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Title 地学教育におけるエネルギー概念の統一的指導 Author(s)
Title
地学教育におけるエネルギー概念の統一的指導
Author(s)
藤, 則雄; 宮下, 勲; 井村, 嘉清; 谷村, 修次; 平田, 豊和; 金岡, 直美; 関戸
, 信次; 小島, 和夫; 佐藤, 政俊; 小西, 優; 竹守, 照; 森田,昌子
Citation
教科教育研究 | 金沢大学教育学部, 5: 209-302
Issue Date
1972-09-20
Type
Departmental Bulletin Paper
Text version
publisher
URL
http://hdl.handle.net/2297/23571
Right
*KURAに登録されているコンテンツの著作権は,執筆者,出版社(学協会)などが有します。
*KURAに登録されているコンテンツの利用については,著作権法に規定されている私的使用や引用などの範囲内で行ってください。
*著作権法に規定されている私的使用や引用などの範囲を超える利用を行う場合には,著作権者の許諾を得てください。ただし,著作権者
から著作権等管理事業者(学術著作権協会,日本著作出版権管理システムなど)に権利委託されているコンテンツの利用手続については
,各著作権等管理事業者に確認してください。
http://dspace.lib.kanazawa-u.ac.jp/dspace/
209
地学教育におけるエネルギー概念の統一的指導。
J
J,』0
347l
清美俊子
嘉直政昌
村岡藤田
●●●●
井金佐森
の、のの
勲和夫煕
地学的事象を認識するには,全地球的な立場
豊和
下田島守
●●●●
宮平小竹
2358
雄次次優
』JJJ
則修信
村戸西
藤谷関小
緒言
現行の地学の指導において,地学的事象を歴
史的,総合的に見る指導のねらいはあったとし
でものを見る必要がある。とりわけ’エネルギ
ても,教室内での実践の中で,どのように取り入
ー概念の指導にあたっては,この立場を無視す
れ,どのような教材で,どのように導くかの試案
ることはできない。
はあまりにも少ない。そしてjややもすれば,
昭和48年度より実施される高等学校指導要領
では,「地学I」の内容の取り扱いに,宇宙にお
表面的に,地学的事象の基本的事実や原理だけ
を解説して,地学教育としてはいないだろうか。
ける地球の環境・地球における変化とエネルギ
以上のような意味において,表題のようなテ
ー.地球と宇宙の進化を大きな筋立てとして’
ーマを設定し,高校地学の指導の基本となるべ
全地球的な立場で扱うよう示されているのも,
き小学校・中学校の地学分野の学習内容を検討
この点を重要視したからである。
現行の地学の指導にあたっても,エネルギー
し,数回の討議と授業面での活用をもとに,試
案を編みだした。これら試案が,実際の授業に
概念を,決して取り入れていないわけではな
おいてどうであるかについても,教師の実践を
い。しかし,「堆積岩」の単元を指導するとぎ,
通して検討してみた。
火成岩や変成岩が地球内部に由来するエネルギ
この論文は,高校地学の主要な単元である
ーによってつくられるのに対して,堆積岩は地
「エネルギー概念」を,教材の1つにとって,
球表面に与えられる外的エネルギーによるもの
個別的,断片的になされていた授業を,統一的
であり,外的エネルギーの大部分は太陽放射エ
に,総合的に,各単元間の有機的なつながりを
ネルギーであり,太陽放射が気圏や水圏で大気
もたせるよう検討した試案の一例である。この
や水を循環させるエネルギーとなり,それらの
研究は,今後の研究のためのpreliminary
サイクルを通して,堆積岩が形成されていくこ
reportの1つである。
とを認識させるべきである。
この論文を報告するにあたり,いろいろと御
また,「地殻の変動」を扱う場合,われわれ
援助をえた金沢大学教育学部の神力甚一郎教授
人間の感覚では経験できない変動でも,長い時
間的経過の中で,地球内部に起因をもつエネル
育学部付属中学校の理科担当教官,石川県立理
ギーの問題を除外して,認識させえないことは
科教育センター地学研究室の各位に,心からの
いうまでもない。
感謝の意を表する。
l:
・加納心治教授・水越敏行助教授,金沢大学教
contributionfromthelnstituteofEarthScience,FacultyofEducation,KanazawaUniversity,
NewSeriesNq26
●●●o
n〃・戸爲])
金沢大学教育学部地学教室,3:金沢大学教育学部付属小学校,4:金沢大学教育学部付属中学校,
石川県立理科教育センター地学研究室,6:石ノ||県立向陽高校,7:石川県立錦丘高校,8:石ノ11県立
二水高校,9:石川県立泉丘高校,10:石川県立小松高校
210金沢大学教育学部教科教育研究
この研究の一部は文部省の昭和45~46年度科
学研究費(代表者:神力甚一郎)によった。
1.小学校・中学校地学教材におけるエネ
ルギー概念指導の位置
第5号昭和47年
(b)地学学習内容の学年別系統
各学年での学習内容を系統図にまとめると,
第1図のように考えられる。
さらに,表中からエネルギー概念の指導との
関連で重要な項は流水の働き,地球内部の力
(もちあげる力,地層がまがる,地層のかたが
1小学校理科学習
(a)「地球と宇宙」の領域
り)堆積岩のでき方であろう。
新指導要領では,「天体とその動き」・「気
系統図の流れの中心である流水一土地の変
象とその変化」・「土地とその変化」の3つの
化をもとにして,エネルギー概念の指導の系統
領域の内容が統一されて「天体と宇宙」とよば
を図であらわしたのが第2図である。
れるようになった。これは,従来のともする
2中学校理科学習におけるエネルギー概念を
と,単なる内容の寄せ集めであったものとはち
中心とした地学教材の領域
がって,太陽とそのあたため方による空気・水
1年:(a)自然とその中の生物
.±のあたたまり方の変化や降水による流水の
生物の生活環境としての地球を,太陽放射
働きの現象を,相互に関係づけて把握させる意
との関連において,導入的な概念として扱
図をもっている。つまり,変化する土・岩石の
う。
形は,変化させる流水の速さや量に関係し,そ
れは降水現象によっておこるものであることか
(b)地球をとりまく宇宙
太陽放射と地球との関連・太陽は光のエネ
ら,太陽エネルギーに結びつけ,統一的に認識
ルギーを放出している。このエネルギーが
させていくように構成されている。
太陽から放出されて,地球上で,どのよう
第1図小学校における地学の学年別系統図
流水
2年
に量的にも,質的にも変化してゆくもので
あるかをとらえる。
第2図エネルギー概念の指導系統図
④
3年
4年
