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02.次期移動通信システムへの移行について[PDF:838KB]
別添-2 次期移動通信システムへの移行について 原田 1関東地方整備局 企画部 情報通信技術課 勝敏1 (〒330-9724 埼玉県さいたま市中央区新都心2-1) 現行の移動通信システム(K-COSMOS、アナログVHF無線)については,設備の老 朽化から更新時期がきており,次期移動通信システムの整備にあたっては,携帯電話や衛星携 帯電話の事業者回線を主体とし,整備費用・維持管理費用を抑えつつ,危機管理上必要となる 災害時の通信確保手段としてデジタルVHF無線による自営通信システムの整備を行うもので ある. キーワード 移動通信システム,デジタルVHF無線 1. はじめに 現行の移動通信システムとしては,K-COSMOS,ア ナログVHF無線が整備されているほか,衛星通信を利 用したKu-SATⅡが整備されている. 移動通信システムは,河川・道路管理等における平常 時の連絡用及のほか災害時における情報収集・復旧作業 等の指揮連絡用として利用されている. K-COSMOSは,MCA(Multi-Channel Access)複信 方式により,建設省移動通信システム(Kensetsu Communication System for Mobile Station)として開発 された.関東地方整備局では,平成4年に東京都及び埼 玉県地域をサービスエリアとする統制局,基地局が整備 され,平成5年からサービスを開始し,現在まで有効活 用されている.アナログVHF無線については,KCOSMOS導入以前より利用しており,防災相互連絡波 (主に都道府県,地区町村の防災担当,警察,消防等の 機関による相互利用するもの)を含む移動通信設備であ るが,規模を縮小して運用を継続している. また,事業者が提供する移動通信設備としての携帯電 話が普及し,幅広く利用されており,各種業務連絡のほ かメールによる伝達や各種情報のWeb閲覧による情報 収集が可能になっている. 2. 課題 現行の移動通信システムであるK-COSMOSは,導 入・運用開始から約20年が経過し保守の限界による信 頼性低下が課題となっている. また,携帯電話・衛星携帯電話の普及により自営によ る移動通信システムが担う役割を踏まえた規模や機能と する必要がある. 3. 次期移動通信システムが担う役割 (1) 東日本大震災以前の検討状況 東日本大震災以前に検討が進められていた次期移動通 信システムの計画は以下のとおりである. ◆今後の河川・道路管理用無線は,通信事業者回線 (携帯・衛星)を主たる通信手段として取り入れ, 山間部やトンネルなどの不感エリアや災害時の輻輳 対策の観点から,最小限の自営通信を確保する. 平常時:携帯電話(通信事業者) 災害時:衛星携帯電話(通信事業者) 不感エリア,輻輳対策としての自営通信(※) ※自営通信とは次期移動通信システム (2) 東日本大震災の経験を踏まえた検討 東日本大震災発生時の東北地方では,公衆回線(一般 公衆回線,携帯電話回線)が地震発生直後より,安否確 認などの連絡のため特定の宛先に集中することによる通 話規制(輻輳を含む),携帯電話基地局が地震・津波等 の被害によりサービス停止するなどにより通信の途絶が 広範囲に発生したなか,地震発生後各市町村に派遣され たリエゾンの連絡用としてK-COSMOSを持参し,通信 事業者の通信インフラが機能停止する中,衛星携帯電話 と共に数少ない連絡ツールとして使用された. 一例として地震発生後,仙台空港に駐機している国土 交通省ヘリ「みちのく号」に搭乗するため職員が本局か ら公用車で出発した直後に「大津波警報」が発表された ことを受け,職員に対してK-COSMOSを使って帰還を 命じ,津波から逃れることができた.また,ヘリコプタ ーについても仙台空港の津波による冠水に巻き込まれる 前に離陸することができたと報告されている. 関東地方においても,公衆網が輻輳により利用できな い期間があり,震後のパトロール実施者,巡視者との連 絡できないなど発生したことを受け,その対策として, 災 害 時 に お け る 協 力 会 社 等 に 自 営 通 信 設 備 の KCOSMOS又は,アナログVHF無線を貸与している事 例がある(※運用については電波法に則り適切に運用, 管理がなされております). 