備えた人材の育成に努めている。 〔点検・評価の結果〕 第一に、チャペル・アッセンブリ・アワーは単位化直前の 2002 年度では出席者が 20 人 以下ということもあり、対策が緊急の課題であったが、単位化することにより、多くの出 席者を得ることができたことは評価できる。また専門の授業とは離れたところで、学生が 講師の生き方に触れるという意味で貴重な時間となっている。しかし、数の増加に伴い、 出席者の質の低下が目につく。大教室の前半分に座る学生は熱心に聴くが、後ろ半分に座 る学生に話を聴くという姿勢に欠ける者が多い。 第二に、これだけ世界が多様化し、異なる価値観の対話が求められる時代に突入した今、 学生に偏りのない知識を与えるには、 「比較宗教思想 1,2」 「イスラーム文化圏研究 1,2」 「東 アジア文化圏研究 1,2」 「アジア民俗学 1,2」のように、キリスト教に限らず、複数の宗教を 学ぶ科目の履修を学生に薦め、それらの科目で学んだ知識をある程度体系化し比較考察す る思考力を養成することであろう。このような知識こそが、偏見に囚われない判断力とコ 188 ミュニケーション力につながっていくと言えよう。 現代の宗教思想にとって宗教観対話とともに重要な課題は世俗化の問題である。現代の 日本社会の一般的傾向は仏教、神道等の伝統的宗教の活性化ではなく、世俗化という宗教 的ニヒリズムの浸透である。それは社会問題を生じさせる新興宗教やカルトの温床でもあ り、今後偏狭なナショナリズムの高まりを生み出すおそれもある。キリスト教主義に立つ 大学として、人権、平和、共生をキー・ワードとする根本的価値観を非宗教的世界観と両 立する形で体現していくカリキュラムを整備するよう工夫すべきである。ミッション・ス テートメントにある「グローバルな視点」を高く掲げて、人類の団結とすべての生命との 一体感を価値の基準に置く『地球憲章』の四大原則(①生命共同体への尊敬と配慮、②生 態系の保全、③社会と経済の公正、④民主主義、非暴力と平和)を 21 世紀グローバル文明の 方向性として、勘案すべきである。 第三に、共生社会学科の設置により、本学のキリスト教主義の全人教育も知識から実践 への道筋がより明瞭になり、本学の教育力が問われていると言えよう。 〔改善の具体的方策〕 第一点については、絶えず学生に聴く姿勢というものを訴えていくこと、講師に学生の 中から選ぶこと、環境をもう少し整えて静謐な雰囲気を作ることなどが考えられる。コメ ントを書くミニッツ・ペーパーをチャペルの時間の最初に渡しているが、それを最初に書 いてしまう学生も多いので、終了 10 分前頃に配布するということも検討したい。本当に聴 きたいと思う者たちが一定数いて、単位がなくても出席するというのが理想である。第二 点については、本学のリベラル・アーツ教育とも合致することであり、学際的な学びにつ ながることであり、履修指導の折などに学生に薦めていきたい。第三点については、まず 国家試験合格に向けて鋭意指導中であり、成果については数年待ちたい。 3.学内のキリスト教主義教育の教育研究支援組織と態勢 〔現状の説明〕 本学の場合、学内のキリスト教主義教育の教育研究支援組織はその任務を、本学のミッ ション・ステートメントに言う「キリスト教精神に基づく自由かつ敬虔な学風の中でリベ ラル・アーツ教育を行い」という文言の実質化に持つ、と把握することができる。現在の ところ、キリスト教精神に基づく自由かつ敬虔な学風の醸成機関として、毎週金曜日 2 限 (10:40~12:10)チャペル・アッセンブリ・アワー(CAH)を開催している。このため、大 教室(S31)を転用している。まだ宗教部ないしキリスト教センターと呼ばれるオフィス及 びチャプレン(宗教部長)室を設置していないので、本学の学生たちは、キリスト教セン 189 ター活動に参加して「自由かつ敬虔な学風」を「リベラル・アーツ教育」(一般の授業)に 繋げるリンケージの場を持つ経験をしていない。このため、実質的に言って、教職員で組 織する委員会として 1992 年に設置された「キリスト教と教育委員会」が、キリスト教活動 と教育の間のリンケージの役割を分担してきた。やがては「キリスト教センター」がその 機能を場所的に支えることになるはずである。 キリスト教と教育委員会は、過去 16 年間本学においてキリスト教課外活動全般に関わる 右の意味でのリンケージ(3 学科からなるリベラル・アーツ教育一般とのリンケージの意味 である)に関わる支援業務を担当してきた。この委員会は、宗教部長(1991 年の開学以来、 哲学神学教授が兼任)を委員長として、数人の専任教員(3 学科を代表)と事務局長で構成 されている。委員会は年に 10 回の割合で開催している。 教務課職員の 1 人が事務を担当し、 委員会の議事録や週報の作成、週報合本及びチャペル・ニュース『プニューマ』の印刷と発 送、オルガン奏楽者及びコワイヤとの連絡等に従事している。これまでの委員会の活動内 容を列挙してみる。 (a) 本学におけるキリスト教主義教育のあり方・方針全般に関する提言(予算案を含む) (b) チャペル・アッセンブリ・アワー(前後期)の企画(講師一覧)と運営(説教、司会、昼食接 待等の分担。3 学科長との連携)) (c) 入学式及び卒業式のための式典準備と運営(主に宗教部長の任務) (d) 学長の就任式及び退任式のための式典準備と運営(主に宗教部長の任務) (e) 教員の就任及び退任の際の顔見世講義と最終講義の式典準備と運営(主に宗教部長の任 務) (f) 学内の各種キリスト教諸行事(新入生一泊オリエンテーション、学生教養リフレッシ ュ・リトリート、クリスマス行事の立案と実施(学長、3 学科長、学生委員会、ボランテ ィア委員会、事務局等との連携) (g) キリスト教教育に関する敬和学園高等学校との合同研修会(「学びあって築く敬和の新 時代」という年間標語をここ数年掲げる)の立案と実施(主に宗教部長と事務局長の任 務) (h) 学内のキリスト教関連団体(コワイヤ、聖書研究会等)の指導と支援 (i) キリスト教関連備品(説教壇カバー、聖歌隊ガウン、中型聖書を含む図書等)の整備に関 する提言 (j) 各種印刷物(行事関係のパンフレット、チャペル・ニュース『プニューマ』、ブックレ ット、週報合本、宗教部長説教集等)の発行 (k) 学外キリスト教諸団体(キリスト教学校教育同盟、日本基督教学会、日本キリスト教教 育学会、キリスト教文化学会、日本新約学界、宗教倫理学会、日本基督教団関東教区新 潟地区の各教会伝道所等)との交流交歓 (l) 留学生の集い(本学主催、日本基督教団新潟地区世界宣教委員会共催)の立案と実施 190 〔点検・評価の結果〕 すでに述べたように、本学の「キリスト教と教育委員会」は、ミッション・ステートメ ントで謳われた「キリスト教精神に基づく自由かつ敬虔な学風」の涵養をチャペル・アッ センブリ・アワー(CAH)において図りつつ本学の「リベラル・アーツ教育」とのリンケ ージに資する点に任務を有するのであるから、やがて建設されるチャペル(教会堂)内に設置 されるべきキリスト教センターの活動に吸収される業務に従事しているわけである。日常 業務の最大のものの一つは、「チャペル・アッセンブリ・アワー週報」を毎週編集し、出席 者に配布することである。本学の週報は、CAH のプログラム、「今週の言葉」、「学長室便 り」、前週の説教・講話等に関する学生の感想、 「今週のお報せ」、 「読書の窓」が掲載され、 学内で恐らく最も信憑性のある習慣日誌の役割を果たしてきたばかりか、学外の支援者か らも本学のキリスト教主義的学風の隠れた広報誌として好評を博している。敬和学園大学 のキリスト教教育の全国の理解者「敬和の友」には、週報合本とチャペル・ニュース『プ ニューマ』(学生のエッセイ・コンテスト入賞作品ほかを所載)を一年の最後に送っている。 もともとこれら二つの日誌とニュース誌は、学外支援者のコミュニケーション・ネットワ ークの形成に資することを目的にして発送されているが、組織化はまだもう一つである。 CAH 出席者と教職員には配布されているが、両誌の学内での活用はまだ十分ではない。 高大連携の実を挙げるため、毎年前期の終わりとクリスマスの時期に敬和学園高等学校 と本学は教職員合同研修会を開いている。研修会の内容については、高校の代表(教頭、教 務委員長ほか)と大学の代表(宗教部長、事務局長)の合議で企画、運営してきた。2003 年か ら高大連携をさらに密にする目的で、「学びあって築く敬和の新時代」という標語を掲げて、 各界からの優れた講師の説教、講演をいただいている。連携の実は、国際文化学科の教職 課程(高校公民科)の講師に敬和高校教諭が当たったり、大学から高校の運動部指導に職員が 出向いたりするなど、上がっている。