jl駅のようす
5年
地層のわる土地
エネルギー概念指導系統
④風
砺雨同一・匡亙Z垂刀
他のエネルギー
也の要因
2年:(a)大気とその中の水の循環
・地表における水の循環と太陽放射エネルギ
ーとの関係
川原の石や
砂との比較
・水の蒸発と凝結一エネルギーの出入りの
③
問題,太陽の放射エネルギーのいろいろの
使われ方の違い。
土地の変化
学年別索統(小学校)
(b)流水の働きと地層
・流水の働きと地表の変化一流水のもつエ
ネルギー,つまり太陽放射エネルギーによ
藤則雄ら・・地学教育におけるエネルギー概念の統一的指導
211
って地殻の構成物質が変化する-風化作。地殻変動(内因的営力)と地表の歴史・火
用。山活動の実態をとおして,マグマの存在や
。地層のつくりと堆積岩一太陽放射エネル
火成岩との関連性,地球内部の膨大なエネ
ギーとしての風化作用の結果できた砕屑物ルギー・地震現象を考察させる。また,火
が流水で運搬されて,地層ができる。つま山・地震以外にも,地層の摺曲・隆起運動
り,地層一堆積岩は太陽放射エネルギーというような,地球内部のエネルギーによ
の生産物である。る地殻変動のあることを学習する。そし
3年:地殻の変化と地層の歴史て,地表の歴史というのは,太陽放射エネ
゜火山活動とマグマの性質(内因的営力)。ルギーによって代表される外因的営力と内
・マグマの活動と火成岩の特徴。因的営力との葛藤の所産である。
。地震
第3図地学教材の構造図
基本要素
時間
ゲロ
空間
Ⅱ高校におけるエネルギー概念指導
の必要性
このような思考水準の生徒を,総合的・統一
的に地学事象を理解できるようにし,エネルギ
高校での地学は,第1学年において履修され
ー概念をグローバルな形でとらえることのでき
ている。この段階では,生徒は地学的事象をエ
るようにするには,どのような指導を必要とす
ネルギー的な認識の上でとらえてはいないよう
るのだろうか。
である。生徒達のほとんどは,不動の大地,変
広島大学教育学部付属高校の恩藤知典のこと
化のない雲という認識を一歩もでていないのが
ばをかりれば,「変化をエネルギーと関連ずけ
現状である。
て理解させるには,まず動的な自然観察が必要
金沢大学教育学部教科教育研究
212
第4図地学の領域と関連学科との構造図
第5号昭和47年
なり意図的な形で地学におけるエネルギー概念
指導のすすめ方を検討してみた。とくに前述の
ような現状にたってみた場合,エネルギー的見
方,考え方を意図的に1つの流れの上にのせて
指導する必要を感じたからである。
ⅡI・高校におけるエネルギー概念指導
単元の構造図について
エネルギー概念の指導にあたって,その指導
の体系を図式化することを試みてみた。エネル
ギーの流れを一本の柱として(新指導要領地学
Iの「地球における変化とエネルギー」参照)
であり,静的な一つの白い塊にしか見えない積
エネルギーの供給,収支,変化にともなって生
雲から,実感としてエネルギーを考える生徒は
ずる地球上の種々の事象の内容をエネルギーの
何人いるのだろうか」と。
流れの上に配分して,その関係を明示するため
そして彼は,フィルムにとられた微速度撮影
に次の構造図を考えた。
された積雲を生徒に見せることによって雲の渦
内容を大別して「地球の構成」「エネルギー
動は,水蒸気が雲粒になるときに放出したエネ
の流れ」「地球における変化」とし,「地球の
ルギーによって,いっそう強められているので
構成」では地球の層状構造をもとにした。「エ
はないかという仮説を生徒から得て,それを指
ネルギーの流れ」ては横実線で上部から成層圏
導の導入につかっている。
以上の領域,対流圏の領域,陸水,海洋の支配
このような観点から,われわれはここに,力、
領域,地殻,マントル,核の領域を表現し,そ
第5図地学におけるエネルギー単元構造図
<エネルギー単元構造図>
①②
地球の構成
気
エネノレェーの>荒れ
太陽のエネル好一
③
地球における変化
q高層の現象(電離層オゾン團
園
b大気の循環(気温の変化)
水圏
c水の循環
(風化う受食運搬唯樹
e地殻の変動(地向斜変ノラiifF用造LlO陸iD
岩圏
dマグマの活動Ou地震)
地球内部のエネルズー
藤則雄ら:地学教育におけるエネルギー概念の統一的指導
213
Ⅱ展開の例
れらの領域に対して太陽放射のエネルギーが上
前時または宿題としてオゾンのできかた,働
部から,地球内部のエネルギーは下部からはた
きを調べておく。
らき,そのはたらきかけの範囲およびエネルギ
1導入として,高層の気温の状態をどのよ
ーの流れを矢印で示した。エネルギーが2つ
以上の領域にわたって作用し,相互間に物質
うに考えているかを知る。
(水,大気など)エネルギーの循環や転換が行
質問1山へ登ると気温が低くなり,上空の
なわれているものには循環をあらわす渦を記入
雲が氷晶からできていることなどから高層の気
した。
温はどのようになっていると思うか。
さらに「地球における変化」てはエネルギー
第6図大気圏における高度と温度との関係図
の供給にともなって生ずる地学的事象を付記し
■■■■■■■■■
指導展開の例
指導の流れは単元構造図にもとずいて基本的
には,①-③-③-⑥とした。また生徒の能
力,設備などによって指導者の方でいく分その
順序が変えられても差しつかえない。指導実践
にあたっては生徒を思考の場に立たせ,生徒自
身がデータ・情報の解釈,検証から結論への糸
口を発見していく過程に重点をおいた。
■呂二■■
■■
う
 ̄
印印和豹mp
m一高度
たo
 ̄
〆
/
/
、
/
~
/
/
、
、
、~
】【
Z夛囿。PRD[
2 CO22024IC2eo2BO300
1V・エネルギー概念指導の試み
温度゜K
A:高層における太陽放射のおよぼす影響
2第6図を示し,質問1からでた答と比較
(紫外放射とオゾン層)
する。対流圏,成層圏下部で徐々に気温が下が
I指導のねらい
るが,201,nぐらいから上がりだし,60kmぐらい
資料によりそれの見方・解釈・推定への過程
から再び下がることに気付かせる。
を経る。
質問2なぜ高温層ができるのだろうか。こ
数個の資料によって,高温層のできる原因を
の20~30kmぐらいの高温の部分を高温層と呼ぶ
オゾンの紫外吸収によることを推論する。
ことを教える。
第7図太陽放射スペクトル
質問2は討議として意見を出さ
Wm- 軒
せる。そして以下の質問への目的
をはっきりさせる。
強度
020
0.15
Ⅱ【
010
005
]
か気付くことがないかを討議させ
トル
M’
''1’ 'Iil 、
V
Ⅲ
第7図により太陽スペクトルが
○2
討議の着眼
・地上での太陽放射スペクトルが
T、
、7
'1
るo
吸収されることを知る。
、.・・・.,.
'1
3第図7を示し,図を見て何
し
滑らかでない。
。大気外スペクトルと地上スペク
、
-、
一・
-------
:... 戸一へ....