東日本大震災の経験を踏まえ,次期移動通信システム の計画については,以下のとおり一部見直しがなされた ところです. (4) 役割の変化、見直し K-COSMOSの導入当時は,携帯電話の保有者も現在 よりも少なく,自営通信による通信需要も高い状況あっ たため,パトロールや巡視報告のほかに,災害発生時の 利用など需要が高かった状況にある.K-COSMOSの導入当 時の自営通信の利用状況を図-1に示す. 図-1 自営通信の利用状況(K-COSMOS導入当時) ◆今後の河川・道路管理用無線は,通信事業車回線 現在は,携帯電話が普及し,各種業務連絡においても (携帯・衛星)を主たる通信手段として取り入れ, 利用されるようになっている.参考として表-1に携帯電 自営通信は,非常時の通信確保を主な目的とするが, 話の契約数の推移を示す.また,携帯電話を含む自営通 平常時の巡視業務等での使用も可能とする. 信の利用状況を図-2に示す. 1) パトロールカー及び災害対策用車両は車載型を配 置. 2) 連絡車は災害時の現地との連絡用等,必要性を十 分に検討した上で配置. 3) 維持用車両及び除雪用車両は原則配置しない. ただし,公衆回線等で代替ができない等の理由が 整理できるものについてはこの限りではない. 4) 各事務所等に非常時の連絡用として配置. 表-1 携帯電話の契約数の推移 確定値 平成 4年度末 平成14年度末 平成24年度末 携帯電話 契約数(千台) 1,712 75,656 131,973 出典:総務省ホームページ (3) 衛星携帯電話が担う役割 通信事業者が提供する衛星携帯電話については,非常 時に公衆回線が使用できない場合において,通信を確保 することを目的とする.また,車両等への設置について は以下のとおりである. ◆直轄管理区間外で活動することが想定される車両用 及びTEC-FORCE用・リエゾン用として必要数を配置 する. 1) 車両用は移動中の発着信の必要性について考慮す ること. 2) TEC-FORCE用 3) リエゾン用については派遣を予定している自治体 数や用途等を考慮すること. 4) 各車両用とTEC-FORCE用・リエゾン用において 1台で複数の目的を満足するのであれば,台数 の縮減に努めること. 図-2 自営通信の利用状況(現在) 図-2のように携帯電話の利用範囲と自営通信の利用範 囲が重複し,平常時業務利用の連絡手段としては,携帯 電話に置き換わっている.しかしながら,東日本大震災 のような大規模災害の発生直後からは,携帯電話が輻輳 や施設被害により利用できない状況が想定されることか ら,衛星携帯電話が一部導入されているが,契約件数の 増加や地上網の輻輳等が懸念される. (4) 次期移動通信システムの運用イメージ 次期移動通信システムの運用構成イメージを受け,実 (1) 自営通信システムの移行方針 際の運用イメージを図-5のとおり整理した.なお、現行 自営通信の利用状況などを踏まえ,次期移動通信シス のK-COSMOSに比べ機能面,運用(使用)面が大きく テムについては以下のとおり,移行方針が示されている. 異なるものとなることから,導入時においては,その取 り扱い方法を利用者に周知する必要がある. ・災害対策用移動通信についは,主として衛星携帯電 話を整備 ・危機管理用として自営の移動通信システムを最小限 整備 ・現行維持費を大きく上回らない範囲で整備 4. 次期移動通信システムへの移行方針 (2) 次期移動通信システムの整備範囲 自営通信としての移動通信システムは,非常時の通信 確保を主な目的とするが,平常時の巡視業務等での使用 も可能とする.従って,その整備範囲は,河川・道路の 直轄管理区間を通信エリアとする.また,その役割につ いては図-3に示す.なお,砂防事務所及びダム管理事務 所にて利用されているアナログVHF無線(60MHz帯) は,当面,継続利用することを予定している. 図-3 自営通信の利用(次期移動通信システム) (3) 次期移動通信システムの運用構成イメージ 運用構成イメージを図-4に示す.構成としては,山上 無線中継所や事務所等に無線装置(基地局)を設置し, 車載型や携帯型の無線装置(移動局)を利用する.また, 事務所や出張所から車載型や携帯型の無線装置(移動 局)に通話が行えるように遠隔通話装置を設けることを 予定している. 