親睦もさることながら、研修会の際の分科会で講師 の講演をめぐって意見交流を図っているが、これは敬和の教職員の意思統一を図る意味も あるが、教育の現場でのお互いの心のひだを確認し合う好機となっているようである。 〔改善の具体的方策〕 本学は、開学以来 16 年目になるが、まだチャペル(礼拝堂)もキリスト教センターもない ことはすでに述べた。建設実現までまだ道は遠いものと思われるが、両施設の建設の理念 的図面は、先にも述べたように、ミッション・ステートメントに謳われた「キリスト教精 神に基づく自由かつ敬虔な学風の中でリベラル・アーツ教育を行う」という一節に隠され ている。すなわち、リベラル・アーツ教育とのリンケージの場であるというビジョンであ る。「キリスト教精神に基づく」のであるから、福音主義の原点(キリストのケノーシスと 罪の赦しの先行性)をチャペル建設で見える形で体現しなくては、本学のリベラル・アー 191 ツ教育は形状的基礎をまだ明らかにしていない。CAH が 2003 年以降単位化され、学生の 熱意ある参加が促進されている今こそ、器を準備すべきである。精神は形状的基礎を得て はじめて生きた組織を生み出す。チャペル建設なくば、チャプレン(宗教部長)の本務の場所 もまだない状態である。これでは、初代チャプレンの後継者を募る場合、ある困難が予想 される。チャペル建設はキリスト教主義大学の選択事項ではなく、義務事項である。理事 会をはじめ全学的考慮が望まれるところである。 4.学内のキリスト教主義教育活動 〔現状の説明〕 ① チャペル・アッセンブリ・アワー 本学のチャペル・アッセンブリ・アワーは、キリスト教精神に基づく自由かつ敬虔な学 風を涵養しつつ、リベラル・アーツ教育とのリンケージを模索する宗教教育の場である。 こういう趣旨から、毎週金曜日の2限(10:40~12:10)を CAH の時間に当て、この時間は 原則として他の授業はない。2003 年からの単位化により1年生を中心にして、4 年生まで の上級生も、また時には近隣の教会の会員、学内の教職員有志も集う「Keiwa Community Hour」に成長してきたことは悦ばしい。 前半のチャペル・アワーは「敬虔な心」の時として、学内の学長、宗教部長ほかキリス ト者教員、近隣の教会の牧師、海外からの日本人宣教師、米国人神学者など多彩な講師を 迎え、神の言葉に傾聴する。後半のアッセンブリ・アワーは「自由な批判精神」涵養の時 として、NPO 活動家、映画監督、ジャーナリズム、カメラマン、学外大学関係者、骨髄バ ンク関係者、地域学者、海外医療活動家、国際ボランティア活動家、就職指導室長、海外 合唱団と独唱者等の講師から学ぶ。学生のコワイヤや海外短期留学やボランティア活動の 報告もなされる。チャペルは礼拝形式であり、前奏、讃美歌、交読、聖書朗読、祈祷、会 衆挨拶(Peace be with you) 、後奏からなる。オルガニストは学生奉仕者が務め、Choir は キリスト教音楽講師が指揮をとる。集会の最後に参加者は感想カードを提出し、出口の近 くの廊下で講師、学長、宗教部長、局長などと全員が握手して別れる。集会後、講師をオ レンジ・ホール(学食)に招き、感謝する。当日の司会は、宗教部長とキリスト教と教育 委員が順次担当する。クリスマス礼拝では、入口で英語文化コミュニケーション学科と国 際文化学科の学科長が参加者各自の持つローソクに点火する。 ② 学生リトリート 毎年秋に学外の施設を利用して 1 泊 2 日の学生リトリート(修養会)を行ってきたが、 参加者数の低減に鑑み、2003 年度を最後に従来のリトリートのあり方を検討し直した。 192 2003 年度のリトリートは富士見町教会牧師をお招きし、内容の濃いリトリートであったが、 もっと多くの学生にリトリートを体験してもらいたいとの趣旨から、2004 年度以降、 「教養 リフレッシュ・リトリート」と名称変更し、半日のバス旅行を計画している。2004 年度は 山形県小国にある健康の森よこねを散策し、飯豊連峰、朝日連峰を眺めながら自然をも含 んだ神の支配についての小説教を聞き、その後キリスト教独立学園高校を訪問し、高校生 らと交流の時を持った。学生たちは聖書、労働、自然を基盤にした学校生活に触れ、大き な刺激を受けた。2005 年度は新発田市付近の五頭山系の秋取山にハイキングに出かけた。 多くの留学生が参加し、豊かな自然の中で霊的、肉体的にも刺激を受け、互いに友情を深 め、有意義なリトリートであった。2005・06 年度ともに、参加者は 50 人程集まり、当初 のリトリートのあり方を変更した意味があったと言って良い。2006 年度は敬和学園高校と 同じ日に同じ映画『マザー・テレサ』を鑑賞した。映像世代の学生たちにキリスト教精神 をわかりやすく紹介するという狙いを持って、開催を計画した。 ③ クリスマス行事 毎年 12 月最後のチャペル・アッセンブリ・アワーの時間には、クリスマス燭火礼拝を守 っている。日本基督教団関東教区議長、新潟地区議長などに毎年説教をお願いしている。 聖歌隊がクリスマス祝歌の歌声を上げ、その年度に行われたチャペル・アッセンブリ・ア ワーの説教や講話についてのエッセイ・コンテストの結果が発表され、数名の学生が表彰 される。その日の昼には聖歌隊が特別養護老人ホームを訪れてクリスマス・キャロルを歌 い、夕方には県立新発田病院と日本基督教団新発田教会でクリスマス音楽の贈り物をする。 病院には聖歌隊とともにブラスバンド部も参加する。 ④ 敬和カレッジ・ブックレット 本学では、 「真理はあなたがたを自由にする」というキリスト教主義の教育理念のモット ーを実現するために、公開学術講演会や公開講座並びにチャペル・アセンブリ・アワーの 講演などの中から本学の教育理念を体現する、優れた講演を選んでテープから越し、1996 年度から毎年一冊程度の「敬和カレッジ・ブックレット」(B5 版、60 頁前後)を作成して いる。ブックレットに取り上げるテーマや内容は、ブックレット編集者が提案し、それに 基づいてキリスト教と教育委員会で協議・検討し教授会で報告している。2002 年から 2006 年に発行したブックレットは以下の通りである(肩書きは講演当時) 。 『市民社会と非戦の思想』(敬和カレッジ・ブックレット第 8 号、2002 年 4 月発行) 小田実(作家) 「テロに対する報復戦争は正当か?」 松井やより(アジア女性資料センター代表) 「慰安婦問題の現状と課題」 『リベラル・アーツの意味』 (敬和カレッジ・ブックレット第 9 号、2003 年 4 月発行) 新井明(日本女子大学名誉教授)「北越のともし火」 193 八木誠一(桐蔭横浜大学客員教授) 「学問と教養」 『明日の日本を考える』 (敬和カレッジ・ブックレット第 10 号、2004 年 4 月発行) 速水優(日本銀行前総裁)「明日の日本を考える」 『新しい徳育を求めて』 (敬和カレッジ・ブックレット第 11 号、2005 年 4 月発行) 渡邊利雄(東京大学名誉教授)「日本のフランクリン」 柴沼晶子(敬和学園大学教授)「英国留学で得たもの:安井てつと大江スミの場合を 比較して」 『地域福祉と住民参画型のまちづくり』 (敬和カレッジ・ブックレット第 12 号、2006 年 4 月発行) 片山忠吉(新発田市長) 「福祉のまちづくりについて考える」 大橋謙策(日本社会事業大学学長)「講演:住民参画型の町づくりの現状と課題」 〔点検・評価の結果〕 ① チャペル・アッセンブリ・アワー 前回の自己点検・自己評価では、 「チャペル・アッセンブリ・アワーの時間は学生、教職 員誰でも参加できることにしてあり、ことに 1 年生に出席を強く奨励しているが、出席数 が減少傾向にあること否定できない」と書いたが、2003 年度から改善された。 「チャペル・ アッセンブリ・アワーは、本学が誇る、宗教的深みと文化的香りの芳しい時間帯として、 地球時代の教養の本源を指し示し、時代と文化の『対話』の底に人間と超越者の『対話』 が控えていることを親しく経験する場所である」(『学生便覧』102 頁)という趣旨から、単 位化された。単位化に関わる措置は以下のごとくである。 (a) 「前期チャペル・アッセンブリ・アワー」「後期チャペル・アッセンブリ・アワー」 それぞれの出席率が 70%以上のもので、かつそれぞれの学期にエッセイを提出した者 に対して、「チャペル・アッセンブリ・アワー1」ないし「チャペル・アッセンブリ・ア ワー2」ないし「チャペル・アッセンブリ・アワー3」ないし「チャペル・アッセンブリ・ アワー4」とも 1 単位ずつ与える。 (b) チャペル・アッセンブリ・アワーの単位化に付随して、前期と後期のエッセイ・コ ンテストを行い、優秀者を表彰する。志望者は、CAH の説教ないし講演を一つ選び、 2000 字のエッセイを書き、学期の最後の指定された日までに、宗教部長に提出する。 審査はキリスト教と教育委員会で行う。 なお、CAH とキリスト教学(一年生必修)の連携に関して、以下のように定める。 (c) 「キリスト教学 1」「キリスト教学 2」の単位評価は、「チャペル・アッセンブリ・ア ワー1,2」の出席率が 30%以上の者に対して行う。 ② 学生リトリート 194 教養リフレッシュ・リトリートは、ここ数年バス旅行、野外礼拝、映画鑑賞など多彩な プログラムで学生たちの参加意欲を引き出してきた。他面、以前試みた胎内スポーツセン ターほかでの一泊修養会のような「心の研修」をさらに加味することが、リベラル・アー ツ教育の仕上げには必要ではないか、と思われる。 ③ グリスマス行事 燭火礼拝、キャロリング(県立新発田病院と新発田教会) 、クリスマス・パーティは年々 参加者が増え、学生の熱意の上昇を評価したい。クリスマス・シーズンの初めに行うクリ スマス・ツリー点灯式をさらに盛大にすべきだとの要望が最近出ているので、それに応え る方策を練るべきである。 ④ 敬和カレッジ・ブックレット ブックレット第 8 号『市民社会と非戦の思想』は、2001 年 10 月 3 日から 11 月 28 日ま での間に行われた本学人文社会科学研究所の連続講演会(5 回)の 2 回分である。いずれも タイムリーな内容であったが、その中でも平和教育と関連する、優れた「非戦の思想」が 現れているものを取り上げた。 ブックレット第 9 号『リベラル・アーツの意味』は、いずれも毎年 4 月のオリエンテー ション週間行っている新入生歓迎公開学術講演会の 2002 年度と 2003 年度の講演であるが、 いずれも「リベラル・アーツとは何か」について分かりやすく解き明かしている講演を収 めたものであり、本学全体の理念を導くものである。 ブックレット第 10 号『明日の日本を考える』は、2003 年 11 月に行われた共生社会学科 設立記念講演会の講演である。日銀総裁であると同時にキリスト教主義大学の東京女子大 学理事長でもあった講師の「奉仕」と「犠牲」の精神を体現した人生から、日本の将来を 考えるものである。 ブックレット第 11 号『新しい徳育を求めて』は、2004 年度の新入生歓迎公開学術講演 会の講演と 2003 年度の最終講義の講演をブックレット化したものである。両者ともキリス ト教主義教育の「こころの教育」と関連する「徳育の復権」を試みるものである。 ブックレット第 12 号『地域福祉と住民参画型のまちづくり』は、大学創立 15 周年記念 講演の内の一つである。共生社会学科の新設との関係で、地域主義の精神を実現し、市民 と行政と大学の協力の下で町づくりを行う具体的なビジョンの提案である。 〔改善の具体的方策〕 ① チャペル・アッセンブリ・アワー 将来はチャペルの時間に教職員も出席できるような体制が組まれることが望ましい、と 前回の自己点検・評価で指摘したが、チャペルの時間が全学的なものとなることは、キリ 195 スト教主義大学としての本学の目標である。ただし、そのことは学生の熱意を喚起してこ そ準備が整うので、環境整備をはかり実現可能な事柄からスケジュールを組み、実現して 行くことが望ましい。 ② 学生リトリート 映画鑑賞は、実行委員会を学生と共同で組織し、各種委員会や新発田学研究センターな どとも連携して企画として実行するのも一案である。 ③ クリスマス行事 クリスマス・ツリーの点灯式については、これを全学的な催しにすることを検討してみ る必要がある。その際、地域の人々の招待を考慮することが望ましい。 ④ 敬和カレッジ・ブックレット ブックレットは原則として 1000 部を印刷し、主に学生や教職員などの本学関係者や近隣 の高校や希望者などに配布している。学生向けにはガイダンスの日に他の資料類と同じく テーブルの上に置いている。演習などで配布して学生一人ひとりの手に確実に渡し、基礎 演習などでテキストとして取り上げるなど配布方法や利用方法を工夫する必要がある。 5.学外の諸団体との関係 〔現状の説明〕 開学以来本学は、キリスト教主義大学として、キリスト教学校教育同盟に加盟している。 この同盟は、プロテスタント系のキリスト教学校 101 法人で構成されている教育理念を共 有する連合体である。本学の学長はこの同盟の監事を務める。同盟では、加盟学校の成員 の理念の共有の促進と各成員の FD を図るため、教員夏期研究集会と事務職員夏期学校を毎 年 7 月下旬に御殿場の東山荘で開催している。本学もこれらの集会に教職員を派遣し、理 念の共有と研修の機会を得ている。この同盟の大学部会にも本学から参加者を派遣してい る。本学も 2002 年には会場校となり、学長が主題講演、宗教部長が開会説教を担当してい る。現在、関東地区大学部会の委員を共生社会学科長山田耕太教授が務め、発題講演や司 会に当たっている。 キリスト教主義大学にとって、必要な顧慮を将来の指導者の育成に払うのは、当然であ る。この趣旨から本学は、東京神学大学で毎年開催されるキリスト教伝道協議会に、2000 年の第 2 回以来、宗教部長と学長が適宜参加するようにしている。 本学は、日本基督教団で設立が決定された学校法人敬和学園の学園構想に基づいて、1991 196 年開学された。そういう経緯から、本学は、日本基督教団関東教区(新潟地区)と密接な 関係にある。関東教区の総会に学長と宗教部長が出席するのが恒例である。宗教部長は、 新潟地区の諸教会でしばしば聖日礼拝の説教を担当するとともに、新潟地区の世界宣教委 員会の委員として各種の企画と活動に協力している。留学生の集いを毎年立案するのも、 本学のキリスト教と教育委員会とこの宣教委員会である。この宣教委員会は、第 10 回国際 哲学オリンピアード(IPO)が 2002 年 5 月東京の国連大学で開催された際、強力なモラル・ サポートを機関決定し、支援した。因みに、第 10 回 IPO の会長は、本学の宗教部長、日本 組織委員長は、本学の初代学長が務めた。爾来、本学は国際 IPO 運動の日本における縁の 下の力持ちの役割を担っている。本委員会に関連する学会関係で言えば、2006 年には、本 学を会場として日本新約学会が開催された。 〔点検・評価の結果〕 キリスト教主義大学は、地域及び地域の教会との関係を重要視する。新発田に所在する 敬和学園大学は、新発田の日本基督教団新発田教会と一時関係が密でなかった時期もある が、2002 年 11 月の竹前篤牧師就任とほぼ時を同じくして、2003 年 4 月に新井明学長の就 任とともに、関係の改善がなされた。クリスマス行事に大学の聖歌隊が新発田教会をキャ ロリングで訪問し、新発田教会に大学敬和デーが開設され、大学からの説教担当者の派遣 と卒業生の証がなされるようになった。また、竹前牧師の大学での聖書研究会がなされて いる。なお、2006 年から開設された「キリスト教音楽」担当の非常勤講師である石川美佐 子氏は新発田教会のオルガニストである。 〔改善の具体的方策〕 先に述べたように、本学にとってキリスト教学校教育同盟は、キリスト教主義教育の理 念の共有と教職員の研修のほかプロフェッショナルな向上のため、重要な連合体である。 教会は古来《Sanctorum Communio》 (聖徒の交わり)と言われるが、キリスト教学校教育 も「コムニオ」なくして内実のあるものとして成長することは難しい。その意味では、こ の同盟の提供するプログラムや研修会、夏期学校等は十分に活用すべきである。この点、 本学から出ているキリスト教学校教育同盟の大学部門の委員の活躍が期待される。 新潟地区宣教委員会及び新発田教会との連携は、既に述べたところであるが、CAH の隆 盛の現況に鑑み、今度は地区にさまざまな形で本学の学生及び卒業生を派遣する機会が増 えるのではないかと期待する。これは、新発田学研究センターの貢献とあいまって、本学 の新発田への奉仕の拡大的多様化の様相を呈するのではないか。 そのために、本学の CAH を中心にした地域との連携(地域的求心主義)、国際的連帯(グ ローバルな遠心主義)をより実のあるものにするために、本学のホームページのさらなる 充実を工夫すべきである。今までに公表された講演や説教ですでにオンライン原稿になっ 197 ているものについては、ホームページ掲載を意欲的に促進すべきである。 