■●
■■■■■■■■
--
●■●①
05000l0pOO15000200002500030000
;Bhr長ス
トルの比較など。
214金沢大学教育学部教科教育研究
第5号昭和47年
(1),(2),(3)はそれぞれ3枚別の図として,OH
第9図オゾンの垂直
Pで適宜重ね合わせるようにする。(3)はプリン
1,m
トにして生徒に配付する。
質問3太陽放射を波長の領域により赤外
60
線,可視光線,紫外線,X線,γ線に分け,そ
れぞれの領域の強さを比較する。
40
高度
注赤外線1mm~7700A
可視光線7700~4000A
紫外線4000~l00A
2C
X線100~0.01A
γ線1A以下
0005
太陽放射スペクトルの最も強いところはどの領
オソ、ン量
域か。
。オゾンのできかた,および働きを生徒に確認
する。
質問4オゾンの吸収部はどの領域になる
か。
OOIOOOI5
cYn/1,0
単位注
横軸は各高度におけるオゾン量で,厚さ約11hmの気
層中にふくまれているオゾン量を標準の気圧・気温に
した場合の厚さをcmであらわす。
4第8図を示す
第8図紫外線透過高度分布Ⅲ結果とその検討
最初に,大気の層状構造を,「高
k、
IsO
高
100
度
----02--
層における太陽放射のおよぼす影
響」を参考にして,気温・気体原子
qlr
ニハーMn-o-
・分子の電離状態などから,OHP
を使用して分類させる。ただし,指
導のねらいを,高温層のできる原因
が,オゾンの紫外線吸収によるとい
う推論より,大気圏の層状構造を理
50
解することにねらいをおく。
この後に,太陽放射のエネルギー
1000
波長
と,地表における熱収支について,
2000
0
A
3000
次の図をOHPによって説明す‐る。
(1)太陽から地球へ投射(短波放)
されるエネルギー総量を100とした
質問5紫外線の吸収高度の最大は何lnnぐら
いか。
質問6オゾンの最も吸収しやすい波長と吸
収高度の関係を知り,オゾンの紫外線吸収高度
場合,大気と地表の熱収支ほどのようなものか
図解したもの。
(2)地表面からの長波放射について,その消費
割合を示したTPを重ね時の投影画面。それぞ
と高温層の間に何か関係がないかを考えよ。
れ単独投影してからこの重ね合せを行なう。
質問7オゾンの紫外線吸収高度と第9図の
オゾンの最大分布高度は一致しないが,これは
(3)地表面・大気中・大気上限における,放射
何故か。
収支の計算を行なってから重ね合す(一橋出版
収支の割合が色別で示されており,生徒が放射
藤則雄ら:地学教育におけるエネルギー概念の統一的指導
215
A:H20,CO2による吸収
TPより)。
第10図太陽放射エネルギーの熱収支図
(1)(一橋出版より)
裡臼-…
-100
B:地表面の反射
C:直射日光の地表面の吸収
D:雲からの反射
E:雲の吸収
F:雲からの反射光の地表面の吸収
G:空気分子による乱反射
H:散乱光の地表の吸収
‘
I:地表面からの放射で大気外へ
+17
、
J:地表面からの放射で大気中に吸収
+zE
K:熱伝導による大気吸収
H
十19+23+5
短波力k射
L:蒸発潜熱の大気吸収
M:大気への逆放射
N:大気圏外への長波放射
大気と地表の熱収支を理解することによっ
第11図太陽放射エネルギーの熱収支図
(2)(一橋出版より)
て,太陽から地表におよぼすエネルギーの流れ
を知り,自然界のエネルギー平衡を感得させ
る。
以上の授業を,大気圏の層状構造(2時間),
大気と地表の熱収支(1時間)として行ない,
期末に試験を行なった。ただし,1クラスだ
け,進度の関係で,講義式に各地学的事象を説
明し,3時間を2時間で行なわざるを得なかっ
た。そこで,この1クラスと,他の1クラスの
試験結果を比較してみる。
〔問題〕第13図は,大気と地表の熱収支を示
+19+23+5-120-10-23+106
短波放射艮油放射
したものである。
第13図大気と地表の熱収支図
第12図地表面・大気中・大気上限にお
ける放射エネルギーの収支図
(一橋出版より)
(一橋出版より)
1,日、jM“
-100
+60
閃
B
+17
+114+10
、
+23
薑!’
+2E
156
H
+19+23+5-120-10-銅十106
短波放射長波放射
216金沢大学教育学部教科教育研究
第5号昭和47年
い
さ
な
れ
論させる導入部である。
Ⅱ展開の例
を圏のう
と層油よ
□□矼鰔旧加
OHPによって第14図を示す。生徒にはプリ
ントを与えておく。
ざお洋影
書に海に
》川哩包》》》峅拙》僻》『』》》忰啼
ることのできない範囲を青色にぬれ(日の出・
日の入曲線を境に中央部が夜,上部・下部が昼
であることが色区分してあればよい)。
質問2-日中太陽の没することのないのは
何月何日から何月何日頃までか。(日の出・日
求見指
推定出来る。)。
質問3一日中太陽が現われないのはおよそ
何月何日から何月何日頃までか。(日の出・日
の入曲線から5月23日頃から7月20日頃と推定
できる。)
質問4この観測地点のプリンス・ハロルド
最高点|最低点|平均点|満点数
.コントとはどこか。次の地点から選べ。
Al3016122.7118人/46
B’3013118.1110人/45
質問1第14図に太陽が地平線より上にあっ
て見ることの出来る範囲を赤色,地平線下で見
の入曲線から11月21日頃から1月24日頃までと
探意的
。,義
支で請
収中,。
熱のとた
にる放熱に放放圏断爆,放考造行でラ試
出②③Ⅲ大指も2
的の導
放
魍珈加川蝸珈射州Ⅸ発蛎舳江全伏加柧油験
吸
秬》一櫛》一億磯掛川臘獺鰍怖川川&
□⑪鮪火脳触獣鯛祁騨北馴荊
仙収
た。以下の展開例は太陽エネルギーと地球の受
熱量の間の関係を考察させ,大気の大循環を推
(30点満点)
以上の結果は,あらかじめ,充分な計画を立
てて行なったものではない。偶然の結果から,
いろいろ考えたものであるので,正確な資料と
は言えない。しかし,エネルギーの流れをふま
えて,探求的な指導法を取り入れることが,少
なくとも生徒に定着したよう仁感ぜられる。
とくに,問題の(1),(2),(3)と推論してゆくこ
北極,北緯70.,北緯30.,赤道,南緯30.,
南緯70.,南極(太陽の高度が最も高い時は12
月20日頃で40。~50.の高度であることから,南
半球で極からの角距離が約20.位の地点と考え
られる。)
OHPによって第15図を示す。
質問5最暖月は何月か。最寒月は何月か。
(最暖月は1月。最寒月は9月。)
質問6日照時間と日較差との関係はどう
とが非常によく,(3)まで正解したものが多く,
か。(日照時間が最長なのは,太陽が1日中没
満点の人数に差があらわれている。
しない12月,1月であるが,それに対して日較
これから,大気の大循環,海流,水の循環へ
と展開したが,生徒の理解も非常によかった。
B:大気の循環気温の変化について
I指導のねらい
差が最大となるのは日照時間が最長となる12月
1月の前後の10月,11月,12月,2月である。
このように日照時間の長短と気温の高低と関係
がある。しかし日照時間の長短と日較差の大小
が完全に一致しないのは12月,1月は太陽が一
気象単元の中でも大気の大循環は中心的テー
日中没しないので日較差は小さくなり,その前
マであるが,この大気の大循環を理解する過程
後の11月や2月では太陽が地平線下に没する時
でエネルギー概念を認識させることを目的とし
があるので日較差が最大となる。)
藤則雄ら:地学教育におけるエネルギー概念の統一的指導
第14図南緯70.地点における月日と太陽高度
第15図月別の気温の日変化
との関係図
(縦軸は摂氏度)
1357gIII3I5I7Ig2123時
一一一
午前午後
2345678gIOIII2I2345678gIOIlI2
?
