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原油と MLP の関係
2015 年 10 月 23 NE NN 原油と MLP の関係 チーフ・ストラテジスト 神山 直樹 MLP は、シェール革命による規模の拡大で恩恵を受けると期待されてきた 最近の軟調さは、クレジット・リスクである程度説明できそうだ 景気回復期待と原油価格のボラティリティの低下が、MLP を下支えするだろう MLP は、シェール革命による規模の拡大で恩恵を受けると期待されてきた MLP は共同投資事業形態のひとつで、エネルギーインフラ関連事業に投資を行ない、その利用料などを収益源として いる。多くの MLP の収益構造は、パイプラインや貯蔵施設の利用料などからの事業収益となっており、総所得の 90% 以上をエネルギー関連事業などから得ることを要件に、収益に対して法人税が実質的に免除されている。このような収 益構造であるから、資源価格や景気変動の影響を受けにくいと考えられ、シェール革命による規模の拡大が収益機会 を増やすと期待されてきた。 最近の軟調さは、クレジット・リスクである程度説明できそうだ ところが、最近の MLP 指数は、中国の成長鈍 MLP指数と原油先物価格の推移 (2014年1月~2015年9月) 140 MLP指数 化懸念や米国の利上げ懸念、原油価格の下落 原油先物価格(WTI) などに揺さぶられているようにみえる。 120 確かに石油などの価格下落ペースは速く、シェ 100 ールオイルやガスなどの生産の停滞や縮小懸 80 念もあり、MLP の事業リスクにもつながりかねな 60 40 20 いとの懸念が強まったのだろう。しかし、最近発 MLP指数:S&P MLP指数(米ドルベース) 表された、いくつかの具体的な決算を見る限り、 ※グラフ期初を100として指数化 2014年1月 2014年6月 2014年11月 2015年4月 2015年9月 *上記は過去のものであり、将来の運用成果等を約束するものではありません。 (信頼できると判断したデータをもとに日興アセットマネジメントが作成) 主要な MLP の配当は前期比で変わらずもしく は増加となっており、大幅な減少は少ないよう だ。 もうひとつの懸念が、信用不安である。最近、原油価格の下落後に、スイスの大手資源商社株の急落(実際は、具体 的な信用問題につながっていない模様)が報じられると、市場に不安心理が広がった。さらに、主な産油国(サウジアラ ビア、クウェート、ノルウェー)が財政赤字を減らすために金融資産を売却したと報じられると、事業上の関係が薄いとみ られる米国 MLP 市場にも、利用料などの支払い遅延を懸念する市場参加者が現れてもおかしくない状況にあった。 ■当資料は、日興アセットマネジメントが投資環境などについてお伝えすることなどを目的として作成した資料であり、特定ファンドの勧誘資料で はありません。また、当資料に掲載する内容は、弊社ファンドの運用に何等影響を与えるものではありません。■投資信託は、値動きのある資 産(外貨建資産には為替変動リスクもあります。)を投資対象としているため、基準価額は変動します。したがって、元金を割り込むことがありま す。投資信託の申込み・保有・換金時には、費用をご負担いただく場合があります。詳しくは、投資信託説明書(交付目論見書)をご覧ください。 1 (%) MLP指数と米国ハイイールド債指数の利回り推移 このように、具体的な信用不安がシェールオイ (2014年1月~2015年9月) ルやガスの生産などに影響がなかったとして 9 MLP指数 8 ハイイールド債指数 も、最近の MLP 市場の下落は、クレジット・リス 7 クである程度説明できそうだ。 6 実際、足元の MLP の利回りは、米国ハイイー 5 ルド債と同水準にまで上昇しており、REIT のよ 4 3 2 うに事業利益の多くを配当に回す MLP の収益 MLP指数:S&P MLP指数(米ドルベース) 米国ハイイールド指数: BofAメリルリンチ・米国ハイイールド・マスターⅡ・インデックス(米ドルベース) 2014年1月 2014年6月 2014年11月 2015年4月 構造に鑑みれば、市場がクレジット・リスクを過 2015年9月 大に見積もっている可能性が高いと思われる。 *上記は過去のものであり、将来の運用成果等を約束するものではありません。 (信頼できると判断したデータをもとに日興アセットマネジメントが作成) 景気回復期待と原油価格のボラティリティの低下が、MLP を下支えするだろう 当面の MLP 指数の動向を考えた場合、3 つのリスクがポイントとなろう。 1 つ目は、世界経済が落ち込み、原油需要の低迷でさらに原油価格が下落するリスクだ。当社は、2016 年の米国の成 長率を 2.7%とみていることなどから、まだら模様ながら回復すると予想(10 月 13 日付グローバル・フォーサイト)してお り、原油先物価格(北海ブレント)は、イランの増産などを織り込み、2016 年 6 月末で 45 米ドル/バレルと横ばいから弱 含みとみている。 2 つ目は、原油価格が現状程度で、シェールオイル・ガスの生産が減少するリスクだ。当社の提携先であるユーラシ ア・グループのプリディ氏は、「生産性の向上で米国産シェールのコストが低下しており、米国のシェールオイル生産が 再び増加に転じることは確実と見込まれる」との見方を示しており(10 月 21 日付日本経済新聞「経済教室」参照)、シ ェールオイル・ガスの増産基調は不変とみている。 最後に、施設の使用料などの支払いが滞るクレジット・リスクだ。足元の原油価格の下落を端緒とする MLP の利回り上 昇は、シェールの掘削技術の向上スピードをかなり低く見積もっていると解釈できそうだ。今後、スピードは緩やかになる としても生産性向上は続くと思われ、1 つ目のリスクも想定すれば、シェールオイルなどの生産者が価格下落に耐えき れず、手数料等の支払いが大幅に遅延するリスクについて、最近の MLP の利回りは織り込み過ぎているようにみえる。 こうしたことから、現時点の情報を分析する限り、MLP 指数は、景気回復への期待が市場に戻るとともに、原油価格の ボラティリティが低下すれば、落ち着いた動きになっていくと考えている。 PDFファイルおよびバックナンバーは、日興アセットマネジメントのホームページでご覧いただけます。 また、facebookやツイッターで発行をお知らせいたします。 http://www.nikkoam.com/products/column/kamiyama-reports facebook https://www.facebook.com/nikkoam Twitter https://twitter.com/NikkoAMofficial ■当資料は、日興アセットマネジメントが投資環境などについてお伝えすることなどを目的として作成した資料であり、特定ファンドの勧誘資料で はありません。また、当資料に掲載する内容は、弊社ファンドの運用に何等影響を与えるものではありません。■投資信託は、値動きのある資 産(外貨建資産には為替変動リスクもあります。)を投資対象としているため、基準価額は変動します。したがって、元金を割り込むことがありま す。投資信託の申込み・保有・換金時には、費用をご負担いただく場合があります。詳しくは、投資信託説明書(交付目論見書)をご覧ください。 2