CAH 出席者数、単位取得者数 2002年度 前期 平均出席数 4/12 1年次生 4/19 5/10 36.3 人 5/17 5/24 5/31 6/7 6/14 6/21 6/28 7/5 7/12 79 41 38 31 25 22 26 24 36 34 44 20 2年次生以上 3 0 4 0 0 1 1 0 3 2 1 1 計 82 41 42 31 25 23 27 24 39 36 45 21 2002年度 後期 平均出席数 9/27 1年次生 16.9 人 10/4 10/11 10/18 10/25 11/1 11/15 11/22 11/29 12/6 12/20 1/10 1/17 14 11 15 8 17 21 34 10 31 15 11 5 2 2年次生以上 0 1 10 1 2 0 1 0 5 1 4 1 0 計 14 12 25 9 19 21 35 10 36 16 15 6 2 2003年度 前期 平均出席数 4/11 1年次生 4/18 5/9 138 人 5/16 5/23 単位 取得 5/30 6/6 6/13 6/20 6/27 82人 7/4 7/11 142 123 115 115 96 123 110 101 103 68 108 93 2年次生以上 39 36 27 34 20 31 27 31 38 31 22 28 計 181 159 142 149 116 154 137 132 141 99 130 121 2003年度 後期 平均出席数 9/26 116 人 単位 取得 71人 10/3 10/17 10/24 10/31 11/14 11/21 11/28 12/5 12/12 12/19 1/9 1/16 1年次生 99 106 93 94 96 99 67 100 110 107 78 79 58 2年次生以上 25 28 29 25 23 21 16 35 26 24 19 24 22 計 124 134 122 119 119 120 83 135 136 131 97 103 80 2004年度 前期 平均出席数 4/16 1年次生 5/7 5/14 165 人 5/21 5/28 単位 取得 6/4 6/11 6/18 6/25 7/2 111人 7/9 163 136 122 149 135 133 136 131 125 125 120 2年次生以上 34 34 34 40 30 24 26 33 29 31 27 計 197 170 156 189 165 157 162 164 154 156 147 198 2004年度 後期 平均出席数 10/1 1年次生 130 人 単位 取得 84人 10/8 10/15 10/29 11/5 11/12 11/19 11/26 12/3 12/10 12/17 1/7 1/14 121 114 113 120 125 72 115 132 122 128 109 84 100 2年次生以上 18 21 22 20 16 14 18 19 17 17 17 22 15 計 139 135 135 140 141 86 133 151 139 145 126 106 115 2005年度 前期 平均出席数 4/15 1年次生 5/6 5/13 172 人 5/20 5/27 単位 取得 6/3 6/10 6/17 6/24 7/1 70人 7/8 175 165 155 158 158 133 133 111 125 108 98 2年次生以上 41 29 36 38 35 30 43 34 35 26 31 計 216 194 191 196 193 163 176 145 160 134 129 2005年度 後期 平均出席数 9/30 1年次生 143 人 単位 取得 10/7 10/14 10/28 11/4 11/11 11/18 11/25 12/2 71人 12/9 12/16 1/6 1/13 140 138 117 125 121 110 69 103 101 103 99 82 87 2年次生以上 34 36 39 37 37 34 21 38 36 33 33 43 37 計 174 174 156 162 158 144 90 141 137 136 132 125 124 2006年度 前期 平均出席数 4/14 1年次生 4/28 5/12 168 人 5/19 5/26 単位 取得 6/2 6/9 6/16 6/23 6/30 56人 7/7 156 143 146 130 137 120 98 103 159 66 59 2年次生以上 61 48 43 51 52 49 34 46 45 52 46 計 217 191 189 181 189 169 132 149 204 118 105 2006年度 後期 平均出席数 119 人 単位 取得 9/29 10/13 10/27 11/10 11/17 11/24 12/1 1年次生 47人 12/8 12/15 12/22 1/12 1/19 101 101 114 110 59 96 99 86 51 89 69 36 2年次生以上 33 42 35 40 34 33 41 37 32 30 36 24 計 134 143 149 150 93 129 140 123 83 119 105 60 199 第17章 ボランティア活動 〔目標〕 1.建学の理念とボランティアの関連を明確にする。 2.学生のボランティア学習に対する大学の支援体制を強化にする。 3.ボランティア活動への教職員の関与をより活発にする。 1.建学の精神とボランティア活動 〔現状の説明〕 敬和学園大学は、戦前の全体主義国家に対する「奉仕」活動、また戦後復興期から続い ているにおける企業利益中心主義、さらには近年の格差社会に見られるがもたらした「競 争社会」の自己中心主義に対して、神と人とに仕える真のボランティア精神の涵養を建学 の理念にすえてきた。 本学は、「教育は、人格の完成をめざし、平和的な国家及び社会の形成者として、真理と 正義を愛し、個人の価値を尊び、勤労と責任を重んじ、自主的精神に充ちた心身ともに健 康な国民の育成を期して行わなければならない」との教育立法の精神、及び、学校教育法 第 53 条にある「道徳的及び応用的能力を展開させる」との大学教育の目的規程を踏まえ、 かつ本学の因って立つキリスト教の精神に立脚しつつ、学則第 1 条において「本学は、教 育基本法及び学校教育法に従い、福音主義のキリスト教精神に基づく自由で敬虔な学風の 中で真理を探求するとともに心の教育を実践し、国際的教養の豊かな良心的人材を養成す ることを目的とする」との本学固有の教育理念と教育目的を定めている。さらにミッショ ン・ステートメントにおいては、「敬和学園大学は、キリスト教精神に基づく自由かつ敬虔 な学風の中でリベラル・アーツ教育を行い、グローバルな視点で考え、対話とコミュニケ ーションとボランティア精神を重んじて、隣人に仕える国際的教養人を育成します」とボ ランティア活動が学園の中心的特色をなすことが明記されている。2006 年に教育基本法が 改定され、 「公」と国家の関係についての正確な理解が重要になっている。本学のボランテ ィア教育は、 「公」とは特定の政治権力の立場ではなく、隣人愛で結ばれたグローバルな人々 の連帯であること理解し、そうした連帯を作り出していく精神と行動力を備えた人材の育 成を目指して行われるものである。 〔点検・評価の結果〕 本学におけるボランティア活動は、この学則第 1 条及びミッション・ステートメントに 掲げられた理念及び目的に則った、キリスト教精神を基底とした人間教育、全人教育の一 環として、すなわち、「自由かつ敬虔な学風」の中で神と人とに仕え、それぞれの地域で他 200 者と共に生きる「良心的人材」を養成するための人格教育の実践篇として強く奨励され実 施されている。人員、予算、活動内容など開学以来力を入れてきており、総じて学園の理 念にふさわしい充実した内容となっている。 2004 年度には従来の 2 学科に加えて新たに人文学の視点に立った社会福祉を専攻する「共 生社会学科」が開設された。新学科は開学以来のボランティア教育の蓄積、並びに近隣社 会福祉諸施設との友好的関係の上に築かれた成果でもある。ボランティアに対する社会的 ニーズが多様化していく中で、大学全体としての多様なボランティア活動の発展を模索し ている。 〔改善の具体的方策〕 16 年前の開学当初、全学の学生がボランティア学習を行うカリキュラムを持つ大学は、 福祉系大学を除いてほとんど例を見なかった。それゆえ本学のボランティア学習は先駆的 な試みであったが、阪神大震災を経て、ボランティア学習が多くの大学で展開されるにつ れ、取り組みがルーティーン化している嫌いが見られる。特に 1 年次のボランティア実習 が 2 年次生以降のより自主的な活動につながるよう大学全体としてボランティア活動に対 する取り組みを一層鮮明な形で打ち出す必要がある。そのためにも FD などを通して、建学 の理念とボランティア教育の関係の理解を全教職員が深めていく必要がある。 2.ボランティア活動教育とカリキュラム 〔現状の説明〕 本学のボランティア活動プログラムは、本来の自主的なボランティア活動とは違って、 学校教育を通してボランティア精神を涵養しようとするものであり、 「ボランティア学習」 にウェイトを置いたものであった。開学以来の数々の試行錯誤を経て 2001 年度からは、 「基 礎ゼミ」単位で 13~15 人の学生が教員に引率されて各施設を訪問し一日ボランティア学習 を行う形式になり現在に至っている。