11
456
プリンス・ハロルド・コースト上陸地点
時刻は地方時
月日
217
11
21
21
nI
11
ZI
Il
霊呂畳、■田■
■、■■■■
■■■■■■■■■
■旧■■■■■■■
■旧■■■
(日照時間最長の12月,1月に対して最高気
一一一一
質問7日照時間と気温の関係はどうか。
、■
0-234
i、
璽
’’一一’
11
zI
LL■
56789
Ⅲ1
逆
到割謹北訓韮毛千
II
21
■■■■■
XI
と-1列一之
ll
21
I
一一
nl
ド
I’
2I
〆
BS
』
11
’一
Ⅷ1
■
Ⅱ
21
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11
21
I
Z田■■■
78
21
Ⅵ1
一一
Ⅱ
■■、■串
11
しみい△
VI
23
II
a
一一
ⅣI
-’
11
21
45
m1
一ゴ
.11
go
Ⅱ1
温の月が1月と後にずれている。このずれは12
月,1月には太陽が日没しないので太陽からの
質問85,6,7,8月は一日のうちで最
高気温と最低気温の時刻がはっきりしない。そ
れはなぜか。
(太陽が地平線下でこの観測地点では受熱量
’’’一一
ルギーが貯えられることが理解出来ればよい。)
345G7
受熱量が放熱より多く,そのために次第にエネ
0
-1
357gIIBI5I7Ig2I2S時
月別の気温の日変化
がOで放熱だけが行なわれるので,一日中ほぼ
一定の気温となる。)
質問9観測点で太陽のエネルギー(E)を
最も多く受けるのはどんな場合か。
(太陽高度が高い場合,太陽光線と地平面と
のなす角が垂直の場合最大となる。)
質問10太陽の高度(h)と受熱量(e)と
218金沢大学教育学部教科教育研究
の関係を式で表わしてみよ。
第5号昭和47年
て太陽からの受熱量が異なることになる。この
(e-E・sinhh=0.の時最小
太陽からの受熱量の異なることによって大気の
h=90.の時最大)
質問11太陽光線が赤道面と平行な時,緯度
(9)と受熱量の関係を式で表わしてみよ。
(e=E・cosp9=0゜の時最大
P=90.の時最小)
OHPによって第16図を示す。
第16図受・放熱量の緯度別年平均値
咄
大循環,すなわち,極風・偏西風・ジェット気
流・亜熱帯高圧部や海洋と大気の熱交換等,大
気中の地学的現象は全て太陽のエネルギーによ
って起こることを認識させる。さらに次回では
大気の大循環をエネルギーの流れをもとに総合
的に考察させ,エネルギーの流れで極風,ジェ
ット気流等の各事象の原因を把握させ,エネル
ギー概念を認識させる。
またOHPやプリントなどによって与えられ
た資料の見方を考察させ,質問や話し合いによ
って資料に基づく推論の能力を養うように配慮
したい。
‘【
ヶ〃
鴬)
Ⅳ結果およびその検討
この展開例を44,45年度の両年に,質問形式
によって実施し,46年度には生徒の理解の程度
を正確に把握するため,プリントに解答欄を設
けて記入させた。その結果は以下の通りであ
Ⅱ【
【】【
る。
I[
j ̄■『】□----至巫
質問12緯度によって太陽からの受熱量が異
なるが,そのエネルギーはどのように移動する
か○
.陸や海等地球の表面から水が水蒸気となっ
て蒸発することによって気化熱として使われ,
雨となり,さらに地表水,地下水等となって風
化,浸食,運搬等のいろいろな作用のエネルギ
ー源となる。
。地球上の空気を熱して対流を起し,種々の
大気中の現象のエネルギー源となったり,さら
に大気の大循環を起して他の緯度にエネルギー
を運ぶ。
。海水から暖ためられ,海流によって他の緯
度にエネルギーが運ばれる。
以上のような種々雑多な意見が述べられれば
問1に対しては質問形式にすると,最初1,
2分は図が読みとれなくて,ざわざわ,がやが
やと惑っているが,3~4分で約7割の生徒が
理解する。5分以上で全体の85%の生徒が色を
ぬり始め,他の15%の生徒にヒントを与えると
全員図を読みとることが可能となる。またプリ
ントを集めて集計すると,ヒントなしに84%の
生徒が理解している。
問2は質問と同時に,プリントの日の出,日
の入曲線が太くて正確に判断できないと逆に質
問され,8割以上の生徒が正確に答えた。解答
集計の結果では,11月21日から1月21日と答え
た生徒が最も多くて55%,その他11月21日から
22日,または23日,24日,25日と答えたものが
各々8%,7%,7%,5%・正確は83%であ
った。その他は11月21日より3月15日,または
それについて話し合いをさせる。
12月21日から1月21日などのように図を読み間
Ⅲ整理
違えたり,または昼と夜を全く感違いしたりし
太陽のエネルギーと地球の太陽からの受熱量
の関係は主に太陽光線と地表面とのなす角度に
よって異なる。そこで,地球上では緯度によっ
たものである。また,未解答者は2%である。
問3は問2と同様に,約8割の生徒が正解し
ている。しかし,問2の太陽の没しない最終日
藤則雄ら:地学教育におけるエネルギー概念の統一的指導
219
に解答が分散したのとは逆に,太陽が現われな
その理由も,受熱のみ,または放熱だけでは日
い最初の日が5月23日の30%を最多として,24
較差は小さく,受熱量と放熱量によって気温が
日の20%,25日の12%,22日の8%,21日の5
定まることを理解している。
%と分散し,日の出,日の入曲線が各月日を現
問7は,関係なしと答えた9%の生徒以外は
わした線上にこないために,解答が分散してい
日照時間と気温の関係を認めている。問6と同
る。しかし,太陽が現われない最終日は日の
様に,約1割の生徒は単に日照時間が長くなれ
出,日の入曲線が線上なので,7月21日とほぼ
ば気温が高くなる,といった単純な関係ではな
一致している。また,問3は問2に比較して,
く,気温の最高は日照時間の最大の時より1ケ
未解答者も4%と増加するとともに,誤答も21
月~2ケ月おくれて気温が最高になることをと
%と多くなっている。これは,図の中央でグラ
らえ,その理由を比熱・熱容量.受熱量・放熱
フを読まなければならないためと思われる。
問4は,まず上陸地点という字を見て,そこ
はどこだろうといった関心を示し,次に太陽の
量などの言葉で説明している。
問8は94%の生徒が,太陽が地上に出なくて
受熱量が0,放熱量のみが高くなるので,他の
出没の状態や,白夜などから,全員,この地点
が高緯度であることに気付く。しかし,南緯70゜
と答える生徒は約8割で,その理由を正しく答
気象現象で一日の最高・最低気温が決まり,ほ
えられるものは43%である。生徒に話し合いを
る。太陽が赤道でも,極でも地平線上に出てい
ぼ気温が一定になることを理由にあげている。
問9では,気温と太陽との関係を考察させ
させると,「冬の太陽は南半球に……。」,「
る時間はほぼ同じである。そこで,緯度によっ
南極での太陽の最大高度は24。」,「太陽の最大
て太陽からの受熱量が異なる理由は,日照時間
高度が12月20日頃で,高度40~50.であるから
ではなくて,太陽光線と地表面とのなす角度で
……」などの理由が話題となる。話しあいの結
果,ほとんどの生徒は,その地点が南緯70°で
