Comments
Description
Transcript
第13報 温熱快適許容域を満たす設定室温の解析
日本建築学会大会学術講演梗概集 (関東) 2011 年 8 月 41574 シミュレーションツール BEST によるオフィス熱負荷・熱環境解析 第 13 報 温熱快適許容域を満たす設定室温の解析 正会員 正会員 正会員 正会員 100 80 累積度数[%] 度数[hour] 1.序 300 本研究では、室温、気流速度、湿度、放射環境、着衣 冬期 夏期 (12-3月) (6-9月) 量、代謝量の 6 要素を考慮して熱的快適性を保つことが 200 できる PMV 制御を行うオフィスの室温を解析し、室温制 南 東 御を行う場合の推奨設定室温を求めようとした。また、 西 100 気流の利用や地点、建物特性の違いにより推奨設定室温 インテリア がどの程度変化するかを把握しようとした。 2.標準計算条件と推奨設定室温の算出法 0 18 20 22 24 26 28 30 BEST では、室温制御と同様に、作用温度制御や PMV 制 室温[℃] 御のケースを容易に計算できる。そこで、ゾーンモジュ 室温度数分布 ールと AHU モジュールの 2 種類のモジュールのみを利用 した連成計算から、PMV 制御を行うオフィスの熱環境を シミュレーションした。計算対象のオフィスを図 1 に、 標準計算条件を表 1 に示す。PMV の設定値は、夏期 0.5、 冬期-0.5、着衣量はクールビズ、ウォームビズを想定し た。この条件で PMV 制御を行った場合の室温累積度数分 布を図 2 に示す。図 2 を用いて、推奨設定室温を算出し た。推奨設定室温で室温制御した場合、90%の時間は夏期 に PMV=0.5 以下冬期に PMV=-0.5 以上になる。残りの 10% の時間は推奨設定室温では快適域に入らないため、快適 側の設定室温に変更してよいと考える。 20 室温[℃] 図 2 室温累積度数分布図 南 26 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 気 流 速 度[m/s] 気 流 速 度[m/s] 気 流 速 度[m/s] (A)東 京 (B)札 幌 (C)那 覇 4000 空調時間:8:00~22:00、室内設定値:夏期(PMV0.5、湿 度成り行き(除湿時吹出湿度 90%))、冬期(PMV-0.5、イ ンテリア湿度 50%)、冷温水供給:常時冷温水とも供給 あり Low-Eペア (Ar) 透明ペア Low-Eペア 熱反クリア 透明フロート Low-Eペア (Ar) 運転 制御 (C)那覇 22 透明ペア 風量:インテリア:7 回/h、ペリメータ:15 回/h、外気 量:1.0lit/㎡ sec 23 Low-Eペア 風量 空調条件 インテリア 札幌 熱反クリア 方式 (東京、札幌、那覇) 拡張アメダス標準年データ (東京、札幌)low-e グリーン(銀 2 層)+透明、ガラス厚 8、空気厚 6 (那覇)透明フロート、ボックスルーバ の出 1.5m (共通)中間色ブラインド 0.15 人/㎡、1.1met、0.5clo(夏期 6-9 月)、1.0clo(冬 期 12-3 月)、0.7clo(中間期 4-5 月,10-11 月) FCU 併用 CAV 方式 透明フロート 人体 北 那覇 Low-Eペア (Ar) 内部発熱 [最大値] 西 26 Low-Eペア (B)断面図 表 1 標準計算条件 窓 東 図 各条件での推奨設定室温の比較 27 図 1 標準オフィスの基準階 壁体材料 南 透明フロート 6000 (A)平面図 気象 インテリア 25 推奨設定室温(冬期)[℃] 推奨設定室温(夏期)[℃] 東2 北 図 3 気流速度を変えた場合の各地域における 推奨設定室温(夏期) 2700 5000 150 東1 北 インテリア 2 24600 インテリア 1 6000 南 西 27 6300 西2 6300 西1 東 室温累積度数分布 28 N 6300 10%線 0 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 透明ペア 6000 南 東 西 インテリア 北 40 熱反クリア 9000 冬期 (12-3月) 1300 6000 [図 2 注] PMV 制御時の室温 累積度数が、夏期 夏期 (6-9月) については 10%、 冬期については 90%のとき の室温 を、推奨室温とす る。 