また 2006 年度はボランティア論の時間を 2 クラス設 け、1 クラスあたりの学生数を抑えることにより、一人ひとりの学生への個別指導を充実さ せるよう図っている。またボランティア論の時間には、科目担当者の他にボランティア・ コーディネーターも出席し、ボランティア実習の具体的な準備について懇切な指導を行っ ている。 ボランティア論以外に、1 年次生から 4 年次生まで自主的なボランティア活動への取り組 みを奨励しており、10 日以上または 60 時間以上のボランティア活動を行った者に対して活 動記録などの提出を条件にボランティ A~D(2 単位)、5 日以上 30 時間以上の活動を行っ た者に対しては E~F(1 単位)の認定を行っている。2003 年度から 2005 年度までに 20 人の 201 学生が認定を受けている。 なお、この「ボランティア論」の開設に伴い、本学では 2000 年度よりこの講座に付設す るかたちで「訪問介護員養成講座」を設け、将来に亘り福祉ボランティア活動に携わる者 のための技術と知識の向上を図ってきた。しかし、法改正により本学の施設では養成講座 の開設が困難となったため、2005 年度をもって終了した。 〔点検・評価の結果〕 その結果従来少人数で学生がボランティア実習を行っていたのに比べ、教員の指導を受 ける分施設側とのトラブルなどの報告は少なくなったが、依然として少人数ながら活動の 意義を理解しない学生が見られるケースも見られる。しかし、学生たちの多くは活動終了 後、ボランティア学習が有意義であったという感想を述べており現在の実施形態は概ね妥 当であるといえよう。 ボランティア実習の取り組みにボランティア論だけではなく、基礎ゼミの時間の何時間 かを割き、かつボランティア・コーディネーターの指導を受けることにより大学側の指導 体制は以前に比べて徐々に充実していると言えよう。ただし手取り足取りする大学側の指 導体制の充実が、学生本来のボランティアに対する自主的・積極的な意欲や創意工夫の精 神を阻害する逆説的な事態が生じるおそれもある。ボランティア学習においては学生の依 存的な態度を助長することのないように十分配慮する必要がある。 3.学内のボランティア活動支援組織と態勢 〔現状の説明〕 上記のボランティア活動全般を支援するために、本学ではボランティア委員会及びボラ ンティア・コーディネーターのポストが設けられており、また、中心的な活動拠点として ボランティア・センターが開設されている。 ① ボランティア委員会 ボランティア委員会は、本学の教職員からなる大学の行政委員会である。本学のボラン ティア活動全般の企画、準備、実施、事後処理に関する一切を検討し実行する。2006 年度 は、専任教員 4 人、ボランティア・コーディネーター1 人、事務職員 2 人が委員会を構成し ている。 専任教員は、3 学科にまたがり 4~5 人が配属されている。置かれてきた。ボランティア・ コーディネーターの職員が 1 人常駐して、教務課学生係が事務を担当しており、2004 年度 より、職員も正式に委員会の構成員となった。2006 年度より、教務課ボランティア・セン 202 ター係が設置され、事務のみにとどまらない幅広い役割を果たしている。 「ボランティア論」 のカリキュラム化、プログラム内容の細分化、及び外部との交渉・調節の複雑化に対応す るために、事務体制の強化が進んでいる。 ボランティア委員会は、1~2 ヶ月に 1 回の割合で開催される。主たる役割は以下の通り である。 (a)「ボランティア実習」の手配と実施 (b)「敬和ふれあいバラエティ」の手配と実施 (c)各種ボランティア活動の広報、企画立案、単位認定作業 (d)次年度のボランティア活動プログラムの企画立案 (e)『VOLUNTAS―敬和学園大学ボランティア・ガイドブック』の編集、発行、改訂、 送付 (f)ボランティア・センターの運営 (g)各種イベント(講演会等)の開催 (h)ボランティア奨励基金の管理 (i)ボランティア関連学会、行事への参加、活動 (j)委員会予算編成と執行 ② ボランティア・コーディネーター ボランティア・コーディネーター(2001 年度までの名称はボランティア主事)は、本学 のボランティア活動全般に関する相談役、兼推進役であり、また、各施設との交渉や調整、 ボランティア情報の提供、事前学習講師の手配等、大学と地域社会とをつなぐ重要なパイ プ役を果たしてきた。特に、2000 年度以降の「ボランティア実習」において、学外の各種 社会福祉施設や学校、社会福祉関係機関と協力しつつ、プログラムの実質的責任者として 指導に当たっている。 ボランティア・コーディネーターの職務内容に対応した勤務形態の確立は、本学のボラ ンティア活動支援体制を強化するための最重要課題であった。2005 年度以降は、常勤 1 人 が配属され、それまでの週 2 日から週 5 日の勤務体制になった。これらの条件の改善によ り、ボランティア・コーディネーターと大学教務課間の事務分掌の役割分担が明確化され、 ボランティア・コーディネーターは、ボランティア委員長を補助しつつ本学のボランティ ア活動全般に重要な役割を果たしている。 ③ ボランティア・センター ボランティア活動を自主的・継続的に行う学生が一人でも多く育ってくれることが本学 の当プログラムの目的であるが、1 年次での体験を 2 年次以降の自主的なボランティア活動 につなげて行く学生の数は少なかった。そのため「ボランティア論」の単位数を 1 単位か 203 ら 2 単位に増やし教授内容の充実を図り、従来のレベルを超えたより本格的な知識と技術 を身につける機会を提供してきた。ボランティア・センターを広く学生たちに開放し、定 期的に昼食会を開催するなど教職員との接触の機会を増やし、ボランティア・センターに 集まる情報を個人的に学生たちに伝え活動を促してきた。こうした試みは徐々に実を結び つつあり、従来よりも多くの学生たちが自主的にボランティア活動に励んでいる。 ボランティア・センターには、ボランティア・コーディネーターが常駐し、2006 年度に は、教務課ボランティア・センター係の職員 1 人(非常勤)が配属になった。ボランティ ア活動全般に関する情報の受発信を行い、ボランティア活動に関わる学生、及び学生団体 を支援し、またボランティアに関心を抱く学生一人ひとりに対する個別的対応を行ってい る。ボランティア・センターには新潟県下の社会福祉施設・機関の資料や福祉関係図書、 ビデオなどの資料が備えられ、情報センターとしての役割も果たしている。ボランティア・ センター前には、大学内外のボランティアに関する情報が掲示され、近隣地域で行われる イベントも随時提供されている。2006 年度からはボランティアに関心を持つ学生がメール アドレスを登録し、ボランティア・センターから最新の情報が随時メールで配信されてい る。 〔点検・評価の結果〕 ボランティア・センターはボランティア・コーディネーターの作業が行われているだけ でなく、ボランティア・サークルの情報交換の場所でもある。またボランティア・センタ ーの前には手ごろな空間があり、イスや小物、情報誌やボランティア関係のチラシなどが おかれボランティアに心が向かっている学生達の歓談の場となっている。こうした居心地 のよい自由な場所があることは学生生活のアメニティの向上に役立っている。 今後より多くの学生達がボランティア活動に親しみを抱き、学生・教職員間の連帯をは ぐくむ空間としての機能をより一層向上させていくための創意工夫が今後も求められる。 ボランティア委員会及びボランティア・センターの活動が特定の人員に偏り、一般の教職 員がボランティア学習に対して必ずしも深い理解をもっているとは限らない点に留意すべ きである。 ボランティア全般の広報に関してボランティア・センターは独自のホームページを持っ ていないため今後広報活動を充実させる必要がある。 〔改善の具体的方策〕 ボランティア学習及びボランティア活動が本学の特色として一層活発に展開するために は、より多くの教職員の関心とかかわりを深めていく必要がある。そのためにボランティ ア実習の実施前後に教員にアンケートをとり、より多様な意見を募るとともに、意識を啓 発することが必要である。またボランティア・センターの活動を様々なチャンネルを通して 204 周知させることも大切である。またボランティア実習には基礎ゼミ担当の教員のみが参加 してきたが、今後はそれにとどまらず、基礎ゼミ担当以外の教職員もボランティア学習に 参加するよう呼びかけるとともに、それを可能にする体制作りを行うべきである。ボラン ティア学習はカリキュラムや教育理念の実現を目指すものであり、ボランティア・コーデ ィネーターはボランティア委員長及びランティア論担当者と十分な連携を持つことが必要 である。 ボランティア・センターが独自のホームページを持つことが、人員及び予算の関係で困 難であるならば、大学のホームページとリンクさせて逐次最新の活動状況が更新されるよ う体制を整える必要がある。 