が太陽の高度との関係に気付き,その中の87%
ある理由が理解できるようである。
が高度が最大になった時,と正確に答えてい
次に第15図を参考にした問5では,問題な
く,最暖月は1月,最寒月は9月であるとの正
あることを認識させる目的で設問すると,90%
る。しかし,約1o%が未解答である。
問10は次の間11とともに事象を式で表現する
能力をつける目的で設問したが,正解36%で,
解者は9割で,1~2分で解答している。しか
し,最暖月12月,最寒月7月または8月と答え
未解答が49%であり,ヒントを与えても60%の
るものが約1割程いる。
生徒が理解したにとどまった。
問6は第14図と第15図の両方の,相互関係を
読みとることと,太陽のエネルギーと気温との
関係,とくに受熱量と放熱量が気温にどのよう
に影響するかを考えさせることを目的としたの
しかし,問11は49%の生徒が正解。ヒントを
与えると,約80%の生徒が式を求められる。以
上式の表現は図によってヒントを与えると,理
解を助けることが考えられる。
であるが,両者に関係があると考える生徒は98
ここまでの質問形式で,約50分。これを大循
%である。大部分の生徒は日照時間が長くなれ
ば,日較差も大きくなり,日照時間が短かくな
れば,日較差も小さくなる,と簡単に読みとっ
環の第1次限目に行ない,さらに質問12は大気
ている。しかし,解答結果によると,9%の生
16図によって受熱量一放熱量の曲線が低緯度で
徒は日照時間が1日の半分の時,日較差が最大
になると答え,また,11%の生徒は日照時間が
認させ,この状態が継げば,どのような状態に
最大に増加する時や日照時間が最大から減少す
る時に日較差が最大になると正確に図を読み,
年々エネルギーが畜積されて,気温は上昇。他
の大循環の第2次限目の導入として用いたらよ
り効果的であると思われる。質問'2の前に,第
はプラス,高緯度ではマイナスであることを確
なるかを質問し,話し合いさせる。低緯度では
220金沢大学教育学部教科教育研究
第5号昭和47年
方,高緯度では年々エネルギーが放出され,気
圧など種々の気象現象の原因を理解するのに非
温が減少することになる。しかし,実際にはそ
常に役立っている,と思われる。また,大循環
のようにはならないことを話し,その理由とし
をエネルギーの移動として総合的に考察させる
て,問12を質問するのが良い。問12の解答結果
と理解が深まり,かつ容易に大循環を理解して
は解答なし13%の他,1人で2項目以上記した
いる,と思われる。
生徒も多く,風や対流,空気の大循環79%,海
C:水の循環一風化シ浸食,運搬,堆積につい
流47%,水蒸気の中に包まれていることn%,
て
地面や地球内部4%などによって高緯度にエネ
I指導のねらい
ルギーが移動する,と考えている。
水の循環の仕組みをできるだけ定量的にとら
以上のように,できるだけエネルギー概念を
えさせ,そのような扱い方に興味を持たせ,そ
統一的に認識させるために,やや必要以上と,思
のエネルギーの巨大性を知らせると共に,エネ
われる時間を,大気の大循環の導入に使った
ルギーの移り変わりをある程度細かく理解させ
が,偏西風・極風・ジェット気流・熱帯性低気
る。
第17a図水の大循環を示す図
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藤則雄ら:地学教育におけるエネルギー概念の統一的指導
Ⅱ展開例
221
て見よう。
(1)まず導入の過程で次の2点を理解させる
ために問題1を与える。
下するとして,この流水のエネルギーを
⑦地球上の水の総量は変化しない。
、地球上の水は海水,陸水,大気中の水分
の3つの過程による連絡があって,絶えず
質問’水は海洋,大気,地上(植物,湖河
川’土壌),地中の間をどのように循環したか
を与えられた記号を使って第17b図に示せ。
第17b図水の大循環を画く図
》 |’
-0
雨室
土壌
Q-☆mghの式から計算してみよ。
②これらの巨大なエネルギーは何に使われ
るのだろうか。
循環している。
~lIlllL
①これらの水が-年間に0mの高さまで落
■●甲
【蜜
③これらのエネルギー源は何だろうか。
(3)地表を流れる水はいろいろな作用をもた
らしているが,定量的にそれらの現象の1つ
(物質の運搬)を質問4,質問5を与えて生徒
に考えさせてみる。
質問4流水の速度はどんな条件によって定
まるか。
川の傾斜に関係するという意見がでてきた
ら,それについての実験の方法,装置を話し合
ビフ
リヨ・河|Ⅲ
蒸発/〃降水↓↓↓地T水一,流出一一
い,実験1へ導入する。
〔実験’〕流水量を一定にしておいて,雨ど
いの傾斜と,流水の速度の関係をコルク栓を
流して,その移動距離と時間から速度を求め
(2)中学校ではすべて定性的にしか扱ってい
て表を完成せよ。
ないので,定量的な扱い方になれさせるため
第2表流量測定の実験(1)
と,流水のもつエネルギーの巨大’性を理解させ
るために,質問2,質問3を解かせる。
質問2次の資料を用いて川から海への一年
間の水の流出量(→)を概算せよ。
地球全体の一年間の降水量750mm
海での年間蒸発量840m
傾斜’2.’4°’6.’8°’10°
高さcml7114121128135
速度cmsec
準備ストップウオッチ流量測定給水装置(科学
の実験・共立出版1969)
陸での年間蒸発量500m
塩化ビニール雨どい(約2m板に固定)コル
ク栓のかけら,種々の大きさの砂.レキ,各
地球の表面積51×1013㎡
海と陸の比71:29
種フルイ
①全体の年間降水量は何mPか
②海と陸の蒸発量はそれぞれ何㎡か。
③陸で余った水がすべて海へ流れこむとし
て,年間流出量を求めよ。
④海での水の年間不足量が③で求めた値と
大体一致することを確めよ・
⑤これらのことからどんなことが云える
か。
質問3陸地の平均の高さを800mとして,
質問2の③で求めた水の持つエネルギーを考え
質問3に対して,流水量に関係するのではな
いかという意見が出てきたら,それについて実
験1の場合と同じように話し合い,実験2へ導
入する。
〔実験2〕流量測定装置の落差を変化させる
ことによって,一秒間の平均流水量をあらか
じめ測定せよ。次に雨どいの傾斜を一定にし
ておいて流水量を変化させ,実験1と同じ方
法で流水の速度を求めよ。
222金沢大学教育学部教科教育研究
第5号昭和47年
第3表流量測定の実験(2)
騨蕊謡'112141618
ら示すことになると思い,実際の授業のとぎは
10115120
次のように質問していった。
(頻度)は正解率問答のあとで無記名で用
1秒間の平均’
流水量CWsecl
紙に○×で考えついたかどうかを答えさせた。
流水の艤・。
(1)流水にはどのような働きがあるか。
質問5レキ,砂,泥を雨どいにのせ,水を
流すと一番先に何が流れ出すと思うか。
①運搬(83%)②浸食(76%)
③堆積(65%)④その他発電など(52%)
〔実験3〕質問5の現象をまず定性的に観察
流水という言葉から運搬,浸食,堆積の順で
して見よ。
連想されているのは当然。地学の時間の質問
実験3で砂が一番先に動き出すことを確かめ
のせいか,発電などの直接地学に関連のない