90%線 60 33600 6300 * ** *** * PMV 推奨設定室温(夏期)[℃] オフィス BEST ○竹内 健悟 郡 公子 石野 久彌 神山 隼人 (A)東京 (B)札幌 図4 窓ガラス種を変えた場合の各地域 における推奨設定室温 Numerical Analysis of Thermal Load and Environment in Office Spaces by Using a Simulation Tool, the BEST Part 13 Analysis of Set Point Air Temperature within The Thermal Comfort Zone Kengo TAKEUCHI, Kimiko KOHRI and Hisaya ISHINO ― 1175 ― 北 インテリア 常時閉 常時開 ブラインド条件 22 ブラインド条件 常時閉 開閉調整 常時開 常時閉 開閉調整 (C)那覇 21 東 西 北 インテリア 27 26 68% 45% 30% 23 窓面積率 (C)那覇 22 21 68% 45% 30% 68% 45% 30% 窓面積率 窓面積率 (A)東京 ブラインド条件 (A)東京 (B)札幌 図 6 窓面積率を変えた場合の各地域 における推奨設定室温 (B)札幌 ブラインド操作を変えた場合の各地域 における推奨設定室温 150 150 100 100 80 冬期 (12-3月) 60 ブラインド常時開 ブラインド開閉調整 ブラインド常時閉 度数[hour] 28 27 50 26 25 50 0 -1 -0.5 0 0.5 6月 7月 8月 9月 6月 7月 8月 9月 夏期(6-9月) 気流0.4m/s 気流0.5m/s 80 夏期(6-9月 熱 反 クリア 気流0.1m/s Low-Eペア 気流0.2m/s Low-Eペア(Ar) 気流0.3m/s 気流0.4m/s 気流0.5m/s 夏期 (6-9月) 10%線 20 00 0.5 0.5 1 PMV[-] (B) 東京で窓条件を変えた場合 100 100 ブラインド操作を変えた場合の各地域 気流0.1m/s 100 冬期 100 気流0.2m/s (12-3月) における月別推奨設定室温(夏期:西ゾーン) 気流0.3m/s 透 明 シングル 90%線 透 明 ペア PMV[-] (A)東京で気流速度を変えた場合 6月 7月 8月 9月 150 (A)東京 (B)札幌 (C)那覇150 40 0 -0.5 0 -1 1 PMV[-] 度数[hour] 図7 気流0.1m/s 気流0.2m/s 気流0.3m/s 気流0.4m/s 気流0.5m/s 100 累積度数[%] 推奨設定室温(夏期) [℃] 夏期(6-9月) 透 明 シングル 夏期(6-9月) 80 90%線 透 明 ペア 60 40 熱 反 クリア 気流0.1m/s Low-Eペア 気流0.2m/s Low-Eペア(Ar) 気流0.3m/s 気流0.4m/s 気流0.5m/s 60 夏期 (6-9月) 透明フロート40 度数[hour] 図5 開閉調整 26 23 南 累積度数[%] 西 推奨設定室温(冬期)[℃] 推奨設定室温(夏期)[℃] 東 27 常時開 推奨設定室温(冬期)[℃] 推奨設定室温(夏期)[℃] 南 冬期 (12-3月) 透 明 シングル 透 明 ペア 熱 反 クリア Low-Eペア Low-Eペア(Ar) 透明フロート 90%線 夏期 度数[hour] *宇都宮大学大学院工学研究科 博士前期課程 **宇都宮大学大学院工学研究科 准教授・工博 ***首都大学東京大学院 名誉教授・工博 累積度数[%] 透明フロートペア 50 透明フロートペア (6-9月) 3.