4.ボランティア活動の指導体制 〔現状の説明〕 ① 新入生ガイダンスと胎内オリエンテーション 毎年度、入学予定者に事前に本学のボランティア活動について解説した『VOLUNTAS』 を送付し、学生ボランティア活動の啓発に努めている。また、毎年 4 月初旬に行われる新 入生ガイダンスにおいて、 「ボランティア論」 ・「ボランティア実習」の概要と学生ボランテ ィア活動の意義についての概説を行っている。その窓口となるボランティア・センターに ついても 2005 年にはパンフレットを作成し、視覚的にもわかりやすい内容としたことやボ ランティア・コーディネーターが専任となったことでワンステップサービスに繋がってい った。さらには本学のボランティア・ガイドブック・テキストとしても利用できるように 2005 年 度 は 、『 VOLUNTAS』 の 内 容 を 見 直 し 、 2006 年 に は 内 容 を 一 層 充 実 さ せ た 『VOLUNTAS』の改訂版を発行した。その一方で例年通り、毎年 4 月下旬に行われる「新 入学生胎内オリエンテーション」では、新入学生全員と教職員を対象に、ボランティア活 動の理解と実践を知るために特別講師による「講演会」を開催している。2002~2006 年の 5 年間の傾向として、キー・ワードは「支えあう地域づくり」「災害時のボランティア」「公私 協働」であった。よい実践事例に触れる点は学生の動機付けとして評価できる一面、ボラン ティアをこれから始まる学生とのギャップが大きいこと、テーマが単発であることも含め 改善の余地があると言える。2007 年度は新しい試みとして、学生たちの立場から地域や国 際ボランティア活動の報告や意義を中心としたシンポジウムを開催する等、今後とも質的 向上にむけた体制整備に取り組むこととした。 ② ボランティア実習 2000 年度より「ボランティア論」を開講したことで、1998 年度より自主講座として取り 205 組んできた「事前学習講座」は廃止となったが、よりボランティアを体系的に学べるシステ ムがつくられた。さらに、そのボランティアの総合学習・実践として、全員「ボランティア 実習」を行う仕組みが提供されている。この日は、新たに「敬和ボランティア・デー」が創 設され、基礎ゼミクラス毎に、教員と学生が一緒になって、地域の福祉施設等、15 団体前 後のニーズに応えるべく、顔の見える関係づくり・連携をもって、全学をあげて、「ボラン ティアをする」 「実践の日」を一日、設けている。 これまで、試行錯誤の5年を経て改善されてきた点は、教員と学生たちが一緒になって ボランティア実習に臨むことで、受け入れ施設に対して、①遅刻、服装・礼儀等の乱れや 不快感を与えるようなことは減った。②施設側のニーズで「七夕劇」や「人形劇」などを前 もって準備や練習をして当日に披露する場合等、学生たち同士のつながりや達成感をもつ ことができた。③学生たち自身がボランティア実習を通して、子供・障害・老人を問わず、 「人」に出会い、多くの社会問題に触れることができた等、実践で得る学びは大きい。 〔点検・評価の結果〕 ボランティア実習は、これまでボランティアを経験したことのない多くの学生にとって は新しい世界との出会いともなる貴重な機会であるが、その一方で受け入れ施設から言え ば、15 人前後の学生が一度に来られることに対して、施設が「生活の場」であることでの 抵抗はないとは言えず、特定法人の併設施設がボランティア実習場所として利用され、そ のことが施設及び利用者の負担となっている現実がある。また、ボランティアが主体的、 自主的なものだという見方からすれば、教員と学生が一緒になってということは意味ある ことではあるが、引率という面もぬぐえないことから、本学のボランティア実習に対して、 批判が全くないとは言いがたい。加えて、2004 年度より共生社会学科が開設され、地域で の「社会福祉現場実習」が「ボランティア実習」の受け入れ施設と重なることもあり、遅 刻等の一部の学生によって、ボランティア実習評価が低い場合には、施設確保に影響がで るなど、新たな課題が生じてきている。また、ボランティア実習を終えた、次の週に「ボ ランティア報告」を基礎ゼミごとに発表する「報告会」を開催してきた。ボランティア実 習の中身が学生たちに情報公開され、また、さまざまなボランティアの実践の広がりを覚 える良き時である。しかし、その反面、報告会の準備に際して、全員が自主的に残って作 業するには及ばず、むしろ、各リーダーへの負担が大きくなってしまう場合も少なくない。 リーダーとしてのよき経験が「ボランティア活動」へと次につながっていないこともある。 これらをも含めて、建学の精神を具現化するひとつであるボランティア活動への入口とな る「ボランティア実習」について、時代のニーズや地域とのつながり、留学生等国際的広 がりの中で、より本学の理念に添う「ボランティア実習」のあり方に向かって一層の工夫 を凝らしていく必要がある。地域や受け入れ施設等のニーズや学生たちの主体性を生かし た「ボランティア実習」、そのあり方を前向きに吟味し、検討していくことが必要である。 206 〔改善の具体的方策〕 基礎ゼミを一まとまりとして一つないし二つの施設にボランティア学習に出かける際、 どの施設で実習を行うかがゼミ単位で決められる。実習先の数は限られているため必ずし もすべてのゼミが希望する施設で実習を行うことはできない。この問題点をできる限り解 消するため、少人数の単位で学生面接を行い、基礎ゼミを構成する学生のタイプに即した 実習先を割り当てるよう工夫することとした。 従来、ボランティア実習にはゼミ担当者(アドバイザー)1 人もしくは、それにサブ・ア ドバイザーが加わり 2 人が同行していた。しかし、1、2 人の教員では学生全員を十分に監 督することができないケースもある。施設でのスムーズな学習のために、トラブルが憂慮 されるゼミの実習先には、ボランティア委員会の教職員をもう 1 人配置し、合計 3 人で学 生の指導に当たることとした。 ボランティア実習の内容と派遣人数 内容 2002年度 2003年度 2004年度 2005年度 2006年度 合計 児童 59 39 0 61 108 267 身障 20 13 27 32 15 107 知障 17 11 56 15 29 128 高齢 30 13 67 50 30 190 複合 20 0 27 49 15 111 環境 0 87 0 0 7 94 合計 146 163 177 207 204 897 5.学内のボランティア活動 〔現状の説明〕 上述のように、本学では開学以来学生たちを受け入れ指導して下さった福祉施設等の入 所者や職員を大学に招待して、毎年学生と音楽を通しての交わりの時を持つことを目的と した「敬和ふれあいバラエティ」を開催している。この催しの主催は大学であるが、プロ グラムの企画・準備・運営は全てボランティア・アサークル「共生ボランティアネット」 を中心とする学生団体がボランティア委員会及びボランティア・コーディネーターの助言 の下で学内ボランティア活動として自主的・主体的にいっている。例年数施設から百人前 後の方々をお招きしている。 207 プログラムの内容は、学内の音楽サークルによる演奏、外部講師の指導もしくはボラン ティア・サークルによる手品やレクリエーション、チアリーダー部の演舞などが行われて いる。2004 年度からは会場をハローウィーン・パーティーの縁日風に装い、ヨーヨー、輪 投げ、的当て、ボール蹴り、など学生の手作りによる「出店」を出し、また喫茶コーナー を設けるなどして施設の方々に楽しんで頂きながら学生との交わりを持つ工夫が凝らされ ている。施設の中にはこの「敬和ふれあいバラエティ」を施設の年間行事予定に組み込ん で楽しみにしているところもあり、大学と地域との交流プログラムとして定着しつつある。 また本学には「ボランティア・サークル」、「共生ボランティアネット」、「KIV(Keiwa International Volunteer) 」の三つの学生ボランティア団体が存在しそれぞれ活発に活動し ている。KIV はハビタート・フォー・ヒューマニティー・インターナショナルという国際 NGO の活動に参加し例年東南アジアの発展途上国で家を造る活動を続けており、教員有志 も数人参加している。「共生ボランティアネット」は「ふれあいバラエティ」の実施のほか に、2005 年度にはパキスタン地震にたいして復興支援バザーを行い、208,788 円の義援金 を集めたことは特筆に値する。それ以外にも JCLP ボランティアが外国から来た短期留学 生に日本語を教え、日本文化の紹介、阿賀野川流域の案内を行い、また本学の留学生が日 本人学生と共に地域小学校へ出向いて外国語・外国文化を紹介し文化交流をもっている。 