させ,ついでこれを定量的に行なうにはどうす
ものはあまり思い出されていない。
ればよいかを話し合わす。
(2)これらの現象のエネルギー源を考えて見
〔実験4〕種々のレキ,砂・泥を別々に雨ど
いへ順に入れて,水を流し,傾斜を変化させ
流水が重力の働きで生ずることは大部分の生
てそれが流れ出すときの流水の速度をそれぞ
徒が気づいたが,これらの現象が永続的に行な
れについて求めよ。またグラフであらわす工
われていることから,太陽の影響まで考えつく
夫をして見よ。
生徒は少なかった。これはやはり自然現象をエ
データーを正確に数多く得ることが困難なの
ネルギーの立場でとらえる習I償が身についてい
で,あらかじめ第18図を用意しておく。
よ○
ないからではないか,と考えられる。
①重力(80%)②太陽(28%)
第18図流速と粒度との関係図
次に重力と太陽がエネルギー源であるという
結果だけを示して,次の質問を与えて見た。
(3)(2)の関係を具体的に説明せよ。
これはテスト形式でわらばん紙に答を書か
せ,その後,問答の上提出させた。その結果,
〔重力〕……位置エネルギーを仕事に変える
〔太陽〕……位置エネルギーの回復
 ̄■■■■■■■■、■Ⅱ■■■■■■■■■■■■ ̄■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■I■■■■■■■■UuI■■■■■--■■■ロ
0.5
■■■■■■■■■■■■■■ロ■ ̄■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ロ■■■■■■■■■■I■■■■■■■■■■U■■■■■■■--■■■ロ
■■■■■■■■■■UIB■■■■■■■■P■UIU■■■■■■■■■ロロロロ■■ロ■田■Ⅱ
i;Etiiil矧]脹臨iE囲醐
菖翠罷翠営認聖同…&&ggg
円
●・・・・
トシルトーキG--砂一十一一礫-(11m)
運搬・たい積・しん食と流速・粒度との関係
質問6何故砂より泥が流れにくいのだろう
かo
粒子間の引力にさからう力の必要を考えさ
せ,さらに水の分子と分子の間に働く作用に関
係して,消費されるエネルギー(熱エネルギー
など)の存在へと推理を進めさせる。
Ⅲ結果およびその検討
という立場でとらえた内容の答案が
①重力(67%)②太陽(43%)見られた。
重力については,(80%→67%)のように関
係のあることは思いついても,位置エネルギー
と仕事といったとらえ方に気のつかない生徒が
見られ,太陽については(28%→43%)のよう
に1つヒントが与えられると,太陽エネルギー
による水の循環に気づく生徒が若干見られ,ま
すますエネルギーの循環という立場でのものの
考察を身につける必要を痛感する。
(3)の質問結果を問答形式でまとめた上で,水
の循環について考えることにした。
導入の過程でいきなり図を示したのでは循環
水がAからBへ,BからCへと循環するとし
の概念や,エネルギーの移り変わりをこちらか
て,A,B,Cに相当するものを「循環の要素」
藤則雄ら:地学教育におけるエネルギー概念の統一的指導
223
環記陸物
循列・く極
たのかはよくわからない。“データーをni3”で
与えればよかったかも知れない。
しかし,充分な理解がこれだけの問答だけで
は得られない生徒が多いことは事実だろう。
次に定量的考察の一実験として「一定水量を
流したときの傾斜と流速の関係」を行なって見
た。データーは別紙。
最初は水が蛇行状態になり,実験がうまくい
かなかったが,これは水を雨どいに流すとき,
答を中心に置かなかったためと判断される。意
外と簡単なことに気づかず,苦労した。得られ
たデーターを見ると,もちろん実験の方法にも
問題があると思うが,一定関係のデーターが得
られないので,さらに工夫しないと定量的な形
で実験を発展させることは困難な現況である。
一定水量を流したときの傾斜と流速の関係
第4表流速と傾斜との関係
紙
コルク
弓眉
【】
タ作
形気しは,環が度mmm㎡別―ん
』づた理出の作を
時間|速さ|時間|速さ
*sec
cnVsec
a58
53.8
60.9
5.49
54.6
62.7
Dl3v4g
5.36
55.9
69.7
41コ
4.94
60.7
73.9
OlOU
(5.32)
r1
u
川
4013v36
gQ
)’9.29
備考
cm/sec
【]
川一剛一川一川
5鋸》》稗乢帖》》{》》罹
”》剛》陶陶徒隅銅醍趣
馴枇肱畑⑤紛例朏鵬・蛾雛噸蛾珊川伽訓叫Ⅷ》隼阯北唯蛾姓柵加川
は細いののらを,・の
み‘な水記作題りた間量量
と考
方jJ%骨J作果に題たにに一蒸蒸積を禾なぞ発水のいしrをり
一れ
水が。で①②③④⑤⑥以こえ
かに様素②④法j組がれ,下を間よし年発発彌川輕緬》》罹蠅艫繩怪榴
方ん答③』朋動生でる応を中のの
りば間形く移のまあ――のけ環
移らて。』畑・発のど点でをタそだ循量
のわいよ%くよ蒸雲んいう環-,れの水
へ,つげ別川げ②④殆かよ循デせど水降
Bてに上く河上
らし子を雲湖を
Aとの要
い循解来考る確
了陸た環以しるえかか⑥
し批織剛紛紛駒川脇価馴脇肋鵬伽醐川吐吐卿輔輔緬砒紺椛畦仙嚥噸陳知赫加轆雄
5
仁呼,循的別J循くく水循くか答てくりるる全ののの陸のこ中の陸陸はに定とてが
ととでのくく%の水水下のだな間し多取べ見球でで球と環・の陸びびた量仮こつ題
こ』上水海J皿水降流地、海うはのとけを調て地海陸地海循るそと及及ま・水にのわ問
ぶ法た①地釘①③⑤空三図上ただ方をめlの:海海海堯別上二
とのさ
呼方せ側
理解不足なのか,データーの与え方がまづかつ
コルクが途中
でひっかかる
99.3
0。
*(5.6+5.4+5.7+5.7+5.5)÷5=5.58
**(4.6+4.7+4.8+5.0+4.8)÷5=4.78
水を雨どいに流すとぎゴム管をうまく置かな
224金沢大学教育学部教科教育研究
第5号昭和47年
いと水路が蛇行状態となり,実験がうまくいか内容を精選して充分に時間をかける必要があ
ない゜
る。すなわち,マントル対流の考え方を取り入
り:地殻の変動一造山運動とエネルギーれて,しゅう曲山脈と造山運動を理解させる。
I指導のねらい
Ⅱ展開の例
この教材の学習にあたっては,今までの既習1しゅう曲と造山運動
事項(しゅう曲・断層・不整合など)が,比較(1)家庭学習として第19図秋吉台の地質断面
的身近な小地域の地学的事象であったのに対しをプリントで与え,
て,非常に規模も広大となり,エネルギー概念、各地層を色分けする。
も抽象的な理論および学説が多い。そこで,こ
け)秋吉台の地質を,化石・地質構造など
の指導には,できるだけねらいを明らかにし,から調べさせる。
第19図山口県秋吉台の帰り水ドリーネのフズリナ化石による地質構造図(秋吉台科学博物館,'65)
Pu,Pm、PLCLCm8化石帯,ss8砂岩,sl:粘板岩,sh:頁岩,1s・・石灰岩
Pu
Pu1PuPmPlCI-CmPuPupu
己屋露餌胃ミミミミーー象含、ABB》IINNM'0髄
(2)第19図に示した秋吉台の地質断面をOH
Pで示し,
仇二畳紀の初期のフズリナが最上部にあ
って,次第にドリーネの底へいくにつれ
て,二畳紀中期のフズリナ化石が産出す
ることから,この石灰岩が逆転している