推奨設定室温の感度解析 熱線反射クリア 10%線 熱線反射クリア low- εグリーン(銀2層)+透明 20 20 10%線 Low-E グリーン(銀2層)+透明 lowεグリーン(銀2層)+透明(アルゴン) Low-E グリーン(銀2層)+透明(Ar) 図 3 は気流速度を変えた場合の推奨設定室温の比較図で 0 0 0 0 -1 -0.5 0 0.5 1 -0.5 0 0.5 1 -1 から-0.5 0.5 1 0 0.5 1 -1 ある。東京で気流 0.1m/s 0.2m/s0 にしたときは、推奨 PMV[-] PMV[-] PMV[-] PMV[-] 設定室温が 0.6K 高くなるのに対して、気流 0.4m/s から (C)東京で気流速度を変えた場合 (D) 東京で窓条件を変えた場合 0.5m/s にしたときは、推奨設定室温は 0.2K 高くなり、そ 図 8 推奨設定室温を用いた室温制御時の PMV 度数分布 の効果が徐々に小さくなる。また、気流利用の効果は暑熱 と累積度数分布 地の方が大きい。図 4 はガラス種類を変えた場合の推奨設 定室温の比較図である。夏期のペリメータゾーンの推奨設 4.推奨設定室温による室温制御時の PMV 分布の特性 透明フロート 透明フロート 透明フロートペア 透明フロートペア 熱線反射クリア 定室温は、どの都市も、ガラス種により 0.2~0.3K の差が 熱線反射クリア 得られた推奨設定室温を用いて室温制御したときの low- εグリーン(銀2層)+透明 Low-E グリーン(銀2層)+透明 low- εグリーン(銀2層)+透明(アルゴン) Low-E グリーン(銀2層)+透明(Ar) 生じた。冬期には、特に札幌において、ペアガラスとする PMV 度数分布と累積度数分布を図 8 に示す。(A)は東京で とシングルガラスの場合に対して、ペリメータゾーンの推 気流速度を変えた場合の PMV 度数分布、(C)は累積度数分 奨室温を 1K 前後低くできる。図 5 はブラインド操作を変え 布である。気流速度の違いによる PMV 分布の違いは小さ た場合の推奨設定室温の比較図である。ペリメータゾーン く、夏期の 90%の時間において PMV0.5 以下になることが では、ブラインド常時開から常時閉にすることで、夏期の 確認できる。(B)、(D)は東京で窓条件を変えた場合の結 推奨設定室温は、東京で 0.3K 程度、那覇で 0.5K 程度高く 果である。窓条件による PMV 分布の違いは夏期、冬期と なる。図 6 は窓面積率を変えた場合の推奨設定室温の比較 もにそれほど大きくはなく、夏期の 90%の時間において 図である。高性能な Low-E ペアガラスを使用した場合の比 PMV0.5 以下、冬期の 90%の時間において PMV-0.5 以上に 較であるが、窓面積率を 68%から 30%にすると、夏期、冬期 なっていることが確認できる。 ともペリメータゾーンの設定室温を 0.2K 程度緩和できる。 5.結論 図 7 は、西ゾーンにおいてブラインド操作を変えた場合の 気流、地点、建築条件が異なる場合の推奨設定室温の 月別推奨設定室温の図である。ブラインド操作法による推 差を明らかにした。また推奨設定室温を用いた室温制御 奨設定室温の違いは盛夏期に少し大きくなった。 時の PMV が目標通りの快適さを保つことを確認した。 50 *Graduate student, Graduate School of Engineering, Utsunomiya Univ. **Associate Prof., Graduate School of Engineering, Utsunomiya Univ., Dr. Eng ***Emeritus Prof., Tokyo Metropolitan Univ., Dr. Eng ― 1176 ―