2005 年度にはアマチュア無線(ARDF)の世界大会が開催され、16 人の学生が外国人参加 者の買い物やパーティーの手伝いなどをおこなうなど、活発なボランティア活動が実践さ れている。 2004 年度には新潟県三条市において 7・13 水害、そして秋には新潟県中越震災が発生し た。水害時には支援募金活動を行い、また 6 回にわたって教職員と学生が一丸となって被 災地に赴き、現地の災害ボランティア・センターのもとで、救援活動に励んだ。延べ 101 人の大学関係者が炎天下での活動に取り組んだ。また震災時には、4 次に渡り延べ 40 人の 教職員が炊き出し、仮設住宅付近のマップ作成、仮設住宅への引越しの手伝いなどのボラ ンティア活動を行った。これらの活動は本学と地域との結びつきを強め、また学生のボラ ンティア活動への認識を高めるのに大きな意義を持った。 またチャペル・アッセンブリ・アワーにおいて海外でのボランティア活動の紹介が行わ れ、多くの学生がその活動を認識し、サークルに入部する学生も増えている。 〔点検・評価の結果〕 学内において複数のボランティア団体が、かなり本格的なボランティア活動を展開して いることはボランティアが本学全体の学風を形成するまでに定着していることを示してい る。ただし災害ボランティアなどは一時的な活動にとどまりそこから継続的なボランティ ア活動への発展が見られたとはいえない。本学が今後もボランティアする大学として発展 するためには全教職員の積極的な関与が望まれる。そのために教職員のボランティア活動 208 への理解を深める啓発活動をより活発に行い、学生に先立て教職員がボランティア活動に 力を入れている姿勢がかたちになって見えるようになることが必要である。本学の教職員 が、個人的にボランティア活動をしているケースや、NPO や教会などで様々な奉仕活動を 行っているケースはあるが、そうした活動を大学として評価し奨励していくことが大切で ある。 〔改善の具体的方策〕 現状ではボランティア活動は 1 年次生及びボランティア関係のサークルに所属している 学生に限られがちであるので、1 年次生のボランティア実習日以外に全学のボランティア・ デー(もしくはボランティア週間)を設けてより多くの学生が継続的にボランティアに参 加することを奨励することも考えられる。 ボランティア活動の内容と人数 2004年度 2005年度 2006年度 合計 対人(障害) 0 2 10 12 対人(高齢) 14 6 4 24 対人(児童) 0 1 0 1 対人(その他) 0 1 0 1 環境 0 3 0 3 イベント 0 18 25 43 災害 46 0 0 46 地域 0 0 1 1 60 31 40 131 合計 6.学外の諸団体との関係 〔現状の説明〕 本学は開学以来「ボランティアをする大学」として地域社会に受け入れられてきたが、 この間に実際に学生を受け入れ指導に当たって下さった施設等の数は実数で百を超えてお り、中には学生が卒業後そこに就職するケースも見られるようになってきた。そこで大学 としては、大学の提供するプログラムを超えて継続的にボランティア活動を行う学生のた めに、ボランティア・センターを通じて外部からのボランティア募集の情報を出来るだけ 頻繁に学生に提供すると共に、関心のある学生を施設等に紹介する仲介役を積極的に行っ 209 ている。 ボランティア委員会では、これらの学外団体との関係強化に努めると共に、その一助と して 1999 年度にボランティア主事及びボランティア委員の執筆による『VOLUNTAS―敬 和学園大学ボランティア・ガイドブック』を発行し、それをこれら近隣の社会福祉施設等 に配付した。これは現在の社会福祉の現状、及び近隣の社会福祉施設と本学との協力関係 に関する基礎的なデータと本学の活動実績、ボランティア活動を行うに当たっての学生へ の注意事項等を整理し、それにこれまでの学生の各施設におけるボランティア活動「体験 レポート」を添付したもので、学外諸団体へのフィードバックの一つとして位置づけられ ている。2001 年度に続き、2006 年度には学生のボランティア学習の手引きとして改訂版が 発行され、ボランティア論の教材としても活用されている。 なお、本学は近隣の社会福祉施設等との関係以外に、ボランティア委員会を窓口として 「日本ボランティア学会」 、「日本ボランティア学習協会」に機関加盟しており、また、 「日 本国際教育支援協会」主催のボランティア関連の研修会等に毎年複数の教員を派遣して情 報の収集と交流、ボランティア活動推進のための協力関係の構築に努めている。しかしこ れまで学会での研究発表の実績は少ない。 例年前期のボランティア実習前にチャペル・アッセンブリ・アワーの時間にボランティ アに関連する外部講師を招いて学生への動機付けを強めている。2005 年度は日本ボランテ ィア学習協会の興梠寛理事長を招き極めて刺激的な講演をいただくことができた。今後も こうした試みを続けることが望ましい。 本学開学以来、慈善団体「国際ソロプチミスト新潟」から年額 10 万円の寄付金を頂いて おり、主としてふれあいバラエティ開催の資金として用いられてきた。2006 年度には規定 を設けそれ以外にも学生の自主的ボランティア活動に用いられている。今後とも友好な協 力関係を発展させていくことが望ましい。 2002 年度からは英語文化コミュニケーション学科で教職課程を履修している学生を中心 にして近隣の小学校における英語教育のボランティア活動が行われ、高い評価を受けてい る。 また敬和学園高等学校との関係において、高校では大学のボランティア学習に相当する 「労作」のカリキュラムが設置され、活発な活動が行われているが、合同で一つの活動に 取り組むには一層の検討が必要である。 〔点検・評価の結果〕 〔改善の具体的方策〕 共生社会学科の開設と共に、社会福祉施設は国家試験の必須項目としての社会福祉実習 先として重要な意味を持つことになった。そのため従来のようなボランティア学習の施設 として学生を派遣することが難しくなった施設もでてきている。今後共生社会学科の実習 施設と全学のボランティア学習の実習施設との兼ね合いを慎重に考慮しなければならない。 210 ボランティア学習で指導を受ける施設には、 「ふれあいバラエティ」に招待して交流を深め、 大学と施設との関係が一方的な依存関係にならないようにしている。今後も「ふれあいバ ラエティ」を施設にとっても有意義な交流の機会として充実させていく必要がある。他方、 社会福祉領域に重点を置いてきたボタンティア学習を環境ボランティア、国際ボランティ アをはじめとする多様な学習形態に広げていく努力も重要である。 本学がボランティアする大学として認知され、ボランティアを学風として発展するため には、ボランティア教育にしっかりした学問的な営みの裏づけがなければならない。その ためにはボランティア委員会として学生・教職員が多彩な学会活動を展開することが望ま しい。できるだけ早い機会に本格的な学会発表を行い、将来は本学がボランティア学会の 理事校として立てられ、年次研究大会の開催校となることができるよう努力すべきである。 建学の理念としてのボランティアを発展させるために最も必要とされるのはボランティ アに関連する教員の研究・教育活動の活発化である。宗教・倫理・福祉・コミュニケーショ ンから、スポーツ・経済・法・情報に至るまで、キリスト教主義に基づく大学として本学 で営まれている研究と教育はすべて根底においてボランティアに関連している。現状では 多くの教員の専門知識とボランティアの関係が十分に活用されているとはいえないので、 この点の認識を全教員が深める必要がある。2004 年度に開設された共生社会学科における 福祉科目をボランティア精神の育成のために他学科の学生たちにより広く開放すると共に、 共生・平和・人権のキリスト教的理念がボランティア活動に結実するよう全学のカリキュ ラムを工夫していくことが望まれる。ただし共生社会学科とボランティア委員会は社会福 祉士国家試験の受験資格要件のための実習施設の確保を巡っては競合的関係にあるという 意見もあるため、ボランティア学習が共生社会学科の実習施設の確保に支障を及ぼさない ようできる限りの配慮を行う必要がある。他方ボランティア学習は、学科の枠を超えて全 学の学生を対象とする教育プログラムであり、一学科の都合によって学習内容が偏ったり、 希薄化したりしないよう留意が必要である。特に、英語文化コミュニケーション学科及び 国際文化学科の学生に対しては福祉ボランティアの学習の機会が与えられることが望まし い。共生社会学科は社会福祉士国家試験の受験資格要件のための実習施設と円満な関係を 保つ必要があるため、ボランティア学習が共生社会学科の実習施設の確保に支障を及ぼさ ないよう、できる限りの配慮を行う必要がある。