理由を考える。
(イ)石灰岩が逆転していることから,堆
積した当時の水平な状態の地層との関係
を考え,横がしゅう曲の可能性を推定す
る。
(ウ)日本における古生代末ごろの造山運動
についてふれ,その力(エネルギー)に
ついて話し合う。
〔註〕図の左方(北)に,横がしゅう曲をした二畳
後期の地層を傾斜不整合におおう三畳紀後期の地層が
ある。この傾斜不整合は,秋吉台の古生層が三畳紀後
期の地層がたい積する前に,大きな造山運動を受けた
ことを示している。これが日本における古生代末ごろ
の造山運動が秋吉造山運動とよばれている理由であ
る。
以上の結果は,フズリナ化石から確かめられ
たものであるが,秋吉台全体の構造については
異なった考え方も発表されている。
(3)第20図に示した造山帯の断面図(日高山
脈)を,OHPで示し,
仇造山帯の構造の特色を確認する。
(イ)造山帯ができる地学的条件を考察す
る。
b)この事象が,どんな順番で行なわれる
第20図造山帯の断面の一例
か,発達史を組立てる。
石石夕
狩狩張
日
高
臆
造山帯
鱗第三紀層篝鰄笙:qll-ill)I})1m
三雲雲矯議綜jIiij騏成篝}“二辮蒐鬘
にある地殻
藤則雄ら:地学教育におけるエネルギー概念の統一的指導
225
〔指導〕地層の中には,数mにも達する厚い
の底は数km以上も深く,地殻の中につっこむた
地層が,不整合を認めることなく,同じ地域に
め,熱や圧力がはたらいて,底の部分の岩石の
たい積しているものがある。このような海域
性質が変ることが多い。また,堆積物の底がと
は,長い間沈降を続けていた地域で,地向斜と
けて,マグマが形成され,このマグマが地向斜
よばれている。地向斜の海は,ふつう幅にくら
の堆積物のなかに貫入する。そのため,地向斜
べて長さがはるかに大きな,細長い形をしてい
の中の堆積物は,はげしくかき乱されながら隆
るo
起して,しゅう曲山脈を形成する。
沈降を続ける地向斜の堆積物には,しばしば
〔参考〕これらの事象を説明するために’第
薄い砂岩層と泥岩層の互層を調律的にくりかえ
21図造山帯の形成,第22図地向斜時代,第23図
す厚い地層がみられる。
造山時代を使って理解させる。
地向斜の海で,沈降が極端に進むと,堆積物
第21図地向斜から造山帯の形成を示す図
研せつ物のたMH地向斜時代
111111
地かくマントル
隣地
第22図地向斜時代の図
地向斜地域
陸だな地域
、毒
花こう活
迩成岩
Q回奪ア
砂→砂岩(硬砂岩)
火山灰→幻織iGt灰岩
れき→れき岩
チャート
溶岩→理緑岩
第23図造山時代の図
〔
造山時代
通Ill地域
〔大山脈の成立〕
はんれい岩
〔留意点〕従来の単なる地向斜の説明ではな
最も重要なのは,変成作用やカコウ岩の形成で
く,地殻の深部で変成作用がきわめて広い範囲
あって,断層運動や地形的な山ができること
におこっており,しかも,変成作用の温度が高
は,それに付随した現象にすぎない。
い値で,たくさんのカコウ岩を形成しているこ
(4)造山運動の原因について,いろいろ考
とから,地殻の一部が上昇して地形的に山脈に
え,討論してみる。
なったり,地表に近いところに,しゅう曲や断
同隆起火口説
層ができるのにくらべて,ずっと大きなエネル
マグマが地下から上昇貫入するときに,
ギー変化をともなう現象であることに重点をお
上にある地層をおし分けて傾かせながらし
いて理解させる。すなわち,造山運動のなかで
ゅう曲させた。
226金沢大学教育学部教科教育研究
第5号昭和47年
㈹収縮説
いところにあるらしいという点では意見は一致
している。討論が充分に行なわれない時には,
地球は,はじめ高温の火球であって,そ
れが冷却するにつれて収縮する。その時,
各説を教えて,自然界には,まだ解決されてい
すでに固まっている地殻は,それに応じて
ない問題の多いことを理解させる。
第24図隆起火口説
収縮することができないため,地殻の内部
(上図)と対流説(中図.下図)
に水平方向の横圧力がはたらく。そのた
め,地殻の一部がたわんで地向斜ができた
り,その中に堆積した地層がしゅう曲した
りする。
け)大陸漂移説
大陸が漂移するために,その前縁に圧力
がはたらいて,しゅう曲山脈ができる。
円対流説
地殻の下部の物質(マントル)には,ゆ
っくりした対流があるため,地殻が下方に
引きずりこまれる部分ができて,そこに地
蕊驫:霧驫111i露i:驫鍵:驍鱸191991
向斜や造山帯が生ずる。
(わ分層説
地球は,最初宇宙塵のような低温の物質
が集ってつくられたが,その後,温度が高
E:マグマの活動
くなるにつれて,重い物質が中心に集り,
I指導のねらい
軽い物質は表層に移動したために,同心円
日本付近における,地球の内部エネルギーに
状の層状構造ができた。このような分層に
よって生ずる地学現象が互いにどのように関連
続いて,ある時期に対流を生ずる。
しているかを調べ,その原因を考えてみる。
〔留意点〕造山運動の原因については,現在
Ⅱ展開例
)いくつかの説が対立していて定まらない
でもいくつかの説が対立していて
(A)スライドで,火山・温泉・地震等を示す。
が,その原因が,地殻の下か,また
質問1これらはどのようなことが原因と考
第25図地球の熱
rg/Cm2.sec)(秀文堂「地学図説より」
cm2.sec)(秀文堂「地学図説よりJ)
、270゜、300゜330゜0.
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藤則雄ら:地学教育におけるエネルギー概念の統一的指導
227
えられる現象か。(地球内部の熱エネルギーや
質問5熱流量の多いのはどこか。(多い地
歪が発散・解消されることに伴う現象であるこ
点が1本の帯のようにあらわれ,第25図でも熱
とに気付けばよい。)
流量の多いところである。)
質問2地球の内部エネルギーはどのような
ことに利用されているか。(温泉・ピニールハ
(E)OHPにより第26図にあわせて27図を示
す。
ウス・住居などの保温・暖房・農産物の加温・
第27図東太平洋の海底山脈と熱流量
乾燥,地熱発電等に気付かせる。)
(秀文堂r地学図説」より)
の多い部分があることがわかればよく,その原
(秀文堂より)
因についてまで考察をとめる必要はない。)
140゜120。80。
陸と大洋との熱源には違いのあることは,しっ
かりさせておく。)
0゜
0.98
P
●
には熱流量に大差がないことを説明する。(大
00託
40。
(F)第6表を示し,大陸と大洋とでは平均的
南米大陸
鍵
8
20。
経度
な関係があるか。(海底山脈部分に特に熱流量
第26図東南太平洋の地殻熱流量
0°
'1611210810410096
質問6海底地形と発熱量の間に,どのよう
(D)OHPにより第26図を示す。
20。
--
00
により説明させる。)
34
質問4大陸部で熱流量の多い理由を第5表
を見て考えよ。(大陸地殻と大洋地殻との違い
840
は各々どこか。
深さ(、)
質問3熱流量の多いところ,少ないところ
熱流蝋
(c)OHPにより第25図を示す。
.のの週、PC一
(B)熱流量について説明する。
0.89
1.80
000
1.10
140゜120.’00。80.