図-4 システム構成イメージ 図-5 次期移動通信システムの運用イメージ 5. 次期移動通信システム (1) 機器仕様 次期移動通信システムの整備は,「危機管理用として 自営の移動通信システムを最小限整備」並びに,「現行 維持を大きく上回らない範囲で整備」としていることか ら導入コストを低減させるため,民性品に準じた規格を 採用するよう検討しており,ARIB STD-T102 第2編に 準拠することとする. ARIB STD-T102 第2編とは,社団法人電波産業会が, 各種の電波利用システムに関する無線設備の標準的な仕 様等の基本的な要件を「標準規格」として策定したもの である.基地局-移動局間(又は移動局間)の無線通信 の部分については標準規格を採用する(民性品に準じた 規格).なお,無線装置本体や国土交通省の統合通信網 を利用する部分等については国土交通省仕様とする. 次期移動通信システム(デジタルVHF無線)の基本 諸元を表-2に示す. 表-2 基本諸元 無線周波数帯 150MHZ キャリア周波数間隔 6.25kHz 空中線電力 基地局:20W 移動局(車載):10W 移動局(携帯): 5W 変調方式 4値FSK ARIB STD-T102に準拠 アクセス方式 SCPC 通信方式 2周波単信方式 (1周波単信方式併用) (2) 通話エリア 通信エリアは,「危機管理用として自営の移動通信シ ステムを最小限整備」を基本的な方針とし,その整備に おいては,河川・道路の直轄管理区間を通信エリアとす る.基地局を多く設置することにより不感地が少なく通 信カバーエリアを広くすることができる一方,整備コス トが増大する.また,隣接する基地局では,混信を発生 させないよう異なる周波数を配置する必要があり,国土 交通省に利用可能な周波数も限られることから効率的な 周波数配置,基地局配置が求められる. 基地局の配置については,既存のK-COSMOS基地局 を利用する場合,また,既存のアナログVHF無線の基 地局を利用する場合とそれぞれ通話エリアのシミュレー ションを実施した. 既存のK-COSMOS基地局は,山上無線中継所を中心 に関東地方整備局管内で62箇所,既存のアナログVH F無線基地局は,山上無線中継所のほか,事務所や出張 所に基地局が設置されており,関東地方整備局管内で1 09箇所となる.当然ながらこれらの基地局に次期移動 通信システムの基地局を配置した場合,河川・道路の直 轄管理区間をほぼ通信エリアとすることが可能であるが 整備コストが増大するほか,「危機管理用」を主目的と することから,山上無線中継所と平地の基地局(事務所 等)をバランス良く配置することが望ましい. (3) 通話エリアシミュレーション結果 関東地方整備局管内において,次期移動通信システム の基地局配置検討のシミュレーションを実施した.平地 に基地局を設置したことにより,一部,不感地が生じる 結果となったが,これら不感地については事務所の自営 通信利用状況に応じ,狭い地域を通信エリアとする基地 局の設置及び衛星携帯電話による代替を含め将来的に検 討する必要がある. 関東地方整備局内に25箇所に基地局を設置し,基地 局無線装置を45台設置した場合のシミュレーション結 果を図-6に示す.(青色:通話可能エリアを示す) また,東京都周辺地域は図-7のとおりであるが、高層建 築物の影響を考慮していない状況のものである. 図-7 東京都周辺 図-8 都庁周辺(4km四方、建物の影響を考慮) なお,都庁を中心に4km四方において高層建築物を考 慮したシミュレーションの結果を図-8に示す. 国道20号では,首都高速道路上がシミュレーション 上,通話可能エリアであった. 6. まとめ 次期移動通信システムの整備については,着手初年度 は首都直下地震対応として,東京,神奈川,千葉,埼玉 (一部を除く)の河川・道路事務所の直轄管理区間を通 信エリアとする基地局より整備し,その他地域について は順次整備を実施する. また,将来的にはTEC-FORCE,リエゾン等の活動に おいても機能する通信手段とすることも想定される. 最後に,既存のK-COSMOSについは,平成28年度 をもって運用停止する予定.また,機器故障等により運 用できなくなることも想定されることから,早期に次期 移動通信システムへ移行する必要がある. 図-6 通信エリアシミュレーション(基地局25箇所)