他方、ボランティア学習は、学科の枠を 越えて全学の学生を対象とする教育プログラムであり、全学のプログラムとして学習内容 の偏りを避ける必要がある。特に、英語文化コミュニケーション学科と国際文化学科の学 生に対しては、福祉ボランティアの学習の機会が与えられることが望ましい。そのためボ ランティア委員会には 3 学科の教員が加わり、学科の枠を超えた立場での運営を続けるこ とが必要である。 新発田市との関係においては、 「まちの駅」及び「新発田学研究センター」の開設に伴い、 地域に密着したボランティア活動を展開する機会が大きく開かれている。新発田学研究セ 211 ンターや共生社会学科と協力しながら地元での多様なボランティア活動を活発化させるこ とが望まれる。 212 終 章 1.大学基準協会の相互評価に向けて 2001 年度に第三回目の自己点検・評価を行って、2002 年度に大学基準協会の加盟判定審 査を受けてから、2006 年度に第四回目の自己点検・評価を行って、2007 年度に相互評価を 受けるまでの間に、本学はさまざまな改善・改革を行ってきた。それは最初に、大学基準 協会の加盟判定審査で指摘された点に対応した改善・改革であった。 大学基準協会の加盟判定評価で指摘された勧告・助言・参考意見は、主に本学の入学定 員割れの状況が 2000 年から 3 年続いており、2002 年度の入学定員充足率が 80%を割って いることに対して、大学のサービスの抜本的なリストラクチャー対策を問うものであった。 同時に抜本的な再構築策を取る本学のガバナンスやマネージメントを問うものであった。 大学の構成員が財政状況を理解することを求め、大学関係者が大学の経営状況を共有す るために財務三表の公表を求めた勧告、法人理事会の経営マインドの強化を求めた助言、 法人監査に業務監査を求めた助言、企画調整のための機関の整備や点検・評価を改善に結 び付ける“Plan-Do-See”のマネージメント・サイクルの確立を求めた助言などは、理 事会や大学のマネージメント力の強化を問うものであった。また、学長補佐制度の設置を 求める助言、大学運営委員会を明確に位置づける改善を求める助言は、大学のガバナンス 力の強化を問うものであった。 定員割れの状況が 4 年連続して続く前に、教育研究理念を変えることなく、さらに教育 研究理念を具体的に実現するために、従来の英語英米文学科と国際文化学科という 2 学科 の定員を削減して、その削減した部分に共生社会学科という新学科を新設した。このよう なスクラップ・アンド・ビルト形式で、社会の新しいニーズに対応して、新しい分野を開 拓し、新しいサービスを提供し始めて、ようやく入学定員の減少に歯止めを掛けることが できた。だがこれは、共生社会学科の設置、英語文化コミュニケーション学科の名称変更、 国際文化学科の高校公民科・中学社会科の教職課程の設置というカリキュラム改革ばかり でなく、代々木ゼミナール新潟校の校長を本学の入試室主幹として迎え入れて、入試制度 に関する様々な改革を行った結果の相乗効果の現われである。 また、財政状況の理解は以前より進み、財務三表の公表は年々充実し、理事会の研修会 や懇談会が始まって経営マインドの強化が意識され始め、財務監査に業務監査が追加され 始め、事務局に企画広報係が設置されて、マネージメント力は多少強化され始めた。だが、 大学改革が点検・評価から目標を立てて次の計画へと移っていくマネージメント・サイク ルの確立にはまだ至っていない。現時点では現実の変化に対する対応に追われており、点 検・評価の結果から中長期計画の策定に力を注ぐ、ビジョン策定の力がまだ弱い。 それに対して、学長補佐制度の確立に至る過程の大学運営委員会の改革、またその作業 213 小委員会による様々な大学改革の推進、また学長代行制度の拡張を経て、学長補佐制度の 設立という過程の中で、大学のガバナンス力は増していき、大学の諸改革は進展していっ た。 2.大学教育の改善・改革の諸方策 次に、以上のように大学基準協会の指摘に基づいて改善・改革を行う中で、大学の危機 的な状況に対する抜本的な対策が取られた後に、ガバナンス力が増し、マネージメント力 が次第に付き始めていった。それは 2003 年 4 月に新井明学長の学長就任と共に、大学基準 協会で指摘されなかった以下の諸点について大学の改善・改革の諸方策が進展していった ことと密接に関連している。 第一に、学長就任と共に人事のやり方を改めた。それまでの教授のみの人事教授会を撤 廃して、新任・昇任人事を教授・助教授・講師が参加する教授会の審議事項の一つにし、 学科のみによる人事委員会から他学科長の加わる資格審査委員会による審査に改めた。こ うして、教授会の結束力を強めていくことになった。 第二に、学長は同一法人の高校と大学の連携を強める方針を明らかにした。高校の教職 員との年二度の合同研修会、高校のアーチェリー部出身者に対するアーチェリー場の新設、 大学職員の高校でのバドミントン指導、入学・卒業式での高校出身者を中心にしたハレル ヤ・コーラスの演奏、教育基本法改定問題検討委員会の高校大学合同委員会で同じ教育理 念の下での共闘などの諸方策を通して、同一法人の高校と大学の相互交流や相互理解を深 め、法人内の結束力を強めていった。その結果、高校からの大学進学者数が増加していっ た。 第三に、学長は同一法人でない一般の高校と大学の連携を深めていく方策を取った。教 員の高校訪問を出前講座に改め県内の数多くの高校で出前講座が展開されることになった。 また、新発田市内の 6 校の高校からの進学者が少ないことに注目し、新発田市議会・聖籠 町議会の合同議員会で地元出身者に対する奨学金制度の創設を訴えるばかりでなく、 「まち の駅」の産官学の共同事業に着目することになった。 第四に、学長は大学改革を推進する方策として、拡大した大学運営委員会の下部組織と して問題毎にアド・ホックの作業小委員会を作って徹底的に議論させて次々に大学改革を 推進していった。それらは、ポイント制新任・昇任人事制度、サバティカル制度、教育基 本法改定問題、学長選考制度、TA 制度、学長補佐制度である。 第五に、学長は地域との連携を深めて地域に貢献する方策を取った。すなわち、新発田 市産業振興課・新発田商工会議所・本学の産官学の連携で「まちの駅」を発足させ、さら に「まちの駅よろず・新発田学研究センター」に発展的に解消させていった。 第六に、創立 15 周年記念事業として、同窓会名簿の作成、写真を中心にした 15 周年記 214 念誌の発行、絵葉書セットの発行、3 つの開学 15 周年記念講演会の開催などを通して、卒 業生をも含めた教育共同体の一体感を深めた。また、「木を育てるように人を育てる」とい うモットーを象徴するように、学長は就任以来、新学生に入学記念植樹式を毎年 4 月に行 っている。 このような改善・改革の諸方策を通して、学長は「愛の共同体としての学園」(『キリス ト教学校教育』キリスト教学校教育同盟、2005 年 6 月号)に記した教育共同体の理念を実 現しようとしている。 3.敬和学園大学の将来 学校法人敬和学園は、1887~1893 年に新潟に存在した新潟女学校と北越学館の再興を願 う教会の祈りの中から生まれた学園である。これまでは、日本基督教団新潟地区諸教会と 敬和学園高校・大学という教会と学校の関係は、日本の他の地域には見られないほどに車 の両輪のようにうまく機能してきた。 しかし、これからの少子高齢社会では、ますます地域社会に根ざしていくことが求めら れている。すなわち、教会と学校の関係が重要であるばかりでなく、教会と学校と社会福 祉施設の三者の密接な関係を通して、「神に仕え、隣人に仕え」地域社会に貢献していくこ とが大切になっていく。 敬和学園大学は、キリスト教主義・国際主義・地域主義の三つを教育方針にしている。 大学であるので外国語教育や地球規模や国際的視野で考える国際主義が重要であることは 言うまでもないが、それと同時に、今後は地域社会から学んで地域社会に還元する「地域 還元型教育」の地域主義が重要になってくる。それは「グローバルな視点で考え、隣人に 仕える」というミッション・ステートメントにも表現されている。 本学の「地域還元型教育」については、既に英語文化コミュニケーション学科を中心に した「地域循環型英語教育」や国際文化学科とも関係が深くなっていく「新発田学研究セ ンター」などで手がつけられ始めている。また、大学全体のボランティア活動や共生社会 学科の実習とも関係が深くなる大学に隣接する校地に建設予定の認知症グループ・ホーム 「富塚・のぞみの里」が地域福祉の鍵となって果たす役割は大きい。これらの三者の連携 を深めて「地域還元型教育」を展開していき、中長期に亘って地域社会の信頼を獲得して いくことが、本学の教育の将来にとって重要な鍵になると思われる。それらを展望して、 地域社会に貢献するキリスト教主義リベラル・アーツ大学の新しいビジョンと中長期計画 の策定が必要である。 215