数値は10-6cal/cm2.sec単位の熱流麗。
等深線は、単位。
第5表岩石の放射性元素合う
岩石の放射性元素含有量および発熱量(指導と研究〔清水書院〕より)
含有量(g/g)
U
lO-6
Th
K40
lO-6
10-6
’
発熱量(Cal/goSeC×10-ユ6)
UlThlK|総計
総発熱量
cal/cm3年
×10-5
花コウ岩類’411314.119401820130012100
1.74
玄武岩類’0.6121151140113011101380
0.35
超塩基性岩類
0.
001
?
0.
001
0.21?’0.110.310.00032
228金沢大学教育学部教科教育研究
第5号昭和47年
第6表地球上における発熱量
(G)OHPおよびプリントで第28図を示す。
質問7日本付近で熱流量の多い地域および
大陸地域の平均1141×10-6cal/cm2.sec
海洋地域の平均’142
〃
全平均’142
〃
少ない地域は各々どこか。(平均してみると,
東北日本日本海側は,226×10-6,西南日本は
120×10-6,東北日本太平洋側は0.65×10-6cal/
cm2osecである。)
第28図日本付近の熱流量(Yasuiら,1965より)
仏cal7cm2sec)
’
45.N
}i妄||:IF薮;’
iij毫慧:Xf壜
戸
ワビロー
gOM-つき三コ
Ⅷ
Ⅲ]
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鱒1
リ
;
ウレ
⑪OHPおよびプリントで第29図を示す。
質問8火山帯と熱流量の間に関係がある
か。
(OHP用の第29図は第28図に重ねられるよ
うに作成しておく。熱流量の多い地域と第四紀
の火山帯とは,うまく調和している。このこと
から,火山活動をおこすマグマの発生地が,あ
る地域に存続していることがわかる。)
(1)OHPおよびプリントで第30図を示す。
質問9特に地震の多い地域は熱流量のどの
ような部分になるか。(OHP用の第30図は第
28図に重ねられるように作成しておく。特に東
北日本太平洋側について考える。)
質問10火山帯と地震帯がずれていることか
らどのようなことが考えられるか。(内部エネ
ルギーの発散のしかたの違いに気付けばよい。)
藤則雄ら:地学教育におけるエネルギー概念の統一的指導
第29図日本の火山帯
(清水書院「指導と研究」より)
229
(J)OHPおよびプリントで第31図を示す。
質問11日本付近の地震の震源の深度にはど
のような傾向があるか。
0.--
(作業)第31図に示したA-B,C-DE
-Fのうち1つについての断面における震源の
傾斜角を求めよ。(地震は地球内部にたくわえら
れたエネルギーが瞬間的に放出される現象で,
0.<
震源は力学的に不つり合いの状態のところとい
)
曇
える。このような状態のところが,深く,マン
トル内にある角度をもった面としてつらなって
いることに注意させる。)
。活・休火山
・死火山
:鰯!;火山帯
第30図顕著地震の分布(坪井忠二「地球の構成」より)
】'1K。
●
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230
金沢大学教育学部教科教育研究
第5号昭和47年
I
第31図日本付近の深発・中深発地震の震央とその深度(気象庁地震課,’58.,59より)
0011
0000
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.60-100km
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▲310-400
+410-500
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第32図
⑪OHPにより第32図を示し,日本付近に
東北日本の横断面図
(竹内均「続地球の科学」 より)
墓
おけるマントル対流説について簡単にふれる。
(L)まとめとして,昭和45年度金沢大学入試
問題1をさせる。
騨蕊霞、
「マグマの活動」に関して,石川県立泉ケ丘
2時限(50分×2)である。
(A)質問1
°マントル対流の結果生ずる地球内部の不
均衡の解消…………………57%
深牡二キロメートル
高校の理数科(一年)の生徒に,前述の質問を
試みた。方法は,すべての図・表をOHPで示
し,質問はプリントで渡しておく。所要時間は
塗jO
jLl
| 篝'1i密|' Mi?、z/
〆
>/
藤則雄ら:地学教育におけるエネルギー概念の統一的指導
。マグマが発生し,それが火山となり,マ
グマの移動が地震となる……30%
231
(1)質問9
.熱流量の少ない部分…………90%
・その他…………………………13%
。熟流量の多い所と少ない所との間の部分
質問2
………………8%
.発電・温泉・温室・暖房・鉱物資源の生
成
。特に関係はない………………2%
質問10
.内部エネルギーの発散のしかたの違い
(C)質問3
………………11%
(図から,生徒の100%が読みとっている)
。地震帯:はマントル対流の下降部で,火山
質問4
.大陸部では地殻上層部(花崗岩)が厚い
帯はその上昇部………..……・…13%
・理由はつけていないが,両者は直接関係
ため…………・…・…………・…78%
・大陸部では地殻上層部も下層部も厚いた
ない……………………………11%
・重力の違いか.……・……・……5%
め………………………………14%
・地殻の違いか…………………5%
・その他…………………………8%
・その他…………………………55%
(D)質問5
.海底でもりあがっている所…84%*
(J)質問11
.A-B:30。~40。…………86%
。深さ3000~4000mの所………8%
・海底の山と谷の間の所………5%
。C-D:20。~30....………77%
・海溝…・…・…………………・…3%
。E-F:25。~35。…………75%
(*この頻度のうち海底山脈とした者
結冒
50%)
(E)質問6
従来,地学におけるエネルギー概念を指導す
.海底の浅い所………・…..……84%
るための,一連のすじ立てのもと,有機的な関
・地形的に複雑な所……………5%
連性をもたせて,統一的に講義・実験・演習を
・海底の深い所…………………8%
試みた例・参考文献は極めて少ない。
・その他……・……・……………・3%
(G)質問7
°多い所:日本海とか北海道の西側とかの
言葉も使われるが,東北地方西側である
ということはすべての生徒がおさえてい
る。また,ここですでに火山帯と結びつ
けている者もかなりある。
。少ない所:四国。九州あるいは北海道の
この論文で集録した内容のものは,上述のよ
うな流れの一部分の試案である。そして,この
試案のもとに,各高等学校で,実際に講義をや
り,その結果と結果の分析の要点を記述した。
しかし,過去2ケ年間の研究成果にすぎないた
めに,今後さらに討議を重ね,より有効適切な
試案をあみだし,高等学校の地学教育の進展の
ために寄与したい。
東南などとともに,東北日本の太平洋側
はすべての者がおさえている。
(H)質問8
参考文献
日本教育大学協会(1960):理科教材研究,東洋館,
139.p・
100%の者はほぼ一致しているとみている。
文部省(1968):中学校新しい理科教育,東京書籍,
ただ,フォッサ・マグナ以南では,あまり
日本教職員組合編(1969):私達の教育課程研究理科
一致していないと注意している者も20%余
いた。
125.p・
教育,-ツ橋書房,222.p、
永田義夫(1967):理科の構造のとらえかた,啓林館
113.p、
232金沢大学教育学部教科教育研究
神力甚一郎(1970):教科教育の課題と方法,金沢大
学教育学部教科教育研究,No.3,pl~
12.
水越敏行(1970):創造性の教育と発見学習,金沢大
学教育学部教科教育研究,No.3,p、13~
22.
第5号昭和47年
理科教育研究班(1971):理科教材の構造化について
金沢大学教育学部教科教育研究,No.4,
p、47~62
真船和夫(1962):理科教授論,明治図書,234.p・
文部省(1969):小学校指導書理科編,東京書籍,
142.p、
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